(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052060
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】消耗品消費装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20240404BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20240404BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B41J29/38 204
G06Q10/00 300
B41J2/175 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158505
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】木元 太一朗
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB20
2C056EB50
2C056EC67
2C061AP01
2C061AP07
2C061AQ05
2C061AQ06
2C061HK11
2C061HN08
2C061HN15
5L010AA20
5L049AA20
(57)【要約】
【課題】装置の状態に適合しない消耗品が収容された場合において、ユーザによる消耗品の不正利用を防止できる手段を提供する。
【解決手段】プリンタ10は、インクを収容するサブタンク30と、制御部50とを備えている。制御部50は、非契約状態と、契約状態とに遷移する。制御部50は、インクを消費させる消費処理(S24)と、非契約状態においてサブタンク30に貯留されたインクが非契約状態に適合しない契約インクであるか否かを判断する第1判断処理(S41)と、インクが契約インクであると判断した場合に、契約インクの残量であるサブタンク契約残量が第1閾値以上であるか否かを判断する第2判断処理(S46、S51)と、サブタンク契約残量が第1閾値TH1以上であると判断した場合に、消費処理の実行を制限する制限処理(S28、S47からS49、S52、S53)と、を実行する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消耗品を収容する収容部と、
制御部とを備え、
上記制御部は、
第1状態と、第2状態とに遷移し、
上記消耗品を消費させる消費処理と、
上記第1状態において上記収容部に収容された上記消耗品が上記第1状態に適合しない第1消耗品であるか否かを判断する第1判断処理と、
上記第1判断処理において上記消耗品が上記第1消耗品であると判断した場合に、上記第1消耗品の残り寿命である第1残り寿命が第1閾値以上であるか否かを判断する第2判断処理と、
上記第2判断処理において上記第1残り寿命が上記第1閾値以上であると判断した場合に、上記消費処理の実行を制限する制限処理と、を実行する消耗品消費装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記第1判断処理において上記消耗品が上記第1消耗品ではないと判断した場合、または上記第2判断処理において上記第1残り寿命が上記第1閾値未満であると判断した場合に、上記消費処理を実行する請求項1に記載の消耗品消費装置。
【請求項3】
上記収容部は、上記第1消耗品および第2消耗品を収容可能であり、
上記制御部は、上記第2判断処理において上記第1残り寿命が上記第1閾値未満であると判断した場合でも、上記消費処理による上記消耗品の消費量が上記第2消耗品の残り寿命である第2残り寿命以上であると判断した場合には、上記消費処理の実行を制限する請求項2に記載の消耗品消費装置。
【請求項4】
上記制御部は、上記第2判断処理において上記第1残り寿命が上記第1閾値以上であると判断した後に、上記第2判断処理において上記第1残り寿命が上記第1閾値未満であると判断した場合に、上記制限処理による制限を解除する請求項1に記載の消耗品消費装置。
【請求項5】
上記消耗品は印刷剤であり、
上記制御部は、上記第1残り寿命が上記第1閾値未満となるように、上記収容部から上記消耗品を排出させる排出処理をさらに実行する請求項4に記載の消耗品消費装置。
【請求項6】
上記制御部は、
上記第2判断処理において上記第1残り寿命が上記第1閾値以上であると判断した回数をカウントするカウント処理をさらに実行し、
上記制限処理において、上記カウント処理でカウントされた回数が第2閾値以上である場合には、当該回数が上記第2閾値未満である場合と比べて、上記消費処理の実行をより強く制限する請求項1に記載の消耗品消費装置。
【請求項7】
上記消耗品は液体であり、
上記収容部は、
上記消耗品を貯留するカートリッジを装着可能な装着ケースと、
上記装着ケースに装着されたカートリッジから流入した上記消耗品を貯留するタンクとを含み、
上記制御部は、上記第1判断処理において上記消耗品が上記第1消耗品であると判断した場合に、上記装着ケースに装着されたカートリッジから上記タンクに流入した上記消耗品の量に基づき、上記第1残り寿命を決定する第1決定処理をさらに実行する請求項6に記載の消耗品消費装置。
【請求項8】
上記収容部は、上記第1消耗品および第2消耗品を収容可能であり、
上記制御部は、
上記第2消耗品を貯留したカートリッジが上記装着ケースに装着された時点で当該カートリッジに貯留された上記第2消耗品の量と、上記タンクに貯留された上記第1消耗品の量と、上記タンクに貯留された上記第2消耗品の量とに基づき、上記第1状態における上記消耗品の残り寿命である第3残り寿命を決定する第2決定処理をさらに実行し、
上記第1状態における上記消費処理による上記消耗品の消費量が上記第2決定処理で決定された上記第3残り寿命以上であると判断した場合に、上記消費処理の実行を制限する請求項7に記載の消耗品消費装置。
【請求項9】
上記第1状態は、上記消耗品を配送する契約が締結されていない状態であり、
上記第2状態は、上記契約が締結されている状態であり、
上記制御部は、上記第1判断処理において、上記消耗品が上記契約に基づき配送される消耗品である場合に上記第1消耗品であると判断する請求項1~8のいずれかに記載の消耗品消費装置。
【請求項10】
消耗品を収容する収容部と、制御部とを備えた消耗品消費装置のプログラムであって、 上記制御部は、第1状態と、第2状態とに遷移し、
上記制御部に、
上記消耗品を消費させる消費処理と、
上記第1状態において上記収容部に収容された上記消耗品が上記第1状態に適合しない第1消耗品であるか否かを判断する第1判断処理と、
上記第1判断処理において上記消耗品が上記第1消耗品であると判断した場合に、上記第1消耗品の残り寿命である第1残り寿命が第1閾値以上であるか否かを判断する第2判断処理と、
上記第2判断処理において上記第1残り寿命が上記第1閾値以上であると判断した場合に、上記消費処理の実行を制限する制限処理と、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消耗品を消費する消耗品消費装置、およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクを収容するタンクを装着可能で、サブタンクを有する画像記録装置において、装着されたタンクが所定の条件に適合しない場合にはタンクからサブタンクへインクを補充せず、装着されたタンクが所定の条件に適合した場合にはタンクからサブタンクへインクを補充することが記載されている。この画像記録装置では、所定の契約が締結されている状態で特定タンクまたは一般タンクが装着されている場合、または所定の契約が締結されていない状態で一般タンクが装着されている場合には、所定の条件に適合すると判断され、所定の契約が締結されていない状態で特定タンクが装着されている場合には、所定の条件に適合しないと判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下、消耗品消費装置の例として、インクを貯留したカートリッジを装着可能なプリンタについて考える。この場合にも、プリンタの状態に適合しないインクが使用されることがある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の状態に適合しない消耗品が収容された場合において、ユーザによる消耗品の不正利用を防止できる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明の消耗品消費装置は、消耗品を収容する収容部と、制御部とを備えている。上記制御部は、第1状態と、第2状態とに遷移し、上記消耗品を消費させる消費処理と、上記第1状態において上記収容部に収容された上記消耗品が上記第1状態に適合しない第1消耗品であるか否かを判断する第1判断処理と、上記第1判断処理において上記消耗品が上記第1消耗品であると判断した場合に、上記第1消耗品の残り寿命である第1残り寿命が第1閾値以上であるか否かを判断する第2判断処理と、上記第2判断処理において上記第1残り寿命が上記第1閾値以上であると判断した場合に、上記消費処理の実行を制限する制限処理と、を実行する。
