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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052025
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】OCT装置およびOCT撮影制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A61B3/10 100
A61B3/10 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158458
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100184550
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 珠美
(72)【発明者】
【氏名】大谷 尚平
(72)【発明者】
【氏名】玉耒 純二
(72)【発明者】
【氏名】村上 誠介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏明
(72)【発明者】
【氏名】藤生 賢士朗
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA10
4C316AB03
4C316AB04
4C316AB11
4C316AB12
4C316AB16
4C316FA18
4C316FB06
4C316FB22
4C316FB23
4C316FB29
4C316FZ01
4C316FZ03
(57)【要約】
【課題】信号取得状態の安定度が低下した際の影響を、より適切に抑制することが可能なOCT装置およびOCT撮影制御方法を提供する。
【解決手段】信号セット取得ステップでは、制御部は、組織上の同一の走査ラインに測定光を複数回走査させる処理を行うことで、複数のOCT信号を含む信号セットを取得する。制御部は、信号セットの取得状態の良否判定を行う良否判定ステップとして、信号セット取得ステップにおいて取得された信号セットに含まれる少なくとも2つのOCT信号の比較結果に基づいて、信号セットの取得状態の良否判定を行うOCT判定ステップを実行する。制御部は、OCT判定ステップにおいて信号セットの取得状態が良好でないと判定された場合に、良好でないと判定された信号セットの取得時の走査ラインと同一の組織上の位置に、次回の走査ラインの位置を再設定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
OCT光源と、
前記OCT光源から出射された光を測定光と参照光に分岐する分岐光学素子と、
前記分岐光学素子によって分岐された前記測定光を被検体の組織上で走査する光走査部と、
前記組織によって反射された前記測定光と、前記分岐光学素子によって分岐された前記参照光の合成光を受光することで、OCT信号を取得するための干渉信号を検出する受光素子と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記組織上の同一の走査ラインに前記測定光を複数回走査させる処理、または、隣接する複数の走査ラインの各々に前記測定光を走査させる処理を行うことで、複数のOCT信号を含む信号セットを取得する信号セット取得ステップと、
前記信号セットの取得状態の良否判定を行う良否判定ステップと、
次回の前記信号セット取得ステップにおいて前記測定光を走査させる走査ラインの前記組織上の位置を設定する次回走査位置設定ステップと、
を繰り返し実行し、
前記良否判定ステップとして、前記信号セット取得ステップにおいて取得された前記信号セットに含まれる少なくとも2つのOCT信号の比較結果に基づいて、前記信号セットの取得状態の良否判定を行うOCT判定ステップを実行し、
前記次回走査位置設定ステップでは、前記OCT判定ステップにおいて前記信号セットの取得状態が良好でないと判定された場合に、良好でないと判定された前記信号セットの取得時の前記走査ラインと同一の前記組織上の位置に、次回の走査ラインの位置を再設定することを特徴とするOCT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のOCT装置であって、
前記制御部は、
前記次回走査位置設定ステップでは、
前回の前記信号セット取得ステップにおける前記信号セットの取得が完了すると、前記OCT判定ステップにおける前記良否判定が完了するか否かに関わらず、次回の走査ラインの位置を仮設定し、
前記信号取得ステップでは、
前記OCT判定ステップにおける前記良否判定が完了するか否かに関わらず、仮設定された前記走査ラインへの前記測定光の走査を開始すると共に
走査ラインの位置が、仮設定された位置とは異なる位置に再設定された場合に、前記測定光を走査させる走査ラインを、再設定された前記走査ラインに変更することを特徴とするOCT装置。
【請求項3】
請求項1に記載のOCT装置であって、
前記制御部は、
前記OCT判定ステップにおいて、前記信号セットが取得された際の、単位時間当たりのOCT信号の取得回数に応じて、前記信号セットに含まれる複数のOCT信号のうち、前記良否判定を行うために比較する一対のOCT信号のペアの数を変更することを特徴とするOCT装置。
【請求項4】
請求項1に記載のOCT装置であって、
単位時間当たりのOCT信号の取得回数よりも低い撮影レートで、被検体の組織の正面画像を撮影する正面観察光学系をさらに備え、
前記制御部は、
前記信号セット取得ステップにおいて、前記正面観察光学系によって撮影された最新の正面画像に基づいて前記測定光の走査位置を調整することで、前記組織上に設定されている走査ラインに前記測定光を走査させることを特徴とするOCT装置。
【請求項5】
請求項4に記載のOCT装置であって、
前記制御部は、
前記良否判定ステップとして、前記正面観察光学系によって撮影された最新の正面画像と、前記最新の正面画像よりも前に撮影された正面画像の比較結果に基づいて、前記信号セットの取得状態の良否判定を行う正面画像判定ステップをさらに実行し、
前記次回走査位置設定ステップでは、
前記正面画像判定ステップおよび前記OCT判定ステップの少なくとも一方において、前記信号セットの取得状態が良好でないと判定されている間、取得状態が良好でないと判定されたいずれかの前記信号セットの取得時の前記走査ラインと同一の前記組織上の位置に、次回の走査ラインの位置を再設定することを特徴とするOCT装置。
【請求項6】
請求項5に記載のOCT装置であって、
前記制御部は、正面画像判定ステップにおいて、
最新の正面画像と、前記最新の正面画像の直前に撮影された直前正面画像の位置ずれ量である第1位置ずれ量に加えて、
前記最新の正面画像と、前記直前正面画像よりも前に撮影された基準正面画像の位置ずれ量である第2位置ずれ量を取得可能であり、
前記第1位置ずれ量と前記第2位置ずれ量が共に取得された場合には、前記第1位置ずれ量および前記第2位置ずれ量の少なくとも一方が閾値を超えている場合に、取得状態が良好でないと判定し、
取得状態が良好でないと一旦判定した場合には、前記基準正面画像を新たに撮影された正面画像に差し替えることを特徴とするOCT装置。
【請求項7】
請求項4に記載のOCT装置であって、
前記制御部は、
前記良否判定ステップにおいて、前記信号セットの取得状態が良好でないと一旦判定すると、少なくとも次回の前記正面観察光学系による正面画像の撮影が完了するまで、取得状態が良好でない旨の判定結果を継続し、
前記信号セットの取得状態が良好でないと判定されている間、前記信号セット取得ステップにおける前記信号セットの取得を繰り返すと共に、取得される前記信号セットを、記憶装置に記憶させる対象から除外することを特徴とするOCT装置。
【請求項8】
請求項7に記載のOCT装置であって、
前記制御部は、
取得される前記信号セットを、記憶装置に記憶させる対象から除外する間も、前記OCT判定ステップにおける前記信号セットの取得状態の良否判定を繰り返すことを特徴とするOCT装置。
【請求項9】
請求項7に記載のOCT装置であって、
前記制御部は、
前記信号セットの取得状態が良好でないと判定されている間、前記信号セット取得ステップにおいて前記信号セットとして取得するOCT信号の数を、取得状態が良好と判定されている場合に比べて減少させることを特徴とするOCT装置。
【請求項10】
OCT装置において実行されるOCT撮影制御方法であって、
前記OCT装置は、
OCT光源と、
前記OCT光源から出射された光を測定光と参照光に分岐する分岐光学素子と、
前記分岐光学素子によって分岐された前記測定光を被検体の組織上で走査する光走査部と、
前記組織によって反射された前記測定光と、前記分岐光学素子によって分岐された前記参照光の合成光を受光することで、OCT信号を取得するための干渉信号を検出する受光素子と、
を備え、
前記組織上の同一の走査ラインに前記測定光を複数回走査させる処理、または、隣接する複数の走査ラインの各々に前記測定光を走査させる処理を行うことで、複数のOCT信号を含む信号セットを取得する信号セット取得ステップと、
前記信号セットの取得状態の良否判定を行う良否判定ステップと、
次回の前記信号セット取得ステップにおいて前記測定光を走査させる走査ラインの前記組織上の位置を設定する次回走査位置設定ステップと、
を繰り返し実行し、
前記良否判定ステップとして、前記信号セット取得ステップにおいて取得された前記信号セットに含まれる少なくとも2つのOCT信号の比較結果に基づいて、前記信号セットの取得状態の良否判定を行うOCT判定ステップを実行し、
