(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051956
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/33 20060101AFI20240404BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H01G4/33 102
H01G4/30 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158360
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】永田 真己
(72)【発明者】
【氏名】清水 康弘
(72)【発明者】
【氏名】柳井 創太
(72)【発明者】
【氏名】白井 暢明
(72)【発明者】
【氏名】井上 翼
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB01
5E001AC01
5E001AC09
5E001AE02
5E001AE03
5E082AB01
5E082EE05
5E082EE23
5E082EE30
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG26
5E082FG27
(57)【要約】
【課題】ファイバー状炭素材料を用いたキャパシタにおいて、非オーミックな挙動が低減されたキャパシタを実現する。
【解決手段】導電性の基板と、前記基板上に配置された複数の金属触媒粒子と、前記複数の金属触媒粒子と接触している複数のファイバー状炭素材料と、前記基板の表面および前記ファイバー状炭素材料の表面を被覆する、導電性のアモルファスカーボン層と、前記アモルファスカーボン層の表面を被覆する誘電体層と、前記誘電体層の表面を被覆する導電体層と、を備え、前記ファイバー状炭素材料は、前記アモルファスカーボン層を介して、前記基板と電気的に接続されている、キャパシタ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の基板と、
前記基板上に配置された複数の金属触媒粒子と、
前記複数の金属触媒粒子と接触している複数のファイバー状炭素材料と、
前記基板の表面および前記ファイバー状炭素材料の表面を被覆する、導電性のアモルファスカーボン層と、
前記アモルファスカーボン層の表面を被覆する誘電体層と、
前記誘電体層の表面を被覆する導電体層と、を備え、
前記ファイバー状炭素材料は、前記アモルファスカーボン層を介して、前記基板と電気的に接続されている、キャパシタ。
【請求項2】
前記アモルファスカーボン層において、前記基板の表面を被覆する部分の厚さが、前記金属触媒粒子の前記基板の厚さ方向の大きさより大きい、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記アモルファスカーボン層において、前記ファイバー状炭素材料の表面を被覆する部分と、前記基板の表面を被覆する部分とが、同じ結晶性を有する、請求項1または2に記載のキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャパシタ、より詳細には、導電体-誘電体-導電体の構造を有するキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファイバー状部材を利用してキャパシタを製造できることが知られている。例えば、特許文献1には、基板(ベース面)上にナノファイバーを形成し、その表面上に、下部プレート(金属)、絶縁層、上部プレート(金属)を順次形成することにより、金属-絶縁体-金属(MIM)の構造を有するキャパシタを形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】R. Pezone et al. ”The influence of H2 and NH3 on catalyst nanoparticle formation and carbon nanotube growth”, Carbon, Volume 170, December 2020, p.384-393
【非特許文献2】Chang Liu and Hui-Ming Cheng, ”Controlled Growth of Semiconducting and Metallic Single-Wall Carbon Nanotubes”, J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, p.6690-6698
【非特許文献3】A. C. Ferrari and J. Robertson, “Interpretation of Raman spectra of disordered and amorphous carbon”, PHYSICAL REVIEW B Vol.61(20) (2000) p.14095
【非特許文献4】Lin Z. et al.” In-Situ Welding Carbon Nanotubes into a Porous Solid with Super-High Compressive Strength and Fatigue Resistance”, Sci Rep 5, 11336 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電性のファイバー状部材として、例えば、垂直配向カーボンナノチューブ(Vertically aligned carbon nanotubes、以下、「VACNT」とも言う)を利用することができる。VACNTは、基板上に付着した金属触媒粒子を核として成長する。
【0006】
