(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052013
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】シール部材
(51)【国際特許分類】
B60J 10/20 20160101AFI20240404BHJP
B60J 10/86 20160101ALI20240404BHJP
【FI】
B60J10/20
B60J10/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158443
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 直也
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA27
3D201CA33
3D201DA03
3D201DA31
3D201EA01A
3D201EA03D
3D201EA04D
3D201FA01
3D201FA04
(57)【要約】
【課題】車体フードを起立させて開位置にしたとき、車体フード前縁に取り付けられたシール部材が垂れ下がり見栄えが悪くなってしまうことを防止する。
【解決手段】、シール部材1は車体開口の開口縁に沿って延び、当該開口縁と車体フード102との隙間を封止する帯状のシール部材である。シール部材1は、裏面を車体フード102側にされ、表面を車体開口にされる板状領域20と、板状領域20の裏面に形成されてシール部材1の帯幅方向に延び板状領域20をシール部材1の長手方向一側Faと他側Saに隔てる溝部、長手方向一側Faおよび他側Saの表面にそれぞれ立設されて溝部の溝側面を区画する1対の立壁部、および立壁部の突出縁同士を結合し溝部の溝底面を区画する頂壁部で構成される剛性確保部25とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体開口の開口縁に沿って延び、当該開口縁と前記車体開口を覆う車体フードとの隙間を封止する帯状のシール部材であって、
裏面を前記車体フード側にされ、表面を前記車体開口側にされる板状領域と、
前記板状領域の前記裏面に形成されてシール部材の帯幅方向に延び前記板状領域をシール部材の長手方向一側と他側に隔てる溝部、前記長手方向一側および他側の前記表面にそれぞれ立設されて前記溝部の溝側面を区画する1対の立壁部、および前記立壁部の突出縁同士を結合し前記溝部の溝底面を区画する頂壁部で構成される剛性確保部とを含む、シール部材。
【請求項2】
前記溝側面および前記溝底面で構成される溝断面形状は、四角形、あるいは半円形、あるいは三角形、あるいは波形である、請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記剛性確保部は、シール部材の長手方向に間隔をあけて複数設けられる、請求項1に記載のシール部材。
【請求項4】
前記板状領域には、長手方向に延びる屈曲ラインが形成され、当該屈曲ラインよりも帯幅方向他側が、前記屈曲ラインよりも帯幅方向一側よりも表側へ傾倒する、請求項1に記載のシール部材。
【請求項5】
前記剛性確保部は、前記屈曲ラインを越えて、帯幅方向一側から帯幅方向他側へ延びる、請求項4に記載のシール部材。
【請求項6】
前記シール部材の帯幅方向一側部が前記車体フードに固定され、
前記シール部材の帯幅方向他側部が前記帯幅方向一側部に片持ち支持され、
シール部材の長手方向位置に関し、前記剛性確保部が形成される長手方向位置での前記帯幅方向他側部のシール部材帯幅寸法が、前記剛性確保部が形成されない長手方向位置での前記帯幅方向他側部のシール部材帯幅寸法よりも大きい、請求項1に記載のシール部材。
【請求項7】
前記剛性確保部は、シール部材の長手方向と直交するように延びる、請求項1~6のいずれかに記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の隙間を封止するシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体に設けられる開口と、当該開口を開閉する蓋板に関し、蓋板を閉位置にした状態で、蓋板と開口縁の隙間をシールする構造として、従来、例えば特開平05-085282号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。特許文献1記載のシール構造は、乗用自動車の車体前部に設けられるエンジンルーム(車体開口部)と、エンジンルームを覆う開閉可能な蓋状のエンジンフード(ボンネットともいう)と、エンジンフード左縁・前縁・右縁に沿って連なって取付固定される帯状のシールとを有する。エンジンフードが閉位置にされると、シールは車体とエンジンフードに挟まれて、両者間の隙間を封止する。
