(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052058
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】平鋼の平たん度測定装置及び平たん度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/30 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G01B11/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158502
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】399009642
【氏名又は名称】JFE条鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 邦彦
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA47
2F065BB01
2F065CC06
2F065DD03
2F065FF41
2F065GG04
2F065HH04
2F065HH13
2F065JJ09
2F065MM06
2F065PP26
2F065QQ25
2F065SS03
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】平鋼の長さ方向における平たん度を安全にかつ精度高く測定することができる平鋼の平たん度測定装置及び平たん度測定方法を提供する。
【解決手段】平鋼の平たん度測定装置1は、定盤2の上面2a上に載置された平鋼Sの長さ方向における平たん度を測定する。平たん度測定装置1は、平鋼Sの長さ方向に沿って移動する測定装置本体11に、定盤2の上面2aまでの距離Aを測定する定盤高さ用距離計13及び平鋼Sの上面Saまでの距離Bを測定する平鋼高さ用距離計14を取り付けた距離測定装置10と、定盤高さ用距離計13で測定された定盤2の上面2aまでの距離A及び平鋼高さ用距離計14で測定された平鋼Sの上面Saまでの距離Bを用いて平鋼Sの長さ方向における平たん度を算出する平たん度算出装置40とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤の上面上に載置された平鋼の長さ方向における平たん度を測定する平鋼の平たん度測定装置であって、
前記平鋼の長さ方向に沿って移動する測定装置本体に、前記定盤の上面までの距離を測定する定盤高さ用距離計及び前記平鋼の上面までの距離を測定する平鋼高さ用距離計を取り付けた距離測定装置と、前記定盤高さ用距離計で測定された前記定盤の上面までの距離及び前記平鋼高さ用距離計で測定された前記平鋼の上面までの距離を用いて平鋼の長さ方向における平たん度を算出する平たん度算出装置とを備えていることを特徴とする平鋼の平たん度測定装置。
【請求項2】
前記平たん度算出装置は、次の(1)式により平鋼の長さ方向における平たん度を算出することを特徴とする請求項1に記載の平鋼の平たん度測定装置。
F=(A-B)-(Bの長さ方向における最大値) …(1)
ここで、F:平たん度、A:定盤の上面までの距離、B:平鋼の上面までの距離
【請求項3】
前記測定装置本体は、前記定盤の上面上を前記平鋼の長さ方向に沿って走行する走行台車で構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の平鋼の平たん度測定装置。
【請求項4】
前記測定装置本体は、該測定装置本体を前記平鋼の長さ方向に沿って走行させる駆動部に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の平鋼の平たん度測定装置。
【請求項5】
前記定盤高さ用距離計及び前記平鋼高さ用距離計は、200mmピッチで前記定盤の上面までの距離及び前記平鋼の上面までの距離のそれぞれを測定することを特徴とする請求項1に記載の平鋼の平たん度測定装置。
【請求項6】
定盤の上面上に載置された平鋼の長さ方向における平たん度を測定する平鋼の平たん度測定方法であって、
前記平鋼の長さ方向に沿って移動する測定装置本体に、前記定盤の上面までの距離を測定する定盤高さ用距離計及び前記平鋼の上面までの距離を測定する平鋼高さ用距離計を取り付けた距離測定装置の前記測定装置本体を前記平鋼の長さ方向に沿って移動させて、前記定盤高さ用距離計によって前記定盤の上面までの距離を測定するとともに、前記平鋼高さ用距離計によって前記平鋼の上面までの距離を測定し、
平たん度算出装置により、前記定盤高さ用距離計によって測定された前記定盤の上面までの距離及び前記平鋼高さ用距離計によって測定された前記平鋼の上面までの距離を用いて平鋼の長さ方向における平たん度を算出することを特徴とする平鋼の平たん度測定方法。
【請求項7】
前記平たん度算出装置は、次の(1)式により平鋼の長さ方向における平たん度を算出することを特徴とする請求項6に記載の平鋼の平たん度測定方法。
F=(A-B)-(Bの長さ方向における最大値) …(1)
ここで、F:平たん度、A:定盤の上面までの距離、B:平鋼の上面までの距離
【請求項8】
前記定盤高さ用距離計及び前記平鋼高さ用距離計は、200mmピッチで前記定盤の上面までの距離及び前記平鋼の上面までの距離のそれぞれを測定することを特徴とする請求項6に記載の平鋼の平たん度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延によって製造された平鋼の平たん度測定装置及び平たん度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延によって製造された平鋼の形状、寸法及びその許容差並びに外観及び質量については、JIS G 3194によって規定されている。この平鋼は、一般に、幅25~200mm、厚さ4.5~25mm、長さ7m以下の矩形状を有している。この平鋼の長さ方向における平たん度の許容差についても、JIS G 3194によって規定されている。ここで、平鋼の長さ方向における平たん度とは、平鋼の長さ方向における上面、下面の凹凸状態をいう。
