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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052043
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】切開装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158482
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金藤 健
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK18
4C160KK36
4C160KL03
4C160MM32
(57)【要約】
【課題】生体組織を浅く切開し易い切開装置を提供する。
【解決手段】長手方向に延在し、前記長手方向に延在する内腔を有し、且つ前記内腔に連通する第1開口部を遠位部の外側面に有しているシャフトと、前記内腔に配置されており、且つ前記シャフトの側面視において前記第1開口部の近位端よりも近位側に位置し視認することができない第1領域と、前記側面視において前記第1開口部の近位端よりも遠位側に位置し視認することができる第2領域とを有している導電ワイヤと、前記シャフトの前記内腔において少なくとも一部が前記シャフトの周方向に回転する回転部材と、を有しており、前記側面視は、前記第1開口部の面積が最大となる向きに前記シャフトを向けたときの前記シャフトの側面視であり、前記回転部材は、前記少なくとも一部が前記周方向に回転することにより前記導電ワイヤの前記第2領域の少なくとも一部を前記側面視における視認者側に移動させる切開装置。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延在するシャフトであって、前記長手方向に延在する内腔を有し、且つ前記内腔に連通する第1開口部を遠位部の外側面に有しているシャフトと、
導電ワイヤであって、前記内腔に配置されており、且つ前記シャフトの側面視において前記第1開口部の近位端よりも近位側に位置し視認することができない第1領域と、前記側面視において前記第1開口部の近位端よりも遠位側に位置し視認することができる第2領域とを有している導電ワイヤと、
前記シャフトの前記内腔において少なくとも一部が前記シャフトの周方向に回転する回転部材と、
前記シャフトの近位端部に配置されているハンドルと、を有しており、
前記側面視は、前記第1開口部の面積が最大となる向きに前記シャフトを向けたときの前記シャフトの側面視であり、
前記回転部材は、前記少なくとも一部が前記周方向に回転することにより前記導電ワイヤの前記第2領域の少なくとも一部を前記側面視における視認者側に移動させる切開装置。
【請求項2】
前記導電ワイヤは、生体内の腱鞘、腱、または靱帯の少なくとも一部を切開するものである請求項1に記載の切開装置。
【請求項3】
前記導電ワイヤの前記第2領域は、前記内腔に配置されており前記側面視において前記第1開口部から視認することができる請求項1に記載の切開装置。
【請求項4】
前記回転部材の前記少なくとも一部は、第1線状部材を有しており、
前記第1線状部材は、
直線状部と、
前記直線状部の遠位部に位置し、前記直線状部に対して曲っており、且つ前記導電ワイヤの前記第2領域と接触している曲部と、を有している請求項1または2に記載の切開装置。
【請求項5】
前記回転部材は、前記第1線状部材を前記周方向に回転させる第1操作部材を前記直線状部の近位部に有している請求項4に記載の切開装置。
【請求項6】
前記回転部材の前記少なくとも一部は、前記内腔において前記周方向に回転し、且つ軸方向に延在する孔を有する柱体を有し、
前記導電ワイヤは、前記孔を貫通している請求項1または2に記載の切開装置。
【請求項7】
前記柱体の前記孔には、前記導電ワイヤの前記第2領域の一部が配置されている請求項6に記載の切開装置。
【請求項8】
前記シャフトの前記長手方向における前記第1開口部の長さをL1としたとき、
前記柱体は、前記第1開口部の近位端から近位側に前記長さL1離れた位置までの前記内腔の領域Aに前記柱体の遠位端が位置するように配置されている請求項6に記載の切開装置。
【請求項9】
前記シャフトの前記長手方向における前記第1開口部の長さをL1としたとき、
前記柱体は、前記第1開口部の遠位端から遠位側に前記長さL1離れた位置までの前記内腔の領域Bに前記柱体の近位端が位置するように配置されている請求項6に記載の切開装置。
【請求項10】
前記回転部材は、更に、遠位部が前記柱体に固定されている第2線状部材を有している請求項6に記載の切開装置。
【請求項11】
前記回転部材は、前記柱体の中心軸を中心に前記第2線状部材を回す第2操作部材を前記第2線状部材の近位部に有している請求項10に記載の切開装置。
【請求項12】
前記柱体は円柱体である請求項6に記載の切開装置。
【請求項13】
前記シャフトの前記第1開口部の近位端における径方向の断面の形状は、前記シャフトの中心軸から前記第1開口部の前記近位端の中心に向かう第1方向に短径を有し、且つ前記第1方向に垂直な垂直方向に長径を有する扁平状である請求項1または2に記載の切開装置。
【請求項14】
前記導電ワイヤは、更に、前記第2領域よりも遠位側に位置し、前記内腔に配置されており前記シャフトの側面視において視認することができない第3領域を有している請求項1または2に記載の切開装置。
【請求項15】
前記第3領域の少なくとも一部は、前記シャフトの内側面に固定されている請求項14に記載の切開装置。
【請求項16】
前記シャフトは、更に、前記内腔に連通し、前記第1開口部よりも遠位側に位置する第2開口部を前記外側面に有している請求項1または2に記載の切開装置。
【請求項17】
前記第1開口部と前記第2開口部の間の前記シャフトの前記外側面上に前記導電ワイヤの前記第2領域の一部が配置されている請求項16に記載の切開装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切開装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療の現場では、体内組織を切開するために高周波切開装置が用いられていた。このような切開装置として、例えば特許文献1には、電気絶縁性の可撓性チューブの先端近傍に長手方向に間隔をあけて一対の孔を形成して、上記可撓性チューブ内に挿通配置された導電ワイヤを上記一対の孔に通してその間の部分において上記可撓性チューブ外に配置し、上記導電ワイヤを手元側から牽引することにより上記可撓性チューブの先端部分が上記一対の孔の間で屈曲するようにした内視鏡用高周波切開具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-024346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような従来の切開装置では、導電ワイヤを手元側から牽引することにより、可撓性チューブを弓状に屈曲させ、患部を可撓性チューブと導電ワイヤの間に挟み込んでから高周波電流を通電することにより患部を切開することができる。しかし、本発明者の検討により、可撓性チューブを弓状に屈曲させる態様では生体組織を浅く切開し難い場合があることが分かった。本発明は上記の様な問題に着目してなされたものであって、その目的は、生体組織を浅く切開し易い切開装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することのできた本発明の実施の形態に係る切開装置は、以下の通りである。