VACNTは、金属触媒粒子を介して、導電性の基板と電気的に接続され、互いに同一の電位または電圧になる。そのため、VACNTの表面上に誘電体層を形成し、更に導電体層を形成すれば、導電体-誘電体-導電体の構造を有するキャパシタを形成することができる。かかる構造を有するキャパシタは、VACNTの大きい比表面積により、大きい容量密度を得ることができる。
【0007】
しかしながら、VACNTを用いたキャパシタにおいて、非オーミックな挙動が見られる場合がある。非オーミックな挙動は、キャパシタ特性を低下させる。
【0008】
本開示の目的は、ファイバー状炭素材料を用いたキャパシタにおいて、非オーミックな挙動が低減されたキャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の要旨によれば、
導電性の基板と、
前記基板上に配置された複数の金属触媒粒子と、
前記複数の金属触媒粒子と接触している複数のファイバー状炭素材料と、
前記基板の表面および前記ファイバー状炭素材料の表面を被覆する、導電性のアモルファスカーボン層と、
前記アモルファスカーボン層の表面を被覆する誘電体層と、
前記誘電体層の表面を被覆する導電体層と、を備え、
前記ファイバー状炭素材料は、前記アモルファスカーボン層を介して、前記基板と電気的に接続されている、キャパシタが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ファイバー状炭素材料を用いたキャパシタにおいて、非オーミックな挙動が低減されたキャパシタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態1におけるキャパシタの概略断面模式図である。
【
図2】本開示の実施形態2におけるキャパシタの概略断面模式図である。
【
図3】本開示の実施形態3におけるキャパシタの概略断面模式図である。
【
図4】本開示の実施形態4におけるキャパシタの概略断面模式図である。
【
図5】本開示の実施形態5におけるキャパシタの概略断面模式図である。
【
図6】本開示の実施形態6におけるキャパシタの概略断面模式図である。
【
図7】実施例1で作製された構造体のI-Vカーブ特性を示すグラフである。
【
図8】実施例2で作製された構造体のI-Vカーブ特性を示すグラフである。
【
図9】比較例1で作製された構造体のI-Vカーブ特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一態様であるキャパシタを図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。本開示はこれら実施形態に限定されない。
【0013】
<実施形態1>
図1は、実施形態1におけるキャパシタの概略断面模式図である。
図1は、基板10の厚さ方向に沿った断面を示す。図中、基板10の厚さ方向をZ方向とする。基板10の面内方向の一例であって、Z方向に直交する方向をX方向とする。キャパシタ1を、X方向に延びる直線とZ方向に延びる直線とで形成された面で切断することにより得られる面をXZ断面とする。
【0014】
Z方向において、基板10からアモルファスカーボン層13に向かう方向を上方向という場合がある。要素の上側とは、要素の上方向の側をいう。Z方向において、アモルファスカーボン層13から基板10に向かう方向を下方向という場合がある。要素の下側とは、要素の下方向の側をいう。
【0015】
図1に示すように、キャパシタ1は、導電性の基板10と、基板10上に配置された複数の金属触媒粒子11と、複数の金属触媒粒子11と接触している複数のファイバー状炭素材料12と、基板10の表面10aおよびファイバー状炭素材料12の表面を被覆する、導電性のアモルファスカーボン層13(以下、単にアモルファスカーボン層13と称する場合がある。)と、アモルファスカーボン層13の表面を被覆する誘電体層14と、誘電体層14の表面を被覆する導電体層15と、を備える。
【0016】
ファイバー状炭素材料12は、金属触媒粒子11を介して基板10に接合している。より詳細には、ファイバー状炭素材料12は、金属触媒粒子11を核として基板10の表面10a上で、直接合成されている。
【0017】
ファイバー状炭素材料12は導電性を有するため、金属触媒粒子11を介して基板10と電気的に接続することができる。しかしながら、ファイバー状炭素材料12がカーボンナノチューブである場合などには、ファイバー状炭素材料12は半導体として振る舞うことがある。半導体的に挙動するファイバー状炭素材料12と金属触媒粒子11との間には、半導体/金属接合が形成され、ファイバー状炭素材料12と金属触媒粒子11との界面にショットキー障壁が生じる。これにより、キャパシタのI-V特性に非オーミックな挙動が現れる。
【0018】
ここで、ファイバー状炭素材料12の半導体的な挙動は、その端部で発現し易いことが判明した。この知見に基づき、ファイバー状炭素材料12の端部以外の部分(以下、主体部分と称する場合がある。)と基板10とを、アモルファスカーボン層13を介して、電気的に接続させることを着想した。
【0019】
本開示のキャパシタ1において、ファイバー状炭素材料12の表面は、導電性のアモルファスカーボン層13で被覆されている。さらにこのアモルファスカーボン層13は、連続して、基板10の表面10aを被覆している。上記の構成よって、ファイバー状炭素材料12の主体部分が、アモルファスカーボン層13を介して、基板10と電気的に接続される。これにより、ファイバー状炭素材料12の主体部分とアモルファスカーボン層13とがオーミック接触することができる。よって、ファイバー状炭素材料12の端部と金属触媒粒子11との間の非オーミック接触の影響が小さくなり、その結果、非オーミックな挙動が低減される。
【0020】
以下、各構成要素について説明する。
≪基板≫
基板10は、互いに対向する2つの主面(表面10aおよび裏面10b)を有し、例えば板状(基板)、箔状、フィルム状、ブロック状などの形態であり得る。少なくとも基板10の表面10aが導電性を有していればよい。
【0021】
