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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052019
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】位置調整治具及び位置調整ユニット
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
E02D27/00 B
E02D27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158451
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】島袋 孝博
(72)【発明者】
【氏名】田中 秋水
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA03
2D046AA14
(57)【要約】
【課題】シンプルな構成でありながら、柱(柱脚)の水平位置を好適に調整可能な位置調整治具を提供する。
【解決手段】位置調整治具1は、建物の基礎間の中間部又は出隅部に設置される柱脚において、柱の水平位置を調整するために用いられる。位置調整治具1は、水平方向において柱B2の下端部と、柱の下端部に対向する位置に設けられる基礎部分との間に介在するように取り付けられる。位置調整治具1は、基礎部分における柱B2側の側面に当接する当接部11と、当接部から柱の下端部に向かって突出し、当接部からの突出長さを変更可能な状態で設けられる位置調整部13とを備えている。位置調整治具1は、位置調整部13の突出長さを長くすることで、柱B2の下端部又は柱の下端部に固定される柱脚プレートB3を押圧し、柱の水平位置を調整する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎間の中間部又は出隅部に設置される柱脚において、柱の水平位置を調整するために用いられる位置調整治具であって、
前記位置調整治具は、水平方向において前記柱の下端部と、該柱の下端部に対向する位置に設けられる基礎部分との間に介在するように取り付けられ、
前記基礎部分における前記柱側の側面に当接する当接部と、
前記当接部から前記柱の下端部に向かって突出し、前記当接部からの突出長さを変更可能な状態で設けられる位置調整部と、を備え、
前記位置調整部の突出長さを長くすることで、前記柱の下端部又は前記柱の下端部に固定される柱脚プレートを押圧し、前記柱の水平位置を調整することを特徴とする位置調整治具。
【請求項2】
前記当接部の上方部分から前記基礎部分の上面に沿って延びており、前記基礎部分の上面に当接する第2当接部をさらに備え、
前記基礎部分に前記当接部及び前記第2当接部を当接させた状態で前記位置調整部の突出長さを長くすることで、前記柱の下端部又は前記柱脚プレートを押圧することを特徴とする請求項1に記載の位置調整治具。
【請求項3】
前記位置調整部は、
前記当接部から前記柱の下端部に向かって延びている延出部材と、
前記延出部材の内部に形成されたネジ穴に螺合され、前記ネジ穴に対する螺合位置を調整することで突出長さを変更するように構成される位置調整ボルトと、を備えていることを特徴とする請求項2に記載の位置調整治具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の位置調整治具と、
前記柱脚プレート及び前記柱脚プレートを基礎に連結させるアンカーボルトの間に介在するように取り付けられる第2位置調整治具と、を備えた位置調整ユニットであって、
前記第2位置調整治具は、
前記柱脚プレートよりも水平方向の外側に位置する本体部と、
前記本体部から前記アンカーボルトに向かって突出し、前記アンカーボルトを水平方向において挟持する挟持部と、
前記本体部から前記柱脚プレートの側面に向かって突出し、前記本体部からの突出長さを変更可能な状態で設けられる第2位置調整部と、を備え、
前記第2位置調整部の突出長さを長くすることで、前記柱脚プレートを押圧し、前記柱の水平位置を調整することを特徴とする位置調整ユニット。
【請求項5】
前記第2位置調整治具は、前記本体部から前記柱脚プレートに向かって突出し、前記柱脚プレートの外縁部を上下方向において間に差し入れる差し入れ部を備え、
前記第2位置調整部は、前記本体部に形成されたネジ穴に螺合され、前記ネジ穴に対する螺合位置を調整することで突出長さを変更可能とする第2位置調整ボルトであって、
