(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052072
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】片流れ屋根の破風部材
(51)【国際特許分類】
E04D 13/158 20060101AFI20240404BHJP
E04D 13/152 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
E04D13/158 501P
E04D13/152 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158523
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000230607
【氏名又は名称】日本化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】染谷 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】清水 圭吾
(57)【要約】 (修正有)
【課題】片流れ屋根に取り付ける破風部材であって、汎用性が高く、換気通路を簡単に形成するとともに、雨水が換気口から侵入しづらい防水性能に優れた破風部材を提供する。
【解決手段】片流れ屋根50の棟部50Aに取り付ける破風部材1は、棟部50Aの下方において片流れ屋根50の小屋裏空間21を塞ぎ、棟部50Aより下方の建屋に直接固定される第1部材2と、第1部材2の外側に第1部材2を介して建屋に固定され、第1部材2との間に換気空間4を形成する第2部材3からなり、第1部材2には換気空間4と小屋裏空間21を連通する第1換気口5Aを形成し、第1部材2あるいは第2部材3のいずれかに第1換気口5Aの下方において換気空間4と外気を連通する第2換気口5Bを形成し、第2部材3を屈折させて第1部材2側へ張り出させることにより、第1部材2と第2部材3の間に換気空間4を確保した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
片流れ屋根の棟部に取り付ける破風部材であって、
前記棟部の下方において前記片流れ屋根の小屋裏空間を塞ぎ、前記棟部より下方の建屋に直接固定される第1部材と、
前記第1部材の外側に前記第1部材を介して前記建屋に固定され、前記第1部材との間に換気空間を形成する第2部材とからなり、
前記第1部材には前記換気空間と前記小屋裏空間とを連通する第1換気口を形成し、前記第1部材あるいは前記第2部材のいずれかには前記第1換気口の下方において前記換気空間と外気とを連通する第2換気口を形成し、
前記第2部材を屈折させて前記第1部材側へ張り出させることにより、前記第1部材と前記第2部材との間に前記換気空間を確保したことを特徴とする破風部材。
【請求項2】
請求項1記載の片流れ屋根の破風部材であって、前記スペーサ凸部の底部には前記第2部材を前記第1部材とともに前記建屋に固定するためのネジ穴を形成したことを特徴とする片流れ屋根の破風部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の片流れ屋根の破風部材であって、前記第2換気口は前記第1部材に形成され、前記片流れ屋根の軒天より下方において建物外壁に対向するように開口したことを特徴とする片流れ屋根の破風部材。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の片流れ屋根の破風部材であって、前記第1部材の上端は前記第2部材側にフック状に折れ曲がることで高さ方向に遊びをもって前記第2部材の上端を案内するガイド部を形成し、前記第1部材の下端には前記第2部材を前記第1部材に対してスライドさせた際に高さ方向の位置決めを行う位置決め部を形成したことを特徴とする片流れ屋根の破風部材。
【請求項5】
