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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051971
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】弁構成部材
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/10 20060101AFI20240404BHJP
   F04B 43/02 20060101ALI20240404BHJP
   F04B 43/04 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F04B39/10 N
F04B43/02 D
F04B43/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158384
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000205007
【氏名又は名称】大研医器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】キム ウルヒョン
【テーマコード(参考)】
3H003
3H077
【Fターム(参考)】
3H003AA04
3H003AC01
3H003CC06
3H077AA01
3H077AA11
3H077CC02
3H077CC09
3H077DD06
3H077EE01
3H077EE26
3H077EE35
3H077FF01
3H077FF12
3H077FF36
(57)【要約】
【課題】弁体に開放のための力が加わっていない状態における貫通孔と弁体との間の隙間の発生を抑制することが可能な弁構造を構成するための弁構成部材を提供する。
【解決手段】弁構成部材であって、貫通孔を有する第1の金属板と、貫通孔と重なる領域に形成された通過孔が形成された基部と、貫通孔を閉鎖可能な弁体と、弁体が通過孔内に位置するように基部に対して弁体を支持する一対の弁支持部と、を有し、弁体が貫通孔の縁部に対向するように第1の金属板に接合される第2の金属板と、を備え、弁支持部は基部側端部と中間部と弁体側端部とを有し、両端部は弁体の中心を通る基準中心線に重なる幅方向の中央線を有するとともに、弁体および基部よりも小さな幅寸法を有し、中間部は基準中心線と直交する方向において基準中心線から離れた位置まで延びる形状を有し、第1の金属板は基準中心線と交差する形状を有し中間部を板厚方向に貫通する貫通部を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁構造を構成するための弁構成部材であって、
貫通孔を有する第1の金属板と、
前記貫通孔と重なる領域に形成された通過孔が形成された基部と、前記貫通孔の縁部に接触することにより前記貫通孔を閉鎖可能な弁体と、前記弁体が前記通過孔内に位置するように前記基部に対して前記弁体を支持する一対の弁支持部と、を有し、前記弁体が前記貫通孔の縁部に対向するようにあらかじめ設定された位置関係で前記第1の金属板に接合される第2の金属板と、を備え、
前記一対の弁支持部は、前記基部における前記通過孔の縁部から前記弁体に向けて延びる基部側端部と、前記基部側端部の先端に設けられた中間部と、前記中間部から前記弁体まで延びる弁体側端部と、をそれぞれ有し、
前記基部側端部および前記弁体側端部は、前記第2の金属板の表面と直交する板直交方向に前記第2の金属板を見る直交視点において前記弁体の中心を通り、かつ、前記第2の金属板の表面に沿って延びる基準中心線に重なる幅方向の中央線をそれぞれ有するとともに、前記弁体および前記基部よりも小さな幅寸法を有し、
前記中間部は、前記直交視点において前記基部側端部および前記弁体側端部よりも前記基準中心線と直交する延出方向において前記基準中心線から離れた位置まで延びる形状を有し、
前記中間部には、前記直交視点において前記基準中心線と交差する形状を有するとともに前記中間部を板厚方向に貫通する貫通部が設けられている、弁構成部材。
【請求項2】
前記中間部は、前記基準中心線を基準として前記延出方向の一方にのみ延びる形状を有し、前記貫通部は、前記延出方向の他方に向けて開口する形状を有する、請求項1に記載の弁構成部材。
【請求項3】
前記一対の弁支持部を構成する前記各弁支持部の前記中間部は、いずれも前記基準中心線を基準として前記延出方向の同じ方向に延びる形状を有する、請求項2に記載の弁構成部材。
【請求項4】
前記第1の金属板は、前記第2の金属板に対して前記位置関係で位置決めされた状態で、前記板直交方向において前記中間部に対向する位置に、前記中間部の前記第1の金属板へ近づく方向への変位を規制する規制部を有する、請求項1に記載の弁構成部材。
【請求項5】
前記第2の金属板は、前記一対の弁支持部とは異なる少なくとも一対の別弁支持部を有し、
前記少なくとも一対の別弁支持部における各対は、前記基部における前記通過孔の縁部から前記弁体に向けて延びる別基部側端部と、前記別基部側端部の先端に設けられた別中間部と、前記別中間部から前記弁体まで延びる別弁体側端部と、をそれぞれ有し、
前記別基部側端部および前記別弁体側端部は、前記直交視点において前記弁体の中心を通り、かつ、前記第2の金属板の表面に沿って延び、前記基準中心線とは別の別基準中心線に重なる幅方向の中央線をそれぞれ有するとともに、前記弁体および前記基部よりも小さな幅寸法をそれぞれ有し、
前記別中間部は、前記直交視点において前記別基部側端部および前記別弁体側端部よりも前記別基準中心線と直交する別延出方向において前記別基準中心線から離れた位置まで延びる形状を有し、
前記基準中心線および前記少なくとも一対の弁支持部の別基準中心線の互いに隣接する2本の線の間にそれぞれ形成される複数の交角は同角度であり、