【0003】
従来、この平鋼の長さ方向における平たん度を測定するに際しては、平鋼を定盤に載せ、目視で平鋼と定盤との間の隙間が長さ方向において最大の所を見つけて「隙見ゲージ」を用いてその隙間を測定し、この測定された隙間を平鋼の長さ方向における平たん度としている。
【0004】
特許文献1には、厚鋼板の平坦度を測定するに際し、搬送テーブルにおける2本の搬送ロール間の下面に複数の非接触距離計を垂直に設置し、厚鋼板を搬送テーブル上で移動させながら厚鋼板の全面にわたって非接触距離計により長手方向一定距離ピッチ毎に厚鋼板下面までの距離を測定し、これらの測定データと予め測定したパスラインに相当する距離値からパスラインと厚鋼板との歪波形を求め、この歪波形から歪み演算を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来の平鋼の平たん度測定方法にあっては、以下の課題があった。
即ち、定盤上に載せられる平鋼の温度は最大300℃程度ある。このため、人手により「隙見ゲージ」を用いて平鋼と定盤との間の隙間の測定を行うと、手などを高温の平鋼に接触するおそれがあり、火傷などの危険リスクがある。
【0007】
また、特許文献1に開示される搬送テーブルにおける2本の搬送ロール間の下面に複数の非接触距離計を垂直に設置し、厚鋼板を搬送テーブル上で移動させながら厚鋼板の全面にわたって非接触距離計により長手方向一定距離ピッチ毎に厚鋼板下面までの距離を測定する場合も、手などを高温の平鋼に接触するおそれがあり、火傷などの危険リスクがある。
また、目視で平鋼と定盤との間の隙間が長さ方向における最大の所を見つけて「隙見ゲージ」を用いてその隙間を測定する方法では、平鋼の長さ方向の全長における隙間の最大値を目視で見つけるのが困難であり、平鋼の長さ方向における平たん度を精度高く測定できないことがある。
【0008】
従って、本発明はこれら従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、平鋼の長さ方向における平たん度を安全にかつ精度高く測定することができる平鋼の平たん度測定装置及び平たん度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る平鋼の平たん度測定装置は、定盤の上面上に載置された平鋼の長さ方向における平たん度を測定する平鋼の平たん度測定装置であって、前記平鋼の長さ方向に沿って移動する測定装置本体に、前記定盤の上面までの距離を測定する定盤高さ用距離計及び前記平鋼の上面までの距離を測定する平鋼高さ用距離計を取り付けた距離測定装置と、前記定盤高さ用距離計で測定された前記定盤の上面までの距離及び前記平鋼高さ用距離計で測定された前記平鋼の上面までの距離を用いて平鋼の長さ方向における平たん度を算出する平たん度算出装置とを備えていることを要旨とする。
【0010】
また、本発明の別の態様に係る平鋼の平たん度測定方法は、定盤の上面上に載置された平鋼の長さ方向における平たん度を測定する平鋼の平たん度測定方法であって、前記平鋼の長さ方向に沿って移動する測定装置本体に、前記定盤の上面までの距離を測定する定盤高さ用距離計及び前記平鋼の上面までの距離を測定する平鋼高さ用距離計を取り付けた距離測定装置の前記測定装置本体を前記平鋼の長さ方向に沿って移動させて、前記定盤高さ用距離計によって前記定盤の上面までの距離を測定するとともに、前記平鋼高さ用距離計によって前記平鋼の上面までの距離を測定し、平たん度算出装置により、前記定盤高さ用距離計によって測定された前記定盤の上面までの距離及び前記平鋼高さ用距離計によって測定された前記平鋼の上面までの距離を用いて平鋼の長さ方向における平たん度を算出することを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る鋼の平たん度測定装置及び平たん度測定方法によれば、平鋼の長さ方向における平たん度を安全にかつ精度高く測定することができる平鋼の平たん度測定装置及び平たん度測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る平鋼の平たん度測定装置の概略構成を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す平鋼の平たん度測定装置の右側面図である。
【
図3】
図1に示す平鋼の平たん度測定装置の平面図である。
【
図4】
図1に示す平鋼の平たん度測定装置における処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図5】平たん度測定装置による平鋼の平たん度測定方法を説明するための図である。
【
図6】平たん度測定装置による平鋼の平たん度測定方法の他の例を説明するための図である。
【
図7】
図1に示す平鋼の平たん度測定装置の定盤を、平鋼を搬送する搬送チェーンの搬送面の上方に設けられた自動搬送装置の定盤支持部上に設置した例の正面図である。
【
図10】
図7に示す自動搬送装置に備えられる永久磁石組立体を示すものであり、永久磁石組立体に設けられた永久磁石が平鋼を吸着する前(釈放した後)の状態が示されている。
【
図11】
図7に示す自動搬送装置に備えられる永久磁石組立体を示すものであり、永久磁石組立体に設けられた永久磁石が平鋼を吸着した後(釈放する前)の状態が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0014】
図1には、本発明の一実施形態に係る平鋼の平たん度測定装置の概略構成の正面が示されている。
図1に示す平鋼の平たん度測定装置1は、定盤2の上面2a上に載置された平鋼Sの長さ方向(平鋼Sの長さlが延びる方向)における平坦度を測定するものである。
ここで、平鋼Sは、熱間圧延によって製造されるものであり、平鋼Sの形状、寸法及びその許容差並びに外観及び質量については、JIS G 3194によって規定されている。平鋼Sは、一般に、
図12に示すように、幅wが25~200mm、厚さtが4.5~25mm、長さlが7m以下の矩形状を有している。この平鋼Sの長さ方向における平たん度の許容差についても、JIS G 3194によって規定されている。ここで、平鋼Sの長さ方向とは、
