(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051997
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】液体吐出装置及びキャリッジ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158421
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】小池 薫
(72)【発明者】
【氏名】滝島 慶悟
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC06
2C056EC11
2C056EC28
(57)【要約】
【課題】基板ユニットからヘッドに送られる信号の品質やヘッドからの液体の吐出精度を低下させることなくキャリッジ内部を冷却する。
【解決手段】液体を吐出するヘッド101と、ヘッド101を駆動するための基板ユニット123が収容される基板ケース120と、基板ケース120に固定されて基板ケース120の内部に気流を送る第1ファン121と、ヘッド101と基板ケース120とを内部に収容するキャリッジ100と、キャリッジ100の外部から取り込んだ気流をキャリッジ100の内部に送る第2ファン102と、を備え、基板ユニット123は、ヘッド101と基板対基板コネクター130を介して接続され、第2ファン102によってキャリッジ100の内部に送られる気流の量は、第1ファン121によって基板ケース120の内部に送られる気流の量より大きい液体吐出装置1。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアに液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドを駆動するための基板ユニットが収容される基板ケースと、
前記基板ケースに固定されて前記基板ケースの内部に気流を送る第1ファンと、
前記ヘッドと前記基板ケースとを内部に収容するキャリッジと、
前記第1ファンの上方において前記キャリッジに固定され、前記キャリッジの外部から取り込んだ気流を前記キャリッジの内部に送る第2ファンと、
を備え、
前記基板ユニットは、前記ヘッドと基板対基板コネクターを介して接続され、
前記第2ファンによって前記キャリッジの内部に送られる気流の量は、前記第1ファンによって前記基板ケースの内部に送られる気流の量より大きいことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記基板ケースは、前記ヘッドの上方に配置され、
前記第1ファンは、前記基板ケースの上方に配置され、前記ヘッドに向かって気流を送ることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体吐出装置において、
前記キャリッジの上方の部分の少なくとも一部を覆うカバーを備え、
前記カバーは、前記ヘッドの上方に位置する天面部を有し、
前記天面部は、前記第2ファンによって前記キャリッジの内部に送られた気流が排出される少なくとも一つの排気口を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出装置において、
少なくとも一つの前記排気口は、前記天面部を平面視して、前記天面部における前記基板ケースと重なる領域とは異なる領域に配置されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の液体吐出装置において、
前記キャリッジの外部から前記ヘッドに供給される前記液体が流れる流路部材を備え、
前記流路部材は、前記第2ファンによって前記キャリッジの内部に送られる気流が当たるように前記キャリッジの内部に引き込まれることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体吐出装置において、
前記流路部材は、前記第2ファンによって前記キャリッジの内部に送られる気流が当たるように、前記第2ファンと前記基板ケースとの間の位置で前記キャリッジの内部に引き込まれることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の液体吐出装置において、
前記基板ケースは、前記基板ケースの内部から外部に向けて排気することが可能な基板ケース排気口を有し、