前記第1の金属板は、前記第2の金属板に対して前記位置関係で位置決めされた状態で、前記板直交方向において前記別中間部に対向する位置に、前記別中間部の前記第1の金属板へ近づく方向への変位を規制する別規制部を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の弁構成部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに積層された複数の金属板により形成された弁構造を構成するための弁構成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに積層された複数の金属板により形成された弁構造として、例えば特許文献1に開示されたマイクロポンプに使用される弁構造が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されたマイクロポンプは、流体を通過させるための孔をそれぞれ有する中板および固定板と、中板の孔と固定板の孔の間に配置された弁機構を有し、かつ中板と固定板との間に挟まれたバルブ板と、を備える。このマイクロポンプでは、中板とバルブ板の弁機構により弁構造が形成される。この弁構造によれば、弁機構の当接部が中板に当接して中板の孔を閉じることにより、固定板の孔から中板の孔へ向かう方向の流体の流動が規制され、その逆方向への流体の流動が許容される。
【0004】
このマイクロポンプを作製する際には、バルブ板は、中板および固定板に対して高温環境下で固定された後で室温環境に戻される。
【0005】
バルブ板は、流体を通過させるための通過孔が設けられた基部と、通過孔に設けられた弁機構と、を有する。弁機構は、中板の孔を閉じるため当接部と、基部に接続され、当接部を通過孔内に支持する2つの支持部と、を有する。
【0006】
特許文献1に記載のマイクロポンプでは、中板の孔の周囲に対して当接部を当接させるための付勢力を生じさせるために固定板及び中板の線膨張係数より大きな線膨張係数を有するバルブ板を採用し、かつ、固定板の孔を中板の孔よりも大きくすることにより、固定板の機械的剛性を中板の機械的剛性よりも小さくしている。
【0007】
そのため、マイクロポンプの作製時において、上記高温環境から室温環境に戻る際に、バルブ板は、線膨張係数の差に応じて固定板および中板よりも大きく収縮し圧縮応力が生じ、ここで、固定板の機械的剛性が中板の機械的剛性よりも小さいことにより、前記圧縮応力に応じて当接部が中板の孔に向かうようにバルブ板が変形する。このようにして、当接部を中板の孔に対して当接させるための付勢力が得られることが特許文献1に記載されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-83212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、弁機構に開放のための力が加わっていない状態において中板の孔の閉鎖状態を維持するために、当接部が中板に接触または近接して配置されることがある。この場合、マイクロポンプの作製時の高温環境において、当接部と中板とが接触した状態でさらに弁機構が膨張しようとすると、弁機構が中板から離れる方向に変位するおそれがある。この場合、弁機構に開放のための力が加わっていない状態において、中板の孔と弁機構との間に隙間が生じるため、不要な流体の流動が発生することとなる。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、弁機構(弁体)に開放のための力が加わっていない状態における中板の孔(貫通孔)と弁機構(弁体)との間の隙間の発生を抑制することが可能な弁構造を構成するための弁構成部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、第一の発明は、弁構造を構成するための弁構成部材であって、貫通孔を有する第1の金属板と、前記貫通孔と重なる領域に形成された通過孔が形成された基部と、前記貫通孔の縁部に接触することにより前記貫通孔を閉鎖可能な弁体と、前記弁体が前記通過孔内に位置するように前記基部に対して前記弁体を支持する一対の弁支持部と、を有し、前記弁体が前記貫通孔の縁部に対向するようにあらかじめ設定された位置関係で前記第1の金属板に接合される第2の金属板と、を備え、前記一対の弁支持部は、前記基部における前記通過孔の縁部から前記弁体に向けて延びる基部側端部と、前記基部側端部の先端に設けられた中間部と、前記中間部から前記弁体まで延びる弁体側端部と、をそれぞれ有し、前記基部側端部および前記弁体側端部は、前記第2の金属板の表面と直交する板直交方向に前記第2の金属板を見る直交視点において前記弁体の中心を通り、かつ、前記第2の金属板の表面に沿って延びる基準中心線に重なる幅方向の中央線をそれぞれ有するとともに、前記弁体および前記基部よりも小さな幅寸法を有し、前記中間部は、前記直交視点において前記基部側端部および前記弁体側端部よりも前記基準中心線と直交する延出方向において前記基準中心線から離れた位置まで延びる形状を有し、前記中間部には、前記直交視点において前記基準中心線と交差する形状を有するとともに前記中間部を板厚方向に貫通する貫通部が設けられている。
【0012】
第一の発明に係る弁構成部材によって構成された弁構造を備えるマイクロポンプを作製する場合、第1の金属板と第2の金属板とを重ねた状態で加熱し、接合する。その際に、各金属板は熱膨張するとともに、金属板を構成する結晶粒が成長する。
【0013】
第一の発明では、加熱時において基部によって一対の弁支持部および弁体が基準中心線に沿った方向に拘束されているため、一対の弁支持部および弁体は、熱膨張によって基準中心線に沿った方向に基部から圧縮力を受ける。このとき、弁支持部の中間部は、この圧縮力により、貫通部によって形成された隙間を縮める方向に変型し、弁支持部の両端部および弁体の受ける圧縮力を吸収することができる。そのため、この圧縮力が弁支持部および弁体を厚さ方向に曲げ変形させるように作用するのを抑制することができる。
【0014】
また、上記加熱の際、弁構造の第1の金属板に向く面の温度は、第1の金属板に向く面と反対側の面よりも高くなる。その理由は、次の通りである。
【0015】
弁体は、外力を受けていない状況において貫通孔を閉じるために、第1の金属板に対して接触または近接して配置される。その一方で、弁体が開放の方向に移動するために、弁体の第1の金属板から離れる方向には、第1の金属板に対するスペースよりも大きなスペースが確保される。そして、上記加熱により、第1の金属板から弁体に対して熱が伝達されることにより、弁支持部および弁体の第1の金属板に向く面の温度は、第1の金属板に向く面と反対側の面の温度よりも高くなる。
【0016】
