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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051951
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】高周波回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/02 20060101AFI20240404BHJP
   H03F 1/32 20060101ALI20240404BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H03F1/02 111
H03F1/32
H03F3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158351
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大前 佑貴
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA41
5J500AA51
5J500AC21
5J500AC36
5J500AH29
5J500AH33
5J500AH38
5J500AK29
5J500AK41
5J500NG01
5J500RG01
5J500RG02
(57)【要約】
【課題】増幅回路で発生する高調波成分が出力信号経路に結合することによる歪特性の劣化を抑制することができる高周波回路を実現する。
【解決手段】エンベロープトラッキング方式により電力増幅を行う第1モードと、平均電力トラッキング方式により電力増幅を行う第2モードと、を切り替えて高周波信号を増幅するパワーアンプ回路PAと、パワーアンプ回路PAの電源供給経路に一端が接続され、他端がスイッチ回路SWを介して接地されるLC回路5と、を備える。LC回路5は、第1コンデンサC1と、第1コンデンサC1に直列接続されるインダクタLと、を備える。スイッチ回路SWは、第1モードにおいてオフ制御され、第2モードにおいてオン制御される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンベロープトラッキング方式により電力増幅を行う第1モードと、平均電力トラッキング方式により電力増幅を行う第2モードと、を切り替えて高周波信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路の電源供給経路に一端が接続され、他端がスイッチ回路を介して接地されるLC回路と、
を備え、
前記LC回路は、
第1コンデンサと、
前記第1コンデンサに直列接続されるインダクタと、
を備え、
前記スイッチ回路は、
前記第1モードにおいてオフ制御され、前記第2モードにおいてオン制御される、
高周波回路。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波回路であって、
前記増幅回路の電源供給経路に一端が接続され、他端が接地された第2コンデンサをさらに備える、
高周波回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高周波回路であって、
前記増幅回路が設けられる第1デバイスと、
前記スイッチ回路が設けられる第2デバイスと、
前記第1デバイス及び前記第2デバイスが搭載される基板と、
を備え、
前記第2デバイスは、
前記増幅回路により増幅された高周波信号の出力経路を有する、
高周波回路。
【請求項4】
請求項3に記載の高周波回路であって、
前記第1デバイスは、
ヘテロ接合バイポーラトランジスタで構成されるHBTデバイスであり、
前記第2デバイスは、
シリコントランジスタで構成されるFETデバイスである、
高周波回路。
【請求項5】
請求項3に記載の高周波回路であって、
前記インダクタは、
前記基板に設けられる導体で構成されるスパイラルインダクタである、
高周波回路。
【請求項6】
請求項4に記載の高周波回路であって、
前記インダクタは、
前記基板に設けられる導体で構成されるスパイラルインダクタである、
高周波回路。
【請求項7】
請求項3に記載の高周波回路であって、
前記インダクタは、
前記基板上に設けられる表面実装部品である、
高周波回路。
【請求項8】
請求項4に記載の高周波回路であって、
前記インダクタは、
前記基板上に設けられる表面実装部品である、
