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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051968
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】口腔内測定装置用カバー
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/04 20060101AFI20240404BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A61C19/04 Z
A61B5/11 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158379
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 光樹
(72)【発明者】
【氏名】藤間 真由
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮至
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕一郎
【テーマコード(参考)】
4C038
4C052
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB06
4C052NN07
4C052NN12
4C052NN16
4C052NN17
(57)【要約】
【課題】口腔内測定装置に容易に着脱可能な口腔内測定装置用カバーを提供する。
【解決手段】口腔内測定装置100に取り付けられる口腔内測定装置用カバー1は、口腔内測定装置100の外面に密着する密着部2と、口腔内測定装置1の外面との間に隙間を形成する隙間形成部5とが口腔内測定装置1の周方向に並ぶように設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内測定装置に取り付けられる口腔内測定装置用カバーであって、
前記口腔内測定装置の外面に密着する密着部と、前記口腔内測定装置の外面との間に隙間を形成する隙間形成部とが前記口腔内測定装置の周方向に並ぶように設けられていることを特徴とする口腔内測定装置用カバー。
【請求項2】
請求項1に記載の口腔内測定装置用カバーにおいて、
前記密着部は、前記口腔内測定装置を挟むように位置する第1密着部及び第2密着部を含み、
前記隙間形成部は、前記第1密着部及び前記第2密着部の間において前記口腔内測定装置を挟むように位置する第1隙間形成部及び第2隙間形成部を含んでいることを特徴とする口腔内測定装置用カバー。
【請求項3】
請求項2に記載の口腔内測定装置用カバーにおいて、
前記第1密着部及び前記第2密着部は、前記口腔内測定装置の外面に沿って平坦に形成されていることを特徴とする口腔内測定装置用カバー。
【請求項4】
請求項2に記載の口腔内測定装置用カバーにおいて、
前記第1密着部及び前記第2密着部は、前記第1隙間形成部及び前記第2隙間形成部を前記口腔内測定装置の外面に接触させる方向に押圧することにより、前記口腔内測定装置の外面から離れる方向に変形するように構成されていることを特徴とする口腔内測定装置用カバー。
【請求項5】
請求項1に記載の口腔内測定装置用カバーにおいて、
口腔内に挿入される部分が前記口腔内測定装置の外面を構成する部材よりも軟質な材料で構成されていることを特徴とする口腔内測定装置用カバー。
【請求項6】
請求項1に記載の口腔内測定装置用カバーにおいて、
前記口腔内測定装置の先端側に設けられている咬合力検出部を覆うとともに被測定者の歯が当接する咬合部を備え、
前記咬合部は、前記口腔内測定装置の外面を構成する部材よりも軟質な材料で構成されていることを特徴とする口腔内測定装置用カバー。
【請求項7】
請求項6に記載の口腔内測定装置用カバーにおいて、
前記口腔内測定装置の前記咬合力検出部の外面に密着するように構成されていることを特徴とする口腔内測定装置用カバー。
【請求項8】
請求項7に記載の口腔内測定装置用カバーにおいて、
前記口腔内測定装置の先端側の外面の周方向全周に密着するように構成されていることを特徴とする口腔内測定装置用カバー。
【請求項9】
請求項6に記載の口腔内測定装置用カバーにおいて、
前記口腔内測定装置の先端側を覆う先端側部と、前記口腔内測定装置の先端側よりも基端側寄りの部分を覆う基端側部とを備え、
前記先端側部は、前記軟質な材料で構成され、
前記基端側部は、前記軟質な材料よりも硬い硬質な材料で構成されていることを特徴とする口腔内測定装置用カバー。
【請求項10】
請求項9に記載の口腔内測定装置用カバーにおいて、
前記基端側部には、前記口腔内測定装置の外面から突出する突起部が係止する係止孔が形成されていることを特徴とする口腔内測定装置用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば体温、舌圧、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力、咬合力等を測定する口腔内測定装置に着脱可能に取り付けられる口腔内測定装置用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば体温を測定する際に口腔内に体温計を入れて測定することや、舌圧、嚥下圧、咬合力を測定する際に口腔内に圧力測定器を入れて測定することが行われている。これら体温計や圧力測定器を合わせて口腔内測定装置と呼ぶことができる。
【0003】
例えば特許文献1には、口腔内で体温を測定する温度感知プローブ用カバーが開示されている。このカバーは、軟質な材料からなるとともに使い捨てタイプであり、温度感知プローブが有するフランジに対して全周に亘って密着するように形成されている。
【0004】