前記基板ケース排気口は、前記キャリッジの内部における前記第2ファンによって前記キャリッジの内部に送られる気流の通路である排気通路、及び、前記排気通路に繋がる気流通路、の少なくとも一方を向くことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
メディアに液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを駆動するための基板ユニットが収容される基板ケースと、を収容するキャリッジであって、
前記基板ケースに固定されて前記基板ケースの内部に気流を送る第1ファンと、
前記ヘッドと前記基板ケースとを内部に収容するキャリッジと、
前記第1ファンの上方において前記キャリッジに固定され、前記キャリッジの外部から取り込んだ気流を前記キャリッジの内部に送る第2ファンと、
を備え、
前記基板ユニットは、前記ヘッドと基板対基板コネクターを介して接続され、
前記第2ファンによって前記キャリッジの内部に送られる気流の量は、前記第1ファンによって前記基板ケースの内部に送られる気流の量より大きいことを特徴とするキャリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及びキャリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヘッドと、該ヘッドを駆動するための基板ユニットが収容される基板ケースと、を内部に収容するキャリッジを備える液体吐出装置が使用されている。例えば、特許文献1には、吐出ヘッドと、該吐出ヘッドを駆動するためのヘッド制御基板が収容される回路ケースと、を内部に収容するキャリッジを備える印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドと、該ヘッドを駆動するための基板ユニットが収容される基板ケースと、を内部に収容するキャリッジを備える液体吐出装置においては、基板ユニットからヘッドに印刷データなど様々な電気的な信号が送られる。そこで、基板ユニットからヘッドに送られる信号の品質を低下させることを抑制するため、基板ユニットとヘッドとを基板対基板コネクターを介して接続することが考えられる。また、ヘッドに信号を入力することなどに伴いキャリッジ内部の温度が上昇する場合があり、ファンなどの冷却機構でキャリッジ内部を冷却することが行われている。例えば、特許文献1に印刷装置は、回路ケースに排気ファンを備えている。しかしながら、ファンなどの冷却機構を基板ケースに備えるとともに基板ユニットとヘッドとを基板対基板コネクターを介して接続する構成とすると、冷却機構とヘッドとの距離が近くなりファンなどの振動がヘッドに至りヘッドからの液体の吐出精度が低下する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の液体吐出装置は、メディアに液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを駆動するための基板ユニットが収容される基板ケースと、前記基板ケースに固定されて前記基板ケースの内部に気流を送る第1ファンと、前記ヘッドと前記基板ケースとを内部に収容するキャリッジと、前記第1ファンの上方において前記キャリッジに固定され、前記キャリッジの外部から取り込んだ気流を前記キャリッジの内部に送る第2ファンと、を備え、前記基板ユニットは、前記ヘッドと基板対基板コネクターを介して接続され、前記第2ファンによって前記キャリッジの内部に送られる気流の量は、前記第1ファンによって前記基板ケースの内部に送られる気流の量より大きいことを特徴とする。
【0006】
また、上記課題を解決するための本発明のキャリッジは、メディアに液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを駆動するための基板ユニットが収容される基板ケースと、を収容するキャリッジであって、前記基板ケースに固定されて前記基板ケースの内部に気流を送る第1ファンと、前記ヘッドと前記基板ケースとを内部に収容するキャリッジと、前記第1ファンの上方において前記キャリッジに固定され、前記キャリッジの外部から取り込んだ気流を前記キャリッジの内部に送る第2ファンと、を備え、前記基板ユニットは、前記ヘッドと基板対基板コネクターを介して接続され、前記第2ファンによって前記キャリッジの内部に送られる気流の量は、前記第1ファンによって前記基板ケースの内部に送られる気流の量より大きいことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施例に係る液体吐出装置の側面図。
