(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052027
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】眼科撮影装置および眼科撮影制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158460
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100184550
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 珠美
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 光
(72)【発明者】
【氏名】玉耒 純二
(72)【発明者】
【氏名】大谷 尚平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏明
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB03
4C316AB11
4C316AB16
4C316FB23
4C316FZ01
4C316FZ03
(57)【要約】
【課題】光走査部への動作の実行の指令を開始してから、指令に応じて光走査部の動作が実際に実行されるまでの時間差の影響を適切に抑制することが可能な眼科撮影装置および眼科撮影制御方法を提供する。
【解決手段】制御部は、撮影対象に光を走査させることで画像を撮影する。制御部は、撮影された画像間の、光走査部による光の走査方向における位置に関する情報を取得する。制御部は、取得された位置情報に基づいて推測される、光走査部の時間差を取得する。光走査部の時間差とは、光走査部への動作の実行の指令を開始してから、指令に応じて光走査部の動作が実際に実行されるまでの時間である。制御部は、推測された時間差に基づいて、光走査部および受光素子による画像の撮影動作を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の組織の画像を撮影する眼科撮影装置であって、
光を出射する光源と、
前記光源によって出射された光を撮影対象上で走査する光走査部と、
前記光走査部によって走査された光が照射された前記撮影対象からの光を受光する受光素子と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
撮影対象に光を走査させることで画像を撮影する画像撮影ステップと、
前記画像撮影ステップにおいて撮影された前記画像の、前記光走査部による光の走査方向における位置に関する情報を取得する位置情報取得ステップと、
前記位置情報取得ステップにおいて取得された位置情報に基づいて推測される、前記光走査部への動作の実行の指令を開始してから、前記指令に応じて前記光走査部の動作が実際に実行されるまでの時間差を取得する時間差取得ステップと、
推測された前記時間差に基づいて、前記光走査部および前記受光素子による画像の撮影動作を制御する撮影制御ステップと、
を実行することを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の眼科撮影装置であって、
前記制御部は、
前記画像撮影ステップでは、同一の撮影対象の同一位置に、異なる走査速度で光を複数回走査させることで、光の走査速度が互いに異なる複数の画像を撮影し、
前記位置情報取得ステップでは、前記画像撮影ステップにおいて撮影された、光の走査速度が互いに異なる前記複数の画像間の、前記光走査部による光の走査方向における位置ずれを取得し、
前記時間差取得ステップでは、前記位置ずれに基づいて推測される前記光走査部の前記時間差を取得することを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の眼科撮影装置であって、
前記画像撮影ステップでは、前記制御部は、前記光走査部による光の走査速度と、前記受光素子による単位時間当たりの受光信号の取得回数を変更して、同一の撮影対象の同一位置における複数の画像を撮影することを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項4】
請求項2に記載の眼科撮影装置であって、
前記制御部は、
前記画像撮影ステップ、前記位置情報取得ステップ、および前記時間差取得ステップのサイクルを複数回実行すると共に、
2回目以降の前記画像撮影ステップでは、前回の前記時間差取得ステップにおいて取得された前記時間差を、前記光走査部の仮の時間差に設定して、複数の画像を撮影し、
前記撮影制御ステップでは、前記位置情報取得ステップにおいて取得された前記位置ずれが最小となった際に、前記時間差取得ステップにおいて取得された前記時間差に基づいて、撮影動作を制御することを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項5】
請求項1に記載の眼科撮影装置であって、
前記光走査部を複数備え、
前記制御部は、
前記画像撮影ステップ、前記位置情報取得ステップ、および前記時間差取得ステップにおいて、複数の前記光走査部の各々の前記時間差を取得し、
前記撮影制御ステップにおいて、推測された複数の前記光走査部の各々の前記時間差に基づいて、複数の前記光走査部および前記受光素子による画像の撮影動作を制御することを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項6】
請求項5に記載の眼科撮影装置であって、
前記時間差取得ステップにおいて取得された複数の前記時間差に、最も長い前記時間差である第1光走査部の第1時間差と、前記第1時間差よりも短い前記時間差である第2光走査部の第2時間差が含まれている場合に、
前記制御部は、前記撮影制御ステップにおいて、
前記第2光走査部への動作の実行の指令を開始するタイミングを、前記第1光走査部への動作の実行の指令を開始した以後、前記第1時間差と前記第2時間差の差分が経過したタイミングに設定することを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項7】
請求項5に記載の眼科撮影装置であって、
前記時間差取得ステップにおいて取得された複数の前記時間差に、最も長い前記時間差である第1光走査部の第1時間差と、前記第1時間差よりも短い前記時間差である第2光走査部の第2時間差が含まれている場合に、
前記制御部は、前記撮影制御ステップにおいて、
走査される光の位置が、受光信号の取得を開始する予定位置に到達するまでの予備走査の時間を、前記第1時間差と前記第2時間差の差分だけ前記第2光走査部の方が第1光走査部よりも長くなるように設定すると共に、
前記第1光走査部への動作の実行の指令を開始するタイミングと、前記第2光走査部への動作の実行の指令を開始するタイミングを一致させることを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項8】
被検眼の組織の画像を撮影する眼科撮影装置において実行される眼科撮影制御方法であって、
前記眼科撮影装置は、
光を出射する光源と、
前記光源によって出射された光を撮影対象上で走査する光走査部と、
前記光走査部によって走査された光が照射された前記撮影対象からの光を受光する受光素子と、
制御部と、
を備え、
撮影対象に光を走査させることで画像を撮影する画像撮影ステップと、
前記画像撮影ステップにおいて撮影された前記画像の、前記光走査部による光の走査方向における位置に関する情報を取得する位置情報取得ステップと、
