(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051974
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】映像処理装置及び映像表示装置
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240404BHJP
B60R 1/20 20220101ALI20240404BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/20 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158387
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西谷 直輝
(72)【発明者】
【氏名】今任 祐基
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054EJ04
5C054FC14
5C054FE09
5C054FF03
5C054HA30
(57)【要約】
【課題】映像を注視した際の違和感を軽減しつつ視認性の高い表示を行うことが可能な映像処理装置を提供する。
【解決手段】車両の周囲を撮影した映像を強調化処理した強調化映像を生成する強調化処理部と、映像を平滑化処理した平滑化映像を生成する平滑化処理部と、映像の領域ごとに、平滑化映像、強調化映像、映像のいずれかを用いてディスプレイに表示する表示映像を生成する合成部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲を撮影した映像を強調化処理した強調化映像を生成する強調化処理部と、
前記映像を平滑化処理した平滑化映像を生成する平滑化処理部と、
前記映像の領域ごとに、前記平滑化映像、前記強調化映像、前記映像のいずれかを用いてディスプレイに表示する表示映像を生成する合成部と、
を有することを特徴とする映像処理装置。
【請求項2】
前記映像を複数に分割した分割領域ごとに前記強調化処理又は前記平滑化処理の優先度を算出する優先度計算部を有し、
前記合成部は、前記優先度に基づいて、前記平滑化映像、前記強調化映像、前記映像のいずれを用いるかをピクセルごとに選択することにより、前記表示映像を生成することを特徴とする請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項3】
前記優先度計算部は、前記車両の速度を示す速度情報を取得し、前記分割領域ごとに予め設定された前記強調化処理の強調度の情報と前記速度情報とに基づいて、前記優先度を算出することを特徴とする請求項2に記載の映像処理装置。
【請求項4】
前記強調化処理の強調度の情報は、前記車両の車体からの距離に基づいて前記分割領域ごとに予め設定されていることを特徴とする請求項3に記載の映像処理装置。
【請求項5】
前記強調化処理は、前記映像のエッジを強調する鮮明化処理であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の映像処理装置。
【請求項6】
車両の周囲を撮影した映像に対し、エッジを強調する鮮明化処理を行った鮮明化映像を生成する鮮明化処理部と、
前記映像を複数に分割した分割領域ごとに前記鮮明化処理の優先度を算出する優先度計算部と、
前記優先度に基づいて、前記映像及び前記鮮明化映像のいずれを用いるかをピクセルごとに選択することにより、ディスプレイに表示する表示映像を生成する合成部と、
を有することを特徴とする映像処理装置。
【請求項7】
車両の周囲を撮影した映像を取得する映像取得部と、
前記映像に基づく表示映像を表示する表示部と、
前記映像に対して映像処理を行い、前記表示映像を生成する映像処理部と、
を含み、
前記映像処理部は、
前記映像を強調化処理した強調化映像を生成する強調化処理部と、
前記映像を平滑化処理した平滑化映像を生成する平滑化処理部と、
前記映像の領域ごとに、前記平滑化映像、前記強調化映像、前記映像のいずれかを用いて前記表示映像を生成する合成部と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項8】
車両の周囲を撮影した映像を取得する映像取得部と、
前記映像に基づく表示映像を表示する表示部と、
前記映像に対して映像処理を行い、前記表示映像を生成する映像処理部と、
を含み、
前記映像処理部は、