【
図2】
図1の液体吐出装置におけるキャリッジの斜視図。
【
図3】
図1の液体吐出装置におけるキャリッジの斜視図であって、カバーを外した状態を表す図。
【
図4】
図1の液体吐出装置におけるキャリッジの平面図。
【
図5】
図1の液体吐出装置におけるキャリッジの平面図であって、カバーを外した状態を表す図。
【
図6】
図1の液体吐出装置におけるキャリッジの側面図。
【
図7】
図1の液体吐出装置におけるキャリッジの側面図であって、カバーを外した状態を表す図。
【
図8】
図1の液体吐出装置におけるキャリッジに設けられる1つあたりのヘッド及び基板ケースの正面側から見た斜視図。
【
図9】
図1の液体吐出装置におけるキャリッジに設けられる1つあたりのヘッド及び基板ケースの正面側から見た斜視図であって、基板ケースの一部を取り外した状態を表す図。
【
図10】
図1の液体吐出装置におけるキャリッジに設けられる1つあたりのヘッド及び基板ケースの背面側から見た斜視図。
【
図11】
図1の液体吐出装置におけるキャリッジに設けられる1つあたりのヘッド及び基板ケースの背面側から見た斜視図であって、基板ケースの一部を取り外した状態を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の液体吐出装置は、メディアに液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを駆動するための基板ユニットが収容される基板ケースと、前記基板ケースに固定されて前記基板ケースの内部に気流を送る第1ファンと、前記ヘッドと前記基板ケースとを内部に収容するキャリッジと、前記第1ファンの上方において前記キャリッジに固定され、前記キャリッジの外部から取り込んだ気流を前記キャリッジの内部に送る第2ファンと、を備え、前記基板ユニットは、前記ヘッドと基板対基板コネクターを介して接続され、前記第2ファンによって前記キャリッジの内部に送られる気流の量は、前記第1ファンによって前記基板ケースの内部に送られる気流の量より大きいことを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、基板ユニットはヘッドに対して基板対基板コネクターを介して接続される。このため、基板ユニットからヘッドに伝送される信号の品質は、例えばフレキシブルフラットケーブル(FFC)を用いる場合と比べて向上する。また、第2ファンによってキャリッジの内部に送られる気流の量は、第1ファンによって基板ケースの内部に送られる気流の量より大きい。このため、第1ファンの気流の量が少なくても、第1ファンの上方の位置すなわちヘッドから離れた位置に配置される第2ファンによって基板ユニットの冷却能力が著しく低下することを抑制できる。すなわち、第1ファンの駆動に起因する振動を抑制するために、ヘッドとの距離が近い第1ファンの風量が少ない状態であっても、第2ファンにより基板ユニットの冷却能力が著しく低下することを抑制する構成とすることができる。したがって、基板ユニットからヘッドに送られる信号の品質やヘッドからの液体の吐出精度を低下させることなくキャリッジ内部を冷却することができる。
【0010】
本発明の第2の態様の液体吐出装置は、前記第1の態様において、前記基板ケースは、前記ヘッドの上方に配置され、前記第1ファンは、前記基板ケースの上方に配置され、前記ヘッドに向かって気流を送ることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、ケースはヘッドの上方に配置され、第1ファンは基板ケースの上方に配置されてヘッドに向かって気流を送る。このような構成とすることで、第1ファンがヘッドに向かって送風することにより、気流の向かう方向が基板ケースからヘッドに向かう方向となるとともに、基板ケースの内部が正圧となる。これにより、気流の向かう方向がヘッドから基板ケースに向かう方向となる場合と比べて、ヘッドから吐出された液体のミスト等がキャリッジの内部に進入しにくくなる。
【0012】
本発明の第3の態様の液体吐出装置は、前記第1または第2の態様において、前記キャリッジの上方の部分の少なくとも一部を覆うカバーを備え、前記カバーは、前記ヘッドの上方に位置する天面部を有し、前記天面部は、前記第2ファンによって前記キャリッジの内部に送られた気流が排出される少なくとも一つの排気口を有することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、天面部は第2ファンによってキャリッジの内部に送られた気流が排出される少なくとも一つの排気口を有する。このため、排気口から気流を排出することでキャリッジの内部において熱がこもることを抑制できる。また、排気口が天面部に配置されるので、排気に伴う気流がヘッドから吐出される液体の飛程に影響を与えることを抑制することができる。