【0007】
上記消耗品消費装置は、第1状態において、収容部に収容された第1消耗品の残り寿命が第1閾値以上である場合に、消費処理の実行を制限する。したがって、装置の状態に適合しない消耗品が収容された場合において、ユーザによる消耗品の不正利用を防止できる。
【0008】
(2) 好ましくは、上記制御部は、上記第1判断処理において上記消耗品が上記第1消耗品ではないと判断した場合、または上記第2判断処理において上記第1残り寿命が上記第1閾値未満であると判断した場合に、上記消費処理を実行してもよい。
【0009】
(3) 好ましくは、上記収容部は、上記第1消耗品および第2消耗品を収容可能であり、上記制御部は、上記第2判断処理において上記第1残り寿命が上記第1閾値未満であると判断した場合でも、上記消費処理による上記消耗品の消費量が上記第2消耗品の残り寿命である第2残り寿命以上であると判断した場合には、上記消費処理の実行を制限してもよい。
【0010】
(4) 好ましくは、上記制御部は、上記第2判断処理において上記第1残り寿命が上記第1閾値以上であると判断した後に、上記第2判断処理において上記第1残り寿命が上記第1閾値未満であると判断した場合に、上記制限処理による制限を解除してもよい。
【0011】
(5) 好ましくは、上記消耗品は印刷剤であり、上記制御部は、上記第1残り寿命が上記第1閾値未満となるように、上記収容部から上記消耗品を排出させる排出処理をさらに実行してもよい。
【0012】
(6) 好ましくは、上記制御部は、上記第2判断処理において上記第1残り寿命が上記第1閾値以上であると判断した回数をカウントするカウント処理をさらに実行し、上記制限処理において、上記カウント処理でカウントされた回数が第2閾値以上である場合には、当該回数が上記第2閾値未満である場合と比べて、上記消費処理の実行をより強く制限してもよい。
【0013】
(7) 好ましくは、上記消耗品は液体であり、上記収容部は、上記消耗品を貯留するカートリッジを装着可能な装着ケースと、上記装着ケースに装着されたカートリッジから流入した上記消耗品を貯留するタンクとを含み、上記制御部は、上記第1判断処理において上記消耗品が上記第1消耗品であると判断した場合に、上記装着ケースに装着されたカートリッジから上記タンクに流入した上記消耗品の量に基づき、上記第1残り寿命を決定する第1決定処理をさらに実行してもよい。
【0014】
(8) 好ましくは、上記収容部は、上記第1消耗品および第2消耗品を収容可能であり、上記制御部は、上記第2消耗品を貯留したカートリッジが上記装着ケースに装着された時点で当該カートリッジに貯留された上記第2消耗品の量と、上記タンクに貯留された上記第1消耗品の量と、上記タンクに貯留された上記第2消耗品の量とに基づき、上記第1状態における上記消耗品の残り寿命である第3残り寿命を決定する第2決定処理をさらに実行し、上記第1状態における上記消費処理による上記消耗品の消費量が上記第2決定処理で決定された上記第3残り寿命以上であると判断した場合に、上記消費処理の実行を制限してもよい。
【0015】
(9) 好ましくは、上記第1状態は、上記消耗品を配送する契約が締結されていない状態であり、上記第2状態は、上記契約が締結されている状態であり、上記制御部は、上記第1判断処理において、上記消耗品が上記契約に基づき配送される消耗品である場合に上記第1消耗品であると判断してもよい。
【0016】
(10) 本発明のプログラムは、消耗品を収容する収容部と、制御部とを備えた消耗品消費装置のプログラムである。上記制御部は、第1状態と、第2状態とに遷移する。上記プログラムは、上記制御部に、上記消耗品を消費させる消費処理と、上記第1状態において上記収容部に収容された上記消耗品が上記第1状態に適合しない第1消耗品であるか否かを判断する第1判断処理と、上記第1判断処理において上記消耗品が上記第1消耗品であると判断した場合に、上記第1消耗品の残り寿命である第1残り寿命が第1閾値以上であるか否かを判断する第2判断処理と、上記第2判断処理において上記第1残り寿命が上記第1閾値以上であると判断した場合に、上記消費処理の実行を制限する制限処理と、を実行させる。
【0017】
上記プログラムは、第1状態において、収容部に収容された第1消耗品の残り寿命が第1閾値以上である場合に、消耗品消費装置による消費処理の実行を制限する。したがって、装置の状態に適合しない消耗品が収容された場合において、ユーザによる消耗品の不正利用を防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、装置の状態に適合しない消耗品が収容された場合において、ユーザによる消耗品の不正利用を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、プリンタ10の外観斜視図であり、
図1(A)はカバー13が閉状態であるときを示し、
図1(B)はカバー13が開状態であるときを示す。
【
図2】
図2は、プリンタ10の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、キャリッジ21の移動範囲を示す図である。
【
図4】
図4は、メンテナンス部40の構成を示す図である。
【
図6】
図6は、メイン処理のフローチャートである。
【
図7】
図7は、装着カートリッジ確認処理のフローチャートである。
【
図8】
図8は、ドットカウント処理のフローチャートである。
【
図9】
図9は、平衡計算処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、プリンタ10が使用可能に水平面に設置された使用姿勢を基準として上下方向7が定義され、プリンタ10の開口12が位置する面を前面として前後方向8が定義され、プリンタ10を前面から見て左右方向9が定義される。上下方向7、前後方向8、および左右方向9は、互いに直交している。
【0021】
[プリンタ10の概要]
本実施形態に係るプリンタ10は、インク(消耗品、印刷剤、および液体の一例)を消費して印刷などを行う消耗品消費装置の一例である。プリンタ10は、インクジェット記録方式でシートに画像を記録する。プリンタ10は、概ね直方体形状の筐体11を備えている。プリンタ10は、ファクシミリ機能、スキャン機能、およびコピー機能などの機能を有する、いわゆる「複合機」であってもよい。
【0022】
図1および
図2に示されるように、筐体11の内部には、キャリッジ21、複数のノズル23を有するヘッド22、ヘッド22に対面するプラテン24、給送トレイ25、給送ローラ26、搬送ローラ27、排出ローラ28、排出トレイ29、サブタンク30、インク残量センサ32、カートリッジ60を装着可能な装着ケース34、およびチューブ36が位置する。
【0023】
プリンタ10は、給送ローラ26および搬送ローラ27を駆動させて、給送トレイ25に支持されたシートをプラテン24の位置まで搬送する。次に、プリンタ10は、装着ケース34に装着されたカートリッジ60からサブタンク30およびチューブ36を経由して供給されたインクを、ヘッド22のノズル23から吐出させる。これにより、プラテン24に支持されたシートにインクが着弾し、シート上に画像が記録される。プリンタ10は、排出ローラ28を駆動させて、画像が記録されたシートを排出トレイ29に排出する。
【0024】
キャリッジ21は、左右方向9に延伸する2本のガイドレール37、38によって支持されており、左右方向9に往復移動する。ヘッド22は、キャリッジ21に搭載されている。プリンタ10は、左右方向9の一方から他方へキャリッジ21を移動させる過程で、ヘッド22のノズル23からインクを吐出させる。これにより、ヘッド22に対面するシートの一部の領域に画像が記録される。次に、プリンタ10は、次に画像が記録されるべき領域がヘッド22に対面するように、搬送ローラ27にシートを搬送させる。これらの処理を交互に繰り返し実行させることによって、1枚のシートに画像が記録される。
【0025】
[カートリッジ60]
図1(B)に示されるように、筐体11の前面の右端部には、開口17が位置する。筐体11は、開口17を覆うカバー13を備える。カバー13は、筐体11に回動可能に支持されており、
図1(A)に示される閉状態と、
図1(B)に示される開状態との間で状態変化する。開口17の奥に広がる筐体11内部の収容空間には、4つの装着ケース34が位置する。4つの装着ケース34には、それぞれ、ブラック、マゼンタ、シアン、およびイエローのインクを貯留するカートリッジ60が装着される。
【0026】