請求項1または請求項2記載の片流れ屋根の破風部材であって、前記第2部材または前記第1部材の下端周辺には篏合凹部を形成し、前記第1部材または前記第2部材の下端周辺には前記篏合凹部に篏合し、かつ高さ方向の位置決めを行い、水平方向の移動を規制する篏合凸部を形成したことを特徴とする片流れ屋根の破風部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片流れ屋根の破風端面に取り付けられる破風部材であって、小屋裏の換気を行う換気口を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物外観のデザイン性の人気や、また、太陽光発電用パネルの取付け需要もあり、単一の屋根面から構成される、いわゆる片流れ屋根を持つ建物が多く建築されるようになっている。
【0003】
一方、片流れ屋根においての小屋裏の換気は、屋根面の上端部、すなわち破風から棟部(片流れ屋根の頂部)にかけての換気口を設けて行うことが一般である。特に、風雨を正面に受ける棟頂部の破風は、小屋裏への水漏れの原因になることが多く、その換気口構造は慎重に設計される。
【0004】
このような、片流れ屋根の棟部の換気構造には、次のような従来技術が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公開公報2015-68095号公報
【0006】
特許文献1には、換気構造を持った片流れ屋根の破風部材が開示されている。同換気部材は、破風下地2に直接固定され、破風正面と屋根面の棟部を覆う破風板3と、同様に破風正面と屋根面の棟部を覆う棟カバー7とからなり、第1のブラケット73、第2のブラケット74を両者間に配置して両者間に空間を形成し、ここに換気通路を形成している。
【0007】
この従来技術に拠れば、これら部材3、7、73、74から成る破風部材によって換気構造を構成することにより、防水性能を確保しながら、小屋裏の換気を確保することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、片流れ屋根は屋根面の角度は、それぞれの建物で異なり、特許文献1の構造のように棟部を覆うとすると、棟カバー7の形状が特定されてしまうために、汎用性に乏しい破風部材となってしまう。
【0009】
また、換気構造として、破風板3に換気孔55を開口して小屋裏空間と換気通路とを連通しているが、換気通路と外気との連通は、棟カバー7の下端部において破風板3との間に隙間を作って行っており、この部分に形成される換気口は破風から連続する外壁の近傍に設けられる。
【0010】
このように外壁に連続する形で換気口を設けることは、風雨によって、雨水が換気口から流れ込む恐れがある。実際、特許文献1の実施形態では、これを防ぐために外壁とこの換気口との間に水返しプレート部材を配置しており、部材数が増え、また、防水のための構造が複雑となるという問題点があった。
【0011】
そこで、本発明の片流れ屋根の破風部材は、片流れ屋根において棟部を覆わず、棟部破風の正面に取り付けることで棟部の防水機能を切り離し、防水性が優れ、かつ施工が容易な換気ができる破風部材を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する破風部材は、片流れ屋根の棟部に取り付ける破風部材であって、前記棟部の下方において前記片流れ屋根の小屋裏空間を塞ぎ、前記棟部より下方の建屋に直接固定される第1部材と、前記第1部材の外側に前記第1部材を介して前記建屋に固定され、前記第1部材との間に換気空間を形成する第2部材とからなり、前記第1部材には前記換気空間と前記小屋裏空間とを連通する第1換気口を形成し、前記第1部材あるいは前記第2部材のいずれかには前記第1換気口の下方において前記換気空間と外気とを連通する第2換気口を形成し、前記第2部材を屈折させて前記第1部材側へ張り出させることにより、前記第1部材と前記第2部材との間に前記換気空間を確保したことを特徴とする。
【0013】
また、前記スペーサ凸部の底部には前記第2部材を前記第1部材とともに前記建屋に固定するためのネジ穴を形成したことで、破風部材を屋根の破風に取り付けるネジのネジ頭が凹部となったスペーサ凸部の底に位置するので、目立つことが無く、美感に優れた破風部材を提供することができる。