【0014】
本発明の第4の態様の液体吐出装置は、前記第3の態様において、少なくとも一つの前記排気口は、前記天面部を平面視して、前記天面部における前記基板ケースと重なる領域とは異なる領域に配置されることを特徴とする。
【0015】
天面部を平面視したとき、天面部における基板ケースと重なる領域に排気口が設けられると、基板ケースが障害物となって、好適に排気できない可能性があるが、本態様によれば、少なくとも一つの排気口は、平面視で、天面部における基板ケースと重なる領域とは異なる領域に配置される。このため、好適に排気できなくなることを抑制することができる。
【0016】
本発明の第5の態様の液体吐出装置は、前記第1または第2の態様において、前記キャリッジの外部から前記ヘッドに供給される前記液体が流れる流路部材を備え、前記流路部材は、前記第2ファンによって前記キャリッジの内部に送られる気流が当たるように前記キャリッジの内部に引き込まれることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、流路部材は第2ファンによってキャリッジの内部に送られる気流が当たるようにキャリッジの内部に引き込まれる。このため、流路部材を流れる液体を冷却することができ、液体の昇温に起因するヘッドへのダメージを抑制することができる。
【0018】
本発明の第6の態様の液体吐出装置は、前記第5の態様において、前記流路部材は、前記第2ファンによって前記キャリッジの内部に送られる気流が当たるように、前記第2ファンと前記基板ケースとの間の位置で前記キャリッジの内部に引き込まれることを特徴とする。
【0019】
流路部材が基板ケースに対して第2ファンが配置される側と反対側からキャリッジの内部に引き込まれる場合、基板ケースに当たることで高温となった気流が流路部材に当たる可能性がある。これに対し、本態様によれば、流路部材は第2ファンと基板ケースとの間の位置に配置される。このため、基板ケースに当たることで高温となった気流が流路部材に当たることが抑制され、流路部材を流れる液体が昇温することを抑制することができる。
【0020】
本発明の第7の態様の液体吐出装置は、前記第1または第2の態様において、前記基板ケースは、前記基板ケースの内部から外部に向けて排気することが可能な基板ケース排気口を有し、前記基板ケース排気口は、前記キャリッジの内部における前記第2ファンによって前記キャリッジの内部に送られる気流の通路である排気通路、及び、前記排気通路に繋がる気流通路、の少なくとも一方を向くことを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、基板ケース排気口は、第2ファンによってキャリッジの内部に送られる気流の通路である排気通路及び該排気通路に繋がる気流通路の少なくとも一方に面している。このため、基板ケースから排出された、熱を帯びた気流が、第2ファンによって生じる気流に乗ってキャリッジの外部へ送られやすくなる。
【0022】
本発明の第8の態様のキャリッジは、メディアに液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを駆動するための基板ユニットが収容される基板ケースと、を収容するキャリッジであって、前記基板ケースに固定されて前記基板ケースの内部に気流を送る第1ファンと、前記ヘッドと前記基板ケースとを内部に収容するキャリッジと、前記第1ファンの上方において前記キャリッジに固定され、前記キャリッジの外部から取り込んだ気流を前記キャリッジの内部に送る第2ファンと、を備え、前記基板ユニットは、前記ヘッドと基板対基板コネクターを介して接続され、前記第2ファンによって前記キャリッジの内部に送られる気流の量は、前記第1ファンによって前記基板ケースの内部に送られる気流の量より大きいことを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、基板ユニットはヘッドに対して基板対基板コネクターを介して接続される。このため、基板ユニットからヘッドに伝送される信号の品質は、例えばFFCを用いる場合と比べて向上する。また、第2ファンによってキャリッジの内部に送られる気流の量は、第1ファンによって基板ケースの内部に送られる気流の量より大きい。このため、第1ファンの気流の量が少なくても、第1ファンの上方の位置すなわちヘッドから離れた位置に配置される第2ファンによって基板ユニットの冷却能力が著しく低下することを抑制できる。したがって、基板ユニットからヘッドに送られる信号の品質やヘッドからの液体の吐出精度を低下させることなくキャリッジ内部を冷却することができる。