[1]長手方向に延在するシャフトであって、前記長手方向に延在する内腔を有し、且つ前記内腔に連通する第1開口部を遠位部の外側面に有しているシャフトと、
導電ワイヤであって、前記内腔に配置されており、且つ前記シャフトの側面視において前記第1開口部の近位端よりも近位側に位置し視認することができない第1領域と、前記側面視において前記第1開口部の近位端よりも遠位側に位置し視認することができる第2領域とを有している導電ワイヤと、
前記シャフトの前記内腔において少なくとも一部が前記シャフトの周方向に回転する回転部材と、
前記シャフトの近位端部に配置されているハンドルと、を有しており、
前記側面視は、前記第1開口部の面積が最大となる向きに前記シャフトを向けたときの前記シャフトの側面視であり、
前記回転部材は、前記少なくとも一部が前記周方向に回転することにより前記導電ワイヤの前記第2領域の少なくとも一部を前記側面視における視認者側に移動させる切開装置。
【0006】
上記構成により、例えば第1開口部近傍を生体組織に押し当てた状態で、シャフトの内腔で回転部材の少なくとも一部を回転させることにより、回転部材がその回転に伴って導電ワイヤを生体組織側にわずかに移動させることができる。この状態で、例えば導電ワイヤに高周波電流を通電することにより生体組織を浅く切開することができる。このような切開装置は、腱鞘炎の患者に対する腱鞘の一部切開等の処置の際に有効である。
【0007】
実施の形態に係る切開装置は、以下の[2]~[17]のいずれかであることが好ましい。
[2]前記導電ワイヤは、生体内の腱鞘、腱、または靱帯の少なくとも一部を切開するものである[1]に記載の切開装置。
[3]前記導電ワイヤの前記第2領域は、前記内腔に配置されており前記側面視において前記第1開口部から視認することができる[1]または[2]に記載の切開装置。
[4]前記回転部材の前記少なくとも一部は、第1線状部材を有しており、
前記第1線状部材は、
直線状部と、
前記直線状部の遠位部に位置し、前記直線状部に対して曲っており、且つ前記導電ワイヤの前記第2領域と接触している曲部と、を有している[1]~[3]のいずれか一項に記載の切開装置。
[5]前記回転部材は、前記第1線状部材を前記周方向に回転させる第1操作部材を前記直線状部の近位部に有している[4]に記載の切開装置。
[6]前記回転部材の前記少なくとも一部は、前記内腔において前記周方向に回転し、且つ軸方向に延在する孔を有する柱体を有し、
前記導電ワイヤは、前記孔を貫通している[1]~[5]のいずれか一項に記載の切開装置。
[7]前記柱体の前記孔には、前記導電ワイヤの前記第2領域の一部が配置されている[6]に記載の切開装置。
[8]前記シャフトの前記長手方向における前記第1開口部の長さをL1としたとき、
前記柱体は、前記第1開口部の近位端から近位側に前記長さL1離れた位置までの前記内腔の領域Aに前記柱体の遠位端が位置するように配置されている[6]または[7]に記載の切開装置。
[9]前記シャフトの前記長手方向における前記第1開口部の長さをL1としたとき、
前記柱体は、前記第1開口部の遠位端から遠位側に前記長さL1離れた位置までの前記内腔の領域Bに前記柱体の近位端が位置するように配置されている[6]~[8]のいずれか一項に記載の切開装置。
[10]前記回転部材は、更に、遠位部が前記柱体に固定されている第2線状部材を有している[6]~[9]のいずれか一項に記載の切開装置。
[11]前記回転部材は、前記柱体の中心軸を中心に前記第2線状部材を回す第2操作部材を前記第2線状部材の近位部に有している[10]に記載の切開装置。
[12]前記柱体は円柱体である[6]~[11]のいずれか一項に記載の切開装置。
[13]前記シャフトの前記第1開口部の近位端における径方向の断面の形状は、前記シャフトの中心軸から前記第1開口部の前記近位端の中心に向かう第1方向に短径を有し、且つ前記第1方向に垂直な垂直方向に長径を有する扁平状である[1]~[12]のいずれか一項に記載の切開装置。
[14]前記導電ワイヤは、更に、前記第2領域よりも遠位側に位置し、前記内腔に配置されており前記シャフトの側面視において視認することができない第3領域を有している[1]~[13]のいずれか一項に記載の切開装置。
[15]前記第3領域の少なくとも一部は、前記シャフトの内側面に固定されている[14]に記載の切開装置。
[16]前記シャフトは、更に、前記内腔に連通し、前記第1開口部よりも遠位側に位置する第2開口部を前記外側面に有している[1]~[15]のいずれか一項に記載の切開装置。
[17]前記第1開口部と前記第2開口部の間の前記シャフトの前記外側面上に前記導電ワイヤの前記第2領域の一部が配置されている[16]に記載の切開装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生体組織を浅く切開し易い切開装置を提供すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施の形態に係る切開装置の側面図である。
図2図2は、図1のシャフトの遠位部の一部拡大図である。
図3図3は、図2のA-A断面図である。
図4図4は、回転部材を周方向に回転させたときの図2のA-A断面図である。
図5図5は、図2のB-B断面図である。
図6図6は、変形例の回転部材を有する図1のシャフトの遠位部の一部拡大図である。
図7図7は、第2の実施の形態に係る切開装置の側面図におけるシャフトの遠位部の一部拡大図である。
図8図8は、図7のC-C断面図である。
図9図9は、回転部材を周方向に回転させたときの図7のC-C断面図である。
図10図10は、第3の実施の形態に係る切開装置の側面図である。
図11図11は、図10のシャフトの遠位部の一部拡大図である。
図12図12は、図11のシャフトの内腔に配置された回転部材の柱体の斜視図である。
図13図13は、図11のD-D断面図である。
