(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051940
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158338
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩田 和洋
(72)【発明者】
【氏名】森次 正治
(72)【発明者】
【氏名】菅原 孝道
(72)【発明者】
【氏名】富永 琢磨
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS05
5H730BB26
5H730BB27
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE02
5H730EE03
5H730EE08
5H730EE59
5H730FD01
5H730FG05
5H730VV01
(57)【要約】
【課題】エネルギー損失を低減することができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】本開示の一実施の形態に係る電力変換装置は、第1の電力端子と、接続ノードを介して直列に接続された第1および第2のスイッチング素子を有するスイッチング回路と、トランスと、整流回路と、平滑回路と、第2の電力端子と、制御回路と、電圧生成回路と、ダイオードと、キャパシタと、キャパシタの両端間の電圧を電源電圧として用いることにより第1のスイッチング素子を駆動する駆動回路とを有する駆動部とを備える。制御回路は、スイッチング回路の動作状態を、第1および第2のスイッチング素子がオフ状態を維持する第1の動作状態、第1のスイッチング素子がオフ状態を維持し第2のスイッチング素子がスイッチング動作を行う第2の動作状態、および第1および第2のスイッチング素子がスイッチング動作を行う第3の動作状態の順で繰り返し変化させる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子および第2の端子を含む第1の電力端子と、
前記第1の端子および前記第2の端子を結ぶ経路において接続ノードを介して直列に接続された第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子を有するスイッチング回路と、
前記スイッチング回路に接続された第1の巻線と、第2の巻線とを有するトランスと、
前記第2の巻線に接続された整流回路と、
前記整流回路に接続された平滑回路と、
前記平滑回路に接続された第2の電力端子と、
前記スイッチング回路の動作を制御可能な制御回路と、
所定の電圧を生成する電圧生成回路と、
前記電圧生成回路の出力端子に導かれたアノードと、カソードとを有するダイオードと、前記ダイオードのカソードに導かれた一端と前記接続ノードに接続された他端とを有するキャパシタと、前記キャパシタの両端間の電圧を電源電圧として用いることにより、前記制御回路から供給された制御信号に基づいて前記第1のスイッチング素子を駆動可能な駆動回路とを有する駆動部と
を備え、
前記制御回路は、前記スイッチング回路の動作状態を、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子がともにオフ状態を維持する第1の動作状態、前記第1のスイッチング素子がオフ状態を維持し前記第2のスイッチング素子がスイッチング動作を行う第2の動作状態、および前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子がともにスイッチング動作を行う第3の動作状態の順で繰り返し変化させることが可能である
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記第2の電力端子における電圧が第1のしきい電圧より低くなった場合に、前記スイッチング回路の前記動作状態を前記第1の動作状態から前記第2の動作状態に変化させることが可能であり、
前記第2の電力端子における電圧が第2のしきい電圧より高くなった場合に、前記スイッチング回路の前記動作状態を前記第3の動作状態から前記第1の動作状態に変化させることが可能である
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記スイッチング回路の前記動作状態を前記第1の動作状態から前記第2の動作状態に変化させた後、第1の所定時間が経過した場合に、前記スイッチング回路の前記動作状態を前記第2の動作状態から前記第3の動作状態に変化させることが可能である
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記スイッチング回路の前記動作状態が前記第2の動作状態である場合には、所定のパルス幅を有する前記制御信号を前記駆動部に供給することにより、前記駆動部に前記第2のスイッチング素子を駆動させることが可能である
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記スイッチング回路の前記動作状態を前記第1の動作状態にしてから、前記第2の電力端子における電圧が第1のしきい電圧より低くなるまでの時間が第2の所定時間より長い場合に、前記スイッチング回路の前記動作状態を、前記第1の動作状態、前記第2の動作状態、および前記第3の動作状態の順で変化させることが可能である
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記スイッチング回路の前記動作状態を前記第1の動作状態にしてから、前記第2の電力端子における電圧が前記第1のしきい電圧より低くなるまでの時間が前記第2の所定時間より短い場合に、前記スイッチング回路の前記動作状態を、前記第1の動作状態、および前記第3の動作状態の順で変化させることが可能である
請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記電力変換装置の負荷が軽い場合に、前記スイッチング回路の前記動作状態を、前記第1の動作状態、前記第2の動作状態、および前記第3の動作状態の順で繰り返し変化させることが可能である
請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置には、ブートストラップ動作により駆動信号を生成し、生成した駆動信号を用いてスイッチング回路のスイッチング素子を駆動するものがある。例えば、特許文献1には、バーストモードにおいて、下側のスイッチング素子のスイッチング動作を継続して行わせるとともに、上側のスイッチング素子のスイッチング動作を間欠的に行わせることにより、ブートストラップキャパシタの電圧を維持させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換装置では、エネルギー損失が低いことが望まれており、さらなるエネルギー損失の低減が期待されている。
【0005】
エネルギー損失を低減することができる電力変換装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態に係る電力変換装置は、第1の電力端子と、スイッチング回路と、トランスと、整流回路と、平滑回路と、第2の電力端子と、制御回路と、電圧生成回路と、駆動部とを備えている。第1の電力端子は、第1の端子および第2の端子を含むものである。スイッチング回路は、第1の端子および第2の端子を結ぶ経路において接続ノードを介して直列に接続された第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子を有するものである。トランスは、スイッチング回路に接続された第1の巻線と、第2の巻線とを有するものである。整流回路は、第2の巻線に接続されたものである。平滑回路は、整流回路に接続されたものである。第2の電力端子は、平滑回路に接続されたものである。制御回路は、スイッチング回路の動作を制御可能なものである。電圧生成回路は、所定の電圧を生成するものである。駆動部は、電圧生成回路の出力端子に導かれたアノードと、カソードとを有するダイオードと、ダイオードのカソードに導かれた一端と接続ノードに接続された他端とを有するキャパシタと、キャパシタの両端間の電圧を電源電圧として用いることにより、制御回路から供給された制御信号に基づいて第1のスイッチング素子を駆動可能な駆動回路とを有するものである。制御回路は、スイッチング回路の動作状態を、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子がともにオフ状態を維持する第1の動作状態、第1のスイッチング素子がオフ状態を維持し第2のスイッチング素子がスイッチング動作を行う第2の動作状態、および第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子がともにスイッチング動作を行う第3の動作状態の順で繰り返し変化させることが可能なものである。
【0007】
本発明の一実施の形態に係る電力変換装置によれば、エネルギー損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る電力変換装置の一構成例を表す回路図である。
【
図2】
図1に示した電力変換装置における電圧生成回路および4つの駆動部の一構成例を表す回路図である。
【
図3】
図1に示した電力変換装置の一動作例を表すタイミング波形図である。
【
図4A】
図1に示した電力変換装置の一動作状態を表す説明図である。
【
図4B】
図1に示した電力変換装置の他の一動作状態を表す説明図である。
【
図5】
図1に示した電力変換装置の起動時における一動作例を表す説明図である。