高周波回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波回路に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信端末に搭載される電力増幅回路の高効率化技術として、複数段の増幅回路を多段接続し、入力信号の振幅レベルに応じて増幅回路の電源電圧を制御することによって電力効率の向上を図る、エンベロープトラッキング(ET:Envelope Tracking)方式や、平均出力電力に応じて増幅回路の電源電圧を制御することによって電力効率の向上を図る、平均電力トラッキング(APT:Average Power Tracking)方式がある。従来、信号のエンベロープが所定値以下である固定電圧電力モードにおいて、コンデンサ及びスイッチ回路を介して増幅部の電力ノードを接地することにより、電力効率の低下を抑制する技術が開示されている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-134705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電力増幅回路やスイッチ回路、制御回路等を一体化した高周波モジュールの開発が進められている。このような高周波モジュールは、例えば低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)基板や誘電体基板上にウエハレベルCSP(WL-CSP:Wafer Level Chip Size Package)や表面実装部品(SMD:Surface Mount Device)等の複数の機能デバイスが実装される。
【0005】
このような高周波モジュールに上記従来技術を適用した場合、増幅部はHBT(Heterojunction Bipolar Transistor)プロセスを用いて構成されたHBTデバイスに設けられ、スイッチ回路はシリコンプロセスを用いて構成されたシリコンデバイスに設けられる構成が想定される。このような構成では、スイッチ回路と同一のシリコンデバイスに設けられるアンテナスイッチ回路のGNDを介して、HBTデバイスで発生する高調波成分が出力信号経路に結合し、歪特性が劣化する場合がある。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、増幅回路で発生する高調波成分が出力信号経路に結合することによる歪特性の劣化を抑制することができる高周波回路を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面の高周波回路は、エンベロープトラッキング方式により電力増幅を行う第1モードと、平均電力トラッキング方式により電力増幅を行う第2モードと、を切り替えて高周波信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路の電源供給経路に一端が接続され、他端がスイッチ回路を介して接地されるLC回路と、を備え、前記LC回路は、第1コンデンサと、前記第1コンデンサに直列接続されるインダクタと、を備え、前記スイッチ回路は、前記第1モードにおいてオフ制御され、前記第2モードにおいてオン制御される。
【0008】
この構成では、第2モードにおいてLC回路を伝搬する増幅回路由来のノイズ成分が出力信号経路に結合することによる歪特性の劣化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、増幅回路で発生する高調波成分が出力信号経路に結合することによる歪特性の劣化を抑制することができる高周波回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示における基本的な増幅回路の構成を示す回路図である。
図2図2は、比較例に係る高周波回路の一例を示す概略図である。
図3図3は、比較例の第1モードにおける態様を示す図である。
図4図4は、比較例の第2モードにおける態様を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る高周波回路の一例を示す概略図である。
図6図6は、実施形態の第1モードにおける態様を示す図である。
図7図7は、実施形態の第2モードにおける態様を示す図である。
図8図8は、N1ノードからN2ノードまでの通過特性例を示す図である。
図9図9は、N2ノードとN3ノードとのアイソレーション特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、実施形態に係る高周波回路を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0012】
図1は、本開示における基本的な増幅回路の構成を示す回路図である。本開示において、増幅回路100は、入力信号の振幅レベルに応じて増幅回路の電源電圧を制御することによって電力効率の向上を図るエンベロープトラッキング(ET:Envelope Tracking)方式の電力増幅モード(以下「第1モード」とも称する)と、平均出力電力に応じて増幅回路の電源電圧を制御することによって電力効率の向上を図る平均電力トラッキング(APT:Average Power Tracking)方式の電力増幅モード(以下「第2モード」とも称する)と、を切り替える態様としている。
【0013】
増幅回路100は、電源回路200から供給される電源電圧に基づき、高周波信号を増幅する。
【0014】