図12に示すように、平鋼Sの長さlが延びる方向、平鋼Sの幅方向は、平鋼Sの幅wが延びる方向、平鋼Sの厚さ方向とは、平鋼Sの厚さtが延びる方向である。そして、平鋼Sの長さ方向における平たん度とは、平鋼Sの長さ方向における上面Sa及び下面の凹凸状態を意味する。
【0015】
定盤2は、
図1乃至
図3に示すように、幅方向(
図2における左右方向、
図3における上下方向)、厚さ方向(
図1における上下方向、
図2における上下方向)、及び長さ方向(
図1における左右方向、
図3における左右方向)に延びる矩形状に形成された鋼材である。平鋼Sが載置される定盤2の上面2aは、機械加工により凹凸を排除した加工面となっている。平鋼Sは、
図1及び
図2に示すように、その長さ方向が定盤2の長さ方向と平行となり、かつその幅方向の中心が定盤2の幅方向の中心とほぼ一致するように、定盤2の上面2a上に載置される。
【0016】
そして、
図1に示す平鋼の平たん度測定装置1は、距離測定装置10と、平たん度算出装置40とを備えている。
距離測定装置10は、平鋼Sの長さ方向に沿って移動する測定装置本体11に、定盤2の上面2aまでの距離A(
図1及び
図2参照)を測定する定盤高さ用距離計13及び平鋼Sの上面Saまでの距離B(
図1及び
図2参照)を測定する平鋼高さ用距離計14を取り付けている。
【0017】
測定装置本体11は、定盤2の上面2a上を平鋼Sの長さ方向に沿って走行する走行台車で構成され、上方から見て矩形状の台車基部11aと、台車基部11a上に設けられた箱型の測定部11bとを備えている。台車基部11aの四隅には、定盤2の上面2a上を走行する4つの車輪12が設けられている。測定装置本体11は、定盤2の上面2a上にある平鋼Sを跨ぐような形で、平鋼Sの長さ方向、即ち定盤2の上面2a上を定盤2の長さ方向一端側(
図1における左端側)から長さ方向他端側(
図1における右端側)に向けて矢印Xで示す方向と、定盤2の上面2a上を定盤2の長さ方向他端側から長さ方向一端側に向けて矢印Yで示す方向との双方向に走行可能となっている。定盤2の長さ方向一端には、測定装置本体11のオーバーラン防止プレート32aが設けられ、定盤2の長さ方向他端にも、測定装置本体11のオーバーラン防止プレート32bが設けられている。
【0018】
測定装置本体11は、
図1乃至
図3に示すように、測定装置本体11を平鋼Sの長さ方向に走行させる駆動部としての駆動モータ29に接続されている。測定装置本体11の測定部11bは、定盤2の長さ方向一端側に設けられた第1スプロケット27aと定盤2の長さ方向他端側に設けられた第2スプロケット27bとに掛け渡された駆動チェーン30に接続部31を介して接続されている。駆動モータ29の回転軸は第1スプロケット27aの回転軸28aに接続されている。駆動モータ29の回転軸が回転することにより第1スプロケット27aが回転し、これにより駆動チェーン30が第2スプロケット27bとともに回転して、接続部31を介して測定装置本体11が平鋼Sの長さ方向に走行する。定盤2の後面(
図2における右面、
図3における上面)には、
図2に示すように、定盤2の長さ方向に延びるL字型の取付板24が取り付けられ、取付板24の上面には
図2及び
図3に示すように定盤2の背面に沿う定盤2の長さ方向に延びるU字型の取付板25が取り付けられている。取付板25の長さ方向一端側に第1スプロケット27aの回転軸28aを回転可能に軸支する取付板部26aが取り付けられるとともに、取付板25の長さ方向他端側に第2スプロケット27bの回転軸28bを回転可能に軸支する取付板部26bが取り付けられている。
【0019】
また、定盤2の前面(
図2における左面、
図3における下面)には、
図1乃至
図3に示すように、定盤2の長さ方向に延びるL字型の取付板21が取り付けられている。この取付板21の長さ方向一端側には上方に延びる第1支持板22aが取り付けられ、取付板21の長さ方向他端側には上方に延びる第2支持板22bが取り付けられている。そして、第1支持板22aの上端近傍には、第1リミットスイッチ23aが支持され、第2支持板22bの上端近傍には、第2リミットスイッチ23bが支持されている。そして、測定装置本体11の測定部11bには、第1リミットスイッチ23a及び第2リミットスイッチ23bの双方に接触可能なストライカー15が設けられている。
【0020】
そして、駆動モータ29は、
図1に示すように、駆動モータ29の駆動を制御する制御盤50に接続されている。制御盤50は、操作盤60及び第1リミットスイッチ23a、第2リミットスイッチ23bに接続されている。
測定装置本体11は、
図5に示すように、定盤2の長さ方向一端側(左端側)にあるときにおいてストライカー15が第1リミットスイッチ23aに接触していることを条件に、作業者が、操作盤60の駆動スイッチをONにする。すると、制御盤50は駆動モータ29を駆動して第1スプロケット27a、第2スプロケット27b及び駆動チェーン30を回転させて測定装置本体11が矢印Xで示す方向に走行するよう制御する。そして、測定装置本体11が矢印X方向に走行し、測定装置本体11に設けられたストライカー15が第2リミットスイッチ23bに接触すると、制御盤50は駆動モータ29の駆動を停止して測定装置本体11が停止するよう制御する。その後、作業者が、操作盤60の駆動スイッチをOFFにする。
【0021】
また、測定装置本体11は、
図6に示すように、定盤2の長さ方向他端側(右端側)にあるときにおいてストライカー15が第2リミットスイッチ23bに接触していることを条件に、作業者が、操作盤60の駆動スイッチをONにする。すると、制御盤50は駆動モータ29を駆動して第1スプロケット27a、第2スプロケット27b及び駆動チェーン30を前述と反対側に回転させて測定装置本体11が矢印Y方向に走行するよう制御する。そして、測定装置本体11が矢印Yで示す方向に走行し、測定装置本体11に設けられたストライカー15が第1リミットスイッチ23aに接触すると、制御盤50は駆動モータ29の駆動を停止して測定装置本体11が停止するよう制御する。その後、作業者が、操作盤60の駆動スイッチをOFFにする。
