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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052066
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】接触検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/14 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G01L1/14 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158513
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 孝美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知司
(72)【発明者】
【氏名】綱木 一良
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓磨
(57)【要約】
【課題】ノイズの影響が低減された接触検知装置を提供する。
【解決手段】交流電源11は、周波数の異なる第一交流電圧と第二交流電圧とを切り替えて第一電極層22および第二電極層23に印加し、導体が静電型センサ7に接触した状態に対応する代替直交位相成分QAを格納する記憶部34と、第二電極層23に第一交流電圧が印加された時に抽出された第一直交位相成分Q1と、第二電極層23に第二交流電圧が印加された時に抽出された第二直交位相成分Q2とを比較する直交位相成分比較部31と、第一直交位相成分Q1と第二直交位相成分Q2とが第一直交位相誤差ΔQE1の範囲内である場合は、第一直交位相成分Q1に基づいて導体の接触を検知し、第一直交位相成分Q1と第二直交位相成分Q2とが第一直交位相誤差ΔQE1の範囲外である場合は、代替直交位相成分QAに基づいて導体の接触を検知する接触判定部33と、を備える接触検知装置10。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知電極を備え、導体の接触を検知する静電型センサと、
前記検知電極に交流電圧を印加する交流電源と、
前記交流電圧が前記検知電極に印加された場合に前記検知電極から出力される信号を用いて、前記静電型センサのインピーダンスを同相位相成分および直交位相成分にて表した場合において少なくとも前記直交位相成分を抽出する直交復調器と、
前記直交復調器によって抽出された前記直交位相成分に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触したか否かを検出する計測器と、
を備える接触検知装置であって、
前記交流電源は、第一周波数の第一交流電圧と、第一周波数と異なる第二周波数の第二交流電圧と、を切り替えて前記検知電極に印加し、
前記計測器は、
前記導体が前記静電型センサに接触した状態に対応する代替直交位相成分を格納する記憶部と、
前記検知電極に前記第一交流電圧が印加された時に前記直交復調器によって抽出された第一直交位相成分と、前記検知電極に前記第二交流電圧が印加された時に前記直交復調器によって抽出された第二直交位相成分とを比較する直交位相成分比較部と、
前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが所定の第一直交位相誤差の範囲内である場合は、前記第一直交位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知し、前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが前記第一直交位相誤差の範囲外である場合は、前記記憶部に格納されている前記代替直交位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知する接触判定部と、
を備える、接触検知装置。
【請求項2】
前記交流電源は、前記第一交流電圧と前記第二交流電圧と、を所定の周期で切り替えて前記検知電極に印加する、請求項1に記載の接触検知装置。
【請求項3】
前記代替直交位相成分は、予め前記記憶部に格納された初期値であって、前記計測器による接触検知中に更新されることのない値である、請求項1または2に記載の接触検知装置。
【請求項4】
前記計測器は、
前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが前記第一直交位相誤差の範囲内である場合は、前記接触判定部に用いる前記第一直交位相成分を、前記記憶部に格納されている前記代替直交位相成分として更新する直交位相成分更新部を備え、
前記接触判定部は、前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが前記第一直交位相誤差の範囲外である場合は、前記記憶部にて更新された前記代替直交位相成分であって前回の判定に用いた前記代替直交位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知する、請求項1または2に記載の接触検知装置。
【請求項5】
前記直交復調器は、前記同相位相成分および前記直交位相成分を抽出し、
前記計測器は、前記直交復調器によって抽出された前記同相位相成分および前記直交位相成分に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触したか否かを検出し、
前記記憶部は、前記導体が前記静電型センサに接触した状態に対応する代替同相位相成分および前記代替直交位相成分を格納し、
前記計測器は、
前記検知電極に前記第一交流電圧が印加された時に前記直交復調器によって抽出された第一同相位相成分と、前記検知電極に前記第二交流電圧が印加された時に前記直交復調器によって抽出された第二同相位相成分と、を比較する同相位相成分比較部を備え、
前記接触判定部は、
前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが前記第一直交位相誤差の範囲内であり、且つ、前記第一同相位相成分と前記第二同相位相成分とが所定の第一同相位相誤差の範囲内である場合は、前記第一直交位相成分および前記第一同相位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知し、
前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが前記第一直交位相誤差の範囲外であり、且つ、前記第一同相位相成分と前記第二同相位相成分とが前記第一同相位相誤差の範囲外である場合は、前記記憶部に格納されている前記代替直交位相成分および前記代替同相位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知する、請求項1または2に記載の接触検知装置。
【請求項6】
前記代替直交位相成分は、予め前記記憶部に格納された初期値であって、前記計測器による接触検知中に更新されることない値であり、
前記代替同相位相成分は、予め前記記憶部に格納された初期値であって、前記計測器による接触検知中に更新されることのない値である、請求項5に記載の接触検知装置。
【請求項7】
前記計測器は、
前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが前記第一直交位相誤差の範囲内である場合は、前記接触判定部に用いる前記第一直交位相成分を、前記記憶部に格納されている前記代替直交位相成分として更新する直交位相成分更新部と、
前記第一同相位相成分と前記第二同相位相成分とが前記第一同相位相誤差の範囲内である場合は、前記接触判定部に用いる前記第一同相位相成分を、前記記憶部に格納されている前記代替同相位相成分として更新する同相位相成分更新部と、を備え、
前記接触判定部は、
前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが前記第一直交位相誤差の範囲外であり、且つ、前記第一同相位相成分と前記第二同相位相成分とが前記第一同相位相誤差の範囲外である場合は、前記記憶部にて更新された前記代替直交位相成分および前記代替同相位相成分であって、前回の判定に用いた前記代替直交位相成分および前記代替同相位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知する、請求項5に記載の接触検知装置。
【請求項8】
前記第一周波数は前記第二周波数よりも大きい、請求項1または2に記載の接触検知装置。
【請求項9】
前記交流電源は、前記第一交流電圧と、前記第二交流電圧と、前記第一周波数および前記第二周波数と異なる第三周波数の第三交流電圧を、切り替えて前記検知電極に印加し、
前記直交位相成分比較部は、