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
最初に、本発明の一実施例の液体吐出装置1の概要について
図1を参照して説明する。
図1で表されるように、本実施例の液体吐出装置1は、メディアMを搬送方向Aに搬送可能な搬送装置20を備えている。
【0025】
搬送装置20は、ロール状のメディアMをセットして回転方向C1に回転することでメディアMを繰り出すことが可能な繰り出し部2を備えている。また、搬送装置20は、繰り出し部2から繰り出されたメディアMを搬送方向Aに搬送可能な搬送ベルト5を備えている。搬送装置20は、搬送方向Aの上流側に位置する従動ローラー3と、搬送方向Aの下流側に位置する駆動ローラー4と、該従動ローラー3及び該駆動ローラー4に架け渡された無端ベルトである搬送ベルト5と、を備えている。
【0026】
ここで、搬送ベルト5は外側表面であるメディアMの支持面に粘着剤が塗られた外周面5aを有する粘着性ベルトである。
図1で表されるように、外周面5aにメディアMが貼り付けられた状態で、メディアMは搬送ベルト5に支持されて搬送される。本実施例の液体吐出装置1においては、搬送ベルト5におけるメディアMの支持領域は、従動ローラー3と駆動ローラー4とで架橋された上側の領域である。また、駆動ローラー4はモーター15の駆動力により回転するローラーであり、従動ローラー3は駆動ローラー4を回転させることに伴う搬送ベルト5の回転に従動することで回転するローラーである。
【0027】
また、液体吐出装置1は、搬送ベルト5の幅方向Bに往復移動可能なキャリッジ100と、キャリッジ100に取り付けられたヘッド101と、を備えている。ヘッド101は、搬送方向Aに搬送されるメディアMに画像を印刷可能な印刷部、別の表現をすると、メディアMに液体であるインクを吐出する吐出部、として機能する。ヘッド101は、搬送ベルト5におけるメディアMの支持領域と対向する位置に設けられ、インクを吐出可能である。このとき、搬送ベルト5におけるメディアMの支持領域は、ヘッド101と対向する対向領域であると言える。本実施例の液体吐出装置1は、搬送方向Aと交差する幅方向Bにキャリッジ100を往復移動させながら、搬送されるメディアMにヘッド101からインクを吐出して画像を形成することが可能である。このような構成のキャリッジ100を備えていることにより、本実施例の液体吐出装置1は、所定の搬送量でメディアMを搬送方向Aに搬送させることと、メディアMを停止した状態でキャリッジ100を幅方向Bに移動させながらインクを吐出させることと、を繰り返すことで、メディアMに所望の画像を形成可能である。なお、キャリッジ100の内部構成の詳細については後述する。
【0028】
本実施例の液体吐出装置1は、制御部40を備えている。制御部40は、本実施例の液体吐出装置1の各構成部材の全体の制御を行う。
【0029】
また、キャリッジ100よりも搬送方向Aの上流側における搬送ベルト5と対向する位置に、メディア貼り付け部6が形成されている。メディア貼り付け部6が幅方向Bに亘りメディアMを搬送ベルト5に押し当てることで、皺などの発生が抑制された状態でメディアMが搬送ベルト5に対して貼り付けられる。
【0030】
ヘッド101からインクを吐出することで画像が形成されたメディアMは、本実施例の液体吐出装置1から排出されると、本実施例の液体吐出装置1よりも後段に設けられた、メディアMに吐出されたインクの成分を揮発させる乾燥装置や画像が形成されたメディアMを巻き取る巻取装置などに送られる。
【0031】
ここで、メディアMとしては、被捺染材を好ましく用いることができる。被捺染材とは、捺染の対象となる布地や、衣服や、その他の服飾製品等のことを言う。布地には、綿、絹、羊毛等の天然繊維やナイロン等の化学繊維あるいはこれらを混ぜた複合繊維の織物、編物、不織布等が含まれる。また、衣服や、その他の服飾製品には、縫製後のTシャツ、ハンカチ、スカーフ、タオル、手提げ袋、布製のバッグ、カーテン、シーツ、ベッドカバー等のファニチャー類等の他、縫製前の状態のパーツとして存在する裁断前後の布地等も含まれる。