【0022】
また、測定装置本体11に設けられた定盤高さ用距離計13は、
図2及び
図3に示すように、測定部11bの幅方向の後端部(
図2における右端部、
図3における上端部)近傍に設けられたレーザー距離計で構成されている。測定装置本体11の台車基部11aの定盤高さ用距離計13に対し上下方向で対向する位置には、
図2及び
図3に示すように、定盤高さ用距離計13からのレーザー光が通光可能となるように貫通孔11cが形成されている。定盤高さ用距離計13は、測定装置本体11が平鋼Sの長さ方向に沿って移動する際に、定盤高さ用距離計13から定盤2の上面2aまでの距離A(
図1及び
図2参照)を測定する。
【0023】
また、測定装置本体11に設けられた平鋼高さ用距離計14は、
図2及び
図3に示すように、測定部11bの幅方向の中央部近傍に設けられたレーザー距離計で構成されている。測定装置本体11の台車基部11aの平鋼高さ用距離計14に対し上下方向で対向する位置には、
図2及び
図3に示すように、平鋼高さ用距離計14からのレーザー光が通光可能となるように貫通孔11dが形成されている。平鋼高さ用距離計14は、測定装置本体11が平鋼Sの長さ方向に沿って移動する際に、平鋼高さ用距離計14から平鋼Sの上面Saまでの距離B(
図1及び
図2参照)を測定する。
【0024】
測定装置本体11が、ストライカー15が第1リミットスイッチ23aに接触している状態から第2リミットスイッチ23bに接触する状態まで移動すると、平鋼高さ用距離計14による平鋼高さ用距離計14から平鋼Sの上面Saまでの距離Bの測定は、平鋼Sの長さ方向の全長について行われる。これは、測定装置本体11が、ストライカー15が第2リミットスイッチ23bに接触している状態から第1リミットスイッチ23aに接触する状態まで反対方向に移動した場合も同様である。
また、測定装置本体11が、ストライカー15が第1リミットスイッチ23aに接触している状態から第2リミットスイッチ23bに接触する状態まで移動すると、定盤高さ用距離計13による定盤高さ用距離計13から定盤2の上面2aまでの距離Aの測定は、平鋼Sの長さ方向の全長に相当する分について行われる。これは、測定装置本体11が、ストライカー15が第2リミットスイッチ23bに接触している状態から第1リミットスイッチ23aに接触する状態まで反対方向に移動した場合も同様である。
【0025】
ここで、定盤高さ用距離計13及び平鋼高さ用距離計14による前述の距離A,Bの測定に際し、測定装置本体11は300m/secの走行速度で走行し、定盤高さ用距離計13及び平鋼高さ用距離計14の測定周期は500msec、200mmピッチで距離A,Bを測定する。
定盤高さ用距離計13及び平鋼高さ用距離計14が200mmピッチで定盤2の上面2aまでの距離A及び平鋼Sの上面Saまでの距離Bのそれぞれを測定することとしたのは、平鋼Sの長さ方向の平たん度に影響する温度ひずみのピッチ性を確認する理由による。平鋼Sの長さ方向の平たん度は、平鋼Sを冷却する設備(冷却床製品徐冷定盤とその冷却床製品徐冷定盤に配置されているリブ)での平鋼Sの長さ方向の温度差による「ひずみ」の影響を受ける。そのため、本実施形態では、冷却床製品徐冷定盤のリブ等の長さ方向を考慮し、冷却床製品徐冷定盤による温度ひずみのピッチ性を確認できる200mmピッチで前述の距離A,Bのそれぞれを測定することとした。
【0026】
また、平鋼の平たん度測定装置1を構成する平たん度算出装置40は、
図1に示すように、測定データ収集部41、平たん度算出部42、及び表示部43を備えている。平たん度算出装置40は、演算処理機能を有するコンピュータシステムであり、記憶装置(図示せず)にインストールされたコンピュータプログラムの命令に従って、測定データ収集部41(ステップS1、ステップS3、及びステップS4、
図4参照)、平たん度算出部42(ステップS5)、及び表示部43(ステップS6)の各機能を実行する。
【0027】
平たん度算出装置40は、距離測定装置10の定盤高さ用距離計13で測定された定盤2の上面2aまでの距離A及び平鋼高さ用距離計14で測定された平鋼Sの上面Saまでの距離Bを用いて平鋼Sの長さ方向における平たん度を算出する。
平たん度算出装置40の測定データ収集部41には、入力装置44が接続されている。作業者は、平鋼Sの平たん度の測定に際し、入力装置44に収集開始信号を入力し、測定データ収集部41は、入力装置44からの収集開始信号に基づいてスキャニングを開始する。
【0028】
そして、測定データ収集部41は、距離測定装置10が平鋼Sの長さ方向に沿って移動する際に測定された、定盤高さ用距離計13から定盤2の上面2aまでの距離Aと、平鋼高さ用距離計14から平鋼Sの上面Saまでの距離Bとを収集する。
そして、作業者が入力装置44に収集停止信号を入力すると、測定データ収集部41は、入力装置44からの収集停止信号に基づいてスキャニングを停止する。
また、平たん度算出装置40の平たん度算出部42は、測定データ収集部41で収集された定盤高さ用距離計13から定盤2の上面2aまでの距離Aと、平鋼高さ用距離計14から平鋼Sの上面Saまでの距離Bとを用いて平鋼Sの長さ方向における平たん度を算出する。
【0029】
ここで、平たん度算出部42は、次の(1)式により平鋼Sの長さ方向における平たん度を算出する。
F=(A-B)-(Bの長さ方向における最大値) …(1)
ここで、F:平たん度、A:定盤2の上面2aまでの距離、B:平鋼Sの上面Saまでの距離
また、平たん度算出装置40の表示部43は、平たん度算出部42による算出結果、即ち平鋼Sの長さ方向における平たん度を測定ピッチ200mmごとに表示する。
【0030】
次に、
図4及び
図5を参照して、平たん度測定装置による平鋼の平たん度測定方法について説明する。
図4は、
図1に示す平鋼の平たん度測定装置における処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図5は、平たん度測定装置による平鋼の平たん度測定方法を説明するための図である。
先ず、作業者は、