前記第一直交位相成分と、前記第二直交位相成分と、前記検知電極に前記第三交流電圧が印加された時に前記直交復調器によって抽出された第三直交位相成分と、を比較し、
前記接触判定部は、
前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが前記第一直交位相誤差の範囲内である場合は、前記第一直交位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知し、前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが前記第一直交位相誤差の範囲外である場合は、前記第一直交位相成分と前記第三直交位相成分とを比較し、前記第一直交位相成分と前記第三直交位相成分とが所定の第二直交位相誤差の範囲内である場合は、前記第一直交位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知し、前記第一直交位相成分と前記第三直交位相成分とが前記第二直交位相誤差の範囲外である場合は、前記第二直交位相成分と前記第三直交位相成分とを比較し、前記第二直交位相成分と前記第三直交位相成分とが所定の第三直交位相誤差の範囲内である場合は、前記第二直交位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知し、前記第二直交位相成分と前記第三直交位相成分とが前記第三直交位相誤差の範囲外である場合は、前記記憶部に格納されている前記代替直交位相成分に基づいて、前記静電型センサへの導体の接触を検知する、請求項1に記載の接触検知装置。
【請求項10】
前記交流電源は、前記第一交流電圧と、前記第二交流電圧と、前記第三交流電圧と、を所定の周期で切り替えて前記検知電極に印加する、請求項9に記載の接触検知装置。
【請求項11】
前記代替直交位相成分は、予め前記記憶部に格納された初期値であって、前記計測器による接触検知中に更新されることのない値である、請求項9または10に記載の接触検知装置。
【請求項12】
前記計測器は、
前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが前記第一直交位相誤差の範囲内である場合は、前記接触判定部に用いる前記第一直交位相成分を、前記記憶部に格納されている前記代替直交位相成分として更新し、前記第一直交位相成分と前記第三直交位相成分とが前記第二直交位相誤差の範囲内である場合は、前記接触判定部に用いる前記第一直交位相成分を、前記記憶部に格納されている前記代替直交位相成分として更新し、前記第二直交位相成分と前記第三直交位相成分とが前記第三直交位相誤差の範囲内である場合は、前記接触判定部に用いる前記第二直交位相成分を、前記記憶部に格納されている前記代替直交位相成分として更新する直交位相成分更新部を備え、
前記接触判定部は、前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが前記第一直交位相誤差の範囲外である場合であり、且つ、前記第一直交位相成分と前記第三直交位相成分とが前記第二直交位相誤差の範囲外である場合であり、且つ、前記第二直交位相成分と前記第三直交位相成分とが前記第三直交位相誤差の範囲外である場合は、前記記憶部に更新された前記代替直交位相成分であって前回の判定に用いた前記代替直交位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知する、請求項9または10に記載の接触検知装置。
【請求項13】
前記直交復調器は、前記同相位相成分および前記直交位相成分を抽出し、
前記計測器は、前記直交復調器によって抽出された前記同相位相成分および前記直交位相成分に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触したか否かを検出し、
前記記憶部は、前記導体が前記静電型センサに接触した状態に対応する代替同相位相成分および前記代替直交位相成分を格納し、
前記計測器は、
前記検知電極に前記第一交流電圧が印加された時に前記直交復調器によって抽出された第一同相位相成分と、前記検知電極に前記第二交流電圧が印加された時に前記直交復調器によって抽出された第二同相位相成分と、前記検知電極に前記第三交流電圧が印加された時に前記直交復調器によって抽出された第三同相位相成分と、を比較する同相位相成分比較部を備え、
前記接触判定部は、
前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが前記第一直交位相誤差の範囲内であり、且つ、前記第一同相位相成分と前記第二同相位相成分とが所定の第一同相位相誤差の範囲内である場合は、前記第一直交位相成分および前記第一同相位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知し、
前記第一直交位相成分と前記第三直交位相成分とが前記第二直交位相誤差の範囲内であり、且つ、前記第一同相位相成分と前記第三同相位相成分とが所定の第二同相位相誤差の範囲内である場合は、前記第一直交位相成分および前記第一同相位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知し、
前記第二直交位相成分と前記第三直交位相成分とが前記第三直交位相誤差の範囲内であり、且つ、前記第二同相位相成分と前記第三同相位相成分とが所定の第三同相位相誤差の範囲内である場合は、前記第二直交位相成分および前記第二同相位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知し、
前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが前記第一直交位相誤差の範囲外であり、且つ、前記第一同相位相成分と前記第二同相位相成分とが前記第一同相位相誤差の範囲外である場合であり、且つ、前記第一直交位相成分と前記第三直交位相成分とが前記第二直交位相誤差の範囲外であり、且つ、前記第一同相位相成分と前記第三同相位相成分とが前記第二同相位相誤差の範囲外である場合であり、且つ、前記第二直交位相成分と前記第三直交位相成分とが前記第三直交位相誤差の範囲外であり、且つ、前記第二同相位相成分と前記第三同相位相成分とが前記第三同相位相誤差の範囲外である場合は、前記記憶部に格納されている前記代替直交位相成分および前記代替同相位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知する、請求項9または10に記載の接触検知装置。
【請求項14】
前記代替直交位相成分は、予め前記記憶部に格納された初期値であって、前記計測器による接触検知中に更新されることのない値であり、
前記代替同相位相成分は、予め前記記憶部に格納された初期値であって、前記計測器による接触検知中に更新されることのない値である、請求項13に記載の接触検知装置。
【請求項15】
前記計測器は、
前記第一同相位相成分と前記第二同相位相成分とが前記第一同相位相誤差の範囲内である場合は、前記接触判定部に用いる前記第一同相位相成分を、前記記憶部に格納されている前記代替同相位相成分として更新し、前記第一同相位相成分と前記第三同相位相成分とが前記第二同相位相誤差の範囲内である場合は、前記接触判定部に用いる前記第一同相位相成分を、前記記憶部に格納されている前記代替同相位相成分として更新し、前記第二同相位相成分と前記第三同相位相成分とが前記第三同相位相誤差の範囲内である場合は、前記接触判定部に用いる前記第二同相位相成分を、前記記憶部に格納されている前記代替同相位相成分として更新する同相位相成分更新部を備え、
前記接触判定部は、前記第一同相位相成分と前記第二同相位相成分とが前記第一同相位相誤差の範囲外である場合であり、且つ、前記第一同相位相成分と前記第三同相位相成分とが前記第二同相位相誤差の範囲外である場合であり、且つ、前記第二同相位相成分と前記第三同相位相成分とが前記第三同相位相誤差の範囲外である場合は、前記記憶部に更新された前記代替同相位相成分であって前回の判定に用いた前記代替同相位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知する、請求項13に記載の接触検知装置。
【請求項16】
前記第一周波数は前記第二周波数よりも大きく、前記第二周波数は前記第三周波数よりも大きい、請求項9または10に記載の接触検知装置。
【請求項17】
前記第一周波数は、100~150kHzである、請求項16に記載の接触検知装置。
【請求項18】
前記第二周波数は、50~100kHzである、請求項17に記載の接触検知装置。
【請求項19】