また、例えば咬合力は、上下の歯で物を噛む顎の力であり、例えば歯科の臨床などで咬合力計と呼ばれる測定器によって測定されることがある(例えば特許文献2、3参照)。特許文献2に開示されている咬合力計は、感圧シートを被験者の口腔に入れて上下の歯で噛んでもらった後、口腔から取り出してスキャンし、専用の分析ソフトによって咬合力を算出して表示するように構成されている。特許文献3に開示されている咬合力計は、板状の咬合力検出部と、咬合力検出部から得られる検出信号を処理して咬合力測定値を表示するように構成されている。咬合力検出部には、カバーが着脱可能に取り付けられる。このカバーには係合孔が形成され、また咬合力検出部の外面には爪部が形成されており、爪部を係合孔に係合させることにより、カバーの抜け止めと位置決めが行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57-118126号公報
【特許文献2】国際公開第2015/111633号
【特許文献3】特開平8-252245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、カバーを使用した後、温度感知プローブから取り外す必要があるが、カバーが温度感知プローブのフランジに対して全周に亘って密着した状態で嵌合しているので、取り外し難い。特に、カバーが軟質な材料で構成されているため、フランジに密着しやすく、その点でも取り外し作業が煩雑である。取り付け時も、軟質なカバーをフランジに対して全周に嵌合させようとすると作業が煩雑になるおそれがある。
【0007】
また、歯列の形状は患者によって異なり、特許文献2のような既成のシートを個々の患者の歯列に適切にあわせて配置するのは難しい場合がある。また、感圧シートは使い捨てされる部材であるが、高価なため、ランニングコストが高くなる。さらに、特許文献2のスキャンや分析ソフトを導入するための付帯設備も高価であり、導入費が問題となる場合がある。また、必要な咬合力を入手するために分析ソフトでの解析が必要であり、更にPC操作も煩雑であったため医療従事者に負担がかかっていた。
【0008】
その点、特許文献3の咬合力計は、単独で咬合力の計測から演算、表示までを実行できるので、付帯設備が不要であり、導入コストが安価になる。加えて、咬合力計自体は何度も利用可能であり、カバーのみを交換すればよいので、ランニングコストも安価になる。よって、コストを考慮すると、特許文献2よりも特許文献3のような咬合力計を導入したいケースが多くなると考えられる。
【0009】
ところが、特許文献3のカバーを咬合力検出部に取り付ける際には、爪部を係合孔に係止させているので、咬合力の測定後、カバーを咬合力検出部から外そうとした時、カバーを長手方向に引っ張っても、爪部が係合孔の周縁部に引っ掛かっているので外すことはできない。特に、カバーが軟質な材料からなる場合には、カバーが長手方向に伸びてカバーの内面が咬合力検出部に密着して余計に外れ難くなる。このため、カバーの縁を持って爪部が係合孔から離脱可能となるまで当該カバーを外方へ広げ、この広げた状態を維持しながら、カバーを長手方向に引っ張る必要があり、操作が煩雑である。取り付け時も、カバーが軟質な材料で構成されていると途中で咬合力検出部に密着して取り付け難くなるおそれがある。
【0010】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、口腔内測定装置に容易に着脱可能な口腔内測定装置用カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、口腔内測定装置に取り付けられる口腔内測定装置用カバーを前提とすることができる。口腔内測定装置用カバーには、前記口腔内測定装置の外面に密着する密着部と、前記口腔内測定装置の外面との間に隙間を形成する隙間形成部とが前記口腔内測定装置の周方向に並ぶように設けられている。
【0012】
この構成によれば、口腔内測定装置用カバーを口腔内測定装置に取り付ける際には、密着部が口腔内測定装置の外面に密着することになるが、この密着部に並ぶように隙間形成部が設けられているので、口腔内測定装置用カバーの全周が口腔内測定装置の外面に一度に密着してしまうことは回避される。これにより、口腔内測定装置用カバーの取り付け作業が容易に行えるようになる。
【0013】
一方、口腔内測定装置用カバーを口腔内測定装置から取り外す際には、密着部が口腔内測定装置の外面に密着しているが、隙間形成部と口腔内測定装置の外面との間には隙間ができているので、例えば密着部が外面から離れるように口腔内測定装置用カバーを変形させることが可能になる。これにより、口腔内測定装置用カバーの取り外し作業が容易に行えるようになる。
【0014】
本開示の他の態様では、前記密着部は、前記口腔内測定装置を挟むように位置する第1密着部及び第2密着部を含んでいてもよく、また、前記隙間形成部は、前記第1密着部及び前記第2密着部の間において前記口腔内測定装置を挟むように位置する第1隙間形成部及び第2隙間形成部を含んでいてもよい。
【0015】
この構成によれば、第1密着部、第1隙間形成部、第2密着部及び第2隙間形成部が口腔内測定装置用カバーの周方向に並ぶように形成されることになるので、口腔内測定装置用カバーの取り付け、取り外し作業がより一層容易になる。
【0016】
本開示の他の態様では、前記第1密着部及び前記第2密着部は、前記口腔内測定装置の外面に沿って平坦に形成されていてもよい。この場合、前記第1密着部及び前記第2密着部は、前記第1隙間形成部及び前記第2隙間形成部を前記口腔内測定装置の外面に接触させる方向に押圧することにより、前記口腔内測定装置の外面から離れる方向に変形するように構成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、口腔内測定装置に取り付けられた状態の口腔内測定装置用カバーを取り外す際に、例えばユーザが指等を用いて第1隙間形成部及び第2隙間形成部をつまむと、第1隙間形成部及び第2隙間形成部が口腔内測定装置の外面に接触し、これにより、第1密着部及び第2密着部が口腔内測定装置の外面から離れる方向に変形するので、口腔内測定装置用カバーの取り外し作業がより一層容易になる。この時、第1隙間形成部及び第2隙間形成部は口腔内測定装置の外面に完全に接触しなくても良い。第1隙間形成部及び第2隙間形成部が口腔内測定装置の外面に接近するだけでも第1密着部及び第2密着部が口腔内測定装置の外面から離れる方向に変形することができる。
【0018】
