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特開2024-52046燃料電池装置、イオン交換樹脂の寿命判定方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052046
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】燃料電池装置、イオン交換樹脂の寿命判定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04313 20160101AFI20240404BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20240404BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20240404BHJP
   H01M 8/04029 20160101ALI20240404BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20240404BHJP
【FI】
H01M8/04313
H01M8/0606
H01M8/04014
H01M8/04029
H01M8/0438
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158485
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】秦 真浩
(72)【発明者】
【氏名】清水 龍平
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB23
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA12
5H127BA33
5H127BB02
5H127BB18
5H127DB76
5H127DB86
5H127GG03
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】導電率センサ等を設けることなく、イオン交換樹脂の交換タイミングを適切に判断する。
【解決手段】排ガスから回収される凝縮水および外部から供給される水を処理するためのイオン交換樹脂109を含む水処理ユニットWTUと、水処理ユニットXにおいて処理された水を貯水するための水タンク110と、イオン交換樹脂109の寿命を判定する制御ユニット114と、を備え、制御ユニット114は、凝縮水を純水に処理するためのイオン交換樹脂量と外部から供給される水を純水に処理するためのイオン交換樹脂量とを合算したイオン交換樹脂量と水処理ユニットWTUに設けられたイオン交換樹脂109のイオン交換樹脂量とからイオン交換樹脂109の寿命を判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、該燃料電池に供給される改質ガスを生成するために水蒸気改質を行なう改質器と、前記燃料電池の発電により生じる排ガスと水との間で熱交換を行なう熱交換器と、を含む燃料電池装置であって、
前記排ガスから回収される凝縮水および外部から供給される水を処理するためのイオン交換樹脂を含む水処理ユニットと、
前記水処理ユニットにおいて処理された水を貯水するための水タンクと、
使用されている前記イオン交換樹脂の寿命を判定する制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、前記凝縮水を純水に処理するための第1のイオン交換樹脂量と前記外部から供給される水を純水に処理するための第2のイオン交換樹脂量とを合算した合算量と前記水処理ユニットに設けられる未使用時の前記イオン交換樹脂の未使用時イオン交換樹脂量とから前記使用されている前記イオン交換樹脂の寿命を判定することを特徴とする燃料電池装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記凝縮水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量を被改質ガスの積算流量を変数とする第1の関係式に基づいて算出することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記外部から供給される水を純水に処理するための前記第2のイオン交換樹脂量を、補水回数を変数とする第2の関係式に基づいて算出することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
燃料電池と、該燃料電池に供給される改質ガスを生成するために水蒸気改質を行なう改質器と、前記燃料電池の発電により生じる排ガスと水との間で熱交換を行なう熱交換器と、前記排ガスから回収される凝縮水および外部から供給される水を処理するためのイオン交換樹脂を含む水処理ユニットと、前記水処理ユニットにおいて処理された水を貯水するための水タンクと、使用されているイオン交換樹脂の寿命を判定する制御ユニットと、を含む燃料電池装置におけるイオン交換樹脂の寿命判定方法であって、