図2に示されるように、カートリッジ60は、インクを収容可能な液室61を有する。カートリッジ60が装着ケース34に装着されると、液室61内のインクは、液室61とサブタンク30の液室31とを連通するインク流路33を経由して液室31に流入する。サブタンク30は、液室31に流入したインクを一時的に貯留する。サブタンク30に貯留されたインクは、チューブ36を経由してヘッド22に供給される。
【0027】
カートリッジ60は、カートリッジ60に関する情報を記憶するICチップ62を有する。ICチップ62は、カートリッジ60の種類(市販カートリッジか契約カートリッジか)、カートリッジ60の識別番号、カートリッジ60に貯留されたインクの残量などを記憶している。ICチップ62は、カートリッジ60に設けられた接点(図示せず)に電気的に接続される。装着ケース34にカートリッジ60が装着されると、カートリッジ60に設けられた接点は、装着ケース34に設けられた接点35と接触する。
【0028】
[サブタンク30とインク残量センサ32]
プリンタ10は、4つのカートリッジ60に対応して、4つのサブタンク30を備える。サブタンク30は、装着ケース34の後壁より後方に位置する。各サブタンク30の内部には、液室31が位置する。サブタンク30は、契約インク(第1消耗品の一例)および市販インク(第2消耗品の一例)を収容する。サブタンク30および装着ケース34は、消耗品を収容する収容部の一例である。
【0029】
図2に示されるように、各サブタンク30の後壁には、インク残量センサ32が位置する。インク残量センサ32は、サブタンク30を挟んで対向する発光素子(図示せず)および受光素子(図示せず)を含んでいる。例えば、発光素子はサブタンク30の左側に位置し、受光素子はサブタンク30の右側に位置する。少なくともインク残量センサ32の位置では、サブタンク30の材料は透過性を有する。
【0030】
サブタンク30に収容されたインクの液面がインク残量センサ32の位置未満のとき、発光素子から出射された光は受光素子に入射する。このとき、インク残量センサ32は、例えばハイレベル信号を出力する。一方、サブタンク30に収容されたインクの液面がインク残量センサ32の位置以上のとき、発光素子から出射された光は、サブタンク30に収容されたインクによって散乱し、受光素子に入射する光の量は減少する。このとき、インク残量センサ32は、例えばローレベル信号を出力する。以下の説明では、インク残量センサ32は、ハイレベル信号を出力しているときにはOFF、ローレベル信号を出力しているときにはONと称される。
【0031】
なお、以上の説明では、インク残量センサ32は光学式のセンサであることとしたが、インク残量センサ32の構成は任意でよい。インク残量センサ32は、例えば、フロート式のセンサや、電極式のセンサでもよい。
【0032】
[キャリッジ21の移動範囲]
図3に示されるように、プラテン24は、左右方向9に長い形状を有し、上下方向7においてキャリッジ21の下方に位置する(
図2参照)。プラテン24の左端は、左右方向9において、ガイドレール37、38の左端付近に位置する。プラテン24の右端は、左右方向9において、ガイドレール37、38の中央より右に位置する。左右方向9においてプラテン24の右には、メンテナンス部40が位置する。
【0033】
メンテナンス部40は、4つのキャップ41を有する。プリンタ10が印刷を実行している間、キャリッジ21は、プラテン24の範囲内で左右方向9に移動する。プリンタ10が印刷を実行していない間、キャリッジ21は、ヘッド22が4つのキャップ41に対向する位置(以下、待機位置と称される)に位置する。
【0034】
[メンテナンス部40]
図4には、ヘッド22のうち1つのノズル列に対応する部分と、メンテナンス部40の構成とが記載されている。ヘッド22の下面には、複数のノズル23が前後方向8に並ぶ4つのノズル列が位置する。各ノズル列は、ブラック、マゼンタ、シアン、およびイエローのいずれかに対応する。各ノズル列内の複数のノズル23からは、ブラック、マゼンタ、シアン、またはイエローのインクが吐出される。キャリッジ21が待機位置に位置するとき、キャップ41はノズル列に対向する。ヘッド22の内部には、インクの流入口46とノズル23とを接続するインク流路47が位置する。
【0035】
4つのキャップ41は、制御部50からの制御に従い、上昇および下降する。具体的には、キャップ41は、ヘッド22の下面に当接する位置(以下、被覆位置と称される)と、ヘッド22の下面から離間した位置(以下、離間位置と称される)との間で上昇および下降する。キャリッジ21が待機位置に位置するときに、キャップ41は被覆位置に位置する。このとき、キャップ41は、ノズル列の周囲に当接してノズル列を覆う。キャリッジ21が待機位置以外に位置するときに、キャップ41は離間位置に位置する。このとき、キャップ41は、ノズル列の周囲から下方に離間した位置に位置する。
【0036】
キャップ41の底面は、排出口42を有する。キャップ41の内部空間は、排出口42を介して流路切替部43の端子に接続されている。流路切替部43の別の端子には、他のノズル列に対応するキャップ41の内部空間が接続されている。流路切替部43の別の端子は、ポンプ44の一端に接続されている。流路切替部43は、4つのキャップ41の内部空間のうちいずれかをポンプ44の一端に接続する。ポンプ44の他端は、廃液タンク45に接続されている。廃液タンク45は、メンテナンス処理によってヘッド22から排出されたインクを廃液として収容する。
【0037】
4つのキャップ41が被覆位置に位置する状態で、流路切替部43によって1つのキャップ41の内部空間とポンプ44とを接続した上でポンプ44を駆動することにより、インク流路47にノズル23から吸引圧が付与される。これにより、インク流路47内のインクおよび気体は、ノズル23から排出される。ノズル23から排出されたインクは、廃液として廃液タンク45に収容される。これにより、1つのノズル列内の複数のノズル23について吸引パージが実行される。制御部50は、キャップ41、流路切替部43、およびポンプ44を制御することにより、4つのノズル列のうちから選択した1つのノズル列について吸引パージを実行する。
【0038】
[制御部50]
筐体11の内部には、
図5に示される制御部50が位置する。制御部50は、CPU51、ROM52、RAM53、EEPROM54、およびASIC55を備えている。ROM52には、CPU51が各種の処理を実行するためのプログラムなどが格納されている。RAM53は、CPU51が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号などを一時的に記録する記憶領域、あるいはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM54には、電源オフ後も保持すべき情報が格納される。ROM52、RAM53、およびEEPROM54は、制御部50の記憶部として機能する。
【0039】
なお、記憶部は、コンピュータが読み取り可能なストレージ媒体であってもよい。コンピュータが読み取り可能なストレージ媒体とは、non-transitoryな媒体である。non-transitoryな媒体には、上記の例の他に、CD-ROM、DVD-ROM等の記録媒体も含まれる。また、non-transitoryな媒体は、tangibleな媒体でもある。一方、インターネット上のサーバなどからダウンロードされるプログラムを搬送する電気信号は、コンピュータが読み取り可能な媒体の一種であるコンピュータが読み取り可能な信号媒体であるが、non-transitoryなコンピュータが読み取り可能なストレージ媒体には含まれない。
【0040】
ASIC55には、キャリッジ21、ヘッド22、給送ローラ26、搬送ローラ27、および排出ローラ28が接続されている。制御部50は、ASIC55を通じてモータ(図示せず)を駆動させることにより、キャリッジ21を左右方向9に移動し、給送ローラ26、搬送ローラ27、および排出ローラ28を回転させる。制御部50は、ASIC55を通じてヘッド22の駆動素子に駆動信号を出力することにより、ヘッド22のノズル23からインクを吐出させる。ASIC55は、ノズル23から吐出すべきインクの量に応じて、複数種類の駆動信号を出力する。
【0041】
ASIC55には、4つのインク残量センサ32が接続されている。各インク残量センサ32は、対応するサブタンク30に貯留されたインクの残量が閾値以上のときにはONし、当該インクの残量が閾値未満のときにはOFFする。
【0042】
ASIC55には、4つの接点35が接続されている。装着ケース34にカートリッジ60が装着されると、接点35は、カートリッジ60に設けられた接点と接触する。制御部50は、接点35およびカートリッジ60に設けられた接点を経由して、カートリッジ60のICチップ62にアクセスする。これにより、制御部50は、ICチップ62から情報を読み出し、ICチップ62に情報を書き込む。
【0043】