【
図6】
図1に示した電力変換装置の起動時における一動作例を表すタイミング図である。
【
図7】
図1に示した電力変換装置のバーストモードにおける一動作例を表すタイミング波形図である。
【
図8】
図1に示した電力変換装置のバーストモードにおける一動作例を表すフローチャートである。
【
図9】
図1に示した電力変換装置のバーストモードにおける一動作例を表すタイミング図である。
【
図10】
図1に示した電力変換装置のバーストモードにおける他の一動作例を表すタイミング図である。
【
図11】変形例に係る電力変換装置の一構成例を表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
<実施の形態>
[構成例]
図1は、本発明の一実施の形態に係る電力変換装置1の一構成例を表すものである。電力変換装置1は、バッテリBHから供給された電圧を降圧することにより、電力を変換し、変換された電力を負荷LDに供給するDC/DCコンバータである。
【0011】
電力変換装置1は、端子T11,T12と、電圧生成回路20と、スイッチング回路12と、絶縁部31A,31Cと、駆動部32A~32Dと、トランス13と、整流回路14と、平滑回路15と、電圧センサ18と、制御回路19と、端子T21,T22とを有している。バッテリBH、電圧生成回路20、スイッチング回路12、および駆動部32A~32Dは、電力変換装置1の1次側回路を構成し、整流回路14、平滑回路15、電圧センサ18、および負荷LDは、電力変換装置1の2次側回路を構成する。
【0012】
端子T11,T12は、電力変換装置1の電力入力端子である。電力変換装置1内において、端子T11は電圧線L11に接続され、端子T12は基準電圧線L12に接続される。
【0013】
電圧生成回路20は、バッテリBHから供給された電力に基づいて、所定の電圧V20を生成するように構成される。
【0014】
図2は、電力変換装置1の1次側回路のより具体的な回路構成の一例を表すものである。 電圧生成回路20は、この例では、絶縁型のDC/DCコンバータであり、バッテリBHから供給された200V~400V程度の直流電圧を、15V程度の直流電圧である電圧V20に変換する。電圧生成回路20は、トランス21と、トランジスタ22と、ダイオード23と、キャパシタ24と、電圧制御回路25とを有している。
【0015】
トランス21は、巻線21A,21Bを有している。巻線21Aの一端は電圧線L11に接続され、他端はトランジスタ22のドレインに接続される。巻線21Bの一端は基準電圧線L12に接続され、他端はダイオード23のアノードに接続される。
【0016】
トランジスタ22は、例えばN型の電界効果トランジスタを用いて構成される。なお、この例では、N型の電界効果トランジスタを用いたが、スイッチング素子であればどのようなものを用いてもよい。トランジスタ22のゲートには電圧制御回路25から供給された制御信号が供給され、ドレインはトランス21の巻線21Aの他端に接続され、ソースは基準電圧線L12に接続される。
【0017】
ダイオード23のアノードはトランス21の巻線21Bの他端に接続され、カソードはノードN3に接続される。
【0018】
キャパシタ24は、電解コンデンサであり、一端はノードN3に接続され、他端は基準電圧線L12に接続される。
【0019】
電圧制御回路25は、ノードN3における電圧V20に基づいて、トランジスタ22のスイッチング動作を制御するように構成される。電圧制御回路25は、ノードN3の電圧V20が所定の電圧(この例では15V)になるように、トランジスタ22のスイッチング動作を制御するようになっている。
【0020】
なお、この例では、トランス21を有する絶縁型の降圧コンバータ回路を用いて電圧生成回路20を構成したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、非絶縁型の降圧コンバータ回路を用いて電圧生成回路20を構成してもよい。
【0021】
この構成により、電圧生成回路20は、直流電圧である電圧V20を生成する。そして、電圧生成回路20は、生成した電圧V20を、絶縁部31A,31Cおよび駆動部32A,32B,32C,32Dに供給するようになっている。
【0022】
スイッチング回路12(
図1)は、バッテリBHから供給された直流電圧を交流電圧に変換するように構成される。スイッチング回路12は、フルブリッジ型の回路であり、トランジスタSA~SDを有している。トランジスタSA~SDは、ゲート信号GA1~GD1に基づいてそれぞれスイッチング動作を行うスイッチング素子である。トランジスタSA~SDは、例えばN型の電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を用いて構成される。トランジスタSA~SDは、ボディダイオードDA~DDをそれぞれ有している。例えば、ボディダイオードDAのアノードはトランジスタSAの本体のソースに接続され、カソードはトランジスタSAの本体のドレインに接続される。ボディダイオードDB~DDについても同様である。なお、この例では、N型の電界効果トランジスタを用いたが、スイッチング素子であればどのようなものを用いてもよい。
【0023】
トランジスタSAは、電圧線L11とノードN1とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることによりノードN1を電圧線L11に接続するように構成される。トランジスタSAのドレインは電圧線L11に接続され、ゲートにはゲート信号GA1が供給され、ソースはノードN1に接続される。トランジスタSBは、ノードN1と基準電圧線L12とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることによりノードN1を基準電圧線L12に接続するように構成される。トランジスタSBのドレインはノードN1に接続され、ゲートにはゲート信号GB1が供給され、ソースは基準電圧線L12に接続される。ノードN1は、トランジスタSAのソースとトランジスタSBのドレインとの接続点である。
【0024】
トランジスタSCは、電圧線L11とノードN2とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることによりノードN2を電圧線L11に接続するように構成される。トランジスタSCのドレインは電圧線L11に接続され、ゲートにはゲート信号GC1が供給され、ソースはノードN2に接続される。トランジスタSDは、ノードN2と基準電圧線L12とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることによりノードN2を基準電圧線L12に接続するように構成される。トランジスタSDのドレインはノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号GD1が供給され、ソースは基準電圧線L12に接続される。ノードN2は、トランジスタSCのソースとトランジスタSDのドレインとの接続点である。
【0025】
絶縁部31Aは、制御回路19から供給されたゲート信号GAに基づいて、ゲート信号GAと電気的に絶縁されたゲート信号GA0を生成するように構成される。絶縁部31Aは、例えば、フォトカプラなどの絶縁素子を用いて構成される。なお、これに限定されるものではなく、ゲート信号GAおよびゲート信号GA0が電気的に絶縁される様々な回路を用いることができる。
【0026】
駆動部32Aは、電圧生成回路20から供給された電圧V20、および絶縁部31Aから供給されたゲート信号GA0に基づいて、ゲート信号GA1を生成し、このゲート信号GA1を用いてトランジスタSAを駆動するように構成される。
【0027】
図2に示したように、駆動部32Aは、ダイオード33と、抵抗素子34と、キャパシタ35と、駆動回路36と、抵抗素子37とを有している。ダイオード33のアノードはノードN3に接続され、カソードは抵抗素子34に接続される。このダイオード33のアノードには、電圧生成回路20から電圧V20が供給される。抵抗素子34の一端はダイオード33のカソードに接続され、他端はキャパシタ35および駆動回路36の電源端子に接続される。キャパシタ35の一端は抵抗素子34の他端および駆動回路36の電源端子に接続され、他端はノードN1に接続される。駆動回路36の入力端子にはゲート信号GA0が供給され、出力端子は抵抗素子37に接続され、電源端子は抵抗素子34の他端およびキャパシタ35の一端に接続され、基準電源端子はノードN1に接続される。このように、駆動回路36の電源端子はキャパシタ35の一端に接続され、基準電源端子はキャパシタ35の他端に接続されるので、駆動回路36は、キャパシタ35の両端間の電圧を電源電圧として用いることにより動作を行う。抵抗素子37の一端は駆動回路36の出力端子に接続され、他端はトランジスタSAのゲートに接続される。この構成により、駆動部32Aは、ブートストラップ動作を行うことにより、トランジスタSAを駆動するようになっている。
【0028】
駆動部32B(
図1)は、電圧生成回路20から供給された電圧V20、および制御回路19から供給されたゲート信号GBに基づいて、ゲート信号GB1を生成し、このゲート信号GB1を用いてトランジスタSBを駆動するように構成される。
【0029】