前記位置情報取得ステップにおいて取得された位置情報に基づいて推測される、前記光走査部への動作の実行の指令を開始してから、前記指令に応じて前記光走査部の動作が実際に実行されるまでの時間差を取得する時間差取得ステップと、
推測された前記時間差に基づいて、前記光走査部および前記受光素子による画像の撮影動作を制御する撮影制御ステップと、
を含むことを特徴とする眼科撮影制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の組織上で光を走査させることで組織の画像を撮影する眼科撮影装置、および眼科撮影制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼の組織上で光を走査させることで組織の画像を撮影する眼科撮影装置が知られている。例えば、特許文献1には、走査部によって測定光を被検体上で走査させることで、OCT技術を利用して画像を撮影するOCT装置が開示されている。また、特許文献2には、走査部によってレーザ光を眼底上で走査させることで眼底の正面画像を撮影する走査型レーザ検眼鏡(SLO)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-208857号公報
【特許文献1】特開2020-157098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光走査部を駆動させる際に、光走査部への動作の実行の指令を開始してから、指令に応じて光走査部の動作が実際に実行されるまでの間に、時間差が必ず発生する。複数の光走査部が同一の仕様で製造されても、製造された複数の光走査部の各々の動作開始時の時間差は一定となり難い。光走査部の動作開始時の時間差が不明であると、光を走査させる走査ラインのうち、撮影を開始させたい位置と、実際に撮影が開始される位置の間にずれが生じる場合がある。従って、眼科撮影装置が高品質の画像を撮影するために、光走査部の時間差の影響を抑制できる技術が望まれる。
【0005】
本開示の典型的な目的は、光走査部への動作の実行の指令を開始してから、指令に応じて光走査部の動作が実際に実行されるまでの時間差の影響を適切に抑制することが可能な眼科撮影装置および眼科撮影制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科撮影装置は、被検眼の組織の画像を撮影する眼科撮影装置であって、光を出射する光源と、前記光源によって出射された光を撮影対象上で走査する光走査部と、前記光走査部によって走査された光が照射された前記撮影対象からの光を受光する受光素子と、制御部と、を備え、前記制御部は、撮影対象に光を走査させることで画像を撮影する画像撮影ステップと、前記画像撮影ステップにおいて撮影された前記画像の、前記光走査部による光の走査方向における位置に関する情報を取得する位置情報取得ステップと、前記位置情報取得ステップにおいて取得された位置情報に基づいて推測される、前記光走査部への動作の実行の指令を開始してから、前記指令に応じて前記光走査部の動作が実際に実行されるまでの時間差を取得する時間差取得ステップと、推測された前記時間差に基づいて、前記光走査部および前記受光素子による画像の撮影動作を制御する撮影制御ステップと、を実行する。
【0007】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科撮影制御方法は、被検眼の組織の画像を撮影する眼科撮影装置において実行される眼科撮影制御方法であって、前記眼科撮影装置は、光を出射する光源と、前記光源によって出射された光を撮影対象上で走査する光走査部と、前記光走査部によって走査された光が照射された前記撮影対象からの光を受光する受光素子と、制御部と、を備え、撮影対象に光を走査させることで画像を撮影する画像撮影ステップと、前記画像撮影ステップにおいて撮影された前記画像の、前記光走査部による光の走査方向における位置に関する情報を取得する位置情報取得ステップと、前記位置情報取得ステップにおいて取得された位置情報に基づいて推測される、前記光走査部への動作の実行の指令を開始してから、前記指令に応じて前記光走査部の動作が実際に実行されるまでの時間差を取得する時間差取得ステップと、推測された前記時間差に基づいて、前記光走査部および前記受光素子による画像の撮影動作を制御する撮影制御ステップと、
を含む。
【0008】
本開示に係る眼科撮影装置および眼科撮影制御方法によると、光走査部への動作の実行の指令を開始してから、指令に応じて光走査部の動作が実際に実行されるまで時間差の影響が、適切に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】眼科撮影装置1の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】走査レートを250kHzと65kHzに変更しつつ、同一の組織の同一位置の二次元断層画像を撮影する場合の、光走査部14に印加される駆動信号の大きさと、実際の光走査部14の角度を時間経過と共に示すグラフの一例である。
【
図4】眼科撮影装置1が実行する眼科撮影制御処理のフローチャートである。
【
図5】推測された光走査部14X,14Yの各々の時間差に基づいて撮影動作を制御するための第1方法が採用された場合の、第1光走査部14Xと第2光走査部14Yの各々に印加される駆動信号の大きさと、実際の光走査部14の角度を時間経過と共に示すグラフの一例である。
【
図6】推測された光走査部14X,14Yの各々の時間差に基づいて撮影動作を制御するための第2方法が採用された場合の、第1光走査部14Xと第2光走査部14Yの各々に印加される駆動信号の大きさと、実際の光走査部14の角度を時間経過と共に示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本開示で例示する眼科撮影装置は、被検眼の組織の画像を撮影する。眼科撮影装置は、光源、光走査部、受光素子、および制御部を備える。光源は光を出射する。光走査部は、光源によって出射された光を撮影対象上で走査する。受光素子は、光走査部によって走査された光が照射された撮影対象からの光を受光する。制御部は、画像撮影ステップ、位置情報取得ステップ、時間差取得ステップ、および撮影制御ステップを実行する。画像撮影ステップでは、制御部は、撮影対象に光を走査させることで画像を撮影する。位置情報取得ステップでは、画像撮影ステップにおいて撮影された画像の、光走査部による光の走査方向における位置に関する情報を取得する。時間差取得ステップでは、位置情報取得ステップにおいて取得された位置情報に基づいて推測される、光走査部の時間差を取得する。時間差とは、光走査部への動作の実行の指令を開始してから、指令に応じて光走査部の動作が実際に実行されるまでの時間(以下、「動作開始時の時間差」という)である。撮影制御ステップでは、制御部は、推測された動作開始時の時間差に基づいて、光走査部および受光素子による画像の撮影動作を制御する。
【0011】
推測された光走査部の動作開始時の時間差が正確であれば、推測された時間差を考慮して撮影動作を制御することで、光が走査される走査ラインのうち、画像を構成するための受光信号の取得開始位置が、適切な開始予定位置と一致する。その結果、目的の画像が適切に撮影される(ただし、撮影中に組織が動かないことを前提とする。以下でも同じ前提条件が満たされていると仮定する)。一方で、推測された時間差と実際の時間差が異なると、画像を構成するための受光信号の取得開始位置(撮影開始位置)が、適切な撮影開始予定位置からずれる。