図5に示すように、距離測定装置10が、定盤2の長さ方向一端側(左端側)にあるときにおいてストライカー15が第1リミットスイッチ23aに接触していることを確認する。
この状態で、作業者は、入力装置44に収集開始信号を入力すると、平たん度算出装置40の測定データ収集部41は、ステップS1(
図4参照)において、スキャニングを開始する。
【0031】
次いで、作業者が、操作盤60の駆動スイッチをONにする。すると、制御盤50は駆動モータ29を駆動して第1スプロケット27a、第2スプロケット27b及び駆動チェーン30を回転させて測定装置本体11が矢印Xで示す方向に走行するよう制御する。
これにより、距離測定装置10の測定装置本体11は、ステップS2において、平鋼Sの長さ方向、即ち定盤2の上面2a上を定盤2の一端側から他端側に向けて矢印Xで示す方向に移動するとともに、定盤高さ用距離計13は、この測定装置本体11の移動の際に、定盤高さ用距離計13から定盤2の上面2aまでの距離Aを測定し、平鋼高さ用距離計14は、平鋼高さ用距離計14から平鋼Sの上面Saまでの距離Bを測定する。
【0032】
ここで、定盤高さ用距離計13及び平鋼高さ用距離計14による前述の距離A,Bの測定に際し、測定装置本体11は300m/secの走行速度で走行し、定盤高さ用距離計13及び平鋼高さ用距離計14の測定周期は500msec、200mmピッチで距離A,Bを測定する。
そして、測定装置本体11に設けられたストライカー15が第2リミットスイッチ23bに接触すると、制御盤50は駆動モータ29の駆動を停止して測定装置本体11が停止するよう制御する。その後、作業者が、操作盤60の駆動スイッチをOFFにする。
【0033】
次いで、ステップS3において、平たん度算出装置40の測定データ収集部41は、距離測定装置10が平鋼Sの長さ方向に沿って移動する際に測定された、定盤高さ用距離計13から定盤2の上面2aまでの距離Aと、平鋼高さ用距離計14から平鋼Sの上面Saまでの距離Bとを収集する。
次いで、作業者が、入力装置44に収集停止信号を入力すると、平たん度算出装置40の測定データ収集部41は、ステップS4において、スキャニングを停止する。
次いで、ステップS5において、平たん度算出装置40の平たん度算出部42は、ステップS3において収集された定盤高さ用距離計13から定盤2の上面2aまでの距離Aと、平鋼高さ用距離計14から平鋼Sの上面Saまでの距離Bとを用いて前述の(1)式により平鋼Sの長さ方向における平たん度を算出する。
【0034】
最後に、ステップS6において、平たん度算出装置40の表示部43は、ステップS5における算出結果、即ち平鋼Sの長さ方向における平たん度を測定ピッチ200mmごとに表示する。
これにより、平たん度測定装置1による平鋼Sの平たん度の測定が終了する。
なお、平たん度測定装置1による平鋼Sの平たん度の測定の前に、距離測定装置10における0点調整を行うことが好ましい。
【0035】
この0点調整は、定盤2の上面2a上に平鋼Sを載せない状態で、測定装置本体11を定盤2の上面2a上を定盤2の一端側から他端側に向けて矢印Xで示す方向あるいは定盤2の他端側から一端側に向けて矢印Yで示す方向に500mm移動させて、定盤高さ用距離計13から定盤2の上面2aまでの距離Aを定盤高さ用距離計13によって測定し、平鋼高さ用距離計14から平鋼Sの上面Sa(この場合、平鋼Sを載せていないので、定盤2の上面2a)までの距離Bを平鋼高さ用距離計14によって測定する。そして、当該距離A-当該距離Bの絶対値を算出し、その絶対値が0.05mm以下か否かを確認する。当該絶対値が0.05mm以下でない場合、定盤高さ用距離計13及び平鋼高さ用距離計14の位置合わせを行って、距離A-距離Bの絶対値が0.05mm以下に調整するものである。なお、0点調整は、自動起動条件として自動点検することが好ましい。
【0036】
また、ブロックゲージによる校正を月に1回行うことが好ましい。
このブロックゲージによる校正は、定盤2の上面2a上にブロックゲージを載せ、距離測定装置10を定盤2の上面2a上を定盤2の一端側から他端側に向けて矢印Xで示す方向あるいは定盤2の他端側から一端側に向けて矢印Yで示す方向に500mm移動させて、定盤高さ用距離計13から定盤2の上面2aまでの距離Aを定盤高さ用距離計13によって測定し、平鋼高さ用距離計14からブロックゲージの上面までの距離Bを平鋼高さ用距離計14によって測定する。当該距離A-当該距離Bの絶対値を算出し、その絶対値が許容範囲内か否かを確認する。当該絶対値が許容範囲内でない場合、定盤高さ用距離計13及び平鋼高さ用距離計14の位置合わせを行って、距離A-距離Bの絶対値が許容範囲内となるように調整するものである。
【0037】
また、距離測定装置10の測定装置本体11は、ステップS2において、定盤2の上面2a上を定盤2の一端側から他端側に向けて矢印Xで示す方向に移動する場合に限らず、
図6に示すように、測定装置本体11を定盤2の上面2a上を定盤2の他端側から一端側に向けて矢印Yで示す方向に移動させ、定盤高さ用距離計13が、この測定装置本体11の移動の際に、定盤高さ用距離計13から定盤2の上面2aまでの距離Aを測定し、平鋼高さ用距離計14が、平鋼高さ用距離計14から平鋼Sの上面Saまでの距離Bを測定するようにしてもよい。
【0038】
このように、本実施形態に係る平鋼の平たん度測定装置1によれば、平鋼Sの長さ方向に沿って移動する測定装置本体11に、定盤2の上面2aまでの距離Aを測定する定盤高さ用距離計13及び平鋼Sの上面Saまでの距離を測定する平鋼高さ用距離計14を取り付けた距離測定装置10と、定盤高さ用距離計13で測定された定盤2の上面2aまでの距離A及び平鋼高さ用距離計14で測定された平鋼Sの上面Saまでの距離Bを用いて平鋼の長さ方向における平たん度を算出する平たん度算出装置40とを備えている。
【0039】