第1モードでは、高周波信号の包絡線に追従した電源電圧が供給される。このため、第1モードでは、高周波信号の包絡線に対する電源電圧のトラッキング精度が重要となる。一方、第2モードでは、高周波信号の平均出力電力に応じた電源電圧が供給される。このため、第2モードでは、高周波信号に対して安定した電源電圧を供給する必要がある。すなわち、第1モードと第2モードとでは、電源電圧の供給経路に必要なデカップリング容量が異なる。
【0015】
このため、図1に示すように、電源電圧の供給経路に常設される第2コンデンサC2に加えて、第1モードにおいてスイッチ回路SWによって電源電圧の供給経路から切り離される第1コンデンサC1を設ける。具体的に、第2コンデンサC2は、一端が電源電圧の供給経路に接続され、他端が接地される。また、第1コンデンサC1は、一端が電源電圧の供給経路に接続され、第2モードにおいて他端がスイッチ回路SWを介して接地される。
【0016】
これにより、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の容量値を適切に設計することで、第1モードと第2モードとの双方でそれぞれ最適なデカップリング容量を電源電圧の供給経路に付加することができる。
【0017】
図2は、比較例に係る高周波回路を示す概略図である。
【0018】
図2では、高周波回路1の一例として、フロントエンドモジュールの概略構成を示している。フロントエンドモジュールは、基板2上に実装された複数の集積回路、及び各種機能部品を一体化した超小型集積モジュールである。基板2は、例えば低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)基板等のセラミック積層基板や、樹脂多層基板やフィルム基板等が例示される。
【0019】
図2に示すように、高周波回路1は、主要な回路ブロックとして、第1デバイス3及び第2デバイス4を備えている。
【0020】
第1デバイス3は、例えばGaAs(ガリウム砒素)系のヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)で構成されるHBTデバイス(集積回路、IC:Integrated Circuit)であり、当該HBTデバイスのダイ上にパワーアンプ回路PAが構成されている。
【0021】
図2に示す構成では、入力端子TXから入力された高周波信号が第1デバイス3上のパワーアンプ回路PAによって増幅され、整合回路MN及び第2デバイス4を介して、増幅された高周波信号がアンテナ端子ANTから出力される。パワーアンプ回路PAは、電源端子Vccから入力された電源電圧に基づき、入力端子TXから入力された高周波信号を増幅する。
【0022】
第2デバイス4は、例えばSi(シリコン)系の電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)で構成されるシリコンデバイス(集積回路、IC)であり、当該シリコンデバイスのダイ上にスイッチ回路SW及びアンテナスイッチ回路ANTSWが構成されている。スイッチ回路SW及びアンテナスイッチ回路ANTSWは、例えば図示しない制御回路によりオン制御又はオフ制御される。
【0023】
パワーアンプ回路PAの出力信号は、整合回路MNを介して第2デバイス4に入力される。整合回路MNは、例えば基板2上に設けられる表面実装部品(SMD:Surface Mount Device)や基板2に設けられる導体で構成される。
【0024】
アンテナスイッチ回路ANTSWは、第2デバイス4に入力された高周波信号の出力先を切り替える。図1では、第2デバイス4に入力された高周波信号の出力先として、1つのアンテナ端子ANTを記載しているが、これに限定されない。例えば、アンテナスイッチ回路ANTSWによって出力先が切り替えられた高周波信号が複数のアンテナ端子のうちの一つに出力される態様であっても良い。
【0025】
パワーアンプ回路PAは、図1に示す増幅回路100に対応する。すなわち、本開示において、パワーアンプ回路PAは、エンベロープトラッキング(ET)方式の電力増幅モードである第1モードと、平均電力トラッキング(APT)方式の電力増幅モードである第2モードと、を切り替え可能な態様としている。
【0026】
図3は、比較例の第1モードにおける態様を示す図である。図4は、比較例の第2モードにおける態様を示す図である。図3に示す第1モードにおいて、スイッチ回路SWがオフ制御され、図4に示す第2モードにおいて、スイッチ回路SWがオン制御される。なお、図3及び図4では、アンテナスイッチ回路ANTSWがオン制御され、第2デバイス4に入力された高周波信号がアンテナ端子ANTに出力されている。
【0027】
第1コンデンサC1は、図3に示すように、第1モードにおいて第2デバイス4のダイ上に構成されたスイッチ回路SWがオフ制御されることにより、電源電圧の供給経路から切り離される。
【0028】
また、第1コンデンサC1は、図4に示すように、第2モードにおいて第2デバイス4のダイ上に構成されたスイッチ回路SWがオン制御されることにより、電源電圧の供給経路に接続される。
【0029】