【0012】
本実施形態の眼科撮影装置は、実際に撮影された画像の、光の走査方向における位置に関する情報に基づいて、光走査部についての動作開始時の時間差を取得し、取得した時間差に基づいて画像の撮影動作を制御する。従って、眼科撮影装置は、光走査部の動作開始時の時間差の影響を抑制して適切に画像を撮影することができる。
【0013】
なお、光走査部からのフィードバック信号に基づいて、光走査部の動作開始時の時間差を取得することも考えられる。しかし、一般的な電気回路を用いると、高い時間分解能でフィードバック信号を取得することは難しいので、取得される時間差に大きな誤差(例えば、数十μmレベルの誤差)が生じやすい。従って、光走査部からのフィードバック信号に基づいて、光走査部の時間差を高い精度で取得するためには、高精度な電気回路(例えば、0.1mVのレベルの分解能を有する電気回路)を用いる必要がある。この場合、非常に高いレベルの技術とコストが必要となる。これに対し、実際に撮影された画像に基づいて、光走査部の時間差を取得(推測)することで、光走査部の時間差を高い精度で取得することが可能である。従って、受光素子による単位時間当たりの受光信号の取得回数を高くする場合(例えば、100kHz以上とする場合)に、本開示の技術を適用すると、特に有効である。
【0014】
以下で説明する実施形態では、光を走査させることで被検眼の組織の画像を撮影する眼科撮影装置として、眼底を撮影するOCT装置を例示する。しかし、本開示で例示する技術を適用できる眼科撮影装置は、眼底を撮影するOCT装置に限定されない。例えば、眼底の二次元正面画像を撮影するレーザ走査型検眼装置(SLO)、および、被検眼の前眼部を撮影するOCT装置等、光走査部によって光を走査させることで組織を撮影する種々の眼科撮影装置に、本開示で例示する技術を適用できる。
【0015】
以下で説明する実施形態では、光走査部として2つのガルバノスキャナが用いられる。しかし、光走査部は、光を撮影対象(例えば、被検眼の組織)上で走査する光走査部であればよく、ガルバノスキャナに限定されない。例えば、光走査部として、非共振の態様で偏向部(ミラー等)を揺動させる種々の光走査部を用いることが可能である。非共振駆動によって揺動される光走査部は、前述したガルバノスキャナであってもよいし、ピエゾスキャナまたはMEMSスキャナ等であってもよい。また、光走査部として、非共振駆動によって偏向部が揺動される光走査部(例えばレゾナントスキャナ等)を用いることも可能である。また、眼科撮影装置には、光走査部が複数設けられていてもよいし、1つだけ設けられていてもよい。
【0016】
なお、画像撮影ステップでは、静止状態の物体(例えば模型眼等)を撮影対象として撮影された画像であってもよい。この場合、画像の撮影中に撮影対象が動かないので、撮影対象の動きの影響が抑制された高い精度の光走査部の時間差が取得され易い。また、撮影対象とされる物体には、撮影対象におけるスケールを示す形状(例えば、一定間隔毎に付与されたメモリ等)、および、時間差を取得するための基準となる基準部位を示す形状の少なくともいずれかが形成されていてもよい。この場合、制御部は、実際に撮影された撮影対象のスケール、および基準部位の少なくとも一方に基づいて、より高い精度で光走査部の時間差を取得することができる。ただし、画像撮影ステップでは、被検眼の組織を撮影対象とすることも可能である。
【0017】
また、画像撮影ステップ、位置情報取得ステップ、および時間差取得ステップ等を実行するタイミングも適宜選択できる。例えば、眼科撮影装置が工場から出荷される前に、画像撮影ステップ、位置情報取得ステップ、および時間差取得ステップ等が実行されてもよい。この場合、眼科撮影装置が工場から出荷された以後の撮影動作が、各々の光走査部の時間差に応じた適切な撮影動作に調整される。また、眼科撮影装置の各種メンテナンス時、または、光走査部の修理時等に、画像撮影ステップ、位置情報取得ステップ、および時間差取得ステップ等が実行されてもよい。
【0018】
画像撮影ステップでは、制御部は、同一の撮影対象の同一位置に、異なる走査速度で光を複数回走査させることで、光の走査速度が互いに異なる複数の画像を撮影してもよい。位置情報取得ステップでは、制御部は、画像撮影ステップにおいて撮影された、光の走査速度が互いに異なる複数の画像間の、光走査部による光の走査方向における位置ずれを取得してもよい。時間差取得ステップでは、制御部は、位置ずれに基づいて推測される光走査部の時間差を取得してもよい。
【0019】
光走査部の走査速度を増加させる程、光走査部の動作開始時の時間差に起因する開始位置のずれが大きくなる。つまり、推測された光走査部の動作開始時の時間差と、実際の光走査部の時間差のずれが一定である場合、走査速度が小さければ、前述した開始位置のずれは僅かであるが、走査速度が大きければ、開始位置のずれは大きくなる。従って、同一の撮影対象の同一位置について、走査速度を変更して複数の画像が撮影されれば、撮影された複数の画像の位置ずれ(例えば、開始位置のずれ等)に基づいて、実際の光走査部の動作開始時の時間差を推測することができる。
【0020】
以上説明した新たな知見に基づき、本実施形態の眼科撮影装置は、複数の画像間の位置ずれに基づいて推測される光走査部の時間差を取得し、取得した時間差に基づいて画像の撮影動作を制御してもよい。この場合、眼科撮影装置は、光走査部の動作開始時の時間差の影響を抑制して、適切に画像を撮影することができる。
【0021】
位置ずれ取得ステップにおいて複数の画像間の位置ずれを取得するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、複数の画像間の各々の部位が合致するように、複数の画像の位置合わせを行うことで、位置合わせを行った複数の画像の位置ずれを検出してもよい。複数の画像の位置合わせには、公知の画像処理等が利用されてもよい。また、制御部は、複数の画像間の各々の部位を合致させるための、ユーザによる画像の位置合わせの指示を入力し、入力された指示に応じて位置合わせを実行してもよい。また、複数の画像間の位置ずれは、複数の画像を把握したユーザによって入力されてもよい。制御部は、ユーザによって入力された位置ずれを取得してもよい。
【0022】
複数の画像間の位置ずれは、位置ずれの方向を示す情報と、位置ずれの量を示す情報を含んでいてもよい。位置ずれの量は、例えば、走査ライン上における画像信号の取得位置の数(ポイント数または画素数)、または距離等のいずれかであってもよい。
【0023】
時間差取得ステップにおいて光走査部の時間差を取得するための具体的な方法も、適宜選択できる。例えば、制御部は、複数の画像間の位置ずれと、単位時間当たりの受光信号の取得回数と、仮設定時間差に基づいて、光走査部の動作開始時の時間差を推測してもよい。仮設定時間差とは、画像撮影ステップにおいて複数の画像が撮影される際に、光走査部の時間差として仮に設定された時間である。つまり、画像撮影ステップでは、制御部は、光走査部への動作の実行の指令を開始してから、画像を構成するための受光信号の取得を開始するまでの待機時間(以下、「信号取得待機時間」という)を、光の移動時間と仮設定時間差の和として撮影を実行する。光の移動時間とは、光走査部によって走査される光の位置が、光走査部の駆動開始時の位置(つまり、動作開始時の時間差が経過した時点の位置)から、撮影開始位置に到達するまでに要する時間である。仮設定時間差が、光走査部の実際の時間差と一致していれば、基本的には複数の画像間の位置ずれは生じ難い。例えば、制御部は、単位時間当たりの受光信号の取得回数から、走査ライン上における各々の画像信号を取得するために必要な時間(便宜上、「露光時間」と言う)を算出してもよい。制御部は、複数の画像間の位置ずれのポイント数と露光時間を掛けた値を、複数の画像を撮影した際の仮設定時間差に対して、画像間の位置ずれの方向に応じて加算または減算することで、光走査部の時間差の推測値を取得してもよい。なお、仮設定時間差をゼロとして画像撮影ステップを実行することも可能である。