図14図14は、回転部材を周方向に回転させたときの図11のD-D断面図である。
図15図15は、変形例の回転部材を有する図11のD-D断面図である。
図16図16は、他の変形例の回転部材を有する図11のD-D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0011】
本発明の実施の形態に係る切開装置は、長手方向に延在するシャフトであって、長手方向に延在する内腔を有し、且つ内腔に連通する第1開口部を遠位部の外側面に有しているシャフトと、導電ワイヤであって、内腔に配置されており、且つシャフトの側面視において第1開口部の近位端よりも近位側に位置し視認することができない第1領域と、側面視において第1開口部の近位端よりも遠位側に位置し視認することができる第2領域とを有している導電ワイヤと、シャフトの内腔において少なくとも一部がシャフトの周方向に回転する回転部材と、シャフトの近位端部に配置されているハンドルと、を有しており、側面視は、第1開口部の面積が最大となる向きにシャフトを向けたときのシャフトの側面視であり、回転部材は、少なくとも一部が周方向に回転することにより導電ワイヤの第2領域の少なくとも一部を側面視における視認者側に移動させる。
【0012】
上記構成により、例えば第1開口部近傍を生体組織に押し当てた状態で、シャフトの内腔で回転部材の少なくとも一部を回転させることにより、回転部材がその回転に伴って導電ワイヤを生体組織側にわずかに移動させることができる。この状態で、例えば導電ワイヤに高周波電流を通電することにより生体組織を浅く切開することができる。このような切開装置は、腱鞘炎の患者に対する腱鞘の一部切開等の処置の際に有効である。
【0013】
以下では、図1図6を参照しながら、第1の実施の形態に係る切開装置について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る切開装置の側面図である。図2は、図1のシャフトの遠位部の一部拡大図である。図3は、図2のA-A断面図である。図4は、回転部材を周方向に回転させたときの図2のA-A断面図である。図5は、図2のB-B断面図である。図6は、変形例の回転部材を有する図1のシャフトの遠位部の一部拡大図である。
【0014】
図1に示す通り、第1の実施の形態に係る切開装置101は、シャフト20と、導電ワイヤ1と、回転部材10と、ハンドル30を有している。以下では、各部材毎に詳述する。
【0015】
図1に示す通り、シャフト20は、長手方向20Xに延在している。シャフト20は、長手方向20Xに延在する内腔20Lを有している。図2図3に示す通り、シャフト20の内腔20Lには、導電ワイヤ1が配置されている。これにより、導電ワイヤ1をシャフト20により保護することできる。シャフト20は、長手方向20Xに延在する他の内腔を有していてもよい。他の内腔としては、ガイドワイヤ挿入用の内腔、流体の流路用の内腔等が挙げられる。他の内腔から血液を吸引してもよいし、他の内腔から生理食塩水、ヒアルロン酸溶液、造影剤、薬剤等を体内に供給してもよい。またシャフト20は、複数の他の内腔を有していてもよい。
【0016】
シャフト20は、更に内腔20Lに連通する第1開口部21を遠位部20bの外側面20eに有している。第1開口部21が外側面20eに位置することにより、第1開口部21から導電ワイヤ1を露出させて、導電ワイヤ1を生体組織に線接触させ易くすることができる。外側面20eは、シャフト20の周方向20Cの外面である。また第1開口部21近傍を生体組織に押し当てることにより、第1開口部21内に生体組織を食い込ませることもできる。
【0017】
シャフト20の外側面20eにおける第1開口部21の形状は、円形、楕円形、多角形、または角丸多角形であることが好ましく、楕円形、4角形、または角丸4角形であることがより好ましく、楕円形、長方形、または角丸長方形であることが更に好ましい。これにより第1開口部21内に生体組織を食い込ませ易くなる。
【0018】
シャフト20の第1開口部21は、長手方向20Xに延在していることが好ましい。これにより導電ワイヤ1を生体組織に線接触させ易くすることができる。
【0019】
図2図5に示す通り、シャフト20の第1開口部21の近位端21aにおける径方向の断面の形状は、シャフト20の中心軸から第1開口部21の近位端21aの中心21cに向かう第1方向20Zに短径を有し、且つ第1方向20Zに垂直な垂直方向20Yに長径を有する扁平状であることが好ましい。当該断面は図2のB-B断面に相当する。シャフト20の断面が扁平状であることにより、第1開口部21を生体組織に押し当てる際にブレ難くなる。そのため長径は、短径の1.1倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2.0倍以上であることが更に好ましい。一方、長径は、短径の10倍以下であることが好ましく、7倍以下であることがより好ましく、5倍以下であることが更に好ましい。これにより長径の長さを低減できるため、体内にシャフト20を挿入する場合に挿入し易くなる。
【0020】
シャフト20の第1開口部21の周方向20Cの長さは、シャフト20の周方向20Cの長さの0.1倍以上の長さであることが好ましく、0.2倍以上の長さであることがより好ましい。これにより、第1開口部21内に生体組織を食い込ませ易くなる。一方、シャフト20の周方向20Cの長さの0.5倍以下であることが好ましく、0.4倍以下であることがより好ましい。これにより、シャフト20の第1開口部21近傍の剛性を向上することができる。
【0021】
図3に示す通り、導電ワイヤ1は、シャフト20の内腔20Lに配置されている。図1に示す通り、導電ワイヤ1は、シャフト20の側面視において第1開口部21の近位端21aよりも近位側に位置し視認することができない第1領域1pを有している。当該シャフト20の側面視は、第1開口部21の面積が最大となる向きにシャフト20を向けたときのシャフト20の側面視であり、図1図2が当該側面視に相当する。なお本書において視認とは、体外における視認を意味する。図3に示す通り、導電ワイヤ1の第1領域1pは、シャフト20の内腔20Lに配置されており、シャフト20により保護されている。これにより、所望の位置以外における導電ワイヤ1と生体組織の接触を回避することができる。
【0022】
シャフト20は、樹脂および/または金属を含むことが好ましい。樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シャフト20は、樹脂を含むチューブを有することが好ましい。またシャフト20は、異なる材料または同じ材料による積層構造を有していてもよい。シャフト20は、例えば金属からなるチューブ表面に樹脂が被覆されたものを有していてもよい。また、シャフト20は、複数のチューブが長手方向20Xに継ぎ合わされた構造を有していてもよい。この場合、複数のチューブは、それぞれ外径の大きさが異なっていてもよく、一方のチューブの端部が他方のチューブの内腔に配置されていてもよい。また、シャフト20は、複数のチューブが径方向に接合した構造を有していてもよい。また、シャフト20は、例えば近位端部20aにおいて分岐構造を有していてもよい。