基板10を構成する材料は、導電性を有し、複数のファイバー状炭素材料12と電気的に接続可能である限り、適宜選択され得る。基板10は、非導電性基板と、金属薄膜との積層体であってよく、基板10全体が、銅、アルミニウム、SUSなどの金属材料により形成されていてもよい。金属薄膜の材料としては、例えば、チタン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケルが挙げられる。基板10は、一種の材料から成っていても、二種以上の材料の混合物から成っていても、二種以上の材料から構成される複合体であってもよい。金属材料からなる基板10は、外部とのコンタクトとして利用し易く、抵抗値を低くでき、高温に耐え得る。
【0022】
基板10の厚さは、特に限定されず、キャパシタ1の用途により様々であり得る。基板10は、外部とコンタクトするための電極や、電気伝導を確保するための配線が設けられてもよい。
【0023】
≪金属触媒粒子≫
金属触媒粒子11としては、たとえば、鉄、ニッケル、白金、コバルト、またはこれらを含む合金が挙げられる。金属触媒粒子11は、独立した球状体あるいは半球体であり得る。
図1に示すように、複数の金属触媒粒子11は、連結していてもよい。
【0024】
金属触媒粒子11の大きさは特に限定されず、基板10の種類、金属触媒粒子11の種類、金属触媒の加熱条件等に応じて適宜設定される。金属触媒粒子11のZ方向の大きさ(以下、高さHと称する。)は、例えば、0.1nm以上300nm以下である。高さHは、10nm以上であってよく、20nm以上であってよい。高さHは、200nm以下であってよく、50nm以下であってよい。金属触媒粒子11の大きさについては、非特許文献1が参照できる。
【0025】
金属触媒粒子11の高さHは、次のようにして測定される。まず、キャパシタ1に空間(典型的には、導電体層15の露出表面の形状に対応した空間)が存在する場合は、当該空間を任意の適切な樹脂で埋設する。次いで、キャパシタ1のXZ断面を、研磨により露出させる。得られたXZ断面(No.1)を、走査電子顕微鏡(SEM)で観察する。SEM画像において、金属触媒粒子11の最も高い点と基板10の表面10aとの間のZ方向の距離を測定する。この距離が、金属触媒粒子11の高さである。かかる操作を、複数の10個以上、好ましくは20個以上の金属触媒粒子11に対して繰り返して、複数の金属触媒粒子11の高さを測定し、それらの平均値を、金属触媒粒子11の高さHとする。
【0026】
≪ファイバー状炭素材料≫
本開示において、ファイバー状炭素材料12は、その長手方向寸法(長さ)が該長手方向に垂直な断面最大寸法に比して(好ましくは著しく)大きいもの、概略的には細長い糸状のもの、であれば特に限定されない。
【0027】
ファイバー状炭素材料12の平均長さは、面積あたりの容量密度を大きくできる点で、より長くてよい。ファイバー状炭素材料12の平均長さは、例えば、数μm以上、20μm以上、50μm以上、100μm以上、500μm以上、750μm以上、1000μm以上、または2000μm以上であり得る。ファイバー状炭素材料12の平均長さの上限は適宜選択され得るが、ファイバー状炭素材料12の長さは、例えば、10mm以下、5mm以下、または3mm以下であり得る。一態様において、ファイバー状炭素材料12の平均長さは50μm以上である。ファイバー状炭素材料12の平均長さは、50μm以上3mm以下であってよい。
【0028】
ファイバー状炭素材料12の直径は、例えば、0.1nm以上、1nm以上、または10nm以上であり得る。ファイバー状炭素材料12の直径は、例えば、1nm以上、または10nm以上であり得る。ファイバー状炭素材料12の直径は、1000nm未満、800nm以下、または600nm以下であり得る。
【0029】
ファイバー状炭素材料12の直径は、上記のXZ断面(No.1)から測定される。上記のSEM画像において、孤立した1本のファイバー状炭素材料12であって、該ファイバー状炭素材料12の長手方向に沿った中心部(理想的には中心線)が現れており、該ファイバー状炭素材料12の表面を被覆するアモルファスカーボン層13、誘電体層14および導電体層15(さらには、各要素の境界)を識別できるものを選択する。選択されたファイバー状炭素材料12の外径D1を測定する。かかる操作を繰り返して10本以上、好ましくは20本以上のファイバー状炭素材料12の外径D1を測定し、それらの平均値を、ファイバー状炭素材料12の直径とする。
【0030】
ファイバー状炭素材料12は、好ましくは、導電性のナノファイバー(直径がナノスケール(1nm以上1000nm未満)のもの)である。導電性のナノファイバーは、例えば導電性のナノチューブ(中空、好ましくは円筒状)または導電性のナノロッド(中実、好ましくは円柱状)であってよい。導電性(半導電性を含む)を有するナノロッドは、ナノワイヤとも称される。
【0031】
本開示に利用可能な導電性のナノファイバーとしては、例えば、カーボンナノファイバーが挙げられる。本開示に利用可能な導電性のナノチューブとしては、例えば、金属系ナノチューブ、有機系導電性ナノチューブ、無機系導電性ナノチューブが挙げられる。典型的には、導電性のナノチューブは、カーボンナノチューブ、またはチタニアカーボンナノチューブであり得る。本開示に利用可能な導電性のナノロッド(ナノワイヤ)としては、例えば、シリコンナノワイヤ、銀ナノワイヤが挙げられる。
【0032】
ファイバー状炭素材料12は、カーボンナノチューブであってよい。カーボンナノチューブは、導電性および熱伝導性を有する。
【0033】
カーボンナノチューブのカイラリティは、特に限定されず、半導体型または金属型のいずれであってもよく、または、これらを混合して用いてもよい。抵抗値を低減する観点からは、金属型の比率が高いほうが好ましい。
【0034】