【0024】
画像撮影ステップでは、制御部は、光走査部による光の走査速度と、受光素子による単位時間当たりの受光信号の取得回数を変更して、同一の撮影対象の同一位置における複数の画像を撮影してもよい。仮に、単位時間当たりの受光信号の取得回数を変更せずに、光の走査速度のみを変更して複数の画像を撮影すると、撮影された複数の画像間で、走査ライン上における画像信号の取得数(ポイント数)の差が大きくなる。その結果、撮影された複数の画像間の位置ずれが検出され難くなる可能性もある。一方で、複数の画像の各々を撮影する際に、光走査部による光の走査速度に加えて、受光素子による単位時間当たりの受光信号の取得回数も変更することで、複数の画像間のポイント数に差が生じることが抑制される。従って、撮影された複数の画像間の位置ずれが、さらに検出され易くなる。その結果、光走査部の時間差の推測精度がさらに向上し易くなる。
【0025】
光走査部の走査速度と、受光素子による単位時間当たりの受光信号の取得回数(以下、纏めて「走査レート」という)の具体的な変更方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、走査速度を大きくする場合には単位時間当たりの受光信号の取得回数も大きくする一方で、走査速度を小さくする場合には単位時間当たりの受光信号の取得回数も小さくして、複数の画像を撮影してもよい。この場合、撮影される複数の画像間のポイント数の差が小さくなる。さらに、走査速度を大きくする場合に、単位時間当たりの受光信号の取得回数も大きくすることで、光走査部の時間差を推測する際の時間分解能が向上する。その結果、光走査部の時間差の推測精度がさらに向上し易くなる。
【0026】
詳細には、画像撮影ステップにおいて撮影される複数の画像の、各々の走査ライン上における画像信号の取得数(ポイント数)は、同一とされてもよい。この場合、画像撮影ステップでは、光の走査速度と単位時間当たりの受光信号の取得回数を比例させつつ、走査レートを変更することで、複数の画像が撮影されてもよい。この場合、異なる走査レートで撮影された複数の画像の各々のポイント数(例えば解像度等)が一致する。その結果、ポイント数が異なる複数の画像が比較される場合に比べて、複数の画像間の位置ずれが、さらに正確に検出され易くなる。よって、光走査部の時間差の推測精度がさらに向上し易くなる。
【0027】
ただし、単位時間当たりの受光信号の取得回数は変えずに、走査速度だけ変えて複数の画像を撮影した場合でも、信号取得待機時間と光走査部の時間差がずれていれば、撮影された複数の画像間の位置ずれは生じる。従って、走査速度だけを変えて複数の画像を撮影することで、光走査部の時間差の推測結果を得ることも可能である。
【0028】
制御部は、画像撮影ステップ、位置情報取得ステップ、および時間差取得ステップのサイクルを複数回実行してもよい。2回目以降の画像撮影ステップでは、制御部は、前回の時差取得ステップにおいて取得された時間差を、光走査部の仮の時間差に設定して、複数の画像を撮影してもよい。撮影制御ステップでは、制御部は、位置情報取得ステップにおいて取得された位置ずれが最小となった際に、時間差取得ステップにおいて取得された時間差に基づいて、撮影動作を制御してもよい。この場合、光走査部の時間差を推測するための処理が繰り返されることで、時間差の推測精度が向上する。
【0029】
なお、制御部は、光走査部の動作開始時の時間差を、1枚の画像に基づいて取得(推測)することも可能である。例えば、制御部は、画像撮影ステップにおいて、静止状態の物体(例えば模型眼等)を撮影対象として画像を撮影してもよい。位置情報取得ステップでは、制御部は、撮影対象における特定部位(例えば、撮影対象の物体に形成された基準部位等)が撮影される予定の画像上の位置と、実際に撮影された画像上の特定部位の位置の間の、光の走査方向における位置ずれを取得してもよい。時間差取得ステップでは、制御部は、取得した位置ずれに基づいて推測される光走査部の時間差を取得してもよい。この場合、1枚の画像に基づいて、光走査部の時間差が適切に取得される。なお、前述したように、撮影対象となる物体には、撮影対象におけるスケールを示す形状(例えば、一定間隔毎に付与されたメモリ等)が形成されていてもよい。この場合、光走査部の時間差が、画像に写るスケールに基づいて適切に取得され易くなる。前述した基準部位は、スケールを示す形状の少なくとも一部であってもよいし、スケールを示す形状とは異なる部位であってもよい。
【0030】
眼科撮影装置は、複数の光走査部を備えていてもよい。制御部は、画像撮影ステップ、位置情報取得ステップ、および時間差取得ステップにおいて、複数の光走査部の各々の動作開始時の時間差を取得してもよい。制御部は、撮影制御ステップにおいて、推測された複数の光走査部の各々の時間差に基づいて、複数の光走査部および受光素子による画像の撮影動作を制御してもよい。眼科撮影装置は、複数の光走査部を備えることで、組織上の適切な位置に、適切な方向で光を走査させることができる。一方で、複数の光走査部の各々の動作開始時の時間差が異なる場合等もあるので、複数の光走査部の各々が適切に制御されなければ、画像の撮影精度(例えば、撮影位置の精度)が低下することもある。これに対し、複数の光走査部の各々の時間差が推測され、推測された時間差に基づいて撮影動作が制御されることで、複数の光走査部を用いる場合でも適切に画像が撮影される。
【0031】
時間差取得ステップにおいて取得された複数の時間差に、最も長い時間差である第1光走査部の第1時間差と、第1時間差よりも短い時間差である第2光走査部の第2時間差が含まれている場合を想定する。制御部は、第2光走査部への動作の実行の指令を開始するタイミングを、第1光走査部への動作の実行の指令を開始した以後、第1時間差と第2時間差の差分が経過したタイミングに設定してもよい。この場合、第1光走査部の第1時間差が経過するタイミングと、第2光走査部の第2時間差が経過するタイミングが、同じタイミングとなる。その結果、複数の光走査部を用いる場合でも、予定されていた位置の画像が適切に撮影され易くなる。
【0032】
時間差取得ステップにおいて取得された複数の時間差に、最も長い時間差である第1光走査部の第1時間差と、第1時間差よりも短い時間差である第2光走査部の第2時間差が含まれている場合を想定する。制御部は、走査される光の位置が、受光信号の取得を開始する予定位置に到達するまでの予備走査の時間を、第1時間差と第2時間差の差分だけ第2光走査部の方が第1光走査部よりも長くなるように設定してもよい。制御部は、第1光走査部への動作の実行の指令を開始するタイミングと、第2光走査部への動作の実行の指令を開始するタイミングを一致させてもよい。この場合、眼科撮影装置は、第1光走査部と第2光走査部に対して、動作の実行の指令を同時に開始しつつ、予定されている位置の画像を適切に撮影することができる。
【0033】
<実施形態>