ASIC55には、4つのキャップ41、流路切替部43、およびポンプ44が接続されている。制御部50は、ASIC55を通じてモータ(図示せず)を駆動させることにより、4つのキャップ41を被覆位置と開放位置との間で上昇および下降させる。制御部50は、ASIC55を通じて流路切替部43に制御信号を出力することにより、4つのキャップ41の内部空間のいずれかをポンプ44の一端に接続する。制御部50は、ASIC55を通じてポンプ44に制御信号を出力することにより、ポンプ44を駆動する。
【0044】
ASIC55には、表示部15および操作部16が接続されている。表示部15は、制御部50から指示されたメッセージなどを表示領域内に表示する。表示部15は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどである。操作部16は、ユーザによる操作に応じた信号を制御部50に出力する。操作部16は、例えば、押ボタンを有していてもよく、表示部15に重畳されたタッチセンサを有していてもよい。
【0045】
[プリンタ10に関する契約]
プリンタ10のユーザは、プリンタ10の販売会社との間で契約を締結し、締結した契約に従いプリンタ10を使用することがある。本実施形態では、例として、プリンタ10の販売会社が、ユーザは対価を支払う代わりに、印刷枚数が契約枚数に達するまでインクを無償で使用できるというサービスを提供する場合を考える。
【0046】
以下、上記サービスに関する契約を締結した後の状態を「契約状態」、当該契約を締結する前の状態を「非契約状態」、契約状態でプリンタの販売会社から配送されるカートリッジを「契約カートリッジ」、市販されているカートリッジを「市販カートリッジ」、元々契約カートリッジに貯留されていたインクを「契約インク」、元々市販カートリッジに貯留されていたインクを「市販インク」と称する。非契約状態は第1状態の一例である。契約状態は、第2状態の一例である。契約インクは、第1状態に適合しない第1消耗品の一例である。
【0047】
ユーザは、非契約状態では、市販インクを貯留した市販カートリッジを購入し、購入した市販カートリッジを装着ケース34に装着する。プリンタ10は、非契約状態では、通常は、サブタンク30に貯留された市販インクを消費して、印刷などを行う。販売会社は、上記サービスに関する契約を締結したユーザに対して、契約インクを貯留した契約カートリッジを配送する。販売会社は、例えば、プリンタ10のインクが少なくなると、契約カートリッジを配送する。ユーザは、契約状態では、販売会社から配送された契約カートリッジを受け取り、受け取った契約カートリッジを装着ケース34に装着する。プリンタ10は、契約状態では、通常は、サブタンク30に貯留された契約インクを消費して、印刷などを行う。
【0048】
プリンタ10の制御部50は、インクを配送する契約が締結されていない非契約状態と、当該契約が締結されている契約状態とに遷移し、非契約状態と契約状態とで異なる処理を実行する。EEPROM54は、非契約状態および契約状態のいずれであるかを示す契約情報を記憶している(
図5参照)。契約情報は、非契約状態では第1の値(例えば0)を取り、契約状態では第2の値(例えば1)を取る。プリンタ10の電源投入時に、CPU51は、EEPROM54に記憶された契約情報をRAM53に複写する。制御部50は、RAM53に記憶された契約情報に従い、非契約状態と契約状態とに遷移する。
【0049】
上記以外に、ユーザが所有する端末と販売会社のサーバとの間で、プリンタ10のインクの配送に関する契約を締結する処理が実行されたことを契機に、販売会社のサーバからの指示に基づき、制御部50がEEPROM54に記憶された契約情報を非契約状態から契約状態に書き換えてもよい。この場合、ユーザが所有する端末と販売会社のサーバとの間で、上記契約を解除する処理が実行されたことを契機に、販売会社のサーバからの指示に基づき、制御部50がEEPROM54に記憶された契約情報を契約状態から非契約状態に書き換えてもよい。
【0050】
ユーザは、インクの配送に関する契約を解消した後に、手元にある契約カートリッジをプリンタに装着することがある。また、ユーザは、契約状態の第1プリンタと、非契約状態の第2プリンタとを有する場合に、プリンタの販売会社から第1プリンタ用に配送された契約カートリッジを第2プリンタに装着することがある。このようにユーザは、非契約状態のプリンタに契約カートリッジを装着することにより、実質的に無償の契約インクを用いて印刷などを行える。プリンタの販売会社は、ユーザによるこのような契約インクの不正利用を防止する必要がある。
【0051】
[制御部50が使用するデータ]
制御部50は、CPU51がRAM53に記憶されたプログラムを実行することにより、
図6に示されるメイン処理、
図7に示される装着カートリッジ確認処理、
図8に示されるドットカウント処理、
図9に示される平衡計算処理、および
図10に示される救済処理を実行する。以下の説明では、4色のインクを区別するために、1以上4以下の値を取る変数iが使用される。値1から4は、それぞれ、ブラック、マゼンタ、シアン、およびイエローに対応する。例えば、1番目のインクはブラックのインクであり、1番目のカートリッジはブラックのインクを貯留するカートリッジである。図面の記載を簡略にするために、図面ではカートリッジは「CTG」、サブタンクは「ST」と記載されている。
【0052】
制御部50は、
図6から
図10に示される処理において、以下のデータを使用する。印刷禁止フラグは、印刷が禁止された状態(以下、印刷禁止状態と称される)であるか否かを示す。印刷禁止フラグは、印刷禁止状態ではONに設定され、印刷が禁止されていない状態ではOFFに設定される。警告フラグは、警告が行われた後の状態(以下、警告状態と称される)であるか否かを示す。警告フラグは、警告状態ではONに設定され、警告が行われる前の状態ではOFFに設定される。制御部50は、警告状態になった後に、印刷禁止状態になる。初回装着時刻は、非契約状態において装着ケース34に契約カートリッジが最初に装着された時刻を示す。
【0053】
サブタンク残量Aiは、i番目のサブタンク30に貯留されたインクの量を示す。サブタンク契約残量Biは、i番目のサブタンク30に貯留された契約インクの量(i番目のサブタンク30に貯留されたインクのうち、元々契約カートリッジに貯留されていたインクの量)を示す。消費量Siは、プリンタ10がインクを消費する処理(以下、インク消費処理と称される)を実行したときのi番目のインクの消費量を示す。
【0054】
第1ドットカウントPiは、i番目のインクの消費量を積算した値である。第2ドットカウントQiは、i番目のインク残量センサ32がONからOFFに変化した以降に、i番目のインクの消費量を積算した値である。エンプティフラグEiは、ドットカウントが閾値以上であるか否かを示す。エンプティフラグEiは、ドットカウントが閾値以上であるときはONに設定され、ドットカウントが閾値以上ではない(閾値未満である)ときにはOFFに設定される。ドットカウントおよび閾値は、サブタンク契約残量Biに応じて異なる値に切り替えられる(
図9に示されるS78、S81、およびS86参照)。
【0055】
制御部50は、
図9に示されるS74において、平衡計算を実行する。計算前カートリッジ残量Xiは、平衡計算を実行する前の、i番目のサブタンク30に貯留されたインクの量を示す。計算後カートリッジ残量Yiは、平衡計算を実行した後の、i番目のサブタンク30に貯留されたインクの量を示す。市販カートリッジ装着時残量Ziは、i番目の装着ケース34に市販カートリッジが装着されたときに、当該カートリッジに貯留されていた市販インクの量を示す。
【0056】
[メイン処理]
図6が参照されて、制御部50が実行するメイン処理の詳細が説明される。制御部50は、メイン処理の先頭において、事前警告を行うか否かを判断する(S11)。制御部50は、S11において、(1)非契約状態である、(2)カバー13が開状態である、(3)警告フラグがONである、および、(4)いずれかのサブタンク契約残量Biが0より大きい、という4つの条件がすべて成立する場合に、事前警告を行うと判断する。
【0057】
制御部50は、事前警告を行うと判断したことに応じて(S11:Yes)、S12へ進む。この場合、制御部50は、表示部15に第1警告メッセージを表示させる(S12)。制御部50は、S12において、例えば「このプリンタには、契約カートリッジを装着しないようにして下さい。」と表示部15に表示させる。次に、制御部50は、S13へ進む。制御部50は、S11において事前警告を行わないと判断したことに応じて(S11:No)、S12を実行することなく、S13へ進む。
【0058】
次に、制御部50は、いずれかの装着ケース34にカートリッジ60が装着されたか否かを判断する(S13)。制御部50は、S13において、例えば、カートリッジ60のICチップ62から読み出したカートリッジ60の識別番号と以前の識別番号とを比較することにより、カートリッジ60が装着されたか否かを判断する。制御部50は、カートリッジ60が装着されたと判断したことに応じて(S13:Yes)、S14へ進む。この場合、制御部50は、装着時の平衡計算処理(
