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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051957
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】放射性物質の収納装置および保管方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/36 20060101AFI20240404BHJP
   G21F 5/06 20060101ALI20240404BHJP
   G21F 5/12 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G21F9/36 501H
G21F9/36 511P
G21F5/06 G
G21F5/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158361
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 和也
(72)【発明者】
【氏名】岡 寛
(57)【要約】
【課題】放射性物質の収納装置および保管方法において、設備コストの増大を抑制可能とする。
【解決手段】放射性物質を収納する収納容器と、給気開閉弁を有して収納容器の内部に気体を供給可能な気体供給ラインと、排気開閉弁を有して収納容器の気体を排出可能な気体排出ラインと、気体排出ラインに設けられる排風機と、収納容器の内部の圧力を検出する圧力検出器と、圧力検出器の検出結果に基づいて給気開閉弁および排気開閉弁を開閉制御すると共に排風機を作動制御する制御装置とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質を収納する収納容器と、
給気開閉弁を有して前記収納容器の内部に気体を供給可能な気体供給ラインと、
排気開閉弁を有して前記収納容器の気体を排出可能な気体排出ラインと、
前記気体排出ラインに設けられる排風機と、
前記収納容器の内部の圧力を検出する圧力検出器と、
前記圧力検出器の検出結果に基づいて前記給気開閉弁および前記排気開閉弁を開閉制御すると共に前記排風機を作動制御する制御装置と、
を備える放射性物質の収納装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記排風機を作動制御することで、前記収納容器の内部を負圧状態に維持する、
請求項1に記載の放射性物質の収納装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記収納容器の内部の圧力が予め設定された圧力上限値を超えると、前記排気開閉弁を開放すると共に、前記排風機を作動する、
請求項1または請求項2に記載の放射性物質の収納装置。
【請求項4】
前記収納容器の内部の水素濃度を検出する水素濃度検出器を有し、
前記制御装置は、前記収納容器の内部の水素濃度が予め設定された水素濃度上限値を超えると、前記給気開閉弁および前記排気開閉弁を開放すると共に、前記排風機を作動する、
請求項1または請求項2に記載の放射性物質の収納装置。
【請求項5】
前記気体供給ラインは、前記給気開閉弁と前記収納容器との間に給気フィルタが設けられ、前記気体排出ラインは、前記排気開閉弁と前記収納容器との間に排気フィルタが設けられる、
請求項1に記載の放射性物質の収納装置。
【請求項6】
地震検出器を有し、
前記制御装置は、前記地震検出器の検出結果に基づいて前記給気開閉弁および前記排気開閉弁を開閉制御する、
請求項1に記載の放射性物質の収納装置。
【請求項7】
前記収納容器は、放射線遮蔽部材により構成される遮蔽容器である、
請求項1に記載の放射性物質の収納装置。
【請求項8】
放射性物質を収納する収納容器の内部を負圧状態に維持する工程と、
前記収納容器の内部の圧力を検出する工程と、
前記収納容器の内部の圧力が予め設定された圧力上限値を超えると前記収納容器の掃気処理を実施する工程と、
を有する放射性物質の保管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射性物質の収納装置および保管方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射性廃棄物などの放射性物質は、専用の収納容器に収納されて閉じ込め性が確保された状態で、所定の保管設備で保管管理される。この場合、放射性物質は、水分を含有している場合、放射線分解により水素が発生する可能性がある。そのため、従来は、収納容器内に空気を供給したり、収納容器内の気体を掃気したりすることで、放射性物質の閉じ込め性と水素の滞留防止の両立を行っている。