図2に示したように駆動部32Bは、キャパシタ45と、駆動回路46と、抵抗素子47とを有している。キャパシタ45の一端はノードN3に接続され、他端は基準電圧線L12に接続される。このキャパシタ45の一端には、電圧生成回路20から電圧V20が供給される。駆動回路46の入力端子にはゲート信号GBが供給され、出力端子は抵抗素子47に接続され、電源端子はノードN3に接続され、基準電源端子は基準電圧線L12に接続される。このように、駆動回路46の電源端子はキャパシタ45の一端に接続され、基準電源端子はキャパシタ45の他端に接続されるので、駆動回路46は、キャパシタ45の両端間の電圧を電源電圧として用いることにより動作を行う。抵抗素子47の一端は駆動回路46の出力端子に接続され、他端はトランジスタSBのゲートに接続される。この構成により、駆動部32Bは、トランジスタSBを駆動するようになっている。
【0030】
絶縁部31Cは、絶縁部31Aと同様に、制御回路19から供給されたゲート信号GCに基づいて、ゲート信号GCと電気的に絶縁されたゲート信号GC0を生成するように構成される。
【0031】
駆動部32C(
図1)は、電圧生成回路20から供給された電圧V20、および絶縁部31Cから供給されたゲート信号GC0に基づいて、ゲート信号GC1を生成し、このゲート信号GC1を用いてトランジスタSCを駆動するように構成される。
図2に示したように、駆動部32Cは、駆動部32Aと同様に、ダイオード33と、抵抗素子34と、キャパシタ35と、駆動回路36と、抵抗素子37とを有している。駆動部32Cの回路構成は、駆動部32Aの回路構成と同様である。この構成により、駆動部32Cは、ブートストラップ動作を行うことにより、トランジスタSCを駆動するようになっている。
【0032】
駆動部32D(
図1)は、電圧生成回路20から供給された電圧V20、および制御回路19から供給されたゲート信号GDに基づいて、ゲート信号GD1を生成し、このゲート信号GD1を用いてトランジスタSDを駆動するように構成される。
図2に示したように、駆動部32Dは、駆動部32Bと同様に、キャパシタ45と、駆動回路46と、抵抗素子47とを有している。駆動部32Dの回路構成は、駆動部32Bの回路構成と同様である。この構成により、駆動部32Dは、トランジスタSDを駆動するようになっている。
【0033】
トランス13(
図1)は、1次側回路と2次側回路とを直流的に絶縁するとともに交流的に接続し、1次側回路から供給された交流電圧を、トランス13の変成比Nで変換し、変換された交流電圧を2次側回路に供給するように構成される。トランス13は、巻線13A,13B,13Cを有している。巻線13Aの一端はスイッチング回路12におけるノードN1に接続され、他端はスイッチング回路12におけるノードN2に接続される。巻線13Bの一端は整流回路14におけるダイオードD1(後述)のアノードに接続され、他端は巻線13Cの一端および基準電圧線L22に接続される。巻線13Cの一端は巻線13Bの他端および基準電圧線L22に接続され、他端は整流回路14におけるダイオードD2(後述)のアノードに接続される。
【0034】
整流回路14は、トランス13の巻線13B,13Cから出力された交流電圧を整流するように構成される。整流回路14は、ダイオードD1,D2を有している。ダイオードD1のアノードはトランス13の巻線13Bの一端に接続され、カソードはダイオードD2のカソードおよび平滑回路15のインダクタ16(後述)に接続される。ダイオードD2のアノードはトランス13の巻線13Cの他端に接続され、カソードはダイオードD1のカソードおよび平滑回路15のインダクタ16に接続される。
【0035】
平滑回路15は、整流回路14から供給された電圧を平滑化するように構成される。平滑回路15は、インダクタ16と、キャパシタ17とを有している。インダクタ16の一端は整流回路14のダイオードD1,D2のカソードに接続され、他端は電圧線L21に接続される。キャパシタ17の一端は電圧線L21に接続され、他端は基準電圧線L22に接続される。
【0036】
電圧センサ18は、電圧線L21における電圧を検出するように構成される。電圧センサ18の一端は電圧線L21に接続され、他端は基準電圧線L22に接続される。電圧センサ18は、基準電圧線L22での電圧を基準とした電圧線L21での電圧を、電圧VLとして検出する。そして、電圧センサ18は、電圧VLの検出結果を制御回路19に供給するようになっている。
【0037】
制御回路19は、電圧センサ18により検出された電圧VLに基づいて、スイッチング回路12の動作を制御することにより、電力変換装置1の動作を制御するように構成される。具体的には、制御回路19は、電圧VLに基づいてゲート信号GA~GDを生成し、このゲート信号GA~GDを用いてPWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことにより、電力変換装置1の動作を制御するようになっている。
【0038】
端子T21,T22は、電力変換装置1が生成した電圧を負荷LDに供給するように構成される。電力変換装置1内において、端子T21は電圧線L21に接続され、端子T22は基準電圧線L22に接続される。
【0039】
後述するように、電力変換装置1は、負荷が軽い場合には、バーストモードで動作する。このバーストモードでは、4つのトランジスタSA~SDは、間欠的にスイッチング動作を行う。例えば、4つのトランジスタSA~SDがオフ状態である期間が長い場合において、その後にトランジスタSA~SDのスイッチング動作が開始する場合には、まずトランジスタSB,SDがスイッチング動作を開始することにより、電力変換装置1は、駆動部32A,32Cにおけるキャパシタ35を充電する。そして、その後にトランジスタSA,SCのスイッチング動作が開始する。これにより、電力変換装置1では、バーストモードで動作する際に、エネルギー損失を低減することができるようになっている。
【0040】
ここで、端子T11,T12は、本開示における「第1の電力端子」の一具体例に対応する。スイッチング回路12は、本開示における「スイッチング回路」の一具体例に対応する。トランス13は、本開示における「トランス」の一具体例に対応する。巻線13Aは、本開示における「第1の巻線」の一具体例に対応する。巻線13B,13Cは、本開示における「第2の巻線」の一具体例に対応する。整流回路14は、本開示における「整流回路」の一具体例に対応する。平滑回路15は、ここで、本開示における「平滑回路」の一具体例に対応する。端子T21,T22は、本開示における「第2の電力端子」の一具体例に対応する。制御回路19は、本開示における「制御回路」の一具体例に対応する。絶縁部31Aおよび駆動部32Aは、本開示における「駆動部」の一具体例に対応する。駆動部32Aのダイオード33は、本開示における「ダイオード」の一具体例に対応する。駆動部32Aのキャパシタ35は、本開示における「キャパシタ」の一具体例に対応する。駆動部32Aの駆動回路36は、本開示における「駆動回路」の一具体例に対応する。端子T21,T22は、本開示における「第2の電力端子」の一具体例に対応する。
【0041】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の電力変換装置1の動作および作用について説明する。
【0042】
(全体動作概要)
まず、
図1を参照して、電力変換装置1の全体動作概要を説明する。電圧生成回路20は、バッテリBHから供給された電力に基づいて、所定の電圧V20を生成し、この電圧V20を絶縁部31A,31Cおよび駆動部32A,32B,32C,32Dに供給する。絶縁部31Aは、制御回路19から供給されたゲート信号GAに基づいて、ゲート信号GAと電気的に絶縁されたゲート信号GA0を生成する。駆動部32Aは、電圧生成回路20から供給された電圧V20、および絶縁部31Aから供給されたゲート信号GA0に基づいて、ゲート信号GA1を生成し、このゲート信号GA1を用いてトランジスタSAを駆動する。駆動部32Bは、電圧生成回路20から供給された電圧V20、および制御回路19から供給されたゲート信号GBに基づいて、ゲート信号GB1を生成し、このゲート信号GB1を用いてトランジスタSBを駆動する。絶縁部31Cは、制御回路19から供給されたゲート信号GCに基づいて、ゲート信号GCと電気的に絶縁されたゲート信号GC0を生成する。駆動部32Cは、電圧生成回路20から供給された電圧V20、および絶縁部31Cから供給されたゲート信号GC0に基づいて、ゲート信号GC1を生成し、このゲート信号GC1を用いてトランジスタSCを駆動する。駆動部32Dは、電圧生成回路20から供給された電圧V20、および制御回路19から供給されたゲート信号GDに基づいて、ゲート信号GD1を生成し、このゲート信号GD1を用いてトランジスタSDを駆動する。トランジスタSA~SDは、ゲート信号GA1~GD1に基づいてそれぞれスイッチング動作を行う。トランス13は、1次側回路と2次側回路とを直流的に絶縁するとともに交流的に接続し、1次側回路から供給された交流電圧を、トランス13の変成比Nで変換し、変換された交流電圧を2次側回路に供給する。整流回路14は、トランス13の巻線13B,13Cから出力された交流電圧を整流する。平滑回路15は、整流回路14から供給された電圧を平滑化する。電圧センサ18は、電圧線L21における電圧を検出する。制御回路19は、電圧センサ18により検出された電圧VLに基づいて、スイッチング回路12の動作を制御することにより、電力変換装置1の動作を制御する。
【0043】
(詳細動作)
図3は、電力変換装置1の一動作例を表すものであり、(A)~(D)はゲート信号GA~GDの波形をそれぞれ示し、(E)は電力変換装置1における1次側回路から2次側回路への電力伝送動作を示す。電力変換装置1は、
図3(E)に示した波形が高レベルである期間Tにおいて、1次側回路から2次側回路へ電力伝送を行う。
【0044】
タイミングt11において、制御回路19は、ゲート信号GDを低レベルから高レベルに変化させる(
