(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052002
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】流体圧機器
(51)【国際特許分類】
F15B 21/045 20190101AFI20240404BHJP
F15B 21/0427 20190101ALI20240404BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20240404BHJP
F16K 27/04 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F15B21/045
F15B21/0427
F15B11/02 C
F16K27/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158429
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安達 堅亮
【テーマコード(参考)】
3H051
3H082
3H089
【Fターム(参考)】
3H051AA03
3H051AA10
3H051BB01
3H051CC11
3H051FF07
3H082AA08
3H082BB26
3H082CC02
3H082DB03
3H082DB34
3H082DB38
3H089AA35
3H089BB22
3H089CC01
3H089DA03
3H089DB03
3H089DB47
3H089DB49
3H089DB54
3H089DB75
3H089DC05
3H089GG02
3H089HH09
3H089HH17
(57)【要約】
【課題】ポンプの容量制御の応答性を向上させる。
【解決手段】バルブ装置100は、自らが吐出する自己圧Ppsと供給される負荷圧Plsとに応じて吐出容量が制御される可変容量型のポンプに対して負荷圧Plsを導く負荷圧通路15が設けられるハウジング10を備え、ハウジング10には、タンクからポンプが吸い込んで吐出した作動油を導くポンプ通路11と、ポンプから吐出された作動油をタンクに戻すタンク通路12と、両端がタンク通路12に連通する連通路17と、がさらに設けられ、連通路17の少なくとも一部は、負荷圧通路15に対して、作動油を導く他の通路を間に挟まずにハウジング10の壁部のみにより隔てられて隣接する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自らが吐出する自己圧と供給される信号圧とに応じて吐出容量が制御される可変容量型のポンプに対して前記信号圧を導く信号圧通路が設けられるハウジングを備えた流体圧機器であって、
前記ハウジングには、
タンクから前記ポンプが吸い込んで吐出した作動流体を導くポンプ通路と、
前記ポンプから吐出された作動流体を前記タンクに戻すタンク通路と、
両端が前記タンク通路に連通する連通路と、がさらに設けられ、
前記連通路の少なくとも一部は、前記信号圧通路に対して、作動流体を導く他の通路を間に挟まずに前記ハウジングの壁部のみにより隔てられて隣接することを特徴とする流体圧機器。
【請求項2】
請求項1に記載の流体圧機器であって、
前記流体圧機器は、流体圧アクチュエータに対する前記ポンプ及び前記タンクの連通を制御するバルブ装置であって、所定の一方向に連結される三つのバルブブロックを有し、
前記バルブブロックは、それぞれ独立した前記ハウジングを有し、
前記連通路は、一つの前記バルブブロックにおいて、隣接する二つの前記バルブブロックの前記ハウジングとの合わせ面のそれぞれに開口する貫通孔を有することを特徴とする流体圧機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可変容量油圧ポンプの吐出流量を制御する流量制御手段と、可変容量油圧ポンプの吐出圧力とアクチュエータの負荷圧力との差圧を検出する差圧検出手段と、油圧ポンプの吐出圧力とアクチュエータの負荷圧力との差圧の目標値を目標差圧として設定する目標差圧設定手段と、差圧検出手段から出力される信号に応じて可変容量油圧ポンプの吐出圧力とアクチュエータの負荷圧力との差圧が上記目標差圧に一致するように流量制御手段に駆動信号を出力する制御手段と、を備えた油圧作業機の油圧駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される流体圧機器では、アクチュエータの負荷圧力が信号圧として差圧検出手段に導かれ、信号圧と自己圧としてのポンプの吐出圧力とに基づいてポンプの吐出容量が制御される。通常、信号圧を導く信号圧通路は、信号として圧力が伝達されればよいため、自己圧を導くポンプ通路と比較して信号圧通路における作動流体の流量は低く抑えられる。