また、本実施形態に係る平鋼の平たん度測定方法によれば、平鋼Sの長さ方向に沿って移動する測定装置本体11に、定盤2の上面2aまでの距離Aを測定する定盤高さ用距離計13及び平鋼Sの上面Saまでの距離Bを測定する平鋼高さ用距離計14を取り付けた距離測定装置10の測定装置本体11を平鋼Sの長さ方向に沿って移動させて、定盤高さ用距離計13によって定盤2の上面2aまでの距離Aを測定するとともに、平鋼高さ用距離計14によって平鋼Sの上面Saまでの距離Bを測定する(ステップS2)。そして、平たん度算出装置40により、定盤高さ用距離計13によって測定された定盤2の上面2aまでの距離A及び平鋼高さ用距離計14によって測定された平鋼Sの上面Saまでの距離Bを用いて平鋼Sの長さ方向における平たん度を算出する(ステップS3、ステップS5)。
【0040】
これにより、平鋼Sの長さ方向における平たん度を安全にかつ精度高く測定することができる。即ち、人手により「隙見ゲージ」を用いて平鋼Sと定盤2の上面2aとの間の隙間の測定を行う必要はなく、火傷などの危険リスクがなく、安全である。また、目視で平鋼Sと定盤2の上面2aとの間の隙間が長さ方向における最大の所を見つけて「隙見ゲージ」を用いてその隙間を測定する方法でもなく、平鋼Sの長さ方向の全長における平たん度を距離測定装置10及び平たん度算出装置40によって測定するので、平たん度の測定精度も高い。
【0041】
また、人手による「隙見ゲージ」を用いての平鋼Sと定盤2の上面2aとの間の隙間の測定では、最小隙測定値0.3mm以下の測定は困難である。これに対して、本実施形態に係る平鋼の平たん度測定装置1及び平たん度測定方法によれば、距離測定装置10の測定装置本体11を平鋼Sの長さ方向に沿って移動させて、定盤高さ用距離計13によって定盤2の上面2aまでの距離Aを測定するとともに、平鋼高さ用距離計14によって平鋼Sの上面Saまでの距離Bを測定する(ステップS2)。そして、平たん度算出装置40により、定盤高さ用距離計13によって測定された定盤2の上面2aまでの距離A及び平鋼高さ用距離計14によって測定された平鋼Sの上面Saまでの距離Bを用いて平鋼Sの長さ方向における平たん度を算出する(ステップS3、ステップS5)。定盤高さ用距離計13及び平鋼高さ用距離計14としてレーザー距離計を用いた距離の測定では、当該レーザー距離計の最小分解能が0.05mm以下であり、最小隙測定値0.3mm以下の測定を容易に行うことができる。
【0042】
また、本実施形態に係る平鋼の平たん度測定装置1及び平たん度測定方法によれば、平たん度算出装置は、前述の(1)式により平鋼Sの長さ方向における平たん度を算出する。
これにより、平鋼Sの長さ方向における平たん度を精度高く算出することができる。
また、本実施形態に係る平鋼の平鋼の平たん度測定装置1によれば、測定装置本体11は、定盤2の上面2a上を平鋼Sの長さ方向に沿って走行する走行台車で構成される。
これにより、平たん度測定装置1を定盤2の上面2a上を平鋼Sの長さ方向に沿って走行する走行台車を用いた簡単な構成で構成し、平鋼Sの長さ方向における平たん度を安全にかつ精度高く測定することができる。
また、本実施形態に係る平鋼の平たん度測定装置1によれば、測定装置本体11は、測定装置本体11を平鋼Sの長さ方向に沿って走行させる駆動部に接続されている。
これにより、駆動部によって走行台車で構成される測定装置本体11を、平鋼Sの長さ方向に沿って自動走行させることができる。
【0043】
次に、
図1に示す平鋼の平たん度測定装置の定盤を、平鋼を搬送する搬送チェーンの搬送面の上方に設けられた自動搬送装置の定盤支持部上に設置し、自動搬送装置によって平鋼Sを搬送面上から定盤上に載置するとともに、定盤上から搬送面上に載置する例について
図7乃至
図11を参照して説明する。
図7は、
図1に示す平鋼の平たん度測定装置の定盤を、平鋼を搬送する搬送チェーンの搬送面の上方に設けられた自動搬送装置の定盤支持部上に設置した一例の正面図である。
図8は、
図7の左側面図である。
図9は、
図7の平面図である。
以降の自動搬送装置の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の方向を示す用語については、
図7乃至
図11における矢印で記載した方向に基づいて定められる。
【0044】
図7乃至
図9に示す自動搬送装置100は、搬送チェーン140によって
図8における矢印aで示す後方向に搬送されてくる平鋼Sを、定盤支持部101a上に設置した定盤2の上面2a上に載置し、平たん度測定装置1によって平たん度を算出し終えた平鋼Sを搬送チェーン140の搬送面141上に載置するものである。
自動搬送装置100は、
図7乃至
図9に示すように、搬送チェーン140の搬送面141の上方に設けられており、搬送チェーン140の搬送方向(
図8における矢印aで示す後方向及び矢印bで示す前方向)に直交する左右方向に所定間隔を置いて立設された4本の支柱101を備えている。各支柱101は、
図8及び
図9に示すように、地上に支持されている作業用の足場102の前側に支持されている。
【0045】
そして、各支柱101の下端には、定盤支持部101aが設けられている。各定盤支持部101aの上面には、定盤2の長さ方向が左右方向となるように定盤2が設置される。
また、4本の支柱101のうち、左右方向中央において隣り合う2本の支柱101の上下方向中間部には、各支柱101から前方に向けて延びる移動体支持部材103が取り付けられている。また、各移動体支持部材103の後端には各移動体支持部材103から上方に向けて延びる第1支持部材104が取り付けられ、各移動体支持部材103の前端には移動体支持部材103から上方に向けて延びる第2支持部材105が取り付けられている。そして、第1支持部材104の上端及び第2支持部材105の上端は、第3支持部材106によって連結されている。また、左右方向で隣り合う2本の第1支持部材104の上下方向中間部は、シリンダ支持部材107によって連結されている。
【0046】
ここで、自動搬送装置100は、前後方向に移動する移動体108を備えている。移動体108は、
図7乃至