前記次回走査位置設定ステップでは、前記OCT判定ステップにおいて前記信号セットの取得状態が良好でないと判定された場合に、良好でないと判定された前記信号セットの取得時の前記走査ラインと同一の前記組織上の位置に、次回の走査ラインの位置を再設定することを特徴とするOCT撮影制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検体の組織上で測定光を走査させることで、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)の原理に基づいて組織の画像を撮影するOCT装置、およびOCT撮影制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
OCT装置は、OCT光から分割された測定光を被検体(例えば被検眼)の組織に導く一方で、参照光を参照光学系に導き、組織で反射した測定光と参照光との合成により得られる干渉信号に基づいて、組織の画像(例えば断層画像等)を撮影することが可能である。OCT装置は、例えば、眼球または皮膚等の生体組織の画像を得る場合等に利用できる。
【0003】
OCT装置による撮影中に、OCT信号の取得状態の安定度が低下する事象(例えば、撮影中の組織の動き等)が生じると、適切な画像が得られない場合がある。従って、信号取得状態の安定度が低下した際の影響を抑制するための技術も提案されている。例えば、特許文献1に記載のOCT装置は、正面観察光学系によって取得された被検体の複数の正面画像の位置ずれを検出する。正面画像の位置ずれの検出結果に基づいて、同一の走査領域について取得された複数のOCT信号の良否が判定される。複数のOCT信号が良好でないと判定されると、同一の走査領域において複数のOCT信号が再取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6544071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術によると、複数の正面画像の位置ずれに基づいて、OCT信号の取得状態の安定度が検出される。しかし、近年では、OCT信号の取得レート(つまり、走査ラインに測定光を1回走査させる毎に取得されるOCT信号の、単位時間当たりの取得回数)を、従来よりも高くすることが可能となった。1枚の正面画像が撮影される間にOCT信号が取得される回数が増大した結果、OCT信号の取得状態の安定度を、正面画像に基づいて良好に検出することが困難となっている。従って、信号取得状態の安定度が低下した際の影響を、より適切に抑制できる技術が望まれる。
【0006】
本開示の典型的な目的は、信号取得状態の安定度が低下した際の影響を、より適切に抑制することが可能なOCT装置およびOCT撮影制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における典型的な実施形態が提供するOCT装置は、OCT光源と、前記OCT光源から出射された光を測定光と参照光に分岐する分岐光学素子と、前記分岐光学素子によって分岐された前記測定光を被検体の組織上で走査する光走査部と、前記組織によって反射された前記測定光と、前記分岐光学素子によって分岐された前記参照光の合成光を受光することで、OCT信号を取得するための干渉信号を検出する受光素子と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記組織上の同一の走査ラインに前記測定光を複数回走査させる処理、または、隣接する複数の走査ラインの各々に前記測定光を走査させる処理を行うことで、複数のOCT信号を含む信号セットを取得する信号セット取得ステップと、前記信号セットの取得状態の良否判定を行う良否判定ステップと、次回の前記信号セット取得ステップにおいて前記測定光を走査させる走査ラインの前記組織上の位置を設定する次回走査位置設定ステップと、を繰り返し実行し、前記良否判定ステップとして、前記信号セット取得ステップにおいて取得された前記信号セットに含まれる少なくとも2つのOCT信号の比較結果に基づいて、前記信号セットの取得状態の良否判定を行うOCT判定ステップを実行し、前記次回走査位置設定ステップでは、前記OCT判定ステップにおいて前記信号セットの取得状態が良好でないと判定された場合に、良好でないと判定された前記信号セットの取得時の前記走査ラインと同一の前記組織上の位置に、次回の走査ラインの位置を再設定する。
【0008】
本開示における典型的な実施形態が提供するOCT撮影制御方法は、OCT装置において実行されるOCT撮影制御方法であって、前記OCT装置は、OCT光源と、前記OCT光源から出射された光を測定光と参照光に分岐する分岐光学素子と、前記分岐光学素子によって分岐された前記測定光を被検体の組織上で走査する光走査部と、前記組織によって反射された前記測定光と、前記分岐光学素子によって分岐された前記参照光の合成光を受光することで、OCT信号を取得するための干渉信号を検出する受光素子と、を備え、前記組織上の同一の走査ラインに前記測定光を複数回走査させる処理、または、隣接する複数の走査ラインの各々に前記測定光を走査させる処理を行うことで、複数のOCT信号を含む信号セットを取得する信号セット取得ステップと、前記信号セットの取得状態の良否判定を行う良否判定ステップと、次回の前記信号セット取得ステップにおいて前記測定光を走査させる走査ラインの前記組織上の位置を設定する次回走査位置設定ステップと、を繰り返し実行し、前記良否判定ステップとして、前記信号セット取得ステップにおいて取得された前記信号セットに含まれる少なくとも2つのOCT信号の比較結果に基づいて、前記信号セットの取得状態の良否判定を行うOCT判定ステップを実行し、前記次回走査位置設定ステップでは、前記OCT判定ステップにおいて前記信号セットの取得状態が良好でないと判定された場合に、良好でないと判定された前記信号セットの取得時の前記走査ラインと同一の前記組織上の位置に、次回の走査ラインの位置を再設定する。
【0009】
本開示に係るOCT装置およびOCT撮影制御方法によると、信号取得状態の安定度が低下した際の影響が、より適切に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】OCT装置1の概略構成を示すブロック図である。
図2】正面観察光学系23によって撮影された正面画像40に写る被検眼Eの眼底組織上に、複数の走査ライン58が設定された状態の一例を示す図である。
図3】各々のOCT信号を処理することで取得される二次元断層画像41の一例を示す図である。
図4】本実施形態のOCT装置1が実行する各種処理の流れの一例を示すタイミングチャートである。
図5】OCT装置1が実行するOCT撮影処理のフローチャートである。
図6】OCT撮影処理中に実行される正面画像判定処理のフローチャートである。
図7】正面画像判定処理の処理内容を説明するための説明図である。
図8】OCT信号の取得レートに応じたOCT信号判定処理の方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<概要>
本開示で例示するOCT装置は、OCT光源、分岐光学素子、照射光学系、受光素子、および制御部を備える。OCT光源はOCT光を出射する。分岐光学素子は、OCT光源から出射された光を測定光と参照光に分岐する。受光素子は、組織によって反射された測定光と、分岐光学素子によって分岐された参照光の合成光を受光することで、OCT信号を取得するための干渉信号を検出する。制御部は、OCT装置の制御を司る。制御部は、信号セット取得ステップ、良否判定ステップ、および次回走査位置設定ステップを繰り返し実行する。信号セット取得ステップでは、制御部は、組織上の同一の走査ラインに測定光を複数回走査させる処理、または、隣接する複数の走査ラインの各々に測定光を走査させる処理を行うことで、複数のOCT信号を含む信号セットを取得する。良否判定ステップでは、制御部は、信号セットの取得状態の良否判定を行う。次回走査位置設定ステップでは、制御部は、次回の信号セット取得ステップにおいて測定光を走査させる走査ラインの組織上の位置を設定する。制御部は、良否判定ステップとして、信号セット取得ステップにおいて取得された信号セットに含まれる少なくとも2つのOCT信号の比較結果に基づいて、信号セットの取得状態の良否判定を行うOCT判定ステップを実行する。制御部は、次回走査位置設定ステップでは、OCT判定ステップにおいて信号セットの取得状態が良好でないと判定された場合に、良好でないと判定された信号セットの取得時の走査ラインと同一の組織上の位置に、次回の走査ラインの位置を再設定する。
【0012】
組織上の同一の走査ラインに測定光を複数回走査させて、複数のOCT信号の信号セットを取得する間に、信号取得状態の安定度を阻害する事象(例えば、組織の動き等)が生じていなければ、取得された信号セットに含まれる複数のOCT信号の間の相関は高くなる。一方で、信号セットを取得する間に信号取得状態の安定度が低下していると、信号セットに含まれる複数のOCT信号の間の相関は低くなる。隣接する(つまり、近接した)複数の走査ラインの各々に測定光を走査させて信号セットを取得する場合も同様である。従って、取得された信号セットに含まれる複数のOCT信号を比較することで、信号セットが取得された際の信号取得状態の良否(取得された信号セットの良否)が適切に判定される。
【0013】
ここで、1つの走査ラインについてのOCT信号を取得するために要する時間は、組織の二次元の正面画像を1回撮影するために要する時間よりも短い。つまり、OCT信号の取得レートは、正面画像の撮影レートよりも高い。従って、制御部は、取得された信号セットに含まれる複数のOCT信号の比較結果に基づいて、信号取得状態の良否判定を行うことで、信号取得状態の安定度を細かく検出することが可能である。よって、本開示の技術によると、OCT信号の取得レートを高くした場合でも、信号取得状態の安定度が適切に検出され易くなる。
【0014】