図9)を実行する(S14)。次に、制御部50は、装着カートリッジ確認処理(
図7)を実行する(S15)。次に、制御部50は、次の処理を実行するために、S11へ進む。
【0059】
このように制御部50は、装着ケース34にカートリッジ60が装着されると、S14において装着時の平衡計算処理を実行し、S15において装着カートリッジ確認処理を実行する。装着カートリッジ確認処理では、非契約状態において契約カートリッジが装着された場合に、警告フラグまたは印刷禁止フラグがONに設定されることがある。
【0060】
制御部50は、S13においてカートリッジ60が装着されていないと判断したことに応じて(S13:No)、S21へ進む。この場合、制御部50は、印刷処理を実行するか否かを判断する(S21)。制御部50は、S21において、例えば、ユーザが操作部16を操作して印刷指示を入力したときなどに、印刷処理を実行すると判断する。制御部50は、印刷処理を実行すると判断したことに応じて(S21:Yes)、S22へ進む。この場合、制御部50は、印刷禁止フラグがONであるか否かを判断する(S22)。
【0061】
制御部50は、印刷禁止フラグがONではない(OFFである)と判断したことに応じて(S22:No)、S23へ進む。この場合、制御部50は、(1)残りの印刷データがある、および、(2)すべてのエンプティフラグEiがOFFである、という2つの条件が共に成立するか否かを判断する(S23)。
【0062】
制御部50は、2つの条件が共に成立すると判断したことに応じて(S23:Yes)、S24へ進む。この場合、制御部50は、印刷処理を実行する(S24)。次に、制御部50は、ドットカウント処理(
図8)を実行する(S25)。次に、制御部50は、消費時の平衡計算処理(
図9)を実行する(S26)。次に、制御部50は、いずれかのエンプティフラグEiがONであるか否かを判断する(S27)。制御部50は、すべてのエンプティフラグEiがONではない(OFFである)と判断したことに応じて(S27:No)、印刷処理を続行するために、S23へ進む。
【0063】
制御部50は、S23において、2つの条件の少なくとも一方が成立しないと判断したことに応じて(S23:No)、印刷処理を終了して、S11へ進む。また、制御部50は、S27においていずれかのエンプティフラグEiがONであると判断したことに応じて(S27:Yes)、印刷処理を中断して、S11へ進む。
【0064】
制御部50は、S22において印刷禁止フラグがONであると判断したことに応じて(S22:Yes)、S28へ進む。この場合、制御部50は、表示部15に禁止通知メッセージを表示させる(S28)。制御部50は、S28において、例えば「非契約プリンタに契約カートリッジが装着されたので、プリンタは使用できなくなりました。復帰方法は以下をご参照下さい。」と表示部15に表示させる。制御部50は、S28において、禁止通知メッセージに続いて、救済処理の実行手順をテキストまたはグラフィックで表示部15にさせる。次に、制御部50は、S11へ進む。
【0065】
このように制御部50は、印刷処理禁止フラグがOFFであるときには、印刷データがなくまるまで、S24において印刷処理を実行する。また、制御部50は、印刷処理に続いて、S25においてドットカウント処理を実行し、S26において消費時の平衡計算処理を実行する。一方、印刷禁止フラグがONであるときには、制御部50は、印刷処理を実行せずに、S28において、禁止通知メッセージと救済処理の実行手順とを表示部15に表示させる。
【0066】
制御部50は、S21において印刷処理を実行しないと判断したことに応じて(S21:No)、S31へ進む。この場合、制御部50は、救済処理を実行するか否かを判断する(S31)。制御部50は、S31において、プリンタ10のユーザが救済処理の実行手順を実行した場合に、救済処理を実行すると判断する。制御部50は、救済処理を実行すると判断したことに応じて(S31:Yes)、S32へ進む。この場合、制御部50は、救済処理(
図10)を実行する(S32)。次に、制御部50は、S11へ進む。
【0067】
制御部50は、S31において救済処理を実行しないと判断したことに応じて(S31:No)、S33へ進む。この場合、制御部50は、他の処理(印刷処理および救済処理以外の処理)を実行する(S33)。次に、制御部50は、S11へ進む。
【0068】
[装着カートリッジ確認処理]
図7が参照されて、制御部50が実行する装着カートリッジ確認処理の詳細が説明される。制御部50は、装着カートリッジ確認処理の先頭において、以降の処理を実行するか否かを判断する(S41)。制御部50は、S41において、(1)非契約状態である、および、(2)装着ケース34に契約カートリッジが装着された、という2つの条件が共に成立するか否かを判断する(S41)。制御部50は、2つの条件のいずれかが成立しないと判断したことに応じて(S41:No)、以降の処理を実行することなく、装着カートリッジ確認処理を終了する。
【0069】
制御部50は、S41において2つの条件が共に成立すると判断したことに応じて(S41:Yes)、S42へ進む。この場合、制御部50は、表示部15に第2警告メッセージを表示させる(S42)。制御部50は、S42において、例えば「契約カートリッジでは印刷できません。市販カートリッジを装着して下さい。」と表示部15に表示させる。
【0070】
次に、制御部50は、このステップに到達したのが初回であるか否かを判断する(S43)。制御部50は、初回であると判断したことに応じて(S43:Yes)、S44へ進む。この場合、制御部50は、初回装着時刻に現在時刻を設定する(S44)。次に、制御部50は、S45へ進む。制御部50は、S43において初回ではないと判断したことに応じて(S43:No)、S44を実行することなく、S45へ進む。
【0071】
次に、制御部50は、警告フラグがOFFであるか否かを判断する(S45)。制御部50は、警告フラグがOFFであると判断したことに応じて(S45:Yes)、S46へ進む。この場合、制御部50は、(1)いずれかのサブタンク契約残量Biが第1閾値TH1以上である、および、(2)初回装着時刻からの経過時間が第2閾値TH2以上である、という2つの条件のいずれかが成立するか否かを判断する(S46)。第1閾値TH1は、予め決定された固定値であり、0より大きい。第2閾値TH2は、例えば2週間である。
【0072】
制御部50は、2つの条件のいずれかが成立すると判断したことに応じて(S46:Yes)、S47へ進む。この場合、制御部50は、表示部15に第3警告メッセージを表示させる(S47)。制御部50は、S47において、例えば「契約カートリッジを装着すると、サブタンク内が契約カートリッジのインクで満たされてしまい、プリンタが使用できなくなりますので、装着はおやめ下さい。」と表示部15に表示させる。プリンタ10のユーザは、表示部15に第3警告メッセージが表示されると、操作部16を操作して承諾を入力する。
【0073】
次に、制御部50は、承諾が入力されたか否かを判断する(S48)。制御部50は、承諾が入力されていないと判断したことに応じて(S48:No)、S48へ進む。制御部50は、承諾が入力されたと判断したことに応じて(S48:Yes)、S49へ進む。このように制御部50は、表示部15に第3警告メッセージを表示させた後、承諾が入力されるまでS48で待機する。次に、制御部50は、すべてのサブタンク契約残量Biに0を設定し、警告フラグをONに設定する(S49)。次に、制御部50は、装着カートリッジ確認処理を終了する。
【0074】
制御部50は、S46において2つの条件がどちらも成立しないと判断したことに応じて(S46:No)、S47からS49を実行することなく、装着カートリッジ確認処理を終了する。
【0075】
制御部50は、S45において警告フラグがOFFではない(ONである)と判断したことに応じて(S45:No)、S51へ進む。この場合、制御部50は、いずれかのサブタンク契約残量Biが第1閾値TH1以上であるか否かを判断する(S51)。制御部50は、いずれかのサブタンク契約残量Biが第1閾値TH1以上であると判断したことに応じて(S51:Yes)、S52へ進む。この場合、制御部50は、S28と同様に、禁止通知メッセージと救済処理の実行手順とを表示部15に表示させる(S52)。次に、制御部50は、印刷禁止フラグをONに設定する(S53)。次に、制御部50は、装着カートリッジ確認処理を終了する。
【0076】
制御部50は、S51においていずれの契約残量Biも第1閾値TH1以上ではない(第1閾値TH1未満である)と判断したことに応じて(S51:No)、S52およびS53を実行することなく、装着カートリッジ確認処理を終了する。
【0077】