カーボンナノチューブの層数は、特に限定されず、1層のSWCNT(single-walled carbon nanotube)または2層以上のMWCNT(multi-walled carbon nanotube)のいずれであってもよい。SWCNTは半導体的であり得、一方でMWCNTは金属的であることが知られている(非特許文献2参照)。ただし、MWCNTは、多層の部分と1層の部分とを含み得るため、MWCNTであっても、特にその端部において半導体的な挙動が見られる場合がある。よって、ファイバー状炭素材料12が、SWCNTであっても、MWCNTであっても、本開示の効果が得られる。
【0035】
複数のファイバー状炭素材料12は、いわゆる垂直配向カーボンナノチューブ(VACNT)であってよい。VACNTは、大きな比表面積を有する。
【0036】
≪アモルファスカーボン層≫
炭素は、sp3、sp2、spと呼ばれる3種類の混成軌道を形成し得る。アモルファスカーボン層13は、sp3混成軌道を持つ結合(sp3結合)およびsp2混成軌道を持つ結合(sp2結合)によって結合した、複数の炭素原子からなる。sp2結合によって、導電性が発現される。sp3結合およびsp2結合を有するアモルファスカーボン層13は、半導体的挙動を示さず、導電体として振る舞う。アモルファスカーボン層13は、金属材料が有する室温(20℃)における電気伝導率と同等の電気伝導率を有し、具体的には、100μΩ・cm程度の電気伝導率を有する。
【0037】
本開示で用いられるアモルファスカーボン層13において、sp2結合が含まれる限り、sp2結合とsp3結合との割合は特に限定されない。sp2結合の有無は、例えば、ラマン分析によって確認できる。ラマンスペクトルにおいて、1580cm-1付近にあるピーク(Gバンド)が見られる場合、sp2結合が存在している。sp3結合の存在は、同じくラマンスペクトルにおける、1350cm-1付近にあるピーク(Dバンド)の有無によって確認できる。
【0038】
sp2結合とsp3結合との比率は、例えば、GバンドおよびDバンドのピーク高さによって把握できる。sp2結合とsp3結合との比率はまた、X線光電子分光(XSP)分析によっても確認できる。sp2結合の比率が高いほど、導電性が高いと言える。
【0039】
アモルファスカーボン層13を形成するアモルファスカーボンは、sp3結合の割合の高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)であってよく、sp2結合の割合の高いグラファイトライクカーボン(GLC)であってよく、その他のポリマーライクカーボン(PLC)であってよい。アモルファスカーボンは、力学的特性および導電特性等に応じて、適宜選択される。なかでも、アモルファスカーボン層13は、GLCを含んでいてよい。DLCとGLCとPLCとの関係については、非特許文献3における3元相図が参照できる。
【0040】
ファイバー状炭素材料12は、通常、その製造方法に起因して、一方の端部と他方の端部との結晶性が異なり得る。ファイバー状炭素材料12と同じ炭素材料であるアモルファスカーボンを用いることにより、ファイバー状炭素材料12の結晶性(特に、結晶性のバラツキ)に関わらず、ファイバー状炭素材料12表面に均質なアモルファスカーボン層13が形成される。アモルファスカーボン層13が均質であるとは、アモルファスカーボン層13の結晶性が一様であることを意味する。
【0041】
アモルファスカーボン層13が均質であることにより、これを被覆する誘電体層14の表面状態もまた一様になる。誘電体層14の表面状態が一様であると、誘電体層14の絶縁特性(代表的には、耐電圧)が向上する。
【0042】
アモルファスカーボン層13において、ファイバー状炭素材料の表面を被覆する部分(以下、第1部分131と称する。)と、基板10の表面10aを被覆する部分(以下、第2部分132と称する。)とは、同じ結晶性を有し得る。
【0043】
結晶性は、X線電子線分光で得られる光電子スペクトルにより評価できる。光電子スペクトルにおいて、縦軸は、放出光電子強度を示し、横軸は結合エネルギー値を示す。sp2結合とsp3結合は、各々異なる結合エネルギーを有しており、これらの結合エネルギーは近接しているため、二つのピークが重なり、単一のC1sピークとして観測される。単一の結合からなる結晶性の高いカーボンであれば、C1sピークの半値幅は小さくなり、半値幅が同程度であれば、結晶性も同じであると理解できる。
【0044】
アモルファスカーボン層13の第1部分131のC1sスペクトルの半値幅W1と、第2部分132のC1sスペクトルの半値幅W2とは、下記の関係式:
0.5≦W1/W2≦2.0
を満たし得る。この場合、アモルファスカーボン層13の第1部分131と第2部分132とは、同じ結晶性を有すると言える。
【0045】
アモルファスカーボン層13の厚さは、被覆対象に応じて異なっていてよい。アモルファスカーボン層13の第1部分131の厚さT1(図示省略)は、5nm以上1,000nm以下であってよい。厚さT1を5nm以上とすることにより、オーミック接触が担保され易い。厚さT1を1,000nm以下とすることにより、大きな静電容量を確保し易くなる。厚さT1は、10nm以上であってよく、20nm以上であってよい。厚さT1は、500nm以下であってよく、200nm以下であってよい。
【0046】
厚さT1は、上記のXZ断面(No.1)から測定される。上記のSEM画像を用いて、ファイバー状炭素材料12の外径D1に加えて、ファイバー状炭素材料12の表面を被覆するアモルファスカーボン層13の外径D3を測定する。これら外径D2およびD3の差を2で割った値((D3-D2)/2)が、当該ファイバー状炭素材料12の表面を被覆するアモルファスカーボン層13の厚さである。かかる操作を繰り返して10本以上、好ましくは20本以上のファイバー状炭素材料12におけるアモルファスカーボン層13の厚さを測定し、それらの平均値を、ファイバー状炭素材料12の表面を被覆するアモルファスカーボン層13(第1部分131)の厚さT1とする。
【0047】