ここで、第一の発明では、基部側端部と弁体側端部との間に設けられた中間部は、直交視点(z方向視点)において基部側端部および弁体側端部よりも基準中心線と直交する延出方向において基準中心線から離れた位置まで延びる形状を有し、基準中心線に対して直交する延出方向には拘束されていない。そのため、上記加熱時において中間部は、その両面の膨張量の差により、延出方向において基準中心線から離れるほど第1の金属板から離れるように変型する。
【0017】
具体的に、中間部における基部側端部との接続位置から延出方向の先端部に向けて、第1の金属板から離れるように中間部が変型する。一方、中間部における延出方向の先端部から弁体側端部に向けて、第1の金属板に近づくように中間部が変型する。このように中間部における弁体側端部に接続される部分が第1の金属板に近づく方向に変型することにより、貫通孔の閉鎖状態を維持するための力を弁体に与えることができる。
【0018】
第2の金属板の変型が熱膨張にだけ起因するものである場合、冷却後の熱収縮により第2の金属板は元の形状に戻るが、加熱時に第2の金属板の結晶粒の成長を経た場合には、第2の金属板の変型が保持されることが確認されている。これは、成長した結晶粒が冷却後もその状態に維持されるためであると考えられる。そのため、上記のような形状を有する第2の金属板においては、冷却後においても中間部が第1の金属板から離れる方向に変位した状態で第2の金属板(弁体および弁支持部)の形状が保持される。
【0019】
したがって、第一の発明によれば、上記のように中間部が変型することにより、弁支持部から貫通孔の閉鎖状態を維持するための保持力を弁体に与えることができ、この保持力により貫通孔と弁体との間の隙間の発生が抑制される。
【0020】
第二の発明は、第一の発明において、前記中間部は、前記基準中心線を基準として前記延出方向の一方にのみ延びる形状を有し、前記貫通部は、前記延出方向の他方に向けて開口する形状を有することが好ましい。
【0021】
第二の発明によれば、加熱により熱膨張した中間部は、基準中心線に沿った方向に生じる圧縮力により、貫通部によって形成された隙間を縮める方向に弁支持部が変型する。このとき、中間部の貫通部に隣接する部分が第1の金属板から離れる方向に変位する。その結果、弁体の基準中心線を基準として中間部と反対の部分に貫通孔の閉鎖状態を維持するための保持力を作用させることができる。
【0022】
第三の発明は、第二の発明において、前記一対の弁支持部を構成する前記各弁支持部の前記中間部は、いずれも前記基準中心線を基準として前記延出方向の同じ方向に延びる形状を有することが好ましい。
【0023】
第三の発明によれば、一対の弁支持部を構成する各弁支持部の基準中心線を基準とした配置が揃うため、弁体が貫通孔を開くときには、弁体は、各弁支持部の中間部の延出方向の先端部を中心として回動する。これにより、弁体における基準中心線を基準として中間部と反対の部分が、中間部側の部分よりも大きく開くため、流体を弁体の中間部と反対側に流動させやすくなる。すなわち、流体を所望の方向に流動させやすくなる。
【0024】
第四の発明は、第一から第三の発明において、前記第1の金属板は、前記第2の金属板に対して前記位置関係で位置決めされた状態で、前記板直交方向において前記中間部に対向する位置に、前記中間部の前記第1の金属板へ近づく方向への変位を規制する規制部を有することが好ましい。
【0025】
マイクロポンプでは、流体の流量を増やすため短い周期で貫通孔の開閉を行うと、弁支持部が弁体と共振することがある。このとき、振動の勢いによって弁支持部の中間部が第1の金属板へ近づく方向に過度に変位すると、弁体を持ち上げることとなり、弁体によって貫通孔を閉鎖しなければならない状態にもかかわらず貫通孔を開いてしまうおそれがある。
【0026】
第四の発明によれば、第1の金属板に設けられた規制部が、中間部の第1の金属板へ近づく方向への変位を規制するため、貫通孔を閉じなければならない状態において弁体が貫通孔を開くのを抑制することができる。
【0027】
第五の発明は、第一の発明から第三の発明のいずれか一つの発明において、前記第2の金属板は、前記一対の弁支持部とは異なる少なくとも一対の別弁支持部を有し、前記少なくとも一対の別弁支持部における各対は、前記基部における前記通過孔の縁部から前記弁体に向けて延びる別基部側端部と、前記別基部側端部の先端に設けられた別中間部と、前記別中間部から前記弁体まで延びる別弁体側端部と、をそれぞれ有し、前記別基部側端部および前記別弁体側端部は、前記直交視点において前記弁体の中心を通り、かつ、前記第2の金属板の表面に沿って延び、前記基準中心線とは別の別基準中心線に重なる幅方向の中央線をそれぞれ有するとともに、前記弁体および前記基部よりも小さな幅寸法をそれぞれ有し、前記別中間部は、前記直交視点において前記別基部側端部および前記別弁体側端部よりも前記別基準中心線と直交する別延出方向において前記別基準中心線から離れた位置まで延びる形状を有し、前記基準中心線および前記少なくとも一対の弁支持部の別基準中心線の互いに隣接する2本の線の間にそれぞれ形成される複数の交角は同角度であり、前記第1の金属板は、前記第2の金属板に対して前記位置関係で位置決めされた状態で、前記板直交方向において前記別中間部に対向する位置に、前記別中間部の前記第1の金属板へ近づく方向への変位を規制する別規制部を有することが好ましい。
【0028】
第五の発明では、弁支持部および規制部に加えて別弁支持部および別規制部を備えている。さらに、基準中心線および別基準中心線の互いに隣接する2本の線の間にそれぞれ形成される複数の交角が同角度である。
【0029】
そのため、一対の弁支持部のみで弁体を支持する場合と比較して、弁体を、貫通孔を閉鎖する状態に安定して維持することができるとともに弁体の開閉動作を安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、弁体に開放のための力が加わっていない状態における貫通孔と弁体との間の隙間の発生を抑制することが可能な弁構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、第1の実施形態に係るマイクロポンプを模式的に示す縦断面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る弁構造を+z方向から-z方向に向けて見たときの平面図である。
図3図3は、図2のIII-III線で切断した状態を示す斜視図である。