前記映像に対し、エッジを強調する鮮明化処理を行った鮮明化映像を生成する鮮明化処理部と、
前記映像を複数に分割した分割領域ごとに前記鮮明化処理の優先度を算出する優先度計算部と、
前記優先度に基づいて、前記映像及び前記鮮明化映像のいずれを用いるかをピクセルごとに選択することにより、前記表示映像を生成する合成部と、
を有することを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像処理装置及び映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ルームミラーやサイドミラーを通して車両の周囲を視認することに代えて、車両の後方や側方に設置したカメラの映像をディスプレイに表示させる、所謂電子ミラーを用いた表示が行われている。このような電子ミラーを用いた表示には、通常の鏡では見えないものが見えるようになり、安全な運転につながるというメリットがある。
【0003】
しかし、車両を運転するドライバーは、運転中は遠方に目の焦点が合っているため、ディスプレイを視認しようとした際に焦点を合わせるまでに時間がかかるという問題があった。また、年齢とともに目の焦点を合わせるまでに時間がかかるようになるため、特に高齢のドライバーはディスプレイを視認しにくいという問題があった。
【0004】
そこで、ドライバーの違和感を軽減するため、表示画像のうちドライバーが注視すべき領域以外の一部の領域にぼかし処理を行う車載画像処理装置が提案されている(例えば、特許文献1)。また、表示範囲の一部の領域の画像を拡大して表示する車載撮像システムが提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-125894号公報
【特許文献2】特開2014-192777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術のように、ドライバーが注視すべき領域以外の領域をぼかす方法では、ドライバーの注視すべき領域の視認性が十分に高くなるとはいえないという問題があった。特に、自車両の速度が高い場合には他の車両との距離をドライバーが把握し難くなるため、他の車両自体の表示が鮮明でないと運転の安全性を十分に向上させることができないという問題があった。
【0007】
また、一部の領域の画像を拡大して表示する方法では、ドライバーの視野に合わせて映像サイズを変更するため、映像サイズの変更に合わせて視点を変更する必要があり、やはり目の焦点を合わせるまでに時間がかかってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、映像を注視した際の違和感を軽減しつつ視認性の高い表示を行うことが可能な映像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る映像処理装置は、車両の周囲を撮影した映像を強調化処理した強調化映像を生成する強調化処理部と、前記映像を平滑化処理した平滑化映像を生成する平滑化処理部と、前記映像の領域ごとに、前記平滑化映像、前記強調化映像、前記映像のいずれかを用いてディスプレイに表示する表示映像を生成する合成部と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る映像処理装置は、車両の周囲を撮影した映像に対し、エッジを強調する鮮明化処理を行った鮮明化映像を生成する鮮明化処理部と、前記映像を複数に分割した分割領域ごとに前記鮮明化処理の優先度を算出する優先度計算部と、前記優先度に基づいて、前記映像及び前記鮮明化映像のいずれを用いるかをピクセルごとに選択することにより、ディスプレイに表示する表示映像を生成する合成部と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る表示装置は、車両の周囲を撮影した映像を取得する映像取得部と、前記映像に基づく表示映像を表示する表示部と、前記映像に対して映像処理を行い、前記表示映像を生成する映像処理部と、を含み、前記映像処理部は、前記映像を強調化処理した強調化映像を生成する強調化処理部と、前記映像を平滑化処理した平滑化映像を生成する平滑化処理部と、前記映像の領域ごとに、前記平滑化映像、前記強調化映像、前記映像のいずれかを用いて前記表示映像を生成する合成部と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る表示装置は、車両の周囲を撮影した映像を取得する映像取得