【0014】
また、前記第2換気口は前記第1部材に形成され、前記片流れ屋根の軒天より下方において建物外壁に対向するように開口したことで、さらに高い防水効果を期待できる。
【0015】
さらに、前記第1部材の上端は前記第2部材側にフック状に折れ曲がることで高さ方向に遊びをもって前記第2部材の上端を案内するガイド部を形成し、前記第1部材の下端は前記第2部材側に屈折して、前記第2部材を前記第1部材に対してスライドさせた際に高さ方向の位置決めを行う位置決め部を形成すれば、第1部材と第2部材との高さ方向の位置決めを容易とし、特に両者のネジ穴の位置合わせをより簡単に行うことができ、施工性に優れた換気用破風部材を提供できる。
【0016】
また、前記第2部材または前記第1部材の下端周辺には篏合凹部を形成し、前記第1部材または前記第2部材の下端周辺には前記篏合凹部に篏合し、かつ高さ方向の位置決めを行い、水平方向の移動を規制する篏合凸部を形成した構成とすれば、高さ方向のみならず水平方向についても、第1部材及び第2部材の相対的な移動を規制して、より施工性に優れた換気用破風部材を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、片流れ屋根において棟部を覆わず、棟部破風の正面に取り付けることで、屋根面の角度が異なる建物毎の形状に左右されない、汎用性の高い破風部材を提供することができ、また、部材の下端を棟部破風の下方に垂下させるので、片流れ屋根の軒天より下に外気と連通する第2換気口を開口するために、防水機能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる破風部材を用いた、片流れ屋根の棟部近傍の断面図である。
【
図2】同実施形態の破風部材の部分拡大斜視図である。
【
図3】同実施形態の第1部材と第2部材の固定作業の説明図であり、(a)は第1部材と第2部材を分離した状態を示す側面図であり、(b)は第1部材と第2部材を固定した状態の側面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態にかかる破風部材の部分拡大斜視図である。
【
図5】本発明の第3実施形態にかかる破風部材の部分拡大斜視図である。
【
図6】本発明の第4実施形態にかかる破風部材の部分拡大斜視図である。
【
図7】本発明の第5実施形態にかかる破風部材を取り付けた、軒天を有する片流れ屋根の棟部近傍の断面図である。
【
図8】本発明の第5実施形態にかかる破風部材を取り付けた、軒天を有さない片流れ屋根の棟部近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1乃至
図3を用いて、本発明の第一実施形態に関する片流れ屋根の破風構造を具体的に説明する。
【0020】
図1に示すように、片流れ屋根50は、頂部である棟部50Aとこの棟部50Aから下方斜めに傾斜する屋根面50Bにより形成される。屋根面50Bは、垂木22に張りわたされる野地板51の上部に屋根葺き材52を重ねて固定したものである。
【0021】
さらに棟カバー54が棟部Aの正面と屋根面50Bの一部とを覆うように、ルーフィング材52の上に取り付けられた下地板53に固定している。この棟カバー54は、野地板51とルーフィング材52の端面をカバーして棟部50Aの見栄えを整えるほか、これら端面や両者間の隙間から雨水が侵入することを防止する。
【0022】
なお、この棟部50Aにおいて、屋根葺き材52と野地板51との間に、アスファルトフェルトや合成樹脂等で製作される防水用の下葺きシート55を挟み込み、さらにこの下葺きシート55が野地板51の端面を包んで、下方に延びるように垂木22の端面に設置し、特に棟部50Aで生じやすい、後述する軒裏空間21への雨水の侵入を防止している。
【0023】
本発明の第1実施形態の破風部材1は、上述の棟部50Aの下方において、垂木22及び破風下地材23に固定され、片流れ屋根50の棟部50A側の破風正面を構成するものである。
【0024】