さらに、本開示の技術によると、OCT判定ステップにおいて信号取得状態が良好でないと判定されると、取得状態が良好でないと判定された信号セット取得時の走査ラインと同一の組織上の位置に、次回の走査ラインの位置が再設定される。その結果、良好な信号セットが得られなかった走査ラインについての信号セットが、早い段階で再取得されやすくなる。よって、信号取得状態の安定度が低下した際の影響が、より適切に抑制される。
【0015】
例えば、複数の位置についての信号セットの取得が一通り完了した後に、信号取得状態が良好でなかったと判定された信号セットのみを再取得することで、OCT信号の全体の精度の向上を図ることも考えられる。しかし、複数の信号セットの取得後に、信号取得状態が良好でなかった信号セットのみを再取得する方法では、複数の信号セットを一通り取得した際の条件(例えば、組織の位置および角度等)と、一部の信号セットを再取得する際の条件の差が大きくなり、信号全体の品質の低下(例えば、取得されたOCT信号に基づいて得られる画像のうち、信号セットを再取得した部分が目立ってしまう不具合等)が生じやすくなる。これに対し、本開示の技術によると、良好な信号セットが得られなかった走査ラインについての信号セットが、早い段階で再取得される。よって、OCT信号の全体が高い精度で取得され易くなる。
【0016】
また、複数の二次元正面画像間の位置ずれによって、撮影中の組織の動きが検出された場合に、正面画像の撮影中に取得されたOCT信号を再取得することで、OCT信号の全体の精度の向上を図ることも考えられる。しかし、前述のように、各々の正面画像の撮影に要する時間は、各々のOCT信号の取得に要する時間よりも長い場合が多い。特に、近年では、OCT信号の取得レートを従来よりも高くすることが可能となった。その結果、正面画像の撮影レートは、OCT信号の取得レートに比べて従来よりもさらに低くなる傾向がある。複数の正面画像間の位置ずれが生じた際にOCT信号を再取得する方法では、正面画像の撮影レートがOCT信号の取得レートに比べて低くなる程、OCT信号を再取得する位置が多くなり易い。これに対し、本開示の技術によると、短時間で取得可能なOCT信号によって信号取得状態の良否(信号セットの良否)が判定されたうえで、良好な信号セットが得られなかった走査ラインについての信号セットが、早い段階で再取得される。その結果、前述した方法に比べて、信号セットの再取得が必要となる位置が減少する。また、本開示の技術によると、連続して取得される信号セットのうち、良好でない信号セットが正確に特定され易いという利点も得られる。
【0017】
次回走査位置設定ステップでは、制御部は、良否判定において信号セットの取得状態が良好と判定されている場合には、信号セットが前回取得された位置の次に信号セットを取得する予定の組織上の位置(つまり、測定光が未だ走査されていない新たな位置)に、次回の走査ラインの位置を設定してもよい。この場合、信号取得状態が良好であれば、予定されている複数の位置の信号セットの取得が順調に繰り返される。
【0018】
なお、複数のOCT信号に基づいて信号取得状態(信号セット)の良否判定を行うための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、信号セットに含まれる少なくとも2つのOCT信号の各々を処理することで断層画像を取得し、取得した複数の断層画像の相関値に基づいて、信号取得状態(信号セット)の良否判定を行ってもよい。この場合、制御部は、相関値が閾値以上であれば、信号取得状態は良好と判定し、相関値が閾値よりも低ければ、信号取得状態は良好でないと判定してもよい。断層画像の相関値が利用されることで、良否判定が精度良く行われ易くなる。また、制御部は、信号セットに含まれる少なくとも2つのOCT信号自体を比較することで、信号取得状態の良否判定を行ってもよい。OCT信号間(例えば、OCT信号に基づいて生成された断層画像間)を比較する方法には、例えば、位相限定相関法(Phase Only Correlation)によって求められる相関値(類似度)を利用する方法等、公知の方法が利用されてもよい。
【0019】
次回走査位置設定ステップでは、制御部は、前回の信号セット取得ステップにおける信号セットの取得が完了すると、OCT判定ステップにおける信号セットの良否判定が完了するか否かに関わらず、次回の走査ラインの位置を仮設定してもよい。信号取得ステップでは、制御部は、OCT判定ステップにおける良否判定が完了するか否かに関わらず、仮設定された走査ラインへの測定光の走査を開始してもよい。さらに、制御部は、仮設定された走査ラインへの測定光の走査を開始した以後に、走査ラインの位置が、仮設定された位置とは異なる位置に再設定された場合に、測定光を走査させる走査ラインを、再設定された走査ラインに変更してもよい。OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定が完了するまで、測定光の走査を停止させると、複数のOCT信号全体の取得時間を短縮することが困難になる。また、光走査部の駆動を一旦停止させると、駆動を再開させるためにさらに時間を要する。これに対し、制御部は、OCT信号に基づく良否判定が完了するか否かに関わらず、次回の走査ラインを仮設定して測定光の走査を開始させることで、複数のOCT信号の取得時間を適切に短縮することが可能である。
【0020】
なお、制御部は、仮設定した走査ラインが変更されず、そのまま維持される場合には、仮設定された走査ラインを本来の走査ラインとして、走査ラインへの測定光の走査をそのまま継続してもよい。この場合、複数のOCT信号の取得時間が適切に短縮される。
【0021】
また、制御部は、走査ラインの位置を、仮設定した位置とは異なる位置に再設定した場合には、仮設定した走査ラインについて取得された信号(OCT信号等)を、記憶装置に記憶させる対象から除外してもよい。この場合、不適切な信号が採用されてしまう不具合が抑制される。
【0022】
制御部は、OCT判定ステップにおいて、信号セットが取得された際の、単位時間当たりのOCT信号の取得回数(つまり、走査ラインに測定光を1回走査させる毎に取得されるOCT信号の、単位時間当たりの取得回数)に応じて、信号セットに含まれる複数のOCT信号のうち、信号取得状態の良否判定を行うために比較する一対のOCT信号のペアの数を変更してもよい。信号セットに含まれる複数のOCT信号のうち、極力多くのOCT信号のペアを比較する程、信号取得状態(信号セット)の良否判定の精度は向上する。一方で、良否判定を行うために比較するOCT信号のペアの数が多くなる程、良否判定に要する時間が長くなる。信号取得状態の良否判定に要する時間が長くなり過ぎると、取得されるOCT信号の品質の低下等が生じる可能性がある。従って、走査ラインに測定光を1回走査させる毎に取得されるOCT信号の、単位時間当たりの取得回数(「OCT信号の取得レート」とも表現できる)を増加させる場合には、信号セットの取得時間が短縮されるので、信号取得状態の良否判定に要する時間も短縮されることが望ましい。従って、信号取得状態の良否判定に用いるOCT信号のペアの数が、OCT信号の取得レートに応じて変更されることで、OCT信号の取得レートに応じて適切に良否判定が行われ易くなる。
【0023】
なお、信号取得状態の良否判定に用いるOCT信号のペアの数を、OCT信号の取得レートに応じて変更するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、OCT信号の取得レートが閾値以上の場合には、取得レートが閾値未満の場合に比べて、良否判定に用いるOCT信号のペアの数を減少させてもよい。
【0024】
制御部は、OCT判定ステップにおいて、OCT信号の取得レートに関わらず、信号セットに含まれる複数のOCT信号のうち、最初に取得されたOCT信号と、最後に取得されたOCT信号のペアを、信号取得状態の良否判定に用いるペアに必ず含めてもよい。信号セットに含まれる複数のOCT信号のうち、最初に取得されたOCT信号と、最後に取得されたOCT信号のペアの間には、信号セットを取得している間の信号取得状態の安定度(例えば、組織の動きの有無等)の影響が表れやすい。従って、最初と最後のOCT信号のペアを、良否判定に用いるペアに含めることで、良否判定の精度が向上し易くなる。
【0025】
ただし、信号セットに含まれる複数のOCT信号のうち、最初と最後のOCT信号のペアを、良否判定に用いるペアから除外することも可能である。この場合、制御部は、信号セットにおける最後のOCT信号の取得完了を待たずに良否判定を行うことも可能となる。また、OCT信号の取得レートに関わらず、良否判定に用いるOCT信号のペアの数が一定とされる場合でも、信号取得状態の安定度が低下した際の影響は適切に抑制される。
【0026】
OCT装置は、単位時間当たりのOCT信号の取得回数(つまり、前述したOCT信号の取得レート)よりも低い撮影レート(つまり、単位時間当たりの正面画像の撮影回数)で、被検体の組織の正面画像を撮影する正面観察光学系をさらに備えてもよい。制御部は、信号セット取得ステップにおいて、正面観察光学系によって撮影された最新の正面画像に基づいて測定光の走査位置を調整することで、組織上に設定されている走査ラインに測定光を走査させてもよい。この場合、組織が動いた場合でも、最新の正面画像に基づいた適切な組織上の走査ラインに測定光が走査されやすくなる。従って、取得されるOCT信号の精度が向上し易くなる。
【0027】
なお、最新の正面画像に基づいて測定光の走査位置を調整するための具体的な方法も、適宜選択できる。例えば、制御部は、最新の正面画像と、最新の正面画像よりも前に撮影された正面画像(基準画像)の間の位置ずれを検出し、検出された位置ずれ(例えば、位置ずれの量および方向)に基づいて、次回の走査ラインに測定光を走査させるための測定光の走査位置を調整してもよい。
【0028】