以下、本開示に係る典型的な実施形態の1つについて説明する。一例として、本実施形態の眼科撮影装置1は、被検眼Eの眼底組織を撮影対象(被検体)とし、眼底組織の二次元断層画像、三次元断層画像、OCTアンジオグラフィー(OCTアンジオデータ)、二次元正面画像(例えば、測定光の光軸に沿う正面方向から組織を見た場合の、組織の三次元断層画像に基づいて生成されるEnface画像)等の少なくともいずれかを撮影することが可能なOCT装置である。ただし、前述したように、本開示で例示する技術を適用できる眼科撮影装置は、眼底組織を撮影するOCT装置に限定されない。また、被検眼E以外の生体組織(例えば、皮膚、消化器、脳等)を撮影する撮影装置にも、本開示で例示する技術を適用できる。なお、OCT画像とは、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)の原理に基づいて撮影される画像である。
【0034】
(眼科撮影装置の概略構成)
図1を参照して、本実施形態の眼科撮影装置1の概略構成について説明する。本実施形態の眼科撮影装置1は、被検眼EのOCT画像を撮影する。眼科撮影装置1は、OCT光学系10と制御ユニット30を備える。OCT光学系10は、光源(OCT光源)11、カップラー(光分割器)12、測定光学系13、参照光学系20、受光素子22、および正面観察光学系23を備える。
【0035】
光源11は、画像を撮影するための光(本実施形態ではOCT光)を出射する。カップラー12は、光源11から出射された光を、測定光と参照光に分割する。また、本実施形態のカップラー12は、被検体(本実施形態では被検眼Eの眼底組織)によって反射された測定光と、参照光学系20によって生成された参照光を合波して干渉させる。つまり、本実施形態のカップラー12は、OCT光を測定光と参照光に分岐する分岐光学素子と、測定光の反射光と参照光を合波する合波光学素子を兼ねる。なお、分岐光学素子および合波光学素子の少なくともいずれかの構成を変更することも可能である。例えば、カップラー以外の素子(例えば、サーキュレータ、ビームスプリッタ等)が使用されてもよい。
【0036】
測定光学系13は、カップラー12によって分割された測定光を被検体に導くと共に、被検体によって反射された測定光をカップラー12に戻す。測定光学系13は、光走査部14、照射光学系17、およびフォーカス調整部18を備える。光走査部14は、駆動部15によって駆動されることで、測定光の光軸に交差する二次元方向に測定光を走査させることができる。本実施形態では、互いに異なる方向に測定光を偏向させることが可能な2つのガルバノミラーが、光走査部14として用いられている。光走査部14の詳細については、
図2を参照して後述する。照射光学系17は、光走査部14よりも光路の下流側(つまり被検眼E側)に設けられており、測定光を被検眼Eの組織に照射する。フォーカス調整部18は、OCT光学系10のフォーカス位置を、OCT光学系10の測定光の光軸方向(つまり、組織の深さ方向)に調整する。一例として、本実施形態のフォーカス調整部18は、照射光学系17が備える光学部材(例えばレンズ)を測定光の光軸に沿う方向に移動させることで、測定光のフォーカスを調整する。
【0037】
参照光学系20は、参照光を生成してカップラー12に戻す。本実施形態の参照光学系20は、カップラー12によって分割された参照光を反射光学系(例えば、参照ミラー)によって反射させることで、参照光を生成する。しかし、参照光学系20の構成も変更できる。例えば、参照光学系20は、カップラー12から入射した光を反射させずに透過させて、カップラー12に戻してもよい。参照光学系20は、測定光と参照光の光路長差を変更する光路長差調整部21を備える。本実施形態では、参照ミラーが光軸方向に移動されることで、光路長差が変更される。なお、光路長差を変更するための構成は、測定光学系13の光路中に設けられていてもよい。
【0038】
受光素子22は、光走査部14によって走査された光が照射された組織からの光を受光する。詳細には、本実施形態の受光素子22は、カップラー12によって生成された測定光と参照光の干渉光を受光することで、干渉信号を検出する。本実施形態では、フーリエドメインOCTの原理が採用されている。フーリエドメインOCTでは、干渉光のスペクトル強度(スペクトル干渉信号)が受光素子22によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって複素OCT信号が取得される。フーリエドメインOCTの一例として、Spectral-domain-OCT(SD-OCT)、Swept-source-OCT(SS-OCT)等を採用できる。また、例えば、Time-domain-OCT(TD-OCT)等を採用することも可能である。
【0039】
本実施形態では、SD-OCTが採用されている。SD-OCTの場合、例えば、光源11として低コヒーレント光源(広帯域光源)が用いられると共に、干渉光の光路における受光素子22の近傍には、干渉光を各周波数成分(各波長成分)に分光する分光光学系(スペクトロメータ)が設けられる。SS-OCTの場合、例えば、光源11として、出射波長を時間的に高速で変化させる波長走査型光源(波長可変光源)が用いられる。この場合、光源11は、ファイバーリング共振器、および波長選択フィルタを備えていてもよい。波長選択フィルタには、例えば、回折格子とポリゴンミラーを組み合わせたフィルタ、および、ファブリー・ペローエタロンを用いたフィルタ等がある。
【0040】
正面観察光学系23は、被検体の組織(本実施形態では被検眼Eの眼底)の正面画像を撮影するために設けられている。本実施形態における正面画像とは、OCTの測定光の光軸に沿う方向(正面方向)から組織を見た場合の二次元の画像である。正面観察光学系23の構成には、例えば、走査型レーザ検眼鏡(SLO)、眼底カメラ、および、二次元の撮影範囲に赤外光を一括照射して正面画像を撮影する赤外カメラ等の少なくともいずれかの構成を採用できる。また、本実施形態の眼科撮影装置1は、組織の三次元OCTデータを取得し、測定光の光軸に沿う方向(正面方向)から組織を見た場合の画像(所謂「Enface画像」)を、正面画像として取得してもよい。Enface画像が取得される場合、正面観察光学系23は省略されてもよい。つまり、OCT光学系10が正面観察光学系を兼用してもよい。
【0041】
制御ユニット30は、眼科撮影装置1の各種制御を司る。制御ユニット30は、CPU31、RAM32、ROM33、および不揮発性メモリ(NVM)34を備える。CPU31は各種制御を行うコントローラ(制御部)である。RAM32は各種情報を一時的に記憶する。ROM33には、CPU31が実行するプログラム、および各種初期値等が記憶されている。NVM34は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。後述する眼科撮影制御処理(
図4参照)を実行するための眼科撮影制御プログラムは、NVM34に記憶されていてもよい。
【0042】
制御ユニット30には、マイク36、モニタ37、および操作部38が接続されている。マイク36は音を入力する。モニタ37は、各種画像を表示する表示部の一例である。操作部38は、ユーザが各種操作指示を眼科撮影装置1に入力するために、ユーザによって操作される。操作部38には、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、フットスイッチ等の種々のデバイスを用いることができる。なお、マイク36に音が入力されることで各種操作指示が眼科撮影装置1に入力されてもよい。この場合、CPU31は、入力された音に対して音声認識処理を行うことで、操作指示の種類を判別してもよい。
【0043】