本開示の他の態様では、口腔内に挿入される部分が前記口腔内測定装置の外面を構成する部材よりも軟質な材料で構成されていてもよい。これにより、口腔内に挿入される部分が軟質になるので、口腔内の歯や粘膜に対して優しい口腔内測定装置用カバーになり、使い心地が良好になる。
【0019】
本開示の他の態様では、前記口腔内測定装置が有する咬合力検出部を覆うとともに被測定者の歯が当接する咬合部を備えていてもよい。この場合、前記咬合部は、前記口腔内測定装置の外面を構成する部材よりも軟質な材料で構成することができる。これにより、例えば咬合力を測定する際には歯が折れてしまうといった問題が起こりにくくなる。
【0020】
本開示の他の態様では、前記口腔内測定装置の前記咬合力検出部の外面に密着するように構成されていてもよい。これにより、口腔内測定装置用カバーが咬合力検出部に対して安定するので、咬合力の測定が正確に行える。また、口腔内測定装置用カバーは、口腔内測定装置の先端部の外面の周方向全周に密着するように構成されていてもよい。
【0021】
本開示の他の態様では、口腔内測定装置の先端側を覆う先端側部と、口腔内測定装置の先端側よりも基端側寄りの部分を覆う基端側部とを備えていてもよい。この場合、前記先端側部を前記軟質な材料で構成することにより、口腔内の歯や粘膜に対して優しい口腔内測定装置用カバーとすることができる。また、前記基端側部を硬い硬質な材料で構成することにより、口腔内測定装置用カバーの形状が崩れにくくなり、口腔内測定装置への取り付け作業性が良好になる。
【0022】
本開示の他の態様に係る基端側部には、前記口腔内測定装置の外面から突出する突起部が係止する係止孔が形成されていてもよい。これにより、口腔内測定装置用カバーが口腔内測定装置からより一層外れ難くなる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、口腔内測定装置の外面に密着する密着部と、口腔内測定装置の外面との間に隙間を形成する隙間形成部とが口腔内測定装置の周方向に並ぶように設けられているので、口腔内測定装置用カバーを口腔内測定装置に容易に着脱できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るカバーが取り付けられた咬合力計の斜視図である。
図2】カバーが取り外された状態の咬合力計の斜視図である。
図3】カバーが取り外された状態の咬合力計の平面図である。
図4】カバーが取り外された状態の咬合力計の側面図である。
図5】カバーが取り付けられた咬合力計の平面図である。
図6】カバーが取り付けられた咬合力計の側面図である。
図7図5におけるVII-VII線断面図である。
図8図6におけるVIII-VIII線断面図である。
図9】カバーを先端側から見た図である。
図10】カバーを基端側から見た図である。
図11】カバーの変形前後を示す図である。
図12】実施形態1の変形例1に係り、図11の上側に相当する図である。
図13】実施形態1の変形例2に係り、図11の上側に相当する図である。
図14】本発明の実施形態2に係る図1相当図である。
図15】本発明の実施形態2に係る図2相当図である。
図16】本発明の実施形態2に係る図8相当図である。
図17】本発明の実施形態2に係るカバーの斜視図である。
図18】本発明の実施形態2に係るカバーの縦断図である。
図19】実施形態2の変形例1に係る図17相当図である。
図20】実施形態2の変形例1に係る図18相当図である。
図21】実施形態2の変形例2に係る図18相当図である。
図22】実施形態2の変形例2に係るカバーの横断面図である。
図23】本発明の実施形態3に係る図1相当図である。
図24】本発明の実施形態3に係る図2相当図である。
図25】本発明の実施形態3に係る図8相当図である。
図26】本発明の実施形態3に係るカバーの斜視図である。
図27】本発明の実施形態3に係るカバーの縦断図である。
図28】本発明の実施形態4に係るカバーの斜視図である。
図29】本発明の実施形態4に係る図7相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るカバー1が取り付けられた口腔内測定装置100の斜視図である。図2図4は、カバー1が取り外された状態の口腔内測定装置100を示すものである。口腔内測定装置100としては、例えば特開平8-252245号公報に開示されている咬合力計を使用することができる。各図に示すように、口腔内測定装置100の基端側及び先端側を定義するが、これは説明の便宜を図るためだけであり、本発明を限定するものではない。また、カバー1の基端側は、口腔内測定装置100に取り付けられた状態で当該口腔内測定装置100の基端側となる側であり、また、カバー1の先端側は、口腔内測定装置100に取り付けられた状態で当該口腔内測定装置100の先端側となる側である。
【0027】
(咬合力計の構成)
カバー1の構造を説明する前に口腔内測定装置100の構成について説明するが、本発明の実施形態1に係る口腔内測定装置100の主要部分の構成は、特開平8-252245号公報に開示されている咬合力計と同じである。すなわち、口腔内測定装置100は、口腔に挿入される挿入部101と、被測定者等が手で持つことが可能な棒状をなす本体部102とを備えており、被測定者の咬合力を測定する器具である。この口腔内測定装置100では、被測定者の右側の咬合力と、左側の咬合力とを別々に測定可能に構成されている。
【0028】
本体部102は、例えば硬質樹脂材からなる本体ケース103と、本体ケース103内に収容されたマイクロコンピュータ等からなる制御部A(図3及び図4にのみ示す)と、本体ケース103の表面に設けられた表示部104と、操作ボタン105とを有している。また、本体ケース103の内部には電池(図示せず)が内蔵されている。表示部104及び操作ボタン105が設けられている側を上側とし、その反対側を下側とするが、これも説明の便宜を図るためだけであり、例えば反対向きで使用することも可能である。
【0029】
操作ボタン105は、制御部Aに接続されており、口腔内測定装置100の電源のON/OFFを切り替えるための操作部である。操作ボタン105の操作を制御部Aが検出することで、口腔内測定装置100の電源をONからOFF、OFFからONに切り替える。表示部104は、制御部Aに接続されており、後述するように制御部Aで算出した測定値を数字で表示する部分である。
