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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051977
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
   A01D 69/12 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A01D69/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158393
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】金山 睦
【テーマコード(参考)】
2B076
【Fターム(参考)】
2B076AA03
2B076BA08
2B076FA01
2B076FA03
2B076FA04
2B076FA05
2B076FA06
2B076FA07
2B076FB01
2B076FB04
2B076FB05
2B076FB06
(57)【要約】
【課題】作業車両における機械的な作動部分である対象部への潤滑油の注油の作業負担が少なく、注油を忘れることに起因した対象部の摩耗を低減させることが制可能な管理システムを提供することを課題とする。
【解決手段】作業車両に設けられ且つ対象部への注油を行う注油装置と、該注油装置による対象部への注油を行うための操作を行う注油操作具と、報知手段と、作業車両に搭載された制御装置又は作業車両と通信可能な制御装置とを備え、制御装置は、記憶部及び時間計測手段を有し、対象部への注油のスケジュールに関する情報であるスケジュール情報を生成して記憶部に記憶し、スケジュール情報及び時間計測手段による計測結果に基づいて対象部への注油のタイミングを判断し、その判断の結果、注油のタイミングであると判断された場合に報知を行う。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両における機械的な作動部分である対象部への注油を管理する管理システムであって、
前記作業車両に設けられ且つ前記対象部に潤滑油を供給して注油を行う注油装置と、
前記注油装置による前記対象部への注油を行うための手動操作である注油操作を行う注油操作具と、
報知を行う報知手段と、
前記作業車両に搭載された制御装置又は前記作業車両と通信可能な制御装置とを備え、
前記制御装置は、記憶部と、時間を計測する時間計測手段とを有し、
前記制御装置は、
前記対象部への注油のスケジュールに関する情報であるスケジュール情報を生成して前記記憶部に記憶するスケジュール情報生成処理と、
前記記憶部に記憶された前記スケジュール情報及び前記時間計測手段による計測結果に基づいて前記対象部に注油を行うタイミングを判断する注油タイミング判断処理と、
前記注油タイミング判断処理によって判断される注油のタイミングで前記報知手段による報知を実行する注油タイミング報知処理と、
を実行可能に構成された
ことを特徴とする管理システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記対象部への潤滑油の注油の状況に関する情報である注油情報を取得する注油情報取得処理と、
前記記憶部に記憶される前記スケジュール情報を前記注油情報に基づいて補正するための処理であるスケジュール情報補正処理と、
を実行可能に構成された
請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記対象部の稼働状況に関する情報である稼働情報を取得する稼働状況取得処理と、
前記記憶部に記憶される前記スケジュール情報を前記稼働情報に基づいて補正するための処理であるスケジュール情報補正処理と、
を実行可能に構成された
請求項1に記載の管理システム。
【請求項4】
前記注油装置によって前記対象部に供給される潤滑油の量を設定する注油量設定手段を備え、
前記制御部は、前記注油操作を検出可能であるとともに前記注油装置を制御可能なように構成され、
さらに、前記制御部は、前記注油操作を検出した場合、前記注油量設定手段により設定された量の潤滑油が前記対象部に自動的に注油されるように前記注油装置を制御する自動注油処理を実行可能に構成された
請求項1乃至3の何れかに記載の管理システム。
【請求項5】
前記注油装置による注油の時間的な間隔を設定するタイミング設定手段を備え、
前記制御部は、前記タイミング設定手段による設定が反映された前記スケジュール情報を前記憶部に記憶するように構成された
請求項1乃至3の何れかに記載の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両における機械的な作動部分である対象部への注油を管理する管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバイン等の作業車両に設けられ且つ対象部に潤滑油を供給して注油を行う注油装置と、前記注油装置による前記対象部への注油を行うための手動操作である注油操作を行う注油操作具とを備えた作業車両が公知になっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
該構成の作業車両によれば、注油操作という負担の少ない作業によって、対象部への注油を気軽に行うことが可能になる一方で、注油のタイミングは、作業者の意思に委ねられているため、対象部への注油を作業者が忘れるリスクがあり、その場合、潤滑油の不足により対象部の摩耗が進む等の不具合が発生する可能性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-033319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、作業車両における機械的な作動部分である対象部への潤滑油の注油の作業負担が少なく、注油を忘れることに起因した対象部の摩耗を低減させることが制可能な管理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、作業車両における機械的な作動部分である対象部への注油を管理する管理システムであって、前記作業車両に設けられ且つ前記対象部に潤滑油を供給して注油を行う注油装置と、前記注油装置による前記対象部への注油を行うための手動操作である注油操作を行う注油操作具と、報知を行う報知手段と、前記作業車両に搭載された制御装置又は前記作業車両と通信可能な制御装置とを備え、前記制御装置は、記憶部と、時間を計測する時間計測手段とを有し、前記制御装置は、前記対象部への注油のスケジュールに関する情報であるスケジュール情報を生成して前記記憶部に記憶するスケジュール情報生成処理と、前記記憶部に記憶された前記スケジュール情報及び前記時間計測手段による計測結果に基づいて前記対象部に注油を行うタイミングを判断する注油タイミング判断処理と、前記注油タイミング判断処理によって判断される注油のタイミングで前記報知手段による報知を実行する注油タイミング報知処理と、を実行可能に構成されたことを特徴とする。