【0023】
図2に示す通り、導電ワイヤ1は、更に、上記側面視において第1開口部21の近位端21aよりも遠位側に位置し視認することができる第2領域2pを有している。これら図1図2では、導電ワイヤ1の第2領域2pは、第1開口部21から露出しており剥き出しになっている。これにより、導電ワイヤ1を生体組織に接触させ易くすることができる。
【0024】
導電ワイヤ1は、生体内の腱鞘、腱、または靱帯の少なくとも一部を切開するものであることが好ましい。例えば、腱鞘炎では、指の使い過ぎ等の原因により腱鞘が肥厚して腱を圧迫して痛みを生じるが、このような肥厚した腱鞘を、導電ワイヤ1により浅く切開することにより症状を低減することができる。また例えば、肥厚した横手根靭帯に対しても同様に導電ワイヤ1により浅く切開することにより症状を低減することができる。
【0025】
導電ワイヤ1は、具体的には、高周波電流を通電することにより生体組織を切開できるものであることが好ましい。高周波電流の周波数は、100kHz以上、20MHz以下であることが好ましく、200kHz以上、5MHz以下であることがより好ましく、300kHz以上、1MHz以下であることが更に好ましい。
【0026】
図2図3に示す通り、導電ワイヤ1の第2領域2pは、内腔20Lに配置されており側面視において第1開口部21から視認することができることが好ましい。このように第2領域2pが内腔20Lに配置されている状態、即ちシャフト20よりも外側に第2領域2pが位置していない状態では、シャフト20を体内に挿入し易くなる。また第2領域2pが第1開口部21から視認できるように配置されていることにより、第2領域2pが剥き出しの状態となるため、第2領域2pが生体組織に接触し易くなる。
【0027】
図3に示す通り、導電ワイヤ1は、更に、第2領域2pよりも遠位側に位置し、内腔20Lに配置されておりシャフト20の側面視において視認することができない第3領域3pを有していることが好ましい。このような第3領域3pは、シャフト20により保護されているため、所望の位置以外における導電ワイヤ1と生体組織の接触を回避することができる。
【0028】
図3に示す通り、導電ワイヤ1の第3領域3pの少なくとも一部は、シャフト20の内側面20iに固定されていることが好ましい。具体的には、第3領域3pの遠位端部がシャフト20の内側面20iに固定されていることがより好ましい。これにより、導電ワイヤ1の垂直方向20Yのぶれを低減することができる。当該固定は直接固定であってもよく、間接固定であってもよい。
【0029】
直接固定の態様として、第3領域3pの少なくとも一部が、溶着、溶接、接着、ろう付け等により、シャフト20の内側面20iに固定されている態様が挙げられる。間接固定の態様として、第3領域3pの少なくとも一部が、例えば固定具5を介して、内側面20iに固定されている態様が挙げられる。この場合、固定具5の内部に導電ワイヤ1の遠位端部が固定され、シャフト20の内側面20iに固定具5が固定されていることが好ましい。固定具5は、溶着、溶接、接着、ろう付け等により内側面20iに固定されていてもよい。また固定具5は、内側面20iに食い込むようにして固定されていてもよい。この場合、固定具5は、多角柱、角錐台、円錐台、またはこれらが軸方向に連結したものを含んでいてもよい。また固定具5は円柱を含んでいてもよい。固定具5は、樹脂および/または金属を含むことが好ましく、金属を含むことがより好ましい。固定具5は、シャフト20と同じ素材を含むことが好ましく、同じ素材からなることがより好ましい。
【0030】
導電ワイヤ1は、樹脂および/または金属を含むことが好ましく、金属を含むことがより好ましく、金属からなることが更に好ましい。これにより、導電ワイヤ1は高周波電流を通電し易くなる。金属としては、例えば、ニッケルチタン合金、ステンレス、金、銀、銅、白金、ニッケル、鉄、チタン、アルミ、スズ、亜鉛、タングステン、またはこれらの合金が好ましく、ニッケルチタン合金、またはステンレスがより好ましい。ステンレスとして、SUS303、SUS304、SUS316等が挙げられる。また導電ワイヤ1は、金属線の一部に樹脂が被覆されているものであってもよい。例えば、金属線は第1領域1pおよび/または第3領域3pにおいて樹脂が被覆されていてもよい。
【0031】
導電ワイヤ1は、複数の単線が撚り合わされた撚り線であってもよいが、単線であることが好ましい。これにより生体組織を浅く切開し易くなる。単線の線径は、0.1mm以上、1.5mm以下であることが好ましい。これにより導電ワイヤ1の強度を維持しつつ生体組織を浅く切開し易くなる。また導電ワイヤ1は、長手方向20Xに複数のワイヤが継ぎ合わされた構造を有していてもよい。
【0032】
図3図4に示す通り、回転部材10は、シャフト20の内腔20Lにおいて少なくとも一部がシャフト20の周方向20Cに回転するように構成されている。更に、図4に示す通り、回転部材10は、少なくとも一部が周方向20Cに回転することにより導電ワイヤ1の第2領域2pの少なくとも一部を側面視における視認者側20Vに移動させるように構成されている。図3図4では、回転部材10は、導電ワイヤ1の第2領域2pの一部が回転部材10の上に配置された状態から回転することにより、導電ワイヤ1の第2領域2pを持ち上げるようにして視認者側20Vに移動させている。このような回転に伴って導電ワイヤ1を生体組織側にわずかに移動させることができるため、導電ワイヤ1により生体組織を浅く切開し易くなる。
【0033】
回転部材10の少なくとも一部がシャフト20の周方向20Cに回転する態様としては、回転部材10の少なくとも一部が、シャフト20の中心軸を中心に回転する態様、回転部材10の少なくとも一部の中心軸を中心に回転する態様等が挙げられる。このうち回転部材10の少なくとも一部の中心軸を中心に回転する態様が好ましい。回転部材10の少なくとも一部の中心軸としては、後述する線状部材の直線状部の中心軸、操作部材の中心軸、柱体の中心軸等が挙げられる。
【0034】
