(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052003
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】建設機械の排土装置
(51)【国際特許分類】
E02F 3/815 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
E02F3/815
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158430
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀井 康孝
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 浩司
(72)【発明者】
【氏名】久野 誠
(57)【要約】
【課題】 簡単な操作でブレードを所望の姿勢に回動させることにより、排土作業等の作業効率を向上できるようにする。
【解決手段】 自走可能な下部走行体2の前側に上下方向に回動可能に設けられた昇降アーム12と昇降アーム12の前端部に対し上下方向に延びる回動軸14を中心にして回動可能に取り付けられ前側の排土面13Aで土砂を押すブレード13との間には、排土面13Aが下部走行体2の直進方向に対して直交する位置にブレード13を回動させる位置決めシリンダ19が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体の前側に上下方向に回動可能に設けられた昇降アームと、
前記昇降アームの前端部に対し上下方向に延びる回動軸を中心にして回動可能に取り付けられ前側の排土面で土砂を押すブレードと、
前記昇降アームを上下方向に回動させる昇降シリンダと、
前記昇降アームと前記ブレードとの間に設けられ左右両側が前後方向に移動するように前記回動軸を中心にして前記ブレードを回動させるアングルシリンダと、
を備えてなる建設機械の排土装置において、
前記昇降アームと前記ブレードとの間には、前記排土面が前記車体の直進方向に対して直交する位置に前記ブレードを回動させる位置決めシリンダが設けられていることを特徴とする建設機械の排土装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の排土装置において、
前記ブレードには、前記回動軸の後方に取付部を備えた位置決めブラケットが設けられ、
前記位置決めシリンダは、当該位置決めシリンダの伸縮方向に延びるシリンダ中心線が前記回動軸の中心線と交差する前後方向の直線上に配置された状態で、後端部が前記昇降アームに取り付けられ、前端部が前記位置決めブラケットの前記取付部に取り付けられていることを特徴とする建設機械の排土装置。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械の排土装置において、
前記位置決めブラケットは、前記回動軸を上下方向に挿通可能な挿通孔を有していることを特徴とする建設機械の排土装置。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械の排土装置において、
前記アングルシリンダおよび前記位置決めシリンダに作動油を供給する油圧ポンプと、
前記作動油を貯留する作動油タンクと、
前記アングルシリンダに対する前記作動油の給排を制御するアングル制御弁と、
前記油圧ポンプにより吐出された前記作動油を前記位置決めシリンダ側に供給させる供給位置と前記位置決めシリンダ側の前記作動油を前記作動油タンク側に排出させる排出位置とを有する位置決め切換弁と、
前記位置決め切換弁を前記供給位置もしくは前記排出位置のいずれかに切り換える位置決めスイッチと、
を備え、
前記アングル制御弁は、前記位置決めスイッチにより前記位置決め切換弁が前記供給位置に切り換えられたときに、前記アングルシリンダと前記作動油タンクとを連通させることを特徴とする建設機械の排土装置。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械の排土装置において、
前記位置決め切換弁と前記位置決めシリンダとの間に前記位置決めシリンダに対する前記作動油の給排を制御する位置決め制御弁を備え、