制御部は、良否判定ステップとして、正面観察光学系によって撮影された最新の正面画像と、最新の正面画像よりも前(例えば、最新の正面画像の直前に撮影された正面画像等)に撮影された正面画像の比較結果に基づいて、信号セットの取得状態の良否判定を行う正面画像判定ステップをさらに実行してもよい。次回走査位置設定ステップでは、制御部は、正面画像判定ステップおよびOCT判定ステップの少なくとも一方において、信号セットの取得状態が良好でないと判定されている間、取得状態が良好でないと判定されたいずれかの信号セット取得時の走査ラインと同一の組織上の位置に、次回の走査ラインの位置を再設定してもよい。この場合、OCT信号に基づく信号取得状態の判定結果に加えて、正面画像に基づく信号取得状態の判定結果も考慮されたうえで、次回の走査ラインの位置が設定される。従って、信号取得状態の安定度が低下した際の影響が、さらに抑制されやすくなる。
【0029】
ただし、制御部は、正面画像判定ステップを実行せずに、OCT判定ステップにおける信号取得結果の判定結果のみを参照して、次回の走査ラインの位置を設定することも可能である。この場合でも、良好な信号セットが得られなかった走査ラインについての信号セットが、早い段階で再取得されやすくなる。
【0030】
制御部は、正面画像判定ステップにおいて、最新の正面画像と、最新の正面画像の直前に撮影された直前正面画像の位置ずれ量である第1位置ずれ量に加えて、最新の正面画像と、直前正面画像よりも前に撮影された基準正面画像の位置ずれ量である第2位置ずれ量を取得可能であってもよい。制御部は、第1位置ずれ量と第2位置ずれ量が共に取得された場合には、第1位置ずれ量および第2位置ずれ量の少なくとも一方が閾値を超えている場合に、取得状態が良好でないと判定してもよい。制御部は、取得状態が良好でないと一旦判定した場合には、基準正面画像を新たに撮影された正面画像に差し替えてもよい。この場合、組織がゆっくりと動いていても、第1位置ずれ量と第2位置ずれ量が共に参照されることで、組織の動きによって信号取得状態が悪化していることが、より高い精度で検出される。
【0031】
制御部は、信号セットの取得状態が良好でないと一旦判定すると、少なくとも次回の正面観察光学系による正面画像の撮影が完了するまで、信号取得状態が良好でない旨の判定結果を継続してもよい、制御部は、信号セットの取得状態が良好でないと判定されている間、信号セット取得ステップにおける信号セットの取得を繰り返すと共に、取得される信号セットを、記憶装置に記憶させる対象から除外してもよい。信号取得状態の判定結果が良好でないと判断されると、既に組織が動いていしまっている可能性が高い。従って、次回の正面画像の撮影が完了する前に、信号セットの取得状態が仮に回復したとしても、取得された信号セットは、予定されていた位置とは異なる位置の信号セットである可能性がある。従って、信号取得状態が良好でないと判定された以後、少なくとも次回の正面画像の撮影が完了するまで、取得された信号セットを記憶対象から除外することで、不適切な位置について取得されたOCT信号が採用されてしまう可能性が適切に低下する。
【0032】
さらに、前述したように、光走査部の駆動を一旦停止させると、駆動を再開させるために時間を要するので、複数のOCT信号の取得時間を短縮することが困難になる。これに対し、制御部は、信号セットの取得状態が良好でないと判定されている間も、信号セット取得ステップにおける信号セットの取得を繰り返すことで、複数のOCT信号の取得時間が長引くことを抑制することができる。
【0033】
制御部は、次回走査位置設定ステップにおいて、信号取得状態が良好でないと判定された信号セット取得時の走査ラインと同一の組織上の位置に、次回の走査ラインの位置を一旦再設定すると、少なくとも次回の正面画像の撮影が完了するまで、次回の走査ラインの位置を、前回と同じ位置に繰り返し設定してもよい。この場合、信号取得状態が回復すると、信号セットの取得処理が、信号取得状態が良好でなくなった位置から再開され易くなる。その結果、複数のOCT信号の取得時間がさらに短縮され易くなる。
【0034】
制御部は、信号セットの取得状態が良好でないと判定されている間も、OCT判定ステップにおける信号セットの取得状態の良否判定を繰り返してもよい。この場合、取得された信号セットが採用されるか否かに関わらず、信号取得状態の安定度が細かく検出される。よって、信号取得状態の安定度が高い精度で検出される。
【0035】
ただし、制御部は、信号セットの取得状態が良好でないと一旦判定すると、少なくとも次回の正面観察光学系による正面画像の撮影が完了するまで、OCT判定ステップにおける信号セットの取得状態の良否判定を中断してもよい。この場合、制御部の処理量が削減され易くなる。
【0036】
また、制御部は、信号セットの取得状態が良好でないと一旦判定すると、少なくとも次回の正面観察光学系による正面画像の撮影が完了するまで、信号セット取得ステップにおける信号セットの取得処理の代わりに、設定されている走査ラインへの測定光の走査を単に繰り返す処理を実行してもよい。この場合、信号取得状態が回復した際に、通常の信号セットの取得処理がすぐに再開され易くなる。その結果、複数のOCT信号の取得時間がさらに短縮され易くなる。
【0037】
制御部は、信号セットの取得状態が良好でないと判定されている間、信号セット取得ステップにおいて信号セットとして取得するOCT信号の数を、取得状態が良好と判定されている場合に比べて減少させてもよい。この場合、信号取得状態が良好でないと判定されている間の、各々の信号セットの取得時間が短縮される。従って、信号取得状態の安定度が、さらに細かく検出される。
【0038】
なお、制御部は、組織上の同一の走査ラインに前記測定光を複数回走査させることで取得された複数のOCT信号(信号セット)を処理することで、被検体の組織におけるモーションコントラストデータ(OCTアンジオデータ)を取得してもよい。モーションコントラストデータとは、被検体の組織の同一位置に関して異なる時間に取得された少なくとも2つのOCT信号が演算処理されることで生成されるデータである。モーションコントラストデータには、組織における血管網の灌流情報が含まれるので、診断等に有用である。各々の走査ラインについて取得されたモーションコントラストデータによって、組織を正面(OCT測定光の光軸に沿う方向)から見た場合の血管網の灌流情報の二次元分布を示すOCTアンジオ画像が生成される。本開示における技術が利用されることで、信号取得状態が不安定となった影響が抑制されたモーションコントラストデータが、適切に取得され易くなる。
【0039】
<実施形態>
以下、本開示に係る典型的な実施形態の1つについて説明する。一例として、本実施形態のOCT装置1は、被検眼Eの眼底を被検体とし、眼底組織のOCT信号を取得して処理することができる。取得されたOCT信号に基づいて、OCTアンジオ画像、二次元断層画像、および三次元断層画像等を生成することが可能である。ただし、被検眼Eにおける眼底以外の組織(例えば、被検眼Eの前眼部等)、または、被検眼E以外の被検体(例えば、皮膚、消化器、脳、血管(心臓血管を含む)、または歯等)のOCT信号を処理する場合でも、本開示で例示する技術の少なくとも一部を適用できる。OCT信号とは、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)の原理に基づいて取得される信号である。
【0040】
図1を参照して、本実施形態のOCT装置1の概略構成について説明する。OCT装置1は、OCT部10と制御ユニット30を備える。OCT部10は、OCT光源11、カップラー(光分割器)12、測定光学系13、参照光学系20、受光素子22、および正面観察光学系23を備える。
【0041】
OCT光源11は、OCT信号を取得するための光(OCT光)を出射する。カップラー12は、OCT光源11から出射されたOCT光を、測定光と参照光に分割する。また、本実施形態のカップラー12は、被検体の組織(本実施形態では被検眼Eの眼底)によって反射された測定光と、参照光学系20によって生成された参照光を合波して干渉させる。つまり、本実施形態のカップラー12は、OCT光を測定光と参照光に分岐する分岐光学素子と、測定光の反射光と参照光を合波する合波光学素子を兼ねる。なお、分岐光学素子および合波光学素子の少なくともいずれかの構成を変更することも可能である。例えば、カップラー以外の素子(例えば、サーキュレータ、ビームスプリッタ等)が使用されてもよい。
【0042】
測定光学系13は、カップラー12によって分割された測定光を被検体に導くと共に、被検体によって反射された測定光をカップラー12に戻す。測定光学系13は、光走査部14、照射光学系16、およびフォーカス調整部17を備える。光走査部14は、駆動部15によって駆動されることで、測定光の光軸に交差する二次元方向に測定光を走査(偏向)させることができる。本実施形態では、互いに異なる方向に測定光を偏向させることが可能な2つのガルバノミラーが、光走査部14として用いられている。しかし、光を偏向させる別のデバイス(例えば、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ、音響光学素子等の少なくともいずれか)が光走査部14として用いられてもよい。照射光学系16は、光走査部14よりも光路の下流側(つまり被検体側)に設けられており、測定光を被検体の組織に照射する。フォーカス調整部17は、照射光学系16が備える光学部材(例えばレンズ)を測定光の光軸に沿う方向に移動させることで、測定光のフォーカスを調整する。
【0043】
参照光学系20は、参照光を生成してカップラー12に戻す。本実施形態の参照光学系20は、カップラー12によって分割された参照光を反射光学系(例えば、参照ミラー)によって反射させることで、参照光を生成する。しかし、参照光学系20の構成も変更できる。例えば、参照光学系20は、カップラー12から入射した光を反射させずに透過させて、カップラー12に戻してもよい。参照光学系20は、測定光と参照光の光路長差を変更する光路長差調整部21を備える。本実施形態では、参照ミラーが光軸方向に移動されることで、光路長差が変更される。なお、光路長差を変更するための構成は、測定光学系13の光路中に設けられていてもよい。