前記第2位置調整治具は、前記挟持部に前記アンカーボルトを挟持させ、かつ、前記差し入れ部に前記柱脚プレートの外縁部を差し入れた状態で、前記第2位置調整ボルトの突出長さを長くすることで、前記柱脚プレートを押圧することを特徴とする請求項4に記載の位置調整ユニット。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の位置調整治具と、
前記柱脚プレート及び前記柱脚プレートを基礎に連結させる柱支持具の間に介在するように取り付けられる第3位置調整治具と、を備えた位置調整ユニットであって、
前記第3位置調整治具は、
前記柱脚プレートよりも水平方向の外側に位置する本体部と、
前記本体部から前記柱脚プレートよりも下方位置に入り込み、前記柱支持具に向かって突出し、前記柱支持具の縁部に掛け止めされる掛け止め部と、
前記本体部から前記柱脚プレートの側面に向かって突出し、前記本体部からの突出長さを変更可能な状態で設けられる第3位置調整部と、を備え、
前記第3位置調整部の突出長さを長くすることで、前記柱脚プレートを押圧し、前記柱の水平位置を調整することを特徴とする位置調整ユニット。
【請求項7】
前記本体部は、前記柱脚プレートの側面に沿って長尺な本体壁部であって、
前記第3位置調整部は、前記本体壁部に形成されたネジ穴に螺合され、前記ネジ穴に対する螺合位置を調整することで突出長さを変更可能とする第3位置調整ボルトであって、
前記第3位置調整ボルトは、前記本体壁部の長さ方向に間隔を空けて複数配置されていることを特徴とする請求項6に記載の位置調整ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置調整治具及び位置調整ユニットに係り、特に、建物の柱脚において、柱の水平位置を調整するために用いられる位置調整治具及び位置調整ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の上部構造物を支持する柱脚の種類として露出型の柱脚がある。
露出型の柱脚は、上部構造物を支持する柱と、柱の下端部に固定される柱脚プレートと、基礎(柱脚基礎)に一部埋設され、柱脚プレートに連結されるアンカーボルトと、から主に構成されている。
そうしたなかで、基礎に対する柱及び柱脚プレートの水平位置を調整するために用いられる位置調整治具が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1、2に記載の位置調整治具(位置調整装置)は、建物の柱脚において柱の水平位置を調整するために用いられ、柱(柱脚)と基礎の間に介在するように取り付けられている。
具体的には、位置調整治具は、柱の下端部を囲むように保持する柱保持部分と、基礎の上面に固定される基礎固定部分とを備えており、基礎固定部分に対して柱保持部分の位置を調整することで柱の下端部を側方から押圧し、柱の水平位置を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-160682号公報
【特許文献2】特開2006-299587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2のような位置調整治具(位置調整装置)では、柱の水平位置を調整するために比較的大型な構造となっていた。例えば、柱の水平位置を調整するために、柱の下端部を四方から囲むように保持する構造となっていた。
そのため、シンプルな構成でありながら、柱の下端部又は柱の下端部に固定される柱脚プレートを好適に押圧することで柱の水平位置を調整することが可能な位置調整治具が求められていた。
また、柱脚において柱の水平位置を好適に微調整することが可能な位置調整治具が求められていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シンプルな構成でありながら、柱(柱脚)の水平位置を好適に調整することが可能な位置調整治具及び位置調整ユニットを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、柱(柱脚)の水平位置を好適に微調整することが可能な位置調整治具及び位置調整ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の位置調整治具によれば、建物の基礎間の中間部又は出隅部に設置される柱脚において、柱の水平位置を調整するために用いられる位置調整治具であって、前記位置調整治具は、水平方向において前記柱の下端部と、該柱の下端部に対向する位置に設けられる基礎部分との間に介在するように取り付けられ、前記基礎部分における前記柱側の側面に当接する当接部と、前記当接部から前記柱の下端部に向かって突出し、前記当接部からの突出長さを変更可能な状態で設けられる位置調整部と、を備え、前記位置調整部の突出長さを長くすることで、前記柱の下端部又は前記柱の下端部に固定される柱脚プレートを押圧し、前記柱の水平位置を調整すること、により解決される。