部と、前記映像に基づく表示映像を表示する表示部と、前記映像に対して映像処理を行い、前記表示映像を生成する映像処理部と、を含み、前記映像処理部は、前記映像に対し、エッジを強調する鮮明化処理を行った鮮明化映像を生成する鮮明化処理部と、前記映像を複数に分割した分割領域ごとに前記鮮明化処理の優先度を算出する優先度計算部と、前記優先度に基づいて、前記映像及び前記鮮明化映像のいずれを用いるかをピクセルごとに選択することにより、前記表示映像を生成する合成部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る映像処理装置によれば、ドライバーの違和感を軽減して視認性の高い表示を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施例の映像処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】映像補正LSIの内部構成を示すブロック図である。
【
図3A】分割領域ごとの鮮明化及び平滑化処理の例を示す図である。
【
図3B】分割領域ごとの鮮明化及び平滑化処理の例を示す図である。
【
図3C】分割領域ごとの鮮明化及び平滑化処理の例を示す図である。
【
図4】車体からの距離及び車両速度と鮮明化及び平滑化処理との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【0016】
図1は、本発明に係る映像表示システム100の構成を示すブロック図である。映像表示システム100は、車両CAに搭載され、車両CAの周辺を撮影した映像を表示する車載用の映像表示システムである。
【0017】
映像表示システム100は、映像取得部11、映像補正LSI12、ディスプレイ13及び制御MCU14を有する。
【0018】
映像取得部11は、例えば車両CAに搭載された車載カメラから構成され、車両CAの周辺を撮影するべく、車両CAの車体の所定の取り付け位置に固定されている。映像取得部11は、車両周辺を撮影して得た映像信号を入力映像VSとして映像補正LSI12に供給する。
【0019】
映像補正LSI(Large Scale Integration)12は、映像取得部11から供給された入力映像VSに対して補正処理を行う回路部である。具体的には、映像補正LSI12は、入力映像VSの一部の領域を強調して表示するための補正処理(以下、強調化処理と称する)を行う。なお、本実施例では、強調化処理の一例として、エッジを強調する鮮明化処理を行う場合を例として以下の説明を行う。映像補正LSI12は、入力映像VSに補正処理を施した映像データを出力映像VDとして、ディスプレイ13に供給する。
【0020】
ディスプレイ13は、例えば液晶表示装置から構成され、映像補正LSI12から出力された出力映像VDを表示する。
【0021】
制御MCU(Micro Controller Unit)14は、映像補正LSI12による映像補正処理を制御する制御部である。制御MCU14は、例えば車両CAに搭載された車速センサによって取得された車両CAの速度情報に基づいて、映像補正LSI12による映像補正処理の制御を行う。
【0022】
図2は、映像補正LSI12の構成を示すブロック図である。映像補正LSI12は、鮮明化部21、平滑化部22、優先度計算部23、メモリ24及び合成部25を含む。
【0023】
鮮明化部21は、入力映像VSに対して、エッジを強調する鮮明化処理を施す処理部である。鮮明化部21は、優先度計算部23によって算出された優先度に応じて鮮明化のゲイン(度合い)を変化させつつ、入力映像VSに対して鮮明化処理を行う。鮮明化部21は、処理結果を鮮明化映像VS1として合成部25に供給する。
【0024】
平滑化部22は、入力映像VSに対して平滑化処理を施す処理部である。平滑化部22は、例えばガウンシアンフィルタを用いて平滑化処理を行う。平滑化部22は、優先度計算部23によって算出された優先度に応じて平滑化のゲイン(度合い)を変化させつつ、入力映像VSに対して平滑化処理を行う。平滑化部22は、処理結果を平滑化映像VS2として合成部25に供給する。
【0025】
優先度計算部23は、制御MCU14から供給された車両CAの速度情報“v”及びメモリ24から読み出した優先度領域情報“u”に基づいて、鮮明化及び平滑化の優先度を計算し、その算出結果を鮮明化部21、平滑化部22及び合成部25にそれぞれ供給する。なお、本実施例では、速度情報“v”及び優先度領域情報“u”は、いずれも基準値を0として「-0.5~+0.5」の値をとるように相対化された数値として表されている。優先度計算部23は、「u+v」を計算することにより、優先度を算出する。