【0030】
挿入部101は、全体として板状をなしており、図3に示すように、挿入部101の幅W1は、本体部102の幅W2の幅よりも狭く設定されている。また、挿入部101の幅方向中心部と、本体部102の幅方向中心部とは口腔内測定装置100の基端部から先端部へ延びる同一の仮想直線上に配置されるようになっている。
【0031】
挿入部101の基端部は、本体部102の先端部と一体化されている。挿入部101の基端側の部分は、厚肉部101aによって構成されている。厚肉部101aは、本体部102の先端部から突出しており、先端部に向かって上下方向の寸法(厚み)が徐々に短くなる、即ち厚みが徐々に薄くなるように形成されている。挿入部101の厚肉部101aよりも先端側の部分は、当該厚肉部101aよりも薄い薄肉部101bで構成されている。図3に示すように、薄肉部101bの長さL1は、厚肉部101aの長さL2よりも長く設定されている。具体的には、口腔内測定装置100で咬合力を測定する際に、厚肉部101aが唇で挟まれるまで薄肉部101bを挿入した状態で、薄肉部101bの先端部が成人の奥歯に達するように、薄肉部101bの長さL1が設定されている。挿入部101の上下方向中心部は、本体部102の上下方向中心部と同一直線上に配置されるようになっている。つまり、本体部102の軸線と、挿入部101の軸線とは同軸上に位置している。
【0032】
挿入部101は、本体部102の本体ケース103と同様な硬質樹脂材からなる外装部材110を備えている。図2図4に示すように、外装部材110の基端側の上面110a及び下面110bは、幅方向に延びる平面で構成されており、互いに平行である。また、外装部材110の基端側の左側面110c及び右側面110dは、上下方向に延びる平面で構成されており、互いに平行である。上面110a、下面110b、左側面110c及び右側面110dは、口腔内測定装置100の外面を構成する面である。
【0033】
尚、口腔内測定装置100の左側は、被測定者が挿入部101を口腔に挿入した状態で被測定者の左に位置する側であり、口腔内測定装置100の右側は、被測定者が挿入部101を口腔に挿入した状態で被測定者の右に位置する側である。口腔内測定装置100の左右方向は幅方向である。口腔内測定装置100の周方向は、上面110a、左側面110c、下面110b及び右側面110dが連続する方向であり、挿入部101の軸線(本体部102の軸線)周りを口腔内測定装置100の周方向と定義することもできる。
【0034】
挿入部101の先端部は被測定者が噛む部分、即ち、咬合力検出部101cであり、口腔内測定装置100の先端側に設けられている。咬合力検出部101cには咬合力を検出するためのセンサとして機能する検出器111が設けられている。検出器111は外装部材110によって覆われている。制御部Aは、圧力検出手段から出力された電気信号に基づいて、受圧室の圧力を取得し、取得した圧力を所定の換算式によって換算することで、咬合力に変換する。1回の測定中に測定された咬合力の最大値を保持しておき、表示部104にその最大値を表示させてもよいし、測定中に変化する咬合力を表示部104に表示させてもよい。いずれにしても、被測定者の咬合力を取得できる。制御部Aによる具体的な制御手順は、特開平8-252245号公報に開示されているとおりである。
【0035】
(カバーの構成)
次に、図1図5図11等に基づいてカバー1の構成について説明する。図1に示すように、カバー1は、口腔内測定装置100の挿入部101に着脱可能に取り付けられる咬合力計用カバー(口腔内測定装置用カバー)である。本実施形態1の説明では、本発明の口腔内測定装置用カバーを単にカバー1という。尚、図1図5図8図11では、カバー1が口腔内測定装置100に取り付けられた状態を示しており、図7及び図8では、カバー1のみ断面で示しており、口腔内測定装置100は断面で示していない。また、図9及び図10では、カバー1単体を示している。
【0036】
カバー1は、その先端部が完全に閉塞され、基端部が開放された筒状をなしており、基端部の開放された部分は口腔内測定装置100の挿入部101が差し込まれる開口部1a(図10に示す)とされている。開口部1aの形状は、口腔内測定装置100の挿入部101の断面形状に対応するように矩形状に近い形状となっている。この開口部1aの形状は、矩形状に限られるものではなく、挿入部101の断面形状が矩形状以外の形状であれば、その挿入部101の断面形状に合うように設定すればよい。
【0037】
カバー1の先端部が閉塞されていることで、測定時には被測定者の口腔内の唾液等が先端部からカバー1の内部に浸入することはない。また、カバー1には開口部1aだけしか開口がないので、カバー1の周壁部からも唾液等がカバー1の内部に浸入することはない。また、カバー1の長さ(先端部から開口部1aまでの長さ)は、口腔内測定装置100の挿入部101の長さ、即ち薄肉部101bの長さL1と厚肉部101aの長さL2とを合わせた長さと略同じに設定されている。これにより、カバー1の基端部は、測定時に被測定者の口腔の外に向くことになるので、唾液等がカバー1の基端部からカバー1の内部に浸入し難くなる。
【0038】
カバー1における口腔内に挿入される部分は、口腔内測定装置100の外面を構成する部材よりも軟質な材料、口腔内測定装置100の外面を構成する部材よりも柔軟な材料で構成されている。具体的には、カバー1の先端部から基端部までが同一の軟質材料で一体成形されており、このようなカバー1は、例えば射出成形法、ブロー成形法、ディップ成形法等の各種成形法によって製造することが可能である。カバー1を構成する軟質材料は、熱可塑性樹脂や、ゴムであってもよいし、熱可塑性エラストマーであってもよく、例えばシリコーンゴム、ポリブタジエン(PBD)、スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)、水添共役ジエン系エラストマー(HSBR)、ポリ塩化ビニル(PVC)等を挙げることができる。これら軟質材料のうち、1種のみでカバー1を構成してもよいし、任意の2種以上を混合した材料でカバー1を構成してもよい。また、カバー1の部位により、軟質樹脂の種類を変えてもよい。
【0039】