従来の放射性物質の収納装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-128902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の放射性物質の収納装置は、保管建屋の内部に配置された収納容器に対して空気を供給する一方で、内部の気体を掃気している。そのため、保管建屋に装備される空気圧縮機、排風機、配管、フィルタなどの各種設備は、高い信頼性が必要となり、設備コストが増大してしまうという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、設備コストの増大を抑制可能とする放射性物質の収納装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の放射性物質の収納装置は、放射性物質を収納する収納容器と、給気開閉弁を有して前記収納容器の内部に気体を供給可能な気体供給ラインと、排気開閉弁を有して前記収納容器の気体を排出可能な気体排出ラインと、前記気体排出ラインに設けられる排風機と、前記収納容器の内部の圧力を検出する圧力検出器と、前記圧力検出器の検出結果に基づいて前記給気開閉弁および前記排気開閉弁を開閉制御すると共に前記排風機を作動制御する制御装置と、を備える。
【0007】
また、本開示の放射性物質の保管方法は、放射性物質を収納する収納容器の内部を負圧状態に維持する工程と、前記収納容器の内部の圧力を検出する工程と、前記収納容器の内部の圧力が予め設定された圧力上限値を超えると前記収納容器の掃気処理を実施する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の放射性物質の収納装置および保管方法によれば、設備コストの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の放射性物質の収納装置を表す概略構成図である。
図2図2は、収納容器の掃気処理を実施するためのフローチャートである。
図3図3は、収納容器の監視処理を実施するためのフローチャートである。
図4図4は、異常発生時の対応処理を実施するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0011】
<放射性物質の収納装置>
図1は、本実施形態の放射性物質の収納装置を表す概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、放射性物質の収納装置10は、収納容器11と、気体供給ライン12と、気体排出ライン13と、排風機14と、圧力検出器15と、水素濃度検出器16と、制御装置17とを備える。
【0013】
収納容器11は、所定の位置に1個または複数個配置される。なお、配置する収納容器11の数は限定されない。複数の収納容器11は、間隔を空けて配置される。収納容器11は、内部に放射性物質100として、例えば、放射性廃棄物を収納して密閉状態とする。ここで、放射性物質は、例えば、再処理工場で発生する放射性廃棄物、廃炉作業で発生する放射性廃棄物、原子力プラントで発生する使用済核燃料、などである。収納容器11は、図示しないが、容器本体と蓋とを有する。収納容器11は、遮蔽容器である。内容物に応じて中性子遮蔽機能を有するボロン及びボロン化合物を含む材料またはレジンにより中性子遮へい機能を高める場合も含む。
【0014】
なお、収納容器11は、内部に水素吸着材や水素再結合触媒などを配置することで、水素濃度の上昇を抑制するように構成してもよい。
【0015】
収納容器11は、気体供給ライン12と気体排出ライン13が連結される。気体供給ライン12は、収納容器11の外部の気体(空気)を収納容器11の内部に供給可能である。気体排出ライン13は、収納容器11の内部にある気体を外部に排出可能である。
【0016】
気体供給ライン12は、給気管31と、給気連結管32と、分岐管33と、連結ホース34と、連通管35とを有する。気体供給ライン12は、連通管35に給気開閉弁36と給気エアフィルタ(例えば、HEPAフィルタ)37が設けられる。給気管31は、給気連結管32に連結される。分岐管33は、給気連結管32から複数(本実施形態では、3個)分岐して設けられる。分岐管33は、連結ホース34を介して連通管35が連結される。連通管35は、収納容器11を貫通し、収納容器11の内部に連通する。連通管35は、給気開閉弁36と給気エアフィルタ37が設けられる。ここで、給気エアフィルタ37は、給気開閉弁36と収納容器11との間に設けられる。なお、気体供給ライン12は、給気エアフィルタ37をなくし、給気管31に給気エアフィルタ37を設けてもよい。
【0017】
気体排出ライン13は、排気管41と、排気連結管42と、分岐管43と、連結ホース44と、連通管45とを有する。気体排出ライン13は、連通管45に排気開閉弁46と排気エアフィルタ(例えば、HEPAフィルタ)47が設けられる。排気管41は、排気連結管42に連結される。分岐管43は、排気連結管42から複数(本実施形態では、3個)分岐して設けられる。分岐管43は、連結ホース44を介して連通管45が連結される。連通管45は、収納容器11を貫通し、収納容器11の内部に連通する。連通管45は、排気開閉弁46と排気エアフィルタ47が設けられる。ここで、排気エアフィルタ47は、排気開閉弁46と収納容器11との間に設けられる。なお、気体排出ライン13は、排気エアフィルタ47をなくし、排気管41に排気エアフィルタ47を設けてもよい。