図3(D))。駆動部32Dは、このゲート信号GDに基づいてゲート信号GD1を生成し、このゲート信号GD1を用いてトランジスタSDをオフ状態からオン状態に変化させる。
【0045】
次に、タイミングt12において、制御回路19は、ゲート信号GBを高レベルから低レベルに変化させる(
図3(B))。駆動部32Bは、このゲート信号GBに基づいてゲート信号GB1を生成し、このゲート信号GB1を用いてトランジスタSBをオン状態からオフ状態に変化させる。
【0046】
次に、タイミングt13において、制御回路19は、ゲート信号GAを低レベルから高レベルに変化させる(
図3(A))。絶縁部31Aは、このゲート信号GAに基づいてゲート信号GA0を生成する。駆動部32Aは、このゲート信号GA0に基づいてゲート信号GA1を生成し、このゲート信号GA1を用いてトランジスタSAをオフ状態からオン状態に変化させる。
【0047】
次に、タイミングt14において、制御回路19は、ゲート信号GDを高レベルから低レベルに変化させる(
図3(D))。駆動部32Dは、このゲート信号GDに基づいてゲート信号GD1を生成し、このゲート信号GD1を用いてトランジスタSDをオン状態からオフ状態に変化させる。
【0048】
このようにして、タイミングt13~t14の期間Tにおいて、トランジスタSAおよびトランジスタSDはともにオン状態になる。この期間Tでは、ゲート信号GB,GCは低レベルであるので、トランジスタSBおよびトランジスタSCはともにオフ状態である。
【0049】
図4Aは、タイミングt13~t14の期間Tにおける、あるタイミングでの電力変換装置1の一動作状態を表すものである。
図4Aでは、説明の便宜上、電力変換装置1を簡略化して描いている。また、トランジスタSA~SDを、オンオフ状態を示すスイッチとして描いている。
【0050】
トランジスタSA,SDがオン状態であるので、電力変換装置1の1次側回路には、電圧線L11、トランジスタSA、巻線13A、トランジスタSD、基準電圧線L12の順に、電流I1が流れ得る。これに応じて、電力変換装置1の2次側回路には、巻線13B、ダイオードD1、インダクタ16、キャパシタ17および負荷LD、基準電圧線L22、巻線13Bの順に、電流I2が流れ得る。このようにして、電力変換装置1は、タイミングt13~t14の期間Tにおいて、1次側回路から2次側回路へ電力伝送を行う。
【0051】
次に、
図3に示したように、タイミングt15において、制御回路19は、ゲート信号GCを低レベルから高レベルに変化させる(
図3(C))。絶縁部31Cは、このゲート信号GCに基づいてゲート信号GC0を生成する。駆動部32Cは、このゲート信号GC0に基づいてゲート信号GC1を生成し、このゲート信号GC1を用いてトランジスタSCをオフ状態からオン状態にする。
【0052】
次に、タイミングt16において、制御回路19は、ゲート信号GAを高レベルから低レベルに変化させる(
図3(A))。絶縁部31Aは、このゲート信号GAに基づいてゲート信号GA0を生成する。駆動部32Aは、このゲート信号GA0に基づいてゲート信号GA1を生成し、このゲート信号GA1を用いてトランジスタSAをオン状態からオフ状態に変化させる。
【0053】
次に、タイミングt17において、制御回路19は、ゲート信号GBを低レベルから高レベルに変化させる(
図3(B))。駆動部32Bは、このゲート信号GBに基づいてゲート信号GB1を生成し、このゲート信号GB1を用いてトランジスタSBをオフ状態からオン状態に変化させる。
【0054】
次に、タイミングt18において、制御回路19は、ゲート信号GCを高レベルから低レベルに変化させる(
図3(C))。絶縁部31Aは、このゲート信号GCに基づいてゲート信号GC0を生成する。駆動部32Cは、このゲート信号GC0に基づいてゲート信号GC1を生成し、このゲート信号GC1を用いてトランジスタSCをオン状態からオフ状態にする。
【0055】
このようにして、タイミングt17~t18の期間Tにおいて、トランジスタSBおよびトランジスタSCはともにオン状態になる。この期間Tでは、ゲート信号GA,GDは低レベルであるので、トランジスタSAおよびトランジスタSDはともにオフ状態である。
【0056】
図4Bは、タイミングt17~t18の期間Tにおける、あるタイミングでの電力変換装置1の一動作状態を表すものである。トランジスタSB,SCがオン状態であるので、電力変換装置1の1次側回路には、電圧線L11、トランジスタSC、巻線13A、トランジスタSB、基準電圧線L12の順に、電流I1が流れ得る。これに応じて、電力変換装置1の2次側回路には、巻線13C、ダイオードD2、インダクタ16、キャパシタ17および負荷LD、基準電圧線L22、巻線13Bの順に、電流I2が流れ得る。このようにして、電力変換装置1は、タイミングt17~t18の期間Tにおいて、1次側回路から2次側回路へ電力伝送を行う。
【0057】
このようにして、電力変換装置1は、タイミングt13~t14の期間T、およびタイミングt17~t18の期間Tにおいて、1次側回路から2次側回路へ電力伝送を行う。
【0058】
制御回路19は、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLに基づいて、例えば、ゲート信号GA~GDのスイッチング周期に対応する周期期間Tswにおける、電力伝送が行われる2つの期間Tの時間長の割合(デューティ比DT)を決定する。そして、制御回路19は、このデューティ比DTに基づいて、ゲート信号GA~GDを生成する。例えば、電圧VLが目標電圧よりも低い場合には、制御回路19は、デューティ比DTを大きくすることにより、電圧VLを高くしようとする。例えば、電圧VLが目標電圧よりも高い場合には、制御回路19は、デューティ比DTを小さくすることにより、電圧VLを低くしようとする。このようにして、制御回路19は、電圧VLが目標電圧になるように、フィードバック制御を行う。
【0059】
(ブートストラップ動作について)
図3に示したようにスイッチング回路12がスイッチング動作を行うことにより、例えば駆動部32A(
図2)では、キャパシタ35の両端間の電圧が、電圧V20よりも、ダイオード33の順方向電圧の分だけ低い電圧に維持される。駆動回路36は、キャパシタ35の両端間の電圧を電源電圧として用いることにより動作を行い、トランジスタSAを駆動する。駆動部32Bでは、駆動回路46は、電圧V20を電源電圧として用いることにより動作を行い、トランジスタSBを駆動する。以下に、駆動部32A,32Bの動作について詳細に説明する。
【0060】
図3に示したように、タイミングt10において、制御回路19は、ゲート信号GBを低レベルから高レベルに変化させる(
図3(B))。駆動部32Bの駆動回路46は、電圧V20を電源電圧として用いることにより動作し、ゲート信号GB1を低レベルから高レベルに変化させる。これにより、トランジスタSBがオフ状態からオン状態に変化する。トランジスタSBがオン状態になることにより、ノードN1は基準電圧線L12に接続される。よって、ノードN1の電圧は、基準電圧線L12の電圧と同じ電圧になる。この期間において、駆動部32Aのキャパシタ35は、電圧生成回路20からダイオード33および抵抗素子34を介して供給された電流により充電される。
【0061】
次に、タイミングt12において、制御回路19は、ゲート信号GBを高レベルから低レベルに変化させる(
図3(B))。駆動部32Bの駆動回路46は、電圧V20を電源電圧として用いることにより動作し、ゲート信号GB1を高レベルから低レベルに変化させる。これにより、トランジスタSBがオン状態からオフ状態に変化する。トランジスタSAおよびトランジスタSBはともにオフ状態であるので、ノードN1はフローティング状態になり、このノードN1の電圧は、例えば、電圧線L11の電圧と基準電圧線L12の電圧との中間の電圧にまで上昇する。
【0062】
次に、タイミングt13において、制御回路19は、ゲート信号GAを低レベルから高レベルに変化させる(
図3(A))。絶縁部31Aは、このゲート信号GAに基づいて、ゲート信号GA0を低レベルから高レベルに変化させる。駆動部32Aの駆動回路36は、キャパシタ35の両端間の電圧を電源電圧として用いることにより動作し、ゲート信号GA1を低レベルから高レベルに変化させる。これにより、トランジスタSAがオフ状態からオン状態に変化する。トランジスタSAがオン状態になることにより、ノードN1は電圧線L11と接続される。よって、ノードN1の電圧は、電圧線L11の電圧にまで上昇する。駆動部32Aでは、キャパシタ35の両端間の電圧は、電圧V20よりもダイオード33の順方向電圧の分だけ低い電圧に維持される。よって、キャパシタ35の他端に接続されたノードN1の電圧が上昇すると、キャパシタ35の一端の電圧もまた上昇する。よって、ゲート信号GA1の高レベルの電圧もまた上昇する。よって、トランジスタSAはオン状態を維持する。
【0063】
次に、タイミングt16において、制御回路19は、ゲート信号GAを高レベルから低レベルに変化させる(
図3(A))。絶縁部31Aは、このゲート信号GAに基づいて、ゲート信号GA0を高レベルから低レベルに変化させる。駆動部32Aの駆動回路36は、キャパシタ35の両端間の電圧を電源電圧として用いることにより動作し、ゲート信号GA1を高レベルから低レベルに変化させる。これにより、トランジスタSAがオン状態からオフ状態に変化する。トランジスタSAおよびトランジスタSBはともにオフ状態であるので、ノードN1はフローティング状態になり、このノードN1の電圧は、例えば、電圧線L11の電圧と基準電圧線L12の電圧との中間の電圧にまで低下する。駆動部32Aでは、キャパシタ35の両端間の電圧は、電圧V20よりもダイオード33の順方向電圧の分だけ低い電圧に維持される。よって、キャパシタ35の他端に接続されたノードN1の電圧が低下すると、キャパシタ35の一端の電圧もまた低下する。よって、ゲート信号GA1の低レベルの電圧もまた低下する。よって、トランジスタSBはオフ状態を維持する。