図4図4は、第9の板を+z方向から-z方向に向けて見たときの平面図である。
図5図5は、第10の板を+z方向から-z方向に向けて見たときの平面図である。
図6図6は、第11の板を+z方向から-z方向に向けて見たときの平面図である。
図7図7は、第10の板の導入弁を拡大して示す平面図である。
図8図8は、図4のVIII-VIII線での断面図である。
図9図9は、第10の板の導入弁を拡大して示す斜視図である。
図10図10は、第2の実施形態に係る第10の板の導入弁を拡大して示す平面図である。
図11図11は、第3の実施形態に係る第10の板の導入弁を拡大して示す平面図である。
図12図12は、第4の実施形態に係る第10の板の導入弁を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態に係る弁構成部材により構成された弁構造および当該弁構造を有するマイクロポンプについて図面に基づいて説明する。
【0033】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るマイクロポンプを模式的に示す縦断面図である。
【0034】
以下では、まず本実施形態に係るマイクロポンプの全体構造および動作についての概略を説明し、その後、弁構造について具体的に説明する。
【0035】
本実施形態では、図1において、右方向(図1に示される導入側弁構造3Aから排出側弁構造3Bに向かう方向)を+x方向、その反対方向を-x方向とし、+x方向と-x方向を総称して第1の方向xとする。また、図1に示される第1の板21~第13の板42の各板が延びる方向のうち、第1の方向xに直交する方向を第2の方向yとし、図1の紙面奥行き方向を+y方向、紙面手前方向を-y方向とする。第1の板21~第13の板42のそれぞれの表面と直交する方向を第3の方向zとし、第1の板21から第13の板42に向かう方向を+z方向、その反対方向を-z方向とする。
【0036】
図1に示すように、マイクロポンプ1は、流体の流路を有する流路部2と、流路部2を流れる流体の流動方向を一方向に規制する弁構造3と、流体に流動力を付与するポンプ部4と、ポンプ部4を駆動する圧電素子5と、を有する。
【0037】
流路部2は、流体が導入される導入口2aと、流体が排出される排出口2bと、導入口2aから導入された流体を弁構造3に誘導する導入流路2cと、弁構造3から排出された流体を排出口2bに誘導する排出流路2dと、導入流路2cと排出流路2dとを区画するように設けられた流路部側ダイヤフラム2eと、流路部側ダイヤフラム2eの排出流路2d側に設けられた流路部弁座2fと、を有する。流路部側ダイヤフラム2eは、弾性変形可能であり、導入流路2cを流れる流体の圧力が排出流路2dを流れる流体の圧力よりも所定の圧力以上高い場合において、図1に破線で示すように+z方向に変形して流体の導出を停止する。
【0038】
弁構造3は、導入流路2cに接続された導入側弁構造3Aと、排出流路2dに接続された排出側弁構造3Bと、を有する。導入側弁構造3Aは、導入弁3A1と、導入弁3A1との間で導入流路2cを閉じるための導入弁座3A2と、を有する。排出側弁構造3Bは、排出弁3B1と、排出弁3B1との間で排出流路2dを閉じるための排出弁座3B2と、を有する。導入側弁構造3Aおよび排出側弁構造3Bの詳細については後述する。
【0039】
ポンプ部4は、弁構造3に対向するように設けられたポンプ側ダイヤフラム4aと、ポンプ側ダイヤフラム4aの周囲から弁構造3に向かって立ち上がる側壁4bと、ポンプ室4cと、を有する。ポンプ室4cは、ポンプ側ダイヤフラム4a、側壁4bおよび弁構造3によって囲まれた空間であり、導入側弁構造3Aを介して導入流路2cに接続され、排出側弁構造3Bを介して排出流路2dに接続される。ポンプ側ダイヤフラム4aは、圧電素子5の作動に応じて、図1に破線で示すように+z方向に、または一点鎖線で示すように-z方向に弾性変形し、ポンプ室4c内の圧力を変動させ、導入流路2c、ポンプ室4c内および排出流路2dの流体を流動させる。
【0040】
導入弁3A1は、導入流路2cにおいて導入弁3A1の上流側の圧力がポンプ室4c内の圧力以下であるとき、導入弁座3A2に密着して導入流路2cを閉じる。一方、導入弁3A1の上流側の圧力がポンプ室4c内の圧力よりも高いとき、導入弁3A1は図1に破線で示すように+z方向に弾性変形し、導入弁座3A2から離れて導入流路2cを開く。
【0041】
排出弁3B1は、ポンプ室4c内の圧力が排出流路2dにおける排出弁3B1の下流側の圧力以下であるとき、排出弁座3B2に密着して排出流路2dを閉じる。一方、ポンプ室4c内の圧力が排出弁3B1の下流側の圧力よりも高いとき、排出弁3B1は図1に一点鎖線で示すように-z方向に弾性変形して排出弁座3B2から離れて排出流路2dを開く。
【0042】
マイクロポンプ1の流路部2と弁構造3とポンプ部4は、複数の金属板が積層され、隣接する金属板同士を接合することによって形成されている。具体的に、図1に示すように、流路部2は第1の板21~第8の板28、弁構造3は第9の板31~第11の板33、ポンプ部4は第12の板41および第13の板42によって、それぞれ形成されている。これらの金属板は、あらかじめ設定された位置関係で積層され状態で加熱され、隣接する金属板同士が拡散接合されている。これらの金属板は、例えばSUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼を冷間圧延して得られた鋼板を使用することができ、オーステナイト化温度以上に加熱して接合される。
【0043】
流路部2に関し、第1の板21には導入口2aおよび排出口2bが形成されており、第2の板22~第8の板28には導入流路2cおよび排出流路2dが形成されている。また、第4の板24の導入流路2cと排出流路2dとの間の部分は流路部側ダイヤフラム2eを構成し、第6の板26の第4の板24に対向する面には流路部弁座2fが形成されている。
【0044】
弁構造3に関し、第9の板31には、導入流路2c、導入弁座3A2および排出流路2dが形成され、第10の板32には導入弁3A1および排出弁3B1が形成され、第11の板33には導入流路2c、排出流路2dおよび排出弁座3B2が形成されている。
【0045】
ポンプ部4に関し、第12の板41には側壁4bが形成されており、第13の板42とともにポンプ室4cを形成する。