【0007】
前記制御部は、前記対象部への潤滑油の注油の状況に関する情報である注油情報を取得する注油情報取得処理と、前記記憶部に記憶される前記スケジュール情報を前記注油情報に基づいて補正するための処理であるスケジュール情報補正処理と、を実行可能に構成されたものとしてもよい。
【0008】
前記制御部は、前記対象部の稼働状況に関する情報である稼働情報を取得する稼働状況取得処理と、前記記憶部に記憶される前記スケジュール情報を前記稼働情報に基づいて補正するための処理であるスケジュール情報補正処理と、を実行可能に構成されたものとしてもよい。
【0009】
前記注油装置によって前記対象部に供給される潤滑油の量を設定する注油量設定手段を備え、前記制御部は、前記注油操作を検出可能であるとともに前記注油装置を制御可能なように構成され、さらに、前記制御部は、前記注油操作を検出した場合、前記注油量設定手段により設定された量の潤滑油が前記対象部に自動的に注油されるように前記注油装置を制御する自動注油処理を実行可能に構成されたものとしてもよい。
【0010】
前記注油装置による注油の時間的な間隔を設定するタイミング設定手段を備え、前記制御部は、前記タイミング設定手段による設定が反映された前記スケジュール情報を前記憶部に記憶するように構成されたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
作業車両における機械的な作動部分である対象部への注油は、注油操作具の注油操作によって実行されるため、作業負担が低減されるとともに、その注油操作のタイミングも報知手段によって報知されるため、対象部への注油を忘れる事態も防止され、それに起因した対象部の摩耗も効率的に防止することが可能になる。
【0012】
前記制御部は、前記対象部への潤滑油の注油の状況に関する情報である注油情報を取得する注油情報取得処理と、前記記憶部に記憶される前記スケジュール情報を前記注油情報に基づいて補正するための処理であるスケジュール情報補正処理と、を実行可能に構成されたものによれば、実際に注油された実態に即して、注油操作のタイミングを適切に報知可能になる。
【0013】
前記制御部は、前記対象部の稼働状況に関する情報である稼働情報を取得する稼働状況取得処理と、前記記憶部に記憶される前記スケジュール情報を前記稼働情報に基づいて補正するための処理であるスケジュール情報補正処理と、を実行可能に構成されたものによれば、対象部の実際の稼働状況に即して、注油操作のタイミングを適切に報知可能になる。
【0014】
前記注油装置によって前記対象部に供給される潤滑油の量を設定する注油量設定手段を備え、前記制御部は、前記注油操作を検出可能であるとともに前記注油装置を制御可能なように構成され、さらに、前記制御部は、前記注油操作を検出した場合、前記注油量設定手段により設定された量の潤滑油が前記対象部に自動的に注油されるように前記注油装置を制御する自動注油処理を実行可能に構成されたものによれば、注油の間、注油操作を継続させる必要が無いため、操作負担を軽減できる他、対象部に注油する潤滑の量を、状況に応じて適宜変更できる。
【0015】
前記注油装置による注油の時間的な間隔を設定するタイミング設定手段を備え、前記制御部は、前記タイミング設定手段による設定が反映された前記スケジュール情報を前記憶部に記憶するように構成されたものによれば、状況に応じて、注油の頻度を適宜変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用したコンバインの側面図である。
図2】本発明を適用したコンバインの平面図である。
図3】注油装置の構成を概念的に説明する説明図である。
図4】操縦部の平面図である。
図5】手動注油操作ユニットの正面図である。
図6】制御装置の構成を示すブロック図である。
図7】記憶部の構成を示すブロック図である。
図8】実行部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2は、コンバインの側面図及び平面図である。作業車両の一種であるコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置(走行部)1,1を含む走行機体2と、該走行機体2の前方に配置され且つ該走行機体2に昇降可能に連結された前処理部3とを備えている。
【0018】
前処理部3は、圃場の稲等の穀稈を引起す引起し装置4と、該引起し装置4によって引き起こされた穀稈を後方に掻き込んだ後に後方に搬送する搬送装置6と、前処理部3側に掻き込まれた穀稈を刈る刈刃7とを有している。本コンバインは、前処理部3を作業位置に下降させた状態で、走行機体2を前進走行させることによって、圃場の穀稈の刈取作業を行う。
【0019】
走行機体2は、その前部の右寄りに位置し且つオペレータが乗り込む操縦部8と、該操縦部8を覆うキャビン9と、該キャビン9の左斜め後方に配置された且つ前処理部3で刈取られて後方に搬送されてくる穀稈の脱穀作業を行う脱穀装置11と、該脱穀装置11の後方に配置され且つ脱穀処理された後の穀稈である藁屑の処理を行う後処理部12と、キャビン11の後方且つ脱穀装置12の右側に配置されたグレンタンク13と、該グレンタンク13に収容された穀粒を機外に排出する排出オーガ14と、を備えている。
【0020】
脱穀装置12の内部の上側には脱穀部(図示しない)が設けられ、その下側には選別部(図示しない)が設けられ、該脱穀部の外側側方(具体的には、左側方)には、前処理部3によって刈り取られて後方に搬送されてくる穀稈を受け取ってさらに後方に搬送するフィードチェーン16が設けられている。
【0021】
フィードチェーン16は、穀稈の穂先側が脱穀装置12の内部における脱穀部側に挿入されるように、その株元側を保持した状態で、該穀稈を後方に搬送する。穀稈は、フィードチェーン16により後方に搬送される過程で、脱穀部により脱穀処理され、最終的に全体又は略全体が脱粒されて排藁になる。穀稈から脱粒された処理物は、選別部に落下する。選別部は、処理物を、籾等の穀粒と、それ以外の藁屑等である排出物とに選別する。穀粒はグレンタンク13の内部に移送されて収容される一方で、排出物は走行機体2の後端側から機外に排出される。
【0022】