アモルファスカーボン層13の第2部分132の厚さT2は、5nm以上1,000nm以下であってよい。厚さT2を5nm以上とすることにより、オーミック接触が担保され易い。厚さT2を1,000nm以下とすることにより、ファイバー状炭素材料12がアモルファスカーボン層13の第2部分132に埋もれてしまうことが抑制されて、容量密度を確保しやすくなる。厚さT2は、10nm以上であってよく、20nm以上であってよい。厚さT2は、500nm以下であってよく、200nm以下であってよい。厚さT1,T2は、T1<T2の関係を満たしてよい。
【0048】
厚さT2もまた、上記のXZ断面(No.1)から測定される。上記のSEM画像を用いて、基板10の表面10aを被覆するアモルファスカーボン層13の任意の点から基板10の表面10aまでの、Z方向の距離を測定する。これが、基板10の表面10aを被覆するアモルファスカーボン層13の厚さである。かかる操作を、異なる10点、好ましくは20点において繰り返して、基板10の表面10aを被覆するアモルファスカーボン層13の厚さを測定する。これらの平均値を、基板10の表面10aを被覆するアモルファスカーボン層13(第2部分132)の厚さT2とする。
【0049】
ファイバー状炭素材料12とアモルファスカーボン層13との境界は、SEM画像で確認することができる。
【0050】
選択されたファイバー状炭素材料12において、同時に、誘電体層14の外径D4および導電体層15の外径D5を測定しておけば、同様の手法により、誘電体層14および導電体層15の厚さが得られる。
【0051】
アモルファスカーボン層13は、さらに、金属触媒粒子11の表面を覆っていてもよく、金属触媒粒子11の表面を覆っていなくてもよい。
【0052】
本実施形態において、厚さT2は、金属触媒粒子11の高さHより大きい。この場合、金属触媒粒子11はアモルファスカーボン層13により被覆されるため、基板10から剥落することが防止される。厚さT2/高さH≧1.05であってよく、厚さT2/高さH≧1.1であってよい。
【0053】
≪誘電体層≫
誘電体層14を構成する誘電性材料としては、適宜選択され得る。例えば、二酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸チタン酸鉛が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を(例えば積層して)用いてもよい。
【0054】
誘電体層14の厚さは、10nm以上であってよく、15nm以上であってよい。誘電体層の厚さを10nm以上とすることにより、絶縁性を高めることができ、漏れ電流を小さくすることが可能になる。誘電体層14の厚さは、1μm以下であってよく、100nm以下であってよく、50nm以下であってよい。誘電体層14の厚さを1μm以下とすることにより、より大きな静電容量を得ることが可能になる。一態様において、誘電体層14の厚さは、10nm以上1μm以下である。
【0055】
誘電体層14は、ファイバー状炭素材料12の表面(ただし、基板10と直接接合している領域を除く)に加えて、ファイバー状炭素材料12の配置されていない基板10の表面10aを被覆していてよい。
【0056】
≪導電体層≫
導電体層15は、ファイバー状炭素材料12の対向電極として機能する。
導電体層15を構成する導電性材料としては、例えば、金属、導電性高分子(導電性を有するおよび/または導電性が付与された高分子材料であり、有機導電性材料とも称される)、酸化亜鉛などの導電性を有する半導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。導電体層15は、導電性材料が異なる複数の層の積層体であってもよい。
【0057】
金属としては、例えば、銀、金、銅、白金、アルミニウム、またはこれらの少なくとも2種を含む合金が挙げられる。導電性高分子としては、例えば、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)、PPy(ポリピロール)、PANI(ポリアニリン)、PESOT(3,4-エチレンジオキシチオフェン)などが挙げられる。導電性高分子には、適宜、有機スルホン酸系化合物、例えばポリビニルスルホン酸、PSS(ポリスチレンスルホン酸)、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸といったドーパントがドープされ得る。
【0058】
導電体層15の厚さは、3nm以上であってよく、10nm以上であってよい。導電体層15の厚さを3nm以上とすることにより、導電体層15自体の抵抗値を小さくすることができる。導電体層15の厚さは、500nm以下であってよく、100nm以下であってよい。一態様において、導電体層15の厚さは、3nm以上500nm以下である。
【0059】
本実施形態において、導電体層15には、複数のファイバー状炭素材料12の間の空間に対応する空隙(またはトレンチ構造)が設けられ得る。しかしながら、導電体層15の厚さは、より厚いものであってもよく、例えば空隙(トレンチ構造)がなくなっていてもよい。
【0060】
(製造方法)
本実施形態のキャパシタ1は、例えば、以下を含む製造方法によって得ることができる:
(a)基板10の表面10aに触媒を付着させた後、当該触媒を核として、基板10の表面10aに複数のファイバー状炭素材料12を成長させること、
(b)ファイバー状炭素材料12および金属触媒粒子11の表面と、基板10の表面10aを被覆するアモルファスカーボン層13を形成すること、
(c)アモルファスカーボン層13の表面を被覆する誘電体層14を形成すること、および
(d)誘電体層14の表面を被覆する導電体層15を形成すること。
以下、工程(a)~(d)についてより詳細に説明する。
【0061】
工程(a)
基板10の表面10aに金属触媒を付着させた後、当該金属触媒を核として、基板10の表面10aに複数のファイバー状炭素材料12を成長させる。これにより、基板10上に配置され、かつ、基板10と一方の端部にて直接接合している複数の垂直配向カーボンナノチューブ(VACNT)が得られる。