【0005】
一方、流体圧機器においては、動作の応答性を確保するために、ポンプを駆動した暖気運転によって作動流体を温めることがある。しかしながら、上述のように信号圧通路は積極的に作動流体の流れが生じるように構成されていないため、暖気運転を行っても信号圧通路の作動流体を充分に温めることは困難である。このため、自己圧と信号圧との応答性に差が生じ、その結果としてポンプの容量制御の応答性の低下をまねくおそれがある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ポンプの容量制御の応答性を向上させる流体圧機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、自らが吐出する自己圧と供給される信号圧とに応じて吐出容量が制御される可変容量型のポンプに対して信号圧を導く信号圧通路が設けられるハウジングを備えた流体圧機器であって、ハウジングには、作動流体を貯留するタンクに連通するタンク通路と、ポンプがタンクから吸い込んで吐出した作動流体を導くポンプ通路と、両端がタンクに連通する連通路と、がさらに設けられ、連通路の少なくとも一部は、信号圧通路に対して、作動流体を導く他の通路を間に挟まずにハウジングの壁部のみにより隔てられて隣接することを特徴とする。
【0008】
この発明では、タンクから吸い込まれポンプから吐出されてタンク通路に導かれる作動流体が暖機運転によって温められる。このため、タンク通路に連通する連通路内の作動流体も温められた作動流体となる。連通路の少なくとも一部は、他の通路を間に介さずに信号圧通路と隣接するため、隣接する部分において連通路内の作動流体の熱が信号圧通路に伝達される。これにより、信号圧通路内の作動流体を温めることができる。
【0009】
また、本発明は、流体圧機器が、流体圧アクチュエータに対するポンプ及びタンクの連通を制御するバルブ装置であって、所定の一方向に連結される三つのバルブブロックを有し、バルブブロックは、それぞれ独立したハウジングを有し、連通路が、一つのバルブブロックにおいて、隣接する二つのバルブブロックのハウジングとの合わせ面のそれぞれに開口する貫通孔を有することを特徴とする。
【0010】
この発明では、隣接するバルブブロックとの合わせ面に貫通孔を形成することで、連通路を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポンプの容量制御の応答性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る流体圧システムの油圧回路図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るバルブ装置の構成を示す概略図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図2におけるIV-IV線に沿った断面図であり、他のバルブブロックに対する一つのバルブブロックの合わせ面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧機器について説明する。以下では、流体圧機器が、流体圧アクチュエータとしての油圧シリンダ1に対するポンプP及びタンクTの連通を制御するバルブ装置100である場合を例に説明する。
【0014】
バルブ装置100は、油圧シリンダ1に対する作動油(作動流体)の給排を切り換え、油圧シリンダ1の動作を制御するものである。本実施形態では、作動流体として作動油を用いる例について説明するが、作動水等の他の流体を作動流体として用いてもよい。
【0015】
まず、
図1を参照して、バルブ装置100及びこれを備える流体圧システム1000について説明する。
【0016】
流体圧システム1000は、作動流体としての作動油の給排によって作動する油圧シリンダ1と、作動油を貯留するタンクTと、タンクTから作動油を吸い込み加圧して吐出する可変容量型のポンプPと、ポンプPの吐出容量を制御する制御機構110と、油圧シリンダ1に給排される作動油の流れを制御するバルブ装置100と、を備える。