本実施形態では、OCT光学系10および制御ユニット30が1つの筐体に内蔵された一体型の眼科撮影装置1を例示する。しかし、眼科撮影装置1は、筐体が異なる複数の装置を備えていてもよいことは言うまでもない。例えば、眼科撮影装置1は、OCT光学系10を内蔵する光学装置と、光学装置に有線または無線で接続されるPCとを備えていてもよい。この場合、光学装置が備える制御部とPCの制御部が、共に眼科撮影装置1の制御ユニット30として機能してもよい。
【0044】
(光走査部)
図2を参照して、本実施形態の光走査部14について詳細に説明する。本実施形態の眼科撮影装置1は、第1光走査部14Xと第2光走査部14Yを備える。第1光走査部14Xおよび第2光走査部14Yは、共に、偏向部4(4X,4Y)を非共振駆動によって揺動回転させることで、組織上で光を走査する。非共振駆動される光走査部14は、駆動信号の大きさに応じて偏向部による光の振れ角を厳密に制御できるという特定を有する。一例として、本実施形態の第1光走査部14Xおよび第2光走査部14Yには、共にガルバノスキャナが用いられている。しかし、光走査部として、ガルバノスキャナ以外のデバイス(例えば、ピエゾスキャナまたはMEMSスキャナ等)が用いられてもよい。少なくともいずれかの光走査部に、共振駆動されるデバイス(例えば、レゾナントスキャナ等)が用いられてもよい。
【0045】
本実施形態では、第1光走査部14Xの偏向部4Xの揺動軸はY方向に延びており、偏向部4XはY方向に交差(本実施形態では垂直に交差)するX方向に光を走査する。第2光走査部14Yの偏向部4Yの揺動軸はX方向に延びており、偏向部4YはY方向に光を走査する。その結果、第1光走査部14Xおよび第2光走査部14Yを経た光は、被検眼Eの組織上で二次元方向に走査される。
【0046】
第1光走査部14Xの偏向部4Xには、揺動軸を介して駆動部15Xが接続されている。駆動部15Xには、偏向部4Xを回転(揺動)させるアクチュエータ(例えばモータ等)と、偏向部4Xの位置(角度)を検出するポテンショメータが内蔵されている。同様に、第2光走査部14Yの偏向部4Yには、揺動軸を介して駆動部15Yが接続されている。駆動部15Yには、偏向部4Yを回転(揺動)させるアクチュエータと、偏向部4Yの位置(角度)を検出するポテンショメータが内蔵されている。なお、駆動部15X,駆動部15Yの各々には、アクチュエータによる偏向部4X,4Yの駆動を実際に制御するドライバが含まれている。ドライバは、CPU31から印加される駆動信号に従って、アクチュエータの駆動を制御する。
【0047】
CPU31は、第1光走査部14Xの駆動部15X、および第2光走査部14Yの駆動部15Yの各々に駆動信号を印加する。駆動部15(15X,15Y)は、印加された駆動信号の大きさに応じて、偏向部4(4X,4Y)による光の振れ角(つまり、偏向部4X,4Yの角度)を厳密に制御する。また、駆動部15X,15Yの各々のドライバは、ポテンショメータによって取得された偏向部4X,4Yの位置(角度)を示すフィードバック信号に基づいて偏向部4X,4Yの駆動を制御することで、より正確に第1光走査部14Xおよび第2光走査部14Yを駆動させることができる。
【0048】
(光走査部の動作開始時の時間差)
図3を参照して、光走査部14の動作開始時の時間差が画像の撮影に与える影響について説明する。
図3は、走査レートを250kHzと65kHzに変更しつつ、同一の撮影対象の同一位置の二次元断層画像を撮影する場合の、光走査部14に印加される駆動信号の大きさと、実際の光走査部14の角度を時間経過と共に示すグラフの一例である。
【0049】
図3では、光走査部14への動作の実行の指令(駆動信号の印加)を開始するタイミング(
図3の「動作指令開始」)、指令に応じて光走査部14の動作が実際に実行されるタイミング(
図3の「動作開始」)、および、光走査部14によって走査された光が実際に撮影開始予定位置に到達するタイミング(
図3の「予定位置到達」)を、2つのグラフ間で一致させている。また、
図3に示すグラフは、光走査部14の動作開始時の時間差が撮影に与える影響の理解を容易にするために模式的に示されるものであり、実際のグラフと厳密に合致するとは限らない。
【0050】
なお、走査レートとは、光走査部14の走査速度と、受光素子22による単位時間当たりの受光信号の取得回数を示す。本実施形態では、光走査部14による光の走査速度を大きくする程、単位時間当たりの受光信号の取得回数も大きくすることで、走査レートを上げて撮影時間を短縮する。詳細には、本実施形態では、光の走査速度と単位時間当たりの受光信号の取得回数を比例させつつ、走査レートを変更する。その結果、走査レートを変更しつつ、同一位置で複数の画像を撮影する場合には、光が走査される走査ライン上における画像信号の取得数(ポイント数:本実施形態では、走査ライン上で撮影されるAスキャン画像の数)は、一定となる。本実施形態では、便宜的に、単位時間当たりの受光信号の取得回数(単位:kHz)のみによって走査レートを示すものとする。
図3に示す例では、走査レートを250kHzとする場合(
図3の上のグラフの場合)、各々のポイント(本実施形態では、各々のAスキャン画像の撮影位置)において受光信号を取得するために要する時間(便宜上「露光時間」という)は、4μsとなる。また、走査レートを65kHzとする場合(
図3の下のグラフの場合)、各々のポイントにおいて受光信号を取得するために要する露光時間は、約15.4μsとなる。
図3では、各々のAスキャン画像を撮影するために受光信号を取得する時間を、複数の縦長の矩形で示している。
【0051】
光走査部14を駆動させる際には、光走査部14への動作の実行の指令を開始してから、指令に応じて光走査部14の動作が実際に実行されるまでの時間差が必ず発生する。
図3に示す例では、「動作指令開始」から「動作開始」までの時間が、光走査部14の動作開始時の時間差となる。眼科撮影装置1では、適切な位置の画像を撮影するためには、光走査部14によって走査された光が撮影開始予定位置に到達したタイミングで、受光信号の取得が開始される必要がある。
【0052】
例えば、光走査部14への動作の実行の指令を開始してから、画像を構成するための受光信号の取得を開始するまでの待機時間(以下、「信号取得待機時間」という)が、光の移動時間と、光走査部14の動作開始時の正確な時間差の和と一致すれば、光が撮影開始予定位置に到達したタイミングで受光信号の取得が開始される。その場合、
図3に示すグラフでは、最初のAスキャン画像の撮影タイミングと、光走査部14によって走査された光が実際に撮影開始予定位置に到達するタイミング(
図3の「予定位置到達」)が一致する。なお、光の移動時間とは、光走査部14によって走査される光の位置が、光走査部14の駆動開始時の位置(つまり、光走査部14への動作の実行の指令を開始してから、光走査部14の時間差が経過した時点の位置)から、撮影開始予定位置に到達するまでに要する時間である。
【0053】
しかし、撮影の際に用いられた光走査部14の時間差が、実際の光走査部14の時間差からずれていると、画像を構成するための受光信号の取得開始位置(
図3に示す例では、最初のAスキャン画像の撮影が行われる位置)が、適切な撮影開始予定位置からずれる。
図3に示す例では、走査レートを250kHzとした場合と65kHzとした場合の両方で、撮影の際に用いられた光走査部14の時間差が、実際の時間差よりも20μsだけ長かった。その結果、光走査部14によって走査された光が撮影開始予定位置に到達するよりも前に、画像を構成するための受光信号の取得が開始されている。よって、画像が撮影された位置が、当初予定されていた位置からずれている。
【0054】
(光走査部の動作開始時における時間差の推測方法)