上記構成により、シンプルな構成でありながら、柱の水平位置を好適に調整することが可能な位置調整治具を実現できる。
詳しく述べると、位置調整治具は、基礎部分における柱側の側面に当接する当接部と、当接部から柱の下端部に向かって突出し、当接部からの突出長さを変更可能な位置調整部とを備えている。そのため、水平方向において基礎部分から直接反力を受けながら、柱の下端部又は柱脚プレートを効率良く押圧することができ、柱の位置を調整できる。また、位置調整治具をシンプルな形状(コンパクトな形状)にすることができる。
また、位置調整治具を利用することで、基礎に対し柱を仮固定した後に、柱(柱脚プレート)を保持しながら、基礎に対する柱の水平位置を調整することができる。そして、柱を本固定することができる。
【0008】
このとき、前記当接部の上方部分から前記基礎部分の上面に沿って延びており、前記基礎部分の上面に当接する第2当接部をさらに備え、前記基礎部分に前記当接部及び前記第2当接部を当接させた状態で前記位置調整部の突出長さを長くすることで、前記柱の下端部又は前記柱脚プレートを押圧すると良い。
上記構成により、当接部及び第2当接部によって基礎部分から反力を受けることができ、柱の下端部又は柱脚プレートをより効率良く押圧できる。その結果、柱の水平位置を好適に調整することができる。
【0009】
このとき、前記位置調整部は、前記当接部から前記柱の下端部に向かって延びている延出部材と、前記延出部材の内部に形成されたネジ穴に螺合され、前記ネジ穴に対する螺合位置を調整することで突出長さを変更するように構成される位置調整ボルトと、を備えている。
上記構成により、シンプルな構成でありながら、柱の水平位置を好適に微調整することができる。
【0010】
また前記課題は、本発明の位置調整ユニットによれば、上記の位置調整治具と、前記柱脚プレート及び前記柱脚プレートを基礎に連結させるアンカーボルトの間に介在するように取り付けられる第2位置調整治具と、を備えた位置調整ユニットであって、前記第2位置調整治具は、前記柱脚プレートよりも水平方向の外側に位置する本体部と、前記本体部から前記アンカーボルトに向かって突出し、前記アンカーボルトを水平方向において挟持する挟持部と、前記本体部から前記柱脚プレートの側面に向かって突出し、前記本体部からの突出長さを変更可能な状態で設けられる第2位置調整部と、を備え、前記第2位置調整部の突出長さを長くすることで、前記柱脚プレートを押圧し、前記柱の水平位置を調整すること、によっても解決される。
上記構成により、位置調整治具によって基礎部分から反力を受けて柱脚プレートを押圧し、かつ、第2位置調整治具によってアンカーボルトから反力を受けて柱脚プレートを押圧することが可能な位置調整ユニットを実現できる。
【0011】
このとき、前記第2位置調整治具は、前記本体部から前記柱脚プレートに向かって突出し、前記柱脚プレートの外縁部を上下方向において間に差し入れる差し入れ部を備え、前記第2位置調整部は、前記本体部に形成されたネジ穴に螺合され、前記ネジ穴に対する螺合位置を調整することで突出長さを変更可能とする第2位置調整ボルトであって、前記第2位置調整治具は、前記挟持部に前記アンカーボルトを挟持させ、かつ、前記差し入れ部に前記柱脚プレートの外縁部を差し入れた状態で、前記第2位置調整ボルトの突出長さを長くすることで、前記柱脚プレートを押圧すると良い。
上記構成により、シンプルな構成でありながら、柱の水平位置を好適に微調整することができる。
【0012】
また前記課題は、本発明の位置調整ユニットによれば、上記の位置調整治具と、前記柱脚プレート及び前記柱脚プレートを基礎に連結させる柱支持具の間に介在するように取り付けられる第3位置調整治具と、を備えた位置調整ユニットであって、前記第3位置調整治具は、前記柱脚プレートよりも水平方向の外側に位置する本体部と、前記本体部から前記柱脚プレートよりも下方位置に入り込み、前記柱支持具に向かって突出し、前記柱支持具の縁部に掛け止めされる掛け止め部と、前記本体部から前記柱脚プレートの側面に向かって突出し、前記本体部からの突出長さを変更可能な状態で設けられる第3位置調整部と、を備え、前記第3位置調整部の突出長さを長くすることで、前記柱脚プレートを押圧し、前記柱の水平位置を調整すること、によっても解決される。