前記位置決め制御弁は、前記アングル制御弁が前記油圧ポンプと前記アングルシリンダとを連通させる状態であるときに、前記位置決めシリンダと前記作動油タンクとを連通させることを特徴とする建設機械の排土装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に搭載され、整地作業に用いられる建設機械の排土装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体とによって車体が構成されている。上部旋回体の前側には、作業装置が設けられ、この作業装置を用いて掘削作業等が行われる。また、小型の油圧ショベルは、下部走行体に排土装置が設けられ、この排土装置を用いて排土作業、整地(地均し)作業等が行われる。
【0003】
油圧ショベルの排土装置は、下部走行体の前側に上下方向に回動可能に設けられた昇降アームと、昇降アームの前端部に対し上下方向に延びる回動軸を中心にして回動可能に取り付けられ、前側の排土面で土砂を押すブレードと、昇降アームを上下方向に回動させる昇降シリンダと、昇降アームとブレードとの間に設けられ、左右両側が前後方向に移動するように回動軸を中心にしてブレードを回動させるアングルシリンダと、を備えている。
【0004】
また、排土装置は、排土面が車体の直進方向に対して直交した状態がブレードの基準姿勢となる。排土装置は、この基準姿勢からアングルシリンダによってブレードを適宜に回動させることにより、土砂の排出方向を切り換えることができる。
【0005】
ここで、排土装置は、ブレードの排土面が基準姿勢となっているか否かを目視で確認するための目印部材を備えている(特許文献1)。具体的には、昇降アームとブレードとの取付部を覆うブレード側のカバーの外縁部と昇降アームに設けた目印部材との位置関係を運転席から目視し、両者が並行となったときに基準姿勢にあると確認できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の建設機械では、カバーの外縁部と目印部材とが並行であるか否かを判定する感覚には個人差があり、ブレードを基準姿勢に配置できない場合がある。
【0008】
また、特許文献1の建設機械では、アングルシリンダを動作させるためのスイッチをオペレータが細かく操作してブレードを基準姿勢に調整しなくてはならないため、ブレードを基準姿勢に配置するのに手間を要してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、簡単な操作でブレードを所望の姿勢に回動できるようにして作業効率を向上させることができるようにした建設機械の排土装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、自走可能な車体の前側に上下方向に回動可能に設けられた昇降アームと、前記昇降アームの前端部に対し上下方向に延びる回動軸を中心にして回動可能に取り付けられ前側の排土面で土砂を押すブレードと、前記昇降アームを上下方向に回動させる昇降シリンダと、前記昇降アームと前記ブレードとの間に設けられ左右両側が前後方向に移動するように前記回動軸を中心にして前記ブレードを回動させるアングルシリンダと、を備えてなる建設機械の排土装置において、前記昇降アームと前記ブレードとの間には、前記排土面が前記車体の直進方向に対して直交する位置に前記ブレードを回動させる位置決めシリンダが設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な操作でブレードを所望の姿勢に回動させることができるから、排土作業等を行うときの作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態による排土装置を備えた油圧ショベルを示す左側面図である。
【
図2】
図1の油圧ショベルを上方から見た平面図である。
【
図3】ブレードが基準姿勢に配置された排土装置を示す平面図である。
【
図5】ブレードが基準姿勢に配置された排土装置の要部を示す平面図である。
【
図6】ブレードが傾けられた排土装置の要部を示す平面図である。
【
図7】アングルシリンダが固定状態となり、位置決めシリンダがフリー状態となった排土装置の油圧回路図である。
【
図8】アングルシリンダが縮小し、位置決めシリンダがフリー状態となった排土装置の油圧回路図である。
【
図9】アングルシリンダが伸長し、位置決めシリンダがフリー状態となった排土装置の油圧回路図である。
【
図10】アングルシリンダがフリー状態となり、位置決めシリンダが縮小した排土装置の油圧回路図である。
【
図11】アングルシリンダが縮小しているときに、位置決めシリンダを操作した場合の排土装置の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械の排土装置を、キャノピ仕様のクローラ式油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、