この際、上述した下葺きシート55の下端は、この破風部材1と垂木22、また、破風部材1と片流れ屋根50の野地板51との間に挟まれて固定される。特に、破風部材1の上縁と野地板51の下面は、直線状に接して、ここに水密線WLを形成し、水密性を高めることができる。
【0025】
また、垂木22の下方には、距離を置いて軒天材26が野縁24及び軒天下地材25に固定されており、片流れ屋根50の軒天を構成する。そして、軒天材26は野地板51との間に、小屋裏空間21を形成する。
【0026】
そして、破風部材1は、その下端が軒天材26の位置より下方に垂下するように設置される。すなわち、この軒天材26より下方に張り出す破風部材1の下端部は、軒天材26の軒下の距離を隔て、建物の外壁27から離れて位置することとなる。
【0027】
次に、破風部材1の構造を以下説明する。
図1及び
図2に示すように、破風部材1は、建物の躯体である垂木22及び破風下地材23に直接接して固定される第1部材2と、第1部材2の外側に接して、第1部材2を介して垂木22及び棟木23に固定される第2部材3とからなる。第1部材2と第2部材3は、長尺方向において同じ長さを有する、スチール、ステンレス、アルミ等金属製の板状長尺部材である。
【0028】
図1に示す断面形状において、第1部材2の上端部は、外側(建物躯体と反対側)に延びるように折れ曲がった水平部2a1とさらに下方に折れ曲がるフック部2a2とからなるガイド部2aが形成される。また、第1部材2の下端部も、同様に外側に延びるように折れ曲がり、後述するように、第2部材3の下端部が当接する位置決め部2bが形成される。
【0029】
また、第1部材2の下半分には、第1換気口5Aと第2換気口5Bを開口している。第1換気口5Aは、
図2に示すように、複数の矩形の開口が長手方向に連続するスリット形状を有する。また、第2換気口5Bも、複数の同様に矩形の開口が長手方向に連続するが、開口部の切り抜き部がプレスされて第2部材3側に残り、目隠しスリットとなっている。
【0030】
そして、第1部材2を建物側に取り付けた状態では、第1換気口5Aは垂木22と軒天材26との間に位置して軒天空間21に対面し、第2換気口5Bは軒天材26の下側に位置して、片流れ屋根50の軒裏において外壁27に対向する。
【0031】
なお、
図1及び
図2の断面形状において、これら第1換気口5Aと第2換気口5Bとの間には、下側にフックが付く水返し板6が長尺方向に通しで取付けられ、第2換気口5Bから風圧で入り込んだ雨水が、第1換気口5Aに侵入することを防止している。
【0032】
図1に示す断面図において、第2部材3は、長手方向に平板を折り曲げ、外側(建物躯体と反対側、すなわち第1部材2と反対側)に張り出す第1張出部3Aと第2張出部3Bを形成している。
【0033】
そして、第2部材3の上端部、中央部は、第1張出部3A、第2張出部3Bにより相対的に内側(建物躯体側、すなわち第1部材側)に凹んで、それぞれ第1凹部3C、第2凹部3Dが形成され、下端部3Eは折れ曲がってフック形状が形成されている。
【0034】
第2部材3の第1凹部3Cは、外側に折れ曲がって上部係合部3aとなり、第1部材2の上端のガイド片2aの内側に篏合して、第1部材2及び第2部材3の上端同士を係合する構造となっている。
【0035】
また、この第1凹部3Cの底にはネジ穴3cが開口しており、第1部材2の、ネジ穴3cと対向する位置にネジ穴2cが開口して、両孔にネジ7を通して、第1部材2及び第2部材3を垂木22の端面に固定する。また、第1凹部3Cは第2部材3の高さ方向上端にあって、第1部材2と第2部材3との距離を保つスペーサ凸部として機能する。
【0036】
第2部材3の第2凹部3Dは、第1部材2側に凹んで長手方向に延びる溝状となり、その上下にそれぞれ第1張出部3A、第2張出部3Bが形成される。すなわち、第2凹部3Dは第2部材3の高さ方向中途部にあって、第1部材2と第2部材3との距離を保ちスペーサとして機能するとともに、ネジ穴を隠すことができる凹部となる。片流れ屋根50の破風50Aは高い位置にあり、観察者は大きな迎角で見上げることになるので、これら凹部3C、3Dの底に位置するネジ7の頭を望遠することはできず、ネジ頭が破風の美感を損なうことを防止することができる。