以上のように、光走査部14の時間差を正確に推測することができれば、推測された時間差を考慮して撮影動作を制御することで、画像を構成するための受光信号の取得開始位置が、適切な撮影開始予定位置と一致する。その結果、目的の画像(予定していた位置の画像)が適切に撮影される。ここで、実際の受光信号の取得開始位置と、撮影開始予定位置のずれ(以下、「開始位置のずれ」という)が明らかになれば、光走査部14の時間差を高い精度で推測できる可能性がある。
【0055】
ここで、本願の発明者は、光走査部14の走査速度を増加させる程、光走査部14の動作開始時の時間差に起因する開始位置のずれが大きくなることに新たに着目した。つまり、撮影の際に用いられた時間差と実際の時間差の差分が一定である場合、走査速度が小さければ、前述した開始位置のずれは僅かであるが、走査速度が大きければ、開始位置のずれは大きくなる。
図3に示す例でも、走査速度を65kHzとして撮影した際には、適切な撮影開始予定位置からの、実際の受光信号の取得開始位置のずれは、約1ポイント分(
図3に示す例では、Aスキャン画像1つ分)に過ぎない。(撮影の際に用いられた時間差と実際の時間差のずれである20μs中に、露光時間約15.4μsが1回しか含まれないためである。)一方で、走査速度を250kHzとして撮影した際には、適切な撮影開始予定位置からの、実際の受光信号の取得開始位置のずれは、約5ポイント分(
図3に示す例では、Aスキャン画像5つ分)に増加する(撮影の際に用いられた時間差と実際の時間差のずれである20μs中に、露光時間4μsが5回含まれるためである。)従って、本実施形態の眼科撮影装置1は、同一の撮影対象の同一位置について、走査速度を変更して複数の画像を撮影し、撮影された複数の画像の位置ずれ(例えば、開始位置のずれ等)に基づいて、実際の光走査部14の時間差を推測する。その結果、光走査部14の時間差が撮影に与える影響が、適切に抑制される。
【0056】
本実施形態の眼科撮影装置1は、光走査部14の時間差を推測するために、光走査部14による光の走査速度と、受光素子22による単位時間当たりの受光信号の取得回数を共に変更して、同一の撮影対象の同一位置における複数の画像を撮影する。つまり、本実施形態の眼科撮影装置1は、走査速度を大きくする場合には単位時間当たりの受光信号の取得回数も大きくする一方で、走査速度を小さくする場合には単位時間当たりの受光信号の取得回数も小さくして、複数の画像を撮影する。この場合、撮影された複数の画像の間で、ポイント数(本実施形態では、走査ライン上で撮影されるAスキャン画像の数)に差が生じることが抑制される。
【0057】
詳細には、本実施形態の眼科撮影装置1は、光走査部14の時間差を推測する際に、光の走査速度と単位時間当たりの受光信号の取得回数を比例させつつ、走査レートを変更することで、複数の画像を撮影する。その結果、異なる走査レートで撮影された複数の画像の各々のポイント数(本実施形態ではAスキャン画像の数)が一致する。従って、ポイント数が異なる複数の画像が比較される場合に比べて、複数の画像間の位置ずれが、さらに正確に検出され易くなる。よって、光走査部14の時間差の推測精度がさらに向上し易くなる。
【0058】
同一の撮影対象の同一位置について撮影された複数の画像の位置ずれに基づいて、光走査部14の時間差を推測するための具体的な方法の一例について、さらに説明する。本実施形態の眼科撮影装置1の制御部(本実施形態ではCPU31)は、複数の画像間の位置ずれと、単位時間当たりの受光信号の取得回数と、仮設定時間差に基づいて、光走査部14の時間差を推測する。仮設定時間差とは、同一位置の複数の画像が撮影される際に、光走査部14の時間差として仮に設定された時間である。制御部は、光走査部14への動作の実行の指令を開始してから、画像を構成するための受光信号の取得を開始するまでの待機時間(以下、「信号取得待機時間」という)を、光の移動時間と仮設定時間差の和として撮影を実行する。前述したように、光の移動時間とは、光走査部14によって走査される光の位置が、光走査部14の駆動開始時の位置から、撮影開始予定位置に到達するまでに要する時間である。制御部は、単位時間当たりの受光信号の取得回数から、走査ライン上における各々のポイントで画像信号を取得するために必要な時間(露光時間)を算出する。制御部は、複数の画像間の位置ずれのポイント数と露光時間を掛けた値を、複数の画像を撮影した際の仮設定時間差に対して、画像間の位置ずれの方向に応じて加算または減算することで、光走査部14の時間差の推測値を取得する。なお、仮設定時間差をゼロとして同一位置の複数の画像を撮影することも可能である。
【0059】
図3に示す例では、仮設定時間差を250μsとしつつ、走査レートを250kHzと65kHzに変更して、同一位置における2つの画像が撮影されている。撮影された2つの画像の位置合わせが行われると、2つの画像間の位置ずれのポイント数(
図3に示す例では、位置ずれが生じているAスキャン画像の数)は、「4」となる。また、前述したように、走査レートを250kHzとした場合(つまり、光走査部14の時間差に起因する開始位置のずれが大きくなる走査レートで撮影を行った場合)の露光時間は、4μsである。従って、本実施形態では、位置ずれのポイント数である「4」に、大きい走査レートで撮影を行った場合の露光時間「4μs」を掛けた「16μs」が、仮設定時間差「250μs」と実際の時間差のずれとして推測される。さらに、仮設定時間差「250μs」に対して、2つの画像間の位置ずれの方向に応じて「16μs」が加算または減算されることで、光走査部14の時間差が推測される。
図3に示す例では、大きい走査レートで撮影された画像が、小さい走査レートで撮影された画像よりも、光走査部14によって走査される光が進む側にずれている。この場合、実際の時間差は、仮設定時間差よりも長かったと考えられるので、露光時間にポイント数を掛けた値が、仮設定時間差に加算される。一方で、大きい走査レートで撮影された画像が、小さい走査レートで撮影された画像よりも、光走査部14によって走査される光が進む側とは反対側にずれている場合もある。この場合、実際の時間差は、仮設定時間差も短かったと考えられるので、露光時間にポイント数を掛けた値が、仮設定時間差から減算される。
【0060】
(眼科撮影制御処理)
図4~
図6を参照して、本実施形態の眼科撮影装置1が実行する眼科撮影処理について説明する。眼科撮影制御処理は、例えば、眼科撮影装置1が工場で製造されて出荷される前に実行されてもよい。また、眼科撮影制御処理は、眼科撮影装置1の各種メンテナンス時、光走査部14の修理時、または交換時等に実行されてもよい。なお、本実施形態では、眼科撮影装置1に内蔵されたCPU31が、NVM34に記憶された眼科撮影制御プログラムに従って、
図4に示す眼科撮影制御処理を実行する。ただし、眼科撮影制御処理を実行する制御部は、眼科撮影装置1に内蔵されたコントローラに限定されない。例えば、眼科撮影装置1に接続されたデバイス(例えばパーソナルコンピュータ等)のコントローラが、眼科撮影制御処理を実行してもよい。また、複数のデバイスのコントローラ(例えば、眼科撮影装置1のCPU31と、パーソナルコンピュータのコントローラ等)が協働して、眼科撮影制御処理を実行してもよい。
【0061】
図4に示すように、本実施形態の眼科撮影制御処理では、複数の光走査部14の各々の動作開始時における時間差が取得される。その結果、眼科撮影装置1が複数の光走査部14を備える場合でも、適切に画像が撮影される。詳細には、眼科撮影制御処理では、第1光走査部14Xの時間差を取得する処理(S1~S6)と、第2光走査部14Yの時間差を取得する処理(S8~S13)が行われる。