図1ないし
図11に従って詳細に説明する。なお、本実施形態では、下部走行体が走行する方向を前後方向とし、この前後方向に直交する水平方向を左右方向とし、各機器、部材の構成、配置について説明する。
【0014】
図1において、建設機械の代表例である油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを備えている。下部走行体2と上部旋回体3とは、油圧ショベル1の車体を構成している。上部旋回体3の前側には、土砂の掘削作業等を行うスイング式の作業装置4が設けられている。
【0015】
下部走行体2は、ベースとなるトラックフレーム2Aと、トラックフレーム2Aの左右両側のサイドフレーム2B(左側のみ図示)と、を有している。サイドフレーム2Bには、遊動輪2Cと駆動輪2Dが設けられている。これら遊動輪2Cと駆動輪2Dには、履帯2Eが巻装されている。また、下部走行体2のトラックフレーム2Aには、後述する排土装置11が設けられている。
【0016】
上部旋回体3は、下部走行体2のトラックフレーム2A上に旋回可能に取り付けられた旋回フレーム5を備えている。旋回フレーム5上には、左寄りに位置してオペレータが座る運転席6と、運転席6の左右両側に設けられた作業用操作レバー7(左側のみ図示)と、運転席6の前方に設けられた走行用操作レバー・ペダル8と、排土装置11を操作するための排土用操作レバー・スイッチ(図示せず)と、後述の位置決めシリンダ19を起動させるための位置決めスイッチ23と、が設けられている。例えば、排土用操作レバー・スイッチは、運転席6の右側に配置されている。
【0017】
また、
図7等に示すように、旋回フレーム5上には、エンジン、電動モータ等(いずれも図示せず)によって駆動される油圧源としての油圧ポンプ9と、油圧ポンプ9に供給する作動油を貯える作動油タンク10と、後述の排土装置11を構成するシリンダ切換弁20、アングル制御弁21、位置決め切換弁22、位置決め制御弁24等が設けられている。油圧ポンプ9は、アングルシリンダ16および位置決めシリンダ19に作動油を供給する。
【0018】
次に、本実施形態の特徴部分となる油圧ショベル1の排土装置11の構成、機能等について、詳細に説明する。
【0019】
排土装置11は、下部走行体2を構成するトラックフレーム2Aの前側に設けられている。
図3に示すように、排土装置11は、後述の昇降アーム12、ブレード13、回動軸14、昇降シリンダ15、アングルシリンダ16、シリンダブラケット17、位置決めブラケット18、位置決めシリンダ19を含んで構成されている。排土装置11は、ブレード13を接地させた状態で下部走行体2が走行することにより、整地作業や排土作業を行う。
【0020】
昇降アーム12は、下部走行体2のトラックフレーム2Aの前側に取り付けられている。昇降アーム12は、トラックフレーム2A側となる後端部から前端部に向けて互いに接近するようにV字状に配置された左アーム部12Aおよび右アーム部12Bと、左アーム部12Aの前端部と右アーム部12Bの前端部とから前側に突出したブレード取付部12Cと、前後方向の中間部に位置して左アーム部12Aと右アーム部12Bを連結した連結部材12Dと、を含んで構成されている。
【0021】
左アーム部12Aの後端部と右アーム部12Bの後端部は、トラックフレーム2Aの前側に上下方向に回動可能に取付けられている。ブレード取付部12Cには、上下方向に貫通して挿通孔(図示せず)が設けられている。この挿通孔には、ブレード13を回動可能に支持するための後述の回動軸14が挿着される。
【0022】
連結部材12Dの上部には、左右方向に間隔をもって対面した一対の板体からなる昇降ブラケット12Eが設けられている。昇降ブラケット12Eには、昇降シリンダ15の前端部が回動可能に取り付けられている。
【0023】
図3、
図4に示すように、左アーム部12Aの外側面(左面)には、後側寄りに位置してアングルブラケット12Fが設けられている。アングルブラケット12Fには、アングルシリンダ16の後端部が回動可能に取り付けられている。
【0024】
ブレード13は、昇降アーム12の前端部に対し上下方向に延びる後述の回動軸14(中心線O1)を中心にして回動可能に取り付けられている。ブレード13は、例えば、長方形状の鋼板等を溶接手段によって固着することにより、左右方向(下部走行体2の車幅方向)に延びる前後方向に扁平で左右方向に延びたボックス構造体として形成されている。これにより、ブレード13は、左右両側が前後方向に移動するように回動軸14を中心にして回動する。
【0025】