【0062】
基板10は、VACNTを成長させるための合成基板であってよい。一般的には、合成基板の材料は、特に限定されず、例えば、酸化シリコン、シリコン、ガリウム砒素、アルミニウム、SUSなどを用いることができる。本実施形態では、合成基板として、導電性の基板10を使用する。
【0063】
まず、基板10の表面10aに金属触媒を付着させる。基板10に金属触媒を付着させる方法には、化学気相成長法(CVD)、スパッタ、物理気相成長法(PVD)、原子層堆積法(ALD)などを使用でき、場合により、かかる技術を、リソグラフィやエッチングなどの技術と組み合わせてもよい。
【0064】
続いて、金属触媒を加熱する。これにより、金属触媒が活性化するとともに、凝集および組織化して、球状体あるいは半球体の金属触媒粒子11が形成される。加熱は、金属触媒粒子11がVACNTの成長に適した大きさになるまで行われてよい。複数の金属触媒粒子11が連結していてもよい。
【0065】
そして、金属触媒粒子11を核として、基板10上にVACNTを成長させる(直接合成する)。VACNTを成長させる方法は、特に限定されず、CVDやプラズマ強化CVDなどを、必要に応じて加熱下にて用いることができる。使用する原料ガスは、特に限定されず、例えば一酸化炭素、メタン、エチレンおよびアセチレンからなる群より選択される少なくとも一種、あるいは、これらの少なくとも一種と水素および/またはアンモニアとの混合物などを用いることができる。所望される場合には、VACNTを成長させる際の周囲雰囲気中に、水分を存在させてもよい。
【0066】
VACNTの下側の端部は、基板10に金属触媒粒子11を介して固定されている固定端であり、成長点である。VACNTの上側の端部は、自由端である。VACNTの長さおよび径は、ガス濃度、ガス流量、温度等のパラメータに応じて異なり得る。即ち、これらのパラメータを適宜選択することにより、VACNTの長さおよび径を調整することができる。
【0067】
工程(b)
次に、ファイバー状炭素材料12および金属触媒粒子11の表面と、基板10の表面10aとを被覆するアモルファスカーボン層13を形成する。
【0068】
アモルファスカーボン層13は、VACNTを成長させる手法と同様の手法を用いて、条件を変えることにより合成することができる。例えば、ガス流量を多くしたり、原料ガスの分圧を大きくしたりすることにより、アモルファスカーボン層13をVACNTや基板10の表面10aに堆積させる。アモルファスカーボン層13の合成条件は、非特許文献4が参照できる。
【0069】
アモルファスカーボン層13の第1部分131の厚さT1と第2部分132の厚さT2との関係は、ファイバー状炭素材料12の平均長さや数密度、アモルファスカーボン層13の堆積条件等によって、制御できる。例えば、ファイバー状炭素材料12が短いほど(例えば、平均長さが100μm以下、特には10μm以下)、あるいは、数密度が低いほど(例えば、10-9本/cm以下、特には10-10本/cm以下)、原料ガスが基板10の表面10aに到達し易くなるため、第2部分132の厚さT2が、第1部分131の厚さT1より厚くなる。一方、原料ガスの分圧が低い場合、原料ガスが基板10の表面10aに到達し難くなるため、第2部分132の厚さT2は、第1部分131の厚さT1より薄くなり易い。
【0070】
上記方法以外にも、基板10の表面10aにアモルファスカーボンを堆積させた後、金属触媒を付着し、その後再びアモルファスカーボン層13を形成したり、アモルファスカーボン層13を形成した後、熱酸化処理を行ったりすることにより、第2部分132の厚さT2を第1部分131の厚さT1より厚くすることができる。後者の方法では、外気に触れ易い第1部分131が先に酸化されるため、厚さT1が薄くなる。
【0071】
工程(c)
続いて、アモルファスカーボン層13の表面を被覆する誘電体層14を、液相成膜法または気相成膜法(代表的には、スパッタ法)により形成する。
【0072】
液相成膜法は、例えば、ゾルゲル法やメッキ等であり得る。誘電体層14が金属酸化物から成る場合には、メッキと表面酸化処理とを組み合わせた方法を用いてもよい。
【0073】
液相成膜法の実施条件を適切に選択ないし設定することで、形成される誘電体層14の厚さを制御することができる。例えば、液相成膜法に使用する液の仕込み組成、仕込みに使用する溶媒(例えば水、エタノール、イソプロパノール、アセトン)、成膜時間、撹拌速度、温度などを適切に選択ないし設定すればよい。
【0074】
その後、乾燥させて溶媒を除去することにより、誘電体層14が形成される。
【0075】
工程(d)
続いて、誘電体層14の表面を被覆する導電体層15を形成する。
【0076】
導電体層15の成膜法は、特に限定されず、液相成膜法、気相成膜法およびそれらの組み合わせを用いてよい。液相成膜法は、例えば、ゾルゲル法、メッキ等であり得る。気相成膜法は、ALD、スパッタ、CVD等であり得る。
【0077】
例えば、導電体層15は、導電性高分子を用いて液相成膜法で形成することができる。より詳細には、導電性高分子を有機溶媒に溶解または分散させた液状組成物を所定の表面/部分に適用/供給する(例えば塗布または浸漬等する)ことで、導電体層15を形成することができる。導電性高分子は、誘電体層14で被覆した複数のファイバー状炭素材料12の間に形成される空間に浸透させ易く、該空間の深部(例えば底部)においても導電体層15を適切に形成できる。
【0078】
以上により、
図1に示すキャパシタ1を製造することができる。
【0079】
<実施形態2>
図2は、実施形態2におけるキャパシタの概略断面模式図である。
図2は、