【0017】
油圧シリンダ1は、
図1に示すように、シリンダチューブ2の内部を第一流体圧室としてのロッド側室5と第二流体圧室としてのボトム側室6とに区画するピストン4を有する複動形シリンダである。ピストン4にはピストンロッド3が連結される。ピストンロッド3の先端には、駆動対象である負荷(図示省略)が連結される。
【0018】
油圧シリンダ1のロッド側室5には、ロッド側通路13を通じて作動油が給排される。油圧シリンダ1のボトム側室6には、ボトム側通路14を通じて作動油が給排される。
【0019】
ボトム側室6に作動油が供給されロッド側室5から作動油が排出されることにより、油圧シリンダ1は伸長作動する。反対に、ロッド側室5に作動油が供給されボトム側室6から作動油が排出されることにより、油圧シリンダ1は収縮作動する。
【0020】
ポンプPは、斜板(図示省略)の傾転角に応じて吐出容量が変化する可変容量型のピストンポンプである。ポンプPは、例えば、可変容量型のベーンポンプなど、その他の形式であってもよい。
【0021】
ポンプPは、制御機構110により、自らが吐出する作動油の圧力である自己圧Ppsと信号圧としての油圧シリンダ1の負荷圧Plsとの差圧に基づいて吐出容量が制御される。具体的には、制御機構110は、自己圧Ppsと負荷圧Plsとがそれぞれ導かれ自己圧Ppsと負荷圧Plsとの差圧に応じて制御圧Pcを生成するレギュレータ111と、レギュレータ111から導かれる制御圧Pcに応じてポンプPの斜板を駆動して吐出容量を制御する制御アクチュエータ112と、を有する。制御アクチュエータ112は、例えば、供給される制御圧Pcに応じて伸縮作動する単動型の油圧シリンダである。自己圧Ppsと負荷圧Plsとの差圧に基づく制御圧Pcにより制御アクチュエータ112が駆動されることで、ポンプPは、自己圧Ppsと負荷圧Plsとの差圧が一定となるように吐出容量が制御される。
【0022】
バルブ装置100は、油圧シリンダ1に給排される作動油の流れを制御する制御弁20と、ポンプPから吐出される作動油が導かれるポンプ通路11と、ポンプPから吐出されタンクTに還流される作動油を導くタンク通路12と、ロッド側室5に連通するロッド側通路13と、ボトム側室6に連通するボトム側通路14と、信号圧としての負荷圧Plsを導く信号圧通路としての負荷圧通路15と、両端がタンク通路12に連通する連通路17と、ポンプPの自己圧Pps(吐出圧)が所定のリリーフ圧に達すると開弁しポンプPから吐出される作動油をタンクTへ還流させるリリーフ弁30と、自己圧Ppsと負荷圧Plsとの差圧に応じてポンプPの自己圧Pps(吐出圧)をタンクTに逃がすアンロード弁40と、を備える。
【0023】
制御弁20には、ポンプ通路11、タンク通路12、ロッド側通路13、ボトム側通路14、及び負荷圧通路15が接続される。
【0024】
制御弁20は、パイロット室21a,21bに供給されるパイロット圧と付勢部材としてのスプリング22a,22bの付勢力とに応じてスプール(図示省略)が移動することでポジションが切り換えられるスプール弁である。制御弁20は、油圧シリンダ1を収縮させる収縮ポジション20Aと、油圧シリンダ1を伸長させる伸長ポジション20Bと、油圧シリンダ1に対して作動油を給排しない中立ポジション20Cと、を有する。
【0025】
一方のパイロット室21aにパイロット圧が供給されると、制御弁20は、収縮ポジション20Aとなる(
図1に示す状態)。収縮ポジション20Aでは、ポンプ通路11が絞り23を通じてロッド側通路13及び負荷圧通路15に連通すると共に、ボトム側通路14がタンク通路12に連通する。これにより、油圧シリンダ1は、ロッド側室5に作動油が供給され、ボトム側室6から作動油が排出されて、収縮作動する。
【0026】
他方のパイロット室21bにパイロット圧が供給されると、制御弁20は、伸長ポジション20Bとなる。伸長ポジション20Bでは、ポンプ通路11が絞り23を通じてボトム側通路14及び負荷圧通路15に連通すると共に、ロッド側通路13がタンク通路12に連通する。これにより、油圧シリンダ1は、ボトム側室6に作動油が供給され、ロッド側室5から作動油が排出されて、伸長作動する。
【0027】