図3図4に示す通り、回転部材10の少なくとも一部は、第1線状部材11を有していることが好ましい。第1線状部材11は、直線状部11sと曲部11tとを有していることが好ましい。曲部11tは、直線状部11sの遠位部11sbに位置し、直線状部11sに対して曲っており、且つ導電ワイヤ1の第2領域2pと接触していることが好ましい。これにより、曲部11tを導電ワイヤ1の第2領域2pの支持部として機能させることができ、更に、直線状部11sを回転させることにより、曲部11tを介して導電ワイヤ1の第2領域2pを持ち上げることができる。更に、直線状部11sは、長手方向20Xに延在していることが好ましい。これにより直線状部11sは回転し易くなる。曲部11tは、長手方向20Xにおいて、第1開口部21の近位端から遠位端の間に位置することが好ましい。
【0035】
曲部11tは、直線状部11sに対して曲っていればよく、その形状は、例えば直線状、湾曲状、円状、螺旋状、またはこれらの組み合わせ形状であってもよい。図2に示すように曲部11tが直線状である場合、曲部11tの中心軸と直線状部11sの中心軸とのなす角度は、30度以上、150度以下であることが好ましく、60度以上、120度以下であることがより好ましく、80度以上、110度以下であることが更に好ましい。
【0036】
図6に示す通り、第1線状部材11は、複数の曲部11tを有していてもよい。これにより、第1線状部材11は、導電ワイヤ1の第2領域2pを支持し易くなり、回転により第2領域2pを持ち上げ易くなる。複数の曲部11tは直線状部11sの遠位部11sbに位置することが好ましい。複数の曲部11tは互いに平行に延在していることが好ましい。また複数の曲部11tは、それぞれ、垂直方向20Yに延在していることが好ましく、それぞれ、垂直方向20Yの一方側から他方側に向かって延在していることがより好ましい。
【0037】
図1に示す通り、回転部材10は、第1線状部材11を周方向20Cに回転させる第1操作部材11Cを直線状部11sの近位部11saに有していることが好ましい。第1操作部材11Cを回転させることにより、直線状部11sを周方向20Cに回転させ、これに伴って第1線状部材11を周方向20Cに回転させることができる。例えば、第1操作部材11Cを第1操作部材11Cの中心軸を中心に回転させることにより、直線状部11sを回転させることができる。この場合、図1に示す通り、直線状部11sの近位部11saは、近位部11saの中心軸が第1操作部材11Cの中心軸と一致するように第1操作部材11Cに固定されていることが好ましい。これにより、直線状部11sを定位置のまま回転させ易くすることができる。また図1に示す通り、第1操作部材11Cは、その中心軸がハンドル30の中心軸と一致しないように配置されていることが好ましい。これにより、シャフト20の中心軸から外れた位置に第1線状部材11を配置し易くなり、且つシャフト20の中心軸近傍に導電ワイヤ1を配置し易くなるため、第1線状部材11の回転により導電ワイヤ1の第2領域2pを持ち上げ易くすることができる。なお第1操作部材11Cは、直線状部11sの近位部11saに直接連結されていることが好ましいが、他の部材を介して間接的に連結されていてもよい。
【0038】
回転部材10の第1線状部材11は、樹脂および/または金属を含むことが好ましく、樹脂および金属を含むことがより好ましい。樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。第1線状部材11は、金属線を含むことが好ましく、金属線の表面に樹脂が被覆されたものであることがより好ましい。第1線状部材11は、単線を含んでいてもよく、複数の単線が撚り合わされた撚り線を含んでいてもよい。
【0039】
第1操作部材11Cは、回転機構を有していることが好ましい。図1の第1操作部材11Cは、使用者が回転機構の中心軸を中心に回転させることができる回転機構を有している。回転機構は、ダイヤル、歯車、ボルト、筒状体、ローラー、またはこれらの組み合わせを有していることが好ましく、ダイヤル、歯車、ボルト、筒状体、ローラー、またはこれらの組み合わせからなることがより好ましい。回転機構は、孔を有し、当該孔には直線状部11sの近位部11saが配置されて固定されていることが好ましい。更に当該孔は、回転機構の中心軸を含む位置に配置されていることが好ましい。また筒状体の場合、内部に螺旋状の溝または凸条、円状の溝または凸条等を有していることが好ましい。またこの場合、ハンドル30は、これらに嵌合することが可能な螺旋状の凸条または溝、円状の凸条または溝等を有していることが好ましい。
【0040】
図示していないが、第1操作部材11Cは、ハンドル30の外側面に回転機構を有していてもよい。当該外側面はハンドル30の周方向の外面である。この場合、回転機構は、ダイヤル、歯車、交差軸歯車、ウォーム、スプロケット、プーリー、ローラー、ベルト、ロープまたはこれらの組み合わせを含んでいることが好ましい。これにより、回転方向を周方向20Cに変換することができる。
【0041】
図1に示す通り、ハンドル30は、シャフト20の近位端部20aに配置されている。シャフト20の近位端部20aはハンドル30に固定されていることが好ましい。ハンドル30を操作することにより、シャフト20を操作することができる。またハンドル30は、シャフト20の近位端部20aの外側面に固定されていることが好ましい。一方、ハンドル30は、シャフト20の近位端部20aの内側面に固定されていてもよい。
【0042】
図1に示す通り、ハンドル30は、使用者が把持できる形状であることが好ましい。ハンドル30の形状としては、円柱状、多角柱状、角丸多角柱状等が挙げられる。ハンドル30は、長手方向20Xに延在していることが好ましい。図示していないが、ハンドル30は、指を通すことが可能な輪状の指受け部を有していてもよい。ハンドル30は、樹脂および/または金属を含むことが好ましく、樹脂からなることがより好ましい。
【0043】
ハンドル30の外径は、シャフト20近位端部20aの外径よりも大きいことが好ましい。これにより使用者がハンドルを把持し易くなる。一方、ハンドル30の外径は、シャフト20の近位端部20aの外径よりも小さくてもよい。この場合、ハンドル30の遠位端部をシャフト20内に配置し易くなる。
【0044】
図示していないが、ハンドル30は、ハンドル30の遠位端部から近位端部に向かって延在している第1内腔を有していることが好ましい。第1内腔はハンドル30を貫通していることが好ましい。例えば第1内腔にシャフト20の近位端部20aを固定し、第1内腔をシャフト20の内腔20Lに連通させてもよい。更に、第1内腔の近位端に回転部材10の第1操作部材11Cを配置し、第1内腔内に直線状部11sの近位部11saを配置してもよい。
【0045】
図示していないが、ハンドル30は、更に、導電ワイヤ1の近位端部を配置するための第2内腔を有していてもよい。第2内腔は、一方側端部がハンドル30の外側面に位置する開口に連通し、他方側端部が第1内腔に連通していることが好ましい。即ち、第2内腔と第1内腔により分岐が形成されていることが好ましい。分岐を形成している第2内腔と第1内腔に導電ワイヤ1を配置してもよい。
【0046】