後処理部12は、フィードチェーン16から排藁となった穀稈を受け取ってさらに後方に搬送する。後処理部12は、自身により後方搬送した穀稈を、切断処理した後、走行機体2の後端側から機外に排出するか、或いは、そのままの状態で、走行機体2の後端側から機外に排出する。
【0023】
排出オーガ14は、グレンタンク14の後部から上方に突出する上下方向の縦筒17と、その基端部から先端部に向かって一直線状に形成された排出筒18と、を有している。縦筒17は、自身の軸回りに左右回動駆動可能に、左右のクローラ式走行装置1,1に支持されたシャーシである機体フレーム2aに支持されている。排出筒18は、その基端部を支点として上下揺動駆動可能に縦筒17の上端部に支持されている。排出筒18の先端部には、下方に開放された排出口18aが形成されている。
【0024】
排出オーガ14は、上述した構成により、グレンタンク17の内部に貯留された穀粒を、排出口18aから機外に排出するように構成されている。排出オーガ14は、縦筒17を左右回動させる左右旋回と、排出筒18を上下揺動させる昇降とによって、排出口18aの位置を適宜変更する。
【0025】
ところで、以上のように構成される本コンバインにおける上述した複数の機械的な作動部分(対象部)に対しては、摩耗の防止及びスムーズな作動等を目的として、潤滑油(い以下、単に「オイル」)を供給する処理である注油を適切なタイミングで適宜行う必要がある。このため、本コンバインには、対象部への注油を行う注油装置19(図3参照)が搭載されている。
【0026】
図3は、注油装置の構成を概念的に説明する説明図である。注油装置19は、走行機体2の内部に設けられ且つオイルが貯留される注油タンク21と、注油タンク21内のオイルを圧送する2つの注油ポンプ22,23と、注油タンク21から対象部への流路を切り換える電磁バルブ24と、複数の前記対象部とを有している。
【0027】
本コンバインでは、対象部として、上述した引起し装置4、刈刃7及びフィードチェーン16の他、後処理部12の一部を構成し且つフィードチェーン16から渡された排藁を後方搬送する排藁チェーン26と、搬送装置6の一部を構成し且つ刈り取った穀稈を後方に搬送する搬送チェーン27とを設けている。
【0028】
1つの注油ポンプ22は、注油タンク21内のオイルを引起し装置4、フィードチェーン16、排藁チェーン26及び搬送チェーン27側に圧送するように構成されている。電磁バルブ24は、注油ポンプ22から圧送されてくるオイルが脱穀装置11側のフィードチェーン16及び排藁チェーン26に流動する流路が形成される状態と、前処理部3側の引起し装置4及び搬送チェーン27に流動する流路が形成される状態とを切り換えるように構成されている。その他のポンプ23は、注油タンク21内のオイルを、前処理部3側に設けられたレシプロ式の上述した刈刃7に圧送するように構成されている。
【0029】
すなわち、注油装置19は、電磁バルブ24により注油ポンプ22からフィードチェーン16及び排藁チェーン26側への流路を形成した状態で該注油ポンプ22を駆動させることにより、フィードチェーン16及び排藁チェーン26への注油を行い、電磁バルブ24により注油ポンプ22から引起し装置4及び搬送チェーン27側への流路を形成した状態で該注油ポンプ22を駆動させることにより、引起し装置4及び搬送チェーン27への注油を行い、注油ポンプ23を駆動させることにより刈刃7への注油を行う。ここで、フィードチェーン16及び排藁チェーン26を第1対象部をとし、引起し装置4及び搬送チェーン27を第2対象部とし、刈刃7を第3対象部をとする。
【0030】
この注油装置19は、何れかの対象部4,7,16,26,27側(具体的には、前処理部3)に設けられた手動注油操作ユニット(注油操作具)28(図1及び図5参照)によって操作されるか、或いは、操縦部8側から制御(操作)される。
【0031】
図4は操縦部の平面図である。操縦部8は、オペレータが着座するシート29と、該シート29の前方に配置されたフロント操作パネル31と、平面視でシート29と前側操作パネル31の間に配置形成され且つ該操作部8の床面を構成するフロアステップ32と、シート29における左右内側の側方(具体的には左側方)に配置されたサイド操作パネル33と、を備えている。
【0032】
操作部8のサイド操作パネル32と反対側の側方(具体的には右側方)には、オペレータが乗り降りを行う乗降口8aが形成されている。この乗降口8aは、キャビン9の側壁側に設置された開閉扉34(図1参照)によって開閉される。
【0033】
フロント操作パネルには、その右寄り部分にマルチレバー36が設置され、その中央寄り部分にタッチパネル式液晶モニタ37が嵌め込み固定されている。
【0034】
マルチレバー36は、その前後揺動によって前処理部3の昇降操作を行い、その左右揺動によって操向操作を行う。すなわち、マルチレバー36は、前処理部3の昇降操作を行う昇降操作具として機能するとともに、操向操作を行う向操操作具として機能している。ちなみに、オペレータは、操向操作によって、走行機体2の前進時又は後進時の走行方向を左右に変更し、走行機体2の走行方向の微調整や左右旋回の操作を行う。
【0035】
タッチパネル式液晶モニタ37は、各種の情報を表示する他、そこに表示された画面の所定部分をタッチすることによって、画面の切替操作や上述した注油装置19の操作等を行う。
【0036】
サイド操作パネル33は、その前寄り部分に走行変速操作を行う左右一対の変速レバー38,39が設けられ、その前後方向中央寄り部分にパワークラッチスイッチ41が設けられている。
【0037】
パワークラッチスイッチ41は、エンジンから前処理部3及び脱穀装置11への動力伝動状態を切り換える断続操作具である。ちなみに、エンジンと前処理部3及び脱穀装置11との間の動力伝動経路の途中には、脱穀クラッチ42が設けられ、脱穀クラッチ42と前処理部3との間の動力伝動経路の途中には、刈取クラッチ43が設けられている(図6参照)。
【0038】
脱穀クラッチ42及び刈取クラッチ43の夫々を接続作動させた状態が、エンジンからの動力が前処理部3及び脱穀装置11に伝動されて前処理部3及び脱穀装置11が駆動される刈取状態である。脱穀クラッチ42及び刈取クラッチ43の夫々を切断作動させた状態が、エンジンからの動力が前処理部3及び脱穀装置11に伝動されずに前処理部3及び脱穀装置11が駆動停止した停止状態である。脱穀クラッチ42を接続作動させ且つ刈取クラッチ43を切断作動させた状態が、エンジンからの動力が前処理部3には伝動されずに該前処理部3が駆動停止され且つエンジンからの動力が脱穀装置11には伝動されて該脱穀装置11が駆動される脱穀状態である。パワークラッチスイッチ41は、刈取状態と脱穀状態と停止状態との切換を行う。