パイロット室21a,21bのいずれにもパイロット圧が供給されない状態では、スプリング22a,22bの付勢力によって、制御弁20は、中立ポジション20Cとなる。中立ポジション20Cでは、ロッド側通路13及びボトム側通路14に対するポンプ通路11及びタンク通路12の連通がそれぞれ遮断され、ポンプ通路11及び負荷圧通路15がタンク通路12に連通される。
【0028】
負荷圧通路15には、ポンプPから吐出され制御弁20に設けられる絞り23を通過して油圧シリンダ1に供給される作動油と同圧が導かれる。負荷圧通路15内の作動油の圧力は、負荷圧Plsとしてレギュレータ111に導かれる。また、ポンプPから吐出され制御弁20に導かれるポンプ通路11の圧力は、自己圧Ppsとしてレギュレータ111に導かれる。また、負荷圧通路15は、絞り50を通じてタンク通路12に連通している。
【0029】
連通路17は、その両端がタンク通路12に連通するものであり、タンク通路12の作動油が導かれる。連通路17には、他の通路は接続されない。また、連通路17には、バルブ等の油圧機器も設けられない。つまり、連通路17は、タンク通路12の作動油が導かれるのみであって、作動油の流れを制御するというバルブ装置100の機能には影響せず、タンク通路12から分岐しタンク通路12に合流してタンク通路12をバイパスするだけの通路である。
【0030】
リリーフ弁30は、ポンプ通路11とタンク通路12とを連通するリリーフ通路18に設けられる。リリーフ弁30は、ポンプ通路11の圧力が所定のリリーフ圧に達すると開弁し、ポンプPから吐出された作動油をタンクTへと逃がす。
【0031】
アンロード弁40は、ポンプ通路11とタンク通路12に連通するアンロード通路19に設けられる。アンロード弁40は、ポンプPの自己圧Ppsと負荷圧Plsとの差圧が所定の開弁圧に達すると開弁し、ポンプPから吐出された作動油をタンクTへと逃がす。
【0032】
次に、
図2から
図4を参照して、バルブ装置100及び連通路17の具体的構成について説明する。
【0033】
図2に示すように、バルブ装置100は、所定の一方向(
図2中上下方向)に連結される三つの複数のバルブブロック101(本実施形態では5つのバルブブロック)によって構成される。各バルブブロック101は、それぞれ独立したハウジング10を有し、ハウジング10がボルト(図示省略)等の手段によって連結されることで、一体的に構成される。
【0034】
本実施形態では、連通路17は、三つのバルブブロック101のうち、一対のバルブブロック101b,101cに挟まれた一つのバルブブロック101aに設けられる。言い換えると、連通路17が設けられるバルブブロック101aは、バルブブロック101の連結方向の両側において、他のバルブブロック101b,101cに連結される。以下では、特に断りがない場合には、「ハウジング10」とは、連通路17が設けられるバルブブロック101aにおけるハウジング10を指すものとする。
【0035】
図3に示すように、ハウジング10には、一対のアンロード弁40が収容される。一対のアンロード弁40のうちの一つは、流体圧システム1000が備える、
図1に示す回路系統以外の他の回路系統におけるアンロード弁40である。一対のアンロード弁40は、互いに同様の構成を備えているため、以下では、一方のアンロード弁40の構成を例に説明し、他方のアンロード弁40については、説明を適宜省略する。
【0036】
ハウジング10には、アンロード弁40のスプール41を収容する有底の収容孔40aと、収容孔40aに開口するポンプ通路11と、収容孔40aに開口するタンク通路12と、収容孔40aに開口する負荷圧通路15と、が設けられる。
【0037】
タンク通路12は、一対のアンロード弁40のそれぞれの収容孔40aに連通する第一タンク通路12aと、第一タンク通路12aに連通しバルブブロック101の連結方向(
図3における紙面垂直方向)に延びる第二タンク通路12bと、隣接する二つの他のバルブブロック101b,101cとの二つの合わせ面10b,10cのそれぞれに設けられる凹部10a(
図4参照)と、を有する。第二タンク通路12bは、二つの合わせ面10b,10cのそれぞれの凹部10aに連通する。凹部10aは、合わせ面10b,10cに開口する。これにより、タンク通路12は、合わせ面10b,10cの凹部10aを通じて他のバルブブロック101に形成されるタンク通路12と連通する。なお、隣接する二つの他のバルブブロック101b,101cとの合わせ面10b,10cは、互いに同様の構成であるため、バルブブロック101cに対する合わせ面10c及び凹部10aの図示は省略する。