カバー1のショア硬度はタイプD(ショアD)で30以上60以下が良い。後述する咬合部7、8の厚みにもよるが、最も好ましいショア硬度の範囲はショアDで35以上50以下である。ショアD30未満になると成形しづらく、ショアD60より大きくなると硬くなりすぎ、被測定者が噛んだ時に歯が欠けてしまう恐れがある。
【0040】
カバー1の基端側の部分には、口腔内測定装置100への取り付け状態で当該口腔内測定装置100の外面に密着する上側密着部(第1密着部)2及び下側密着部(第2密着部)3と、口腔内測定装置100の外面との間に隙間を形成する左側隙間形成部(第1隙間形成部)4及び右側隙間形成部(第2隙間形成部)5とが口腔内測定装置100の周方向に並ぶように設けられている。カバー1の基端部の開口部1aは、上側密着部2、下側密着部3、左側隙間形成部4及び右側隙間形成部5の縁部によって形成され、開口部1aの上辺部が上側密着部2で構成され、開口部1aの下辺部が下側密着部3で構成され、開口部1aの左辺部が左側隙間形成部4で構成され、開口部1aの右辺部が右側隙間形成部5で構成されている。本実施形態では隙間形成部4、5と密着部2、3がカバー1の基端部に周方向に並ぶように形成されているが、カバー1の中央部や先端部に同様に形成されていても良い。
【0041】
図7に示すように、上側密着部2は、外装部材110の上面110aに重なるように配置されるとともに当該上面110aに沿って平坦に形成された板状をなしており、当該上面110aに密着する部分である。下側密着部3は、外装部材110の下面110bに重なるように配置されるとともに当該下面110bに沿って平坦に形成された板状をなしており、当該下面110bに密着する部分である。上側密着部2や下側密着部3は、必ずしも外層部材110に沿って平坦に形成された板状でなくても良く、例えば、曲面や表面に凹凸が設けられた粗面、あるいは一部が平面でその他の部分が曲面等で構成されていても良い。
【0042】
上側密着部2が口腔内測定装置100の挿入部101の上に配置され、下側密着部3が口腔内測定装置100の挿入部101の下に配置されているので、上側密着部2及び下側密着部3は口腔内測定装置100の挿入部101を上下方向に挟むように位置することになる。これにより、カバー1の基端側の部分が口腔内測定装置100の挿入部101に対して上下方向に動きにくくなる。さらに、上側密着部2及び下側密着部3と外装部材110の上面110a及び下面110bとの間にそれぞれ作用する摩擦力により、カバー1の基端側の部分が口腔内測定装置100の挿入部101に対して左右方向にも動きにくくなるとともに、カバー1が口腔内測定装置100の挿入部101から抜け難くなる。
【0043】
カバー1の基端側の周縁部と本体部102との間に段差や隙間はなく、カバー1と本体部102はシームレスに、全体的に一体感を持った印象を与えるような構成となっている。カバー1と本体部102との間に段差や隙間がないため、使用中にほこりやごみが入り込むことがなく、衛生的に使用できる。
【0044】
図10及び図11の上側の図に示すように、左側隙間形成部4は、上側密着部2の左端部と下側密着部3の左端部との間に配置され、右側隙間形成部5は、上側密着部2の右端部と下側密着部3の右端部との間に配置されている。図8に示すように、口腔内測定装置100への取り付け状態で、左側隙間形成部4は、外装部材110の左側面110cから左側方に離れており、上下方向に延びる板状をなしている。左側隙間形成部4や右側隙間形成部5は、必ずしも外層部材110に沿って上下方向に延びる板状でなくても良く、例えば、曲面や表面に凹凸が設けられた粗面、あるいは一部が平面でその他の部分が曲面等で構成されていても良い。
【0045】
左側隙間形成部4と外装部材110の左側面110cとの間には左側隙間S1が形成される。また、右側隙間形成部5は、外装部材110の右側面110dから右側方に離れており、上下方向に延びる板状をなしている。右側隙間形成部5と外装部材110の右側面110dとの間には右側隙間S2が形成される。つまり、左側隙間形成部4及び右側隙間形成部5は、互いに平行であり、口腔内測定装置100の挿入部101を左右方向に挟むように位置することになる。本実施形態では密着部2、3と隙間形成部4、5が互いに平行であり、口腔内測定装置100の挿入部101を左右方向に挟むように位置していたが、密着部2、3と隙間形成部4、5は平行である必要はなく、挿入部100を中心として非対称に配置されていても良い。また密着部2、3と隙間形成部4、5は2つずつである必要はなく、1つでも良いし、3つ以上形成されていても良い。
【0046】
左側隙間形成部4の外面には、左側押圧面部4aが形成されている。また、右側隙間形成部5の外面には、右側押圧面部5aが形成されている。左側押圧面部4a及び右側押圧面部5aは、カバー1を口腔内測定装置100から取り外す際にユーザが例えば指を当てて押圧する部分である。上側密着部2及び下側密着部3は、左側隙間形成部4及び右側隙間形成部5を外装部材110の左側面110c及び右側面110dに接触させる方向に押圧することにより、外装部材110の上面110a及び下面110bから離れる方向に変形するように構成されている。尚、ユーザは、被測定者であってもよいし、例えば歯科医師や看護師等の医療従事者であってもよい。
【0047】
具体的には、図11の下側に示すように、ユーザが左側押圧面部4a及び右側押圧面部5aを指でつまむようにすると、カバー1が軟質材料で構成されているので、左側押圧面部4a及び右側押圧面部5aが互いに近づくように変形し、左側押圧面部4aと右側押圧面部5aとの間隔が狭まる。すると、上側密着部2が上へ向けて湾曲ないし屈曲するように変形して外装部材110の上面110aから離れ、また、下側密着部3が下へ向けて湾曲ないし屈曲するように変形して外装部材110の下面110bから離れる。上側密着部2及び下側密着部3の変形起点部となる部分を、当該上側密着部2及び下側密着部3に設けていてもよく、この変形起点部を起点として、上側密着部2及び下側密着部3を、外装部材110の上面110a及び下面110bから離れる方向に変形させることもできる。
【0048】