【0039】
シート29に近い側の変速レバー38は、その上端部にグリップが形成され且つその基端側が連係機構等を介して走行HSTのトラニオン軸に機械的に連結された主変速レバーである。一方、シート29から遠い側の変速レバー39は、その上端部にグリップが形成され且つその基端側が連係機構等を介して走行変速機構のシフト部材に機械的に連結された副変速レバーである。
【0040】
エンジンからの動力は、まず、走行HSTに伝動される。走行HSTによって無段階に変速された動力は、続いて、走行変速機構に伝動される。走行変速機構によって有段で変速された動力は、左右のクローラ式走行装置1,1に伝動され、走行機体2を走行駆動させる。
【0041】
また、走行HSTは、上述した無段階の変速の他、動力の正逆転切換を行う。走行変速機構は、走行HSTから正転動力が走行変速機構に伝動されてくる場合、走行機体2を前進走行作動させる一方で、走行HSTから逆転動力が走行変速機構に伝動されてくる場合、走行機体2を後進走行作動させる。すなわち、正転動力は前進走行動力になる一方で、逆転動力は後進走行動力になる。
【0042】
主変速レバー38は、走行HSTによる動力伝動を切断するニュートラル状態に切り換える操作位置であるニュートラル操作位置において、左右に揺動操作可能に構成されている。変速レバー38を、ニュートラル位置において、左右の一方(図示する例では右側)に揺動させた場合には該ニュートラル位置から前方への揺動操作が可能になり、左右の他方(図示する例で左側)に揺動させた場合には該ニュートラル位置から後方への揺動操作が可能になる。主変速レバー38におけるニュートラル操作位置からの前方揺動量が増加する程、走行HSTによって前進走行動力が高速に変速される一方で、ニュートラル操作位置からの後方揺動量が増加する程、走行HSTによって後進走行動力が低速に変速される。すなわち、主変速レバー38の前後揺動操作が走行変速操作になり、左右揺動操作が前後進切換操作になる。
【0043】
副変速レバー38を、前後一方側に揺動させた場合、副変速機構からクローラ式走行装置1,1に出力される動力が高速な状態(高速状態)に切り換えられ、前後他方側に揺動させた場合、副変速機構からクローラ式走行装置1,1に出力される動力が低速な状態(低速状態)に切り換えられ、前後中間位置に揺動させた場合、副変速機構による動力伝動が遮断される状態(ニュートラル状態)に切り換えられる。通常、高速状態で走行機体2(コンバイン)が走行する状態が路上を走行する状態になり、低速状態で走行機体2(コンバイン)が走行する状態が圃場を走行する状態になる。
【0044】
図5は手動注油操作ユニットの正面図である。図2及び図5に示す通り、手動注油操作ユニット28は、前処理部3の引起し装置4の正面側に配置されている。手動注油操作ユニット28は、片面が前方に向けられた操作パネル44と、操作パネル44の正面の左右一方側に配置されたモーメンタリ式の押しボタンである注油ボタン46と、他方側に配置された切換ダイヤル47と、を有している。
【0045】
切換ダイヤル47は、そのダイヤル操作によって、第1対象部16,26に注油を行う状態と、第2対象部4,27に注油を行う状態と、第3対象部7に注油を行う状態との何れかへの切換を行う。注油ボタン46は、押し操作が行っている間、切換ダイヤル47によって選択された対象部4,7,16,26,27への注油を行う一方で、押し操作を解除した場合、対象部4,7,16,26,27への注油が停止される。
【0046】
ところで、この注油装置19は、その作動が、CPUやRAM等がユニット化された制御装置48(図6参照)によって制御される。
【0047】
図6は、制御装置の構成を示すブロック図である。制御装置48は、タイマー(時間計測手段)49と、各種の情報を記憶するROMやSSD等の記憶部51と、記憶部51に記憶されたプログラムに基づいて各種の処理を実行する実行部52と、を有している。タイマー49は、CPUの周波数等を利用して時間を計測するか、或いは、内臓されたクォーツ時計等によって時間を計測するように構成されている。
【0048】
制御装置48の入力側には、上述した手動注油操作ユニット28及びパワークラッチスイッチ41の他、走行HSTの変速状態を検出する変速状態検出手段であるポテンショメータ53と、走行機体2(本コンバイン)の走行状態の検出する走行状態検出手段である走行回転センサ54と、前処理部3の駆動状態を検出する作業状態検出手段である搬送HST回転センサ56と、前処理部3側の穀稈の有無を検出する穀稈検出手段である穀稈センサ57と、排出オーガ14による穀粒の機外への排出の有無を切り換える切換操作具である穀粒排出スイッチ58と、が接続されている。
【0049】
ポテンショメータ53は、主変速レバー38の走行変速操作位置である前後揺動位置を検出することによって走行HSTの前後進切換状態及び変速状態を把握可能なように構成されている。ちなみに、ポテンショメータ53は、走行変速状態の検出によって、走行機体2の走行状態を間接的に把握する走行状態検出手段として機能させることも可能である。
【0050】
走行回転センサ54は、走行変速機構によって変速された後の動力をクローラ式走行装置1,1に伝動する伝動軸の回転数を検出することによって走行機体2(本コンバイン)の走行状態を把握可能なように構成されている。穀稈センサ57は、引起し装置4側又は搬送装置6側に配置され、前処理部3側において、引き起こされている穀稈や刈り取られている穀稈や搬送されている穀稈等を検出するように構成されている。
【0051】
搬送HSTは、エンジンからの動力を無段階に変速し、その変速後の動力を前処理部3に伝動して該前処理部3を駆動させる。搬送HST回転センサ56は、搬送HSTによって変速された後の動力によって回転作動する伝動軸の回転数を検出することによって、前処理部3の駆動状態(具体的には駆動スピード)を把握可能なように構成されている。
【0052】
穀粒排出スイッチ58は、シート59の真後側に設けられたオーガ操作ユニット59(図4参照)等に設けられている。オーガ操作ユニット59によって、該排出オーガ14を昇降させる操作や左右旋回させる操作も行うことが可能である。
【0053】
また、制御装置48には、上述したタッチパネル式液晶モニタ37の他、エンジンの回転数等を制御するECU等のエンジン制御装置61が入出力可能に接続されている。
【0054】
さらに、制御装置48の出力側には、注油装置19の他、ブザー音によってオペレータや本コンバインの周囲の者に報知する報知手段であるブザー62と、脱穀クラッチ42及び刈取クラッチ43を断続させるアクチュエータである刈取・脱穀クラッチ制御モータ63と、搬送HSTを無段階で変速作動させるアクチュエータである搬送HST制御モータ64と、が接続されている。