【0038】
負荷圧通路15は、収容孔40a(スプール41)の中心軸に対して略垂直に設けられ収容孔40aに開口する第一負荷圧通路15aと、収容孔40aの中心軸に沿って設けられ第一負荷圧通路15aに連通する第二負荷圧通路15bと、を有する。第一負荷圧通路15a及び第二負荷圧通路15bは、それぞれ断面が円形の円形穴である。なお、他方のアンロード弁40の収容孔40aに開口する負荷圧通路15bは、一部が
図3で示す断面とは異なる断面上に設けられる。そして、他方の負荷圧通路15bは、
図3とは異なる断面から
図3で示す断面に向けて紙面垂直方向に延び、一方の負荷圧通路15aと同一断面(
図3で示す断面)において、ハウジング10の端面に開口している。
図3では、異なる断面上に設けられる部分を破線により図示している。
【0039】
アンロード弁40は、収容孔40aに移動自在に挿入されるスプール41と、スプール41を収容孔40aの底部に向けて付勢する付勢部材としてのアンロードスプリング45と、収容孔40aを塞ぐキャップ46と、を有する。
【0040】
スプール41の一端部と収容孔40aの底部との間には、自己圧Ppsが導かれる自己圧室47が形成される。スプール41の他端部とキャップ46との間には、負荷圧Plsが導かれる負荷圧室48が形成される。アンロードスプリング45は、自己圧室47の圧力による付勢力に抗するようにして設けられる。スプール41は、負荷圧室48の圧力による推力、自己圧室47の圧力による推力、及びアンロードスプリング45の付勢力が釣り合うようにして、収容孔40a内を移動する。
【0041】
スプール41には、スプール41の軸方向に沿って形成され自己圧室47に常時連通する第一自己圧導入通路42aと、スプール41の外周面に開口すると共に第一自己圧導入通路42aに連通する第二自己圧導入通路42bと、が形成される。第二自己圧導入通路42bは、収容孔40aに開口するポンプ通路11に対してスプール41の位置に関わらず常時連通するように形成される。よって、自己圧室47には、ポンプ通路11から常時自己圧Ppsが導かれる。
【0042】
また、スプール41には、スプール41の軸方向に沿って形成され負荷圧室48に常時連通する第一負荷圧導入通路43aと、スプール41の外周面に開口すると共に第一負荷圧導入通路43aに連通する第二負荷圧導入通路43bと、が形成される。第二負荷圧導入通路43bは、収容孔40aに開口する負荷圧通路15に対してスプール41の位置に関わらず常時連通するように形成される。よって、負荷圧室48には、負荷圧通路15から常時負荷圧Plsが導かれる。
【0043】
また、スプール41の外周面には、スプール41の位置に応じてタンク通路12とポンプ通路11との連通を制御するために連通溝44が環状に形成される。
【0044】
自己圧室47に導かれる自己圧Ppsによる推力が、負荷圧室48に導かれる負荷圧Plsによる推力とアンロードスプリング45の付勢力との合力よりも小さい場合には、スプール41は、収容孔40aの底部に当接し、アンロード弁40は閉弁した状態となる(
図3に示す状態)。アンロード弁40が閉弁した状態では、収容孔40aを通じたポンプ通路11とタンク通路12との連通は、スプール41によって遮断される。
【0045】
自己圧Ppsが上昇し、自己圧Ppsによる推力が負荷圧Pls及びアンロードスプリング45による推力を上回ると、スプール41は、アンロードスプリング45の付勢力に抗して移動する。これにより、アンロード弁40が開弁して、ポンプ通路11とタンク通路12とがスプール41の連通溝44を通じて連通する。よって、ポンプ通路11の作動油がタンク通路12へと導かれ、これに伴い自己圧Ppsが低下する。自己圧Ppsの推力が負荷圧Pls及びアンロードスプリング45による推力を下回ると、アンロードスプリング45の付勢力によってアンロード弁40は閉弁する。
【0046】
また、ハウジング10には、一対の連通路17a,17bが形成される。各連通路17a,17bは、バルブブロック101の連結方向に沿って直線状に延びる単一の貫通孔のみにより構成される。各貫通孔は、凹部10aに連通するようにして、ハウジング10における他のバルブブロック101との合わせ面10b,10cの両方に開口する。このようにして、連通路17a,17bは、両端が凹部10aを通じてタンク通路12に連通する。
【0047】
一方の連通路17aは、