【0032】
さらに、メディアMとしては、上記被捺染材の他、普通紙、上質紙、及び光沢紙などのインクジェット印刷用専用紙等を用いることができる。また、メディアMとしては、例えば、インクジェット印刷用に表面処理をしていない、すなわち、インク吸収層を形成していないプラスチックフィルム、並びに紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているもの及びプラスチックフィルムが接着されているものも用いることができる。当該プラスチックとしては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリプロピレンが挙げられる。
【0033】
メディアMとして被捺染材を用いた場合、被捺染材はメディアMに吐出されたインクが裏側の面まで滲む現象であるインクの裏抜けをし易いので、搬送ベルト5がインクで汚れる場合がある。そこで、本実施例の液体吐出装置1には、裏抜けして搬送ベルト5に付着したインクを清掃するための清掃部9を備えている。本実施例の清掃部9は、清掃液Lが貯留される貯留部14と、清掃液Lが浸されて搬送ベルト5と接触する清掃ローラー10と、搬送ベルト5に付着した清掃液Lをワイプするブレード部11と、を備えている。さらに、本実施例の液体吐出装置1は、ブレード部11でワイプしきれなかった清掃液Lを乾燥させることが可能な送風部13を備えている。
【0034】
本実施例の液体吐出装置1は、駆動ローラー4を回転方向C1に回転させることでメディアMを搬送方向Aに搬送可能である。また、液体吐出装置1は、駆動ローラー4を回転方向C1とは逆方向である回転方向C2に回転させることでメディアMを搬送方向Aとは逆の方向に搬送させることも可能である。
【0035】
次に、本実施例の液体吐出装置1の要部であるキャリッジ100の内部構成について
図2から
図11を参照して説明する。
図3、
図5及び
図7などで表されるように、本実施例のキャリッジ100は、メディアMに液体であるインクを吐出する複数のヘッド101と、複数の基板ケース120と、を収容する。1つのヘッド101に1つの基板ケース120が取り付けられている。ここで、
図2から
図7は、いずれもキャリッジ100の全体を表す図であるが、
図3は
図2の状態からカバー110を取り外した状態を表しており、
図5は
図4の状態からカバー110を取り外した状態を表しており、
図7は一部が省略されているものの
図6の状態からカバー110を取り外した状態を表している。
【0036】
1つ当たりのヘッド101及び基板ケース120を表す図である
図9及び
図11などで表されるように、基板ケース120はヘッド101を駆動するための基板ユニット123が収容されている。ここで、
図8から
図11は、いずれも1つ当たりのヘッド101及び基板ケース120を表す図であるが、
図9は
図8の状態から基板ケース120のカバー122のうちの第1側面部122Aを取り外した状態を表しており、
図11は
図10の状態から基板ケース120のカバー122のうちの第2側面部122Bを取り外した状態を表している。本実施例においては、基板ユニット123はカバー122のうちの4つの側面部のうちの3つの内部に基板123A、基板123B及び基板123Cが設けられている。ただし、基板ユニット123を構成する基板は1つでもいいし、2つでもいいし、4つ以上であってもよい。
【0037】
また、
図8から
図11などで表されるように、基板ケース120には、基板ケース120の内部に気流を送る第1ファン121が固定されている。また、
図3及び
図7などで表されるように、キャリッジ100における第1ファン121よりも上方の位置には、キャリッジ100の外部から取り込んだ気流をキャリッジ100の内部に送る第2ファン102が設けられている。なお、第2ファン102の第1ファン121に対する位置は、上記のように「上方」という表現に代えて、「第1ファン121を基準にしてヘッド101とは反対側」と表現することもできる。ここで、
図7では、第1ファン121による気流の主な流れを矢印F1として表し、第2ファン102による気流の主な流れを矢印F2として表している。なお、本実施例においては、第1ファン121は複数ある基板ユニット123の1つ1つに対応して1つずつ設けられ、第2ファン102は1つのキャリッジ100に4つ設けられている。しかしながら、このような構成に限定されず、第1ファン121及び第2ファン102の数に特に限定は無い。