前記制御ユニットが、前記凝縮水を純水に処理するための第1のイオン交換樹脂量を算出する第1の工程と、
前記制御ユニットが、前記外部から供給される水を純水に処理するための第2のイオン交換樹脂量を算出する第2の工程と、
前記制御ユニットが、前記第1の工程において、算出した前記凝縮水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量と、前記第2の工程において、算出した前記外部から供給される水を純水に処理するための前記第2のイオン交換樹脂量とを合算する第3の工程と、
前記制御ユニットが、前記第3の工程において得られた前記凝縮水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量と、前記外部から供給される水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量との合算量と、前記水処理ユニットに設けられる未使用時のイオン交換樹脂の未使用時イオン交換樹脂量とから前記使用されている前記イオン交換樹脂の寿命を判定する第4の工程と、
を含むイオン交換樹脂の寿命判定方法。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記第1の工程において、前記凝縮水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量を被改質ガスの積算流量を変数とする第1の関係式を用いて算出することを特徴とする請求項4に記載のイオン交換樹脂の寿命判定方法。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記第2の工程において、前記外部から供給される水を純水に処理するための前記第2のイオン交換樹脂量を、補水回数を変数とする第2の関係式に用いて算出することを特徴とする請求項4に記載のイオン交換樹脂の寿命判定方法。
【請求項7】
燃料電池と、該燃料電池に供給される改質ガスを生成するために水蒸気改質を行なう改質器と、前記燃料電池の発電により生じる排ガスと水との間で熱交換を行なう熱交換器と、前記排ガスから回収される凝縮水および外部から供給される水を処理するためのイオン交換樹脂を含む水処理ユニットと、前記水処理ユニットにおいて処理された水を貯水するための水タンクと、使用されているイオン交換樹脂の寿命を判定する制御ユニットと、を含む燃料電池装置におけるイオン交換樹脂の寿命判定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御ユニットが、前記凝縮水を純水に処理するための第1のイオン交換樹脂量を算出する第1の工程と、
前記制御ユニットが、前記外部から供給される水を純水に処理するための第2のイオン交換樹脂量を算出する第2の工程と、
前記制御ユニットが、前記第1の工程において、算出した前記凝縮水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量と、前記第2の工程において、算出した前記外部から供給される水を純水に処理するための前記第2のイオン交換樹脂量とを合算する第3の工程と、
前記制御ユニットが、前記第3の工程において得られた前記凝縮水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量と、前記外部から供給される水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量との合算量と、前記水処理ユニットに設けられる未使用時のイオン交換樹脂の未使用時イオン交換樹脂量とから前記使用されている前記イオン交換樹脂の寿命を判定する第4の工程と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項8】
前記制御ユニットは、前記第1の工程において、前記凝縮水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量を被改質ガスの積算流量を変数とする第1の関係式を用いて算出することを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記制御ユニットは、前記第2の工程において、前記外部から供給される水を純水に処理するための前記第2のイオン交換樹脂量を、補水回数を変数とする第2の関係式に用いて算出することを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置、イオン交換樹脂の寿命判定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、次世代エネルギーとして、水素ガスと酸素含有ガスとを用いて電力を得ることができる燃料電池と、この燃料電池を稼動するための補機類とを外装ケースに収納してなる燃料電池装置およびその運転方法が提案されている。
【0003】
ここで、燃料電池の発電に必要な水素の生成方法の1つとして水蒸気改質法が知られており、この水蒸気改質を用いる燃料電池装置では、燃料ガスを生成するための改質器、外部から供給される水を処理して純水を生成する水処理装置、処理した水を一時的に貯水するための貯水タンク、水処理装置あるいは貯水タンク、改質器等を接続する水供給管等を備えている。