図1に示す油圧回路系統に設けられるものである。他方の連通路17bは、他方のアンロード弁40が設けられる他の油圧回路系統に設けられるものである。一対の連通路17a,17bの構成は、互いに同様であるため、以下では、
図1に示す油圧回路系統における連通路17aについて、詳細に説明し、他方の連通路17bについては説明を省略する。
【0048】
連通路17aの一部は、負荷圧通路15の第一負荷圧通路15aに対して、作動油を導く他の通路を挟まずにハウジング10の壁部のみにより隔てられて隣接する。具体的には、第一負荷圧通路15a及び連通路17aのいずれかの中心軸と平行なある平面で見たときに(例えば、第一負荷圧通路15aの中心軸に平行な平面視である
図3中A矢視)、第一負荷圧通路15aと連通路17aとが交差する部分(
図3中クロスハッチングが施されたB部)においては、通路や他の油圧機器が設けられず、ハウジング10の壁部だけが設けられる。さらに言えば、第一負荷圧通路15aの中心軸と連通路17の中心軸との最短距離を結ぶ仮想線(言い換えると、中心軸同士の共通垂線であり、
図3中のC線)は、他の通路や油圧機器とは交差せず、ハウジング10の壁部だけと交差する。
【0049】
以下、バルブ装置100の作用効果について説明する。
【0050】
本実施形態では、制御弁20を中立ポジション20CとしてポンプPを駆動させることで、暖機運転を行うことができる。これにより、リリーフ弁30が開弁し、ポンプPから吐出される作動油は、ポンプ通路11、リリーフ弁30、タンク通路12を通じてタンクTに戻され、再びポンプPに吸い込まれるように循環し、その結果、循環する作動油(タンクT内の作動油)の温度が上昇する。また、連通路17aは、両端がタンク通路12に連通するため、連通路17a内の作動油の温度も上昇する。
【0051】
ここで、負荷圧通路は、信号圧である負荷圧を導くものであるため、絞りを通じてタンク通路に連通するように構成され、タンクに戻される流量を比較的抑えて圧力が低下しにくいように構成される。つまり、負荷圧通路は、ポンプ通路やタンク通路といった他の通路と比較して、作動油の流れが比較的抑えられている。このため、暖機運転によって温められた作動油が負荷圧通路には導かれにくい。負荷圧通路内の作動油の温度が低くポンプ通路(自己圧)の作動油と温度差があると、ポンプの容量制御の応答性が低下しハンチングが生じるおそれがある。
【0052】
これに対し、本実施形態では、内部の作動油が暖められている連通路17aが、他の通路を挟まずハウジング10の壁部のみを隔てて負荷圧通路15に隣接する。これにより、連通路17aの内部の作動油の温度が、ハウジング10の壁部を通じて負荷圧通路15内の作動油に伝達され、負荷圧通路15内の作動油が暖められる。これにより、自己圧Ppsの作動油と負荷圧Plsの作動油との温度差の発生が抑制され、ポンプPの容量制御の応答性を向上させることができる。
【0053】
なお、連通路17aは、耐久性が確保できる範囲内において、負荷圧通路15に隣接する部分を負荷圧通路15に近づけて形成することが望ましい。しかしながら、連通路17aは、負荷圧通路15に隣接する部分が、負荷圧通路15の作動油を温めることができる程度に負荷圧通路15から離れるものでもよい。
【0054】
また、本実施形態では、連通路17aは、単にタンク通路12をバイパスするものであり、バルブ装置100における機能に対して影響しない。つまり、本実施形態によれば、バルブ装置100の機能に影響を与えずに、負荷圧通路15の作動油の温度を上昇させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、連通路17aは、両端がバルブブロック101の合わせ面10b,10cにそれぞれ開口する直線状の、単一の貫通孔のみによって構成される。これにより、連通路17aを容易に形成することができる。
【0056】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0057】
上記実施形態では、連通路17は、ポンプP及びタンクTに対する油圧シリンダ1の連通を制御するためのバルブ装置100においてアンロード弁40が設けられるバルブブロック101aに設けられる。これに対し、連通路17は、ポンプPの吐出容量を制御する制御機構110に設けられてもよい。具体的には、連通路17は、レギュレータ111又は制御アクチュエータ112に設けられるものでもよい。この場合、制御機構110のハウジング(図示省略)は、ポンプPのポンプハウジング又はバルブ装置100のハウジング10と別体であってもよいし、一体であってもよい。つまり、流体圧機器は、ポンプPの吐出容量を制御する制御機構110(レギュレータ111又は制御アクチュエータ112)であってもよい。