【0038】
そして、本実施例のキャリッジ100、すなわち、本実施例の液体吐出装置1においては、
図11で表されるように、基板ユニット123は、ヘッド101と基板対基板コネクター130を介して接続されている。そして、制御部40の制御により、第2ファン102によってキャリッジ100の内部に送られる気流の量は、第1ファン121によって基板ケース120の内部に送られる気流の量より大きくなるように構成されている。
【0039】
このように、基板ユニット123がヘッド101に対して基板対基板コネクター130を介して接続されることで、基板ユニット123からヘッド101に伝送される信号の品質は、例えばフレキシブルフラットケーブル(FFC)を用いる場合と比べて向上する。また、第2ファン102によってキャリッジ100の内部に送られる気流の量が第1ファン121によって基板ケース120の内部に送られる気流の量より大きくなるように高清宇することで、第1ファン121の気流の量が少なくても、第1ファン121の上方の位置すなわちヘッド101から離れた位置に配置される第2ファン102によって基板ユニット123の冷却能力が著しく低下するということを抑制することができる。
【0040】
すなわち、本実施例の液体吐出装置1は、第1ファン121の駆動に起因する振動を抑制するために、ヘッド101との距離が近い第1ファン121の風量が少ない状態であっても、第2ファン102により基板ユニット123の冷却能力が著しく低下することを抑制する構成となっている。したがって、本実施例の液体吐出装置1は、基板ユニット123からヘッド101に送られる信号の品質やヘッド101からのインクの吐出精度を低下させることなくキャリッジ100の内部を冷却することができる。また、本実施例の液体吐出装置1においては、第2ファン102は、キャリッジ100の外部から取り込んだ気流をキャリッジ100の内部に送るので、外気を第1ファン121に供給することで、第1ファン121による基板ケース120の冷却効率を向上することができている。
【0041】
ここで、
図3などで表されるように、本実施例の液体吐出装置1においては、基板ケース120はヘッド101の上方に配置され、第1ファン121は基板ケース120の上方に配置されておりヘッド101に向かって気流を送ることが可能な構成となっている。このような構成とすることで、第1ファン121がヘッド101に向かって送風することにより、気流の向かう方向が基板ケース120からヘッド101に向かう方向となるとともに、基板ケース120の内部が正圧となる。これにより、気流の向かう方向がヘッド101から基板ケース120に向かう方向となる場合と比べて、ヘッド101から吐出されたインクのミスト等がキャリッジ100の内部に進入しにくくなる。
【0042】
また、
図2及び
図4などで表されるように、本実施例の液体吐出装置1は、キャリッジ100の上方の部分の少なくとも一部を覆うカバー110を備えている。カバー110は、キャリッジ100に対して取り外し可能に装着される。そして、
図2及び
図4などで表されるように、カバー110は、キャリッジ100に取り付けられた状態でヘッド101の上方に位置する天面部111を有し、天面部111は第2ファン102によってキャリッジ100の内部に送られた気流が排出される排気口112を有している。このように、天面部111は第2ファン102によってキャリッジ100の内部に送られた気流が排出される少なくとも一つの排気口112を有することが好ましい。排気口112から気流を排出することでキャリッジ100の内部において熱がこもることを抑制できるためである。また、排気口112が天面部111に配置されることで、排気に伴う気流がヘッド101から吐出されるインクの飛程に影響を与えることを抑制することができる。なお、本実施例においては、
図2及び
図4などで表されるように、排気口112として、排気口112A、排気口112B及び排気口112Cを備えるが、排気口112の数や配置に特に限定は無い。
【0043】
ただし、少なくとも一つの排気口112は、
図4で表されるように天面部111を平面視して、天面部111における基板ケース120と重なる領域とは異なる領域に配置されることが好ましい。
図4と