上記構成により、位置調整治具によって基礎部分から反力を受けて柱脚プレートを押圧し、かつ、第3位置調整治具によって柱支持具から反力を受けて柱脚プレートを押圧することが可能な位置調整ユニットを実現できる。
【0013】
このとき、前記本体部は、前記柱脚プレートの側面に沿って長尺な本体壁部であって、前記第3位置調整部は、前記本体壁部に形成されたネジ穴に螺合され、前記ネジ穴に対する螺合位置を調整することで突出長さを変更可能とする第3位置調整ボルトであって、前記第3位置調整ボルトは、前記本体壁部の長さ方向に間隔を空けて複数配置されていると良い。
上記構成により、シンプルな構成でありながら、柱の水平位置を好適に微調整することができる。
【0014】
本発明の位置調整治具及び位置調整ユニットによれば、シンプルな構成でありながら、柱(柱脚)の水平位置を好適に調整することが可能となる。
また、柱(柱脚)の水平位置を好適に微調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】建物の基礎間の出隅部に設置された柱脚の斜視図である。
図2図1の分解斜視図であって、基礎に柱支持具及びアンカーボルトが一部埋設された状態を示す図である。
図3図1の柱脚において位置調整ユニットを取り付けた状態を示す図である。
図4図1の柱脚において位置調整治具を取り付けた状態を示す図である。
図5】位置調整治具の斜視図である。
図6A図1の柱脚において第2位置調整治具を取り付けた状態を示す図である。
図6B図1の柱脚において第2位置調整治具を取り付けた状態を示す図である。
図7】第2位置調整治具の斜視図である。
図8図1の柱脚において第3位置調整治具を取り付けた状態を示す図である。
図9】第3位置調整治具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について図1図9を参照して説明する。
本実施形態は、建物の基礎間の中間部(出隅部)に設置される柱脚において、柱の水平位置を調整するために用いられる位置調整治具であって、基礎部分における柱側の側面に当接する当接部と、当接部から柱の下端部に向かって突出し、当接部からの突出長さを変更可能な状態で設けられる位置調整部とを備えており、位置調整部の突出長さを長くすることで、柱の下端部(柱脚プレート)を押圧し、柱の水平位置を調整することを主な特徴とする「位置調整治具」に関するものである。また、位置調整治具を備えた「位置調整ユニット」に関するものである。
まずは、柱の柱脚について説明し、その後に位置調整治具(位置調整ユニット)について説明することとする。
【0017】
<柱脚>
柱脚B1は、図1図2に示すように、露出型の柱脚であって、建物Bにおいて鉄筋コンクリート製の基礎F(柱脚基礎F1)の上面に設置されるものである。
詳しく述べると、柱脚B1は、布基礎F2間の出隅部において柱脚基礎F1の上面に設置されている。柱脚基礎F1は、布基礎F2よりも幅広となるように形成され、かつ、高さ方向において布基礎F2よりも低く形成されている。
なお、柱脚B1は、布基礎F2間の中間部に設置されるものであっても良い。
【0018】
柱脚B1は、建物Bの上部構造物を支持する鋼製の柱B2と、柱B2の下端部に固定される柱脚プレートB3と、基礎F(柱脚基礎F1)にそれぞれ一部埋設され、柱脚プレートB3に連結される複数のアンカーボルトB4及び柱支持具B5と、から主に構成されている。
【0019】
柱B2は、横断面矩形状に形成されており、建物Bの上部構造物を支持する不図示の鉄骨柱に連結されている。柱B2は、柱脚基礎F1の上面に柱脚プレートB3、アンカーボルトB4及び柱支持具B5を介して組み付けられている。
柱脚プレートB3は、矩形状の板部材からなり、柱脚プレートB3の中央部には、柱B2が貫通して固定されている。柱脚プレートB3の上面の四隅には、組み付け穴B3aが形成されており、組み付け穴B3aにアンカーボルトB4が貫通して取り付けられている。
なお、柱脚プレートB3の上面において四隅の間の所定位置には、不図示のグラウト材を注入するための注入穴と、グラウト材を注入する際に通気するための通気穴とが形成されている。