このように制御部50は、非契約状態において契約カートリッジが装着されたときには、S46またはS51においてサブタンク契約残量Biが第1閾値TH1以上であるか否かを判断する。S46またはS51でYesと判断されるのは、非契約状態において契約カートリッジを装着するという行為をユーザが行ったために、サグタンク30に貯留された契約インクの量が所定以上となったときである。プリンタ10では、この行為はインクの不正利用とみなされる。制御部50は、インクの不正利用が1回目に行われたときには、S49において警告フラグをONに設定し、インクの不正利用が2回目に行われたときには、S53において印刷禁止フラグをONに設定する。印刷禁止フラグがONである間、印刷処理の実行は禁止される。
【0078】
ユーザは、非契約状態において、装着ケース34に契約カートリッジを誤って装着することがある。このため、プリンタ10では、1回目のインクの不正利用は大目に見ることとされている。制御部50は、インクの不正利用が1回目に行われたときには、印刷禁止フラグをONに設定せず、S49においてサブタンク契約残量Biを0にする。サブタンク30に貯留されたインクは、その後、市販インクとして扱われる。
【0079】
制御部50は、インクの不正利用が行われたと判断したときには、S46において警告フラグをONに設定するか、または、S53において印刷禁止フラグをONに設定することにより、印刷処理の実行を制限する。一方、制御部50は、インクの不正利用が行われていないと判断した場合(S41において契約カートリッジが装着されていないと判断した場合、あるいは、S46またはS51において、すべてのサブタンク契約残量Biが第1閾値未満である判断した場合)には、警告フラグおよび印刷禁止フラグを更新せず、ユーザからの指示に応じて印刷処理を実行する。
【0080】
[ドットカウント処理]
図8が参照されて、制御部50が実行するドットカウント処理の詳細が説明される。制御部50は、ドットカウント処理において、ブラック、マゼンタ、シアン、およびイエローの各色について、S61からS63のうち実行すべきステップを実行する。具体的には、制御部50は、最初に変数iの値に1を設定してS61からS63を実行した後、変数iの値を1増加させてS61からS63を繰り返し実行する。そして、変数iの値が4の状態で、S62においてNoと判断するか、またはS63を実行した後、S26(
図6)へ進む。
【0081】
制御部50は、各色の処理の先頭において、第1ドットカウントPiに消費量Siを加算する(S61)。次に、制御部50は、i番目のインク残量センサ32がOFFであるか否かを判断する(S62)。i番目のインク残量センサ32がOFFであることは、サブタンク30に貯留されたi番目のインクの量が閾値未満であることを示す。制御部50は、インク残量センサ32がOFFであると判断したことに応じて(S62:Yes)、S63へ進む。この場合、制御部50は、第2ドットカウントQiに消費量Siを加算する(S63)。
【0082】
制御部50は、S62においてインク残量センサ32がOFFではない(ONである)と判断したことに応じて(S62:No)、S63を実行しない。制御部50は、各色について、S61からS63のうち実行すべきステップを実行した後、ドットカウント処理を終了する。
【0083】
このようなドットカウント処理により、第1ドットカウントPi(i番目のインクの消費量を積算した値)と、第2ドットカウントQi(i番目のインク残量センサ32がONからOFFに変化した以降に、i番目のインクの消費量を積算した値)とが求められる。
【0084】
[平衡計算処理]
図9が参照されて、制御部50が実行する平衡計算処理の詳細が説明される。平衡計算処理は、
図6に示されるS14およびS26、並びに
図10に示されるS98から呼び出される。制御部50は、平衡計算処理において、ブラック、マゼンタ、シアン、およびイエローの各色について、S71からS78およびS81からS86のうち実行すべきステップを実行する。具体的には、制御部50は、最初に変数iの値に1を設定してS71からS78およびS81からS86を実行した後、変数iの値を1増加させてS71からS78およびS81からS86を繰り返し実行する。そして、変数iの値が4の状態でS83またはS85を実行した後、
図6に示されるS14およびS26、並びに
図10に示されるS98のうち呼び出されたステップの次のステップへ進む。
【0085】
制御部50は、各色の処理の先頭において、消費時の平衡計算処理であるか否かを判断する(S71)。制御部50は、S71において、S14またはS98から呼び出された場合は消費時の平衡計算処理であると判断し、S26から呼び出された場合は消費時の平衡計算処理ではない(装着時の平衡計算処理である)と判断する。
【0086】
制御部50は、消費時の平衡計算処理であると判断したことに応じて(S71:Yes)、S72へ進む。この場合、制御部50は、サブタンク残量Aiから消費量Siを減算する(S72)。次に、制御部50は、S73へ進む。制御部50は、S71において消費時の平衡計算処理ではないと判断したことに応じて(S71:No)、S72を実行することなく、S73へ進む。
【0087】
次に、制御部50は、i番目のカートリッジ60のICチップ62に記憶されたインク残量を読み出し、計算前カートリッジ残量Xiに読み出したインク残量を設定する(S73)。次に、制御部50は、平衡計算を実行する(S74)。プリンタ10では、装着ケース34にカートリッジ60が装着されると、カートリッジ60に貯留されていたインクがサブタンク30に流入し、カートリッジ60内のインクの液面の高さとサブタンク30内のインクの液面の高さとが一致する。この状態は平衡状態と称される。制御部50は、S74において、i番目の装着ケース34に装着されたカートリッジ60と、i番目のサブタンク30とについて、平衡状態になる前のカートリッジ60のインク残量とサブタンク30の残量とに基づき、平衡状態になった後のカートリッジ60のインク残量とサブタンク30のインク残量とを求める。制御部50は、求めた両者の値を加算してサブタンク残量Aiを更新し、求めた前者の値を用いて計算後カートリッジ残量Yiを更新する。次に、制御部50は、計算後カートリッジ残量Yiをi番目のカートリッジ60のICチップ62に書き込む(S75)。
【0088】
このように制御部50は、消費時の平衡計算処理である場合には、S72においてサブタンク残量Aiから消費量Siを減算する。その後、制御部50は、S73においてi番目のカートリッジ60のインク残量を取得し、S74において平衡計算を実行し、S75においてi番目のカートリッジ60のインク残量を当該カートリッジに記憶させる。
【0089】
次に、制御部50は、i番目のカートリッジ60が契約カートリッジであるか否かを判断する(S76)。制御部50は、i番目のカートリッジ60が契約カートリッジであると判断したことに応じて(S76:Yes)、S77へ進む。この場合、制御部50は、サブタンク契約残量Biに、平衡計算前後におけるカートリッジ残量の変化量を加算する(S77)。制御部50は、S77において、次式(1)に従い、サブタンク契約残量Biを求める。次に、制御部50は、S78へ進む。
契約残量Bi=契約残量Bi+(計算前カートリッジ残量Xi
-計算後カートリッジ残量Yi) …(1)
【0090】
制御部50は、S76においてi番目のカートリッジ60が契約カートリッジではない(市販カートリッジである)と判断したことに応じて(S76:No)、S77を実行することなく、S78へ進む。
【0091】
次に、制御部50は、サブタンク契約残量Biが0より大きいか否かを判断する(S78)。制御部50は、サブタンク契約残量Biが0より大きいと判断したことに応じて(S78:Yes)、S81へ進む。この場合、制御部50は、次式(2)が成立するか否かを判断する(S81)。
第1ドットカウントPi≧市販カートリッジ装着時残量Zi
+(サブタンク残量Ai-サブタンク契約残量Bi) …(2)
【0092】
制御部50は、式(2)が成立すると判断したことに応じて(S81:Yes)、S82へ進む。この場合、制御部50は、エンプティフラグEiをONに設定する(S82)。次に、制御部50は、i番目のインクがエンプティであることを表示部15に表示させる(S83)。
【0093】
制御部50は、S81において式(2)が成立しないと判断したことに応じて(S81:No)、S84へ進む。この場合、制御部50は、エンプティフラグEiをOFFに設定する(S84)。次に、制御部50は、表示部15におけるi番目のインクのエンプティの表示を解除する(S85)。
【0094】
制御部50は、S78においてサブタンク契約残量Biが0より大きくない(0である)と判断したことに応じて(S78:No)、S86へ進む。この場合、制御部50は、第2ドットカウントQiが第3閾値TH3以上であるか否かを判断する(S86)。第3閾値TH3は、サブタンク30に契約インクが貯留されていない場合に、サブタンク30に貯留されたインクがエンプティであるか否かを判断するための閾値である。なお、ここでは、ブラック、マゼンタ、シアン、およびイエローの各色で、第3閾値TH3は同じ値であることとしたが、第3閾値TH3は色ごとに異なっていてもよい。