前記第三周波数は、5~50kHzである、請求項18に記載の接触検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のステアリングホイール内に静電容量式のセンサを組み込むことで、人がステアリングホイールに触れているか否かを検出する、接触検知装置が知られている。接触検知装置において、静電容量を計測する際に、センサ電極に一定周期の電圧波形を印加し、印加波形した元波形とセンサを通した計測波形を比較することで、容量成分を算出するインピーダンス測定が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-190990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に係るインピーダンス測定においては、対象物に電圧を印加した際に、センサ電極の容量成分により電流の位相が遅れ、計測電圧波形と印加電圧波形に位相差が発生することを利用している。このため、インピーダンス測定の際に、印加している電圧の周波数付近の周波数ノイズがセンサ等に入力されたとき、印加波形が歪み、正確な静電容量計測ができないという課題があった。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、ノイズの影響が低減された接触検知装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
検知電極を備え、導体の接触を検知する静電型センサと、
前記検知電極に交流電圧を印加する交流電源と、
前記交流電圧が前記検知電極に印加された場合に前記検知電極から出力される信号を用いて、前記静電型センサのインピーダンスを同相位相成分および直交位相成分にて表した場合において少なくとも前記直交位相成分を抽出する直交復調器と、
前記直交復調器によって抽出された前記直交位相成分に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触したか否かを検出する計測器と、
を備える接触検知装置であって、
前記交流電源は、第一周波数の第一交流電圧と、第一周波数と異なる第二周波数の第二交流電圧と、を切り替えて前記検知電極に印加し、
前記計測器は、
前記導体が前記静電型センサに接触した状態に対応する代替直交位相成分を格納する記憶部と、
前記検知電極に前記第一交流電圧が印加された時に前記直交復調器によって抽出された第一直交位相成分と、前記検知電極に前記第二交流電圧が印加された時に前記直交復調器によって抽出された第二直交位相成分とを比較する直交位相成分比較部と、
前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが所定の第一直交位相誤差の範囲内である場合は、前記第一直交位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知し、前記第一直交位相成分と前記第二直交位相成分とが前記第一直交位相誤差の範囲外である場合は、前記記憶部に格納されている前記代替直交位相成分に基づいて、前記静電型センサへの前記導体の接触を検知する接触判定部と、
を備える、接触検知装置にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、第一周波数の近傍の周波数のノイズが混入した場合でも、第二交流電圧の第二直交位相成分に基づいて、検知電極への導体の接触を検知することができる。また、第二周波数の近傍の周波数のノイズが混入した場合には、記憶部に格納された代替直交位相成分に基づいて、検知電極への導体の接触を検知することができる。これにより、接触検知装置についてノイズの影響を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1の接触検知装置が適用されるステアリングホイールを示す正面図。
図2図1のII-II線断面図。
図3】実施形態1の静電型センサを示す断面図。
図4】実施形態1の接触検知装置の構成を示すブロック図
図5】実施形態1の静電型センサにおいて、ノイズの影響がなく、且つ、導体が非接触の状態の出力インピーダンスを、直交位相成分および同相位相成分にて表した状態を示す模式図。
図6】実施形態1の静電型センサにおいて、導体が接触した状態の出力インピーダンスと、導体が非接触の状態の出力インピーダンスと、を直交位相成分および同相位相成分にて表した状態を示す模式図。
図7】実施形態1の接触検知装置の動作を示すメインフローを示すフローチャート。
図8】実施形態1のノイズ判定処理を示すフローチャート。
図9】実施形態1の直交位相成分比較処理を示すフローチャート。
図10】実施形態1の同相位相成分比較処理を示すフローチャート。
図11】実施形態2の接触検知装置の構成を示すブロック図。
図12】実施形態2のノイズ判定処理を示すフローチャート。
図13】実施形態2の直交位相成分比較処理を示すフローチャート。
図14】実施形態2の同相位相成分比較処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
1.ステアリングホイール1の構成
本発明に係る接触検知装置10を車両(図示せず)のステアリングホイール1に適用した実施形態1について説明する。まず、ステアリングホイール1の構造について図1図2を参照して説明する。ステアリングホイール1は、図1に示すように、円形リング状に形成されたリング部2と、リング部2よりも小さく形成されてリング部2の径方向の内側に配置されるコア部3と、コア部3とリング部2とを接続する複数(本形態では3つ)の接続部4とを備える。ただし、接続部4の個数は特に限定されず、1~2つ、又は4つ以上でもよい。
【0010】
以下の説明では、車両(図示せず)に搭乗した運転者(図示せず)から見て右方を矢線Xで示す方向とし、運転者から見て上方を矢線Zで示す方向とし、運転者の正面に接近する方向を矢線Yで示す方向とする。
【0011】
図2に示すように、リング部2は、芯体5、樹脂内層材6、静電型センサ7、及び、表皮材8を備える。芯体5は、リング部2の中心部を構成し、リング部2の形状に対応する形状に形成されている。つまり、芯体5は、円形リング状に形成され、円形状の軸直角断面を有している。ここで、芯体5の軸直角断面形状は、円形状に限られることなく、楕円形状、卵形状、U字状、C字状、多角形状等、任意の形状とすることができる。本形態の芯体5は、アルミニウム、マグネシウム等の金属により形成されており、導電性を有する。芯体5の材質は、金属以外の材料を適用することができる。
【0012】
樹脂内層材6は、芯体5の外面において、芯体5のリング形状の全周に亘って、且つ、芯体5の円断面形状の全周に亘って被覆する。本形態においては、樹脂内層材6の軸直角断面は円形状に形成されている。仮に、芯体5がU字状の軸直角断面を有する場合には、樹脂内層材6は、芯体5の軸直角断面における径方向外側に加えて、芯体5のU字状の凹所にも充填される。樹脂内層材6は、芯体5の外面側に射出成形により成形されており、芯体5の外面に直接的に接合されている。樹脂内層材6の軸直角断面形状は、円形状に限られることなく、卵形状、楕円形状、多角形状等、任意の形状とすることができる。樹脂内層材6は、例えば、発泡ウレタン樹脂を用いる。なお、樹脂内層材6は、非発泡樹脂を用いることもできる。
【0013】
樹脂内層材6の外面には、静電型センサ7が配置されている。静電型センサ7は、静電型センサ7に指または手等の導体(図示せず)が接触すると、静電型センサ7の静電容量相当値が変化するように構成されている。本形態に係る静電型センサ7は、車両のステアリングホイール1に適用されるステアリングホイール用センサである。静電型センサ7については、後に詳述する。
【0014】
表皮材8は、静電型センサ7の外面(静電型センサ7における樹脂内層材6とは反対側の面)において、静電型センサ7の全周に亘って被覆する。つまり、表皮材8は、後述するように、第一電極層22が絶縁シート21の第一面24側に露出している場合には、第一電極層22の被覆材としても機能する。表皮材8は、射出成形により成形されており、静電型センサ7の外面側に巻き付けられて静電型センサ7の外面に接合されている。表皮材8は、例えば、ウレタン樹脂により成形されている。表皮材8の外面は、意匠面を構成する。そこで、表皮材8は、非発泡ウレタン樹脂、又は、僅かに発泡させたウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0015】
次に、図3を参照して、静電型センサ7の構成について説明する。静電型センサ7は、第一電極層22と、第二電極層23と、を備える。第一電極層22および第二電極層23は、導電性を有するとともに、層状に形成されている。第一電極層22および第二電極層23が検知電極の一例とされる。
【0016】
第一電極層22は、絶縁シート21の第一面24に積層されている。第一電極層22は、絶縁シート21よりもやや小さな相似形に形成されている。これにより、絶縁シート21の第一面24の端縁部は、第一電極層22の端縁部から露出している。
【0017】
第二電極層23は、絶縁シート21の第二面25に積層されている。第二電極層23は、絶縁シート21よりもやや小さな相似形に形成されている。これにより、絶縁シート21の第二面25の端縁部は、第二電極層23の端縁部から露出している。
【0018】
第一電極層22と第二電極層23とは、同形同大であってもよいし、一方が他方よりもやや大きな相似形であってもよい。