【0044】
受光素子22は、カップラー12によって生成された測定光と参照光の合成光である干渉光を受光することで、OCT信号を取得するための干渉信号を検出する。本実施形態では、フーリエドメインOCTの原理が採用されている。フーリエドメインOCTでは、干渉光のスペクトル強度(スペクトル干渉信号)が受光素子22によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって複素OCT信号が取得される。複素OCT信号に対する処理(例えば、複素OCT信号における振幅の絶対値を算出する処理等)によって、OCT信号が取得される。フーリエドメインOCTの一例として、Spectral-domain-OCT(SD-OCT)、Swept-source-OCT(SS-OCT)等を採用できる。また、例えば、Time-domain-OCT(TD-OCT)等を採用することも可能である。
【0045】
本実施形態では、SD-OCTが採用されている。SD-OCTの場合、例えば、OCT光源11として低コヒーレント光源(広帯域光源)が用いられると共に、干渉光の光路における受光素子22の近傍には、干渉光を各周波数成分(各波長成分)に分光する分光光学系(スペクトロメータ)が設けられる。SS-OCTの場合、例えば、OCT光源11として、出射波長を時間的に高速で変化させる波長走査型光源(波長可変光源)が用いられる。この場合、OCT光源11は、光源、ファイバーリング共振器、および波長選択フィルタを備えていてもよい。波長選択フィルタには、例えば、回折格子とポリゴンミラーを組み合わせたフィルタ、および、ファブリー・ペローエタロンを用いたフィルタ等がある。
【0046】
正面観察光学系23は、被検体の組織(本実施形態では被検眼Eの眼底)の正面画像(例えば、図2に示す正面画像40等)をリアルタイムで撮影するために設けられている。本実施形態における正面画像とは、OCTの測定光の光軸に沿う方向(正面方向)から組織を見た場合の二次元の画像である。本実施形態では、走査型レーザ検眼鏡(SLO)が正面観察光学系23として採用されている。SLOは、被検体の組織上でレーザ光を走査し、組織からのレーザ光の戻り光を受光することで、組織の正面画像を撮影する。例えば、SLOは、所謂ラインスキャンタイプの装置であってもよい。この場合、ライン状の光束が観察面上で走査される。本実施形態の正面観察光学系23は、OCT信号の取得レートよりも低い撮影レートで、組織の正面画像を繰り返し撮影する。OCT信号の取得レートとは、走査ラインにOCT測定光が1回走査される毎に取得されるOCT信号の、単位時間当たりの取得回数である。正面観察光学系23の撮影レートとは、単位時間当たりの二次元の正面画像の撮影回数である。近年では、OCT信号の取得レートを従来に比べて増加させることが可能となっている。本実施形態では、OCT信号の取得レートを極力増加させると、OCT信号の取得レートは、正面観察光学系23の撮影レートの約8倍となる。なお、正面観察光学系23の構成には、SLO以外の構成(例えば、二次元の撮影範囲に赤外光を一括照射して正面画像を撮影する赤外カメラ等)が採用されてもよい。
【0047】
制御ユニット30は、OCT装置1の各種制御を司る。制御ユニット30は、CPU31、RAM32、ROM33、および不揮発性メモリ(NVM)34を備える。CPU31は各種制御を行うコントローラである。RAM32は各種情報を一時的に記憶する。ROM33には、CPU31が実行するプログラム、および各種初期値等が記憶されている。NVM34は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。後述するOCT撮影処理(図3参照)を実行するためのOCT撮影制御プログラムは、NVM34に記憶されていてもよい。
【0048】
制御ユニット30には、マイク36、モニタ37、および操作部38が接続されている。マイク36は音を入力する。モニタ37は、各種画像を表示する表示部の一例である。操作部38は、ユーザが各種操作指示をOCT装置1に入力するために、ユーザによって操作される。操作部38には、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、フットスイッチ等の種々のデバイスを用いることができる。なお、マイク36に音が入力されることで各種操作指示がOCT装置1に入力されてもよい。この場合、CPU31は、入力された音に対して音声認識処理を行うことで、操作指示の種類を判別してもよい。
【0049】
本実施形態では、OCT部10および制御ユニット30が1つの筐体に内蔵された一体型のOCT装置1を例示する。しかし、OCT装置1は、筐体が異なる複数の装置を備えていてもよいことは言うまでもない。例えば、OCT装置1は、OCT部10を内蔵する光学装置と、光学装置に有線または無線で接続されるPCとを備えていてもよい。この場合、光学装置が備える制御部とPCの制御部が、共にOCT装置1の制御ユニット30として機能してもよい。
【0050】
(OCT信号の取得方法の一例)
図2および図3を参照して、本実施形態におけるOCT信号の取得方法(撮影方法)の一例について説明する。図2は、正面観察光学系23によって撮影された正面画像40に写る被検眼Eの眼底組織上に、複数の走査ライン58が設定された状態の一例を示す。本実施形態では、測定光のスポットが、光走査部14によって組織上の二次元の対象領域55内で走査されることで、対象領域55におけるOCT信号が取得される。詳細には、本実施形態では、対象領域55におけるモーションコントラストデータ(OCTアンジオデータ)が取得(撮影)される。モーションコントラストデータは、被検体の同一位置に関して異なる時間に取得された少なくとも2つのOCT信号が演算処理されることで生成される。モーションコントラストデータには、組織における血管網の灌流情報が含まれるので、診断等に有用である。
【0051】
図2に示すように、本実施形態のOCT装置1は、測定光の光軸に交差する方向に広がる二次元の対象領域55内に、測定光のスポットを走査させる走査ライン58を、等間隔で複数設定する。図2に示す例では、1番目の走査ライン581、2番目の走査ライン582、3番目の走査ライン583、4番目の走査ライン584の順に走査ライン58が等間隔で並べられており、最後の走査ラインはK番目の走査ライン58Kとなっている。OCT装置1は、組織上の各々の走査ライン58に、測定光のスポットを複数回(一例として、本実施形態では原則4回ずつ)走査させることで、各々の走査ライン58についての複数(本実施形態では原則4つ)のOCT信号の信号セットを取得する。各々の走査ライン58についての信号セットに含まれる複数のOCT信号が演算処理されることで、各々の走査ライン58についてのモーションコントラストデータが取得される。
【0052】
なお、図3に示すように、OCT装置1は、走査ライン58に測定光が1回ずつされることで取得される各々のOCT信号を処理することで、走査ライン58から組織の深さ方向に広がる二次元断層画像41を取得することができる。詳細は後述するが、OCT装置1は、OCT信号の取得状態(以下、単に「信号取得状態」という場合もある)の良否判定を、複数のOCT信号に基づいて実行する際に、各々のOCT信号を処理することで取得される二次元断層画像41の間の相関値を利用する。なお、信号取得状態は、特に、OCT信号を取得している間に、組織の動きが生じることで悪化する。
【0053】
以下、本実施形態のOCT装置1が実行する処理について詳細に説明する。前述したように、本実施形態で例示する処理は、図2に例示した方法で被検眼Eの眼底のモーションコントラストデータを取得する場合の処理である。ただし、以下説明する処理の少なくとも一部は、モーションコントラストデータ以外のデータ(例えば、三次元断層画像のデータ、または複数の二次元断層画像を加算平均した加算平均画像のデータ等)を撮影する場合にも適用できる。
【0054】
(処理の概要)
まず、図4を参照して、本実施形態のOCT装置1が実行する各種処理の流れについて、概略的に説明する。図4は、本実施形態のOCT装置1が実行する各種処理の流れの一例を示すタイミングチャートである。図4に示す例では、図中の「正面画像撮影」は、正面観察光学系23によって組織の正面画像40が連続して撮影されるタイミングを示す。図中の「正面画像判定結果」は、撮影された正面画像40に基づいて、信号取得状態の良否判定が行われるタイミングを示す。図中の「信号セット取得」は、各々の走査ライン58について、複数のOCT信号の信号セットが連続して取得されるタイミングを示す。図中の「OCT信号判定結果」は、取得された信号セットに含まれるOCT信号に基づいて、信号取得状態の良否判定が行われるタイミングを示す。図中の「信号取得状態」は、後述する状態悪化フラグによって把握される、信号取得状態の良否が切り換わるタイミングを示す。なお、「正面画像判定結果」および「OCT信号判定結果」では、信号取得状態の判定結果が良好であったことを「〇」、良好でなかったことを「×」で示す。「信号セット取得」では信号セットが取得された際の実際の信号取得状態が良好であったことを「〇」、良好でなかったことを「×」で示す。さらに、状態悪化フラグによって把握される信号取得状態が良好である期間を「〇」、良好でない期間を「×」で示す。
【0055】