【0055】
図7は、記憶部の構成を示すブロック図である。記憶部51には、注油装置19によって対象部4,7,16,26,27に注油するスケジュールに関する情報であるスケジュール情報が記憶されるデータ領域であるスケジュール情報記憶領域51aと、注油装置19による対象部4,7,16,26,27への実際の注油状況に関する情報である注油情報が逐次的に記憶されて蓄積されるデータ領域である注油情報記憶領域51bと、対象部4,7,16,26,27の実際の稼働状況に関する情報である稼働情報が逐次的に記憶されて蓄積されるデータ領域である稼働情報記憶領域51cと、前記スケジュール情報や後述するタイミング情報及び注油量情報の生成や補正にあたって参照される基準の情報である基準パラメータ情報が記憶されるデータ領域である基準パラメータ情報記憶領域51dと、スケジュール情報の生成や補正にあたって参照される情報であって且つ対象部4,7,16,26,27への注油の時間的な間隔に関する情報であるタイミング情報が記憶されるデータ領域であるタイミング情報記憶領域51eと、制御装置48が対象部4,7,16,26,27に所定の量のオイルを供給して自動的に注油を行う自動注油処理を実行した際の第1対象部16,26、第2対象部4,27及び第3対象部7への注油量に関する情報である注油量情報が記憶される注油量情報記憶領域51fと、注油タンク21内のオイルの残量に関する情報である注油タンク残量情報が記憶される注油タンク残量記憶領域51gと、が設けられている。
【0056】
スケジュール情報は、第1対象部16,26と、第2対象部4,27と、第3対象部7との3つの部分毎に用意されている。各スケジュール情報には、対象部4,7,16,26,27への注油のタイミングが、注油を行うべき予定の日時の情報と、直近の注油から次の注油を行うべき時間的な間隔の情報との一方又は両方が含まれている。
【0057】
注油情報は、第1対象部16,26と、第2対象部4,27と、第3対象部7との3つの部分毎に用意され、注油装置19による実際の注油状況の情報によって、少なくともその一部が構成されている。すなわち、注油情報は、注油装置19の動作の状況を把握することによって、逐次的に収集される。
【0058】
なお、対象部4,7,16,26,27への注油状況は、手動注油操作ユニット28及びタッチパネル式液晶モニタ37による操作を把握することによっても逐次的に収集可能である。すなわち、手動注油操作ユニット28及びタッチパネル式液晶モニタ37の夫々は、注油状況を検出する注油状況検出手段としても機能している。
【0059】
稼働情報は、第1対象部16,26と、第2対象部4,27と、第3対象部7との3つの部分毎に用意されるか、或いは、複数の対象部4,7,16,26,27毎に用意され、対象部4,7,16,26,27の実際の稼働状況の情報によって、少なくともその一部が構成されている。
【0060】
稼働情報を構成する対象部4,7,16,26,27の稼働状況は、パワークラッチスイッチ41、搬送HST回転センサ56又は穀稈センサ57等の検出結果を把握することによって逐次的に収集可能である。すなわち、パワークラッチスイッチ41、搬送HST回転センサ56及び穀稈センサ57の夫々は、対象部4,7,16,26,27の稼働状況を検出する稼働状況検出手段としても機能している。
【0061】
なお、この稼働状況は、刈取・脱穀クラッチ制御モータ63及び搬送HST制御モータ64への制御状況を把握することによっても逐次的に収集可能である。
【0062】
基準パラメータ情報記憶領域51dには、予め定めた所定の期間(基準期間)内に標準的な負荷・稼働率で稼働された状態(基準状態)の対象部4,7,16,26,27に対して注油した方がよい標準的なオイルの量(基準量)の情報が、基準期間及び基準状態の情報と関連付けされ、基準パラメータ情報として記録されている。この基準パラメータ情報は、第1対象部16,26と、第2対象部4,27と、第3対象部7との3つの部分毎に用意されている。
【0063】
タイミング情報及び注油量情報の夫々は、第1対象部16,26、第2対象部4,27及び第3対象部7の3つの部分毎に用意され、記憶部51の上述した所定の記憶領域51e,51fに記憶されている。ちなみに、初期段階において、タイミング情報記憶領域51eには、第1対象部16,26、第2対象部4,27及び第3対象部7の3つの部分毎に、基準パラメータ情報の基準期間に基づくタイミング情報が記憶され、注油量情報記憶領域51eには、第1対象部16,26、第2対象部4,27及び第3対象部7の3つの部分毎に、基準パラメータ情報の基準量に基づく注油情報が記憶されている。
【0064】
注油タンク残量情報は、最新のものが、注油タンク残量記憶領域51gに記憶される。最新の注油タンク残量情報は、時間の経過に伴って注油情報記憶領域に記憶された複数の注油情報と、時間の経過に伴って稼働情報記憶領域に記憶された複数の稼働情報とを利用した積分等の手段により導出される。このため、残量を検出するセンサを別途設ける必要がなく、構成が簡略化される。
【0065】
図6に示す通り、上述したタッチパネル式液晶モニタ37は、画面の切替によって、自動注油ボタン37a、注油量設定ボタン(注油量設定手段)37b及びタイミング設定ボタン(タイミング設定手段)37cをタッチ操作可能に表示することが可能に構成されている。
【0066】
タッチパネル式液晶モニタ37に表示された自動注油ボタン37aのタッチ操作は、上述した自動注油処理を実行するための自動注油操作(注油操作)になる。言い換えると、タッチパネル式液晶モニタ37は注油操作具として機能している。ちなみに、制御装置48は、手動注油操作ユニット28による操作である手動注油操作(注油操作)が行われている間(注油ボタン46が押し操作されている間)、切換ダイヤル47によって選択された対象部4,7,16,26,27への注油が継続されるように注油装置19を制御する手動注油処理を実行するように構成されている。
【0067】
タッチパネル式液晶モニタ37に表示された注油量設定ボタン37bのタッチ操作は、自動注油処理の実行時における注油量を、第1対象部16,26、第2対象部4,27及び第3対象部7の3つの部分毎に複数段階(本例では5段階)で設定する注油量設定になる。
【0068】
タッチパネル式液晶モニタ37に表示されたタイミング設定ボタン37cのタッチ操作は、注油する間隔(すなわち、タイミング情報)を第1対象部16,26、第2対象部4,27及び第3対象部7の3つの部分毎に複数段階(本例では3段階)で設定するタイミング設定手段(設定手段)になる。