ハンドル30は、更に、他の内腔を有していてもよい。他の内腔としては、ガイドワイヤ挿入用の内腔、流体の流路用の内腔等が挙げられる。他の内腔は第1内腔に連通していてもよいし、連通していなくてもよい。
【0047】
図1に示す通り、ハンドル30は、本体部31と、本体部31に対してスライド可能な可動部32を有していてもよい。この場合、可動部32のスライド方向は長手方向20Xであることが好ましい。更にこの場合、導電ワイヤ1の近位端部は可動部32に固定されていることが好ましい。これにより例えば、可動部32を長手方向20Xの遠位側にスライドさせることにより、導電ワイヤ1は弛み易くなるため、第1線状部材11が導電ワイヤ1の第2領域2pを持ち上げ易くなる。またこの場合、本体部31は上述した第1内腔と第2内腔とを有し、これらの内腔には導電ワイヤ1が配置されていることが好ましい。
【0048】
本体部31および/または可動部32は、可動部32よりも遠位側に、必要に応じてストッパーを有していてもよい。これにより、過度なスライドを防止して、過度な第2領域2pは弛みを回避し易くすることができる。
【0049】
可動部32の形状は特に限定されないが、円柱状、多角柱状、または角丸多角柱状等であることが好ましい。また可動部32は、本体部31と対向する部分において開口を有していることが好ましく、更に、可動部32は、当該開口と後述するコネクタ33に連通する導電ワイヤ用内腔を有していることが好ましい。当該導電ワイヤ用内腔に導電ワイヤ1を配置することができる。
【0050】
図1に示す通り、可動部32はシャフト20の長手方向20Xに垂直な垂直方向に延在していることが好ましい。これにより可動部32を把持し易くすることができる。更に、当該垂直方向において、可動部32の長さは、本体部31の長さよりも小さいことが好ましい。これにより可動部32の重さを低減することができる。一方、図示していないが、可動部32は、シャフト20の長手方向20Xに延在していてもよい。
【0051】
図1に示す通り、可動部32は、可動部32の外側面と、本体部31の外側面とが対向するように本体部31と隣り合うように配置されていることが好ましい。これにより可動部32を把持し易くなる。一方、図示していないが、可動部32は、シャフト20の長手方向20Xに垂直な垂直方向に延在し、当該垂直方向において可動部32の長さが本体部31の長さよりも長く、長手方向20Xの可動部32の長さが本体部31の長手方向20Xの長さよりも短く、且つ長手方向20Xに延在する内腔を有していてもよい。この場合、可動部32の内腔に本体部31が配置されていることが好ましい。これにより本体部31を囲むようにして可動部32をスライドさせることができる。更に、この場合、本体部31と可動部32は、指を通すことが可能な輪状の指受け部を有していることが好ましい。
【0052】
本体部31および/または可動部32は、スライド機構を有していることが好ましい。例えば、レール、ボルト、ナット、ローラー、ベアリング、ラック、ピニオン、またはこれらの組み合わせによりスライド機構を構成し、スライド機構を本体部31および/または可動部32に固定することにより、可動部32を本体部31に取り付けてもよい。またスライド機構は、必ずしも本体部31と可動部32以外の部材を用いて構成する必要は無く、本体部31および/または可動部32自体の形状を調製することにより構成してもよい。例えば、本体部31が外側面に長手方向20Xに延在する開口を有し、可動部32がその開口を構成する本体部31の壁と嵌合して長手方向20Xにスライドできるような形状を有していてもよい。この場合、ハンドル30は、当該開口の外縁において当該開口の内側に向かって突出している凸部を有していてもよい。このような凸部を例えば可動部32よりも遠位側の所定の位置に設けておくことにより、過度なスライドを防止するためのストッパーとして凸部を機能させることができる。また、当該開口の長手方向20Xにおける長さは、第1開口部21の長手方向20Xにおける長さの2.0倍以下であることが好ましく、1.0倍以下であることがより好ましく、0.5倍以下であることが更に好ましい。これにより、スライド機構のストロークの長さを低減して、導電ワイヤ1により生体組織を浅く切開し易くすることができる。一方、当該倍率は0.1倍以上であってもよく、0.2倍以上であってもよい。
【0053】
図示していないが、導電ワイヤ1の近位端部を配置するための第2内腔は、一方側端部が本体部31の近位端部に位置する開口に連通していてもよく、他方側端部が第1内腔に連通していてもよい。この場合、可動部32は、本体部31の近位端部に配置されていてもよく、長手方向20Xにスライド可能に配置されていてもよい。この場合、可動部32の一部が第2内腔に配置されていてもよい。
【0054】
図1に示す通り、ハンドル30は、コネクタ33を有していることが好ましい。コネクタ33には導電ワイヤ1を接続することができる。更に、コネクタ33を、電線等を介して高周波電源と接続することにより、導電ワイヤ1に高周波電流を通電することができる。コネクタ33は可動部32に配置されていることが好ましい。これにより可動部32のスライドに伴って、導電ワイヤ1を弛ませ易くなる。なおハンドル30が可動部32を有していない場合、コネクタ33は本体部31に配置されていることが好ましい。
【0055】
ハンドル30は、本体部31を有し、且つ可動部32を有していなくてもよい。この場合、本体部31は、第1操作部材11Cで説明したような回転機構を有していることが好ましい。例えば、予め導電ワイヤ1をローラー等に巻き付けておき、回転部材10の回転に伴って導電ワイヤ1にかかる張力によって、自動的に導電ワイヤ1を巻き出すように回転機構は構成されていてもよく、操作により導電ワイヤ1を巻き出すように回転機構は構成されていてもよい。
【0056】
切開装置101は、生体内の腱鞘、腱、靱帯等の炎症の治療に用いることができる。例えば、腱鞘炎では、指の使い過ぎ等の原因により腱鞘が肥厚して腱を圧迫して痛みを生じるが、このような肥厚した腱鞘を、切開装置101を用いて浅く切開することにより症状を低減することができる。また例えば、肥厚した横手根靭帯に対しても同様に切開装置101を用いて浅く切開することにより症状を低減することができる。切開装置101は、癌組織の切開、ポリープの切開、臓器の一部切開等に用いてもよい。
【0057】
次に、図7図9を参照しながら、第2の実施形態に係る切開装置について説明する。図7は、第2の実施の形態に係る切開装置の側面図におけるシャフトの遠位部の一部拡大図である。図8は、図7のC-C断面図である。図9は、回転部材を周方向に回転させたときの図7のC-C断面図である。なお、第1の実施形態に係る切開装置と重複する部分の詳細な説明は省略する。
【0058】