【0019】
絶縁シート21は、例えばエラストマーを主成分として含んで形成されている。従って、絶縁シート21は、柔軟である。つまり、絶縁シート21は、可撓性を有し、且つ、面方向に伸長可能に構成されている。絶縁シート21は、例えば、熱可塑性材料、特に熱可塑性エラストマーを主成分として含んで形成されている。絶縁シート21は、熱可塑性エラストマー自身により形成されるようにしても良いし、熱可塑性エラストマーを素材として加熱することによって架橋されたエラストマーを主成分として形成されるようにしても良い。
【0020】
また、絶縁シート21は、熱可塑性エラストマー以外のゴム、樹脂や他の材料などを含んでいても良い。例えば、絶縁シート21がエチレン-プロピレンゴム(EPM、EPDM)などのゴムを含む場合には、絶縁シート21の柔軟性が向上する。絶縁シート21の柔軟性を向上させるという観点から、絶縁シート21に可塑剤などの柔軟性付与成分を含有させてもよい。さらに、絶縁シート21は、反応硬化性エラストマー、熱硬化性エラストマーを主成分として構成されるようにしても良い。
【0021】
さらに、絶縁シート21は、熱伝導性の良好な材料が好適である。そこで、絶縁シート21は、熱伝導率の高い熱可塑性エラストマーを用いるようにしても良いし、熱伝導率を高めることができるフィラーを含有させるようにしても良い。
【0022】
第一電極層22は、絶縁シート21の第一面24側に配置されており、第二電極層23は、絶縁シート21の第二面25側に配置されている。第一電極層22および第二電極層23は、導電性を有する。さらに、第一電極層22および第二電極層23は、柔軟である。つまり、第一電極層22および第二電極層23は、可撓性を有し、且つ、面方向に伸長可能に構成されている。
【0023】
第一電極層22および第二電極層23は、導電性エラストマーにより形成されてもよい。第一電極層22および第二電極層23が導電性エラストマーにより形成される場合、第一電極層22および第二電極層23は、エラストマーを母材とし、導電性フィラーを含有させることにより形成されている。第一電極層22および第二電極層23の母材であるエラストマーは、絶縁シート21と主成分を同種としてもよいし、異なる材料を用いてもよい。第一電極層22および第二電極層23と、絶縁シート21とは、相互の融着(熱融着)によりと接合される。
【0024】
第一電極層22および第二電極層23は導電布により形成されてもよい。導電布は、導電性繊維により形成された織物または不織布である。ここで、導電性繊維は、柔軟性を有する繊維の表面を導電性材料により被覆することにより形成される。導電性繊維は、例えば、ポリエチレンなどの樹脂繊維の表面に、銅やニッケルなどをメッキすることにより形成される。この場合、第一電極層22および第二電極層23は、絶縁シート21自身の融着(熱融着)により絶縁シート21に接合される。
【0025】
第一電極層22および第二電極層23は金属箔により形成されてもよい。金属箔は、導通可能な金属材料であればよく、例えば、銅箔、アルミニウム箔などを適用できる。さらに、第一電極層22および第二電極層23は、導電布である場合と同様に、絶縁シート21自身の融着(熱融着)によりセンサシートに接合される。
【0026】
3.接触検知装置10の全体構成
図4に示すように、接触検知装置10は、静電型センサ7と、交流電源11と、直交復調器12と、計測器30と、を備える。静電型センサの7の第一電極層22および第二電極層23には交流電源11からの交流電圧が印加される。
【0027】
(1)交流電源11
交流電源11は、第一周波数の第一交流電圧と、第二周波数の第二交流電圧と、第三周波数の第三交流電圧と、を所定の周期で切り替えて第一電極層22および第二電極層23に印加する。第一周波数と、第二周波数と、第三周波数とは、互いに異なっている。ただし、第一電極層22および第二電極層23に印加する交流電圧の周波数は、3種類に限られず、2種類または4種類以上でもよい。
【0028】
本形態では、第一周波数は第二周波数よりも大きく、第二周波数は第三周波数よりも大きい。本形態では、第一周波数は100~150kHzであり、第二周波数は50~100kHzであり、第三周波数は5~50kHzである。ただし、第一周波数、第二周波数および第三周波数の周波数帯は、上記の数値範囲に限定されない。
【0029】
第一周波数が100~150kHzであることにより、例えば、車両用のスマートキーのDC-DCコンバータのスイッチング周波数(100kHz)に基づくノイズ、アマチュア無線(135.7kHz、137.8kHz)に基づくノイズ等の影響を低減させることができる。
【0030】
第二周波数が50~100kHzであることにより、例えば、ワイヤレス電力伝送(79~90kHz)に基づくノイズ等の影響を低減させることができる。
【0031】
第三周波数が5~50kHzであることにより、例えば、電波時計が受信する標準電波(40kHz、60kHz)に基づくノイズの影響を低減させることができる。
【0032】
(2)直交復調器12
図5および図6を参照しつつ、直交復調器12について説明する。直交復調器12は、交流電圧が第二電極層23に印加された場合に第一電極層22から出力される信号を用いて、静電型センサ7のインピーダンスを同相位相成分および直交位相成分にて表した場合において、直交位相成分と同相位相成分とを抽出する。ただし、直交復調器12は直交位相成分のみを抽出する構成としてもよい。
【0033】
図5(a)~(c)を参照しつつ、直交復調器12の動作について説明する。図5(a)に、静電型センサ7がノイズの影響を受けていない状態、且つ、第一電極層22に導体が非接触の状態において、第二電極層23に第一交流電圧を印加したときに、第一電極層22から出力される信号に係る出力インピーダンスを、第一直交位相成分Q1(第一直交位相成分の一例)と第一同相位相成分I1(第一同相位相成分の一例)で表したグラフを示す。上記のように、直交復調器12は、第一電極層22から出力される信号を用いて、静電型センサ7のインピーダンスについて、直交位相成分および直交位相成分を抽出する。
【0034】
図5(b)に、静電型センサ7がノイズの影響を受けていない状態、且つ、第一電極層22に導体が非接触の状態において、第二電極層23に第二交流電圧を印加したときに、第一電極層22から出力される信号に係る出力インピーダンスを、第二直交位相成分Q2(第二直交位相成分の一例)と第二同相位相成分I2(第二同相位相成分の一例)で表したグラフを示す。
【0035】
第一交流電圧の第一周波数と、第二交流電圧の第二周波数とは異なるので、第一直交位相成分Q1と、第二直交位相成分Q2とは異なっており、また、第一同相位相成分I1と、第二同相位相成分I2とは異なっている。そこで、第二直交位相成分Q2および第二同相位相成分I2を補正することにより、それぞれ、補正後第二直交位相成分QC2と、補正後第二同相位相成分IC2とに変換している。これにより、第一直交位相成分Q1と、補正後第二直交位相成分QC2とが比較可能となり、また、第一同相位相成分I1と、補正後第二同相位相成分IC2とが比較可能となる。静電型センサ7がノイズを受けていない状態においては、第一直交位相成分Q1と、補正後第二直交位相成分QC2とは、後述する第一直交位相誤差ΔQE1の範囲内となり、第一同相位相成分I1と、補正後第二同相位相成分IC2とは、後述する第一同相位相誤差ΔIE1の範囲内となる。
【0036】
図5(c)に、静電型センサ7がノイズの影響を受けていない状態、且つ、第一電極層22に導体が非接触の状態において、第二電極層23に第三交流電圧を印加したときに、第一電極層22から出力される信号に係る出力インピーダンスを、第三直交位相成分Q3(第三直交位相成分の一例)と第三同相位相成分I3(第三同相位相成分の一例)で表したグラフを示す。
【0037】
第一交流電圧の第一周波数と、第三交流電圧の第二周波数とは異なるので、第一直交位相成分Q1と、第三直交位相成分Q3とは異なっており、また、第一同相位相成分I1と、第三同相位相成分I3とは異なっている。そこで、第三直交位相成分Q3および第三同相位相成分I3を補正することにより、それぞれ、補正後第三直交位相成分QC3と、補正後第三同相位相成分IC3とに変換している。これにより、第一直交位相成分Q1と、補正後第三直交位相成分QC3とが比較可能となり、また、第一同相位相成分I1と、補正後第三同相位相成分IC3とが比較可能となる。静電型センサ7がノイズを受けていない状態においては、第一直交位相成分Q1と、補正後第三直交位相成分QC3とは、後述する第二直交位相誤差ΔQE2の範囲内となり、第一同相位相成分I1と、補正後第三同相位相成分IC3とは、後述する第二同相位相誤差ΔIE2の範囲内となる。
【0038】
また、補正後第二直交位相成分QC2と、補正後第三直交位相成分QC3も比較可能となっており、補正後第二同相位相成分IC2と、補正後第三同相位相成分IC3も比較可能となっている。静電型センサ7がノイズを受けていない状態においては、補正後第二直交位相成分QC2と、補正後第三直交位相成分QC3とは、後述する第三直交位相誤差ΔQE3の範囲内となり、補正後第二同相位相成分IC2と、補正後第三同相位相成分IC3とは、後述する第三同相位相誤差ΔIE3の範囲内となる。