【0095】
制御部50は、第2ドットカウントQiが第3閾値TH3以上であると判断したことに応じて(S86:Yes)、S82へ進む。この場合、制御部50は、上記のS82およびS83を実行する。制御部50は、第2ドットカウンQiが第3閾値TH3以上ではない(第3閾値TH3未満である)あると判断したことに応じて(S86:No)、S84へ進む。この場合、制御部50は、上記のS84およびS85を実行する。
【0096】
制御部50は、各色について、S71からS78およびS81からS86のうち実行すべきステップを実行した後、平衡計算処理を終了する。
【0097】
このように制御部50は、契約カートリッジが装着された場合には、S77において平衡計算結果に基づきサブタンク契約残量Biを更新する。制御部50は、サブタンク30に契約インクが貯留されている場合には、S81において、式(2)に従い、インクエンプティであるか否かを判断する。制御部50は、サブタンク30に契約インクが貯留されていない場合には、S86において、第2ドットカウントQiに基づき、インクエンプティであるか否かを判断する。
【0098】
制御部50は、消費量Siがi番目のサブタンク30に貯留された市販インクの残量以上である場合に、インクエンプティと判断する。インクエンプティである場合には、印刷処理の実行は禁止される(
図6に示されるS23参照)。
【0099】
式(2)における(サブタンク残量Ai-サブタンク契約残量Bi)は、i番目のサブタンク30に貯留された市販インクの残量を示す。式(2)の右辺は、i番目の装着ケース34に市販カートリッジが装着された以降にインク消費処理で消費可能なインクの量を示す。したがって、サブタンク30に契約インクが貯留されている場合には、インク残量センサ32の状態を考慮することなく、式(2)に基づき、サブタンク30に貯留された契約インクを除いて(ないものとして)、インクエンプティであるか否かを判断できる。
【0100】
第2ドットカウントQiは、サブタンク30に貯留されたインクがインク消費処理によって減少し、インク残量センサ32がOFFした後のインク消費量を示す。したがって、サブタンク30に契約インクが貯留されていない場合には、第2ドットカウントQiに基づきインクエンプティを判断することにより、インクエンプティを高精度で判断できる。
【0101】
[救済処理]
図10が参照されて、制御部50が実行する救済処理の詳細が説明される。制御部50は、救済処理の先頭において、非契約状態であるか否かを判断する(S91)。制御部50は、非契約状態ではない(契約状態である)と判断したことに応じて(S91:No)、以降の処理を行うことなく、救済処理を終了する。
【0102】
制御部50は、S91において非契約状態であると判断したことに応じて(S91:Yes)、S92へ進む。この場合、制御部50は、すべての装着ケース34に市販カートリッジが装着されているか否かを判断する(S92)。制御部50は、S92において、装着ケース34に装着されたカートリッジ60のICチップ62からカートリッジ60の種類を読み出し、読み出した種類に基づき、市販カートリッジが装着されているか否かを判断する。
【0103】
制御部50は、市販カートリッジが装着されていない装着ケース34があると判断したことに応じて(S92:No)、S93へ進む。この場合、制御部50は、表示部15に装着指示メッセージを表示させる(S93)。制御部50は、S93において、例えば「救済処理を実行するために、市販カートリッジを装着して下さい。」と表示部15に表示させる。次に、制御部50は、S92へ進む。制御部50は、S92においてすべての装着ケース34に市販カートリッジが装着されていると判断したことに応じて(S92:Yes)、S94へ進む。このように制御部50は、S91において非契約状態であると判断した場合には、すべての装着ケース34に市販カートリッジが装着されるまで、S92およびS93で待機する。
【0104】
次に、制御部50は、ブラック、マゼンタ、シアン、およびイエローの各色について、S94からS96を実行する。具体的には、制御部50は、最初に変数iの値に1を設定してS94からS96を実行した後、変数iの値を1増加させてS94からS96を繰り返す。そして、変数iの値が4の状態でS96を実行した後、S97へ進む。制御部50は、各色の処理の先頭において、i番目の色の吸引パージの実行回数Niを求める(S94)。制御部50は、S94において、サブタンク契約残量Biをi番目の色の吸引パージ1回あたりのインク消費量で除算することにより、実行回数Niを求める。次に、制御部50は、メンテナンス部40を用いて、i番目の色の吸引パージをNi回実行する(S95)。次に、制御部50は、サブタンク契約残量Biに0を設定する(S96)。
【0105】
制御部50は、各色についてS94からS96を実行した後、S97へ進む。次に、制御部50は、印刷禁止フラグをOFFに設定する(S97)。次に、制御部50は、消費時の平衡計算処理(
図8)を実行する(S98)。次に、制御部50は、救済処理を終了する。
【0106】
このように制御部50は、S94において、サブタンク契約残量Biが第1閾値TH1未満となるように、吸引パージの実行回数Niを決定し、S95において吸引パージを決定した回数だけ実行する。印刷禁止フラグは、S97においてOFFに設定される。したがって、救済処理が実行された後、印刷処理は実行可能となる。
【0107】
[制御部50が実行する処理]
以上の説明において、サブタンク契約残量Biは、第1消耗品の残り寿命である第1残り寿命の一例である。S24は、消耗品を消費させる消費処理の一例である。S41は、第1状態において収容部に収容された消耗品が第1消耗品であるか否かを判断する第1判断処理の一例である。S46およびS51は、第1残り寿命が第1閾値以上であるか否かを判断する第2判断処理の一例である。第2判断処理は、第1判断処理において消耗品が第1消耗品であると判断した場合に実行される。S28、S47からS49、S52およびS53は、消費処理の実行を制限する制限処理の一例である。制限処理は、第2判断処理において第1残り寿命が第1閾値以上であると判断した場合に実行される。
【0108】
式(2)における(サブタンク残量Ai-サブタンク契約残量Bi)は、第2消耗品の残り寿命である第2残り寿命の一例である。S95は、第1残り寿命が第1閾値未満となるように、収容部から消耗品を排出させる排出処理の一例である。
【0109】
S45、S49、およびS53は、第2判断処理において第1残り寿命が第1閾値以上であると判断した回数をカウントするカウント処理の一例である。制御部50は、第1残り寿命が第1閾値以上であると判断した回数を警告フラグおよび印刷禁止フラグを用いてカウントする。回数が1回になると、警告フラグがONに設定され、回数が2回になると、印刷禁止フラグがONに設定される。回数が2回であるときには、回数が1回であるときと比べて、印刷処理の実行はより強く制限される。値2は、第2閾値の一例である。
【0110】
S77は、装着ケース34に装着されたカートリッジ60からサブタンク30に流入した消耗品の量に基づき、第1残り寿命を決定する第1決定処理の一例である。第1決定処理は、第1判断処理において消耗品が第1消耗品であると判断した場合に実行される。
【0111】
市販カートリッジ装着時残量Ziは、第2消耗品を貯留したカートリッジが装着ケースに装着された時点で当該カートリッジに貯留された第2消耗品の量の一例である。サブタンク契約残量Biは、タンクに貯留された第1消耗品の量の一例である。式(2)における(サブタンク残量Ai-サブタンク契約残量Bi)は、タンクに貯留された第2消耗品の量の一例でもある。式(2)の右辺の値は、第1状態における消耗品の残り寿命である第3残り寿命の一例である。式(2)の右辺の値を求める処理は、第2消耗品を貯留したカートリッジが装着ケースに装着された時点で当該カートリッジに貯留された第2消耗品の量と、タンクに貯留された第1消耗品の量と、タンクに貯留された第2消耗品の量とに基づき、第3残り寿命を決定する第2決定処理の一例である。ただし、本実施形態では、第2決定処理において、第3残り寿命は、タンクに貯留された第1消耗品の量を用いることなく決定される。
【0112】
[実施形態の作用効果]