【0004】
ところで、凝縮水を改質器に供給するにあたっては、凝縮水に含まれる不純物が改質器内にて析出し、それによる改質器の故障や、改質触媒が劣化すること等を抑制すべく、イオン交換樹脂等を含む水処理装置等において処理した凝縮水を改質器に供給する必要がある。
【0005】
そして、凝縮水を水処理して改質器に供給するにあたり、凝縮水を貯水するための凝縮水タンクを具備するとともに、イオン交換樹脂等の凝縮水処理部を備えることが考えられる。
【0006】
しかしながら、凝縮水を処理する凝縮水処理部においては、使用により劣化を生じるために、凝縮水処理部の処理能力等にもよるものの、例えば、数ヶ月に1度、もしくは数年に1度といったように、適宜、イオン交換樹脂等を交換等するためのメンテナンスを行なう必要性が生じる場合がある。
また、上記の事情は、外部から供給される水を使用する場合の水処理装置でも同様である。
【0007】
そして、これら凝縮水処理部や水処理装置の交換時期や故障を適切に判断することができない場合、劣化したまたは故障した凝縮水処理部や水処理装置を使用することによって、水の純度が低下する虞があり、純度が低下した水に含まれる不純物の析出により、改質器が故障する、または改質触媒が劣化する虞もあった。
【0008】
このような問題に対して、燃料電池の発電により生じる排ガスと水とでの熱交換により生じる凝縮水を貯水するための凝縮水タンクと、凝縮水を処理するための凝縮水処理手段と、外部から供給される水を処理するためのイオン交換樹脂装置を具備する水処理装置と、水処理装置で処理された水を貯水するための水タンクとを具備し、凝縮水処理手段で処理された水の導電率を測定する導電率センサと、イオン交換樹脂装置で処理された水の導電率を測定する導電率センサを設け、凝縮水処理手段およびイオン交換樹脂装置等の水処理装置の寿命を適切に判断する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-276947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、凝縮水処理手段で処理された水の導電率を測定する導電率センサと、イオン交換樹脂装置で処理された水の導電率を測定する導電率センサとの2つの導電率センサを設ける必要があったために、燃料電池装置のコストが高くなるという課題があった。
【0011】
本発明は、導電率センサ等を設けることなく、使用されているイオン交換樹脂の交換タイミングを適切に判断する燃料電池装置、イオン交換樹脂の寿命判定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、燃料電池と、該燃料電池に供給される改質ガスを生成するために水蒸気改質を行なう改質器と、前記燃料電池の発電により生じる排ガスと水との間で熱交換を行なう熱交換器と、を含む燃料電池装置であって、前記排ガスから回収される凝縮水および外部から供給される水を処理するためのイオン交換樹脂を含む水処理ユニットと、前記水処理ユニットにおいて処理された水を貯水するための水タンクと、使用されている前記イオン交換樹脂の寿命を判定する制御ユニットと、を備え、前記制御ユニットは、前記凝縮水を純水に処理するための第1のイオン交換樹脂量と前記外部から供給される水を純水に処理するための第2のイオン交換樹脂量とを合算した合算量と前記水処理ユニットに設けられる未使用時の前記イオン交換樹脂の未使用時イオン交換樹脂量とから前記使用されている前記イオン交換樹脂の寿命を判定することを特徴とする燃料電池装置を提案している。
【0013】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記制御ユニットは、前記凝縮水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量を被改質ガスの積算流量を変数とする第1の関係式に基づいて算出することを特徴とする燃料電池装置を提案している。
【0014】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記制御ユニットは、前記外部から供給される水を純水に処理するための前記第2のイオン交換樹脂量を、補水回数を変数とする第2の関係式に基づいて算出することを特徴とする燃料電池装置を提案している。
【0015】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、燃料電池と、該燃料電池に供給される改質ガスを生成するために水蒸気改質を行なう改質器と、前記燃料電池の発電により生じる排ガスと水との間で熱交換を行なう熱交換器と、前記排ガスから回収される凝縮水および外部から供給される水を処理するためのイオン交換樹脂を含む水処理ユニットと、前記水処理ユニットにおいて処理された水を貯水するための水タンクと、使用されているイオン交換樹脂の寿命を判定する制御ユニットと、を含む燃料電池装置におけるイオン交換樹脂の寿命判定方法であって、前記制御ユニットが、前記凝縮水を純水に処理するための第1のイオン交換樹脂量を算出する第1の工程と、前記制御ユニットが、前記外部から供給される水を純水に処理するための第2のイオン交換樹脂