【0003】
特許文献1記載のエンジンフードは、車体の左縁から右縁まで広がる略矩形の板である。エンジンフード後縁はヒンジでエンジンルーム後縁に連結され、かかるヒンジによりエンジンフードは開閉可能である。エンジンルーム前縁には、ヘッドライトおよびフロントグリルが配置される。具体的にはヘッドライトは左右両側に配置され、フロントグリルは左右両側のヘッドライト間に配置される。エンジンフード前縁は、車体のフロントグリルおよびヘッドライトの形状に合わせて形成される。
【0004】
特許文献1記載の自動車では、左ヘッドライトと、フロントグリルと、右ヘッドライトが、1列に整然と配列される。これに対応してエンジンフード前縁は、直線形状であるか、あるいは緩やかな弧を描くような略直線形状とされる。また帯状のシール部材は、長手方向いずれの位置にあっても断面形状一定とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エンジンフードは開位置にされると、エンジンフード下面がやや下向きで立ち上がる。シールの帯幅方向一側部(後側)はエンジンフード下面に固定されているが、シールの帯幅方向他側部(前側)はエンジンフード前縁に固定されてなく、帯幅方向一側部によって片持ち支持される。このため、シールの帯幅方向他側部は自重で下方へ垂れ下がってしまい、エンジンフード前縁の見栄えが悪くなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、エンジンフード等の車体フードに関し、車体フード前縁の見栄えが悪くなってしまうことを防止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため本発明による、シール部材は、車体開口の開口縁に沿って延び、当該開口縁と車体開口を覆う車体フードとの隙間を封止する帯状のシール部材であって、裏面を車体フード側にされ、表面を車体開口側にされる板状領域と、板状領域の裏面に形成されてシール部材の帯幅方向に延び板状領域をシール部材の長手方向一側と他側に隔てる溝部、長手方向一側および他側の表面にそれぞれ立設されて溝部の溝側面を区画する1対の立壁部、および立壁部の突出縁同士を結合し溝部の溝底面を区画する頂壁部で構成される剛性確保部とを含む。
【0009】
かかる本発明によれば、剛性確保部によって板状領域の剛性が確保され、板状領域は自重で弾性変形しない。したがって車体フードを起立させて開位置にしたとき、車体フード前縁に取り付けられたシール部材が垂れ下がることが防止される。
【0010】
剛性確保部は、表側が突条であり裏側が溝部であればよく、剛性確保部の断面形状は限定されない。本発明の一局面として、溝側面および前記溝底面で構成される溝断面形状は、四角形、あるいは半円形、あるいは三角形、あるいは波形である。
【0011】
剛性確保部の本数は限定されない。本発明の一局面として、剛性確保部は、シール部材の長手方向に間隔をあけて複数設けられる、かかる局面によれば、板状領域に複数の剛性確保部が設けられ、板状領域の剛性が益々大きくなる。
【0012】
本発明の一局面として板状領域には、長手方向に延びる屈曲ラインが形成され、板状領域における当該屈曲ラインよりも帯幅方向他側の板状部分が、板状領域における屈曲ラインよりも帯幅方向一側の板状部分よりも表側へ傾倒する。かかる局面によれば、車体フードが屈曲ラインで屈曲する形状である場合に、板状領域を車体フードの屈曲形状に合わせることができる。
【0013】
本発明の好ましい局面として剛性確保部は、屈曲ラインを越えて、帯幅方向一側から帯幅方向他側へ延びる。かかる局面によれば、屈曲ラインの剛性が確保され、板状領域が屈曲ラインで弾性変形することが防止される。
【0014】