ブレード13の前面は、上下方向の中間部が後側に凹陥した湾曲面からなり、下部走行体2を前進させることによって土砂等を押圧する排土面13Aとなっている。この排土面13Aは、左右方向に延びつつ、上下方向の中間部が後側に凹陥した湾曲面として形成されている。ブレード13の後面には、アームブラケット13Bとアングルブラケット13Cと後述の位置決めブラケット18とが設けられている。
【0026】
アームブラケット13Bは、ブレード13の左右方向の中央部の下側寄りに設けられている。
図4に示すように、アームブラケット13Bは、昇降アーム12のブレード取付部12Cを上下方向で挟むように、上下方向に間隔をもって対面した一対の板体によって形成されている。アームブラケット13Bは、ブレード取付部12Cの挿通孔に対応する挿通孔を有し、その挿通孔に回動軸14が挿着される。これにより、ブレード13は、回動軸14を中心に、
図3中の矢示R方向(時計回り)または矢示L方向(反時計回り)に回動する。
【0027】
アングルブラケット13Cは、ブレード13の左右方向の左寄りに設けられている。アングルブラケット13Cには、アングルシリンダ16の前端部が回動可能に取り付けられている。
【0028】
回動軸14は、昇降アーム12の前端部に対し上下方向に延びて設けられている。回動軸14は、ブレード取付部12Cの挿通孔とアームブラケット13Bの挿通孔とを同軸に配置した状態で、各挿通孔に亘って上側から挿着されている。これにより、回動軸14は、昇降アーム12の前端部で中心線O1を中心にしてブレード13を回動可能に支持している。
【0029】
昇降シリンダ15は、下部走行体2のトラックフレーム2Aと昇降アーム12との間に設けられている。昇降シリンダ15は、伸縮されることによって昇降アーム12を上下方向に回動(昇降)させる。昇降シリンダ15は、後端部がトラックフレーム2Aに回動可能に取り付けられ、前端部が昇降アーム12の昇降ブラケット12Eに回動可能に取り付けられている。また、昇降シリンダ15は、昇降制御弁(図示せず)に接続されている。
【0030】
アングルシリンダ16は、昇降アーム12とブレード13との間に設けられている。アングルシリンダ16は、伸縮することによって回動軸14(中心線O1)を中心にしてブレード13を矢示R方向(時計回り)または矢示L方向(反時計回り)に回動させる。アングルシリンダ16は、後端部が昇降アーム12のアングルブラケット12Fに回動可能に取り付けられ、前端部がブレード13のアングルブラケット13Cに回動可能に取り付けられている。また、アングルシリンダ16は、アングル制御弁21に接続されている。
【0031】
シリンダブラケット17は、昇降アーム12の前後方向の中間部の上側に位置して昇降ブラケット12Eの前側に設けられている。また、シリンダブラケット17は、位置決めシリンダ19の後端部を上下方向で挟むように、上下方向に間隔をもって対面した一対の板体によって形成されている。シリンダブラケット17には、上下方向に貫通した挿通孔(図示せず)を有し、この挿通孔に挿着された連結軸19Aを介して位置決めシリンダ19の後端部が回動可能に取り付けられている。シリンダブラケット17は、位置決めシリンダ19が左アーム部12Aおよび右アーム部12Bの前端部分に干渉しないように、左アーム部12Aおよび右アーム部12Bの前端部分よりも高い位置に配置されている。
【0032】
ここで、
図5、
図6に示すように、シリンダブラケット17の挿通孔(連結軸19A)は、ブレード取付部12Cの挿通孔(回動軸14)の真後ろに配置されている。具体的には、シリンダブラケット17の挿通孔(連結軸19A)の中心線O2は、ブレード取付部12Cの挿通孔(回動軸14)の中心線O1を通って前後方向に延びる直線A-A上に配置されている。
【0033】
位置決めブラケット18は、ブレード13の左右方向の中央部の上側寄り、即ち、アームブラケット13Bよりも高い位置に設けられている。換言すると、位置決めブラケット18は、例えば、ブレード13を接地させた状態で、昇降アーム12のシリンダブラケット17と同じ高さ位置に配置されている。
【0034】
位置決めブラケット18は、位置決めシリンダ19の前端部を上下方向で挟むように、上下方向に間隔をもって対面した一対の板体によって形成されている。
図3、
図5に示すように、位置決めブラケット18は、回動軸14(中心線O1)よりも後側に位置する取付部18Aと、取付部18Aから前側に延びた一対の脚部18Bと、を備えている。
【0035】
取付部18Aは、回動軸14(中心線O1)よりも後側、詳しくは、アームブラケット13Bよりも後側に配置されている。また、取付部18Aは、アームブラケット13Bの真上に位置するように、ブレード13の左右方向の中央に配置されている。この上で、取付部18Aには、上下方向に貫通して挿通孔(図示せず)が設けられている。