図7等に示すように、カバー1の先端側は、口腔内測定装置100の先端側に設けられている咬合力検出部101cを覆うように形成されるとともに、被測定者の上の歯が当接する上側咬合部7と、被測定者の下の歯が当接する下側咬合部8とを備えている。上側咬合部7及び下側咬合部8は、カバー1に一体成形されている部分なので、上述したように軟質材料で構成されている。上側咬合部7及び下側咬合部8の厚みは、カバー1の他の部分の厚みよりも厚くなっている。これにより、上側咬合部7はカバー1の先端側の上面から上方へ僅かに突出することになり、ユーザはカバー1を取り付けた状態であっても当該カバー1の外側から口腔内測定装置100の咬合力検出部101cの位置を推定できる。同様に、下側咬合部8はカバー1の先端側の下面から下方へ僅かに突出している。上側咬合部7及び下側咬合部8には、例えば、凹部、凸部、シボ模様等を形成してもよい。これにより、ユーザは口腔内測定装置100の咬合力検出部101cの位置を容易に推定できるようになる。上側咬合部7及び下側咬合部8の厚みは奥歯の間への挿入性を考慮して設定することができる。上側咬合部7及び下側咬合部8の厚みは、それぞれ2.5mm以下が良い。より好ましいのは2.0mm以下である。また患者の歯が当たって破れてしまうことを考慮すると、厚みは0.3mm以上が良い。より好ましいのは0.8mm以上である。上側咬合部7と下側咬合部8の厚みは同一であっても異なっていても良い。同一であればカバー1の成形がしやすく、製造コストが抑えられる。
【0049】
図7及び図8に示すように、カバー1の先端側は、口腔内測定装置100の外装部材110の外面に密着するように構成されている。図7に示すように、カバー1の内面のうち、上下両面は、外装部材110の上面及び下面に密着しており、また、図8に示すように、カバー1の内面のうち、左右両面は、外装部材110の左側面及び右側面に密着している。これにより、カバー1の先端側の内面は、口腔内測定装置100の外装部材110の先端側の外面の周方向全周に密着する。カバー1の先端側の一部または全部が外装部材110の外面に密着していなくてもよい。
【0050】
図7に示すように、カバー1における長手方向中間部の上面は、挿入部101の上面から上方に離れるように形成されている。また、カバー1における長手方向中間部の下面は、挿入部101の下面から上方に離れるように形成されている。
【0051】
また、図8に示すように、カバー1における長手方向中間部の左側面は、挿入部101の左側面に接触するように形成されており、左側隙間S1は先端側へ行くほど狭くなっている。また、カバー1における長手方向中間部の右側面は、挿入部101の右側面に接触するように形成されており、右側隙間S2は先端側へ行くほど狭くなっている。
【0052】
(カバーの着脱)
次に、カバー1の口腔内測定装置100への着脱について説明する。まず、カバー1を口腔内測定装置100に取り付ける際の要領について説明する。カバー1の開口部1aを口腔内測定装置100の挿入部101の先端部と対向させた後、カバー1の開口部1aに口腔内測定装置100の挿入部101を挿入する。このとき、カバー1を固定して口腔内測定装置100を動かしてもよいし、反対に、口腔内測定装置100を固定してカバー1を動かしてもよい。
【0053】
カバー1の開口部1aに口腔内測定装置100の挿入部101を挿入していくと、開口部1aは口腔内測定装置100の挿入部101の先端部の外形状よりも大きいので、挿入の初期段階はカバー1の内面が口腔内測定装置100の挿入部101の外面に殆ど接触することはなく、挿入に要する力は殆ど必要ない。口腔内測定装置100の挿入部101をカバー1に更に深く挿入すると、カバー1の上側密着部2及び下側密着部3が、外装部材110の上面110a及び下面110bにそれぞれ接触していくことになるが、左側隙間形成部4及び右側隙間形成部5は、外装部材110の左側面110c及び右側面110dから離れるように形成されているので、挿入に要する力はそれほど高まらない。また、カバー1の先端側の部分の内面が口腔内測定装置100の挿入部101の先端側の部分の外面に接触するが、先端側は基端側に比べて細いので、接触したことによる挿入力の増加代は小さい。
【0054】
口腔内測定装置100の挿入部101をカバー1に完全に挿入すると、カバー1の上側密着部2及び下側密着部3が外装部材110の上面110a及び下面110bにそれぞれ密着することにより、カバー1の口腔内測定装置100からの脱落が抑制される。また、カバー1の先端側の部分の内面が口腔内測定装置100の挿入部101の先端側の部分の外面に接触することによっても、カバー1の口腔内測定装置100からの脱落が抑制される。
【0055】
次に、カバー1を口腔内測定装置100から取り外す際の要領について説明する。まず、図11の下側の図に示すように、ユーザが左側隙間形成部4及び右側隙間形成部5を外装部材110の左側面110c及び右側面110dに接触させる方向に押圧し、上側密着部2及び下側密着部3を外装部材110の上面110a及び下面110bから離す。これにより、カバー1の基端側の部分が外装部材110の外面に接触する面積が小さくなる。この状態のまま、カバー1を抜く方向に移動させると、外装部材110の外面への接触面積が小さくなっている分、カバー1を抜く方向に移動させるのに要する力が小さくて済む。
【0056】
尚、上側密着部2及び下側密着部3を外装部材110の上面110a及び下面110bに密着させたままであっても、左側隙間形成部4及び右側隙間形成部5が外装部材110の外面から離れているので、カバー1を抜く方向に移動させるのに要する力が小さくて済む。
【0057】
(咬合力の測定)
次に、カバー1が取り付けられた口腔内測定装置100を用いて被測定者の咬合力を測定する要領について説明する。被測定者は、口腔内測定装置100の挿入部101を口腔に挿入し、咬合力検出部101cを上下の歯の間に配置する。このとき、挿入部101が軟質材料からなるカバー1によって覆われているので、口腔内の歯や粘膜に対して優しく測定できる。また、上側咬合部7及び下側咬合部8がカバー1の外面から突出しているので、カバー1のどの部分が咬合力検出部101cに対応しているのかを目視しなくても、感触で推定できる。よって、咬合力検出部101cを狙いとする歯の間に的確に配置できる。
【0058】