【0037】
この第2凹部3Dの底にもネジ穴3dが開口しており、同様に第1部材2には、ネジ穴3dと対向する位置にネジ穴2dが開口して、両孔にネジ7を通して、第1部材2及び第2部材3を垂木22の端面に固定する。
【0038】
換気空間内4の水返し板6の上方及び第1部材2には、ネジ穴2eが開口しており、このネジ穴2eにネジ7を差し込むことで棟木23に第1部材3を固定する。また、第2部材3の下端部3Eは、第1部材2側に折れ曲がって延びるように折れ曲がった水平部3b1とさらに上方に折れ曲がるフック部3b2とからなる下部係合部3bが形成され、両者の高さ方向の位置決めがなされ、フック部3b2が嵌合して水平方向のずれも規制する。
【0039】
すなわち、第2部材3の下端部3Eは篏合凹部8Aとなり、この篏合凹部8Aに第1部材2下端の位置決め部2bたる篏合凸部8Bが嵌め込まれて、第1部材2と第2部材3間の下端の垂直方向、水平方向の位置決めがなされることになる。この構造により、第1部材2と第2部材3との下端部はビスで固定することを要さず、安定して両者を接続できる。また第1部材2と第2部材3とを隔てて開放した換気通路を設ける構造とはならないので、蝙蝠等小動物の侵入を防止することができる。
【0040】
なお、第1部材2及び第2部材3の長手方向の両端は、図示しない、金属製あるいは金属製の蓋体がはめ込まれており、換気空間4は両端で密閉される。
【0041】
次に、
図3を用いて、第1部材2と第2部材3の係合方法を説明する。まず、施工作業者は、
図3(a)に示すように、第1部材2と第2部材3を分離した状態で第1部材2のネジ穴6eにネジ7を通して、これを建物の破風下地材23に固定する(
図1参照)。
【0042】
この作業により、第1部材2は、片流れ屋根50の建屋に固定され、棟部50Aの下、野地板51と軒天材26との間に開口する軒天空間21を塞ぐ。この際、防水用の下葺きシート55を第1部材2と垂木22との間に、垂木22下まで、下葺きシート55を下げた状態で挟み込むこととなり(
図1参照)、野地板51を伝って侵入する雨水を確実に防ぐことができる。特に、本実施形態の破風部材1の第1部材2上縁を野地板51に突き当てることで、下葺きシート55を水密線XLで線状に野地板51に圧接するので、小屋裏への雨水の浸入を確実に防止することができる。
【0043】
また、第1部材2を垂木22に取り付けた状態では、第1換気口5Aは軒天空間21に対向し、この空間に連通する。また、第2換気口5Bは軒天材26の下方に位置して、外気に連通する。第2換気口5Bは、軒天材26の高さより下方に垂下し、この軒下分の距離を隔てて外壁27に対向するため、雨水が入り込むことはなく、防水効果を発揮する。
【0044】
次に、施工作業者は、第2部材3を、第1部材2に対して位置決めして重ね合わせる作業を行う。すなわち、まず、第2部材3の上部係合部3aを、第1部材2のガイド部2aに下方から斜めに挿入する。
【0045】
次に、第1部材2と第2部材3のそれぞれの上端を遊びをもって仮係合した状態で、第2部材3を上方にスライドさせて、第2部材3の下部係合部3bの上面を第1部材2の位置決め部2bの下面に当接させ、第1部材2と第2部材3の高さ方向の相対的位置を確定する。
【0046】
なお、この際、第1部材2と第2部材3の上端において、第1部材2のガイド部2aはフック形状を有するため、上部係合部3aとガイド部2aとの間に多少遊びを設けたとしても、両者の係合は外れることがない。
【0047】
上述のように、第1部材2に対する第2部材3の相対位置が決まった状態で、施工作業者は、第1部材2及び第2部材3それぞれの上のネジ穴2c、3c、及び下のネジ穴2d、3dにネジ7,7を通し、電動スクリュードライバー等を使って垂木22に第1部材2、第2部材3を一体に固定することで(
図1参照)、施工作業を完了する。
【0048】
第2部材3の下部係合部3bは断面フック形状を有するために、第1部材2の位置決め部2bを抱え込むために、換気空間4の密閉性が高い状態で保たれる。
【0049】