【0036】
取付部18Aの挿通孔は、ブレード13が
図5に示す基準姿勢をとったときに、回動軸14の真後ろ、即ち、直線A-A上に配置されている。ブレード13の基準姿勢は、排土面13Aが下部走行体2の直進方向の直線(直線A-A)に対して直交する位置に左右方向に延びた姿勢となっている。また、取付部18Aの挿通孔は、回動軸14(中心線O1)から後側に離れて配置されることで、ブレード13が回動したときの振れ幅が大きくなる。これにより、位置決めブラケット18は、位置決めシリンダ19によって力強く引っ張ることができる。
【0037】
一対の脚部18Bは、取付部18Aの左右両側から前側に延びている。一対の脚部18Bの前端部は、ブレード13の後面に取り付けられている。一対の脚部18Bは、回動軸14を避けるように、左右方向に離れて平行に配置されている。これにより、ブレード13の後面、取付部18A、一対の脚部18Bによって囲まれた長方形状の範囲が挿通孔18Cとなっている。この挿通孔18Cは、回動軸14を脱着するときに、回動軸14(抜け止め兼回り止め部分を含む)を上下方向に挿通させることができる大きな開口である。
【0038】
位置決めシリンダ19は、昇降アーム12とブレード13との間に設けられている。位置決めシリンダ19は、ブレード13が
図3中の矢示R方向または矢示L方向に回動した状態から、排土面13Aが下部走行体2の直進方向(直線A-A)に対して直交する位置にブレード13を基準姿勢に回動させる。位置決めシリンダ19は、後端部が連結軸19Aを介して昇降アーム12側のシリンダブラケット17に回動可能に取付けられている。一方、位置決めシリンダ19は、前端部が連結軸19Bを介してブレード13側の位置決めブラケット18に回動可能に取付けられている。
【0039】
位置決めシリンダ19を構成するロッドの伸縮方向に延びる直線をシリンダ中心線B-B(
図6参照)とすると、位置決めシリンダ19は、回動軸14の中心線O1と交差する前後方向の直線A-A上にシリンダ中心線B-Bが配置された状態で、後端部が昇降アーム12に取り付けられ、前端部が位置決めブラケット18の取付部18Aに取り付けられている。
【0040】
これにより、位置決めシリンダ19のロッドを縮めてシリンダブラケット17と位置決めブラケット18とを最も接近させた状態(
図2、
図3、
図5に示す状態)では、取付部18Aに位置決めシリンダ19の前端部を取り付けている連結軸19Bの中心線O3が直線A-A上に配置され、ブレード13が基準姿勢になる。即ち、ブレード13がアングルシリンダ16によって傾けられた状態でも、位置決めシリンダ19を縮小させるだけで、ブレード13を基準姿勢に戻すことができる。
【0041】
次に、排土装置11のブレード13を動作させるために用いられる各種切換弁、スイッチ等を用いた油圧回路について、
図7ないし
図11を参照して説明する。
【0042】
シリンダ切換弁20は、油圧ポンプ9からの作動油をアングルシリンダ16または位置決めシリンダ19に供給する。シリンダ切換弁20は、(a)、(b)、(c)の3つの切換位置を有している。切換位置(a)では、
図7、
図10に示すように、アングルシリンダ16を油圧的にロックすると共に、作動油を位置決めシリンダ19側に供給する。切換位置(b)では、
図9に示すように、作動油をアングルシリンダ16の伸長側に供給する。切換位置(c)では、
図8、
図11に示すように、作動油をアングルシリンダ16の縮小側に供給する。シリンダ切換弁20のパイロット部は、アングル操作パイロット弁(図示せず)に接続されている。アングル操作パイロット弁は、排土用操作レバー・スイッチによって操作される。
【0043】
アングル制御弁21は、シリンダ切換弁20とアングルシリンダ16との間に設けられている。アングル制御弁21は、アングルシリンダ16に対する作動油の給排を制御する。アングル制御弁21は、アングルシリンダ16を伸縮動作させるか、アングルシリンダ16を外力によって伸縮自在なフリー状態にするかを切り換える。
【0044】
アングル制御弁21は、(d)、(e)の2つの切換位置を有している。切換位置(d)では、
図7、
図8、
図9、
図11等に示すように、作動油をアングルシリンダ16の伸長側または縮小側に供給する。切換位置(e)では、
図10に示すように、作動油がアングルシリンダ16に対して自由に給排される状態(フリー状態)とする。
【0045】