【0039】
ただし、補正は、例えば、第二直交位相成分Q2、第二同相位相成分I2、第三直交位相成分Q3および第三同相位相成分I3に補正係数を乗じてもよいし、第二直交位相成分Q2、第二同相位相成分I2、第三直交位相成分Q3および第三同相位相成分I3を補正関数に代入してもよい。補正係数または補正関数は、実験により求めることができる。
【0040】
図6には、静電型センサ7に第一交流電圧を印加した場合において、第一電極層22に導体が接触した状態における出力インピーダンスと、第一電極層22に導体が非接触の状態における出力インピーダンスと、を示す。ただし、第一電極層22に導体が接触した状態とは、第一電極層22に導体が直接的に接触した状態を含むとともに、第一電極層22に導体が表皮材8を介して間接的に接触した状態を含む。
【0041】
第一電極層22に導体が接触すると、静電型センサ7の容量成分および抵抗成分の双方が増加するので、導体接触時の出力インピーダンスは、導体非接触時の出力インピーダンスに比べて、直交位相成分および同相位相成分の双方が増加する方向に変化する。すなわち、導体接触時の第一直交位相成分Q1(接触)は、導体非接触時の第一直交位相成分Q1(非接触)よりも大きい。また、導体接触時の第一同相位相成分I1(接触)は、導体非接触時の第一同相位相成分I1(非接触)よりも大きい。
【0042】
なお、静電型センサ7に第二交流電圧を印加した場合、および第三交流電圧を印加した場合も、上記の第一交流電圧を印加した場合と同様の傾向を示すので、重複する説明を省略する。
【0043】
(3)計測器30
図4に戻って、計測器30は、直交位相成分比較部31と、同相位相成分比較部32と、接触判定部33と、記憶部34と、直交位相成分更新部35と、同相位相成分更新部36と、を備える。
【0044】
(4)記憶部34
図4に示すように、記憶部34は、導体が静電型センサ7に接触した状態に対応する代替直交位相成分QAおよび代替同相位相成分IAを格納する。代替直交位相成分QAは、予め記憶部34に格納された初期値であって、計測器30による接触検知中に更新されることのない値である。また、代替同相位相成分IAは、予め記憶部34に格納された初期値であって、計測器30による接触検知中に更新されることのない値である。ただし、計測器30による接触検知が行われていないときには、代替直交位相成分QAおよび代替同相位相成分IAは更新可能である。
【0045】
記憶部34は、さらに、直交位相成分基準値QBと、同相位相成分基準値IBと、を格納する。直交位相成分基準値QBは、静電型センサ7がノイズの影響を受けていない状態で、且つ、第一電極層22に導体が接触していない状態において、第二電極層23に第一交流電圧を印加した際に第一電極層22から出力される信号から抽出された直交位相成分である。同相位相成分基準値IBは、静電型センサ7がノイズの影響を受けていない状態で、且つ、第一電極層22に導体が接触していない状態において、第二電極層23に第一交流電圧を印加した際に第一電極層22から出力される信号から抽出された同相位相成分である。
【0046】
記憶部34は、さらに、第一直交位相誤差ΔQE1と、第一同相位相誤差ΔIE1と、第二直交位相誤差ΔQE2と、第二同相位相誤差ΔIE2と、第三直交位相誤差ΔQE3と、第三同相位相誤差ΔIE3と、を格納する。
【0047】
第一直交位相誤差ΔQE1は、第一直交位相成分Q1と補正後第二直交位相成分QC2とを比較するために用いられる。第一同相位相誤差ΔIE1は、第一同相位相成分I1と補正後第二同相位相成分IC2とを比較するために用いられる。
【0048】
第二直交位相誤差ΔQE2は、第一直交位相成分Q1と補正後第三直交位相成分QC3とを比較するために用いられる。第二同相位相誤差ΔIE2は、第一同相位相成分I1と補正後第三同相位相成分IC3とを比較するために用いられる。
【0049】
第三直交位相誤差ΔQE3は、補正後第二直交位相成分QC2と補正後第三直交位相成分QC3とを比較するために用いられる。第三同相位相誤差ΔIE3は、補正後第二同相位相成分IC2と補正後第三同相位相成分IC3とを比較するために用いられる。
【0050】
(5)直交位相成分比較部31
直交位相成分比較部31は、第二電極層23に異なる周波数の交流電圧を印加したときに、第二電極層23から出力される異なる周波数の信号から、直交復調器12によって抽出された直交位相成分同士を比較する。
【0051】
図4および図5に示すように、本形態では、直交位相成分比較部31は、第一直交位相成分Q1と、第二直交位相成分Q2と、を比較する。第一直交位相成分Q1は、第二電極層23に第一交流電圧が印加された時に第一電極層22から出力された信号から直交復調器12によって抽出される。第二直交位相成分Q2は、第二電極層23に第二交流電圧が印加された時に第一電極層22から出力された信号から直交復調器12によって抽出される。ただし、第二直交位相成分Q2に代えて、補正後第二直交位相成分QC2と、第一直交位相成分Q1と、を比較してもよい。
【0052】
また、直交位相成分比較部31は、第一直交位相成分Q1と、第三直交位相成分Q3と、を比較する。第三直交位相成分Q3は、第二電極層23に第三交流電圧が印加された時に第一電極層22から出力された信号から直交復調器12によって抽出される。ただし、直交位相成分比較部31は、第三直交位相成分Q3に代えて、補正後第三直交位相成分QC3と、第一直交位相成分Q1と、比較してもよい。
【0053】
また、直交位相成分比較部31は、第二直交位相成分Q2と、第三直交位相成分Q3と、を比較する。ただし、第二直交位相成分Q2は補正後第二直交位相成分QC2と代替可能であり、第三直交位相成分Q3は補正後第三直交位相成分QC3と代替可能である。したがって、直交位相成分比較部31は、補正後第二直交位相成分QC2と、第三直交位相成分Q3と、を比較してもよいし、第二直交位相成分Q2と、補正後第三直交位相成分QC3と、を比較してもよいし、補正後第二直交位相成分QC2と、補正後第三直交位相成分QC3と、を比較してもよい。
【0054】
(6)同相位相成分比較部32
同相位相成分比較部32は、第二電極層23に異なる周波数の交流電圧を印加したときに、第二電極層23から出力される異なる周波数の信号から、直交復調器12によって抽出された同相位相成分同士を比較する。
【0055】
図4および図5に示すように、本形態では、同相位相成分比較部32は、第一同相位相成分I1と、第二同相位相成分I2と、を比較する。第一同相位相成分I1は、第二電極層23に第一交流電圧が印加された時に第一電極層22から出力された信号から直交復調器12によって抽出される。第二同相位相成分I2は、第二電極層23に第二交流電圧が印加された時に第一電極層22から出力された信号から直交復調器12によって抽出される。ただし、同相位相成分比較部32は、第二同相位相成分I2に代えて、補正後第二同相位相成分IC2と、第一同相位相成分I1と、を比較してもよい。
【0056】
また、同相位相成分比較部32は、第一同相位相成分I1と、第三同相位相成分I3と、を比較する。第三同相位相成分I3は、第二電極層23に第三交流電圧が印加された時に第一電極層22から出力された信号から直交復調器12によって抽出される。ただし、同相位相成分比較部32は、第三同相位相成分I3に代えて、補正後第三同相位相成分IC3と、第一同相位相成分I1と、を比較してもよい。
【0057】
また、同相位相成分比較部32は、第二同相位相成分I2と、第三同相位相成分I3と、を比較する。ただし、第二同相位相成分I2は補正後第二同相位相成分IC2と代替可能であり、第三同相位相成分I3は補正後第三同相位相成分IC3と代替可能である。したがって、同相位相成分比較部32は、補正後第二同相位相成分IC2と、第三同相位相成分I3と、を比較してもよいし、第二同相位相成分I2と、補正後第三同相位相成分IC3と、を比較してもよいし、補正後第二同相位相成分IC2と、補正後第三同相位相成分IC3と、を比較してもよい。
【0058】
(7)接触判定部33
図4に示すように、接触判定部33は、直交位相成分比較部31で比較された結果に基づいて、静電型センサ7への導体の接触を検知する基準となる直交位相成分を選択する。また、接触判定部33は、同相位相成分比較部32で比較された結果に基づいて、静電型センサ7への導体の接触を検知する基準となる同相位相成分を選択する。接触判定部33は、選択された直交位相成分および同相位相成分に基づいて、静電型センサ7への導体の接触を検知する。
【0059】
表1に、選択された直交位相成分と、選択された同相位相成分との組み合わせをまとめた。
【0060】
【表1】
【0061】
(8)直交位相成分更新部35