【0069】
ちなみに、タッチパネル式液晶モニタ37は、各種の情報が掲載された画面を表示することによって、報知手段としても機能させることが可能である。
【0070】
図8は、実行部の構成を示すブロック図である。実行部52は、スケジュール情報生成処理を実行するスケジュール情報生成処理実行手段52aと、注油情報取得処理を実行する注油情報取得処理実行手段52bと、稼働情報取得処理を実行する稼働情報取得処理実行手段52cと、補正処理を実行する補正処理実行手段52dと、注油タイミング判断処理を実行する注油タイミング判断処理実行手段52eと、注油タイミング報知処理を実行する注油タイミング報知処理実行手段52fと、上述した自動注油処理を実行する自動注油処理実行手段52gと、上述した手動注油処理を実行する手動注油処理実行手段52hと、後述するリセット処理を実行するリセット処理実行手段52iと、注油量過不報知処理を実行する注油量過不報知処理実行手段52jと、残量報知処理を実行する残量報知処理実行手段52kと、を有している。
【0071】
スケジュール情報生成処理では、基準パラメータ情報記憶領域51dに記憶された基準パラメータ情報のタイミング情報に基づき、第1対象部16,26と、第2対象部4,27と、第3対象部7との3つの部分毎に、上述したスケジュール情報を生成してスケジュール情報記憶領域51aに記憶する。
【0072】
注油情報取得処理では、注油情報記憶領域51bに記憶された注油情報又は注油状況検出手段28,37から取得される注油情報を取得する。稼働情報取得処理では、稼働情報記憶領域51bに記憶された稼働情報又は稼働状況検出手段41,56,57から取得される稼働情報を取得する。
【0073】
補正処理は、スケジュール情報記憶領域51aから読み出したスケジュール情報を、上述のようにして取得された注油情報及び稼働情報に基づいて補正するための処理であり、第1対象部16,26、第2対象部4,27及び第3対象部7の3つの部分毎に実行される。
【0074】
詳しく説明すると、補正処理では、補正の要否を検討する第1対象部16,26、第2対象部4,27又は第3対象部7の何れか1つ(要否検討対象部)に対して、それに係る基準パラメータ情報中の基準期間内又はそれに近い期間内で、実際に注油されたオイルの総量を、注油情報取得処理によって取得される一又は複数の注油情報から導出し、その総量と、該基準パラメータ情報中の基準量とを比較し、その総量が前記基準量よりも所定以上に多い場合、自動注油処理時における前記要否検討対象部4,7,16,26,27への注油量を増加させる提案を注油量設定ボタン37bと共にタッチパネル式液晶モニタ37に表示させるか、或いは前記要否検討対象部4,7,16,26,27への注油の間隔を短くする提案をタイミング設定ボタン37cと共にタッチパネル式液晶モニタ37に表示させる一方で、その総量が前記基準量よりも所定以上に少ない場合、自動注油処理時における前記要否検討対象部4,7,16,26,27への注油量を減少させる提案を注油量設定ボタン37bと共にタッチパネル式液晶モニタ37に表示させるか、或いは前記要否検討対象部4,7,16,26,27への注油の間隔を長くする提案をタイミング設定ボタン37cと共にタッチパネル式液晶モニタ37に表示させる。
【0075】
また、補正処理では、要否検討対象部4,7,16,26,27に係る基準パラメータ情報中の基準期間内又はそれに近い期間内における該要否検討対象部4,7,16,26,27の全ての稼働情報を、稼働情報取得処理によって取得し、その稼働状況を、該基準パラメータ情報中の基準状態と比較し、想定した状況よりもある一定以上厳しい状況である場合、自動注油処理時における前記要否検討対象部4,7,16,26,27への注油量を増加させる提案を注油量設定ボタン37bと共にタッチパネル式液晶モニタ37に表示させるか、或いは前記要否検討対象部4,7,16,26,27への注油の間隔を短くする提案をタイミング設定ボタン37cと共にタッチパネル式液晶モニタ37に表示させる一方で、想定した状況よりもある一定以上緩い状況である場合、自動注油処理時における前記要否検討対象部4,7,16,26,27への注油量を減少させる提案を注油量設定ボタン37bと共にタッチパネル式液晶モニタ37に表示させるか、或いは前記要否検討対象部4,7,16,26,27への注油の間隔を長くする提案をタイミング設定ボタン37cと共にタッチパネル式液晶モニタ37に表示させる。
【0076】
これらの提案に対して、オペレータは、その提案の通りの補正を、注油量設定ボタン37bやタイミング設定ボタン37cによって行うことも可能である他、その提案に近い補正を行うことや、その提案を無視することも勿論可能である。
【0077】
補正処理では、注油量設定ボタン37bによって自動注油処理実行時における要否検討対象部4,7,16,26,27への注油量を増減させる設定が行われた場合、該要否検討対象部4,7,16,26,27に係る注油量情報を、その増減した注油量に対応した内容に補正し、その補正後の注油量情報を、注油量情報記憶領域51fに記憶する。
【0078】
一方、補正処理では、タイミング設定ボタン37cによって要否検討対象部4,7,16,26,27への注油の間隔を変更する設定が行われた場合、該要否検討対象部4,7,16,26,27に係るタイミング情報を、その変更した間隔に対応した内容に補正し、その補正後のタイミング情報を、タイミング量情報記憶領域51eに記憶する他、該要否検討対象部4,7,16,26,27に係るスケジュール情報も、補正後のタイミング情報に対応した内容になるように補正し、その補正後のスケジュール情報をスケジュール情報記憶領域51aに記憶する。
【0079】
なお、本例の補正処理では、オペレータに変更を提案して補正を促す手法を採用しているが、そのような提案を行うことなく、注油量情報、タイミング情報及びスケジュール情報の補正や、その補正後の各種情報の記憶部51への記憶を自動的に実行してもよい。
【0080】
また、オペレータは、画面の切替操作等の手動操作により、注油量設定ボタン37bやタイミング設定ボタン37cをタッチパネル式液晶モニタ37に表示させ、補正処理による提案によらず、注油量の設定や、注油のタイミングの設定を、第1対象部16,26と、第2対象部4,27と、第3対象部7との3つの部分毎に自主的に行うことも可能である。
【0081】
注油タイミング判断処理では、スケジュール情報記憶領域51aに記憶されたスケジュール情報とタイマー49による時間計測の結果とに基づき、注油を行うタイミングを、第1対象部16,26と、第2対象部4,27と、第3対象部7との3つの部分毎に判断する。
【0082】