【0020】
アンカーボルトB4は、柱脚基礎F1に埋設され、柱脚基礎F1の上面から一部突出するように配置されている。アンカーボルトB4の突出部を柱脚プレートB3に貫通させた状態で締結ナットB6を締めることで、基礎Fに対し柱脚プレートB3が組み付けられる。
柱支持具B5は、シア金物とも称され、柱B2の芯位置となる中央部分に配置され、複数のアンカーボルトB4によって囲まれている。柱支持具B5は、アンカーボルトB4と同様に、柱脚基礎F1の上面から一部突出するように埋設されている。
柱支持具B5は、柱脚プレートB3の底面の中央部分に設けられた組み付け枠B3bに組み付けられる。
つまりは、柱脚基礎F1に一部埋設されたアンカーボルトB4及び柱支持具B5によって基礎Fに対し柱脚プレートB3が組み付けられる。
【0021】
上記構成において、基礎Fに対し柱脚プレートB3の水平位置が僅かにずれてしまうことがある。具体的には、基礎Fに固定されたアンカーボルトB4及び柱支持具B5と、柱B2の下端部に固定された柱脚プレートB3(組み付け穴B3a、組み付け枠B3b)とを組み付けているところ、組み付け誤差(クリアランス)によって柱脚プレートB3の水平位置が僅かにずれることがある。
そこで、本実施形態では、基礎Fに対し柱B2を仮固定した後に(締結ナットB6によって仮締結した後に)、位置調整ユニット1を利用して基礎Fに対する柱脚プレートB3の水平位置を微調整することで、柱B2の正確な位置決めを行い、位置決めされた状態の柱B2を本固定することができる。
【0022】
<位置調整ユニット>
位置調整ユニット1は、図3に示すように、水平方向において基礎F側から反力を受けて柱脚B1の柱脚プレートB3を押圧することで、柱B2の水平位置を調整するものである。
位置調整ユニット1は、位置調整治具10と、第2位置調整治具20と、第3位置調整治具30と、を備えている。
【0023】
位置調整治具10は、水平方向において柱B2の下端部(柱脚プレートB3)と、柱脚プレートB3に対向する位置に設けられる基礎部分(布基礎F2)との間に介在するように取り付けられる。位置調整治具10は、布基礎F2から反力を受けて柱脚プレートB3を押圧し、柱脚プレートB3の水平位置を固定し、またその水平位置を微調整する。
第2位置調整治具20は、アンカーボルトB4及び柱脚プレートB3の間に介在するように取り付けられる。第2位置調整治具20は、アンカーボルトB4から反力を受けて柱脚プレートB3を押圧し、柱脚プレートB3の水平位置を固定し、またその水平位置を微調整する。
第3位置調整治具30は、柱支持具B5及び柱脚プレートB3の間に介在するように取り付けられる。第3位置調整治具30は、柱支持具B5から反力を受けて柱脚プレートB3を押圧し、柱脚プレートB3の水平位置を固定し、またその水平位置を微調整する。
【0024】
本実施形態では、位置調整ユニット1が、4つの位置調整治具10と、1つの第2位置調整治具20と、1つの第3位置調整治具30と、から構成されているが、特に限定されるものではない。
例えば、位置調整ユニット1が、3つの位置調整治具10、20、30のうち、位置調整治具10のみを備えていても良い。あるいは、位置調整治具10及び第2位置調整治具20のみを備えていても良いし、位置調整治具10及び第3位置調整治具30のみを備えていても良い。あるいは、第2位置調整治具20及び第3位置調整治具30のみを備えていても良い。
また例えば、位置調整ユニット1が、複数の位置調整治具10と、複数の第2位置調整治具20と、を備えていても良い。あるいは、1つの位置調整治具10と、1つの第2位置調整治具20と、複数の第3位置調整治具30とを備えていても良い。
つまりは、基礎F間に設置される柱脚B1の設置箇所や、柱脚プレートB3の初期位置等に応じて適宜変更することができる。
【0025】
位置調整治具10は、図4図5に示すように、布基礎F2における柱B2側の側面に当接する当接壁部11と、当接壁部11の上端部から布基礎F2の上面に沿って延びており、布基礎F2の上面に当接する第2当接壁部12と、当接壁部11から柱脚プレートB3に向かって突出し、当接壁部11からの突出長さを変更可能な状態で設けられる位置調整部13と、を備えている。
【0026】
当接壁部11は、上下方向に長尺に延びており、布基礎F2の側面に沿って配置される。また、当接壁部11は、柱脚プレートB3の側面に対向する位置に配置される。
第2当接壁部12は、当接壁部11とは直交するように延びており、布基礎F2によって下方から支持されている。