量を算出する第2の工程と、前記制御ユニットが、前記第1の工程において、算出した前記凝縮水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量と、前記第2の工程において、算出した前記外部から供給される水を純水に処理するための前記第2のイオン交換樹脂量とを合算する第3の工程と、前記制御ユニットが、前記第3の工程において得られた前記凝縮水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量と、前記外部から供給される水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量との合算量と、前記水処理ユニットに設けられる未使用時のイオン交換樹脂の未使用時イオン交換樹脂量とから前記使用されている前記イオン交換樹脂の寿命を判定する第4の工程と、を含むイオン交換樹脂の寿命判定方法を提案している。
【0016】
形態5;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記制御ユニットは、前記第1の工程において、前記凝縮水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量を被改質ガスの積算流量を変数とする第1の関係式を用いて算出することを特徴とするイオン交換樹脂の寿命判定方法を提案している。
【0017】
形態6;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記制御ユニットは、前記第2の工程において、前記外部から供給される水を純水に処理するための前記第2のイオン交換樹脂量を、補水回数を変数とする第2の関係式に用いて算出することを特徴とするイオン交換樹脂の寿命判定方法を提案している。
【0018】
形態7;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、燃料電池と、該燃料電池に供給される改質ガスを生成するために水蒸気改質を行なう改質器と、前記燃料電池の発電により生じる排ガスと水との間で熱交換を行なう熱交換器と、前記排ガスから回収される凝縮水および外部から供給される水を処理するためのイオン交換樹脂を含む水処理ユニットと、前記水処理ユニットにおいて処理された水を貯水するための水タンクと、使用されているイオン交換樹脂の寿命を判定する制御ユニットと、を含む燃料電池装置におけるイオン交換樹脂の寿命判定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記制御ユニットが、前記凝縮水を純水に処理するための第1のイオン交換樹脂量を算出する第1の工程と、前記制御ユニットが、前記外部から供給される水を純水に処理するための第2のイオン交換樹脂量を算出する第2の工程と、前記制御ユニットが、前記第1の工程において、算出した前記凝縮水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量と、前記第2の工程において、算出した前記外部から供給される水を純水に処理するための前記第2のイオン交換樹脂量と、を合算する第3の工程と、前記制御ユニットが、前記第3の工程において得られた前記凝縮水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量と、前記外部から供給される水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量との合算量と、前記水処理ユニットに設けられる未使用時のイオン交換樹脂の未使用時イオン交換樹脂量とから前記使用されている前記イオン交換樹脂の寿命を判定する第4の工程と、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提案している。
【0019】
形態8;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記制御ユニットは、前記第1の工程において、前記凝縮水を純水に処理するための前記第1のイオン交換樹脂量を被改質ガスの積算流量を変数とする第1の関係式を用いて算出することを特徴とするプログラムを提案している。
【0020】
形態9;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記制御ユニットは、前記第2の工程において、前記外部から供給される水を純水に処理するための前記第2のイオン交換樹脂量を、補水回数を変数とする第2の関係式に用いて算出することを特徴とするプログラムを提案している。
【発明の効果】
【0021】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、導電率センサ等を設けることなく、使用されているイオン交換樹脂の交換タイミングを適切に判断することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る燃料電池装置の構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る制御ユニットの構成を示す図である。