本実施形態のOCT装置1は、信号セット取得処理、信号取得状態の良否判定処理、および、次回走査位置設定処理(図4では省略)の各々を、繰り返し実行する。信号セット取得処理では、その時点で設定されている同一の走査ライン58に、OCT測定光が複数回(本実施形態では、原則として4回)走査されることで、複数のOCT信号の信号セットが取得される。信号取得状態の良否判定処理では、基本的に、信号セットの取得が完了する毎に、取得された信号セットに含まれるOCT信号に基づいて、信号取得状態の良否判定が行われる。OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定によると、信号取得状態の安定度が細かく検出される。さらに、本実施形態における信号取得状態の良否判定処理では、最新の正面画像40と、最新の正面画像40よりも前に撮影された正面画像40の比較結果に基づく良否判定も実行される。次回走査位置設定処理では、OCT測定光を次回走査させる走査ライン58の組織上の位置が設定される。
【0056】
OCT装置1は、撮影された最新の正面画像40に基づいてOCT測定光の走査位置を調整することで、設定されている組織上の走査ライン58にOCT測定光を走査させる。その結果、組織が動いた場合でも、最新の正面画像40に基づいた適切な組織上の走査ライン58にOCT測定光が走査され易くなる。
【0057】
OCT装置1は、OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定の結果が不良となると、信号取得状態の良否を示す状態悪化フラグを、状態が良好でないことを示す「ON」とする。図4に示す例では、5番目に取得された信号セットの取得状態が良好でないと判定された結果、状態悪化フラグが「ON」とされている。また、本実施形態のOCT装置1は、正面画像に基づく信号取得状態の良否判定の結果が不良となった場合も、状態悪化フラグを「ON」とする。なお、図4に示す例では、3番目および4番目に撮影された正面画像に基づく信号取得状態の良否判定の結果は不良となっているが、状態悪化フラグが既に「ON」となっているので、状態悪化フラグは「ON」のまま変更されていない。
【0058】
OCT装置1は、信号取得状態が良好と判定されている場合には、取得された信号セットを、記憶装置(例えばNVM34等)に記憶させる。図4に示す例では、1番目~4番目に取得された信号セットの取得時、および、12番目~14番目に取得された信号セットの取得時には、OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定も、状態悪化フラグによって把握される信号取得状態も、共に良好である。従って、1番目~4番目、12番目~14番目に取得された信号セットは、記憶装置に記憶される。また、OCT装置1は、信号取得状態が良好と判定されている場合には、信号セットが前回取得された位置(走査ライン58)の次に信号セットを取得する予定の組織上の位置に、次回の走査ラインの位置を設定する。その結果、複数の走査ラインの各々についての信号セットが、順次取得されて記憶される。
【0059】
一方で、OCT装置1は、OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定の結果が不良となると、信号取得状態が不良と判定された信号セットの取得時の走査ライン58と同一の組織上の位置に、次回の走査ライン58の位置を再設定する。(図7では、5番目の信号セットの取得後に、前回と同一の位置に次回の走査ライン58の位置が再設定される。)その結果、良好な信号セットが得られなかった走査ライン58についての信号セットが、早い段階で再取得されやすくなる。なお、OCT装置1は、OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定の結果が不良となると、信号取得状態が不良と判定された信号セットを、記憶装置に記憶させる対象から除外する。その結果、品質が良好でない信号セットが採用されてしまう可能性が低下する。図7に示す例では、5番目に取得された信号セットの取得時には、OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定の結果が不良となっている。従って、5番目に取得された信号セットは、記憶装置に記憶させる対象から除外される。
【0060】
また、OCT装置1は、信号取得状態が良好でないと判定されている間(つまり、状態悪化フラグが「ON」とされている間)、信号セットの取得を繰り返すと共に、取得される信号セットを、記憶装置に記憶させる対象から除外する。その結果、品質が良好でない信号セットが採用されてしまう可能性が低下する。図7に示す例では、6番目~11番目に取得された信号セットの取得時には、信号取得状態が良好でないと判定されている(つまり、状態悪化フラグが「ON」とされている)従って、6番目~11番目に取得された信号セットは、記憶装置に記憶させる対象から除外されている。なお、信号取得状態が良好でないと判定されている間も、信号セットの取得が繰り返されることで、光走査部14の駆動再開に要する時間が短縮される。その結果、複数のOCT信号の取得時間が短縮され易くなる。また、OCT装置1は、次回の走査ライン28の位置を、前回と同一の位置に一旦再設定すると、再設定した走査ライン58についての信号セットが、良好な信号取得状態で取得されるまで、次回の走査ライン58の位置を、前回と同一の位置に繰り返し設定する。その結果、信号取得状態の回復後に、信号セットの取得処理が、適切な位置から再開され易くなる。図7に示す例では、5番目の信号セットの取得後に再設定された次回の走査ライン58の設定位置は、12番目の信号セットの取得が完了するまで同一の位置で継続される。
【0061】
また、本実施形態のOCT装置1は、信号取得状態が良好でないと一旦判定すると、少なくとも次回の正面画像40の撮影が完了するまで状態悪化フラグを「ON」とすることで、信号取得状態が良好でない旨の判定結果を継続させる。信号取得状態の判定結果が良好でないと判断されると、既に組織が動いていしまっている可能性が高い。従って、次回の正面画像40の撮影が完了する前に、信号セットの取得状態が仮に回復したとしても、最新の正面画像40に基づく測定光の走査位置の調整が困難となる。つまり、信号取得状態が良好でないと一旦判定された以後、少なくとも次回の正面画像40の撮影が完了するまでの間に取得された信号セットは、予定されていた位置とは異なる位置の信号セットである可能性がある。よって、信号取得状態が良好でないと判定された以後、少なくとも次回の正面画像40の撮影が完了するまで、信号取得状態が良好でない旨の判定結果を継続させることで、品質が良好でない信号セットが採用されてしまう可能性が低下する。
【0062】
詳細には、本実施形態のOCT装置1は、信号取得状態が良好でないと一旦判定すると、正面画像に基づく信号取得状態の良否判定の結果が良好となるまで、信号取得状態が良好でない旨の判定結果を継続させる(つまり、状態悪化フラグ「ON」の状態を継続させる)。その結果、品質が良好でない信号セットが適切に再取得され易くなる。なお、図7に示す例では、5番目の信号セットの取得時に、信号取得状態が良好でないと判定されるが、8番目以降の信号セットについては、OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定の結果が回復している。しかし、OCT装置1は、8番目~11番目の信号セット取得時も、信号取得状態が良好でない旨の判定結果を継続させることで、品質が良好でない信号セットが採用されてしまう可能性を低下させている。
【0063】
なお、図7に示すように、本実施形態のOCT装置1は、信号セットの取得状態が良好でないと判定されている間(つまり、取得された信号セットを記憶装置に記憶させる対象から除外する間)も、OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定を繰り返す。従って、取得された信号セットが採用されるか否かに関わらず、信号取得状態の安定度が細かく検出される。
【0064】
(OCT撮影処理)
図5図8を参照して、本実施形態のOCT装置1が実行するOCT撮影処理について説明する。OCT装置1のCPU31は、NVM34に記憶されたOCT撮影制御プログラムに従って、図5に示すOCT撮影処理を実行する。
【0065】
図5に示すように、本実施形態のOCT撮影処理では、正面画像40に関する処理(S1~S4)と、OCT信号に関する処理(S21~S38)が並行して実行される。まずは、正面画像40に関する処理(S1~S4)について説明する。CPU31は、OCT撮影処理を開始すると、正面観察光学系23による正面画像40の連続撮影を実行する。
【0066】
CPU31は、1つの正面画像40の撮影が完了したか否かを判断する(S1)。正面画像40の撮影が完了するまで(S1:NO)、S1の判断が繰り返されて待機状態となる。正面画像40の撮影が完了すると(S1:YES)、CPU31は、正面画像判定処理を実行する(S2)。正面画像判定処理では、S1で撮影が完了した最新の正面画像40と、最新の正面画像40よりも前に撮影された正面画像40の比較結果に基づいて、信号取得状態の良否判定が行われる。
【0067】
図6に示すように、正面画像判定処理では、CPU31は、S1(図5参照)で撮影が完了した最新の正面画像40と、最新の正面画像40の直前に撮影された直前正面画像40の間の位置ずれ量である第1位置ずれ量を取得する(S11)。次いで、CPU31は、最新の正面画像40が基準正面画像40であるか否かを判断する(S12)。基準正面画像40とは、前述した直前正面画像40よりも前に撮影された1つまたは複数の正面画像40のうち、最新の正面画像40との間の位置ずれ量を取得する対象とされる画像である。最新の正面画像40が基準正面画像40であれば(S12:YES)、処理はそのままS15へ移行する。一方で、最新の正面画像40とは異なる画像が基準正面画像40とされている場合には(S12:NO)、CPU31は、最新の正面画像40と基準正面画像40の間の位置ずれ量である第2位置ずれ量を取得し(S13)、処理はS15へ移行する。なお、S11,S13における正面画像間の位置ずれ量の取得には、公知の画像処理等が利用されてもよい。
【0068】