【0027】
位置調整部13は、当接壁部11の下端部から柱脚プレートB3に向かって延びている延出部材13aと、延出部材13aの延出端部の内部に形成されたネジ穴13bに螺合され、柱脚プレートB3に向かって突出する位置調整ボルト13cと、を有している。
延出部材13aは、例えばネジ穴13bを有する高ナットであって、当接壁部11の下端部に溶接され、当接壁部11とは直交するように延びている。
位置調整ボルト13cは、延出部材13aに取り付けられ、ネジ穴13bに対する螺合位置を調整することで突出長さを変更するように構成されている。
【0028】
上記構成において、位置調整治具10は、布基礎F2に当接壁部11及び第2当接壁部12を当接させた状態で位置調整部13の突出長さを長くすることで、柱脚プレートB3を押圧することができる。
そうすることで、位置調整治具10は、水平方向において布基礎F2から直接反力を受けて柱脚プレートB3を効率良く押圧し、柱脚プレートB3の水平位置を固定し、またその水平位置を微調整することができる。
【0029】
第2位置調整治具20は、図6A図7に示すように、柱脚プレートB3よりも水平方向の外側に位置する本体壁部21と、本体壁部21の側面にそれぞれ設けられ、本体壁部21とは直交方向に延びている底壁部22、中間壁部23、上壁部24と、中間壁部23及び上壁部24を連結する連結壁部25、第2連結壁部25aと、を備えている。
連結壁部25は、中間壁部23及び上壁部24それぞれの延出端部を連結している。第2連結壁部25aは、中間壁部23及び上壁部24それぞれの延出方向の中間部を連結している。
なお、本体壁部21、中間壁部23、上壁部24及び第2連結壁部25aによって閉断面構造が形成されている。そのため、第2位置調整治具の剛性が高くなっている。
【0030】
また、第2位置調整治具20は、アンカーボルトB4を挟持するボルト挟持部26と、柱脚プレートB3の外縁部を上下方向において間に差し入れるプレート差し入れ部27と、締結ナットB6を水平方向において間に差し込むナット差し込み部28と、本体壁部21から柱脚プレートB3の側面に向かって突出し、本体壁部31からの突出長さを変更可能な状態で設けられる第2位置調整ボルト29と、をさらに備えている。
【0031】
ボルト挟持部26は、底壁部22の延出端部に設けられ、当該延出端部の外縁を一部切り欠くことで形成されている。
ボルト挟持部26は、アンカーボルトB4を間に挟むように取り付けられ、水平方向においてアンカーボルトB4を挟持する。
【0032】
プレート差し入れ部27は、本体壁部21、底壁部22及び中間壁部23によって形成され、これら壁部21~23によって囲まれた内部空間を有する。当該内部空間には、柱脚プレートB3の外縁部(角部)が収められる。
つまりは、プレート差し入れ部27は、柱脚プレートB3の外縁部(角部)を上下方向において間に差し入れ可能とし、柱脚プレートB3の外縁部を上下方向及び水平方向から保持することができる。
【0033】
ナット差し込み部28は、上壁部24の延出端部に設けられ、当該延出端部の外縁を一部切り欠くことで形成されている。
ナット差し込み部28は、締結ナットB6を間に挟むように設けられ、水平方向においてアンカーボルトB4を囲むように配置されている。
ナット差し込み部28の縁部と、締結ナットB6との間には所定の隙間(クリアランス)が形成されている。そのため、ナット差し込み部28の縁部と干渉することなく、締結ナットB6を回転させることができる。
【0034】
第2位置調整ボルト29は、本体壁部21に形成されたネジ穴21aに螺合され、ネジ穴21aに対する螺合位置を調整することで突出長さを変更するように構成されている。
【0035】
上記構成において、第2位置調整治具20は、ボルト挟持部26にアンカーボルトB4を挟持させ、かつ、プレート差し入れ部27に柱脚プレートB3の外縁部を差し入れた状態で、第2位置調整ボルト29の突出長さを長くすることで、柱脚プレートB3を押圧することができる。
そうすることで、第2位置調整治具20は、アンカーボルトB4から反力を受けて柱脚プレートB3を押圧し、柱脚プレートB3の水平位置を固定し、またその水平位置を微調整できる。
【0036】
また上記構成において、図6Aに示すように、ボルト挟持部26による挟持方向と、プレート差し入れ部27による柱脚プレートB3の差し入れ方向と、第2位置調整ボルト29による突出方向とが、水平方向において同じ向きに揃っている。