この注油タイミング判断処理によって、複数の対象部4,7,16,26,27の少なくとも1つ(具体的には、第1対象部16,26、第2対象部4,27又は第3対象部7の少なくとも1つであり、以下、「注油タイミング対象部」)について、その時点で注油を行う必要がある旨(注油のタイミングが到来している旨)の判断が下された場合、制御装置48は、注油タイミング報知処理を実行する。ちなみに、全ての対象部4,7,16,26,27が注油タイミング対象部であるとの判断が下される場合もある。
【0083】
注油タイミング報知処理では、注油タイミング対象部4,7,16,25,27に対して、注油を促す報知を行う。具体的には、注油タイミング報知処理の実行時において、注油タイミング対象部4,7,16,26,27に対して注油を促す画面を、自動注油ボタン37aと共に、タッチパネル式液晶モニタ37に表示する他、ブザー62から出力する音によって注油を促す報知を行う。
【0084】
オペレータが、その提案に従い、タッチパネル式液晶モニタ37に表示された自動注油ボタン37aをタッチする自動注油操作を行った場合、注油タイミング報知処理の実行は停止され、自動注油処理が実行される。また、オペレータや周囲の作業者は、上述した手動注油操作によって注油タイミング対象部4,7,16,26,27への注油を実行してもよく、この場合にも注油タイミング報知処理の実行は停止される。一方、注油タイミング報知処理では、自動注油操作又は手動注油操作の何れも検出されない状態が所定以上継続した場合、タッチパネル式液晶モニタ37及びブザー62の一方又は両方による報知を再度行う。
【0085】
自動注油処理では、後述する自動注油条件が満たされていることを条件として、注油タイミング対象部4,7,16,26,27に注油する必要があるオイルの量(すなわち、前記注油量)を、注油量情報記憶領域51fから取得し、該注油タイミング対象部4,7,16,26,27に対し、該注油量のオイルを供給して注油を行う。全ての注油タイミング対象部4,7,16,26,27への注油が完了した時点で、自動注油処理を終了する。
【0086】
ちなみに、制御装置48が、対象部4,7,16,26,27に注油するオイルの量を把握するにあたり、流量を検出するセンサを、その入力側に接続して用いてもよいが、本例では、注油を継続する時間(具体的には、注油ポンプ22,23の駆動時間)をタイマー49によって計測することにより、その量を制御装置48が認識することを可能としている。例えば、第1対象部16,26への注油時間は10秒、第2対象部4,27への注油時間は8秒、第3対象部7への注油時間は10秒というように設定してもよい。
【0087】
なお、自動注油処理の実行時、注油タイミング対象部4,7,16,26,27以外の対象部4,7,16,26,27には注油を行わない例について説明したが、自動注油処理の実行時、全ての対象部4,7,16,26,27に対し、夫々に対応する注油量のオイルを注油するようにしてもよい。ちなみに、このように、自動注油処理を1回実行する毎に全ての対象部4,7,16,26,27に対して、夫々の注油量に対応したオイルを供給する場合において、第1対象部16,26、第2対象部4,27及び第3対象部7の3つの部分毎に、注油のタイミングを判断するのではなく、注油装置19の全体に対して、注油のタイミングの到来の有無を、注油タイミング判断処理により判断してもよい。
【0088】
ところで、図3に示す構成の注油装置19は、全て対象部4,7,16,26,27に同時に注油を行うことができないため、1回の自動注油処理によって全ての対象部4,7,16,26,27に注油を行う場合、電磁バルブ24を切り換え、順次注油を行う。例えば、まず、第1対象部16,26への注油を実行し、次に、第2対象部4,27への注油を実行し、最後に第3対象部7への注油を事項してもよいし、或いは、第1対象部16,26及び第3対象部7に同時並行的に注油を行った後、第2対象部4,27に対して注油を行ってもよく、さらには、全て対象部4,7,16,26,27に対して同時並行的に注油を行うことが可能なように注油装置19を構成してもよい。
【0089】
続いて、自動注油条件について説明すると、注油に適した種々の状態を設定可能である。例えば、前処理部3が駆動されている状態を、対象部4,7,16,26,27への注油の作業を行うのに適している状態とし、パワークラッチスイッチ41によって刈取状態に切り換えられていることを、自動注油条件の少なくとも1つ(第1条件)としてもよい。
【0090】
また、前処理部3側に穀稈が存在していない状態を、対象部4,7,16,26,27への注油の作業を行うのに適している状態とし、穀稈センサ57によって穀稈が検出されていないことを、自動注油条件の少なくとも1つ(第2条件)としてもよい。
【0091】
なお、第1条件及び第2条件を、自動注油条件ではなく、注油タイミング報知処理実行手段52fにより、注油タイミング報知処理を実行するための条件としてもよい。すなわち、注油タイミング判断処理において、スケジュール情報と、タイマー49による時間計測の結果とに基づいて注油タイミングであると判断された場合でも、第1条件及び第2条件を満たしていない場合には、注油タイミングであるとの判断が下されない。
【0092】
また、エンジンの回転数が予め定めた所定の範囲(具体的には、低速域、さらに具体的にはアイドリング時の回転領域)に収まっている状態を、対象部4,7,16,26,27への注油を行うのに適した状態とし、エンジン制御装置61によってエンジンの回転数をその回転域に制御したことを自動注油条件の少なくとも1つ(第3条件)としてもよい。
【0093】
また、搬送HSTによって前処理部3が走行機体2の走行速度に関係なく予め定めた所定の範囲内の速度で駆動されていることを、対象部4,7,16,26,27への注油の作業を行うのに適している状態とし、前処理部3が前記範囲内の速度で駆動されていることを、搬送HST回転センサ57によって検出されていることを、自動注油条件の少なくとも1つ(第4条件)としてもよい。
【0094】
ちなみに、制御装置48は、搬送HST制御モータ64によって、搬送HSTの変速比を制御する。そして、制御装置48は、走行機体2の走行速度の増加に連動して前処理部3の駆動速度を搬送HSTにより増速させる車速連動制御を実行可能である一方で、走行機体2が走行停止しっている状態でも穀稈の刈取作業や後方搬送作業を行うことが可能なように、走行機体2の走行速度とは関係無く、前処理部3を搬送HSTにより一定速度で駆動させる強制掻込制御も実行可能である。
【0095】
本コンバインによる通常の刈取作業時は、連動制御が実行され、オペレータの手動操作等によって強制掻込制御を実行する。そして、本例では、強制掻込制御の実行時における駆動速度の同一又は略同一のスピードで前処理部3が駆動されていることを、上述した第4条件としている。