図1に対応する断面である。実施形態2は、実施形態1とは、一部の金属触媒粒子11の配置が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、実施形態1と同じ構成であり、実施形態1と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図2に示すように、実施形態2のキャパシタ1Aでは、一部の金属触媒粒子11が、ファイバー状炭素材料12の基板10側とは反対側の、上側の端部に配置されている。
【0081】
上側の端部で金属触媒粒子11に接触するファイバー状炭素材料12は、基板10の表面10aにファイバー状炭素材料12を成長させる際に形成される。ファイバー状炭素材料12が金属触媒粒子11を核として成長するとき、成長点が金属触媒粒子11の下側になることがある。この場合、ファイバー状炭素材料12は、基板10と金属触媒粒子11との間で成長していくため、金属触媒粒子11は、ファイバー状炭素材料12の上側の端部に配置される。金属触媒粒子11の上側が成長点になる場合が多いが、成長点が金属触媒粒子11の下側になるか上側になるかは、合成の条件によって制御し得る。
【0082】
上端に配置された金属触媒粒子11は、その後の工程において脱落し易い。脱落した金属触媒粒子11は、ファイバー状導電性部材21の主体部分に付着し得る。この場合、ファイバー状導電性部材21の表面に凹凸が生じることになるため、誘電体層22が一様に形成され難く、一部が薄くなることがある。誘電体層22が薄い部分では、電気的なリークパスが形成され易い。
【0083】
本開示によれば、アモルファスカーボン層13によって、基板10の表面10aおよびファイバー状導電性部材21の表面とともに、金属触媒粒子11の表面も被覆される。よって、金属触媒粒子11の脱落が抑制されて、上記のリークパスの形成が抑制される。
【0084】
<実施形態3>
図3は、実施形態3におけるキャパシタの概略断面模式図である。
図3は、
図1に対応する断面である。実施形態3は、実施形態1とは、一部のファイバー状炭素材料12の配置が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、実施形態1と同じ構成であり、実施形態1と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0085】
図3に示すように、実施形態1のキャパシタ1Bは、両端部がいずれも基板10と接合していないファイバー状炭素材料12(以下、非接合ファイバー状炭素材料と称する。)を有する。非接合ファイバー状炭素材料は、基板10と接合している他のファイバー状炭素材料12(以下、接合ファイバー状炭素材料と称する場合がある。)に接触あるいは接着している。
【0086】
従来、非接合ファイバー状炭素材料は、電極材料としてキャパシタの容量に寄与しない。しかしながら、本開示では、非接合ファイバー状炭素材料は、接合ファイバー状炭素材料と接触しており、かつ両者の表面は、アモルファスカーボン層13で被覆されている。接合ファイバー状炭素材料を被覆するアモルファスカーボン層13は、基板10にまで延伸して、表面10aを被覆している。つまり、非接合ファイバー状炭素材料も、間接的に基板10と電気的に接続しており、電極材料として機能することができる。
【0087】
非接合ファイバー状炭素材料は、基板10の表面10aにファイバー状炭素材料12を成長させる際の、金属触媒粒子11の失活により形成される。金属触媒粒子11が失活すると、CNTの成長が停止し、近隣のCNTに絡まる。近隣のCNTは引き続き成長していくため、この成長に伴って、成長の停止したCNTは、VACNTの先端方向へ引っ張られて、固定端が基板10から離れる。このようにして、非接合ファイバー状炭素材料が形成され得る。
【0088】
<実施形態4>
図4は、実施形態4におけるキャパシタの概略断面模式図である。
図4は、
図1に対応する断面である。実施形態4は、実施形態1とは、アモルファスカーボン層13の第2部分132の厚さが相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、実施形態1と同じ構成であり、実施形態1と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0089】
図4に示すように、実施形態4のキャパシタ1Cにおいて、アモルファスカーボン層13の第2部分132の厚さT
2は、金属触媒粒子11の高さHより薄い。この場合にも、ファイバー状炭素材料12の主体部分とアモルファスカーボン層13とはオーミック接触することができて、非オーミックな挙動は抑制される。
【0090】
<実施形態5>
図5は、実施形態5におけるキャパシタの概略断面模式図である。
図5は、
図1に対応する断面である。実施形態5は、実施形態1とは、導電体層15の厚さ、および、電極引出層20がある点で相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、実施形態1と同じ構成であり、実施形態1と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0091】
図5に示すように、実施形態5のキャパシタ1Dにおいて、導電体層15が、複数のファイバー状炭素材料12の間の空間に対応する空隙(またはトレンチ構造)を埋めるように厚く形成されている。さらに、導電体層15の表面は、電極引出層20により被覆されている。キャパシタ1Dは、回路基板内に埋設されて使用されるのに適している。
【0092】
電極引出層20の材料としては、例えば、炭素材料または金属材料(代表的には、Au、Ag、Al、Cu)を含む導電ペースト、あるいは金属箔が挙げられる。導電ペーストは、必要に応じて樹脂を含んでいてよい。電極引出層20は、異なる複数の層の積層体であってよい。電極引出層20は、例えば、カーボンペーストと銀ペーストと銅箔との積層体であってよい。
【0093】
<実施形態6>
図6は、実施形態6におけるキャパシタの概略断面模式図である。
図6は、