【0018】
排風機14は、気体排出ライン13に設けられる。排風機14は、排気管41に設けられる。
【0019】
圧力検出器15は、収納容器11に設けられ、制御装置17に接続される。圧力検出器15は、収納容器11の内部の圧力を検出する。圧力検出器15は、検出した収納容器11の内部の圧力を制御装置17に出力する。水素濃度検出器16は、収納容器11に設置され、制御装置17に接続される。水素濃度検出器16は、収納容器11の内部の水素濃度を検出する。水素濃度検出器16は、検出した収納容器11の内部の水素濃度を制御装置17に出力する。
【0020】
制御装置17は、排風機14と、給気開閉弁36と、排気開閉弁46と、圧力検出器15と、水素濃度検出器16が接続される。制御装置17は、有線または無線の通信装置により排風機14、給気開閉弁36、排気開閉弁46、圧力検出器15、水素濃度検出器16に接続される。制御装置17は、圧力検出器15の検出結果と水素濃度検出器16の検出結果に基づいて給気開閉弁36および排気開閉弁46を開閉制御すると共に、排風機14を作動制御する。
【0021】
具体的に、制御装置17は、給気開閉弁36および排気開閉弁46を開閉制御すると共に、排風機14を作動制御することで、収納容器11の内部を負圧状態に維持する。また、制御装置17は、収納容器11の内部の圧力が予め設定された圧力上限値を超えると、給気開閉弁36および排気開閉弁46を開放すると共に、排風機14を作動し、収納容器11の内部を掃気する。制御装置17は、収納容器11の内部の水素濃度が予め設定された水素濃度上限値を超えると、給気開閉弁36および排気開閉弁46を開放すると共に、排風機14を作動し、収納容器11の内部を掃気する。
【0022】
収納容器11は、内部が負圧に維持された状態で放射性物質100を収納する。すなわち、収納容器11は、給気開閉弁36と排気開閉弁46が閉止されることで、気体供給ライン12と気体排出ライン13が外部から遮断され、負圧状態が維持される。収納容器11に収容された放射性物質100は、残留している水分や有機物などが放射線により分解して水素などが発生する。水素が発生すると、収納容器11の内部の圧力が上昇すると共に、水素濃度が上昇する。収納容器11は、内部の圧力が上昇すると、負圧状態の維持が困難となる。また、収納容器11は、内部の水素濃度が上昇すると、水素爆発の危険が生じる。
【0023】
そのため、制御装置17は、収納容器11の内部の圧力と水素濃度を監視し、圧力と水素濃度が上限値を超えると、収納容器11の内部の気体を掃気する。その後、制御装置17は、収納容器11の内部を再び負圧状態に維持する。
【0024】
なお、制御装置17は、コントローラであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などにより、記憶部に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。
【0025】
また、制御装置17は、操作装置51と表示装置52が接続される。操作装置51は、作業者が操作可能である。操作装置51は、作業者が操作することで、制御装置17に対して各種の指令信号を入力可能である。操作装置51は、例えば、キーボードやタッチ式のディスプレイなどである。表示装置52は、制御装置17の判定結果や処理内容などを表示する。表示装置52は、例えば、モニタなどである。
【0026】
さらに、制御装置17は、地震検出器53が接続される。地震検出器53は、収納容器11の震度を計測し、制御装置17に出力する。制御装置17は、地震検出器53の検出結果に基づいて給気開閉弁36および排気開閉弁46を開閉制御する。具体的に、制御装置17は、地震検出器53が検出した震度が予め設定された震度上限値を超えると、給気開閉弁36および排気開閉弁46を閉止する。
【0027】
<放射性物質の保管方法法>
本実施形態の放射性物質の保管方法は、放射性物質100を収納する収納容器11の内部を負圧状態に維持する工程と、収納容器11の内部の圧力を検出する工程と、収納容器11の内部の圧力が予め設定された圧力上限値を超えると収納容器11の掃気処理を実施する工程とを有する。
【0028】
<収納容器の掃気処理>
まず、収納容器11の内部を負圧状態とする収納容器11の掃気処理について説明する。図2は、収納容器の掃気処理を実施するためのフローチャートである。
【0029】