そして、アングル制御弁21は、常時は切換位置(d)に切り換えられている。一方、アングル制御弁21は、位置決め切換弁22が作動油を位置決めシリンダ19側に供給するように切り換えられたときに、この作動油をパイロット部で受承する。これにより、アングル制御弁21は、切換位置(e)に切り換えられ、アングルシリンダ16が外力によって伸縮自在な状態となる。即ち、アングル制御弁21は、位置決めスイッチ23により位置決め切換弁22が供給位置(g)に切り換えられたときに、アングルシリンダ16と作動油タンク10とを連通させる。
【0046】
位置決め切換弁22は、シリンダ切換弁20と位置決めシリンダ19との間に設けられている。位置決め切換弁22は、油圧ポンプ9により吐出された作動油を位置決めシリンダ19側に供給させる供給位置(g)と、位置決めシリンダ19側の作動油を作動油タンク10側に排出させる排出位置(f)と、の2つの切換位置を有している。排出位置(f)では、
図7、
図8、
図9等に示すように、位置決めシリンダ19側を作動油タンク10に接続している。供給位置(g)では、
図10に示すように、作動油が位置決めシリンダ19側に供給することができる。
【0047】
位置決め切換弁22は、後述の位置決めスイッチ23が操作されたときに、作動油を位置決めシリンダ19側に供給させる。位置決め切換弁22は、常時は排出位置(f)に切り換えられている。これにより、位置決めシリンダ19は、外力によって伸縮自在な状態となっている。一方、位置決め切換弁22は、位置決めスイッチ23によって供給位置(g)に切り換えられると、作動油を位置決めシリンダ19側に供給する。なお、位置決めスイッチ23と位置決め切換弁22との間にコントローラ(図示せず)を設け、コントローラからの出力信号で位置決め切換弁22を切り換える構成としてもよい。
【0048】
位置決めスイッチ23は、運転席6の周囲、例えば、排土用操作レバー・スイッチの近傍または排土用操作レバー・スイッチと一体的に設けられている。位置決めスイッチ23は、操作されることにより、位置決め切換弁22を供給位置(g)と排出位置(f)のいずれかに切り換える。位置決めスイッチ23は、位置決め切換弁22を供給位置(g)に切り換え、作動油を位置決めシリンダ19側に供給する。このときには、アングル制御弁21のパイロット部にもパイロット圧として作動油が供給される。
【0049】
位置決め制御弁24は、位置決め切換弁22と位置決めシリンダ19との間に設けられている。位置決め制御弁24は、位置決めシリンダ19に対する作動油の給排を制御する。位置決め制御弁24は、位置決めスイッチ23が操作された状態で、アングルシリンダ16が操作されたときに、位置決めシリンダ19が外力によって伸縮自在な状態にする。位置決め制御弁24は、シリンダ切換弁20を操作するためのパイロット圧を、シャトル弁25を介してパイロット部で受承することにより切り換えられる。
【0050】
位置決め制御弁24は、(h)、(i)の2つの切換位置を有している。切換位置(h)では、
図10に示すように、作動油を位置決めシリンダ19に供給することができる。また、切換位置(i)では、
図8、
図9、
図11に示すように、位置決めシリンダ19を作動油タンク10側に開放する。
【0051】
そして、位置決め制御弁24は、常時は切換位置(h)に切り換えられ、この切換位置(h)では、作動油が位置決めシリンダ19の縮小側に供給される。一方、位置決め制御弁24は、切換位置(i)に切り換えられることにより、位置決めシリンダ19を外力によって伸縮自在なフリー状態とすることができる。即ち、位置決め制御弁24は、アングル制御弁21が油圧ポンプ9とアングルシリンダ16とを連通させる状態であるときに、位置決めシリンダ19と作動油タンク10とを連通させる。
【0052】
次に、排土装置11のブレード13を傾斜姿勢にしたり、傾きを直して基準姿勢に戻したりするときの操作(動作)について、
図3ないし
図11を参照して説明する。
【0053】
排土装置11による作業の一例として、土砂を左側に排出しながら整地作業を行う場合について説明する。
【0054】
まず、排土用操作レバー・スイッチを操作して昇降アーム12を下向きに回動させ、ブレード13を接地させる。ブレード13を接地させたら、土砂が左側に排出されるように、ブレード13を
図3中の矢示L方向(反時計回り)に回動させる。
【0055】
この場合には、
図8に示すように、排土用操作レバー・スイッチを操作してシリンダ切換弁20を切換位置(c)に切り換える。これにより、油圧ポンプ9からの作動油(圧油)は、アングルシリンダ16の縮小側に供給され、ブレード13が回動軸14を中心にして矢示L方向に回動される。
【0056】