その後、被測定者は咬合力検出部101cをカバー1と共に強く噛む。歯は、カバー1の上側咬合部7及び下側咬合部8に接触することになるが、これら上側咬合部7及び下側咬合部8は軟質材料からなるものなので、歯が折れるといったことはない。検出器111から出力された電気信号に基づいて制御部Aが咬合力を演算し、表示部104に表示させる。これにより、ユーザは咬合力を把握できる。
【0059】
被測定者が同じであれば、カバー1を取り替えることなく、複数箇所の咬合力を測定することができる。別の被測定者の咬合力を測定する場合には、上述したように使用済みのカバー1を口腔内測定装置100の挿入部101から取り外した後、新しいカバー1を口腔内測定装置100の挿入部101に取り付ける。
【0060】
図12は、実施形態1の変形例1に係る図である。変形例1では、カバー1の基端側の部分に、当該カバー1内へ向けて突出する突出部9a、9b、9c、9dが設けられている。左上の突出部9aは、カバー1内の左上の隅部に設けられており、外装部材110の左側面110cの上部に接触するように配置される。右上の突出部9bは、カバー1内の右上の隅部に設けられており、外装部材110の右側面110dの上部に接触するように配置される。左下の突出部9cは、カバー1内の左下の隅部に設けられており、外装部材110の左側面110cの下部に接触するように配置される。右下の突出部9dは、カバー1内の右下の隅部に設けられており、外装部材110の右側面110dの下部に接触するように配置される。
【0061】
この変形例1では、左側隙間形成部4及び右側隙間形成部5を押圧すると、突出部9a、9cが外装部材110の左側面110cに当接して弾性変形し、突出部9b、9dが外装部材110の右側面110dに当接して弾性変形する。これにより、上側密着部2及び下側密着部3が外装部材110の上面110a及び下面110bから離れる方向に変形する。このとき、左側隙間形成部4の突出部9a、9cの間の部分が外装部材110の左側面110cに接触しなくなるとともに、右側隙間形成部5の突出部9b、9dの間の部分が外装部材110の右側面110dに接触しなくなる。よって、カバー1と外装部材110との接触面積が小さくなり、カバー1を口腔内測定装置100の挿入部101から取り外し易くなる。
【0062】
尚、カバー1における先端側の部分の内面と、口腔内測定装置100の挿入部101における先端側の部分の外面との間に隙間が形成されていてもよい。これにより、カバー1と挿入部101との接触面積がより一層小さくなるので、カバー1の取り付け及び取り外し作業が容易に行えるようになる。
【0063】
また、上記実施形態1では、密着部を上と下に設け、隙間形成部を左と右に設けているが、これに限らず、図13に示す変形例2のように、密着部12、13を左と右にそれぞれ設け、隙間形成部14、15を上と下にそれぞれ設けてもよい。この変形例2では、上側の隙間形成部14により上側の隙間S3が形成され、下側の隙間形成部15により下側の隙間S4が形成される。よって、カバー1の着脱作業が容易になる。
【0064】
(実施形態2)
図14図18は、本発明の実施形態2に係る口腔内測定装置100ないしカバー1を示すものである。実施形態2では、口腔内測定装置100が被測定者の左右の咬合力を同時に計測可能であり、それに対応するようにカバー1の構造が変更されている点で実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0065】
図15に示すように、実施形態2の口腔内測定装置100の挿入部101は、左右に分岐しており、左側挿入部101Aと右側挿入部101Bとを含んでいる。左側挿入部101A及び右側挿入部101Bの各々に、咬合力検出部101cが設けられている。制御部Aは、左側の咬合力検出部101cから出力された電気信号に基づいて左側の歯の咬合力を演算し、右側の咬合力検出部101cから出力された電気信号に基づいて右側の歯の咬合力を演算する。咬合力検出部101cは、左側挿入部101A及び右側挿入部101Bの各々に複数設けることができる。
【0066】
図16図18に示すように、実施形態2のカバー1の先端側の部分は、左右に分岐しており、左側挿入部101Aが挿入される左側収容部1Aと、右側挿入部101Bが挿入される右側収容部1Bとを有している。左側収容部1Aの内面及び右側収容部1Bの内面は、口腔内測定装置100の左側挿入部101A及び右側挿入部101Bの外面から離れていてもよいし、左側挿入部101A及び右側挿入部101Bの外面に接触していてもよい。
【0067】
この実施形態2においても、カバー1の上側密着部2及び下側密着部3が、外装部材110の上面110a及び下面110bにそれぞれ密着する。また、左側隙間形成部4と外装部材110の左側面110cとの間には左側隙間S1が形成され、右側隙間形成部5と外装部材110の右側面110dとの間には右側隙間S2が形成される。
【0068】
従って、実施形態2のカバー1も、実施形態1のものと同様に、外装部材110の外面に密着する密着部2、3と、外装部材110の外面との間に隙間S1、S2を形成する隙間形成部4、5とが口腔内測定装置100の周方向に並ぶように設けられているので、カバー1を口腔内測定装置100に容易に着脱できる。
【0069】
図19及び図20は、実施形態2の変形例1に係るカバー1を示している。実施形態2の変形例1では、カバー1が軟質材料と硬質材料との組み合わせで構成されており、口腔内測定装置100の先端側を覆う先端側部21と、口腔内測定装置100の先端側よりも基端側寄りの部分を覆う基端側部22とを備えている。先端側部21は、上述した軟質な材料で構成されている。基端側部22は、軟質な材料よりも硬い硬質な材料で構成されている。硬質な材料としては、例えば外装部材110を構成する材料と同じ材料を挙げることができるが、これに限られるものではなく、各種樹脂材を挙げることができる。また、基端側部22は弾性を有している。
【0070】
先端側部21と基端側部22とは、別部材として成形されたものを例えば溶着、接着、嵌合等によって一体化してもよい。また、先端側部21と基端側部22の一方を成形した後、他方の金型内に保持して他方の成形と同時に一体成形してもよい。また、いわゆる二色成形法により、同一の成形装置内で先端側部21と基端側部22とを成形してもよい。
【0071】