図1および図2に示すように、収納容器11は、内部に放射性物質100が収納されている。ステップS11にて、制御装置17は、給気開閉弁36および排気開閉弁46を開放する。ステップS12にて、制御装置17は、排風機14を作動する。すると、排風機14が作動することで、吸引力が気体排出ライン13から収納容器11の内部に作用し、収納容器11の内部の気体が気体排出ライン13を通して外部に排出される。同時に、外部の空気が気体供給ライン12を通して収納容器11の内部に供給される。そのため、収納容器11は、内部の気体が外部に排出され、外部の空気が充填されることで掃気処理がなされる。
【0030】
ステップS13にて、制御装置17は、給気開閉弁36および排気開閉弁46を開放して排風機14を作動してから、予め設定された所定時間が経過したか否かを判定する。ここで、所定時間とは、収納容器11の内部の気体が全て外部に排出され、外部の空気が充填されて入れ替わるまでの時間であり、収納容器11の容積や排風機14の能力に応じて設定され、事前に実験やシミュレーションなどにより求めておく。
【0031】
ステップS13にて、制御装置17は、給気開閉弁36および排気開閉弁46を開放して排風機14を作動してから所定時間が経過していないと判定(No)すると、処理を継続する。一方、制御装置17は、給気開閉弁36および排気開閉弁46を開放して排風機14を作動してから所定時間が経過したと判定(Yes)すると、ステップS14にて、制御装置17は、給気開閉弁36を閉止する。すると、気体供給ライン12が閉止することで、気体供給ライン12を通した収納容器11の内部への空気の供給が停止する。一方、排風機14の作動が継続することで、収納容器11の内部の気体が気体排出ライン13を通して外部に排出される。そのため、収納容器11は、内部の気体が外部に排出されることで内部が負圧状態となる。
【0032】
ステップS15にて、制御装置17は、収納容器11の内部の圧力が予め設定された規定負圧に到達したか否かを判定する。ここで、規定負圧とは、収納容器11の内部を負圧状態に維持するための圧力であり、大気圧より低い圧力であり、事前に設定しておく。
【0033】
ステップS15にて、制御装置17は、収納容器11の内部の圧力が規定負圧に到達していないと判定(No)すると、処理を継続する。一方、制御装置17は、収納容器11の内部の圧力が規定負圧に到達したと判定(Yes)すると、ステップS16にて、排気開閉弁46を閉止する。そして、ステップS17にて、排風機14を停止する。すると、ステップS18にて、収納容器11は、内部が所定の負圧状態(規定負圧)に維持される。
【0034】
<収納容器の監視処理>
次に、収納容器11に収納された放射性物質100を監視する収納容器11の監視処理について説明する。図3は、収納容器内の監視処理を実施するためのフローチャートである。
【0035】
図1および図3に示すように、収納容器11は、内部に放射性物質100が収納され、上述した掃気処理により内部が所定の負圧状態(規定負圧)に維持されている。時間の経過に伴って、収納容器11に収容された放射性物質100は、残留している水分や有機物などが放射線により分解して水素などが発生する。収納容器11は、放射性物質100からの水素の発生や温度上昇などにより内部の圧力が上昇する。制御装置17は、放射性物質100からの水素の発生や圧力上昇などを監視する。
【0036】
ステップS21にて、制御装置17は、収納容器11の内部の圧力が予め設定された圧力上限値を超えたか否かを判定する。制御装置17は、圧力検出器15が検出した収納容器11の内部の圧力と圧力上限値とを比較する。ここで、圧力上限値とは、収納容器11の内部を閉じ込め状態に維持することができない圧力であり、例えば、大気圧よりも高い圧力の場合もある。制御装置17は、収納容器11の内部の圧力が圧力上限値を超えていないと判定(No)すると、ステップS22に移行する。一方、制御装置17は、収納容器11の内部の圧力が圧力上限値を超えたと判定(Yes)すると、ステップS23に移行する。
【0037】
すなわち、水素の発生や温度上昇などにより内部の圧力が上昇していないとき、ステップS22にて、制御装置17は、収納容器11の内部の水素濃度が予め設定された水素濃度上限値を超えたか否かを判定する。制御装置17は、水素濃度検出器16が検出した収納容器11の内部の水素濃度と水素濃度上限値とを比較する。ここで、水素濃度上限値とは、収納容器11の内部で発生した水素の濃度が高くなり、爆発の危険が生じる水素濃度であり、事前に実験などにより求めておく。
【0038】
制御装置17は、収納容器11の内部の水素濃度が水素濃度上限値を超えていないと判定(No)すると、このルーチンから抜ける。一方、制御装置17は、収納容器11の内部の水素濃度が水素濃度上限値を超えたと判定(Yes)すると、ステップS23に移行する。
【0039】