本発明の一局面としてシール部材の帯幅方向一側部が車体フードに固定され、シール部材の帯幅方向他側部がシール部材の帯幅方向一側部に片持ち支持され、シール部材の長手方向位置に関し、剛性確保部が形成される長手方向位置での前記帯幅方向他側部のシール部材帯幅寸法が、剛性確保部が形成されない長手方向位置での帯幅方向他側部のシール部材帯幅寸法よりも大きい。かかる局面によればシール部材のうち最も帯幅方向の大きい部位に剛性確保部が設けられる。したがって板状領域全体の剛性が確保される。
【0015】
剛性確保部の延在方向は帯幅方向であればよく、特に限定されない。本発明の好ましい局面として剛性確保部は、シール部材の長手方向と直交するように延びる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、車体フードが開位置に起立される場合に、車体フードに設けられるシール部材が垂れ下がることが防止され、車体フードの見栄えを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のシール部材が設けられる車体およびフードを示す模式的な斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態になるシール部材を示す模式図である。
【
図3】
図2中、III-III断面を示す断面図である。
【
図4】
図2中、IV-IV断面を示す断面図である。
【
図5】
図2中、V方向からみた状態を示す図である。
【
図7】
図2中、VII-VII断面を示す断面図である。
【
図11】対比例のシール部材を示す断面図であり、
図10中、XI-XI断面を表す。
【
図12】対比例のシール部材を示す断面図であり、
図11中のシール部材の変形状態を模式的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明のシール部材が取付固定される自動車のフードおよび車体前部を示す模式的な斜視図である。本明細書中、左右とは車幅方向をいい、前後とは車両前方および後方をいう。車体100の前部にはエンジン、あるいは電気自動車の電気部品、あるいは荷物等が収容されるルーム101が区画形成される。ルーム101は少なくとも上側へ開放される車体開口を有する。かかる車体開口は、左車体パネル103mと右車体パネル103nとフロントグリル104とダッシュパネル105で区画される。また車体開口の前側左右には、ヘッドライト106がそれぞれ配置される。車体開口の前側の開口縁101aは、車幅方向中央領域のフロントグリル104と、左右のヘッドライト106で構成される。
【0019】
車体開口はフード102によって開閉可能とされる。
図1および
図2はフード102の開状態(開位置ともいう)を示す。フード102のフード後縁102eは、ヒンジ107で車体100のダッシュパネル105近傍に連結される。
図1に示すように車体100が水平な路面に駐車された状態において、ヒンジ107は、水平面に対して90°未満、例えば0~80°の範囲で、フード102の開位置まで角度変化を許容する。フード102のフード前縁102dにはシール部材1が取り付けられる。
【0020】
図2は、
図1中のフード102のフード前縁102dを拡大して示す模式的な斜視図である。
図3および
図4は、フード102を閉じた状態でのフード前縁102dおよび開口縁101aを拡大して示す模式的な断面図であり、
図2に表されるシール部材1の長手方向第1領域Fa中III-IIIおよびIV-IVでシール部材1およびフード102を切断し、各切断面を矢の方向に見た状態を表す。
【0021】
フード102は、通常、
図3、
図4の断面図に示すように、下側の閉位置にされ、略水平姿勢、あるいはフード前縁102dがフード後縁102e(
図1)よりも低い傾倒姿勢でルーム101を覆う。かかる閉位置でフード102のフード前縁102dは、左右のヘッドライト106と、車幅方向中央領域のフロントグリル104に沿うようにされ、これらとの間で隙間Sを構成する。フード102は、
図1および
図2に示すように上側の開位置にされると、フード前縁102dがフード後縁102eよりも高くなるよう、フード102はヒンジ107を中心として回動起立し、ルーム101を露出させる。
【0022】
フード102は、通常、
図3、
図4の断面図に示すように、上側で広がるフード本体(アウターパネル)102aと、フード本体102aの下側に固定されるインナーパネル102bを有する。便宜上、インナーパネル102bを単にフード下面ともいう。またシール部材1をフード102に取り付けた際に、シール部材1のルーム101側を表側といい、シール部材1のフード102側を裏側という。