【0096】
また、排出オーガ14から籾等の穀粒が排出されている状態を、対象部4,7,16,26,27への注油の作業を行うのに適している状態とし、穀粒排出スイッチ58によって穀粒が排出オーガ14により排出されている最中であることが検出されていることを、搬送HST回転センサ57によって検出されていることを、自動注油条件の少なくとも1つ(第5条件)としてもよい。
【0097】
さらに、穀稈の刈取作業を終えて圃場を走行している状態を、対象部4,7,16,26,27への注油の作業を行うのに適している状態とし、この状態が、パワークラッチスイッチ41、走行回転センサ54、搬送HST回転センサ56及び穀稈センサ57の検出結果によって確認されたことを、自動注油条件の少なくとも1つ(第6条件)としてもよい。
【0098】
ところで、第1~4条件は、その全て自動注油条件としてもよいが、第5条件及び第6条件は、その何れか一方のみを自動注油条件とするか、或いは何れも自動注油条件としないように設定することは可能であるが、第5条件及び第6条件の両方を自動注油条件とはしないものとする。
【0099】
このようにして、自動注油処理の実行中、自動注油条件を満たし、対象部4,7,16,26,27への注油が実際に行われた場合、直近の注油から次の注油の間の時間的な間隔をタイマー49によって計測を終了し、最初(0)からのカウントを再び開始するリセット処理が、前記リセット処理実行手段52iによって実行される。
【0100】
このリセット処理は、第1対象部16,26、第2対象部4,27及び第3対象部7の3つの部分毎に個別に実行してもよいし、或いは、全ての対象部4,7,16,26,27に対してまとめて実行してもよい。
【0101】
なお、オペレータは、画面の切替操作等の手動操作により、自動注油ボタン37aをタッチパネル式液晶モニタ37に表示させ、注油タイミング報知処理による提案によらず、自主的に自動注油操作を行うことも可能である。
【0102】
手動注油処理は、上述したように、手動注油操作を行っていることを条件として、実行される。ちなみに、上述したリセット処理は、手動注油処理が実行された場合にも同様に行う。この他、オペレータは、手動注油操作を行う前に、前処理部3が作業位置に下降されている点と、副変速レバー39によって走行変速機構がニュートラル状態に切り換えられている点と、エンジン回転数が低速域に収まっている点と、パワークラッチスイッチ41により刈取状態に切り換えられている点と、主変速レバー38によって走行HSTが前進走行側の所定の変速比(具体的には標準的な刈取作業を行う場合の変速比)に切り換えられている点と、を確認することが望ましい。
【0103】
注油量過不報知処理では、手動注油操作によって第1対象部16,26、第2対象部4,27又は第3対象部7の何れかに注油を行った場合において、その際にオイルの量を操作時間の計測等によって導出し、導出されたオイルの量と、注油量情報記憶領域51fに記憶された注油量とを比較し、所定以上に多い場合又は少ない場合には、その旨を、タッチパネル式モニタ37又はブザー62等によって報知する。
【0104】
残量報知処理では、注油タンク残量情報記憶領域51gに記憶された注油タンク残量情報から注油タンク21内のオイルの残量を確認し、予め定めた所定の量よりも少なくなっている場合には、その旨をタッチパネル式モニタ37又はブザー62等によって報知する。
【0105】
以上のように構成される本コンバインによれば、夫々の対象部4,7,16,26,27に対応して予め定めた適切なタイミングで注油を行うことが促され、さらに、そのタイミングも実際の稼働状況や注油状況に対応して適宜補正可能になるため、注油忘れにより、対象部の作動の不具合や摩耗を効率的に防止できる。
【0106】
なお、図6に仮想線に示す通り、インターネット等のネットワーク66を介した通信を可能とするため、制御装置48に無線通信手段67を入出力可能に接続してもよい。また、このネットワーク66には、各種の情報を管理するサーバ68及び携帯可能なスマートフォン等の携帯型情報端末69の一方又は両方が接続されている。
【0107】
サーバ68は、当該構成によって、制御装置48(本コンバイン)と通信可能であり、上述した記憶部51及び実行部52の一方又は両方の機能を担わせることができる。言い換えると、サーバ68を制御装置として機能させることも可能である。
【0108】
携帯型情報端末69も、当該構成によって、制御装置48と通信可能であり、上述したタッチパネル式液晶モニタ37の一部又は全部の機能を担わせることが可能である。
【0109】
また、上述の実施例では、積分等によって注油タンク21の残量を算出し、記憶部51に記憶していたが、図6に仮想線で示すように、注油タンク21の残量を検出する残量センサ71を制御装置48の入力側に接続して設けてもよい。そのような構成によれば、注油タンク21から流出するオイルの量を逐次記憶する必要がないため、注油タンク残量情報記憶領域51gも省略することが可能になる。
【0110】
さらに、図示する例では、注油装置19を、制御装置48によって制御する例につき、説明したが、手動注油操作を行う手動注油操作ユニット28を、制御装置48を介さずに、注油装置19に機械的又は電気的に直接接続してもよい。
【0111】
このような構成によれば、対象部4,7,16,26,27への注油の有無やその際のオイルの供給量(すなわち、注油の状況)は、制御装置48が、その入力側に接続された手動注油操作ユニット28の手動注油操作を逐次的に検出することによって把握可能である一方で、制御装置48の出力側に注油装置19を接続する必要がなくなり、制御装置48の制御処理の負荷が軽減される他、配線も簡略化される。
【符号の説明】
【0112】
4 引起し装置(対象部)
7 刈刃(対象部)
16 フィードチェーン(対象部)
19 注油装置
26 排藁チェーン(対象部)
27 搬送チェーン(対象部)
28 手動注油操作ユニット(注油操作具)
49 タイマー(時間計測手段)
37 タッチパネル式液晶モニタ(報知手段)
37a 自動注油ボタン(注油操作具)
37b 注油量設定ボタン(注油量設定手段)
37c タイミング設定ボタン(タイミング設定手段)
41 パワークラッチスイッチ(稼働状況検出手段)
48 制御装置
51 記憶部
56 搬送HST回線センサ(稼働状況検出手段)
57 穀稈センサ(稼働状況検出手段)
62 ブザー(報知手段)
68 サーバ(制御装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8