収納容器11の内部の圧力が圧力上限値を超えていたり、収納容器11の内部の水素濃度が水素濃度上限値を超えていたりすると、ステップS23以降で、前述した収納容器11の掃気処理を実行する。すなわち、ステップS23にて、制御装置17は、給気開閉弁36および排気開閉弁46を開放する。ステップS24にて、制御装置17は、排風機14を作動する。ステップS25にて、制御装置17は、給気開閉弁36および排気開閉弁46を開放して排風機14を作動してから所定時間が経過したか否かを判定する。制御装置17は、給気開閉弁36および排気開閉弁46を開放して排風機14を作動してから所定時間が経過していないと判定(No)すると、処理を継続する。一方、制御装置17は、給気開閉弁36および排気開閉弁46を開放して排風機14を作動してから所定時間が経過したと判定(Yes)すると、ステップS26にて、制御装置17は、給気開閉弁36を閉止する。
【0040】
ステップS27にて、制御装置17は、収納容器11の内部の圧力が規定負圧に到達したか否かを判定する。制御装置17は、収納容器11の内部の圧力が規定負圧に到達していないと判定(No)すると、処理を継続する。一方、制御装置17は、収納容器11の内部の圧力が規定負圧に到達したと判定(Yes)すると、ステップS28にて、排気開閉弁46を閉止する。そして、ステップS29にて、排風機14を停止する。すると、ステップS30にて、収納容器11は、内部が所定の負圧状態(規定負圧)に維持される。
【0041】
<異常発生時の対応処理>
最後に、異常発生時に収納容器11を対応する異常発生時の対応処理について説明する。図4は、異常発生時の対応処理を実施するためのフローチャートである。
【0042】
図1および図4に示すように、収納容器11は、内部に放射性物質100が収納され、内部が所定の負圧状態(規定負圧)に維持されている。この状態で、収納容器11などに異常が発生すると、収納容器11は、放射性物質100の安全性を維持することが困難になる恐れがあり、制御装置17は、収納容器11などの異常を監視する。
【0043】
ステップS41にて、制御装置17は、異常を検出したか否かを判定する。具体的に、制御装置17は、地震検出器53が検出した震度が予め設定された震度上限値を超えたか否かを判定する。制御装置17は、地震検出器53が検出した震度と震度上限値とを比較する。ここで、震度上限値とは、収納容器11などの安全性を確保することができない震度であり、事前に設定しておく。
【0044】
制御装置17は、地震検出器53が検出した震度が震度上限値を超えていないと判定(No)すると、このルーチンを抜ける。一方、制御装置17は、地震検出器53が検出した震度が震度上限値を超えたと判定(Yes)すると、ステップS42にて、制御装置17は、給気開閉弁36および排気開閉弁46を閉止する。ステップS43にて、制御装置17は、各種機器に異常があったか否かを判定する。ここで、各種機器とは、気体供給ライン12、気体排出ライン13、排風機14、圧力検出器15、水素濃度検出器16などである。また、制御装置17による各種機器の破損の判定は、各種機器に設けた破損検出器からの入力により実行する。なお、制御装置17による各種機器の破損の判定は、作業者による機器破損状況の入力情報により実行してもよい。
【0045】
ステップS43にて、制御装置17は、各種機器に破損がないと判定(No)すると、ステップS44にて、常用設備を用いて収納容器11の掃気処理を実行する。常用設備を用いた収納容器11の掃気処理とは、既存の設備を用いて実行する、図2を用いて説明した掃気処理である。一方、制御装置17は、各種機器に破損があると判定(Yes)すると、ステップS45にて、非常用設備を用いて収納容器11の掃気処理を実行する。非常用設備を用いた収納容器11の掃気処理とは、既存の設備とは別に用意された非常用設備を用いた掃気処理である。すなわち、作業者は、非常用設備として可搬用給排気設備を用意し、可搬用給排気設備を収納容器11に接続して掃気処理を実行する。
【0046】
例えば、収納容器11の掃気処理中に地震が発生したとき、開放されていた給気開閉弁36および排気開閉弁46を直ちに閉止する。また、収納容器11の負圧維持中に地震が発生したとき、閉止されていた給気開閉弁36および排気開閉弁46の閉止状態を継続する。そして、各種機器の破損状態を確認した後、常用設備または非常用設備により掃気処理を実行し、放射性物質100が収納されている収納容器11の負圧状態を確保する。
【0047】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る放射性物質の収納装置は、放射性物質100を収納する収納容器11と、給気開閉弁36を有して収納容器11の内部に気体を供給可能な気体供給ライン12と、排気開閉弁46を有して収納容器11の気体を排出可能な気体排出ライン13と、気体排出ライン13に設けられる排風機14と、収納容器11の内部の圧力を検出する圧力検出器15と、圧力検出器15の検出結果に基づいて給気開閉弁36および排気開閉弁46を開閉制御すると共に排風機14を作動制御する制御装置17とを備える。
【0048】