また、排土用操作レバー・スイッチによってアングルシリンダ16を回動させているときには、シャトル弁25からのパイロット圧によって位置決め制御弁24が切換位置(i)に切り換えられている。これにより、位置決めシリンダ19は、外力によって伸縮自在な状態になるから、ブレード13の回動動作を邪魔することはない。
【0057】
そして、ブレード13を所望の角度まで回動させたら、排土用操作レバー・スイッチの操作を停止する。この場合、
図7に示すように、シリンダ切換弁20が切換位置(a)に戻り、位置決め制御弁24が切換位置(h)に戻る。これにより、アングルシリンダ16が油圧的にロックされるから、この状態で下部走行体2を前進させることにより、ブレード13によって土砂を左側に排出しながら整地することができる。
【0058】
一方、ブレード13を矢示R方向に回動させる場合には、
図9に示すように、排土用操作レバー・スイッチを操作してシリンダ切換弁20を切換位置(b)に切り換える。これ以降の動作は、ブレード13を矢示L方向に回動させる場合と同様であるので省略する。
【0059】
次に、土砂を左側に排出しながらの整地作業が終わったら、次の作業、例えば、排土作業に移る。排土作業では、土砂をブレード13によって押して移動させるために、矢示L方向に回動されたブレード13を矢示R方向(矢示R方向に回動された場合には矢示L方向)に回動し、基準姿勢に戻す。
【0060】
この場合、
図10に示すように、位置決めスイッチ23を操作して位置決め切換弁22を供給位置(g)に切り換える。これにより、油圧ポンプ9からの作動油(圧油)は、位置決めシリンダ19の縮小側に供給されるから、ブレード13は、
図6に示すように、位置決めシリンダ19によって矢示R方向に回動される。
【0061】
ここで、位置決めシリンダ19は、当該位置決めシリンダ19の伸縮方向に延びるシリンダ中心線B-Bが回動軸14の中心線O1と交差する前後方向の直線A-A上に配置された状態で、後端部が昇降アーム12の17に取り付けられ、前端部が位置決めブラケット18の取付部18Aに取り付けられている。
【0062】
従って、位置決めシリンダ19は、ロッドを縮小することにより、ブレード13と一緒に矢示L方向に回動した位置決めブラケット18を矢示R方向に回動することができる。そして、位置決めシリンダ19のロッドが最も縮小した状態では、
図5に示すように、シリンダブラケット17と位置決めブラケット18とが最も接近し、取付部18Aに位置決めシリンダ19の前端部を取り付けている連結軸19Bの中心線O3が直線A-A上に配置される。これにより、位置決めシリンダ19のロッドを縮小させるだけで、ブレード13を基準姿勢にすることができる。
【0063】
一方、
図11に示すように、位置決めスイッチ23を操作した状態(スイッチON状態)で、排土用操作レバー・スイッチをアングルシリンダ16の縮小側に操作すると、シャトル弁25からのパイロット圧によって位置決め制御弁24が切換位置(i)に切り換えられて位置決めシリンダ19が伸縮自在なフリー状態になるから、アングルシリンダ16を縮小してブレード13を回動させることができる。また、排土用操作レバー・スイッチの操作を停止すると、
図10に示すように、位置決め制御弁24が切換位置(h)に切り換えられてブレード13が基準姿勢に戻される。
【0064】
なお、
図1、
図2に示すように、キャノピ26は、運転席6の上方を覆っている。本実施形態では、キャノピ26に代えて、運転席6の周囲と上方を覆うキャブを用いる構成としてもよい。
【0065】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、油圧ショベル1を用いて土砂の掘削作業を行う場合には、オペレータは、運転席6に座り、走行用操作レバー・ペダル8を操作することにより、油圧ショベル1を自走させることができる。そして、オペレータは、作業用操作レバー7を操作することにより、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を回動させ、土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0066】
次に、油圧ショベル1の排土装置11を用いて整地作業等を行う場合には、オペレータは、排土用操作レバー・スイッチを操作して昇降シリンダ15を伸長させ、ブレード13を接地させる。この状態で、油圧ショベル1を走行させ、走行方向の土砂をブレード13によって押出すことにより、整地作業等を行うことができる。
【0067】