以上の一連の作業により、第1部材2を片流れ屋根50の破風20に取り付けることで、第1換気口5Aを軒天空間22に連通させ、第2換気口5Bを外壁27に対向する状態で外気と連通させる。そして、さらに第2部材3を第1部材2に取り付けることで、第2部材3の間に換気空間4を形成することができ、第1換気口5Aと第2換気口5Bとの間に換気通路Fを簡単に形成することができる。
【0050】
特に、第1部材のガイド部2aと位置決め部2bのはたらきにより、軒天空間21を確実に塞ぐように第1部材2を仮設置した後に、第2部材3を第1部材2に、確実かつ簡単に位置決めして固定することができる。
【0051】
一方、換気空間4の内部のメンテナンスが必要となった場合は、上のネジ穴2c、3c、及び下のネジ穴2d、3dのネジ7,7を外して、第2部材3を外すだけで、第1部材1を建物から外すことなく換気空間4をオープンにすることができ、作業性に優れた破風部材1とすることができる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を、
図4を用いて説明する。本実施形態の破風部材11は、第1部材12と第2部材13とから構成される。第1実施形態と同様の構造については、同じ符号を付して説明を省略する(なお、符号が異なっても、第1部材2,1 2について、水平部2a1,12a1、フック部2a2,12a2等、第2部材3,13について第1張出部3A,13A、第2張出部3B,13B、上端部の第1凹部3C,13C、中途部の第2凹部3D,13D等、両部材のネジ穴2c,12c、同2d,12d、同2e,11e、同3c,13c、同3d、13d等は、いずれも同じ構造である)。
【0053】
本実施形態の破風部材11は、その上下端のガイド部と位置決め部の構造において、第1実施形態の破風部材1と相違する。
【0054】
本実施形態の第2部材12の上端にあるガイド部12aは、断面フック形状を有しているものの、水平部を有さず、第2部材13の厚みより若干広い程度の薄い間隔を開けた折り返し部12a1を有する。また、第2部材13の上部係合部13aは平板状である。
【0055】
すなわち、第2部材13の平板状の上部係合部13aを第1部材12のガイド部12aに挿入すると、両者は係合し、折り返し部12a1の幅分だけ上下方向に移動することが可能となる。
【0056】
また、第2部材12の下端の位置決め部12bは、第1実施形態の位置決め部2bと同様に水平に折り曲げられているが、第1実施形態の第2換気口5Cの代わりに、この位置決め部12bにスリット状の第2換気口5Cが開口している。すなわち、換気空間4と外気を連通させる第2換気口5Cは破風部材11の側面ではなく、底部に開口している。
【0057】
このため、第2部材13の下部係合部13bは第1実施形態の下部係合部3bと同様に折り曲げられているものの、第2換気口5Cを塞がないよう、その幅は短くなっている。、
【0058】
このように、第2実施形態の破風部材11においても、第1部材12と第2部材13と結合するだけで簡単に換気空間4を形成することができ、ガイド部12aと位置決め部12bのはたらきにより、第1部材12と第2部材13との相対的な位置決めを確実かつ簡単に行うことができる。
【0059】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を、
図5を用いて説明する。本実施形態の破風部材31は、第1部材12と第2部材13とから構成される。第1実施形態と同様の構造については、同じ符号を付して説明を省略する(なお、符号が異なっても、第1部材2,32について、水平部2a1,32a1、フック部2a2,32a2等、第2部材3,33について第1張出部3A,33A、第2張出部3B,33B、上端部の第1凹部3C,33C、中途部の第2凹部3D,33D等、両部材のネジ穴2c,32c、同2d,32d、同2e,32e、同3c,33c、同3d、33d等は、いずれも同じ構造である)。
【0060】
本実施形態の破風部材31は、第2換気口5Dを形成する下部構造において、第1部材32、第2部材33が第1実施形態の第1部材2、第2部材3と相違する。
【0061】