【0046】
図1を参照して、マイクロポンプ1の具体的な動作について説明する。
【0047】
マイクロポンプ1の停止状態において、圧電素子5に交流電力が供給されると、圧電素子5が作動し、それに伴いポンプ側ダイヤフラム4aが+z方向および-z方向に振動する。
【0048】
ポンプ側ダイヤフラム4aが破線で示すように+z方向、すなわちポンプ室4cが拡張する方向に変位すると、導入弁3A1の上流側の圧力がポンプ室4c内の圧力よりも高くなるため、導入弁3A1は破線で示すように導入流路2cを開く。このとき、ポンプ室4c内の圧力が排出弁3B1の下流側の圧力以下となるため、排出弁3B1は排出流路2dを閉じる。これにより、マイクロポンプ1の外部から導入口2aおよび導入流路2cを経てポンプ室4cに流体が導入される。
【0049】
その後、ポンプ側ダイヤフラム4aが一点鎖線で示すように-z方向、すなわちポンプ室4cが縮小する方向に変位すると、導入弁3A1の上流側の圧力がポンプ室4c内の圧力以下となるため、導入弁3A1は導入流路2cを閉じる。このとき、ポンプ室4c内の圧力が排出弁3B1の下流側の圧力よりも高くなるため、排出弁3B1は一点鎖線で示すように排出流路2dを開く。これにより、ポンプ室4cから排出流路2dおよび排出口2bを経てマイクロポンプ1の外部に流体が排出される。この動作を繰り返すことにより、マイクロポンプ1内において流体を一方向に流動させることができる。また、圧電素子5への給電時間または給電される交流電力の周波数等を制御することにより流体の流量を制御することができる。
【0050】
導入流路2cを流れる流体の圧力が、排出流路2dを流れる流体の圧力よりも所定の圧力以上高くなった場合には、流路部側ダイヤフラム2eが破線で示すように+z方向に弾性変形し、流路部弁座2fに接触する。これにより、排出流路2dを通じた流体の流動が規制される。
【0051】
次に、本実施形態に係る弁構造3について、詳細に説明する。
【0052】
図2は弁構造3を+z方向から-z方向に向けて見たときの平面図である。図3は、図2のIII-III線で切断した状態を示す斜視図である。図4は第9の板31を+z方向から-z方向に向けて見たときの平面図である。図5は第10の板32を+z方向から-z方向に向けて見たときの平面図である。図6は第11の板33を+z方向から-z方向に向けて見たときの平面図である。また、図7は第10の板32の導入弁3A1を拡大して示す平面図、図8図4のVIII-VIII線での断面図である。
【0053】
上述のように、弁構造3は、導入側弁構造3Aと、排出側弁構造3Bと、を有する。また、導入側弁構造3Aは導入弁3A1と導入弁座3A2とを有し、排出側弁構造3Bは排出弁3B1と排出弁座3B2とを有する。
【0054】
図2~5に示すように、導入側弁構造3Aは、導入側貫通孔3A3(貫通孔)を有する第9の板31(第1の金属板)と、第9の板31に接合された第10の板32(第2の金属板)と、を備える。第10の板32は、導入側貫通孔3A3と重なる領域に形成された導入側通過孔3A4(通過孔)が形成された基部32aと、導入側通過孔3A4内に設けられた導入弁3A1と、を有する。導入側貫通孔3A3は、導入流路2cの一部を構成する。
【0055】
導入弁3A1は、図3、5に示すように、導入側貫通孔3A3の縁部に接触することにより導入側貫通孔3A3を閉鎖可能な弁体3A5と、弁体3A5が導入側通過孔3A4内で導入側貫通孔3A3の縁部(導入弁座3A2)に対向するように基部32aに対して弁体3A5を支持する一対の弁支持部3A6と、を有する。
【0056】
一対の弁支持部3A6は、図7に示すように、基部32aにおける導入側通過孔3A4の縁部から弁体3A5に向けて延びる基部側端部3A7と、基部側端部3A7の先端に設けられた中間部3A8と、中間部3A8から弁体3A5まで延びる弁体側端部3A9と、をそれぞれ有する。
【0057】
本実施形態では、第10の板32の表面と直交する板直交方向(第3の方向z)に第10の板32を見る直交視点(以下「z方向視点」ともいう。)において弁体3A5の中心Oを通り、かつ、第10の板32の表面に沿って第2の方向yに延びる線を基準中心線Sとする。基部側端部3A7および弁体側端部3A9は、基準中心線Sに重なる幅方向の中央線C1、C2をそれぞれ有する。
【0058】
また、基部側端部3A7および弁体側端部3A9は、いずれも弁体3A5および基部32aよりも小さな幅寸法を有する。具体的に、基部側端部3A7の幅寸法W1および弁体側端部3A9の幅寸法W2は、いずれも弁体3A5の幅寸法W3および基部32aの幅寸法W4(図5参照)よりも小さい。なお、幅寸法W1~W4の基準となる幅方向は、z方向視点において基準中心線Sと直交する方向(第1の方向x)である。
【0059】
中間部3A8は、z方向視点において基部側端部3A7および弁体側端部3A9よりも基準中心線Sと直交する延出方向(第1の方向x)において基準中心線Sから離れた位置まで延びる形状を有する。また、中間部3A8は、z方向視点において、基準中心線Sと交差する形状を有するとともに、中間部3A8を板厚方向に貫通する貫通部3A10を有する。本実施形態では、中間部3A8は、延出方向の一方(-x方向)にのみ延びる形状を有し、貫通部3A10は延出方向の他方(+x方向)に向けて開口する形状を有する。
【0060】
第9の板31は、図3、4、7に示すように、第3の方向zにおいて中間部3A8に対向する位置に、中間部3A8の第9の板31へ近づく方向(-z方向)への変位を規制する規制部3A12を有する。
【0061】
第9の板31には、導入側通過孔3A4と第3の方向zに対向する位置に、第10の板32に向けて開口する凹部31aが形成されている。規制部3A12は、凹部31aの底面から第10の板32に向けて突出している。また、上述した導入弁座3A2も凹部31aの底面から第10の板32に向けて突出している。図8に示すように、規制部3A12および導入弁座3A2は、同じ突出高さを有する。このような規制部3A12及び導入弁座3A2は、例えば、金属板をエッチング加工することにより形成することができる。
【0062】
第11の板33には、図3、6に示すように、第3の方向zにおいて導入側通過孔3A4に対向する位置に、開口部33aが設けられている。開口部33aは、導入弁3A1が+z方向に弾性変形可能な空間を形成する。また、開口部33aは、導入流路2cの一部を構成する。