この整地作業において、排土用操作レバー・スイッチを操作してアングルシリンダ16を伸縮させることにより、ブレード13を矢示L方向または矢示R方向に回動させて傾けることができる。ブレード13を傾けた状態で、油圧ショベル1を走行させることにより、ブレード13の側方から土砂を排出させることができる。
【0068】
かくして、本実施形態によれば、下部走行体2の前側に上下方向に回動可能に設けられた昇降アーム12と昇降アーム12の前端部に対し上下方向に延びる回動軸14を中心にして回動可能に取り付けられ前側の排土面13Aで土砂を押すブレード13との間には、排土面13Aが下部走行体2の直進方向に対して直交する位置にブレード13を回動させる位置決めシリンダ19が設けられている。
【0069】
従って、ブレード13の姿勢の状態を目視で確認する必要がなく、位置決めシリンダ19を縮小させるだけでブレード13を下部走行体2の直進方向に対して直交する基準姿勢に戻すことができる。この結果、目視による確認作業や感覚の個人差を排除できるから、簡単な操作でブレード13を所望の姿勢に回動させることができ、排土作業等の作業効率を向上することができる。従って、目視による確認では、ブレードを基準姿勢に配置できない場合がある。また、アングルシリンダ16を細かく手動で操作する必要もなく、この点においても、作業効率を向上することができる。
【0070】
ブレード13には、回動軸14の後方に取付部18Aを備えた位置決めブラケット18が設けられている。この上で、位置決めシリンダ19は、当該位置決めシリンダ19の伸縮方向に延びるシリンダ中心線B-Bが回動軸14の中心線O1と交差する前後方向の直線A-A上に配置された状態で、後端部が昇降アーム12に取り付けられ、前端部が位置決めブラケット18の取付部18Aに取り付けられている。これにより、位置決めシリンダ19を縮小させることで、位置決めシリンダ19のシリンダ中心線B-Bを回動軸14の中心線O1と交差する前後方向の直線A-Aと一致させることができ、ブレード13を基準姿勢に配置することができる。
【0071】
位置決めブラケット18は、回動軸14を上下方向に挿通可能な挿通孔18Cを有している。従って、挿通孔18Cは、回動軸14を通すことができ、回動軸14を脱着するときの作業性を向上することができる。
【0072】
アングルシリンダ16および位置決めシリンダ19に作動油を供給する油圧ポンプ9と、作動油を貯留する作動油タンク10と、アングルシリンダ16に対する作動油の給排を制御するアングル制御弁21と、油圧ポンプ9により吐出された作動油を位置決めシリンダ19側に供給させる供給位置(g)と位置決めシリンダ19側の作動油を作動油タンク10側に排出させる排出位置(f)とを有している位置決め切換弁22と、位置決め切換弁22を供給位置(g)と排出位置(f)のいずれかに切り換える位置決めスイッチ23と、を備えている。この上で、アングル制御弁21は、位置決めスイッチ23により位置決め切換弁22が供給位置(g)に切り換えられたときに、アングルシリンダ16と作動油タンク10とを連通させる構成としている。これにより、位置決めシリンダ19がブレード13を基準姿勢に戻すときに、アングルシリンダ16が邪魔(抵抗)にならないようにすることができる。
【0073】
さらに、位置決め切換弁22と位置決めシリンダ19との間に位置決めシリンダ19に対する作動油の給排を制御する位置決め制御弁24を備え、位置決め制御弁24は、アングル制御弁21が油圧ポンプ9とアングルシリンダ16とを連通させる状態であるときに、位置決めシリンダ19と作動油タンク10とを連通させる構成としている。これにより、位置決めスイッチ23が操作された状態(ON状態)でも、アングルシリンダ16の操作を優先させることができる。
【0074】
なお、実施形態では、建設機械の排土装置11を、クローラ式の油圧ショベル1に適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ブルドーザ等の他の建設機械の排土装置にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 油圧ショベル
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
9 油圧ポンプ
10 作動油タンク
11 排土装置
12 昇降アーム
13 ブレード
13A 排土面
14 回動軸
15 昇降シリンダ
16 アングルシリンダ
18 位置決めブラケット
18C 挿通孔
19 位置決めシリンダ
20 シリンダ切換弁
21 アングル制御弁
22 位置決め切換弁
23 位置決めスイッチ
24 位置決め制御弁
O1 回動軸の中心線
O2 位置決めブラケットの挿通孔の中心線
A-A 中心線O1を前後方向の通る直線
B-B シリンダ中心線