図9に示すように、前後方向、左右方向、及び上下方向に延びる矩形状部材で構成され、シリンダ支持部材107に取り付けられた移動体駆動シリンダ111によって前後方向に移動可能となっている。移動体108には、前後に所定間隔を置いて2本の左右方向に延びる回転軸109が移動体108を貫通するように設けられている。各回転軸109の左右方向両端には、ピニオンギヤ110が設けられ、各ピニオンギヤ110が、移動体支持部材103に設けられたラック(図示せず)上を前後方向に移動するようになっている。移動体駆動シリンダ111はシリンダ支持部材107に取り付けられ、移動体駆動シリンダ111のシリンダロッド112が連結部材113により移動体108に取り付けられている。
【0047】
また、自動搬送装置100は、上下方向に移動する永久磁石組立体昇降部材121を備えている。永久磁石組立体昇降部材121は、左右方向に細長く延びる部材であり、左右方向において所定ピッチで複数(本例では、9個)の永久磁石組立体130を取り付けている。永久磁石組立体昇降部材121は、移動体108に取り付けられた2台のボールジャッキ114によって昇降する上下方向に延びる2本のねじ軸115に取り付けられている。各ボールジャッキ114には、モータ118の駆動によってギヤボックス116を介して回転するウォーム軸としての入力軸117が入り込み、この入力軸117にウォームホイールとしてのねじ軸115が噛み合い、入力軸117の回転によりねじ軸115が昇降する。永久磁石組立体昇降部材121は、モータ118を駆動して各ねじ軸115が昇降することにより、昇降する。永久磁石組立体昇降部材121には、上下方向に延びる2本の案内軸120が取り付けられ、各案内軸120は、移動体108にリニアブッシュ119を介して挿通している。各案内軸120は、永久磁石組立体昇降部材121が昇降する際に永久磁石組立体昇降部材121の昇降を案内する。
【0048】
図10は、
図7に示す自動搬送装置に備えられる永久磁石組立体を示すものであり、永久磁石組立体に設けられた永久磁石が平鋼を吸着する前(釈放した後)の状態が示されている。また、
図11は、
図7に示す自動搬送装置に備えられる永久磁石組立体を示すものであり、永久磁石組立体に設けられた永久磁石が平鋼を吸着した後(釈放する前)の状態が示されている。
【0049】
永久磁石組立体130は、
図10及び
図11に示すように、永久磁石組立体昇降部材121の上面に取り付けられた中空の箱体137と、箱体137の上面に取り付けられたエアシリンダ131と、永久磁石組立体昇降部材121の下面に取り付けられた永磁ホルダ136を備えている。エアシリンダ131のシリンダロッド132には、中空の第1軸133が取り付けられている。第1軸133には、第2軸134が取り付けられている。第2軸134は、その上端のフランジ部134aが第1軸133の空間133aに位置して第1軸133に対し上下移動自在となっている。第2軸134の下端には、永磁ホルダ136内に平鋼Sの吸着用の複数の永久磁石135が取り付けられている。第2軸134の周囲には、第2軸134を上方へ付勢するばね部材138が巻回されている。
【0050】
図10に示すように、永久磁石135が平鋼Sを吸着する前(釈放した後)において、エアシリンダ131を動作(吸着動作)させると、シリンダロッド132が第1軸133とともに下降し、エアーで満たされた第1軸133の空間133a内にフランジ部134aがある第2軸134も
図11に示すようにばね部材138の付勢力に抗して第1軸133とともに下降し、第2軸134の下端に取り付けられた永久磁石135が平鋼Sの上面Saを吸着する。
【0051】
一方、
図11に示すように、永久磁石135が平鋼Sを吸着した後(釈放する前)において、エアシリンダ131の動作を停止(釈放動作)させると、シリンダロッド132が第1軸133とともに上昇し、第2軸134も最初はばね部材138の付勢力で上昇しその後第1軸133によって持ち上げられて上昇し、永久磁石135も上昇する。このとき、永久磁石135に吸着された平鋼Sは、
図11に示すように、永磁ホルダ136に当接して永久磁石135が平鋼Sの上面Saから離れ、永久磁石135による平鋼Sの吸着が解除され、平鋼Sは釈放される。
【0052】
次に、自動搬送装置100によって、搬送チェーン140によって
図8における矢印aで示す後方向に搬送されてくる平鋼Sを、定盤支持部101a上に設置した定盤2の上面2a上に載置する方法について説明する。
先ず、
図8に示すように、平鋼Sが搬送チェーン140によって
図8における矢印aで示す後方向に搬送されてくると、作業者が図示しない機側操作盤(図示せず)にて製品ストッパー(図示せず)の上昇ボタンを押し、製品ストッパーを上昇させる。
次いで、平鋼Sが製品ストッパーに到達したら、平鋼Sの幅方向の中心線CLSが前後方向の停止位置Xとなるので、作業者は機側操作盤にて搬送チェーン140の停止ボタンを押し、搬送チェーン140を停止させる。
【0053】
次いで、搬送チェーン140が停止した後、作業者は、図示しないペンダントスイッチでの押ボタンを操作し、移動体駆動シリンダ111を動作させて、移動体108を、
図8における矢印bで示す前方向に移動させ、永久磁石組立体昇降部材121の中心CL121が搬送チェーン140の搬送面141上の平鋼Sの幅方向の中心CLSとほぼ同一の位置となるまで移動体108を移動させる。
次いで、作業者は、ペンダントスイッチでの押ボタンを操作し、モータ118を駆動して各ねじ軸115を下降させて永久磁石組立体昇降部材121を
図8における矢印cで示す下方向に下降させる。この際に、永久磁石組立体昇降部材121に取り付けられた永久磁石組立体130の永磁ホルダ136が
図11に示すように平鋼Sの上面Saに対して隙間が空く位置まで永久磁石組立体昇降部材121を下降させる。
【0054】
次いで、作業者は、ペンダントスイッチでの押ボタンを操作し、永久磁石組立体130のエアシリンダ131を動作(吸着動作)させて、永久磁石135によって平鋼Sの上面Saを吸着する。
次いで、作業者は、ペンダントスイッチでの押ボタンを操作し、モータ118を駆動して各ねじ軸115を上昇させて、平鋼Sを永久磁石組立体130が吸着した永久磁石組立体昇降部材121を
図8における矢印dで示す上方向に上昇させる。
次いで、作業者は、ペンダントスイッチでの押ボタンを操作し、移動体駆動シリンダ111を動作させて、移動体108を、