図4に示すように、直交位相成分更新部35は、第一直交位相成分Q1と補正後第二直交位相成分QC2とが第一直交位相誤差ΔQE1の範囲内である場合は、接触判定部33に用いる第一直交位相成分Q1を、記憶部34に格納されている代替直交位相成分QAとして更新する。また、直交位相成分更新部35は、第一直交位相成分Q1と補正後第三直交位相成分QC3とが第二直交位相誤差ΔQE2の範囲内である場合は、接触判定部33に用いる第一直交位相成分Q1を、記憶部34に格納されている代替直交位相成分QAとして更新する。また、直交位相成分更新部35は、補正後第二直交位相成分QC2と補正後第三直交位相成分QC3とが第三直交位相誤差ΔQE3の範囲内である場合は、接触判定部33に用いる補正後第二直交位相成分QC2を、記憶部34に格納されている代替直交位相成分QAとして更新する。
【0062】
(9)同相位相成分更新部36
図4に示すように、同相位相成分更新部36は、第一同相位相成分I1と補正後第二同相位相成分IC2とが第一同相位相誤差ΔIE1の範囲内である場合は、接触判定部33に用いる第一同相位相成分I1を、記憶部34に格納されている代替同相位相成分IAとして更新する。また、同相位相成分更新部36は、第一同相位相成分I1と補正後第三同相位相成分IC3とが第二同相位相誤差ΔIE2の範囲内である場合は、接触判定部33に用いる第一同相位相成分I1を、記憶部34に格納されている代替同相位相成分IAとして更新する。また、同相位相成分更新部36は、補正後第二同相位相成分IC2と補正後第三同相位相成分IC3とが第三同相位相誤差ΔIE3の範囲内である場合は、接触判定部33に用いる補正後第二同相位相成分IC2を、記憶部34に格納されている代替同相位相成分IAとして更新する。
【0063】
4.接触検知装置10の動作
図7に、接触検知装置10の動作に係るメインルーチンを示す。接触検知装置10が作動すると、計測処理(S1)が実行される。
【0064】
(1)計測処理(S1)
計測処理(S1)においては、第一直交位相成分Q1および第一同相位相成分I1が計測される(図5(a)参照)。また、計測処理(S1)においては、第二直交位相成分Q2および第二同相位相成分I2が計測され、それぞれが、補正後第二直交位相成分QC2および補正後第二同相位相成分IC2に補正される(図5(b)参照)。また、計測処理(S1)においては、第三直交位相成分Q3および第三同相位相成分I3が計測され、それぞれが、補正後第三直交位相成分QC3および補正後第三同相位相成分IC3に補正される(図5(c)参照)。
【0065】
(2)ノイズ判定処理
図7に示すように、計測処理(S1)が実行されると、ノイズ判定処理(S2)が実行される。ノイズ判定処理(S2)において、静電型センサ7がノイズの影響を受けているか否かが判断される。図8に、ノイズ判定処理のフローチャートを示す。ノイズ判定処理(S2)が実行されると、直交位相成分比較処理(S10)および同相位相成分比較処理(S20)が同じタイミングで実行され、ノイズ判定処理(S2)が終了する。
【0066】
(A)直交位相成分比較処理
図9に、直交位相成分比較処理(S10)のフローチャートを示す。直交位相成分比較処理(S10)が実行されると、直交位相成分比較部31は、第一直交位相成分Q1と、補正後第二直交位相成分QC2と、を比較する(図5参照)。第一直交位相成分Q1と、補正後第二直交位相成分QC2とが、記憶部34に格納された第一直交位相誤差ΔQE1の範囲内であるとき(S11:Y)、直交位相成分比較部31は、静電型センサ7への導体の接触を検知する基準値として、第一直交位相成分Q1を選択する(S12)。インピーダンスの性質上、周波数が大きいほど導体の接触検知の精度が上がるので、第二周波数よりも大きな第一周波数の第一交流電圧が印加された第一直交位相成分Q1を採用することにより、静電型センサ7に導体が接触したか否かの検知精度を向上させることができる。以上により直交位相成分比較処理(S10)が終了する。
【0067】
第一直交位相成分Q1と、補正後第二直交位相成分QC2とが、第一直交位相誤差ΔQE1の範囲内にないとき(S11:N)、静電型センサ7は、第一周波数の近傍の周波数を有するノイズ、または第二周波数の近傍の周波数を有するノイズの影響を受けていると判断される。
【0068】
続いて、直交位相成分比較部31は、第一直交位相成分Q1と、補正後第三直交位相成分QC3と、を比較する(図5参照)。第一直交位相成分Q1と、補正後第三直交位相成分QC3とが、記憶部34に格納された第二直交位相誤差ΔQE2の範囲内であるとき(S13:Y)、直交位相成分比較部31は、静電型センサ7への導体の接触を検知する基準値として、第三周波数よりも大きな第一周波数に基づく第一直交位相成分Q1を選択する(S14)。以上により直交位相成分比較処理(S10)が終了する。
【0069】
第一直交位相成分Q1と、補正後第三直交位相成分QC3とが、第二直交位相誤差ΔQE2の範囲内にないとき(S13:N)、静電型センサ7は、第一周波数の近傍の周波数を有するノイズ、または第三周波数の近傍の周波数を有するノイズの影響を受けていると判断される。
【0070】
続いて、直交位相成分比較部31は、補正後第二直交位相成分QC2と、補正後第三直交位相成分QC3と、を比較する(図5参照)。補正後第二直交位相成分QC2と、補正後第三直交位相成分QC3とが、記憶部34に格納された第三直交位相誤差ΔQE3の範囲内であるとき(S15:Y)、直交位相成分比較部31は、静電型センサ7への導体の接触を検知する基準値として、第三周波数よりも大きな第二周波数に基づく補正後第二直交位相成分QC2を選択する(S16)。以上により直交位相成分比較処理(S10)が終了する。
【0071】
補正後第二直交位相成分QC2と、補正後第三直交位相成分QC3とが、第三直交位相誤差ΔQE3の範囲内にないとき(S15:N)、静電型センサ7は、第二周波数の近傍の周波数を有するノイズ、または第三周波数の近傍の周波数を有するノイズの影響を受けていると判断される。
【0072】
続いて、直交位相成分比較部31は、静電型センサ7への導体の接触を検知する基準値として、記憶部34に格納された代替直交位相成分QAを選択する(S17)。以上により直交位相成分比較処理(S10)が終了する。
【0073】
(B)同相位相成分比較処理
図10に、同相位相成分比較処理(S20)のフローチャートを示す。同相位相成分比較処理は、上記「(A)直交位相成分比較処理」および図9と比較して、「直交」を「同相」と読み替え、符号「Q」を符号「I」と読み替える以外は同じなので、重複する説明を省略し、結論のみを以下に記載する。
【0074】
第一同相位相成分I1と補正後第二同相位相成分IC2とが第一同相位相誤差ΔIE1の範囲内である場合は(S21:Y)、第一同相位相成分I1が選択される(S22)。
【0075】
第一同相位相成分I1と補正後第三同相位相成分IC3とが第二同相位相誤差ΔIE2の範囲内である場合は(S23:Y)、第一同相位相成分I1が選択される(S24)。
【0076】
補正後第二同相位相成分IC2と補正後第三同相位相成分IC3とが第三同相位相誤差ΔIE3の範囲内である場合は(S25:Y)、補正後第二同相位相成分IC2が選択される(S26)。
【0077】
第一同相位相成分I1と補正後第二同相位相成分IC2とが第一同相位相誤差ΔIE1の範囲内でなく(S21:N)、第一同相位相成分I1と補正後第三同相位相成分IC3とが第二同相位相誤差ΔIE2の範囲内でなく(S23:N)、補正後第二同相位相成分IC2と補正後第三同相位相成分IC3とが第三同相位相誤差ΔIE3の範囲内でない場合は(S25:N)、代替同相位相成分IAが選択される(S27)。
【0078】
(3)接触検知処理
図7に示すように、ノイズ判定処理(S2)が終了すると、接触検知処理(S3)が実行される。接触検知処理(S3)において、接触判定部33は、ノイズ判定処理で選択された直交位相成分Q1,Q2,Q3または補正後直交位相成分QC2,QC3、および同相位相成分I1,I2,I3または補正後同相位相成分IC2,IC3に基づいて、静電型センサ7への導体の接触を検知する。本形態では、接触判定部33は、表1に示す組合せに基づいて、静電型センサ7への導体の接触が検知する。ただし、表1と異なる組合せであってもよい。以下に、接触判定部33の動作について説明する。
【0079】
接触判定部33は、ノイズ判定処理(S2)で選択された直交位相成分Q1,Q2,Q3または補正後直交位相成分QC2,QC3と、記憶部34に格納された直交位相成分基準値QBと、の差分を算出する。
【0080】
接触判定部33は、選択された直交位相成分Q1,Q2,Q3または補正後直交位相成分QC2,QC3と、直交位相成分基準値QBと、の差分が、所定の閾値より大きいときは、第一電極層22に導体が接触したと判断する。一方、接触判定部33は、選択された直交位相成分Q1,Q2,Q3または補正後直交位相成分QC2,QC3と、直交位相成分基準値QBと、の差分が、所定の閾値より小さいときは、第一電極層22に導体が接触していないと判断する。上記の閾値は、記憶部34に格納されていてもよい。
【0081】