【0064】
このようにして、駆動部32Aは、ブートストラップ動作を行うことにより、ゲート信号GA1を生成する。
【0065】
なお、以上では、駆動部32A,32Bを例に挙げて動作を説明したが、駆動部32C,32Dについても同様である。
【0066】
(起動時の動作について)
電力変換装置1は、起動時において、電圧生成回路20が生成した電圧V20に基づいて、駆動部32Aのキャパシタ35を充電し、キャパシタ35の電圧を、電圧V20よりもダイオード33の順方向電圧の分だけ低い電圧に設定するとともに、駆動部32Cのキャパシタ35を充電し、キャパシタ35の電圧を、電圧V20よりもダイオード33の順方向電圧の分だけ低い電圧に設定する。以下に、この動作について詳細に説明する。
【0067】
図5,6は、起動時における電力変換装置1の一動作例を表すものである。
図6において、(A)~(D)はゲート信号GA~GDをそれぞれ示し、(E)は駆動部32A,32Cにおけるキャパシタ35の両端間の電圧(キャパシタ電圧V35)の波形を示し、(F)は電力変換装置1の出力電圧である電圧VLの波形を示す。
図6(A)~(D)において、網掛けは、低レベルと高レベルとの間で遷移しているゲート信号を示す。
【0068】
起動時では、電力変換装置1は、まず、タイミングt21において、トランジスタSB,SDのスイッチング動作を開始させ、その後に、タイミングt23において、トランジスタSA,SCのスイッチング動作を開始させる。以下に、この動作について、詳細に説明する。
【0069】
まず、タイミングt21~t23の期間T1において、制御回路19は、低レベルと高レベルとの間で遷移するゲート信号GB,GDを生成する。ゲート信号GB,GDのパルス幅は、所定値である。また、制御回路19は、ゲート信号GA,GCを低レベルに維持する。
【0070】
例えば、ゲート信号GBが高レベルである期間では、トランジスタSBがオン状態になり、ノードN1の電圧は、基準電圧線L12の電圧と同じ電圧(0V)になる。駆動部32Aでは、ダイオード33のアノードに電圧V20(例えば15V)が供給され、キャパシタ35の他端に接続されたノードN1の電圧は0Vであるので、ダイオード33がオン状態になり、キャパシタ35は充電される。
【0071】
例えば、ゲート信号GBが低レベルである期間では、トランジスタSBがオフ状態になり、ノードN1の電圧は、例えば、電圧線L11の電圧と基準電圧線L12の電圧との中間の電圧になる。よって、駆動部32Aでは、ダイオード33はオフ状態になり、キャパシタ35の充電は停止する。
【0072】
このようにして、駆動部32Aでは、ゲート信号GBが高レベルである期間においてキャパシタ35が充電され、ゲート信号GBが低レベルである期間においてキャパシタ35の充電が停止することにより、キャパシタ35の両端間の電圧であるキャパシタ電圧V35は、
図6(E)に示したように、徐々に上昇する。そして、タイミングt22において、キャパシタ電圧V35が、電圧V20よりもダイオード33の順方向電圧の分だけ低い電圧に到達すると、ゲート信号GBが高レベルである期間においても、ダイオード33はオン状態にならなくなり、キャパシタ電圧V35の上昇は停止する。これにより、キャパシタ電圧V35は、これ以降、電圧V20よりもダイオード33の順方向電圧の分だけ低い電圧に維持される。
【0073】
同様に、駆動部32Cでは、ゲート信号GDが高レベルである期間においてキャパシタ35が充電され、ゲート信号GDが低レベルである期間においてキャパシタ35の充電が停止することにより、キャパシタ35の両端間の電圧であるキャパシタ電圧V35は、
図6(E)に示したように、徐々に上昇する。そして、タイミングt22において、キャパシタ電圧V35が、電圧V20よりもダイオード33の順方向電圧の分だけ低い電圧に到達すると、ゲート信号GDが高レベルである期間においても、ダイオード33はオン状態にならなくなり、キャパシタ電圧V35の上昇は停止する。これにより、キャパシタ電圧V35は、これ以降、電圧V20よりもダイオード33の順方向電圧の分だけ低い電圧に維持される。
【0074】
タイミングt21~t23の期間T1の時間長は、所定の時間長である。この期間T1の時間長は、駆動部32A,32Cのキャパシタ35が充電される時間を推定することにより、予め設定される。
【0075】
そして、タイミングt23~t24の期間T2において、制御回路19は、低レベルと高レベルとの間で遷移するゲート信号GA~GDを生成する。この期間T2では、制御回路19は、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLに基づいてデューティ比DTを決定し、このデューティ比DTに基づいてゲート信号GA~GDを生成する。例えば、電圧VLが目標電圧Vtargetよりも低い場合には、制御回路19は、デューティ比DTを大きくすることにより、電圧VLを高くしようとする。例えば、電圧VLが目標電圧Vtargetよりも高い場合には、制御回路19は、デューティ比DTを小さくすることにより、電圧VLを低くしようとする。このようにして、制御回路19は、電圧VLが目標電圧Vtargetになるように、フィードバック制御を行う。この例では、タイミングt24において、電圧VLは目的電圧Vtargetになり、これ以降、この目標電圧Vtargetを維持するように制御される。
【0076】
(バーストモードにおける動作について)
電力変換装置1は、負荷が軽い場合には、バーストモードで動作する。このバーストモードでは、4つのトランジスタSA~SDは、間欠的にスイッチング動作を行う。
【0077】
図7は、バーストモードにおける電力変換装置1の一動作例を表すものであり、(A)~(D)はゲート信号GA~GDの波形をそれぞれ示し、(E)は電力変換装置1における1次側回路から2次側回路への電力伝送動作を示す。
【0078】
この
図7では、最初は、制御回路19は、低レベルと高レベルとの間で遷移するゲート信号GA~GDを生成している(
図7(A)~(D))。絶縁部31A,31Cおよび駆動部32A~32Dは、このゲート信号GA~GDに基づいてゲート信号GA1~GD1を生成し、スイッチング回路12は、このゲート信号GA1~GD1に基づいてスイッチング動作を行う。この例では、電力変換装置1の負荷が軽くなることに応じて、デューティ比DTが徐々に小さくなり、電力伝送を行う期間Tの時間幅が徐々に短くなる(
図7(E))。
【0079】
そして、その後に、制御回路19は、ゲート信号GA~GDを低レベルにする(
図7(A)~(D))。絶縁部31A,31Cおよび駆動部32A~32Dは、このゲート信号GA~GDに基づいて低レベルのゲート信号GA1~GD1を生成するので、スイッチング回路12は、スイッチング動作を停止する。
【0080】
このようにスイッチング動作が停止すると、電力変換装置1は、1次側回路から2次側回路に電力を伝送しないので、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLは徐々に低下する。制御回路19は、電圧VLがある電圧(後述するしきい値VLth1)を下回ると、低レベルと高レベルとの間で遷移するゲート信号GA~GDを、再度生成し始める(
図7(A)~(D))。駆動部32A~32Dは、このゲート信号GA~GDに基づいてゲート信号GA1~GD1を生成し、スイッチング回路12は、このゲート信号GA1~GD1に基づいてスイッチング動作を行う。
【0081】
これ以降、電力変換装置1は、負荷が軽い状態が維持される限り、このような動作を繰り返す。電力変換装置1は、バーストモードにおいて、このように、4つのトランジスタSA~SDを間欠的に動作させる。
【0082】
図8は、電力変換装置1におけるバーストモードの一動作例を表すものである。
【0083】
まず、制御回路19は、デューティ比DTが所定のしきい値DTth1より低いかどうかを確認する(ステップS101)。デューティ比DTがしきい値DTth1より低くない場合(ステップS101において“N”)には、制御回路19は、デューティ比DTがしきい値DTth1より低くなるまで、このステップS101の処理を繰り返す。
【0084】
ステップS101において、デューティ比DTが所定のしきい値DTth1より低い場合(ステップS101において“Y”)には、制御回路19は、トランジスタSA~SDのスイッチング動作を停止させる(ステップS102)。具体的には、制御回路19は、ゲート信号GA~GDを低レベルにする。絶縁部31A,31Cおよび駆動部32A~32Dは、このゲート信号GA~GDに基づいて低レベルのゲート信号GA1~GD1を生成する。これにより、トランジスタSA~SDはオフ状態になり、スイッチング回路12は、スイッチング動作を停止する。
【0085】
次に、制御回路19は、スイッチング動作を停止している期間の長さをカウントするカウント動作を開始する(ステップS103)。制御回路19は、例えば、スイッチング周期の周期期間Tsw(
図3)の数をカウントし、カウント値CNTを更新する。
【0086】