図8における矢印aで示す後方向に移動させ、永久磁石組立体昇降部材121の中心CL121が定盤2の幅方向の中心とほぼ同一の位置となるまで移動体108を移動させる。
【0055】
次いで、作業者は、ペンダントスイッチでの押ボタンを操作し、モータ118を駆動して各ねじ軸115を下降させて、平鋼Sを永久磁石組立体130が吸着した永久磁石組立体昇降部材121を
図8における矢印cで示す下方向に下降させる。この際に、永久磁石135に吸着された平鋼Sが定盤2の上面2a上に載置されるまで永久磁石組立体昇降部材121を下降させる。
次いで、ペンダントスイッチでの押ボタンを操作し、永久磁石組立体130のエアシリンダ131の動作を停止(釈放動作)させて、永久磁石135による平鋼Sの吸着を解除し、平鋼Sを釈放する。
【0056】
これにより、平鋼Sは、定盤支持部101a上に設置した定盤2の上面2a上に平鋼Sの幅方向の中心が定盤2の幅方向の中心にほぼ一致した状態で載置される。
平鋼Sが定盤2の上面2a上に載置された後、作業者は、ペンダントスイッチでの押ボタンを操作し、モータ118を駆動して各ねじ軸115を上昇させて、永久磁石組立体昇降部材121を上昇させ、永久磁石組立体昇降部材121を元の位置に復帰させる。
その後、前述で説明した平鋼の平たん度測定方法によって平鋼Sの平たん度を測定する。
【0057】
平鋼Sの平たん度の測定が終了したら、作業者は、ペンダントスイッチでの押ボタンを操作し、モータ118を駆動して各ねじ軸115を下降させて永久磁石組立体昇降部材121を下降させる。この際に、永久磁石組立体昇降部材121に取り付けられた永久磁石組立体130の永磁ホルダ136が
図10に示すように平鋼Sの上面Saに当接する位置まで永久磁石組立体昇降部材121を下降させる。
次いで、作業者は、ペンダントスイッチでの押ボタンを操作し、永久磁石組立体130のエアシリンダ131を動作(吸着動作)させて、永久磁石135によって平鋼Sの上面Saを吸着する。
【0058】
次いで、作業者は、ペンダントスイッチでの押ボタンを操作し、モータ118を駆動して各ねじ軸115を上昇させて、平鋼Sを永久磁石組立体130が吸着した永久磁石組立体昇降部材121を上昇させる。
次いで、作業者は、ペンダントスイッチでの押ボタンを操作し、移動体駆動シリンダ111を動作させて、移動体108を前方向に移動させ、永久磁石組立体昇降部材121の中心CL121が搬送チェーン140の搬送面141上の平鋼Sの載置位置となるまで移動体108を移動させる。
【0059】
次いで、作業者は、ペンダントスイッチでの押ボタンを操作し、モータ118を駆動して各ねじ軸115を下降させて永久磁石組立体昇降部材121を下降させる。この際に、永久磁石135に吸着された平鋼Sが搬送チェーン140の搬送面141上に載置されるまで永久磁石組立体昇降部材121を下降させる。
次いで、ペンダントスイッチでの押ボタンを操作し、永久磁石組立体130のエアシリンダ131の動作を停止(釈放動作)させて、永久磁石135による平鋼Sの吸着を解除し、平鋼Sを釈放する。
【0060】
その後、作業者は、機側操作盤にて搬送チェーン140の走行ボタンを押し、搬送チェーン140を
図8における矢印bで示す前方向に走行させる。
これにより、搬送チェーン140によって
図8における矢印aで示す後方向に搬送されてくる平鋼Sを、定盤支持部101a上に設置した定盤2の上面2a上に載置し、平たん度測定装置10によって平たん度を算出し終えた平鋼Sを搬送チェーン140の搬送面141上に載置する一連の作業が終了する。
【0061】
ここで、この自動搬送装置100を用いた一連の作業においては、搬送チェーン140によって矢印aで示す後方向に搬送されてくる平鋼Sを、人手によって定盤支持部101a上に設置した定盤2の上面2a上に載置したり、また、その平鋼Sを定盤2の上面2aから搬送チェーン140の搬送面141上に載置したりする必要はない。このため、手などを高温の平鋼に接触するおそれはなく、安全かつ効率的に平鋼Sの平たん度の測定を含めた一連の作業を行うことができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、測定装置本体11は、平鋼Sの長さ方向に沿って移動するものであれば、定盤2の上面2a上を平鋼Sの長さ方向に沿って走行する走行台車で構成される必要は必ずしもない。例えば、測定装置本体11は、平鋼Sの長さ方向に沿って移動する天井クレーンなどであってもよい。
また、定盤高さ用距離計13は、測定部11bの幅方向の後端部(
図2における右端部)近傍に設置されているが、定盤2の上面2aまでの距離Aを測定できる位置であれば、設置位置はその位置に限られない。また、定盤高さ用距離計13の数は1つに限らず、複数であってもよい。
【0063】
また、平鋼高さ用距離計14は、測定部11bの幅方向の中央部近傍に設置されているが、平鋼Sの上面Saまでの距離Bを測定できる位置であれば、設置位置はその位置に限られない。また、平鋼高さ用距離計14の数は1つに限らず、複数であってもよい。
また、平たん度測定装置1を、
図7乃至
図9に示すように、その定盤2を、平鋼Sを搬送する搬送チェーン140の搬送面141の上方に設けられた自動搬送装置100の定盤支持部101a上に設置して例について説明したが、平たん度測定装置1の適用例はこの場合に限られない。
【実施例0064】
厚さtが12mm、幅wが200mm、長さlが6.0m、製品単重が112.8kg、製品温度が240℃の平鋼Sにつき、平たん度を
図1に示す平たん度測定装置1を用いて測定した。平たん度測定装置1は、
図7乃至
図9に示すように、その定盤2を、平鋼Sを搬送する搬送チェーン140の搬送面141の上方に設けられた自動搬送装置100の定盤支持部101a上に設置して測定を行った。
その結果、平鋼Sの長さ方向における200mmピッチごとの平たん度(平たん度が0.3mm以下の場合を含む)を平鋼Sの全長にわたって安全かつ精度高く測定することができた。
【0065】
また、自動搬送装置100による搬送チェーン140の搬送面141上から定盤2の上面2a上への平鋼Sの誘導、及び定盤2の上面2a上から搬送チェーン140の搬送面141上への平鋼Sの誘導も安全かつ迅速に行うことができた。