第1の実施形態に係る切開装置101と同様に、第2の実施形態に係る切開装置102は、シャフト20と、導電ワイヤ1と、回転部材10と、ハンドル30を有している。シャフト20は、長手方向20Xに延在している。シャフト20は、長手方向20Xに延在する内腔20Lを有している。シャフト20は、更に内腔20Lに連通する第1開口部21を遠位部20bの外側面20eに有している。
【0059】
図7図8に示す通り、シャフト20は、更に、内腔20Lに連通し、第1開口部21よりも遠位側に位置する第2開口部22を外側面20eに有していてもよい。これにより、導電ワイヤ1の第2領域2pを、第1開口部21から第2開口部22にわたって露出させて、シャフト20よりも外側に配置させることができる。当該構成は、各開口部に生体組織をできるだけ食い込ませたくない場合に有効である。
【0060】
第1開口部21と第2開口部22の間のシャフト20の外側面20e上に導電ワイヤ1の第2領域2pの一部が配置されていることが好ましい。これにより、第2領域2pの一部が外側面20eに支持され易くなり、第2領域2pを生体組織に押し付け易くすることができる。
【0061】
切開装置102において、回転部材10の少なくとも一部は、第1線状部材11を有していることが好ましい。第1線状部材11は、直線状部11sと曲部11tとを有していることが好ましい。曲部11tは、直線状部11sの遠位部11sbに位置し、直線状部11sに対して曲っていることが好ましい。図8に示す通り、曲部11tは、導電ワイヤ1の第2領域2pと接触していなくてもよい。このような構成であっても、第1線状部材11を回転させることにより、図9に示すように曲部11tは導電ワイヤ1の第2領域2pと接触して持ち上げることができる。
【0062】
切開装置102において、第1線状部材11は、複数の曲部11tを有していることが好ましい。これにより、第1線状部材11は、回転により第2領域2pを持ち上げ易くなる。複数の曲部11tは直線状部11sの遠位部11sbに位置することが好ましい。複数の曲部11tは互いに平行に延在していることが好ましい。また複数の曲部11tは、それぞれ、垂直方向20Yに延在していることが好ましく、それぞれ、垂直方向20Yの一方側から他方側に向かって延在していることがより好ましい。
【0063】
複数の曲部11tのうち、少なくとも一つは第1開口部21の近位端から遠位端の間に位置することが好ましい。更に、複数の曲部11tのうち、少なくとも一つは第2開口部22の近位端から遠位端の間に位置することが好ましい。これにより曲部11tは、回転により導電ワイヤ1の第2領域2pを持ち上げ易くなる。
【0064】
次に、図10図16を参照しながら、第3の実施形態に係る切開装置について説明する。図10は、第3の実施の形態に係る切開装置の側面図である。図11は、図10のシャフトの遠位部の一部拡大図である。図12は、図11のシャフトの内腔に配置された回転部材の柱体の斜視図である。図13は、図11のD-D断面図である。図14は、回転部材を周方向に回転させたときの図11のD-D断面図である。図15は、変形例の回転部材を有する図11のD-D断面図である。図16は、他の変形例の回転部材を有する図11のD-D断面図である。なお、第1と第2の実施形態に係る切開装置と重複する部分の詳細な説明は省略する。
【0065】
図10に示す通り、第3の実施の形態に係る切開装置103は、シャフト20と、導電ワイヤ1と、回転部材10と、ハンドル30を有している。
【0066】
図11図12図13に示す通り、回転部材10の少なくとも一部は、内腔20Lにおいて周方向20Cに回転し、且つ軸方向13Xに延在する孔13hを有する柱体13を有していることが好ましい。導電ワイヤ1は、孔13hを貫通していることが好ましい。このような柱体13を柱体13の中心軸13cを中心に周方向20Cに回転させることにより、中心軸13cを中心に導電ワイヤ1を回転させることができる。このような回転により、図14に示す通り、導電ワイヤ1の第2領域2pの少なくとも一部を側面視における視認者側20Vに移動させることができる。当該側面視は、第1開口部21の面積が最大となる向きにシャフト20を向けたときのシャフト20の側面視であり、図10図11が当該側面視に相当する。なお図14の柱体13は、図13の柱体13を180度回転させた状態のものである。
【0067】
柱体13の孔13hの個数は1個以上、12個以下であることが好ましく、2個以上、6個以下であることがより好ましい。孔13hの個数が複数の場合、例えば、導電ワイヤ1と後述する第2線状部材12を孔13hに配置してもよい。
【0068】
図11図14に示す通り、導電ワイヤ1は、直線状部1sと曲部1tとを有していることが好ましい。更に、曲部1tは、直線状部1sの遠位端部1sbに位置し、直線状部1sに対して曲っていることが好ましい。更に、曲部1tは、シャフト20の内側面20iに直接または間接に固定されていることが好ましい。このような構成により、導電ワイヤ1は、柱体13の回転に伴って回転し易くなる。曲部1tは、直線状部1sに対して曲っていればよく、その形状は特に限定されず、直線状、湾曲状、円状、螺旋状、またはこれらの組み合わせ形状であってもよい。
【0069】
導電ワイヤ1は柱体13に固定されていてもよい。例えば、後述する図15図16に示す態様の場合、導電ワイヤ1の遠位端部が柱体13の孔13hに配置されて固定されていてもよい。このような態様によっても、柱体13の回転に伴って導電ワイヤ1を回転させることができる。
【0070】
回転部材10は、更に、遠位部12bが柱体13に固定されている第2線状部材12を有していることが好ましい。このような第2線状部材12を介して柱体13の中心軸13cを中心に周方向20Cに回転させることにより、柱体13と導電ワイヤ1とを柱体13の中心軸13cを中心に回転させることができる。第2線状部材12は、直線状部12sを有していることが好ましい。直線状部12sにより、柱体13を回転し易くすることができる。
【0071】
第2線状部材12は、直線状部12sを有していることが好ましく、直線状部12sからなることがより好ましいが、直線状部12sに対して曲っている曲部を有していてもよい。更に、直線状部12sは、長手方向20Xに延在していることが好ましい。これにより直線状部12sは回転し易くなる。
【0072】
回転部材の第2線状部材12は、樹脂および/または金属を含むことが好ましく、樹脂および金属を含むことがより好ましい。樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。第2線状部材12は、金属線を含むことが好ましく、金属線の表面に樹脂が被覆されたものであることがより好ましい。第2線状部材12は、単線を含んでいてもよく、複数の単線が撚り合わされた撚り線を含んでいてもよい。
【0073】