そうすることで、柱脚プレートB3及びアンカーボルトB4に対して第2位置調整治具20を強固に組み付けることができる。その結果、第2位置調整治具20が、柱脚プレートの水平位置を好適に固定し、またその水平位置を好適に微調整できる。
【0037】
第3位置調整治具30は、図8図9に示すように、柱脚プレートB3よりも水平方向の外側に位置する本体壁部31と、本体壁部31の下端部から柱支持具B5に向かって延びている延出壁部32と、延出壁部32の延出端部に設けられ、柱支持具B5の縁部に掛け止めされる掛け止め部33と、本体壁部31から柱脚プレートB3の側面に向かって突出し、本体壁部31からの突出長さを変更可能な状態で設けられる第3位置調整ボルト34と、を備えている。
【0038】
本体壁部31は、柱脚プレートB3の側面に沿って長尺に延びており、柱脚プレートB3の側面に対向する位置に配置される。
延出壁部32は、本体壁部31の下端部に設けられ、本体壁部31とは直交するように延びている。延出壁部32は、柱脚プレートB3よりも下方位置に入り込み、柱支持具B5に向かって突出している。
掛け止め部33は、鍵状(フック状)に形成されており、柱支持具B5の縁部に掛け止めされている。具体的には、掛け止め部33は、柱支持具B5の一角部を囲むように掛け止めされている。
【0039】
第3位置調整ボルト34は、本体壁部31に形成されたネジ穴31aに螺合され、ネジ穴31aに対する螺合位置を調整することで突出長さを変更するように構成されている。
本体壁部31には、本体壁部31の長さ方向に間隔を空けて複数のネジ穴31aが形成されている。つまりは、第3位置調整ボルト34は、本体壁部31の長さ方向に間隔を空けて複数配置されている。
【0040】
上記構成において、第3位置調整治具30は、掛け止め部33に柱支持具B5を掛け止めた状態で第3位置調整ボルト34の突出長さを長くすることで、柱脚プレートB3を側方から押圧することができる。
そうすることで、第3位置調整治具30は、柱支持具B5から反力を受けて柱脚プレートB3を押圧し、柱脚プレートB3の水平位置を固定し、またその水平位置を微調整できる。
【0041】
<柱の位置調整方法>
以上の構成において、基礎Fに対する柱B2の水平位置を調整するためには、以下のように位置調整ユニット1を用いると良い。
【0042】
まず、図1図2に示すように、基礎Fに対し柱B2及び柱脚プレートB3を仮固定する。具体的には、基礎Fに埋設されたアンカーボルトB4及び柱支持具B5に対し柱脚プレートB3を仮固定する。より具体的には、アンカーボルトB4に柱脚プレートB3(組み付け穴B3a)を貫通させた状態で締結ナットB6によって仮締結する。また、柱支持具B5に対し柱脚プレートB3(組み付け枠B3b)を組み付ける。
【0043】
そして、図3図4に示すように、複数の位置調整治具10を組み付けて、基礎F(布基礎F2)から反力を受けて柱脚プレートB3を側方から押圧し、柱脚プレートB3の水平位置を固定する。
図3図6A図6Bに示すように、第2位置調整治具20をさらに組み付けて、アンカーボルトB4から反力を受けて柱脚プレートB3を側方から押圧し、柱脚プレートB3の水平位置を固定する。
また、図3図8に示すように、第3位置調整治具30をさらに組み付けて、柱支持具B5から反力を受けて柱脚プレートB3を側方から押圧し、柱脚プレートB3の水平位置を固定する。
【0044】
そして、所定の位置調整治具10の位置調整ボルト13cの突出長さをより長くし、柱脚プレートB3をより押圧し、柱脚プレートB3の水平位置を微調整する。
具体的には、作業者がスパナ等の工具を用いて位置調整ボルト13cを回転させ、位置調整ボルト13cの突出長さをより長くすることで、柱脚プレートB3を押し出す。
【0045】
そして、柱B2及び柱脚プレートB3の水平位置の微調整を終えた後、柱B2及び柱脚プレートB3を本固定する。具体的には、締結ナットB6によって本締結する。
【0046】
なお、柱B2の水平位置を調整する方法については、上記方法に限定されるものでない。
各位置調整治具10、20、30の組み付け順を適宜変更しても良い。あるいは、第2位置調整治具20又は第3位置調整治具30によって柱脚プレートB3の水平位置を微調整しても良い。
なお、位置調整治具10を利用することで、水平方向において基礎F(布基礎F2)から直接反力を受けながら、柱脚プレートB3を効率良く押圧することができる。そのため、好ましくは位置調整治具10によって柱脚プレートB3の水平位置を微調整すると良い。