以上に示されるように、本実施形態に係るプリンタ10は、インクを収容するサブタンク30と、制御部50とを備えている。制御部50は、インクの配送に関する契約が締結されていない非契約状態と、契約が締結されている契約状態とに遷移する。制御部50は、インクを消費させる印刷処理(S24)と、非契約状態においてサブタンク30に収容されたインクが非契約状態に適合しない契約インクであるか否かを判断する第1判断処理(S41)と、第1判断処理においてインクが契約インクであると判断した場合に、契約インクの残り寿命であるサブタンク契約残量が第1閾値TH1以上であるか否かを判断する第2判断処理(S46およびS51)と、第2判断処理においてサブタンク契約残量が第1閾値TH1以上であると判断した場合に、印刷処理の実行を制限する制限処理(S28、S47からS49、S52、およびS53)と、を実行する。
【0113】
インクの配送に関する契約が締結されていない状態において、プリンタ10は、サブタンク30に収容された契約インクの残量が第1閾値TH1以上である場合に、印刷処理の実行を制限する。したがって、インクの配送に関する契約が締結されていない状態における、ユーザによるインクの不正利用を防止できる。
【0114】
また、制御部50は、第1判断処理においてインクが契約インクではないと判断した場合、または第2判断処理においてサブタンク契約残量が第1閾値TH1未満であると判断した場合に、印刷処理を実行する。これらの場合に印刷処理を実行することにより、契約状態に応じて適切に印刷処理を実行できる。
【0115】
また、サブタンク30は、契約インクおよび市販インクを収容可能であり、制御部50は、第2判断処理においてサブタンク契約残量が第1閾値TH1未満であると判断した場合でも、印刷処理によるインクの消費量が市販インクの残量以上であると判断した場合には、印刷処理の実行を制限する(S23、S81、S82、およびS86)。このようにインクの消費量が市販インクの残量以上である場合に印刷処理の実行を制限することにより、インクが不足した状態において印刷処理の実行を制限できる。
【0116】
また、制御部50は、第2判断処理においてサブタンク契約残量が第1閾値TH1以上であると判断した後に、第2判断処理においてサブタンク契約残量が第1閾値TH1未満であると判断した場合に、S97において制限処理による制限を解除する。このように印刷処理の実行が制限された状態で、サブタンク契約残量を第1閾値TH1未満にすることにより、制限を解除して印刷処理を実行できる。
【0117】
また、制御部50は、S95において、サブタンク契約残量が第1閾値TH1未満となるように、サブタンク30からインクを排出させる排出処理をさらに実行する。このように排出処理によってサブタンク契約残量を第1閾値TH1未満にすることにより、制限を解除して印刷処理を実行できる。
【0118】
また、制御部50は、第2判断処理においてサブタンク契約残量が第1閾値TH1以上であると判断した回数をカウントするカウント処理(S45、S49、およびS53)をさらに実行し、制限処理において、カウント処理でカウントされた回数が第2閾値(本実施形態では2)以上である場合には、当該回数が第2閾値未満である場合と比べて、印刷処理の実行をより強く制限する。したがって、ユーザが契約インクの不正利用を繰り返し行った場合に、印刷処理の実行をより強く制限できる。
【0119】
また、プリンタ10の収容部は、インクを貯留するカートリッジ60を装着可能な装着ケース34と、装着ケース34に装着されたカートリッジ60から流入したインクを貯留するサブタンク30とを含む。制御部50は、第1判断処理においてインクが契約インクであると判断した場合に、装着ケース34に装着されたカートリッジ60からサブタンクに流入したインクの量に基づき、サブタンク契約残量を決定する第1決定処理(S77)をさらに実行する。したがって、消耗品が液体であり、プリンタが装着ケース34とサブタンク30とを備える場合に、装着ケース34に装着されたカートリッジ60からサブタンク30に流入した契約インクの量に基づき、サブタンク契約残量を決定できる。
【0120】
また、制御部50は、S81において、市販カートリッジ装着時残量と、サブタンク契約残量と、サブタンク30に貯留された市販インクの量とに基づき、式(2)の右辺の値を決定する第2決定処理をさらに実行し、第1ドットカウントが式(2)の右辺の値以上であると判断した場合に、S82においてエンプティフラグをONに設定して、印刷処理の実行を制限する。したがって、サブタンク30に貯留された契約インクの量を考慮して、インクが不足した状態において印刷処理の実行を制限できる。
【0121】
また、プリンタ10では、非契約状態は、インクを配送する契約が締結されていない状態であり、契約状態は、インクを配送する契約が締結されている状態である。制御部50は、第1判断処理において、インクが契約に基づき配送されるインクである場合に契約インクであると判断する。したがって、インクを配送する契約が締結されていない状態における、ユーザによるインクの不正利用を防止できる。
【0122】
また、プリンタ10のCPU51によって実行されるプログラムは、制御部50に、上述された消費処理と、第1判断処理と、第2判断処理と、制限処理と、を実行させる。インクの配送に関する契約が締結されていない状態において、このプログラムは、サブタンク30に収容された契約インクの残量が第1閾値TH1以上である場合に、プリンタ10による印刷処理の実行を制限する。したがって、インク品の配送に関する契約が締結されていない状態における、ユーザによるインクの不正利用を防止できる。
【0123】
[変形例]
上記実施形態に係るプリンタ10については、各種の変形例を構成できる。例えば、プリンタ10では、制御部50が所定の順序で複数のステップを実行することとしたが、同様の結果が得られる限り、複数のステップの実行順序は上記以外の順序でもよい。例えば、制御部50は、
図9に示されるS82およびS83を逆の順序で実行してもよく、あるいは、
図10に示されるS97およびS98を逆の順序で実行してもよい。
【0124】
また、プリンタ10の制御部50は、サブタンク契約残量が第1閾値TH1以上であると判断した回数を警告フラグおよび印刷禁止フラグを用いてカウントし、印刷処理の実行の制限の強さを3段階(制限なし、警告、および印刷禁止)に切り換えることとした。変形例に係るプリンタでは、制御部は、サブタンク契約残量が第1閾値TH1以上であると判断した回数に応じて、印刷処理の実行の制限の強さを2段階(制限なし、および、警告または印刷禁止の一方)に切り換えてもよく、あるいは、印刷処理の実行の制限の強さを4段階以上に切り換えてもよい。制御部は、回数が多いほど、印刷処理の実行の制限を強くすることが好ましい。
【0125】
また、プリンタ10では、消耗品はインクであることとした。変形例に係るプリンタでは、消耗品は、例えば、トナー、用紙などであってもよい。印刷剤および液体は、例えばトナーであってもよい。
【0126】
変形例に係るプリンタの制御部は、トナー、用紙などの消耗品を消費して印刷を実行させる。消耗品がトナーである場合、プリンタは、トナーを貯留するタンクを収容部として備えている。消耗品が用紙である場合、プリンタは、用紙を収容する給送トレイを収容部として備えている。
【0127】
消耗品がインク以外である場合でも、プリンタのユーザは、プリンタの販売会社との間で契約を締結し、締結した契約に従いプリンタを使用することがある。プリンタの販売会社は、例えば、ユーザは対価を支払う代わりに、印刷枚数が契約枚数に達するまでトナー、用紙などの消耗品を無償で使用できるというサービスを提供する。
【0128】
例えば、消耗品がトナーである場合、ユーザは、非契約状態では、市販トナーを貯留した市販カートリッジを購入し、購入した市販カートリッジをプリンタの装着ケースに装着する。プリンタは、非契約状態では、通常は市販トナーを消費して、印刷などを行う。販売会社は、サービスを契約したユーザに対して、契約トナーを貯留した契約カートリッジを配送する。ユーザは、契約状態では、販売会社から配送された契約カートリッジを受け取り、受け取った契約カートリッジをプリンタの装着ケースに装着する。プリンタは、契約状態では、通常は契約トナーを消費して、印刷などを行う。
【0129】
上記実施形態に係るプリンタ10と同様に、消耗品がトナー、用紙などである場合のプリンタを構成できる。同様に、消耗品を消費する、プリンタ以外の消耗品消費装置も構成できる。
【0130】
また、以上の説明では例として、プリンタ10では、インクを配送する契約が締結されている状態で配送されるカートリッジに貯留されているインク(契約カートリッジに貯留されている契約インク)が第1消耗品であることとしたが、第1消耗品はこれに限られない。第1消耗品は、プリンタ10の状態に適合しない任意の消耗品であってもよい。例えば、第1消耗品は、プリンタ10の仕向地とは異なる仕向地のカートリッジに貯留されているインクや、プリンタ10の製造会社あるいは販売会社とは異なる会社によって製造されたカートリッジに貯留されているインクなどであってもよい。
【符号の説明】
【0131】
10・・・プリンタ(消耗品消費装置)
30・・・サブタンク(収容部の一部、タンク)
34・・・装着ケース(収容部の一部)
50・・・制御部
60・・・カートリッジ