【0023】
シール部材1はフード102のフード前縁102d付近に沿って延びる帯状部材であり、フード102の車幅方向に延びる。以下の説明では、
図1および
図2に示すようにシール部材1が延びる方向を長手方向ともいう。シール部材1は帯幅方向を前後方向にしてフード102のインナーパネル102b(フード下面)に取付固定される。具体的には
図3および
図4に示すように、シール部材1の帯幅方向一側部になる後縁部に、複数の貫通孔11aが形成され、各貫通孔11aにクリップ31が通されて、各クリップ31はフード102下面に設けられるインナーパネル102bの対応箇所に形成されるパネル貫通孔102cに嵌合する。以下の説明では、後縁部を、取付基部11,21ともいう。本明細書では説明の便宜上、フード102が
図2に示す起立姿勢にされていても、シール部材1の帯幅方向を前後方向という場合がある。
【0024】
図3および
図4を参照して、シール部材1の帯幅方向他側部になる前縁部は、シール基部13,23、シールリップ14,24を構成する。シールリップ14,24は開口縁101aに弾接する。前縁部(シール基部13,23、シールリップ14,24)は、上述した後縁部(取付基部11,21)に片持ち支持される。
【0025】
図2に示すようにシールリップ14,24は、シール部材1の両端部Saには設けられず、両端部Saを除いたシール部材1の長手方向第1領域Faに設けられる。長手方向第1領域Faに含まれるシールリップ14は、上述した長手方向第1領域Faの他の部分と同じ材料で形成されるか、あるいはEPDMスポンジゴム等の発泡ゴム、または発泡TPOや軟質TPO等で形成されてもよい。
【0026】
図2に示すように長手方向第1領域Faは、境界Cで長手方向中央領域10と端部分(板状領域20)に区分される。長手方向中央領域10中、帯幅方向一側から他側へ向かって、取付基部11、接続部12、シール基部13、シールリップ14が連続する。取付基部11はシール部材1の帯幅方向一側部であり、前述した取付用のクリップ31でインナーパネル102bに固定される。
図3を参照して、シール部材1の両面のうち、取付基部11がインナーパネル102bに取付固定されることによってインナーパネル102bに接触する面をシール部材1の裏面ともいう。反対に、ルーム101に臨む面を表面ともいう。
図1に示すようにフード102が開位置にされると、シール部材1の表面が露出する。境界Cよりも端の板状領域20も同様であり、
図2に示すように帯幅方向一側から他側へ向かって、取付基部21、接続部22、シール基部23、シールリップ24が連続する。
【0027】
長手方向第1領域Faのうち長手方向中央領域10には、
図3に仮想線で示すようにシール基部13を弾性変形させてフード102に接触させるための見込みが設けられる。取付基部11がフード102に取り付けられることによって、シール基部13は、接続部12を回動中心として、仮想線で表される取付前の原形状態における原位置から、実線で表される取付後位置に弾性変形する。かかる見込みによって、シール基部13の前縁13aはある程度大きな面圧でフード前縁102dを押圧する。かかる見込みにより、フード102が
図1および
図2に示す開位置に起立してフード前縁102dが上向きとされつつフード下面(インナーパネル102b)がやや下方へ指向しても、シール基部13が垂れ下がってフード前縁102dとシール基部13の前縁13aの間に隙間が発生することがない。
【0028】
第1実施形態によれば、フード前縁102dは長手方向第1領域Faによって見栄え良くカバーされる。長手方向第1領域Faに含まれる長手方向中央領域10で取付基部11およびシール基部13は、例えばEPDMソリッドゴム等の非発泡ゴム、他の耐候性ゴム、あるいはTPO等の熱可塑性エラストマーからなる。
【0029】
第1実施形態では、接続部12の表面で長手方向に延びる溝が形成される。これによって帯幅方向中央部の接続部12は帯幅方向両側の取付基部11およびシール基部13よりも薄肉にされ、上述した見込みによる弾性変形が好適に実現する。
【0030】
一方、
図4に示すようにシール部材1の端部領域になる板状領域20には見込みが設けられない。前述したように取付基部11がフード102に取り付けられることによって、