図21及び図22は、実施形態2の変形例2に係るカバー1を示している。このカバー1は、左側収容部1Aの先端部に左側開口部1bが形成され、右側収容部1Bの先端部に右側開口部1cが形成されている。カバー1を口腔内測定装置100に装着すると、左側開口部1bから左側挿入部101Aの先端部が突出し、右側開口部1cから右側挿入部101Bの先端部が突出するようになっている。
【0072】
また、実施形態2の変形例2では、カバー1の長さが短く設定されており、挿入部101の薄肉部101bの外面にカバー1の基端側が密着するようになっている。すなわち、カバー1の基端側には、挿入部101の薄肉部101bの上面に密着する上側密着部2と、挿入部101の薄肉部101bの下面に密着する下側密着部3と、挿入部101の薄肉部101bの左側面との間に隙間を形成する左側隙間形成部4と、挿入部101の薄肉部101bの右側面との間に隙間を形成する右側隙間形成部5とが設けられている。
【0073】
(実施形態3)
図23図27は、本発明の実施形態3に係る口腔内測定装置100ないしカバー1を示すものである。実施形態3では、口腔内測定装置100が体温計である場合について説明する。以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0074】
図24に示すように、実施形態3の口腔内測定装置100は、実施形態2、3の薄肉部101bの代わりに、細長い棒状部120を備えている。棒状部120の代わりに板状部(図示せず)を備えていてもよい。棒状部120には、図示しない温度センサが内蔵されている。温度センサは、従来から体温を測定する体温計に用いられているセンサであり、制御部Aに接続されている。制御部Aは、温度センサから出力された電気信号に基づいて被測定者の体温を演算し、表示部104に表示させるように構成されている。
【0075】
図23及び図24に示すように、カバー1は、口腔内測定装置100の棒状部120を挿入する筒状部20を備えている。筒状部20の内面は、口腔内測定装置100の棒状部120の外面から離れていてもよいし、棒状部120の外面に接触していてもよい。
【0076】
この実施形態3においても、カバー1の上側密着部2及び下側密着部3が、外装部材110の上面110a及び下面110bにそれぞれ密着する。また、左側隙間形成部4と外装部材110の左側面110cとの間には左側隙間S1が形成され、右側隙間形成部5と外装部材110の右側面110dとの間には右側隙間S2が形成される。
【0077】
従って、実施形態3のカバー1も、実施形態1のものと同様に、外装部材110の外面に密着する密着部2、3と、外装部材110の外面との間に隙間S1、S2を形成する隙間形成部4、5とが口腔内測定装置100の周方向に並ぶように設けられているので、カバー1を口腔内測定装置100に容易に着脱できる。
【0078】
(実施形態4)
図28及び図29は、本発明の実施形態4に係る口腔内測定装置100ないしカバー1を示すものである。実施形態4では、カバー1が軟質材料と硬質材料との組み合わせで構成されている点と、突起部によってカバー1の離脱が抑制されている点とで実施形態1のものと相違している。以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0079】
実施形態4のカバー1は、口腔内測定装置100の先端側を覆う先端側部21と、口腔内測定装置100の先端側よりも基端側寄りの部分を覆う基端側部22とを備えている。先端側部21及び基端側部22は、実施形態2の変形例1のものと同様に構成されている。
【0080】
基端側部22には、口腔内測定装置100の外装部材110の外面から突出する上側及び下側突起部114、115がそれぞれ係止する上側及び下側係止孔22a、22bが形成されている。すなわち、外装部材110の上面110aには、上方へ突出する上側突起部114が形成され、また、外装部材110の下面110bには、下方へ突出する下側突起部115が形成されている。カバー1の基端側部22における上側突起部114に対応する部分には、上側係止孔22aが形成され、また、カバー1の基端側部22における下側突起部115に対応する部分には、下側係止孔22bが形成されている。
【0081】
この実施形態4では、カバー1を取り付け方向に移動させながら、当該カバー1の基端側部22を弾性変形させることにより、上側及び下側突起部114、115をそれぞれ上側及び下側係止孔22a、22bに入れ、上側及び下側係止孔22a、22bの周縁部に係止させることができる。
【0082】
カバー1を取り外す際には、取り外し方向に力を加えながら、当該カバー1の基端側部22を左右方向につまんで弾性変形させ、上側及び下側突起部114、115をそれぞれ上側及び下側係止孔22a、22bから抜けばよい。このとき、左側隙間形成部4及び右側隙間形成部5を外装部材110の左側面110c及び右側面110dに接触させる方向に押圧することにより、上側密着部2及び下側密着部3を上下方向に曲げ、これにより、上側及び下側突起部114、115をそれぞれ上側及び下側係止孔22a、22bから抜くこともできる。
【0083】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えば、舌圧、嚥下圧等の口腔内で発生し得る力を測定する口腔内測定装置に着脱可能に取り付けられるカバーに本発明を適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明に係る口腔内測定装置用カバーは、例えば体温、舌圧、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力、咬合力等を測定する口腔内測定装置に取り付けて使用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 口腔内測定装置用カバー
2 上側密着部(第1密着部)
3 下側密着部(第2密着部)
4 左側隙間形成部(第1隙間形成部)
5 右側隙間形成部(第2隙間形成部)
7 上側咬合部
8 下側咬合部
21 先端側部
22 基端側部
100 口腔内測定装置
101c 咬合力検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29