【0062】
まず、CPU31は、第1光走査部14Xの仮設定時間差をデフォルト値に設定する(S1)。前述したように、仮設定時間差とは、光走査部14の動作開始時の時間差を取得するために画像を撮影する際の撮影動作の制御パラメータのうち、光走査部14の時間差のパラメータとして仮に設定される時間である。S1で設定されるデフォルト値は、適宜選択できる。例えば、光走査部14の製造メーカが提供する光走査部14の時間差の平均値等が、デフォルト値として採用されてもよい。
【0063】
CPU31は、第1光走査部14Xの走査速度(本実施形態では、前述した走査レート)を変更して、同一撮影対象の同一位置における複数の画像(本実施形態では2つの画像)を撮影する(S2)。S2における画像の撮影対象は、生体組織以外の静止状態の物体(例えば模型願等)である。詳細には、撮影対象とされる物体には、撮影対象におけるスケールを示す形状(例えば、一定間隔毎に付与されたメモリ等)、および、時間差を取得するための基準となる基準部位を示す形状の少なくともいずれかが形成されている。S2における画像の撮影方法の詳細については前述した通りである。なお、S2では、第2光走査部14Yを停止させつつ、第1光走査部14Xを駆動させて、複数の画像が撮影されることが望ましい。この場合、第2光走査部14Yの駆動が画像に与える影響が除外されるので、第1光走査部14Xの時間差がより正確に推測され易くなる。
【0064】
CPU31は、S2で撮影された複数の画像間の、第1光走査部14Xによる光の走査方向における位置ずれを、画像の位置に関する情報(位置情報)として取得する(S3)。例えば、CPU31は、複数の画像間の各々の部位が合致するように、複数の画像の位置合わせを行うことで、位置合わせを行った複数の画像の位置ずれを検出してもよい。複数の画像の位置合わせには、公知の画像処理等が利用されてもよい。また、CPU31は、複数の画像間の各々の部位を合致させるための、ユーザによる画像の位置合わせの指示を入力し、入力された指示に応じて位置合わせを実行してもよい。また、複数の画像間の位置ずれは、複数の画像を把握したユーザによって入力されてもよい。CPU31は、ユーザによって入力された位置ずれを取得してもよい。複数の画像間の位置ずれは、位置ずれの方向を示す情報と、位置ずれの量を示す情報を含んでいてもよい。本実施形態では、位置ずれの量は、走査ライン上における画像信号のポイント数(本実施形態ではAスキャン画像の数)で表現される。
【0065】
CPU31は、S3で取得された複数の画像間の位置ずれに基づいて推測される、第1光走査部14Xの動作開始時の時間差を取得する(S4)。位置ずれに基づいて光走査部14の時間差を推測するための方法の一例については、前述した通りである。なお、CPU31は、位置ずれに基づいて光走査部14の時間差を自ら推測することで、時間差を取得してもよい。つまり、CPU31は、複数の画像間の位置ずれに基づいて光走査部14の時間差を推測する推測処理(推測ステップ)を実行してもよい。また、CPU31は、位置ずれに基づいてユーザが推測した光走査部14の時間差を入力することで、時間差を取得してもよい。
【0066】
次いで、CPU31は、第1光走査部14Xの時間差の推測を完了させる条件が満たされたか否かを判断する(S5)。推測を完了させる条件も、適宜選択できる。例えば、S2~S4の処理が実行された回数が規定回数に達することが、推測の完了条件とされてもよい。推測の完了条件が満たされていなければ(S5:NO)、第1光走査部14Xの仮設定時間差が、S4で取得された最新の値(つまり、前回の時間差取得処理(S4)で取得された時間差)に設定されて(S6)、S2~S5の処理が繰り返される。つまり、本実施形態では、画像撮影処理(S2)、位置情報取得処理(S3)、および時間差取得処理(S4)が複数回実行される。後述する撮影制御処理(S14)では、位置情報取得処理(S3)において取得された位置ずれが最小となった際に、時間差取得処理(S4)で取得された第1光走査部14Xの時間差に基づいて、撮影動作の制御パラメータが設定される。その結果、時間差の推測精度が向上する。
【0067】
推測の完了条件が満たされていれば(S5:YES)、第2光走査部14Yの動作開始時の時間差を取得する処理(S8~S13)が行われる。S8~S13の処理と、前述したS1~S6の処理では、動作開始時の時間差の検出の対象とする光走査部14が異なるのみである。従って、S8~S13の詳細な説明は省略する。
【0068】
次いで、CPU31は、S1~S13で推測された光走査部14(詳細には、第1光走査部14Xと第2光走査部14Y)の動作開始時の時間差に基づいて、光走査部14および受光素子22による画像の撮影動作の制御パラメータを設定する(S14)。その結果、光走査部14の時間差の影響が抑制されて、適切に画像が撮影され易くなる。以下、
図5および
図6を参照して、推測された時間差に基づいて撮影動作を制御するための具体的な方法について説明する。
図5および
図6に示す例では、複数の光走査部14(第1光走査部14Xおよび第2光走査部14Y)の各々について推測された複数の時間差に、最も長い時間差である第1光走査部14Xの第1時間差と、第1時間差よりも短い第2光走査部14Yの第2時間差が含まれている。なお、
図5および
図6では、第1光走査部14Xのグラフの時間軸と、第2光走査部14Yの時間軸を一致させている。
【0069】
図5に示す例では、CPU31は、第2光走査部14Yへの動作の実行の指令を開始するタイミングを、第1光走査部14Xへの動作の実行の指令を開始した以後、第1時間差と第2時間差の差分が経過したタイミングに設定する。その結果、第1光走査部14Xの第1時間差が経過するタイミングと、第2光走査部14Yの第2時間差が経過するタイミング(つまり、2つの光走査部14の動作が実際に実行されるタイミング)が、同じタイミングとなる。よって、複数の光走査部14を用いる場合でも、予定されていた位置の画像が適切に撮影され易くなる。
【0070】
図6に示す例では、CPU31は、第1光走査部14Xおよび第2光走査部14Yによって走査される光の位置が、受光信号の取得を開始する予定位置に到達するまでの予備走査の時間を、第1時間差と第2時間差の差分だけ第2光走査部14Yの方が第1光走査部14Xよりも長くなるように設定する。また、CPU31は、第1光走査部14Xへの動作の実行の指令を開始するタイミングと、第2光走査部14Yへの動作の実行の指令を開始するタイミングを一致させる。その結果、眼科撮影装置1は、第1光走査部14Xと第2光走査部14Yに対して、動作の実行の指令を同時に開始しつつ、予定されている位置の画像を適切に撮影することができる。
【0071】
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。上記実施形態で例示した複数の技術の一部のみを採用することも可能である。
【0072】
なお、
図4のS2,S9で複数の画像を撮影する処理は、「画像撮影ステップ」の一例である。
図4のS3,S10で画像の位置に関する情報を取得する処理は、「位置情報取得ステップ」の一例である。
図4のS4,S11で光走査部14の動作開始時の時間差を取得する処理は、「時間差取得ステップ」の一例である。
図4のS14で画像の撮影動作を制御する処理は、「撮影制御ステップ」の一例である。
【符号の説明】
【0073】
1 眼科撮影装置
4(4X,4Y) 偏向部
11 光源
14(14X,14Y) 光走査部
15(15X,15Y) 駆動部
22 受光素子
31 CPU
34 NVM