【0063】
排出側弁構造3Bは、導入側弁構造3Aを第3の方向zに反転した構造を有している。具体的に、排出側弁構造3Bでは第11の板33が導入側弁構造3Aにおける第9の板31の役割を果たしている。以下、排出側弁構造3Bにおける導入側弁構造3Aとの相違点を主に説明する。
【0064】
排出側弁構造3Bは、図2、4~6に示すように、第11の板33(第1の金属板)と、第11の板33に接合された第10の板32(第2の金属板)と、を備える。すなわち、排出側弁構造3Bは、導入側弁構造3Aと第10の板32を共有する。第11の板33には、前記開口部33aに加えて排出側弁構造3Bを構成する排出側貫通孔3B3(貫通孔)が設けられている。排出側貫通孔3B3は、排出流路2dの一部を構成する。
【0065】
第10の板32(第2の金属板)の基部32aには、図5に示すように、導入側弁構造3Aを構成する導入側通過孔3A4に加え、排出側貫通孔3B3と重なる領域に形成された排出側通過孔3B4(通過孔)が形成されている。第10の板32は、基部32aおよび導入弁3A1に加え、排出側通過孔3B4内に設けられた排出弁3B1を有する。
【0066】
排出弁3B1は、排出側貫通孔3B3の縁部に接触することにより排出側貫通孔3B3を閉鎖可能な弁体3B5と、弁体3B5が排出側通過孔3B4内で排出側貫通孔3B3の縁部(排出弁座3B2)に対向するように基部32aに対して弁体3B5を支持する一対の弁支持部3B6と、を有する。
【0067】
排出弁3B1の一対の弁支持部3B6は、基部側端部、中間部、弁体側端部と、をそれぞれ有する。弁支持部3B6は、図5に示されるように、導入側弁構造3Aと第1の方向xに対称な形状を有している点を除き、導入側弁構造3Aの弁支持部3A6と同様の構成を有するため、弁支持部3B6の各部の説明は省略する。
【0068】
第11の板33は、図6に示すように、開口部33aに加え、第3の方向zにおいて中間部3B8に対向する位置に、中間部3B8の第11の板33へ近づく方向(+z方向)への変位を規制する規制部3B12を有する。
【0069】
第11の板33には、第10の板32に向けて開口する凹部33bが形成されている。規制部3B12は、凹部33bの底面から第10の板32に向けて突出している。また、上述した排出弁座3B2も凹部33bの底面から第10の板32に向けて突出している。規制部3B12および排出弁座3B2も、同じ突出高さを有する。このような規制部3B12および排出弁座3B2は、例えば、金属板をエッチング加工することにより形成することができる。
【0070】
また、第9の板31には、図4に示すように、凹部31aに加え、排出側通過孔3B4と第3の方向zに対向する位置に、第10の板32に向けて開口する凹部31bが形成されている。凹部31bには、第3の方向zに貫通する2つの貫通孔31cが形成されている。2つの貫通孔31cの間の領域は、弁体3B5と第3の方向zに対向する位置に設けられており、排出弁3B1が-z方向に弾性変形した際に、弁体3B5が過度に-z方向に移動しないように弁体3B5の移動を規制する。
【0071】
弁構造3を製造する際には、第9の板31、第10の板32および第11の板33は、あらかじめ設定された位置関係で位置決めされた状態で拡散接合される。この位置関係で第9の板31、第10の板32および第11の板33が位置決めされた状態では、第3の方向zにおいて、弁体3A5が導入側貫通孔3A3の縁部に対向し、中間部3A8が規制部3A12に対向し、弁体3B5が排出側貫通孔3B3の縁部に対向し、中間部3B8が規制部3B12に対向する。第9の板31、第10の板32および第11の板33には、それぞれ隅部に位置合わせ用の貫通孔31m、32m、33mが設けられている。これらの貫通孔31m、32m、33mにピン等を挿入して、貫通孔31m、32m、33mを位置決めすることにより容易に第9の板31、第10の板32および第11の板33を、あらかじめ設定された位置関係で積層することができる。
【0072】
第9の板31、第10の板32および第11の板33はこのように積層された状態で加熱され、第10の板32と第9の板31と第11の板33とが互いに接合される。
【0073】
(作用、効果)
第1の実施形態に係る弁構造3を構成するための弁構成部材の第一例は、第9の板31と第10の板32とを有し、第二例は、第10の板32と第11の板33とを有する。第一例の弁構成部材によって、導入側弁構造3Aが構成される。また、第二例の弁構成部材によって、排出側弁構造3Bが構成される。第一例および第二例に係る弁構成部材による作用効果を以下に説明する。
【0074】
マイクロポンプ1を作製する場合、第9の板31と第10の板32と第11の板33とを重ねた状態で、加熱し、接合する。その際に、各金属板は熱膨張するとともに、金属板を構成する結晶粒が成長する。
【0075】
加熱時において、導入側弁構造3Aでは基部32aによって一対の弁支持部3A6および弁体3A5が基準中心線Sに沿った方向に拘束されており、排出側弁構造3Bでは基部32aによって一対の弁支持部3B6および弁体3B5が基準中心線Sに沿った方向に拘束されている。そのため、導入側弁構造3Aおよび排出側弁構造3Bのいずれにおいても、一対の弁支持部3A6、3B6および弁体3A5、3B5は、熱膨張によって基準中心線Sに沿った方向に基部32aから圧縮力を受ける。
【0076】
このとき、弁支持部3A6の中間部3A8は、この圧縮力により、貫通部3A10によって形成された隙間を縮める方向に変型し、弁支持部3A6の基部側端部3A7および弁体側端部3A9ならびに弁体3A5の受ける圧縮力を吸収することができる。そのため、この圧縮力が、弁支持部3A6および弁体3A5を厚さ方向に曲げ変形させるように作用するのを抑制することができる。排出側弁構造3Bでも同様に、圧縮力が弁支持部3B6および弁体3B5を厚さ方向に曲げ変形させるように作用するのを抑制することができる。
【0077】
また、上記加熱の際、一対の弁支持部3A6および弁体3A5の第9の板31に向く面の温度は、第9の板31に向く面と反対側の面よりも高くなり、一対の弁支持部3B6および弁体3B5の第11の板33に向く面の温度は、第11の板33に向く面と反対側の面よりも高くなる。その理由は、次の通りである。
【0078】