上述した構成の高周波回路1において、スイッチ回路SWは、アンテナスイッチ回路ANTSWと共に第2デバイス4に設けられているため、第2モードにおいて、第1コンデンサC1は、第2デバイス4のGND電位に接地される。これにより、図4に破線矢示したように、第1デバイス3のダイ上に構成されたパワーアンプ回路PAから、第1コンデンサC1及び第2デバイス4のダイ上のスイッチ回路SWを介して、高周波信号の高調波成分が第1デバイス3由来のノイズ成分として第2デバイス4のGND電位に伝搬する。このため、図4に実線矢示したように、この第1デバイス3由来のノイズ成分である高周波信号の高調波成分が第2デバイス4上の高周波信号の出力経路に結合し、歪特性が劣化する可能性がある。
【0030】
以下、上述した構成の高周波回路1において、第1デバイス3由来のノイズ成分が第2デバイス4上の高周波信号の出力経路に結合することを抑制可能な実施形態1の構成について説明する。
【0031】
図5は、実施形態に係る高周波回路の一例を示す概略図である。図6は、実施形態の第1モードにおける態様を示す図である。図7は、実施形態の第2モードにおける態様を示す図である。図5に示す第1モードでは、図3に示す比較例と同様にスイッチ回路SWがオフ制御され、図6に示す第2モードでは、図4に示す比較例と同様にスイッチ回路SWがオン制御される。なお、図5及び図6では、図3及び図4に示す比較例と同様に、アンテナスイッチ回路ANTSWがオン制御され、第2デバイス4に入力された高周波信号がアンテナ端子ANTに出力されている。
【0032】
図5に示すように、実施形態に係る高周波回路1aの構成では、第1デバイス3由来のノイズ成分の伝搬経路上に、インダクタLを設けている。具体的には、図5に示すように、第1コンデンサC1とインダクタLとが直列接続されたLC回路5の一端が電源電圧の供給経路に接続され、第2モードにおいて他端が第2デバイス4に設けられたスイッチ回路SWを介して接地される。なお、インダクタLは、例えば基板2に設けられる導体で構成されるスパイラルインダクタである。インダクタLの態様はこれに限定されず、例えば、SMDで構成される態様であっても良い。
【0033】
また、本実施形態では、第1コンデンサC1とスイッチ回路SWが構成される第2デバイス4との間にインダクタLが設けられている態様を例示したが、これに限定されず、例えば電源電圧の供給経路と第1コンデンサC1との間にインダクタLが設けられている態様であっても良い。言い換えると、電源電圧の供給経路と、第2デバイス4上に設けられたスイッチ回路SWとの間に、第1コンデンサC1とインダクタLとが直列接続されたLC回路5が設けられた態様であれば良い。すなわち、LC回路5の一端が電源電圧の供給経路に接続され、第2モードにおいて、LC回路5の他端が第2デバイス4上のスイッチ回路SWを介して接地される。
【0034】
これにより、図7に破線矢示したように、第1デバイス3由来のノイズ成分の伝搬経路上において、上述した比較例の構成よりも高周波信号の高調波成分の周波数帯域が減衰し、図7に実線矢示したように、上述した比較例の構成よりも第2デバイス4上の高周波信号の出力経路への高調波成分の結合が抑制される。言い換えれば、高周波回路1aの構成では、第1デバイス3とLC回路5とを結ぶ経路を伝搬する高周波信号の高調波成分が、LC回路5とGND電位とを結ぶ経路を伝搬する高周波信号の高調波成分に比べて減衰している。これにより、歪特性の劣化を抑制することができる。
【0035】
図8は、N1ノードからN2ノードまでの通過特性例を示す図である。図8において、破線は、比較例の構成におけるN1ノードからN2ノードまでの通過特性を示し、実線は、実施形態の構成におけるN1ノードからN2ノードまでの通過特性を示している。
【0036】
図9は、N2ノードとN3ノードとのアイソレーション特性の一例を示す図である。図9において、破線は、比較例の構成におけるN2ノードとN3ノードとのアイソレーション特性を示し、実線は、実施形態の構成におけるN2ノードとN3ノードとのアイソレーション特性を示している。
【0037】
インダクタLのインダクタンス値は、例えば、数[nH]程度(例えば、1[nH]以上)とされる。また、第1コンデンサC1のキャパシタンス値は、例えば、1000[pF]程度とされる。このため、LC共振回路としての共振周波数は、高周波信号の基本波成分(例えば3[GHz]から5[GHz]付近)未満となり、図8に示すように、N1ノードからN2ノードまでの通過特性は、高周波信号の高周波成分の周波数帯域(図8に示す一定鎖線以上の帯域)においてインダクタLのインダクタンス成分が作用し、比較例よりも抑制される。また、図9に示すように、N2ノードとN3ノードとのアイソレーション特性についても、高周波信号の高周波成分の各周波数帯域において比較例よりも改善することができる。なお、第2コンデンサC2のキャパシタンス値は、30pF~50pF程度(例えば33pF)とされる。
【0038】