【0026】
例えばu+v>0である場合、鮮明化処理の優先度が高い。また、u+v<0である場合、平滑化処理の優先度が高い。また、u+v=0である場合、鮮明化及び平滑化の優先度が同じであり、いずれの処理も行わない素の入力映像VSが優先される。
【0027】
本実施例では、映像をディスプレイ13に表示した際の1画面分の表示領域のうち、一般的に車体のとの距離が近いとされる領域は平滑化よりも鮮明化の優先度が高く、一般的に車体との距離が遠いとされる領域は鮮明化よりも平滑化の優先度が高くなるように、優先度の計算が行われる。
【0028】
また、本実施例では、車速が高速である場合は鮮明化及び平滑化の優先度が高く、車速が低速である場合は鮮明化及び平滑化の優先度が低くなるように、優先度の計算が行われる。すなわち、車速が高速である場合には、複数の分割領域のうち、鮮明化の優先度が高い領域については鮮明化の度合いがより高くなり、平滑化の優先度が高い領域については平滑化の度合いがより高くなるように優先度が計算される。一方、車速が低速である場合には、鮮明化の優先度が高い領域及び平滑化の優先度が高い領域のいずれについても、鮮明化及び平滑化の度合いが低くなるように(すなわち、鮮明化も平滑化もあまり行われないように)優先度が計算される。
【0029】
メモリ24は、映像補正LSI12の内部又は外部に設けられた不揮発性の半導体メモリであり、例えばNAND又はNOR型のシリアル・フラッシュメモリから構成されている。メモリ24は、分割領域ごとの鮮明化及び平滑化の優先度の情報である優先度領域情報“u”を格納する。
【0030】
本実施例では、1画面分の表示領域を6つに分割した分割領域ごとに優先度“u”が設定されている。例えば、画面縦方向を2段(すなわち、上段、下段)、画面横方向を3段(すなわち、左、中央、右)に分けた6つの分割領域のうち、下段中央の領域は一般的に車体との距離が比較的近い領域であるとして、鮮明化の優先度が高い領域として予め設定されている。また、上段左右の領域は一般的に車体との距離が比較的遠い領域であるとして、平滑化の優先度が高い領域として予め設定されている。また、下段左右及び上段中央の領域は一般的に車体との距離が中程度の領域であるとして、鮮明化及び平滑化の優先度がいずれも中程度の領域として予め設定されている。
【0031】
合成部25は、映像取得部11から供給された入力映像VS、鮮明化部21から供給された鮮明化映像VS1及び平滑化部22から供給された平滑化映像VS2に基づいて、ディスプレイ13に表示する表示映像である出力映像VDを生成する。合成部25は、映像の領域ごとに入力映像VS、鮮明化映像VS1及び平滑化映像VS2のいずれかを用いることにより、出力映像VDを生成する。
【0032】
例えば、本実施例では、合成部25は、優先度計算部23により計算された優先度の情報に基づいて、入力映像VS、鮮明化映像VS1及び平滑化映像VS2のいずれを用いるかをピクセルごとに選択する。選択されたピクセルごとの映像が組み合わさることにより、全体としての出力映像VDが生成される。
【0033】
図3A~
図3Cは、分割領域ごとの鮮明化及び平滑化処理の例を示す図である。ここでは、鮮明化の度合いを「強調度」として1~5までの5段階で表している。すなわち、鮮明化の度合いが高い場合は強調度の数値が“5”に近くなり、平滑化の度合いが高い場合には強調度の数値が“1”に近くなる。
【0034】
なお、以下の説明では、車速が第1の基準値よりも低い場合を低速、第1の基準値以上且つ第2の基準値未満の場合を中速、第2の基準値以上の場合を高速と称する。
【0035】
図3Aは、車両CAの速度が低速である場合の分割領域ごとの強調度を示す図である。車速が低速である場合、分割領域ごとの強調度は一様に“3”となり、鮮明化及び平滑化を行わない状態の入力映像VSに近い状態となる。
【0036】
図3Bは、車両CAの速度が中程度(中速)である場合の分割領域ごとの強調度を示す図である。車速が中速である場合、下段中央の領域は強調度“4”、上段右側及び上段左側の領域は強調度“2”、上段中央、下段右側及び下段左側の領域は強調度“3”となる。
【0037】
図3Cは、車両CAの速度が中程度(中速)である場合の分割領域ごとの強調度を示す図である。車速が高速である場合、下段中央の領域は強調度“5”、上段右側及び上段左側の領域は強調度“1”、上段中央、下段右側及び下段左側の領域は強調度“2”となる。