CPU31は、S11~S13において取得された位置ずれ量に基づいて、信号取得状態の良否判定を行う(S15)。詳細には、CPU31は、第1位置ずれ量のみが取得されている場合、取得された第1位置ずれ量が閾値未満であれば、信号取得状態は良好と判定する。また、第1位置ずれ量と第2位置ずれ量が取得されている場合には、第1位置ずれ量と第2位置ずれ量が共に閾値未満であれば、信号取得状態は良好と判定する。一方で、CPU31は、第1位置ずれ量および第2位置ずれ量の少なくとも一方が閾値を超えていれば、信号取得状態が良好でないと判定する。
【0069】
CPU31は、信号取得状態が良好でない(不良である)と判定すると(S15:NO)、その時点におけるOCT信号の取得状態が良好であるか否かを示す状態悪化フラグを、信号取得状態が良好でないことを示す「ON」とする(S17)。なお、S17では、状態悪化フラグが既に「ON」とされている場合には、「ON」の状態が継続される。
【0070】
また、CPU31は、信号取得状態が良好と判定すると(S15:YES)、状態悪化フラグが、信号取得状態が良好であることを示す「OFF」となっているか否かを判断する(S17)。状態悪化フラグが「OFF」となっていれば(S17:YES)、処理はそのままOCT撮影処理(図5参照)へ戻る。状態悪化フラグが「ON」となっていれば(S17:NO)、信号取得状態は不良な状態から良好な状態に復帰したことになる。従って、CPU31は、状態悪化フラグを「ON」から「OFF」に変更する(図4のタイミングT2参照)。その結果、信号セットを取得して記憶装置に記憶させる処理が再開される。さらに、CPU31は、基準正面画像40を、S11で第1位置ずれ量が取得された最新正面画像および直前正面画像のいずれか(一例として、本実施形態では直前正面画像)に差し替える(S19)。
【0071】
図7を参照して、本実施形態における正面画像判定処理を、具体例に基づいて説明する。図7では、6つの正面画像S1~S6が、撮影された時間順に並べられている。また、S2以降の正面画像の各々が、信号取得状態の良否判定の際に比較される対象の正面画像が、矢印で示されている。第1位置ずれ量の取得対象を示す矢印には「1」が、第2位置ずれ量の取得対象を示す矢印には「2」が付されている。図7に示す例では、3番目の正面画像S3の撮影が完了してから、4番目の正面画像S4の撮影が完了するまでの間に、組織の動きによる正面画像間の位置ずれが発生している。
【0072】
図7に示す例では、まず、最初に撮影された正面画像S1が基準正面画像とされる。2番目の正面画像S2が撮影されると、S2と、直前正面画像であるS1の間の第1位置ずれ量のみが取得される。S1~S2の撮影中には組織の動きは生じていないので、S2の撮影完了時には位置ずれは検出されず、基準正面画像はS1のままとなる。
【0073】
3番目の正面画像S3が撮影されると、S3と、直前正面画像であるS2の間の第1位置ずれ量が取得される。さらに、S3と、基準正面画像であるS1の間の第2位置ずれ量が取得される。S2~S3の撮影中にも組織の動きは生じていないので、S3の撮影完了時にも位置ずれは検出されず、基準正面画像はS1のままとなる。
【0074】
4番目の正面画像S4が撮影されると、S4と、直前正面画像であるS3の間の第1位置ずれ量が取得される。さらに、S4と、基準正面画像であるS1の間の第2位置ずれ量が取得される。S3~S4の撮影中に組織の動きが生じているので、S4の撮影完了時には正面画像間の位置ずれが検出され、信号取得状態が不良と判定される。また、S4の撮影完了時に信号取得状態が不良と判定された後、基準正面画像が、S1から、新たに撮影された正面画像に差し替えられる。詳細には、5番目の正面画像S5が撮影されると、S5と、直前正面画像であるS4の間の第1位置ずれ量が取得される。S4~S5の撮影中には組織の動きは生じていないので、信号取得状態は、不良な状態から良好な状態へ復帰する(つまり、状態悪化フラグが「ON」から「OFF」に変更される。この時点で、基準正面画像が、S1から、直前正面画像であるS4に差し替えられる。以後、同様の処理が繰り返される。
【0075】
以上のように、本実施形態の正面画像判定処理によると、例えば、S1~S4の撮影中に組織がゆっくりと動いている場合に、S3とS4の間の位置ずれ量が閾値未満となっても、S1とS4の間の位置ずれ量が閾値以上となれば、組織の動きによる信号取得状態の不良が適切に検出される。よって、組織の動きによって信号取得状態が悪化していることが、より高い精度で検出される。
【0076】
図5の説明に戻る。正面画像判定処理(S2)が終了すると、CPU31は、S1で撮影が完了した最新の正面画像40に基づいて、S21~S38で制御されるOCT測定光の走査位置を調整することで、組織上に設定されている走査ライン58に測定光を走査させる(S3)。従って、組織が動いた場合でも、最新の正面画像40に基づいた適切な組織上の走査ラインに測定光が走査されやすくなる。なお、本実施形態のS3では、CPU31は、最新の正面画像40と、最新の正面画像よりも前に撮影された正面画像40(基準画像)の間の位置ずれを検出し、検出された位置ずれ(例えば、位置ずれの量および方向)に基づいて、次回の走査ライン58に測定光を走査させるための測定光の走査位置を調整する。
【0077】
CPU31は、並行して行われているS21~S38の処理において、予定されていた全ての走査ライン58についての信号セットの取得が完了したか否かを判断する(S4)。未だ完了していなければ(S4:NO)、処理はS1へ戻る。全ての走査ライン58についての信号セットの取得が完了すると(S4:YES)、OCT撮影処理は終了する。
【0078】
次に、OCT信号に関する処理(S21~S38)について説明する。CPU31は、OCT撮影処理を開始すると、信号セットを取得する予定の組織上の複数の走査ライン58のうち、最初に信号セットを取得する予定の走査ライン58を、次回にOCT測定光を走査させる走査ライン58に設定して、測定光の走査を開始させる。
【0079】
CPU31は、設定された走査ライン58についての複数のOCT信号の信号セットの取得が完了したか否かを判断する(S21)。完了していなければ(S21:NO)、S21の判断が繰り返されて待機状態となる。信号セットの取得が完了すると(S21:YES)、CPU31は、OCT信号判定処理を開始する(S22)。なお、CPU31は、信号セットに含まれる複数(本実施形態では原則4つ)のOCT信号のうち、少なくとも2つのOCT信号の取得が完了した時点で、OCT信号判定処理を開始してもよい。この場合、OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定が、より短時間で行われ易くなる。
【0080】
OCT信号判定処理では、CPU31は、取得された信号セットに含まれる少なくとも2つのOCT信号の比較結果に基づいて、信号取得状態の良否判定を行う。組織上の同一の走査ライン58に測定光を複数回走査させて、複数のOCT信号の信号セットを取得する間に、信号取得状態の安定度を阻害する事象(例えば、組織の動き等)が生じていなければ、取得された信号セットに含まれる複数のOCT信号の間の相関は高くなる。一方で、信号セットを取得する間に信号取得状態の安定度が低下していると、信号セットに含まれる複数のOCT信号の間の相関は低くなる。従って、取得された信号セットに含まれる複数のOCT信号を比較することで、信号セットが取得された際の信号取得状態の良否(取得された信号セットの良否)が適切に判定される。また、前述したように、OCT信号の取得レート(つまり、走査ライン58にOCT測定光が1回走査される毎に取得されるOCT信号の、単位時間当たりの取得回数)は、正面観察光学系23による正面画像40の撮影レート(つまり、単位時間当たりの正面画像40の撮影回数)よりも高い。従って、OCT信号判定処理によると、信号取得状態の安定度を細かく検出することが可能である。
【0081】
詳細には、本実施形態のOCT信号判定処理では、CPU31は、信号セットが取得された際の、OCT信号の取得レート(つまり、走査ライン58にOCT測定光が1回走査される毎に取得されるOCT信号の、単位時間当たりの取得回数)に応じて、信号セットに含まれる複数のOCT信号のうち、信号取得状態の良否判定を行うために比較する一対のOCT信号のペアの数を変更する。信号セットに含まれる複数のOCT信号のうち、極力多くのOCT信号のペアを比較する程、信号取得状態(信号セット)の良否判定の精度は向上する。一方で、良否判定を行うために比較するOCT信号のペアの数が多くなる程、良否判定に要する時間が長くなる。信号取得状態の良否判定に要する時間が長くなり過ぎると、取得されるOCT信号の品質の低下等が生じる可能性がある。従って、OCT信号の取得レートを増加させる場合には、信号セットの取得時間が短縮されるので、OCT信号判定処理に要する時間も短縮されることが望ましい。よって、CPU31は、信号取得状態の良否判定に用いるOCT信号のペアの数を、OCT信号の取得レートに応じて変更することで、OCT信号の取得レートに応じて適切に良否判定を行う。
【0082】