スイッチング動作を停止している期間では、電力変換装置1は、1次側回路から2次側回路に電力を伝送しないので、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLは徐々に低下する。また、トランジスタSB,SDがオン状態にならないので、駆動部32A,32Cにおけるキャパシタ35は充電されない。よって、キャパシタ35は、時間の経過に応じて徐々に自然放電され、キャパシタ35の両端間の電圧が低下する。
【0087】
次に、制御回路19は、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLが所定のしきい値VLth1よりも低いかどうかを確認する(ステップS104)。電圧VLがしきい値VLth1よりも低くない場合(ステップS104において“N”)には、制御回路19は、電圧VLがしきい値VLth1よりも低くなるまで、このステップS104の処理を繰り返す。
【0088】
ステップS104において、電圧VLがしきい値VLth1よりも低い場合(ステップS104において“Y”)には、カウント動作のカウント値CNTが所定のしきい値CNTthより小さいかどうかを確認する(ステップS105)。
【0089】
ステップS105において、カウント値CNTが所定のしきい値CNTthより小さい場合(ステップS105において“Y”)には、制御回路19は、トランジスタSA~SDのスイッチング動作を開始させ、フィードバック制御を行う(ステップS106)。具体的には、制御回路19は、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLに基づいてデューティ比DTを決定し、このデューティ比DTに基づいてゲート信号GA~GDを生成する。絶縁部31A,31Cおよび駆動部32A~32Dは、このゲート信号GA~GDに基づいてゲート信号GA1~GD1を生成する。これにより、スイッチング回路12のトランジスタSA~SDは、スイッチング動作を開始する。電力変換装置1の出力電圧である電圧VLは、目標電圧Vtargetになるように制御される。これにより、電圧VLは、目標電圧Vtargetに向かって上昇する。また、トランジスタSBがオン状態になると、駆動部32Aのキャパシタ35が充電され、トランジスタSDがオン状態になると、駆動部32Cのキャパシタ35が充電される。これにより、キャパシタ35の両端間の電圧が上昇する。そして、処理はステップS110に進む。
【0090】
ステップS105において、カウント値CNTが所定のしきい値CNTthより小さくない場合(ステップS105において“N”)には、制御回路19は、トランジスタSB,SDのスイッチング動作を開始させる(ステップS107)。具体的には、制御回路19は、所定のパルス幅を有するゲート信号GB,GDを生成するとともに、ゲート信号GA,GCを低レベルに維持する。絶縁部31A,31Cおよび駆動部32A~32Dは、このゲート信号GA~GDに基づいてゲート信号GA1~GD1を生成する。これにより、スイッチング回路12のトランジスタSB,SDは、スイッチング動作を開始する。
【0091】
次に、制御回路19は、所定時間待つ(ステップS108)。
【0092】
トランジスタSB,SDはスイッチング動作を行っている期間では、トランジスタSBがオン状態になると、駆動部32Aのキャパシタ35が充電され、トランジスタSDがオン状態になると、駆動部32Cのキャパシタ35が充電される。これにより、キャパシタ35の両端間の電圧が上昇する。
【0093】
次に、制御回路19は、トランジスタSA,SCのスイッチング動作を開始させ、フィードバック制御を行う(ステップS109)。具体的には、制御回路19は、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLに基づいてデューティ比DTを決定し、このデューティ比DTに基づいてゲート信号GA~GDを生成する。絶縁部31A,31Cおよび駆動部32A~32Dは、このゲート信号GA~GDに基づいてゲート信号GA1~GD1を生成する。これにより、スイッチング回路12のトランジスタSA~SDは、スイッチング動作を開始する。電力変換装置1の出力電圧である電圧VLは、目標電圧Vtargetになるように制御される。これにより、電圧VLは、目標電圧Vtargetに向かって上昇する。
【0094】
次に、制御回路19は、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLが所定のしきい値VLth2よりも高いかどうかを確認する(ステップS110)。電圧VLがしきい値VLth2よりも高くない場合(ステップS110において“N”)には、制御回路19は、電圧VLがしきい値VLth2よりも高くなるまで、このステップS110の処理を繰り返す。
【0095】
次に、制御回路19は、デューティ比DTが所定のしきい値DTth2より大きいかどうかを確認する(ステップS111)。デューティ比DTがしきい値DTth2より大きくない場合(ステップS111において“N”)には、処理はステップS102に戻り、制御回路19は、デューティ比DTが所定のしきい値DTth2より大きくなるまで、ステップS102~S110の処理を繰り返す。
【0096】
ステップS111において、デューティ比DTが所定のしきい値DTth2より大きい場合(ステップS111において“Y”)には、この処理は終了する。
【0097】
次に、電力変換装置1の動作について、
図8に示したフローチャートと対応付けて、いくつか例を挙げて詳細に説明する。
【0098】
図9は、電力変換装置1の一動作例を表すものであり、(A)は電力変換装置1の負荷電流ILの波形を示し、(B)~(E)はゲート信号GA~GDの波形をそれぞれ示し、(F)は駆動部32A,32Cにおけるキャパシタ35の両端間の電圧(キャパシタ電圧V35)の波形を示し、(G)電力変換装置1の出力電圧である電圧VLの波形を示す。
【0099】
タイミングt21より前において、電力変換装置1の負荷電流ILが減少する(
図9(A))。これにより、電力変換装置1では、デューティ比DTが低下する。
【0100】
タイミングt21において、制御回路19は、デューティ比DTがしきい値DTth1よりも小さいことを確認する(ステップS101において“Y”)。そして、制御回路19は、ゲート信号GA~GDを低レベルにすることにより、トランジスタSA~SDのスイッチング動作を停止させる(
図9(B)~(E)、ステップS102)。このようにスイッチング動作が停止すると、電力変換装置1は、1次側回路から2次側回路に電力を伝送しないので、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLは徐々に低下する(
図9(G))。また、トランジスタSB,SDがオン状態にならないので、駆動部32A,32Cにおけるキャパシタ35は充電されない。よって、キャパシタ35は、時間の経過に応じて徐々に自然放電され、キャパシタ35の両端間の電圧が低下する(
図9(F))。
【0101】
次に、タイミングt22において、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLがしきい値VLth1よりも低くなる(
図9(G)、ステップS104において“Y”)。この例では、タイミングt21~t22の時間長に対応するカウント値CNTは、しきい値CNTthよりも小さい(ステップS105において“Y”)。これにより、制御回路19は、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLに基づいてデューティ比DTを決定し、このデューティ比DTに基づいてゲート信号GA~GDを生成することにより、トランジスタSA~SDのスイッチング動作を開始させる(
図9(B)~(E)、ステップS106)。制御回路19は、フィードバック制御を行うことにより、デューティ比DTを決定するので、電圧VLは、目標電圧Vtargetになるように制御される。その結果、電圧VLは徐々に上昇する(
図9(G))。また、トランジスタSBがオン状態になると、駆動部32Aのキャパシタ35が充電され、トランジスタSDがオン状態になると、駆動部32Cのキャパシタ35が充電される。これにより、キャパシタ35の両端間の電圧が上昇する(
図9(F))。
【0102】
次に、タイミングt23において、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLがしきい値VLth2よりも高くなる(
図9(G)、ステップS110において“Y”)。この例では、負荷電流ILはまだ小さいので、デューティ比DTがしきい値DTth2よりも大きくない(ステップS111において“N”)。よって、制御回路19は、ゲート信号GA~GDを低レベルにすることにより、トランジスタSA~SDのスイッチング動作を停止させる(
図9(B)~(E)、ステップS102)。これにより、電圧VLは徐々に低下し(
図9(G))、キャパシタ35の両端間の電圧もまた徐々に低下する(
図9(F))。
【0103】
これ以降、電力変換装置1は、この動作を繰り返す。
【0104】
そして、タイミングt24より前において、電力変換装置1の負荷電流ILが増加する(
図9(A))。これにより、電力変換装置1では、デューティ比DTが上昇する。タイミングt24において、制御回路19は、デューティ比DTがしきい値DTth2より大きいことを確認する(ステップS111において“Y”)。これにより、バーストモードの動作は終了する。
【0105】
図10は、電力変換装置1の他の一動作例を表すものであり、(A)は電力変換装置1の負荷電流ILの波形を示し、(B)~(E)はゲート信号GA~GDの波形をそれぞれ示し、(F)は駆動部32A,32Cにおけるキャパシタ35の両端間の電圧(キャパシタ電圧V35)の波形を示し、(G)電力変換装置1の出力電圧である電圧VLの波形を示す。