【0038】
上記の通り、下段中央の領域は、一般的に車両CAの車体との距離が比較的近い領域であるとして、鮮明化の優先度が高く設定されている領域である。また、上段右側及び上段左側の領域は、一般的に車両CAの車体との距離が比較的遠い領域であるとして、平滑化の優先度が高く設定されている領域である。また、上段中央、下段右側及び下段左側の領域は、一般的に車両CAの車体との距離が中程度の領域であるとして、鮮明化及び平滑化いずれの優先度も中程度に設定されている領域である。
【0039】
また、上記の通り、車速が低速である場合は鮮明化及び平滑化のいずれの優先度も低く、車速が高速である場合は鮮明化及び平滑化のいずれの優先度も高くなるように設定されている。このため、車速が低速である
図3Aでは、領域ごとの差異が出ないように映像補正が行われ、強調レベルは一様となる。
図3Bのように車速が高くなると、鮮明化の優先度が高い領域の強調度が大きくなり、その領域の画像が強調されてくっきりと表示される。また、
図3Cのようにさらに車速が高くなると、鮮明化の優先度が高い領域をさらに強調するように表示が行われる。換言すると、車速が上がるにしたがって、鮮明化及び平滑化のコントラストが上がるように映像補正が行われる。
【0040】
図4は、車体からの距離及び車速と強調度との関係を示す図である。車速が低速である場合、車体からの距離にかかわらず強調度は一様に“3”となる。車速が中速である場合、車体からの距離が近い領域は強調度“4”、車体からの距離が遠い領域は強調度“2”、それ以外の領域は強調度“3”となる。すなわち、車体からの距離が近い領域に対しては一定のレベルで鮮明化が行われ、車体からの距離が遠い領域に対しては一定のレベルで平滑化が行われる。また、車速が高速である場合、車体からの距離に応じて“1”~“5”まで異なる強調度となる。すなわち、車体からの距離に応じて鮮明化又は平滑化が行われ、強調度の差異が大きくなる。
【0041】
本実施例の映像表示システム100のように、車両CAの周辺を撮影した映像を表示する車載用の映像表示システムでは、ドライバーが注視すべき表示領域については強調して表示し、それ以外の領域についてはぼやかして表示をすることにより、ドライバーは必要な領域のみを短時間で視認することができる。
【0042】
また、一般的に車体からの被写体までの距離が近いことが想定される領域では強調度を大きく、車体から被写体までの距離が遠いことが想定される領域では強調度を小さくすることにより、疑似的に距離感を生成し、視認性を高めることが可能となる。
【0043】
また、車速が低い場合には全体が一様の強調度で表示されるようにし、車速が高い場合には強調すべき領域はより強調することにより、ドライバーに注視を促し、運転の安全性に資することができる。
【0044】
なお、本発明は上記実施例で示したものに限られない。例えば、上記実施例では、強調化処理の一例として、エッジを強調する鮮明化処理を行う場合を例として説明した。しかし、強調化の具体的な方法は鮮明化処理に限られず、一部の領域を強調しつつその他の領域をぼやかすように、すなわち強調度に差異を設けるように構成されていればよい。
【0045】
また、上記実施例では、1画面分の表示領域を縦方向2段(上下)、横方向3段(左中右)の6つの分割領域に分割し、分割領域ごとに鮮明化及び平滑化の優先度を算出して処理を行う場合を例として説明した。しかし、鮮明化及び平滑化の対象となる領域の分類の仕方は、このように表示画面を複数の領域に矩形分割するものに限られない。例えば、表示領域をカメラの中心に対応する位置から外側に向かって複数の領域に分類し、領域ごとに鮮明化及び平滑化の優先度を設定して各処理を行う構成であってもよい。
【0046】
また、上記実施例では、6つの分割領域のうち、下段中央の領域は一般的に車体との距離が近く、上段左右の領域は一般的に車体との距離が遠く、それ以外の領域は一般的に車体との距離が中程度の領域であるとして、優先度が予め設定されている場合を例として説明した。しかし、これとは異なり、測距センサ等を用いて実際に被写体までの距離を測定し、測定結果に基づいて優先度をその都度設定する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
100 映像表示システム
11 映像取得部
12 映像補正LSI
13 ディスプレイ
14 制御MCU
21 鮮明化部
22 平滑化部
23 優先度計算部
24 メモリ
25 合成部