接触判定部33は、ノイズ判定処理(S2)で選択された同相位相成分I1,I2,I3または補正後同相位相成分IC2,IC3と、記憶部34に格納された同相位相成分基準値IBと、の差分を算出する。
【0082】
接触判定部33は、選択された同相位相成分I1,I2,I3または補正後同相位相成分IC2,IC3と、同相位相成分基準値IBと、の差分に基づいて、上記と同様にして、静電型センサ7の第一電極層22に導体が接触したか否かを判断する。「直交」を「同相」と読み替え、符号「Q」を符号「I」と読み替える以外は上記と同じなので、重複する説明を省略する。以上により接触検知処理(S3)が終了する。
【0083】
ただし、本態様においては、ノイズ判定処理(S2)で選択された直交位相成分に基づいて第一電極層22に導体が接触したと判定され、且つ、ノイズ判定処理(S2)で選択された同相位相成分に基づいて第一電極層22に導体が接触したと判定された場合に、第一電極層22に導体が接触したと判定してもよい。これにより、静電型センサ7への導体の接触検知の精度を向上させることができる。
【0084】
また、ノイズ判定処理(S2)で選択された直交位相成分のみに基づいて第一電極層22に導体が接触したと判定する構成としてもよい。これにより、接触検知処理(S3)の処理手順を簡素化することができる。
【0085】
また、ノイズ判定処理(S2)で選択された直交位相成分と、ノイズ判定処理(S2)で選択された同相位相成分の双方に基づいて、第一電極層22に接触した導体が、人体なのか否かを精密に判断することができる。例えば、第一電極層22から出力された信号を直交位相成分と同相位相成分とに表したときに、信号を表すベクトルが特定の領域に位置した場合には、手または指などの人体が第一電極層22に接触したと判断され、上記のベクトルが他の領域に位置した場合には、金属が第一電極層22に接触したと判断される構成としてもよい。これにより、第一電極層22への導体の接触を精密に検知することができる。
【0086】
(4)更新処理
図7に示すように、接触検知処理(S3)が終了すると、更新処理(S4)が実行される。
【0087】
直交位相成分更新部35は、直交位相成分比較処理(図9のS10)において、第一直交位相成分Q1と補正後第二直交位相成分QC2とが第一直交位相誤差ΔQE1の範囲内である場合は(図9のS11:Y)、接触判定部33に用いる第一直交位相成分Q1を、記憶部34に格納されている代替直交位相成分QAとして更新する。
【0088】
また、直交位相成分更新部35は、直交位相成分比較処理(図9のS10)において、第一直交位相成分Q1と補正後第三直交位相成分QC3とが第二直交位相誤差ΔQE2の範囲内である場合は(図9のS13:Y)、接触判定部33に用いる第一直交位相成分Q1を、記憶部34に格納されている代替直交位相成分QAとして更新する。
【0089】
また、直交位相成分更新部35は、直交位相成分比較処理(図9のS10)において、補正後第二直交位相成分QC2と補正後第三直交位相成分QC3とが第三直交位相誤差ΔQE3の範囲内である場合は(図9のS15:Y)、接触判定部33に用いる補正後第二直交位相成分QC2を、記憶部34に格納されている代替直交位相成分QAとして更新する。
【0090】
また、同相位相成分更新部36は、同相位相成分比較処理(図10のS20)において、第一同相位相成分I1と補正後第二同相位相成分IC2とが第一同相位相誤差ΔIE1の範囲内である場合は(図10のS21:Y)、接触判定部33に用いる第一同相位相成分I1を、記憶部34に格納されている代替同相位相成分IAとして更新する。
【0091】
また、同相位相成分更新部36は、同相位相成分比較処理(図10のS20)において、第一同相位相成分I1と補正後第三同相位相成分IC3とが第二同相位相誤差ΔIE2の範囲内である場合は(図1おのS23:Y)、接触判定部33に用いる第一同相位相成分I1を、記憶部34に格納されている代替同相位相成分IAとして更新する。
【0092】
また、同相位相成分更新部36は、同相位相成分比較処理(図10のS20)において、補正後第二同相位相成分IC2と補正後第三同相位相成分IC3とが第三同相位相誤差ΔIE3の範囲内である場合は(図10のS25:Y)、接触判定部33に用いる補正後第二同相位相成分IC2を、記憶部34に格納されている代替同相位相成分IAとして更新する。以上により更新処理(S4)が終了する。
【0093】
(5)終了選択
次に、図7に示すように、終了の指示がない場合には(S5:N)、S1~S4の処理を繰り返す。一方、終了の指示がある場合には(S5:Y)、接触検知装置10は動作を終了する。
【0094】
5.本形態の作用効果
続いて、本形態の作用効果について説明する。本形態によれば、第一周波数の近傍の周波数のノイズが混入した場合でも、第二交流電圧に係る補正後第二直交位相成分QC2に基づいて、第一電極層22への導体の接触を検知することができる。また、第二周波数の近傍の周波数のノイズが混入した場合でも、第一交流電圧に係る第一直交位相成分Q1に基づいて、第一電極層22への導体の接触を検知することができる。また、第一周波数および第二周波数の近傍の周波数のノイズが混入した場合、または、第一周波数、第二周波数および第三周波数の近傍の周波数に近いノイズが混入した場合でも、記憶部34に格納された代替直交位相成分QAに基づいて、第一電極層22への導体の接触を検知することができる。これにより、接触検知装置10についてノイズの影響を低減させることができる。
【0095】
また、本形態によれば、静電型センサ7の第一電極層22への導体の接触を検知するために、上記した直交位相成分に加えて同相位相成分も用いることにより、接触検知装置10の精度を向上させることができる。
【0096】
本形態によれば、第一周波数および第二周波数の近傍の周波数のノイズが混入した場合、または、第一周波数、第二周波数および第三周波数の近傍の周波数に近いノイズが混入した場合に、記憶部34に格納された代替直交位相成分QAであって前回の判定に用いた代替直交位相成分QA、および記憶部34に格納された代替同相位相成分IAであって前回の判定に用いた代替同相位相成分IAに基づいて、静電型センサ7の第一電極層22への導体の接触を検知することができる。
【0097】
また、本形態によれば、第一周波数は第二周波数よりも大きく、第二周波数は第三周波数よりも大きい。インピーダンスの性質上、周波数の大きな交流電圧を印加することにより、接触検知装置10の精度を向上させることができる。本形態によれば、第一周波数に近い周波数のノイズが混入していない場合には、第一周波数の第一交流電圧に基づいて、第一電極層22への導体の接触を検知することが可能であり、また、第二周波数に近い周波数のノイズが混入していない場合には、第二周波数の第二交流電圧に基づいて、第一電極層22への導体の接触を検知することが可能であるので、可及的に、接触検知装置10の精度を向上させることができる。
【0098】
また、記憶部34に格納された代替同相位相成分QAであって前回の判定に用いた代替直交位相成分QA、および記憶部34に格納された代替同相位相成分IAであって前回の判定に用いた代替同相位相成分IAに基づくことにより、静電型センサ7の経時変化に対応することができるので、接触検知装置10の精度を向上させることができる。
【0099】
(実施形態2)
次に、図11を参照して、実施形態2の接触検知装置60の構成について説明する。本形態の交流電源11は、第一周波数の第一交流電圧と、第二周波数の第二交流電圧と、を所定の周期で切り替えて第一電極層22および第二電極層23に印加する。第一周波数と、第二周波数とは、互いに異なっている。本形態では、第一周波数は第二周波数よりも大きい。
【0100】
本形態の直交復調器12は、第一交流電圧が第二電極層23に印加された場合に第一電極層22から出力される信号から、第一直交位相成分Q1および第一同相位相成分I1を抽出する。
【0101】
また、本形態の直交復調器12は、第二交流電圧が第二電極層23に印加された場合に第一電極層22から出力される信号から、第二直交位相成分Q2を抽出して補正後第二直交位相成分QC2を生成するとともに、第二同相位相成分I2を抽出して補正後第二同相位相成分IC2を生成する。
【0102】
図11に示すように、本形態の記憶部64は、代替直交位相成分QAと、代替同相位相成分IAと、第一直交位相誤差ΔQE1と、第一同相位相誤差ΔIE1と、を格納している。
【0103】
本形態の直交位相成分比較部31は、直交復調器12によって抽出される第一直交位相成分Q1と、直交復調器12によって生成される補正後第二直交位相成分QC2と、を比較する。ただし、直交位相成分比較部31は、補正後第二直交位相成分QC2に代えて、第二直交位相成分Q2と、第一直交位相成分Q1と、と比較してもよい。
【0104】
本形態の同相位相成分比較部32は、直交復調器12によって抽出される第一同相位相成分I1と、直交復調器12によって生成される補正後第二同相位相成分IC2と、を比較する。ただし、同相位相成分比較部32は、補正後第二同相位相成分IC2に代えて、第二直交位相成分I2と、第一同相位相成分I1と、を比較してもよい。