【0106】
タイミングt31より前において、電力変換装置1の負荷電流ILが減少する(
図10(A))。負荷電流ILの電流量は、
図9の場合に比べてさらに小さい。これにより、電力変換装置1では、デューティ比DTが低下する。
【0107】
タイミングt31において、制御回路19は、デューティ比DTがしきい値DTth1よりも小さいことを確認する(ステップS101において“Y”)。そして、制御回路19は、ゲート信号GA~GDを低レベルにすることにより、トランジスタSA~SDのスイッチング動作を停止する(
図10(B)~(E)、ステップS102)。このようにスイッチング動作が停止すると、電力変換装置1は、1次側回路から2次側回路に電力を伝送しないので、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLは徐々に低下する(
図10(G))。また、トランジスタSB,SDがオン状態にならないので、駆動部32A,32Cにおけるキャパシタ35は充電されない。よって、キャパシタ35は、時間の経過に応じて徐々に自然放電され、キャパシタ35の両端間の電圧が低下する(
図10(F))。
【0108】
次に、タイミングt32において、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLがしきい値VLth1よりも低くなる(
図10(G)、ステップS104において“Y”)。この例では、タイミングt31~t32の時間長に対応するカウント値CNTは、しきい値CNTthよりも大きい(ステップS105において“N”)。すなわち、この例では、負荷電流ILの電流量は、
図9の場合に比べてさらに小さいので、電圧VLの変化度合いが
図9の例よりも緩やかであり、その結果、タイミングt31~t32の時間長は、
図9におけるタイミングt21~t22の時間長よりも長い。これにより、制御回路19は、所定のパルス幅を有するゲート信号GB,GDを生成することにより、トランジスタSB,SDのスイッチング動作を開始する(
図10(C),(E)、ステップS107)。トランジスタSBがオン状態になると、駆動部32Aのキャパシタ35が充電され、トランジスタSDがオン状態になると、駆動部32Cのキャパシタ35が充電される。これにより、キャパシタ35の両端間の電圧が上昇する(
図10(F))。
【0109】
次に、タイミングt32から所定の時間が経過したタイミングt33において、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLに基づいてデューティ比DTを決定し、このデューティ比DTに基づいてゲート信号GA~GDを生成することにより、トランジスタSA~SDのスイッチング動作を開始させる(
図10(B)~(E)、ステップS109)。制御回路19は、フィードバック制御を行うことにより、デューティ比DTを決定するので、電圧VLは、目標電圧Vtargetになるように制御される。その結果、電圧VLは徐々に上昇する(
図10(G))。
【0110】
次に、タイミングt34において、電力変換装置1の出力電圧である電圧VLがしきい値VLth2よりも高くなる(
図10(G)、ステップS110において“Y”)。この例では、負荷電流ILはまだ小さいので、デューティ比DTがしきい値DTth2よりも大きくない(ステップS111において“N”)。よって、制御回路19は、ゲート信号GA~GDを低レベルにすることにより、トランジスタSA~SDのスイッチング動作を停止させる(
図10(B)~(E)、ステップS102)。これにより、電圧VLは徐々に低下し(
図10(G))、キャパシタ35の両端間の電圧もまた徐々に低下する(
図10(F))。
【0111】
これ以降、電力変換装置1は、この動作を繰り返す。
【0112】
そして、タイミングt35より前において、電力変換装置1の負荷電流ILが増加する(
図10(A))。これにより、電力変換装置1では、デューティ比DTが上昇する。タイミングt35において、制御回路19は、デューティ比DTがしきい値DTth2より大きいことを確認する(ステップS111において“Y”)。これにより、バーストモードの動作は終了する。
【0113】
ここで、しきい値VLth1は、本開示における「第1のしきい電圧」の一具体例に対応する。しきい値VLth2は、本開示における「第2のしきい電圧」の一具体例に対応する。
【0114】
このように、電力変換装置1では、第1の端子(端子T11)および第2の端子(端子T12)を結ぶ経路において接続ノードを介して直列に接続された第1のスイッチング素子(例えばトランジスタSA)および第2のスイッチング素子(例えばトランジスタSB)を有するスイッチング回路12と、電圧生成回路20の出力端子に導かれたアノードと、カソードとを有するダイオード33と、ダイオード33のカソードに導かれた一端とノードN1に接続された他端とを有するキャパシタ35と、キャパシタ35の両端間の電圧を電源電圧として用いることにより、制御回路19から供給された制御信号(ゲート信号GA)に基づいて第1のスイッチング素子を駆動可能な駆動回路36とを有する駆動部(例えば絶縁部31Aおよび駆動部32A)と設けるようにした。そして、制御回路19は、スイッチング回路12の動作状態を、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子がともにオフ状態を維持する第1の動作状態、第1のスイッチング素子がオフ状態を維持し第2のスイッチング素子がスイッチング動作を行う第2の動作状態、および第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子がともにスイッチング動作を行う第3の動作状態の順で繰り返し変化させるようにした。これにより、電力変換装置1では、エネルギー損失を低減することができる。
【0115】
すなわち、例えば、特許文献1に記載の技術のように、バーストモードにおいて、下側のスイッチング素子のスイッチング動作を継続して行わせるとともに、上側のスイッチング素子のスイッチング動作を間欠的に行わせる場合には、下側のスイッチング素子のドライブ損失が生じるので、エネルギー損失が増加してしまう。一方、電力変換装置1では、例えば
図10において、タイミングt31~t32の期間において、第2のスイッチング素子(例えばトランジスタSB)のスイッチング動作を停止させ、タイミングt32~t33の期間において、第2のスイッチング素子のスイッチング動作を行わせる。このタイミングt32~t33の期間の時間長は、駆動部32Aのキャパシタ35を充電可能な短い時間に設定することができる。これにより、トランジスタSBのドライブ損失を低減することができるので、エネルギー損失を低減することができる。
【0116】
また、電力変換装置1では、
図10に示したように、制御回路19は、スイッチング回路12の動作状態を第1の動作状態にしてから、第2の電力端子(端子T21,T22)における電圧が第1のしきい電圧(しきい値VLth1)より低くなるまでの時間が第2の所定時間より長い場合に、スイッチング回路12の動作状態を、第1の動作状態、第2の動作状態、および第3の動作状態の順で変化させるようにした。すなわち、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子がともにオフ状態を維持する第1の動作状態の期間が長い場合には、例えば駆動部32Aのキャパシタ35の両端間の電圧の低下量が大きい。よって、このような場合には、制御回路19は、スイッチング回路12の動作状態を、第1のスイッチング素子がオフ状態を維持し第2のスイッチング素子がスイッチング動作を行う第2の動作状態にした後に、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子がともにスイッチング動作を行う第3の動作状態にする。制御回路19は、スイッチング回路12の動作状態を第2の動作状態にすることにより、駆動部32Aのキャパシタ35を充電することができる。これにより、電力変換装置1では、効果的にエネルギー損失を低減しつつ、キャパシタ35を充電することができる。
【0117】
また、電力変換装置1では、
図9に示したように、制御回路19は、スイッチング回路12の動作状態を第1の動作状態にしてから、第2の電力端子(端子T21,T22)における電圧が第1のしきい電圧(しきい値VLth1)より低くなるまでの時間が第2の所定時間より短い場合に、スイッチング回路12の動作状態を、第1の動作状態、および第3の動作状態の順で変化させるようにした。すなわち、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子がともにオフ状態を維持する第1の動作状態の期間が短い場合には、例えば駆動部32Aのキャパシタ35の両端間の電圧の低下量が小さい。よって、このような場合には、制御回路19は、スイッチング回路12の動作状態を、第1のスイッチング素子がオフ状態を維持し第2のスイッチング素子がスイッチング動作を行う第2の動作状態にせずに、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子がともにスイッチング動作を行う第3の動作状態にする。これにより、電力変換装置1では、効果的にエネルギー損失を低減することができる。
【0118】
[効果]