図3】本実施形態に係る制御ユニットの処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態>
図1から図3を用いて、本実施形態に係る燃料電池装置1について説明する。
【0024】
<燃料電池装置1の構成>
図1に示すように、本実施形態に係る燃料電池装置1は、発電ユニット100と、貯湯ユニット200と、を含んで構成されている。
【0025】
発電ユニット100は、後述する燃料電池に酸素含有ガスと被改質ガスとを供給し、燃料電池内で、酸素含有ガスと被改質ガスとを化学反応させることにより、電気を生み出すものである。
また、酸素含有ガスと被改質ガスとの化学反応の過程で発生する熱と水を利用して、お湯を生成し、給湯に用いるものである。
【0026】
貯湯ユニット200は、発電ユニット100において生成されたお湯を蓄える装置であって、貯湯タンク210を備えている。
また、貯湯タンク210と後述する発電ユニット100内の熱交換器113との間には、循環配管117が設けられており、循環配管117に熱媒体としての水を循環させることによって、貯湯タンク210に蓄えられるお湯の温度を管理している。
【0027】
<発電ユニット100の構成>
図1に示すように、発電ユニット100は、燃料電池101と、被改質ガス供給部102と、酸素含有ガス供給部103と、改質器104と、補水弁106と、イオン交換樹脂109と、水タンク110と、水ポンプ111と、インバータ112と、熱交換器113と、制御ユニット114と、出口水温センサ115と、循環ポンプ116と、循環配管117と、を含んで構成されている。
【0028】
燃料電池101は、燃料電池セルが複数積み重なったスタック構造となっている。
燃料電池セルは、平板型、中空平板型、円筒型、横縞型等、公知のタイプのものを利用することができる。燃料電池セルスタックは、例えば、内部を燃料ガスが長手方向(稼動時上下方向)に流通する燃料ガス流路(図示せず)を有する中空平板型の燃料電池セルを立設させた状態で一列に配列し、隣接する燃料電池セル間が集電部材を介して電気的に直列に接続されて構成されている。
【0029】
被改質ガス供給部102は、外部から被改質ガスを供給する。
被改質ガスとしては、天然ガス、LPガスや灯油等を例示することができる。
酸素含有ガス供給部103は、外部から酸素含有ガスを供給する。
【0030】
改質器104は、天然ガスやLPガス等の被改質ガスに対して水蒸気改質を行い、燃料電池101に供給する燃料ガスを生成する。
改質器104には、被改質ガス供給部102と、改質水(純水)を供給する水ポンプ111とが接続されており、被改質ガスと改質水とは、加熱された改質器104において改質反応し、水素を含む燃料ガスが生成される。
【0031】
補水弁106は、水処理ユニットWTU(イオン交換樹脂109を含む)に供給される水量を調整する。
【0032】
イオン交換樹脂109は、合成樹脂の一種であり、分子構造の一部にイオン交換基として電離する構造を持ち、水道水などの水に含まれるナトリウムやカルシウム、マグネシウムなどの陽イオンや、塩素や炭酸といった陰イオンを除去して純水とする機能を有する。
【0033】
なお、水処理ユニットWTUは必要に応じて、活性炭フィルタやRO膜などの処理装置を含んで構成されるようにしてもよい。
【0034】
水タンク110は、水道水を水処理ユニットWTUで処理した純水と排ガスから回収される凝縮水をイオン交換樹脂109に通した純水とを貯水するタンクである。
【0035】
水ポンプ111は、水タンク110に貯水された水を改質器104で必要となる水の量に応じて、改質器104に供給する。
【0036】
インバータ112は、燃料電池101で発電された直流電力を交流電力に変換し、商用電力系統に供給する。
【0037】
熱交換器113には、燃料電池101において、生じた排ガスが供給され、循環配管117を介して導入された水としての熱媒体と供給された排ガスとの間で熱交換を行い、熱媒体を加熱する。
熱交換器113によって加熱された熱媒体は、貯湯ユニット200内の貯湯タンク210に蓄えられる。
貯湯タンク210では、上部が温度の高い熱媒体、下部が温度の低い熱媒体である温度成層が形成される。
【0038】
制御ユニット114は、図示しないROM(Read Only Memory)等に格納された制御プログラムにより、発電ユニット100全体の動作を制御する。
本実施形態において、制御ユニット114は、被改質ガスの流量情報と、外部から水道水を供給する補水弁106の開回数に関する情報と、から使用されているイオン交換樹脂109の寿命を判定する。
具体的には、制御ユニット114は、凝縮水を純水に処理するための第1のイオン交換樹脂量と外部から供給される水を純水に処理するための第2のイオン交換樹脂量とを合算した合算イオン交換樹脂量と水処理ユニットWTUに設けられる未使用時のイオン交換樹脂109の未使用時イオン交換樹脂量とから使用されているイオン交換樹脂109の寿命を判定する。
【0039】
出口水温センサ115は、熱交換器113を通過した後の循環配管117を流れる水としての熱媒体の温度を検出する。
【0040】
循環ポンプ116は、循環配管117に貯湯タンク210に蓄えられた熱媒体を循環させる。
【0041】