図4に示すようにシール基部23は、殆ど弾性変形しないか、僅かに弾性変形する。つまりシール基部23は、フード前縁102dを押圧しないか、相対的に小さな面圧でフード前縁102dを押圧する。両端部Saと、両端部Saから長手方向内側へ連続する領域(長手方向第1領域Faのうち端部分)は、厚み一定の板状である板状領域20を構成する。
【0031】
見込みの有無によって、
図3に仮想線で示す断面形状と
図4に実線で示す断面形状に差異が生じる。かかる差異を吸収するため、境界Cの近傍に切り欠き26が形成される。切り欠き26はシール部材1の帯幅方向一側縁から接続部22まで延びる。シール部材1の帯幅方向他側には切り欠きが設けられず、シール基部13,23はシール部材1の長手方向に連続する。切り欠き26から境界Cまでの領域には見込みが設定される。
【0032】
また、見込みが設けられない代わりに、板状領域20には、
図2に示すように剛性確保部25が形成される。剛性確保部25は、シール部材1の帯幅方向一側縁から他側へ向かって帯幅方向に延び、具体的には取付基部21を完全に横断し、接続部22を越えて、シール基部23の途中まで至る。剛性確保部25は、
図5に示すように板状領域20と略同じ板厚で形成され、板状領域20と同程度の弾性を持つ各種ゴム又は熱可塑性樹脂からなる。
【0033】
図1に示すようにシール部材1の帯幅寸法は、長手方向中央領域10で相対的に小さく、長手方向両端を含む板状領域20で相対的に大きくされる。剛性確保部25はシール部材1の帯幅寸法が最も大きな箇所に設けられる。
【0034】
前述したようにシール基部13,23(帯幅方向他側部)は取付基部11,21(帯幅方向一側部)に片持ち支持される(
図3および
図4)。片持ち支持されるシール基部13,23は、フード102の開位置(
図1)において、自重で垂れ下がらないことが好ましい。
図2を参照して、シール部材1の長手方向位置に関し、剛性確保部25が形成される長手方向位置でのシール基部23の帯幅寸法L1は、剛性確保部25が形成されない長手方向位置でのシール基部13の帯幅寸法L2よりも大きい(L2<L1)。一般的に帯幅寸法が大きいほど自重が大きくなり、フード102の開位置(
図1)において自重で垂れ下がる懸念が増大する。本実施形態によれば、帯幅寸法が大きな長手方向位置に剛性確保部25を設けることから、かかる懸念が解消される。
【0035】
剛性確保部25に関し、
図5は、シール部材1の帯幅方向一側から他側へ
図2中V方向にみた状態を示す図である。
図6は、
図2中、VI-VI断面を示す断面図であり、剛性確保部25に隣接する板状領域20の断面形状を表す。
図7は、
図2中、VII-VII断面を示す断面図であり、剛性確保部25の縦断面形状を表す。剛性確保部25は、
図5に示すように一対の立壁部25a,25bと、頂壁部25cを含み、シール部材1の表側からみて突条Tを構成し、シール部材1の裏側からみて溝部Mを構成する。溝部Mの深さ寸法は、板状領域20の板厚寸法よりも大きい。このため取付基部21は溝部Mによって長手方向一側と長手方向他側に隔てられる。シール部材1の板厚方向に関し、頂壁部25cは板状領域20からみて表側へ完全にずれている。
【0036】
剛性確保部25を有する板状領域20は、剛性確保部を有しない板状領域と比較して、
一対の立壁部25a,25bだけ断面長(切断面の長さ)が長くなる。このため剛性確保部25を有する板状領域20の剛性が向上する。
【0037】
1対の立壁部25a,25bは、板状領域20の表側に立設され、溝部Mを挟んで対向する。立壁部25a,25bは溝部Mの溝側面を区画する。頂壁部25cは立壁部25a,25bの突出縁同士を結合し、溝部Mの溝底面を区画する。
図5を参照して、剛性確保部25は四角形断面あるいは台形断面の横断面形状で帯幅方向に延びている。
【0038】
図6を参照して板状領域20は、裏側のインナーパネル102bにぴったり沿うために、接続部22で折れ形状にされ、シール基部23が表側へ傾倒する。かかる折れ形状はシール部材1の長手方向に延びることから屈曲ラインともいう。かかる屈曲ラインは、
図2に示すように接続部22の溝と接続する。
【0039】
接続部22は屈曲ラインであることからシール基部23およびシールリップ24の自重により折れ変形し易い。剛性確保部25が設けられる箇所に着目すると、当該箇所に屈曲ラインの接続部22は設けられない。屈曲ラインの接続部22は板状領域20の剛性を低下させるところ、剛性確保部25が設けられることによって、剛性確保部25を挟んで断続する一方および他方の接続部22(屈曲ライン)の剛性が向上する。