【0058】
また、制御機構110は、レギュレータ111を含まず、制御アクチュエータ112にポンプPの自己圧Pps及び油圧シリンダ1の負荷圧Plsが直接導かれ、制御アクチュエータ112が自己圧Ppsと負荷圧Plsの差圧により直接駆動されるものでもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、連通路17は、ハウジング10の合わせ面10b,10cに開口する単一の貫通孔である。これに対し、連通路17は、タンク通路12に連通するように構成される限り、複数の孔によって構成されてもよいし、合わせ面10b,10cの凹部10a以外においてタンク通路12に連通するように構成されてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、バルブ装置100において、連通路17は、連結方向の両側に他のバルブブロック101b,101cが存在する一つのバルブブロック101aに設けられる。言い換えると、バルブ装置100は、連通路17が設けられるバルブブロック101aと、バルブブロック101aに対して連結方向の両側に隣接する二つのバルブブロック101b,101cと、の三つのバルブブロック101を有している。そして、これら三つのバルブブロック101a,101b,101cには、上記実施形態のように、さらに他のバルブブロック101(上記実施形態では二つ)が連結されていてもよい。これに対し、連通路17は、連結方向において端となるバルブブロック101に設けられてもよい。また、連通路17は、二つのバルブブロック101又は単一のバルブブロック101(モノブロック)によって構成されるバルブ装置100に設けられてもよい。つまり、バルブブロック101の数は、任意の数とすることができる。
【0061】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0062】
バルブ装置100は、自らが吐出する自己圧Ppsと供給される負荷圧Plsとに応じて吐出容量が制御される可変容量型のポンプPに対して負荷圧Plsを導く負荷圧通路15が設けられるハウジング10を備え、ハウジング10には、タンクTからポンプPが吸い込んで吐出した作動油を導くポンプ通路11と、ポンプPから吐出された作動油をタンクTに戻すタンク通路12と、両端がタンク通路12に連通する連通路17と、がさらに設けられ、連通路17の少なくとも一部は、負荷圧通路15に対して、作動油を導く他の通路を間に挟まずにハウジング10の壁部のみにより隔てられて隣接する。
【0063】
この構成では、タンクTから吸い込まれポンプPから吐出されてタンク通路12に導かれる作動油が暖気運転によって温められる。このため、タンク通路12に連通する連通路17内の作動流体も温められた作動油となる。連通路17の少なくとも一部は、他の通路を間に介さずに負荷圧通路15と隣接するため、隣接する部分において連通路17内の作動油の熱が負荷圧通路15に伝達される。これにより、負荷圧通路15内の作動油を温めることができる。したがって、ポンプPの容量制御の応答性を向上させることができる。
【0064】
また、バルブ装置100は、油圧シリンダ1に対するポンプP及びタンクTの連通を制御するものであって、所定の一方向に連結される三つのバルブブロック101を有し、バルブブロック101は、それぞれ独立したハウジング10を有し、連通路17は、一つのバルブブロック101aにおいて、隣接する二つのバルブブロック101b,101cのハウジング10との合わせ面10b,10cのそれぞれに開口する貫通孔を有する。
【0065】
この構成では、隣接するバルブブロック101b,101cとの合わせ面10b,10cに貫通孔を形成することで、連通路17を容易に形成することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0067】
100…バルブ装置(流体圧機器)、10…ハウジング、10b,10c…合わせ面、11…ポンプ通路、12…タンク通路、15…負荷圧通路(信号圧通路)、17…連通路101,101a,101b,101c…バルブブロック