<制御ユニット114の構成>
図2に示すように、本実施形態に係る制御ユニット114は、第1のイオン交換樹脂量算出部1141と、第2のイオン交換樹脂量算出部1142と、合算部1143と、判定部1144と、記憶部1145と、を含んで構成されている。
【0042】
第1のイオン交換樹脂量算出部1141は、凝縮水を純水に処理するための第1のイオン交換樹脂量を算出する。
具体的には、第1のイオン交換樹脂量算出部1141は、被改質ガスの積算流量を変数Xとして、以下の数1(第1の関係式)を用いて、凝縮水を純水に処理するための第1のイオン交換樹脂量を算出する。
なお、被改質ガスの流量は、既存の流量計により得られる。
また、被改質ガスの積算流量は、燃料電池装置1を設置した後、あるいは、イオン交換樹脂109を新品のイオン交換樹脂109に交換した後からの被改質ガスの積算流量である。
【0043】
【数1】
ここで、Aは、一般的な耐用年数における凝縮水量に対するイオン交換樹脂量であり、Bは、一般的な耐用年数における被改質ガス量である。
【0044】
第2のイオン交換樹脂量算出部1142は、外部から供給される水を純水に処理するための第2のイオン交換樹脂量を算出する。
具体的には、第2のイオン交換樹脂量算出部1142は、起動時補水回数を変数Y1、発電時補水回数を変数Y2として、以下の数2(第2の関係式)を用いて、外部から供給される水を純水に処理するための第2のイオン交換樹脂量を算出する。
なお、補水回数は、制御ユニット114から補水弁106に対する制御信号の出力回数により得られる。
また、補水回数は、燃料電池装置1を設置した後、あるいは、イオン交換樹脂109を新品のイオン交換樹脂109に交換した後からの補水回数である。
【0045】
【数2】
ここで、Cは、一般的な耐用年数における補水量に対するイオン交換樹脂量、Dは、起動時1回あたりの水タンク110への補水量、Eは、発電中の水無し状態における1回の補水量、Fは、一般的な耐用年数における補水量である。
なお、燃料電池装置1の起動時および発電時以外(例えば、停止工程時など)にも補水が許可されている場合、上記数2の第2関係式に追加して合算しても良い。
【0046】
合算部1143は、第1のイオン交換樹脂量算出部1141において算出された第1のイオン交換樹脂量と第2のイオン交換樹脂量算出部1142において算出された第2のイオン交換樹脂量とを合算した合算イオン交換樹脂量を算出する。
合算部1143は、算出した合算イオン交換樹脂量を後述する判定部1144に出力する。
【0047】
判定部1144は、使用されているイオン交換樹脂の寿命を判定する。
具体的には、判定部1144は、合算部1143から入力した合算イオン交換樹脂量と、記憶部1145に記憶された水処理ユニットに設けられる未使用時のイオン交換樹脂量とから使用されているイオン交換樹脂の寿命を判定する。
判定部1144は、例えば、判定結果を図示しない報知部に出力する。
【0048】
記憶部1145は、水処理ユニットに設けられる未使用時のイオン交換樹脂量等を記憶する。
記憶部1145に記憶された水処理ユニットに設けられる未使用時のイオン交換樹脂量は、判定部1144により読み出される。
【0049】
<制御ユニット114の処理>
図3を用いて、本実施形態に係る制御ユニット114の処理について説明する。
【0050】
第1のイオン交換樹脂量算出部1141は、凝縮水を純水に処理するための第1のイオン交換樹脂量を算出する(ステップS110)。
第1のイオン交換樹脂量算出部1141の算出結果は、合算部1143に送出される。
【0051】
第2のイオン交換樹脂量算出部1142は、外部から供給される水を純水に処理するための第2のイオン交換樹脂量を算出する(ステップS120)。
第2のイオン交換樹脂量算出部1142の算出結果は、合算部1143に送出される。
【0052】
合算部1143は、第1のイオン交換樹脂量算出部1141において算出された第1のイオン交換樹脂量と第2のイオン交換樹脂量算出部1142において算出された第2のイオン交換樹脂量とを合算したイオン交換樹脂量を算出する(ステップS130)。
合算部1143の算出結果は、判定部1144に送出される。
【0053】
判定部1144は、合算部1143から入力した合算イオン交換樹脂量と、記憶部1145に記憶された水処理ユニットに設けられる未使用時の未使用時イオン交換樹脂量とから使用されているイオン交換樹脂の寿命を判定し、処理を終了する(ステップS140)。
【0054】
<作用・効果>
以上、説明したように、本実施形態に係る燃料電池装置1は、排ガスから回収される凝縮水および外部から供給される水を処理するためのイオン交換樹脂109を含む水処理ユニットWTUと、水処理ユニットWTUにおいて処理された水を貯水するための水タンク110と、イオン交換樹脂109の寿命を判定する制御ユニット114と、を備え、制御ユニット114は、凝縮水を純水に処理するための第1のイオン交換樹脂量と外部から供給される水を純水に処理するための第2のイオン交換樹脂量とを合算した合算イオン交換樹脂量と水処理ユニットWTUに設けられる未使用時のイオン交換樹脂109のイオン交換樹脂量とから使用されているイオン交換樹脂109の寿命を判定する。