図1に対応する断面である。実施形態6は、実施形態5とは、モールド樹脂30を備える点で相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、実施形態5と同じ構成であり、実施形態5と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0094】
図6に示すように、実施形態6のキャパシタ1Eは、電極引出層20が形成されたキャパシタ1Dの周囲を被覆するモールド樹脂30を備える。樹脂パッケージングされたキャパシタ1Eは、回路基板上に配置されて使用されるのに適している。
【0095】
モールド樹脂30としては、例えば、硬化性樹脂の硬化物、エンジニアリングプラスチックが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステルが挙げられる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミドが挙げられる。モールド樹脂30には、シリカまたはアルミナなどの無機フィラーが分散していてもよい。
【0096】
以上、本開示の6つの実施形態について詳述したが、本開示はこれらに限定されない。例えば、上述した実施形態の各特徴は、任意の2つ以上を組み合わせてよい。
【0097】
本実施形態では、アモルファスカーボン層13が、基板10の表面10aおよびファイバー状炭素材料12の両方の表面全体を被覆しているが、これに限定されない。アモルファスカーボン層13は、基板10の表面10aの一部のみを被覆していてよく、ファイバー状炭素材料12の表面の一部のみを被覆していてよい。
【0098】
本実施形態では、工程(a)において、ファイバー状炭素材料12としてカーボンナノチューブ(CNT)を挙げたが、これに限定されない。ファイバー状炭素材料12は、CNT以外であってよい。
【0099】
本実施形態では、工程(a)において、基板10上にフォレストを設けたが、これに限定されない。フォレストを他の合成基板に設けた後、基板10に転写してもよい。転写後に工程(b)以降を実施すればよい。あるいは、転写前に工程(b)を実施して、転写後に再度、工程(b)を実施すればよい。これにより、基板10の表面10aがアモルファスカーボン層13で被覆される。基板10に導電性の接着層(典型的には、金属材料からなる)を設けておいてもよい。他の合成基板上のファイバー状炭素材料12の上側の端部に金属触媒粒子11が配置されている場合、転写によって、金属触媒粒子11は、基板10とファイバー状炭素材料12との間に配置される。
【実施例0100】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。便宜上、誘電体層および導電体層の形成は省略した。
【0101】
[実施例1]
(1)VACNTの合成
導電性基板の表面上に金属触媒(Fe)を塗布した後、加熱して、金属触媒粒子を得た。金属触媒粒子を備える上記基板をチャンバー内にセットして、加熱した。チャンバー内の温度が900℃に達した後、チャンバー内にメタンガスを供給して、金属触媒粒子を核としてVACNTを成長させた。
【0102】
(2)アモルファスカーボン層の形成
続いて、同じチャンバー内に、分圧が30Torrになるようにメタンガスを供給し、基板、VACNTおよび金属触媒粒子上にアモルファスカーボンを堆積させて、アモルファスカーボン層を備える構造体A1を得た。
【0103】
導電性基板を被覆するアモルファスカーボン層(第2部分)の厚さT2と金属触媒粒子の高さHとは、T2/H≧1.05を満たしていた。
ファイバー状炭素材料12の表面を被覆するアモルファスカーボン層(第1部分)のC1sスペクトルの半値幅W1と、基板10の表面10aを被覆するアモルファスカーボン層13(第2部分)のC1sスペクトルの半値幅W2とは、0.8≦W1/W2≦1.2を満たしており、アモルファスカーボン層13は均質であった。
【0104】
[実施例2]
アモルファスカーボン層の形成において、分圧が50Torrになるようにしたこと以外、実施例1と同様にして、アモルファスカーボン層を形成し、構造体A2を得た。
【0105】
導電性基板を被覆するアモルファスカーボン層(第2部分)の厚さT2と金属触媒粒子の高さHとは、は、T2/H≧1.1を満たしていた。
ファイバー状炭素材料12の表面を被覆するアモルファスカーボン層(第1部分)のC1sスペクトルの半値幅W1と、基板10の表面10aを被覆するアモルファスカーボン層(第2部分)のC1sスペクトルの半値幅W2とは、0.8≦W1/W2≦1.2を満たしており、アモルファスカーボン層13は均質であった。
【0106】
[比較例1]
アモルファスカーボン層を形成しなかったこと以外、実施例1と同様にして、構造体a1を得た。
【0107】
(I-V特性評価)
得られた構造体A1、A2およびa1のI-Vカーブ特性を、
図7,8,9にそれぞれ示す。
図7,8からわかるように、構造体A1およびA2では、正および負のいずれの電圧側においてもI-Vカーブが滑らかな線形である。さらに、
図7からわかるように、構造体A1において、電圧が約+100mVのとき、抵抗値は1.25Ω(26.25Ω/mm
2)であり、電圧が約-100mVのときであっても、抵抗値は2.67Ω(56.07Ω/mm
2)と小さかった。構造体A2はさらに抵抗値が小さく、電圧が約+50mVのとき、抵抗値は0.44Ω(9.24Ω/mm
2)、電圧が約-50mVのとき、抵抗値は0.36Ω(7.56Ω/mm
2)であった。これらより、構造体A1およびA2では、非オーミックな挙動が低減されていることが確認された。
【0108】
一方、
図9からわかるように、構造体a1のI-Vカーブには、電圧0mVの地点で大きな折れ曲がりが見られた。具体的には、電圧が約+100mVのとき、抵抗値は3.8Ω(79.8Ω/mm
2)であるのに対し、電圧が約-100mVのとき、抵抗値は一桁大きい22.9Ω(480.9Ω/mm
2)であって、非オーミックな挙動が確認された。