【0040】
折れ形状の接続部22に対し、
図7を参照して剛性確保部25は、折れ形状ではなく帯幅方向に真っ直ぐに延びている。具体的には頂壁部25cが取付基部21からシール基部23まで帯幅方向に真っ直ぐ延びる。剛性確保部25は、シール部材1の帯幅方向一側でトンネル開口25dを構成する。トンネル開口25dは後方へ指向する。
【0041】
第1実施形態によれば、剛性確保部25が板状領域20の剛性を確保することから、板状領域20が接続部22でさらに折れるよう弾性変形することを防止する。したがって
図1および
図2に示すようにフード102を開位置へ起立させても、シール基部23が表側へ垂れ下がることがなく、シール基部23がフード前縁102dから離れて見栄えが悪くなることが防止される。
【0042】
また第1実施形態によれば、シール部材1の帯幅寸法一側部である取付基部11,21がフード102に固定され、シール部材1の帯幅寸法他側部であるシール基部13,23が取付基部11,21に片持ち支持される。ここで一般的には、シール基部13,23の帯幅寸法が大きいほど、シール基部13,23の自重が大きくなり、フード102の開位置(
図1)でシール基部13,23が自重で垂れ下がる懸念が増大する。
【0043】
そこで本実施形態では、シール部材1の長手方向位置に関し、剛性確保部25が形成される長手方向位置におけるシール基部23の帯幅寸法L1と、剛性確保部25が形成されない長手方向位置におけるシール基部13の帯幅寸法L2を対比して、L2<L1とした。本実施形態によれば、帯幅寸法が相対的に大きく剛性不足が予想される箇所であっても剛性を確保することができる。
【0044】
第1実施形態の剛性確保部25の作用につき、対比実験を行った。
図10は対比例のシール部材200を表側からみた状態を示す模式的な拡大図であり、板状領域20を取り出し、長手方向第1領域を図略する。
図11および
図12は、
図10中、シール部材200を長手方向に直角な面XI-XIで切断し、切断面を示す。シール部材200は剛性確保部25を有しないが他の形状は全て上述したシール部材1と同一である。
【0045】
フード102の閉位置で、シール部材200は
図11に示すようにインナーパネル102bにぴったりと沿う状態を保持した。フード102の開位置で、シール部材200は
図12に示すように接続部22よりも前方で前方へ倒れるように弾性変形してしまった。
【0046】
この理由として以下のことが考えられる。フード102閉位置(
図11)で、シールリップ24が開口縁101a(
図4)から押圧力を受けると、シール基部23の前縁23aもフード前縁102dに押圧されるためである。しかし、フード102開位置で、シールリップ24は開口縁101a(
図4)から離れ、シール基部23の前縁23aもフード前縁102dに押圧されなくなるためである。
【0047】
また板状領域20の帯幅寸法L1が長手方向中央領域10の帯幅寸法L2よりも大きいため、板状領域20の重量も大きく、取付基部21がシール基部23の重量を支えることができなくなったと考えられる。対比例によれば、シール基部23が表側へ垂れ下がってしまい、シール基部23の前縁23aがフード前縁102dから離れて見栄えが悪くなってしまう。
【0048】
次に、シール部材1の製造工程につき補足説明する。
【0049】
図1を参照して、シール部材1は、押出成形によって製造された長手方向中央領域10と、型成形によって製造された板状領域20を、境界Cで接続してなる。押出成形は、長手方向中央領域10のように長尺な一定断面のシール部品を製造する際に有利であり、フロントグリル104のように長手方向に連なる箇所のシール部品に採用される。板状領域20および剛性確保部25は、金型によって成形されるものであり、ヘッドライト106のような特異な形状に合致するシール部品や、剛性確保部25のような立体形状に採用される。剛性確保部25は板状領域20に一体結合する。
【0050】