第1の態様に係る放射性物質の収納装置によれば、制御装置17は、収納容器11の内部の圧力に基づいて給気開閉弁36および排気開閉弁46を開閉制御すると共に排風機14を作動制御する。すなわち、収納容器11は、排風機14を作動することで、内部を負圧にすることができる。収納容器11が負圧に維持されて状態で、制御装置17は、収納容器11の内部の圧力に応じて給気開閉弁36および排気開閉弁46を開閉制御すると共に排風機14を作動制御することで、収納容器11の内部の掃気処理や掃気処理後の負圧維持を行うことができる。その結果、制御装置17は、排風機14を常時作動する必要がなく、気体供給ライン12、気体排出ライン13、排風機14などの各種設備に高い信頼性を確保する必要がなく、設備コストの増大を抑制することができる。
【0049】
第2の態様に係る放射性物質の収納装置は、第1の態様に係る放射性物質の収納装置であって、さらに、制御装置17は、排風機14を作動制御することで、収納容器11の内部を負圧状態に維持する。これにより、収納容器11の内部の負圧状態を容易に確保することができる。
【0050】
第3の態様に係る放射性物質の収納装置は、第1の態様または第2の態様に係る放射性物質の収納装置であって、さらに、制御装置17は、収納容器11の内部の圧力が予め設定された圧力上限値を超えると、排気開閉弁46を開放すると共に、排風機14を作動する。これにより、収納容器11の内部の圧力の上昇により負圧状態を維持することができないとき、収納容器11の内部の掃気処理を実行した後、再び収納容器11を負圧状態に維持することができる。
【0051】
第4の態様に係る放射性物質の収納装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係る放射性物質の収納装置であって、さらに、収納容器11の内部の水素濃度を検出する水素濃度検出器16を有し、制御装置17は、収納容器11の内部の水素濃度が予め設定された水素濃度上限値を超えると、給気開閉弁36および排気開閉弁46を開放すると共に、排風機14を作動する。これにより、収納容器11の内部の水素濃度の上昇により安全性を維持することができないとき、収納容器11の内部の掃気処理を実行した後、再び収納容器11を負圧状態に維持することができる。
【0052】
第5の態様に係る放射性物質の収納装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係る放射性物質の収納装置であって、さらに、気体供給ライン12は、給気開閉弁36と収納容器11との間に給気エアフィルタ37が設けられ、気体排出ライン13は、排気開閉弁46と収納容器11との間に排気エアフィルタ47が設けられる。これにより、気体供給ライン12、気体排出ライン13、排風機14に放射性物質100などの有害物質が付着することがなく、気体供給ライン12、気体排出ライン13に対して高い信頼性を要求する必要がなく、また、メンテナンス作業や交換作業の安全性を確保することができる。
【0053】
第6の態様に係る放射性物質の収納装置は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係る放射性物質の収納装置であって、さらに、地震検出器53を有し、制御装置17は、地震検出器53の検出結果に基づいて給気開閉弁36および排気開閉弁46を開閉制御する。これにより、地震が発生したときに給気開閉弁36および排気開閉弁46を閉止することで、地震が発生して各種機器が破損した場合であっても、収納容器11の閉じ込め性を確保することができ、安全性を向上することができる。
【0054】
第7の態様に係る放射性物質の収納装置は、第1の態様から第6の態様のいずれか一つに係る放射性物質の収納装置であって、さらに、収納容器11は、放射線遮蔽部材により構成される遮蔽容器である。これにより、収納容器11の内部に放射性物質100を安全に収納することができる。
【0055】
第8の態様に係る放射性物質の保管方法は、放射性物質100を収納する収納容器11の内部を負圧状態に維持する工程と、収納容器11の内部の圧力を検出する工程と、収納容器11の内部の圧力が予め設定された圧力上限値を超えると収納容器11の掃気処理を実施する工程とを有する。これにより、排風機14を常時作動する必要がなく、気体供給ライン12、気体排出ライン13、排風機14などの各種設備に高い信頼性を確保する必要がなく、設備コストの増大を抑制することができる。
【0056】
なお、上述した実施形態にて、収納容器11の内部の温度を検出する温度検出器や収納容器11の内部の酸素濃度を検出する酸素濃度検出器などを設けてもよい。この場合、制御装置17は、温度検出器や酸素濃度検出器に応じて給気開閉弁36および排気開閉弁46を開閉制御すると共に排風機14を作動制御するように構成することが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
10 放射性物質の収納装置
11 収納容器
12 気体供給ライン
13 気体排出ライン
14 排風機
15 圧力検出器
16 水素濃度検出器
17 制御装置
36 給気開閉弁
37 給気エアフィルタ
46 排気開閉弁
47 排気エアフィルタ
53 地震検出器
100 放射性物質
図1
図2
図3
図4