図13に示す通り、シャフト20の長手方向20Xにおける第1開口部21の長さをL1としたとき、柱体13は、第1開口部21の近位端21aから近位側に長さL1離れた位置までの内腔20Lの領域Aに柱体13の遠位端13bが位置するように配置されていることが好ましい。これにより、柱体13の回転により、第1開口部21において導電ワイヤ1の第2領域2pが視認者側20Vに移動し易くなる。柱体13は、更に、領域Aに柱体13の近位端13aが位置するように配置されていることがより好ましい。
【0074】
図15に示す通り、シャフト20の長手方向20Xにおける第1開口部21の長さをL1としたとき、柱体13は、第1開口部21の遠位端21bから遠位側に長さL1離れた位置までの内腔20Lの領域Bに柱体13の近位端13aが位置するように配置されていることが好ましい。これにより、柱体13の回転により、第1開口部21において導電ワイヤ1の第2領域2pが視認者側20Vに移動し易くなる。
【0075】
図16に示す通り、柱体13の孔13hには、導電ワイヤ1の第2領域2pの一部が配置されていてもよい。この場合、柱体13の近位端13aおよび/または遠位端13bが、第1開口部21から露出している位置に配置されている。この場合、図16に示すように柱体13の近位端13aは、シャフト20の長手方向20Xにおいて、第1開口部21の中心よりも遠位側に位置することが好ましい。これにより、柱体13の近位端13aよりも近位側において、導電ワイヤ1が生体組織に接触し易くなる。
【0076】
回転部材10は、2つ以上の柱体13を有していてもよい。例えば、回転部材10は、領域Aに遠位端13bが位置するように配置された柱体13と、領域Bに近位端13aが位置するように配置された柱体13とを有していてもよい。
【0077】
シャフト20の径方向の断面において、柱体13の図心を通る線分の最小長さは、第1開口部21の垂直方向20Yにおける最大長さよりも長いことが好ましい。柱体13の図心を通る線分とは、柱体13の図心を通る仮想直線と柱体13の外縁との2つの交点を結ぶ線分のことである。当該構成により、柱体13は第1開口部21から露出している位置に配置されても、第1開口部21から脱離し難くなる。
【0078】
柱体13は円柱体であることが好ましい。これにより柱体13は周方向20Cに回転し易くなる。その他に、柱体13は楕円柱体、多角柱体、または角丸多角柱体であってもよい。柱体13が複数である場合には、それぞれ異なる形状であってもよいが、同じ形状であることが好ましい。
【0079】
柱体13は、樹脂および/または金属を含むことが好ましく、樹脂を含むことがより好ましく、樹脂からなることが更に好ましい。樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また柱体13は、表面に樹脂が被覆された金属柱であってもよい。
【0080】
図示していないが、シャフト20の内側面20iは、柱体13の近位端13aよりも近位側および/または遠位端13bよりも遠位側に隆起部を有していることが好ましい。これにより、柱体13の長手方向20Xにおける位置ずれを低減することができる。隆起部は柱体13に接触していることが好ましい。これにより位置ずれを一層、低減することができる。
【0081】
図10に示す通り、回転部材10は、柱体13の中心軸13cを中心に第2線状部材12を回す第2操作部材12Cを第2線状部材12の近位部12aに有していることが好ましい。このように柱体13を柱体13の中心軸13cを中心に周方向20Cに回転させることにより、中心軸13cを中心に導電ワイヤ1を回転させることができる。この場合、第2線状部材12の直線状部12sの近位部12saは、近位部12saの中心軸が第2操作部材12Cの中心軸と一致しないように第2操作部材12Cに固定されていることが好ましい。これにより、直線状部12sを第2操作部材12Cの中心軸を中心に回転させることができ、これに伴って、中心軸13cを中心に柱体13を回転させることができる。第2操作部材12Cは、直線状部12sの近位部12saに直接連結されていることが好ましいが、他の部材を介して間接的に連結されていてもよい。
【0082】
第2操作部材12Cは、ハンドル30の近位端部に配置されていることが好ましい。これにより第2操作部材12Cを操作し易くすることができる。第2操作部材12Cは、回転機構を有していることが好ましい。図10の第2操作部材12Cは、使用者が回転機構の中心軸を中心に回転させることができる回転機構を有している。回転機構は、ダイヤル、歯車、ボルト、筒状体、ローラー、またはこれらの組み合わせを有していることが好ましく、ダイヤル、歯車、ボルト、筒状体、ローラー、またはこれらの組み合わせからなることがより好ましい。回転機構は、孔を有し、当該孔には直線状部12sの近位部12saが配置されて固定されていることが好ましい。更に当該孔は、回転機構の中心軸よりも外側に位置するように配置されていることが好ましい。また筒状体の場合、内部に螺旋状の溝または凸条、円状の溝または凸条等を有していることが好ましい。またこの場合、ハンドル30は、これらに嵌合することが可能な螺旋状の凸条または溝、円状の凸条または溝等を有していることが好ましい。
【0083】
図示していないが、第2操作部材12Cは、ハンドル30の外側面に配置されていてもよい。この場合、第2操作部材12Cの回転機構は、ダイヤル、歯車、交差軸歯車、ウォーム、スプロケット、プーリー、ローラー、ベルト、ロープまたはこれらの組み合わせを含んでいることが好ましい。これにより、回転方向を周方向20Cに変換することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 導電ワイヤ
1p、2p、3p 第1領域、第2領域、第3領域
1s 直線状部
1t 曲部
5 固定具
10 回転部材
11、12 第1線状部材、第2線状部材
11a、11sa、12a 近位部
11b、11sb、12b 遠位部
11s、12s 直線状部
11t 曲部
11C、12C 第1操作部材、第2操作部材
13 柱体
13c 中心軸
13a 近位端
13b 遠位端
13h 孔
13X 軸方向
20 シャフト
20a 近位端部
20b 遠位部
20e 外側面
20i 内側面
20C 周方向
20L 内腔
20V 視認者側
20X 長手方向
20Y 垂直方向
20Z 第1方向
21、22 第1開口部、第2開口部
21a 近位端
21b 遠位端
21c 近位端の中心
30 ハンドル
31 本体部
32 可動部
33 コネクタ
101、102、103 切開装置
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10
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