長手方向中央領域10と板状領域20の接合箇所になる境界Cは三角形のマークで表される。三角形のマークの白抜き側が押出成形側を示し、黒塗り潰し側が型成形側を示す。境界Cはシール部材1の長手方向に直角な端面同士を接着してなる。第1実施形態によれば、金型によって、溝Mおよび突条Tを構成する剛性確保部25を製造することができる。またシール部材1は長手方向途中に押出加工による長手方向中央領域10を含むことから、長尺なシール部材1を効率良く製造することができる。
【0051】
次に、本発明の第2実施形態につき説明する。
図8は第2実施形態のシール部材2を帯幅方向一側から他側へみた状態を示す図であり、第1実施形態の
図5に対応する。第2実施形態のシール部材2は、前述したシール部材1の変形例であり、基本的な構成は共通するが、
図5および
図8を対比して理解されるように断面形状が異なる。
【0052】
シール部材2は前述した断面四角形状の剛性確保部25に代えて、断面三角形状の剛性確保部27を有する。剛性確保部27は、1対の立壁部27a,27bと、頂壁部27cを含み、裏側で溝部Mを構成し、表側で突条Tを構成する。立壁部27a,27bは板状領域20の表側に立設される。頂壁部27cは断面V字形状であり、立壁部27a,27bの突出縁同士を結合する。
【0053】
第2実施形態も、剛性確保部27が板状領域20の剛性を確保することから、フード102が開位置に起立しても、板状領域20が垂れ下がることがない。したがって
図2に示すようにフード102の開位置で、シール基部23が表側へ垂れ下がることがなく、シール基部23の前縁23aがフード前縁102dから離れて見栄えが悪くなることが防止される。
【0054】
次に、本発明の第3実施形態につき説明する。
図9は第3実施形態のシール部材3を帯幅方向一側から他側へみた状態を示す図であり、第1実施形態の
図5に対応する。第3実施形態のシール部材3は、前述したシール部材1の変形例であり、基本的な構成は共通するが、
図5および
図9を対比して理解されるように断面形状が異なる。
【0055】
シール部材3は前述した断面四角形状の剛性確保部25に代えて、断面円弧形状の剛性確保部28を有する。剛性確保部28は、1対の立壁部28a,28bと、頂壁部28cを含み、裏側で溝部Mを構成し、表側で突条Tを構成する。立壁部28a,28bは板状領域20の表側に立設される。頂壁部28cは、立壁部28a,28bの突出縁同士を結合する。立壁部28a,28bおよび頂壁部28cの断面は全て円弧であり、全体的に半円を描く。
【0056】
第3実施形態も、剛性確保部28が板状領域20の剛性を確保することから、フード102が開位置に起立しても、板状領域20が垂れ下がることがない。したがって
図2に示すようにフード102の開位置で、シール基部23が表側へ垂れ下がることがなく、シール基部23の前縁23aがフード前縁102dから離れて見栄えが悪くなることが防止される。また第3実施形態では複数の剛性確保部28が設けられ、これらの剛性確保部28は並列配置されることから、板状領域20の剛性が益々大きくなる。
【0057】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。例えば上述した1の実施形態から一部の構成を抜き出し、上述した他の実施形態から他の一部の構成を抜き出し、これら抜き出された構成を組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、エンジン自動車、電気自動車、およびハイブリッド車両において有利に利用される。また、図示は省略するが、自動車の車体後部に設けられるトランクルームを覆う開閉可能な蓋状のトランクリッドや、車体後部荷物置き場を覆う開閉可能な蓋状のバックドアに取付けられるシール部材等についても、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1~3 シール部材、 10 長手方向中央領域、
11 取付基部(帯厚方向一側部)、 12 接続部、
13 シール基部(帯幅方向他側部)、 20 板状領域、
21 取付基部(帯厚方向一側部)、 22 接続部(屈曲ライン)、
23 シール基部(帯幅方向他側部)、 25,27,28 剛性確保部、
25a,25b,27a,27b,28a,28b 立壁部、
25c,27c,28c 頂壁部、 100 車体、
101 ルーム(車体開口)、 101a 開口縁、
102 フード(車体フード)、 102b インナーパネル(フード下面)、
102d フード前縁、 104 フロントグリル、 106 ヘッドライト
M 溝部、 T 突条。