図8を参照して、OCT信号の取得レートに応じたOCT信号判定処理の方法の一例について説明する。図8では、信号セットに含まれる4つのOCT信号O1~O4が、取得された時間順に並べられている。また、OCT信号判定処理において比較される一対のOCT信号のペアが、矢印で繋がれている。本実施形態では、CPU31は、OCT信号の取得レートを高くする程、信号取得状態の良否判定に用いるOCT信号のペアの数を減少させる。図8に示す例では、OCT信号の取得レートが最も低い段階であれば、1番目と2番目のOCT信号のペア、1番目と3番目のOCT信号のペア、および、1番目と4番目のOCT信号のペアの3つのペアが、信号取得状態の良否判定に用いられる。この場合、良否判定の精度が向上し易くなる。また、OCT信号の取得レートが中程度の段階であれば、1番目と2番目のOCT信号のペア、および、1番目と4番目のOCT信号のペアの2つのペアが、信号取得状態の良否判定に用いられる。OCT信号の取得レートが最も高い段階であれば、1番目と4番目のOCT信号のペアのみが、信号取得状態の良否判定に用いられる。この場合、OCT信号判定処理に要する時間が短縮される。なお、図8に示すように、CPU31は、OCT信号の取得レートに関わらず、信号セットに含まれる複数のOCT信号のうち、最初(1番目)に取得されたOCT信号と、最後(4番目)に取得されたOCT信号のペアを、信号取得状態の良否判定に用いるペアに必ず含める。最初に取得されたOCT信号と、最後に取得されたOCT信号のペアの間には、信号セットを取得している間の信号取得状態の安定度(例えば、組織の動きの有無等)の影響が表れやすい。従って、最初と最後のOCT信号のペアを、良否判定に用いるペアに含めることで、良否判定の精度が向上し易くなる。
【0083】
なお、本実施形態のOCT信号判定処理では、CPU31は、信号セットに含まれる少なくとも2つのOCT信号の各々を処理することで断層画像41(図3参照)を取得し、取得した複数の断層画像41の相関値に基づいて、信号取得状態(信号セット)の良否判定を行う。CPU31は、相関値が閾値以上であれば、信号取得状態は良好と判定し、相関値が閾値よりも低ければ、信号取得状態は良好でないと判定する。断層画像41の相関値が利用されることで、良否判定が精度良く行われ易くなる。また、CPU31は、信号セットに含まれる少なくとも2つのOCT信号自体を比較することで、信号取得状態の良否判定を行ってもよい。OCT信号間(例えば、OCT信号に基づいて生成された断層画像41間)を比較する方法には、位相限定相関法(Phase Only Correlation)によって求められる相関値(類似度)が利用される。
【0084】
図5の説明に戻る。OCT信号判定処理には、ある程度の時間を要する。CPU31は、S21で取得された信号セットに基づくOCT信号判定処理が完了するか否かに関わらず、その時点における信号取得状態が良好とされているか否かを、状態悪化フラグに基づいて判断する(S23)。
【0085】
状態悪化フラグが「OFF」とされており、その時点におけるOCT信号の取得状態が良好とされていると判断すると(S23:YES)、CPU31は、OCT信号判定処理が完了するか否かに関わらず、信号セットを取得する次回の走査ライン58の位置を、信号セットが前回取得された位置の次に信号セットを取得する予定の組織上の位置に仮設定する(S25)。さらに、CPU31は、OCT信号判定処理が完了するか否かに関わらず、仮設定された走査ライン58へのOCT測定光の走査を開始する(S26)。その結果、信号取得状態が良好のまま維持されれば、予定されている次の位置の信号セットが順調に取得される。また、OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定(OCT信号判定処理)が完了するまで、OCT測定光の走査を停止させると、複数のOCT信号全体の取得時間を短縮することが困難になる。また、光走査部14の駆動を一旦停止させると、駆動を再開させるためにさらに時間を要する。これに対し、本実施形態では、OCT信号に基づく良否判定が完了するか否かに関わらず、次回の走査ライン58が仮設定されて、OCT測定光の走査が開始される。よって、複数のOCT信号の取得時間が適切に短縮される。なお、CPU31は、その時点におけるOCT信号の取得状態が良好とされていれば、S25で設定した次回の走査ライン58について信号セットとして取得するOCT信号の数を、通常の数であるN1(本実施形態では「4」)に設定する。
【0086】
次いで、CPU31は、OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定(OCT信号判定処理)の結果が良好であったか否かを判断する(S28)。OCT信号判定処理の結果が良好であれば(S28:YES)、CPU31は、S21で取得された信号セットを記憶装置に記憶させる(S29)。さらに、CPU31は、S25で仮設定された次回の走査ライン58を本来の走査ライン58として維持し、設定されている走査ライン58へのOCT測定光の走査をそのまま継続させる(S30)。その結果、複数のOCT信号(信号セット)の取得時間が適切に短縮される。CPU31は、予定されていた全ての走査ライン58についての信号セットの取得が完了したか否かを判断する(S31)。全ての走査ライン58についての信号セットの取得が完了すると(S31:YES)、OCT撮影処理は終了する。一方で、全ての走査ライン58についての信号セットの取得が未だ完了していなければ(S31:NO)、処理はS21へ戻る。
【0087】
また、OCT信号判定処理の結果が良好でなければ(S28:NO)、CPU31は、その時点におけるOCT信号の取得状態が良好であるか否かを示す状態悪化フラグを、良好でないことを示す「ON」に変更する(S33)。(図4におけるタイミングT1参照)。その後、処理はS35へ移行する。前述したように、CPU31は、信号取得状態が良好でないと一旦判定すると(S28:NO、S33)、少なくとも次回の正面画像40の撮影が完了するまで(本実施形態では、正面画像40に基づく信号取得状態の判定結果が良好となるまで)、状態悪化フラグを「ON」のまま維持することで、信号取得状態が良好でない旨の判定結果を継続させる。その結果、精度の低い信号セットが採用されてしまう可能性が低下する。次いで、CPU31は、S21で取得された信号セット(つまり、信号取得状態が良好でないと判定された信号セット)の取得時の走査ライン58と同一の組織上の位置(つまり、前回と同一の位置)に、次回の走査ライン58の位置を再設定する(S35)。その結果、良好な信号セットが得られなかった走査ライン58についての信号セットが、早い段階で再取得されやすくなる。なお、S35では、S26で仮設定した位置とは異なる位置に、走査ライン58の位置が再設定されることとなる。この場合、CPU31は、S21で取得された信号セットを、記憶装置に記憶させる対象から除外(破棄)する(S36)。CPU31は、S35で再設定された走査ライン58へのOCT測定光の走査を開始する(S37)。さらに、CPU31は、S35で再設定した次回の走査ライン58について取得するOCT信号の数を、信号取得状態が良好と判定される場合のN1(本実施形態では「4」)よりも少ないN2(本実施形態では「2」)に設定し(S38)、処理はS21へ戻る。その結果、信号取得状態が良好でない旨の判定結果が継続されている間(つまり、状態悪化フラグが「ON」とされている間)の、信号セットの取得時間が短縮される。従って、信号取得状態の安定度が、さらに細かく検出される。
【0088】
また、S23の判断において、状態悪化フラグが「ON」とされており、その時点におけるOCT信号の取得状態が不良とされていると判断すると(S23:NO)、CPU31は、組織上における次回の走査ライン58の位置を、前回と同じ位置に繰り返し再設定する(S35)。従って、信号取得状態が回復すると、信号セットの取得処理が、信号取得状態が良好でなくなった位置から再開され易くなる。その結果、複数のOCT信号の取得時間がさらに短縮され易くなる。次いで、CPU31は、信号取得状態が良好でないと判定されている間にS21で取得された信号セットを、記憶装置に記憶させる対象から除外(破棄)する(S36)。CPU31は、S35で再設定された走査ライン58へのOCT測定光の走査を開始する(S37)。つまり、信号取得状態が不良とされている間も、信号セットの取得が繰り返される。その結果、光走査部14の動作を一旦停止させる場合等に比べて、複数のOCT信号の取得時間が長引くことが抑制される。CPU31は、S35で再設定した次回の走査ライン58について取得するOCT信号の数をN2(<N1)に設定し(S38)、処理はS21へ戻る。なお、CPU31は、信号セットの取得状態が不良とされている間(つまり、信号セットが破棄される間)も、OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定(S22)を繰り返す。その結果、S21で取得された信号セットが採用されるか否かに関わらず、信号取得状態の安定度が細かく検出される。よって、信号取得状態の安定度が高い精度で検出される。
【0089】
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。上記実施形態で例示された複数の技術のうちの一部のみを実行することも可能である。例えば、上記実施形態では、OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定(S22)に加えて、正面画像に基づく信号取得状態の良否判定(S2、図6参照)も実行される。しかし、正面画像に基づく信号取得状態の良否判定は省略されてもよい。この場合、CPU31は、OCT信号に基づく信号取得状態の良否判定によって、信号取得状態が良好でないと一旦判定すると、次回の正面画像40の撮影が完了するまで(S1:YES)、信号取得状態が良好でない旨の判定結果を継続してもよい。つまり、CPU31は、次回の正面画像40の撮影が完了することを契機として(S1:YES)、状態悪化フラグを「ON」から「OFF」に変更してもよい。この場合、信号取得状態が回復していれば、次回の正面画像40の撮影が完了することを契機として、信号セットの取得処理がスムーズに再開される。
【符号の説明】
【0090】
1 OCT装置
11 OCT光源
12 カップラー
14 光走査部
16 照射光学系
20 参照光学系
22 受光素子
23 正面観察光学系
31 CPU
34 NVM
40 正面画像
58 走査ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8