実施形態に係る高周波回路1は、上述したように、エンベロープトラッキング(ET)方式により電力増幅を行う第1モードと、平均電力トラッキング(APT)方式により電力増幅を行う第2モードと、を切り替えて高周波信号を増幅するパワーアンプ回路PAと、パワーアンプ回路PAの電源供給経路に一端が接続され、他端がスイッチ回路を介して接地されるLC回路5と、を備えている。LC回路5は、第1コンデンサC1と、第1コンデンサC1に直列接続されるインダクタLと、を備えている。このような構成において、スイッチ回路SWは、第1モードにおいてオフ制御され、第2モードにおいてオン制御される。
【0039】
この構成では、第2モードにおいてLC回路5を伝搬するパワーアンプ回路PA由来のノイズ成分が出力信号経路に結合することによる歪特性の劣化を抑制することができる。
【0040】
また、実施形態に係る高周波回路1は、パワーアンプ回路PAが設けられる第1デバイス3と、スイッチ回路SWが設けられる第2デバイス4と、第1デバイス3及び4第2デバイスが搭載される基板2と、を備える構成であり、第2デバイス4は、高周波信号の出力経路として、アンテナスイッチ回路ANTSWを有している。第1デバイス3は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタで構成されるHBTデバイスであり、第2デバイス4は、シリコントランジスタで構成されるシリコンデバイスである。
【0041】
この構成では、スイッチ回路SWと高周波信号の出力経路であるアンテナスイッチ回路ANTSWとが第2デバイス4のダイ上に構成されている。このため、第1デバイス3由来のノイズ成分である高周波信号の高調波成分が第2デバイス4上の高周波信号の出力経路に結合し、歪特性が劣化する可能性がある。
【0042】
実施形態に係る高周波回路1では、第1コンデンサC1とインダクタLとが直列接続されたLC回路5の一端が電源電圧の供給経路に接続され、第2モードにおいて他端が第2デバイス4に設けられたスイッチ回路SWを介して接地される。インダクタLは、例えば基板2に設けられる導体で構成されるスパイラルインダクタであっても良いし、SMDで構成される態様であっても良い。これにより、第1デバイス3由来のノイズ成分の伝搬経路上において、高周波信号の高調波成分の周波数帯域が減衰し、第2デバイス4上の高周波信号の出力経路への高調波成分の結合が抑制される。これにより、歪特性の劣化を抑制することができる。
【0043】
なお、上記した実施形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本開示は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本開示にはその等価物も含まれる。
【0044】
本開示は、上述したように、あるいは、上述に代えて、以下の構成をとることができる。
【0045】
(1)本開示の一側面の高周波回路は、エンベロープトラッキング方式により電力増幅を行う第1モードと、平均電力トラッキング方式により電力増幅を行う第2モードと、を切り替えて高周波信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路の電源供給経路に一端が接続され、他端がスイッチ回路を介して接地されるLC回路と、を備え、前記LC回路は、第1コンデンサと、前記第1コンデンサに直列接続されるインダクタと、を備え、前記スイッチ回路は、前記第1モードにおいてオフ制御され、前記第2モードにおいてオン制御される。
【0046】
(2)上記(1)の高周波回路において、前記増幅回路の電源供給経路に一端が接続され、他端が接地された第2コンデンサをさらに備える。
【0047】
(3)上記(1)又は(2)の高周波回路において、前記増幅回路が設けられる第1デバイスと、前記スイッチ回路が設けられる第2デバイスと、前記第1デバイス及び前記第2デバイスが搭載される基板と、を備え、前記第2デバイスは、前記増幅回路により増幅された高周波信号の出力経路を有する。
【0048】
(4)上記(3)の高周波回路において、前記第1デバイスは、ヘテロ接合バイポーラトランジスタで構成されるHBTデバイスであり、前記第2デバイスは、シリコントランジスタで構成されるFETデバイスである。
【0049】
(5)上記(3)又は(4)の高周波回路において、前記インダクタは、前記基板に設けられる導体で構成されるスパイラルインダクタである。
【0050】
(6)上記(3)又は(4)の高周波回路において、前記インダクタは、前記基板上に設けられる表面実装部品である。
【0051】
本開示により、増幅回路で発生する高調波成分が出力信号経路に結合することによる歪特性の劣化を抑制することができる高周波回路を実現することができる。
【符号の説明】
【0052】
1,1a 高周波回路(フロントエンドモジュール)
2 基板
3 第1デバイス(HBTデバイス)
4 第2デバイス(シリコンデバイス)
ANT アンテナ端子
ANTSW アンテナスイッチ回路
C1 第1コンデンサ
C2 第2コンデンサ
MN 整合回路
L インダクタ
PA パワーアンプ回路
SW スイッチ回路
TX 入力端子
Vcc 電源端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9