つまり、凝縮水の積算水量は、既知のセンサ等で取得可能であり、外部から供給された水の積算水量も弁の操作制御回数で取得可能であることから、制御ユニット114は、積算水量分の凝縮水を純水に処理するための第1のイオン交換樹脂量と積算水量分の外部供給水を純水に処理するための第2のイオン交換樹脂量とを推定することにより、使用されているイオン交換樹脂109の寿命を判定する。
そのため、使用されているイオン交換樹脂109の寿命判定を目的とする新たなセンサや装置を用いることなく、使用されているイオン交換樹脂109の寿命を判定することができる。
したがって、導電率センサ等を設けることなく、使用されているイオン交換樹脂の交換タイミングを適切に判断することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る燃料電池装置1の制御ユニット114は、凝縮水を純水に処理するための第1のイオン交換樹脂量を被改質ガスの積算流量を変数とする第1の関係式に基づいて算出する。
つまり、制御ユニット114は、被改質ガスの積算流量を変数とする考案した第1の関係式を用いることにより、被改質ガスの積算流量のみを取得することによって、凝縮水を純水に処理するための第1のイオン交換樹脂量を推定することができる。
そのため、導電率センサ等を設けることなく、使用されているイオン交換樹脂の交換タイミングを適切に判断することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る燃料電池装置1の制御ユニット114は、補水回数を変数として、外部から供給される水を純水に処理するための第2のイオン交換樹脂量を第2の関係式に基づいて算出する。
つまり、制御ユニット114は、補水回数を変数とする考案した第2の関係式を用いることにより、補水回数のみを取得することによって、外部から供給される水を純水に処理するための第2のイオン交換樹脂量を推定することができる。
そのため、導電率センサ等を設けることなく、使用されているイオン交換樹脂の交換タイミングを適切に判断することができる。
【0057】
<変形例1>
本実施形態に係る燃料電池装置1の制御ユニット114は、予め定められた間隔で、使用されているイオン交換樹脂109の寿命を判定してもよいが、例えば、被改質ガスの供給のタイミングや補水のタイミングで、使用されているイオン交換樹脂109の寿命を判定することが好ましい。
上記のようなタイミングで判定を行うことにより、使用されているイオン交換樹脂の交換タイミングを適切に判断することができる。
【0058】
<変形例2>
本実施形態に係る燃料電池装置1の制御ユニット114は、判定した使用されているイオン交換樹脂109の寿命を音声や文字、イラスト表示により、報知することが好ましい。
上記のような報知を行うことにより、ユーザに適切なタイミングで、使用されているイオン交換樹脂の交換タイミングを知らせることができ、使用されているイオン交換樹脂の寿命を要因とした重大な事象を回避することができる。
【0059】
<変形例3>
本実施形態に係る燃料電池装置1の制御ユニット114による使用されているイオン交換樹脂の寿命判定により、使用済のイオン交換樹脂を交換した場合に、使用済のイオン交換樹脂の劣化度合いを判定し、使用されているイオン交換樹脂の寿命判定との間に乖離がある場合には、都度、この情報を学習データとして、第1の関係式および第2の関係式あるいは合算値を補正するようにしてもよい。
また、他の燃料電池装置1における上記データがある場合には、それらの情報も活用し、個体差の影響を考慮した補正量を求めてもよい。
【0060】
<変形例4>
また、判定部1144は、使用されているイオン交換樹脂が寿命間際になったタイミング(寿命よりも前のタイミング)でユーザに報知してもよい。
また、制御ユニット114は、使用されているイオン交換樹脂が寿命を迎えた場合には、燃料電池装置1を停止させることが好ましい。
【0061】
なお、制御ユニット114等の処理をコンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを制御ユニット114等に読み込ませ、実行することによって本発明の燃料電池装置1を実現することができる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0062】
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0063】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0064】
以上、この発明の実施形態について、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1;燃料電池装置
100;発電ユニット
101;燃料電池
102;被改質ガス供給部
103;酸素含有ガス供給部
104;改質器
106;補水弁
109;イオン交換樹脂
110;水タンク
111;水ポンプ
112;インバータ
113;熱交換器
114;制御ユニット
115;出口水温センサ
116;循環ポンプ
117;循環配管
200;貯湯ユニット
210;貯湯タンク
WTU;水処理ユニット
図1
図2
図3