以上のように本実施の形態では、第1の端子および第2の端子を結ぶ経路において接続ノードを介して直列に接続された第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子を有するスイッチング回路と、電圧生成回路の出力端子に導かれたアノードと、カソードとを有するダイオードと、ダイオードのカソードに導かれた一端と接続ノードに接続された他端とを有するキャパシタと、キャパシタの両端間の電圧を電源電圧として用いることにより、制御回路から供給された制御信号に基づいて第1のスイッチング素子を駆動可能な駆動回路とを有する駆動部と設けるようにした。そして、制御回路は、スイッチング回路の動作状態を、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子がともにオフ状態を維持する第1の動作状態、第1のスイッチング素子がオフ状態を維持し第2のスイッチング素子がスイッチング動作を行う第2の動作状態、および第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子がともにスイッチング動作を行う第3の動作状態の順で繰り返し変化させるようにした。これにより、エネルギー損失を低減することができる。
【0119】
本実施の形態では、制御回路は、スイッチング回路の動作状態を第1の動作状態にしてから、第2の電力端子における電圧が第1のしきい電圧より低くなるまでの時間が第2の所定時間より長い場合に、スイッチング回路の動作状態を、第1の動作状態、第2の動作状態、および第3の動作状態の順で変化させるようにしたので、効果的にエネルギー損失を低減しつつ、キャパシタ35を充電することができる。
【0120】
また、電力変換装置1では、
図9に示したように、制御回路19は、スイッチング回路12の動作状態を第1の動作状態にしてから、第2の電力端子における電圧が第1のしきい電圧より低くなるまでの時間が第2の所定時間より短い場合に、スイッチング回路12の動作状態を、第1の動作状態、および第3の動作状態の順で変化させるようにしたので、電力変換装置1では、効果的にエネルギー損失を低減することができる。
【0121】
[変形例]
上記実施の形態では、スイッチング回路12は、4つのトランジスタSA~SDを有するようにしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、
図11に示す電力変換装置1Aのように、2つのトランジスタを有するようにしてもよい。電力変換装置1Aは、電力変換装置1は、端子T11,T12と、電圧生成回路20と、スイッチング回路12Aと、絶縁部31Aと、駆動部32A,32Bと、キャパシタ51,52と、トランス13と、整流回路14と、平滑回路15と、電圧センサ18と、制御回路19Aと、端子T21,T22とを有している。スイッチング回路12は、ハーフブリッジ型の回路であり、トランジスタSA,SBを有している。絶縁部31Aは、制御回路19Aから供給されたゲート信号GAに基づいて、ゲート信号GAと電気的に絶縁されたゲート信号GA0を生成するように構成される。駆動部32Aは、電圧生成回路20から供給された電圧V20、および絶縁部31Aから供給されたゲート信号GA0に基づいて、ゲート信号GA1を生成し、このゲート信号GA1を用いてトランジスタSAを駆動するように構成される。駆動部32Bは、電圧生成回路20から供給された電圧V20、および制御回路19Aから供給されたゲート信号GBに基づいて、ゲート信号GB1を生成し、このゲート信号GB1を用いてトランジスタSBを駆動するように構成される。キャパシタ51の一端は電圧線L11に接続され、他端はノードN2に接続される。キャパシタ52の一端はノードN2に接続され、他端は基準電圧線L12に接続される。制御回路19Aは、電圧センサ18により検出された電圧VLに基づいて、スイッチング回路12Aの動作を制御することにより、電力変換装置1Aの動作を制御するように構成される。
【0122】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0123】
例えば、上記実施の形態では、電力変換動作において、降圧動作を行うようにしたが、これに限定されるものではなく、昇圧動作を行うようにしてもよい。
【0124】
また、例えば、上記の実施の形態等における電圧生成回路20の回路構成、スイッチング回路12の回路構成、整流回路14の回路構成、ゲート信号の動作波形などは、一例であり、適宜変更してもよい。
【0125】
本明細書中に記載された効果はあくまで例示であり、本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本開示に関して、他の効果が得られてもよい。
【0126】
さらに、本開示は、以下の態様を取り得る。
【0127】
(1)
第1の端子および第2の端子を含む第1の電力端子と、
前記第1の端子および前記第2の端子を結ぶ経路において接続ノードを介して直列に接続された第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子を有するスイッチング回路と、
前記スイッチング回路に接続された第1の巻線と、第2の巻線とを有するトランスと、
前記第2の巻線に接続された整流回路と、
前記整流回路に接続された平滑回路と、
前記平滑回路に接続された第2の電力端子と、
前記スイッチング回路の動作を制御可能な制御回路と、
所定の電圧を生成する電圧生成回路と、
前記電圧生成回路の出力端子に導かれたアノードと、カソードとを有するダイオードと、前記ダイオードのカソードに導かれた一端と前記接続ノードに接続された他端とを有するキャパシタと、前記キャパシタの両端間の電圧を電源電圧として用いることにより、前記制御回路から供給された制御信号に基づいて前記第1のスイッチング素子を駆動可能な駆動回路とを有する駆動部と
を備え、
前記制御回路は、前記スイッチング回路の動作状態を、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子がともにオフ状態を維持する第1の動作状態、前記第1のスイッチング素子がオフ状態を維持し前記第2のスイッチング素子がスイッチング動作を行う第2の動作状態、および前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子がともにスイッチング動作を行う第3の動作状態の順で繰り返し変化させることが可能である
電力変換装置。
(2)
前記制御回路は、
前記第2の電力端子における電圧が第1のしきい電圧より低くなった場合に、前記スイッチング回路の前記動作状態を前記第1の動作状態から前記第2の動作状態に変化させることが可能であり、
前記第2の電力端子における電圧が第2のしきい電圧より高くなった場合に、前記スイッチング回路の前記動作状態を前記第3の動作状態から前記第1の動作状態に変化させることが可能である
前記(1)に記載の電力変換装置。
(3)
前記制御回路は、前記スイッチング回路の前記動作状態を前記第1の動作状態から前記第2の動作状態に変化させた後、第1の所定時間が経過した場合に、前記スイッチング回路の前記動作状態を前記第2の動作状態から前記第3の動作状態に変化させることが可能である
前記(2)に記載の電力変換装置。
(4)
前記制御回路は、前記スイッチング回路の前記動作状態が前記第2の動作状態である場合には、所定のパルス幅を有する前記制御信号を前記駆動部に供給することにより、前記駆動部に前記第2のスイッチング素子を駆動させることが可能である
前記(1)から(3)のいずれかに記載の電力変換装置。
(5)
前記制御回路は、前記スイッチング回路の前記動作状態を前記第1の動作状態にしてから、前記第2の電力端子における電圧が第1のしきい電圧より低くなるまでの時間が第2の所定時間より長い場合に、前記スイッチング回路の前記動作状態を、前記第1の動作状態、前記第2の動作状態、および前記第3の動作状態の順で変化させることが可能である
前記(1)から(4)のいずれかに記載の電力変換装置。
(6)
前記制御回路は、前記スイッチング回路の前記動作状態を前記第1の動作状態にしてから、前記第2の電力端子における電圧が前記第1のしきい電圧より低くなるまでの時間が前記第2の所定時間より短い場合に、前記スイッチング回路の前記動作状態を、前記第1の動作状態、および前記第3の動作状態の順で変化させることが可能である
前記(5)に記載の電力変換装置。
(7)
前記制御回路は、前記電力変換装置の負荷が軽い場合に、前記スイッチング回路の前記動作状態を、前記第1の動作状態、前記第2の動作状態、および前記第3の動作状態の順で繰り返し変化させることが可能である
前記(1)から(6)のいずれかに記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0128】
1,1A…電力変換装置、12,12A…スイッチング回路、13…トランス、13A,13B,13C…巻線、14…整流回路、15…平滑回路、16…インダクタ、17…キャパシタ、18…電圧センサ、19,19A…制御回路、20…電圧生成回路、21…トランス、21A,21B…巻線、22…トランジスタ、23…ダイオード、24…キャパシタ、25…電圧制御回路、32A~32D…駆動部、33…ダイオード、34…抵抗素子、35…キャパシタ、36…駆動回路、37…抵抗素子、45…キャパシタ、46…駆動回路、47…抵抗素子、BH…バッテリ、CNT…カウント値、CNTth…しきい値、DA~DD…ボディダイオード、DT…デューティ比、DTth1,DTth2…しきい値、D1,D2…ダイオード、GA~GD1,GA1~GD1…ゲート信号、L11,L21…電圧線、L12,L22…基準電圧線、LD…負荷、N1~N3…ノード、SA~SD…トランジスタ、T,T1,T2…期間、Tsw…周期期間、T11,T12,T21,T22…端子、VL…電圧、VLth1,VLth2…しきい値、Vtarget…目標電圧、V20…電圧、V35…キャパシタ電圧。