【0047】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、図3に示すように、位置調整治具10、20、30が柱脚プレートB3を押圧するように構成されているが、特に限定されず、柱B2(柱B2の下端部)を押圧するように構成されても良い。
なお、柱B2ではなく柱脚プレートB3を押圧することで、位置調整治具10、20、30をシンプルな形状(コンパクトな形状)にすることができる。
【0048】
上記実施形態では、図3図4に示すように、位置調整治具10は、主として布基礎F2の側面(柱B2側の側面)から反力を受けているが、特に限定されるものではない。
位置調整治具10は、布基礎F2の上面から反力を受けても良いし、布基礎F2の幅方向の外側面から反力を受けても良い。あるいは、柱脚基礎F1の上面又は外側面から反力を受けても良い。
なお、好ましくは、位置調整治具10は、主として布基礎F2の側面(柱B2側の側面)から反力を受けることで、柱脚プレートB3を効率良く押圧することができる。また、位置調整治具10をコンパクトな大きさにすることができる。
【0049】
上記実施形態では、図3図4に示すように、位置調整治具10が、ボルトナット機構からなる位置調整部13を備えているが、特に限定されることなく、その他の公知な機構からなる位置調整部13を備えていても良い。
例えば、位置調整部13が、スライド機構を有し、所定位置でロックすることが可能な位置調整部材であっても良い。
なお、第2位置調整治具20、第3位置調整治具30の位置調整手段についても同様に、ボルトナット機構に限定されなくて良い。
【0050】
上記実施形態では、図3に示すように、位置調整治具10、20、30を組み付けることで、柱B2及び柱脚プレートB3の水平位置を固定し、またそれらの水平位置を微調整している。一方で、柱B2及び柱脚プレートB3の固定手段については別の方法を用いても良い。
例えば、アンカーボルトB4と柱脚プレートB3の組み付け穴B3aとの隙間(クリアランス)に棒状部材(鋼棒)を差し込むことで、柱B2及び柱脚プレートB3の水平位置を位置決めしても良い。そうすれば、柱脚プレートB3の水平位置を簡易的に固定できる。そして、位置調整治具10を利用して柱脚プレートB3の水平位置を微調整できる。
【0051】
上記実施形態では、基礎Fに対する柱B2の水平位置を調整する用途で位置調整治具10、20、30が用いられているが、当該用途に限定されなくても良い。
例えば、建物の施工作業において柱及び梁(大梁)を接合するときに、柱に対し梁を立て込む必要があって梁の水平位置を調整する必要がある。そのような場合に、位置調整治具10、20、30を利用しても良い。
当該位置調整治具を利用することで、柱に対し梁が開いた状態のときに梁を好適に引き寄せることができ、梁の水平位置を微調整できる。
なお、その場合には、位置調整治具10又は第2位置調整治具20が梁の上面に当接する当接部を有しており、かつ、当該当接部と、梁の上面とを組み付けるための組み付け部(組み付けボルト)を有していると良い。また、位置調整治具10、20が、柱の縁部に掛け止めされる掛け止め部をさらに有していると良い。
【0052】
上記実施形態では、主として本発明に係る位置調整治具及び位置調整ユニットに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
F 基礎
F1 柱脚基礎
F2 布基礎
B 建物
B1 柱脚
B2 柱
B3 柱脚プレート
B3a 組み付け穴
B3b 組み付け枠
B4 アンカーボルト
B5 柱支持具(シア金物)
B6 締結ナット(締結部材)
1 位置調整ユニット
10 位置調整治具
11 当接壁部(当接部)
12 第2当接壁部(第2当接部)
13 位置調整部
13a 延出部材
13b ネジ穴
13c 位置調整ボルト
20 第2位置調整治具
21 本体壁部(本体部)
21a ネジ穴
22 底壁部
23 中間壁部
24 上壁部
25 連結壁部
25a 第2連結壁部
26 ボルト挟持部(挟持部)
27 プレート差し入れ部(差し入れ部)
28 ナット差し込み部
29 第2位置調整ボルト(第2位置調整部)
30 第3位置調整治具
31 本体壁部(本体部)
31a ネジ穴
32 延出壁部(延出部)
33 掛け止め部
34 第3位置調整ボルト(第3位置調整部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9