弁体3A5は、外力を受けていない状況において導入側貫通孔3A3を閉じるために、第9の板31に対して接触または近接して配置される。その一方で、弁体3A5が開放の方向に移動するために、弁体3A5の第9の板31から離れる方向には、第9の板31に対するスペースよりも大きなスペースが確保される。そして、上記加熱により、第9の板31から弁体3A5に対して熱が伝達されることにより、一対の弁支持部3A6および弁体3A5の第9の板31板に向く面の温度は、第9の板31に向く面と反対側の面の温度よりも高くなる。一対の弁支持部3B6および弁体3B5の第11の板33に向く面の温度についても、同様の理由により、第11の板33に向く面と反対側の面よりも高くなる。
【0079】
ここで、導入側弁構造3Aでは、基部側端部3A7と弁体側端部3A9との間に設けられた中間部3A8は、直交視点において基部側端部3A7および弁体側端部3A9よりも基準中心線Sと直交する延出方向(第1の方向x)において基準中心線Sから離れた位置まで延びる形状を有し、基準中心線に対して直交する延出方向には拘束されていない。そのため、上記加熱時において中間部3A8は、その両面の膨張量の差により、延出方向において基準中心線Sから離れるほど第9の板31から離れるように変型する。
【0080】
具体的に、中間部3A8における基部側端部3A7との接続位置から延出方向の先端部に向けて、図9に矢印Aで示すように、第9の板31から離れるように中間部3A8が変型する。一方、中間部3A8における延出方向の先端部から弁体側端部3A9に向けて、第9の板31に近づくように中間部3A8が変型する。このように中間部3A8における弁体側端部3A9に接続される部分が第9の板31に近づく方向に変型することにより、導入側貫通孔3A3の閉鎖状態を維持するための力を弁体3A5に与えることができる。なお、図9は、第10の板32の導入弁3A1を拡大して示す斜視図である。また、中間部3A8の変型量は非常に小さく、肉眼では確認できない程度である。排出側弁構造3Bでも、導入側弁構造3Aと同様に、上記加熱時において中間部3B8が変型することにより、排出側貫通孔3B3の閉鎖状態を維持するための力を弁体3B5に与えることができる。
【0081】
第10の板32の変型が熱膨張にだけ起因するものである場合、冷却後の熱収縮により第10の板32は元の形状に戻るが、加熱時に第10の板32の結晶粒の成長を経た場合には、第10の板32の変型が保持されることが確認されている。これは、成長した結晶粒が冷却後もその状態に維持されるためであると考えられる。
【0082】
そのため、上記のような形状を有する第10の板32においては、導入側弁構造3Aでは、冷却後においても中間部3A8が第9の板31から離れる方向に変位した状態で第10の板32(弁体3A5および弁支持部3A6)の形状が保持される。
【0083】
したがって、第一例の弁構成部材によれば、導入側弁構造3Aにおいて上記のように中間部3A8が変位することにより、弁支持部3A6から導入側貫通孔3A3の閉鎖状態を維持するための保持力(図9の矢印B)を弁体3A5に与えることができ、この保持力により導入側貫通孔3A3と弁体3A5との間の隙間の発生が抑制される。
【0084】
第二例の弁構成部材でも同様に、排出側弁構造3Bの冷却後においても中間部3B8が第11の板33から離れる方向に変位した状態で第10の板32(弁支持部3B6)の形状が保持され、弁支持部3B6から排出側貫通孔3B3の閉鎖状態を維持するための保持力を弁体3B5に与えることができ、排出側貫通孔3B3と弁体3B5との間の隙間の発生が抑制される。
【0085】
第1の実施形態に係る導入側弁構造3Aでは、第9の板31は、規制部3A12を有する。導入側弁構造3Aでは、流体の流量を増やすため短い周期で導入側貫通孔3A3の開閉を行うと、弁支持部3A6が弁体3A5と共振することがある。このとき、振動の勢いによって弁支持部3A6の中間部3A8が第9の板31へ近づく方向に過度に変位すると、弁体3A5を持ち上げることとなり、弁体3A5によって導入側貫通孔3A3を閉鎖しなければならない状態にもかかわらず導入側貫通孔3A3を開いてしまうおそれがある。
【0086】
しかし、導入側弁構造3Aでは、第9の板31に設けられた規制部3A12が、中間部3A8の第9の板31へ近づく方向への変位を規制するため、導入側貫通孔3A3を閉じなければならない状態において弁体3A5が導入側貫通孔3A3を開くのを抑制することができる。同様に、排出側弁構造3Bにおいても、第11の板33に設けられた規制部3B12により、排出側貫通孔3B3を閉じなければならない状態において弁体3B5が排出側貫通孔3B3を開くのを抑制することができる。
【0087】
[第2の実施形態]
第1の実施形態の導入弁3A1では、一対の弁支持部3A6の双方が基準中心線Sを基準として延出方向の同方向(-x方向)に延びている。一方、第2の実施形態の導入弁3A1では、一対の弁支持部3A6の各々が互いに異なる方向に延びている。以下、本発明の第2の実施形態について、第1の実施形態と異なる構成について主に説明する。
【0088】
図10は、第2の実施形態に係る第10の板32の導入弁3A1を拡大して示す平面図である。以下の説明では、図1図9に記載の構成要素と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0089】
第2の実施形態では、図10に示すように、+y方向側の弁支持部3A6の中間部3A8は延出方向のうち-x方向にのみ延びる形状を有し、-y方向側の弁支持部3A6の中間部3A8は+x方向にのみ延びる形状を有する。
【0090】
一対の弁支持部3A6の各々が第9の板31から離れる方向に変位し、+y方向側の弁支持部3A6から、弁体3A5の基準中心線Sを基準として+x方向側の部分に導入側貫通孔3A3の閉鎖状態を維持するための保持力を作用させることができる。また、-y方向側の弁支持部3A6から、弁体3A5の基準中心線Sを基準として-x方向側の部分に導入側貫通孔3A3の閉鎖状態を維持するための保持力を作用させることができる。
【0091】
なお、流体の流動方向の制御を容易とする観点では、第2の実施形態よりも第1の実施形態が有利であると考えられる。
【0092】
具体的に、第2の実施形態では、+y方向側の弁支持部3A6および-y方向側の弁支持部3A6の延びる方向が異なるため、弁体3A5が導入側貫通孔3A3を開く際には、弁体3A5が傾斜することなく開き、弁体3A5は-x方向の端部と+x方向の端部とで同程度の開度となる。これにより、導入側貫通孔3A3から流入して弁体3A5に衝突した流体は-x方向にも+x方向にも偏りなく流動する。