【0105】
本形態の接触判定部33は、直交位相成分比較部31で比較された結果に基づいて、静電型センサ7への導体の接触を検知する基準となる直交位相成分を選択する。また、接触判定部33は、同相位相成分比較部32で比較された結果に基づいて、静電型センサ7への導体の接触を検知する基準となる同相位相成分を選択する。接触判定部33は、選択された直交位相成分および同相位相成分に基づいて、静電型センサ7への導体の接触を検知する。
【0106】
表2に、選択された直交位相成分と、選択された同相位相成分との組み合わせをまとめた。
【0107】
【表2】
【0108】
本形態の直交位相成分更新部35は、第一直交位相成分Q1と補正後第二直交位相成分QC2とが第一直交位相誤差ΔQE1の範囲内である場合は、接触判定部33に用いる第一直交位相成分Q1を、記憶部64に格納されている代替直交位相成分QAとして更新する。
【0109】
本形態の同相位相成分更新部36は、第一同相位相成分I1と補正後第二同相位相成分IC2とが第一同相位相誤差ΔIE1の範囲内である場合は、接触判定部33に用いる第一同相位相成分I1を、記憶部64に格納されている代替同相位相成分IAとして更新する。
【0110】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、重複する説明を省略する。
【0111】
次に、本形態の接触検知装置60の動作について説明する。本形態の接触検知装置60の動作については、実施形態1の接触検知装置60との相違点について説明し、同一の動作については重複する説明を省略する。
【0112】
本形態の接触検知装置60が作動すると、計測処理(図7のS1)が実行される。本形態の計測処理(S1)においては、第一直交位相成分Q1および第一同相位相成分I1が計測される。また、本形態の計測処理(S1)においては、第二直交位相成分Q2および第二同相位相成分I2が計測され、それぞれが、補正後第二直交位相成分QC2および補正後第二同相位相成分IC2に補正される。
【0113】
次に、ノイズ判定処理(図7のS2)が実行される。図12に示すように、本形態においては、ノイズ判定処理(S2)が実行されると、直交位相成分比較処理(S30)および同相位相成分比較処理(S40)が同じタイミングで実行され、ノイズ判定処理(S2)が終了する。
【0114】
図13に本形態の直交位相成分比較処理(S30)のフローチャートを示す。直交位相成分比較処理(S30)が実行されると、直交位相成分比較部31は、第一直交位相成分Q1と、補正後第二直交位相成分QC2と、を比較する。第一直交位相成分Q1と、補正後第二直交位相成分QC2とが、記憶部64に格納された第一直交位相誤差ΔQE1の範囲内であるとき(S31:Y)。直交位相成分比較部31は、静電型センサ7への導体の接触を検知する基準値として、第一直交位相成分Q1を選択する(S32)。
【0115】
第一直交位相成分Q1と、補正後第二直交位相成分QC2とが、第一直交位相誤差ΔQE1の範囲内にないとき(S31:N)、直交位相成分比較部31は、静電型センサ7への導体の接触を検知する基準値として、記憶部64に格納された代替直交位相成分QAを選択する(S33)。以上により直交位相成分比較処理(S30)が終了する。
【0116】
図14に、同相位相成分比較処理(S40)のフローチャートを示す。同相位相成分比較処理は、上記した直交位相成分比較処理と比較して(図13参照)、「直交」を「同相」と読み替え、符号「Q」を符号「I」と読み替える以外は同じなので、重複する説明を省略する。
【0117】
図7に示すように、ノイズ判定処理(S2)が終了すると、接触検知処理(S3)が実行される。接触検知処理(S3)において、接触判定部33は、ノイズ判定処理で選択された直交位相成分および同相位相成分に基づいて、静電型センサ7への導体の接触を検知する。
【0118】
接触判定部33は、ノイズ判定処理(S2)で選択された直交位相成分Q1,Q2または補正後直交位相成分QC2に基づいて、静電型センサ7への導体の接触を検知する。また、接触判定部33は、ノイズ判定処理で選択された同相位相成分I1,I2または補正後同相位相成分IC2に基づいて、静電型センサ7への導体の接触を検知する。接触判定部33が実行する処理は実施形態1とほぼ同様なので、重複する説明を省略する。以上により接触検知処理(S3)が終了する。
【0119】
(4)更新処理
図7に示すように、接触検知処理(S3)が終了すると、更新処理(S4)が実行される。
【0120】
直交位相成分更新部35は、直交位相成分比較処理(図13のS30)において、第一直交位相成分Q1と補正後第二直交位相成分QC2とが第一直交位相誤差ΔQE1の範囲内である場合は(図13のS31:Y)、接触判定部33に用いる第一直交位相成分Q1を、記憶部64に格納されている代替直交位相成分QAとして更新する。
【0121】
また、同相位相成分更新部36は、同相位相成分比較処理(図14のS40)において、第一同相位相成分I1と補正後第二同相位相成分IC2とが第一同相位相誤差ΔIE1の範囲内である場合は(図14のS41:Y)、接触判定部33に用いる第一同相位相成分I1を、記憶部64に格納されている代替同相位相成分IAとして更新する。以上により更新処理(S4)が終了する。
【0122】
上記以外の動作は実施形態1と同様なので、重複する説明を省略する。
【0123】
次に、本形態の作用効果について説明する。本形態では、第一周波数の近傍の周波数のノイズが混入した場合には、記憶部64に格納された代替直交位相成分QAに基づいて、第一電極層22への導体の接触を検知することができる。これにより、接触検知装置60についてノイズの影響を低減させることができる。
【0124】
また、本形態によれば、静電型センサ7の第一電極層22への導体の接触を検知するために、上記した直交位相成分に加えて同相位相成分も用いることにより、接触検知装置60の精度を向上させることができる。
【0125】
また、本形態によれば、第一直交位相成分Q1と補正後第二直交位相成分QC2とが第一直交位相誤差ΔQE1の範囲外であり、第一同相位相成分I1と補正後第二同相位相成分IC2とが第一同相位相誤差ΔIE1の範囲外である場合に、記憶部64に格納された代替直交位相成分QAであって前回の判定に用いた代替直交位相成分QA、および記憶部64に格納された代替同相位相成分IAであって前回の判定に用いた代替同相位相成分IAに基づいて、静電型センサ7への導体の接触を検知することができる。
【0126】
また、本形態の第一周波数は第二周波数よりも大きい。インピーダンスの性質上、周波数の大きな交流電圧を印加することにより、接触検知装置60の精度を向上させることができる。このため、第二周波数よりも大きな第一周波数を、導体の検知に用いることができる場合には、接触検知装置60の精度を向上させることができる。本形態によれば、第一周波数に近い周波数のノイズが混入していない場合には、記憶部64に格納された代替位相成分(代替直交位相成分QAまたは代替同相位相成分IA)であって前回の判定に用いた代替位相成分に基づいて、第一電極層22への導体の接触を検知することができるので、可及的に、接触検知装置60の精度を向上させることができる。
【0127】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【0128】
本形態においては、直交位相成分更新部35および同相位相成分更新部36によって、それぞれ、代替直交位相成分QAおよび代替同相位相成分IAが更新される構成としたが、これに限られず、直交位相成分更新部35および同相位相成分更新部36は省略してもよく、代替直交位相成分QAおよび代替同相位相成分IAは記憶部64に格納された初期値であって、更新されることのない値としてもよい。
【符号の説明】
【0129】
7 静電型センサ、10,60 接触検知装置、11 交流電源、12 直交復調器、22 第一電極層、23 第二電極層、30 計測器、31 直交位相成分比較部、32 同相位相成分比較部、33 接触判定部、34,64 記憶部、35 直交位相成分更新部、36 同相位相成分更新部、IA 代替同相位相成分、IB 同相位相成分基準値、ΔIE1 第一同相位相誤差、ΔIE2 第二同相位相誤差、ΔIE3 第三同相位相誤差、I1 第一同相位相成分、I2 第二同相位相成分、I3 第三同相位相成分、IC2 補正後第二同相位相成分、IC3 補正後第三同相位相成分、QA 代替直交位相成分、QB 直交位相成分基準値、ΔQE1 第一直交位相誤差、ΔQE2 第二直交位相誤差、ΔQE3 第三直交位相誤差、Q1 第一直交位相成分、Q2 第二直交位相成分、Q3 第三直交位相成分、QC2 補正後第二直交位相成分、QC3 補正後第三直交位相成分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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