図5とを比較するとわかるように、本実施例の液体吐出装置1においては、平面視で、各々の排気口112は天面部111における基板ケース120と重なる領域とは異なる領域に配置されている。天面部111を平面視したとき、天面部111における基板ケース120と重なる領域に排気口112が設けられると、基板ケース120が障害物となって、好適に排気できない可能性がある。しかしながら、本実施例のように、少なくとも一つの排気口112が、平面視で、天面部111における基板ケース120と重なる領域とは異なる領域に配置されることで、好適に排気できなくなることを抑制することができる。
【0044】
また、
図2から
図5で表されるように、本実施例の液体吐出装置1は、キャリッジ100の外部からヘッド101に供給されるインクが流れる流路部材103を備えている。そして、流路部材103は、第2ファン102によってキャリッジ100の内部に送られる気流が当たる配置でキャリッジ100の内部に引き込まれる構成となっている。このような構成とすることで、流路部材103を流れるインクを冷却することができ、インクの昇温に起因するヘッド101へのダメージを抑制することができる。なお、「流路部材103は、第2ファン102によってキャリッジ100の内部に送られる気流が当たる配置でキャリッジ100の内部に引き込まれる」とは、「流路部材103は、ヘッド101に対して第2ファン102が配置される側からキャリッジ100の内部に引き込まれる」と表現することもできる。
【0045】
また、
図2から
図5で表されるように、さらに詳細には、流路部材103は、第2ファン102と基板ケース120との間の位置で第2ファン102によってキャリッジ100の内部に送られる気流が当たる配置でキャリッジ100の内部に引き込まれる構成となっている。流路部材103が基板ケース120に対して第2ファン102が配置される側と反対側からキャリッジ100の内部に引き込まれる場合、基板ケース120に当たることで高温となった気流が流路部材103に当たる可能性があるが、流路部材103が第2ファン102と基板ケース120との間の位置に配置される構成とすることで、基板ケース120に当たることで高温となった気流が流路部材103に当たることが抑制され、流路部材103を流れるインクが昇温することを抑制することができる。なお、「流路部材103は、第2ファン102によってキャリッジ100の内部に送られる気流が当たるように、第2ファン102と基板ケース120との間の位置でキャリッジ100の内部に引き込まれる」とは、「流路部材103は、基板ケース120に対して第2ファン102が配置される側からキャリッジ100の内部に引き込まれる」と表現することもできる。
【0046】
また、
図7、
図9から
図11で表されるように、本実施例の液体吐出装置1においては、基板ケース120は、基板ケース120の内部から外部に向けて排気することが可能な基板ケース排気口124を有している。そして、
図7で表されるように、基板ケース排気口124は、キャリッジ100の内部における第2ファン102によってキャリッジ100の内部に送られる気流の通路である排気通路P1に繋がる気流通路P2を向く。このように、基板ケース排気口124は、排気通路P1及び気流通路P2の少なくとも一方を向いていることが好ましい。このような構成とすることで、基板ケース120から排出された、熱を帯びた気流が、第2ファン102によって生じる気流に乗ってキャリッジ100の外部へ送られやすくなるためである。なお、本実施例のように、第2ファン102が、上方から下方に向かう気流を発生させる構成により、キャリッジ100の往復移動方向である幅方向Bに第2ファン102による気流が向かう構成と比べて、キャリッジ100の往復移動に伴うキャリッジ100の内部の気流の乱れに関する影響が少なくて済む。
【0047】
なお、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1…液体吐出装置、2…繰り出し部、3…従動ローラー、4…駆動ローラー、5…搬送ベルト、5a…外周面、6…メディア貼り付け部、9…清掃部、9A…清掃部、9B…清掃部、9C…清掃部、10…清掃ローラー、11…ブレード部、13…送風部、14…貯留部、15…モーター、20…搬送装置、40…制御部、100…キャリッジ、101…ヘッド、102…第2ファン、103…流路部材、110…カバー、111…天面部、112…排気口、112A…排気口、112B…排気口、112C…排気口、120…基板ケース、121…第1ファン、122…カバー、122A…第1側面部、122B…第2側面部、123…基板ユニット、123A…基板、123B…基板、123C…基板、124…基板ケース排気口、130…基板対基板コネクター、M…メディア、P1…排気通路、P2…気流通路