【0093】
一方、第1の実施形態では、一対の弁支持部3A6の双方が基準中心線Sを基準として延出方向の同方向(-x方向)に延びており、一対の弁支持部3A6の双方の基準中心線Sを基準とした配置が揃う。そのため、弁体3A5が導入側貫通孔3A3を開く際には、弁体3A5は、一対の弁支持部3A6の中間部3A8の延出方向(-x方向)の先端部を中心として回動する。これにより、弁体3A5における基準中心線Sを基準として+x方向側の部分が-x方向側の部分よりも大きく開くため、流体の流動方向を+x方向側に制御することができる。
【0094】
[第3の実施形態]
図11は、第3の実施形態に係る弁構造の第10の板32の導入弁3A1を拡大して示す平面図である。図11に示すように、本実施形態に係る導入側弁構造3Aにおいて導入弁3A1は、一対の弁支持部3A6と、さらに一対の弁支持部3A6とは異なる別の一対の弁支持部3A16(別弁支持部)と、を有する。
【0095】
一対の弁支持部3A6は、第2の実施形態に係る弁支持部3A6と同じ構成である。また、別の一対の弁支持部3A16は、第2の実施形態に係る弁支持部3A6を、z方向視点において弁体3A5の中心Oを中心として90°回転させたものである。
【0096】
一対の弁支持部3A16は、基部側端部3A17(別基部側端部)と中間部3A18(別中間部)と弁体側端部3A19(別弁体側端部)とをそれぞれ有する。
【0097】
本実施形態では、z方向視点において弁体3A5の中心Oを通り、かつ、第10の板32の表面に沿って第1の方向xに延びる線を、基準中心線Sとは別の基準中心線T(別基準中心線)とする。基部側端部3A17と弁体側端部3A19は、基準中心線Tに重なる幅方向の中央線C3、C4をそれぞれ有する。基準中心線Sと基準中心線Tは互いに隣接し、これらの2本の線の間にそれぞれ形成される複数の交角は同角度(直角)である。
【0098】
中間部3A18は、z方向視点において基部側端部3A17および弁体側端部3A19よりも基準中心線Tと直交する延出方向において基準中心線Tから離れた位置まで延びる形状を有する。本実施形態では、+x方向側の弁支持部3A16の中間部3A18が+y方向に延び、-x方向側の弁支持部3A16の中間部3A18が-y方向に延びている。
【0099】
本実施形態では、図11に示すように、第9の板31は、第1の実施形態と同様に、第3の方向zにおいて中間部3A8に対向する位置に、中間部3A8の第9の板31へ近づく方向(-z方向)への変位を規制する規制部3A12を有する。また、中間部3A18に対向する位置に、中間部3A18の-z方向への変位を規制する別の規制部3A22(別規制部)を有する。
【0100】
本実施形態の導入側弁構造3Aでは、弁支持部3A6および規制部3A12に加えて別の弁支持部3A16および別の規制部3A22を備えている。さらに、基準中心線Sおよび別の基準中心線Tの互いに隣接する2本の線の間にそれぞれ形成される複数の交角が同角度である。
【0101】
そのため、一対の弁支持部3A6のみで弁体を支持する場合と比較して、弁体3A5を第9の板31側の位置に安定して保持することができるとともに弁体3A5の開閉動作を安定して行うことができる。
【0102】
排出側弁構造3Bについても同様に弁体3B5を第11の板33側の位置に安定して保持することができるとともに弁体3B5の開閉動作を安定して行うことができる。
【0103】
第3の実施形態では、一対の弁支持部3A6とは異なる別の一対の弁支持部3A16を有する場合について説明した。しかし、第3の実施形態において、一対の弁支持部3A6とは異なる別の弁支持部を二対以上有してもよい。この場合、基準中心線Sおよび二対以上の弁支持部の基準中心線の互いに連接する2本の線の間にそれぞれ形成される複数の交角は同角度とすればよい。
【0104】
第3の実施形態では、一対の弁支持部3A6の各々が互いに基準中心線Sを基準として延出方向の異なる方向に延び、一対の弁支持部3A16も各々が基準中心線Tを基準として互いに異なる方向に延びているが、一対の弁支持部3A6の双方が同方向に延びていてもよく、一対の弁支持部3A16の双方が同方向に延びていてもよい。
【0105】
[第4の実施形態]
図12は、第4の実施形態に係る第10の板の導入弁を拡大して示す平面図である。第1の実施形態では、中間部3A8が延出方向の一方にのみ延びる形状を有するが、第4の実施形態では、図12に示すように、中間部3A8が延出方向の両方に延びる形状を有する。図12に示す中間部3A8は環状であり、貫通部3A10は延出方向のいずれにも開口せず、閉じた形状を有する。
【0106】
第4の実施形態に係る弁構成部材によっても、導入側貫通孔3A3と弁体3A5との間の隙間の発生が抑制される。
【0107】
なお、第1の実施形態に係る弁構造3において、排出側弁構造3Bの排出弁3B1を第2~第4の実施形態に係る導入弁3A1の形状としてもよく、導入弁3A1および排出弁3B1をそれぞれ第1~第4の実施形態のいずれかの形状とし、導入側弁構造3Aと排出側弁構造3Bとを異なる形状としてもよい。
【符号の説明】
【0108】
3 弁構造
3A 導入側弁構造(弁構造)
3A3 導入側貫通孔(貫通孔)
3A4 導入側通過孔(通過孔)
3A5 弁体
3A6 弁支持部
3A7 基部側端部
3A8 中間部
3A9 弁体側端部
3A10 貫通部
3A12 規制部
3A16 弁支持部(別弁支持部)
3A17 基部側端部(別基部側端部)
3A18 中間部(別中間部)
3A19 弁体側端部(別弁体側端部)
3B 排出側弁構造(弁構造)
3B3 排出側貫通孔(貫通孔)
3B4 排出側通過孔(通過孔)
3B5 弁体
3B6 弁支持部
3B7 基部側端部
3B8 中間部
3B9 弁体側端部
3B12 規制部
31 第9の板(第1の金属板)
32 第10の板(第2の金属板)
32a 基部
33 第11の板(第1の金属板)
C1 中央線(基部側端部の中央線)
C2 中央線(弁体側端部の中央線)
C3 中央線(別基部側端部の中央線)
C4 中央線(別弁体側端部の中央線)
O 中心(弁体の中心)
S 基準中心線
T 基準中心線(別基準中心線)
z 第3の方向(板直交方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12