本実施形態の第1部材32の下端部32bは、いったん建物側に曲がって張り出し部32Aを作ったあと、外側に延びるように折れ曲がり、ダクト片32bを形成している。張り出し部32Aの天井片32fは、建物外側に下がるように傾斜している。
【0062】
また、第2部材33の下端部33bは、大きく優角を取って斜め上方に建物側に曲がり、ここに目隠しスリット5Dを形成して、スリット片33Eとしている。この第2部材33のスリット片33Eと、第1部材のダクト片32bとは間隔を開けており、換気通路4と外気を連通する、建物の反対側に開口した第2換気口5Dを形成する。
【0063】
なお、第2部材33の下端部33d(スリット片33E)の先端は、上方に跳ね上がって縦片33b1となっており、その先端が第1部材32の張出部32Aの天井片32fに当たることとなる。すなわち、第1部材32の天井片32fが、第1部材32、第2部材33の高さ方向の位置を決める位置決め部となる。
【0064】
この際、第1部材32の天井片32fは傾斜しているので、第2部材33端部の縦片33b1は傾斜した天井片32fに案内されて屈折部分に嵌ることとなる。このため、天井片32fの傾斜により、縦片33b1は水平方向の移動が規制される。すなわち、天井部32fが篏合凹部8Aとしての機能を、縦片33b1が篏合凸部8Bの役割を果たし、第1部材32と第2部材33の下端部はネジ止めしなくても、固定されることになる。
【0065】
また、軒天材26(
図1参照)は、張り出し部32Aの側方に位置するように施工されるが、屋根50のバリエーションによっては、軒天材26を張り出し部32Aの天井片32fの上に載せるようにして、屋根50を構成することもできる。
【0066】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を、
図6を用いて説明する。本実施形態の破風部材41は、第1部材42と第2部材43とから構成される。第1実施形態と同様の構造については、同じ符号を付して説明を省略する(なお、符号が異なっても、第1部材2,42について、水平部2a1,42a1、フック部2a2,42a2等、第2部材3,43について第1張出部3A,43A、第2張出部3B,43B、上端部の第1凹部3C,43C、中途部の第2凹部3D,43D等、両部材のネジ穴2c,42c、同2d,42d、同2e,42e、同3c,43c、同3d、43d等は、いずれも同じ構造である)。
【0067】
本実施形態の破風部材41は、第2換気口5Fを形成する下部構造において、第1部材42、第2部材43が第1実施形態の第1部材2、第2部材3と相違する。
【0068】
本実施形態の第1部材42の下端部は、いったん建物側に曲がって張り出し部42Aを作ったあと、外側に延びるように折れ曲がり、下端片42bを形成している。
【0069】
また、第2部材43の下端部43bは、第1部材42のダクト片42bに重なるように、建物側に曲がりって下端片43bが形成されている。この下端片43bの先端は垂直に立ち上がって縦片43b1となり、第2部材42の下端部43Eは、ダクト片42bをはめ込むようにして、位置決めされる。すなわち、下端片42bが位置決め部となり、第2部材43の下端部43Eが篏合凹部となり、第1部材42の下端片42bが篏合凸部となる。
【0070】
なお、第1部材42の下端片42bと第2部材43の下端片43bとは、重なった位置にスリットを開口しており、この部分に、換気空間4と外気とを連通する第2換気口5Fを破風20の下方に向けて開口している。
【0071】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態を、
図7及び
図8を用いて説明する。本実施形態の破風部材61は、第1部材62と第2部材63とから構成される。第1実施形態と同様の構造については、同じ符号を付して説明を省略する(なお、符号が異なっても、第1部材2,62について、水平部2a1,62a1、フック部2a2,62a2等、第2部材3,63について第1張出部3A,63A、第2張出部3B,63B、上端部の第1凹部3C,63C、中途部の第2凹部3D,63D等、両部材のネジ穴2c,62c、同2d,62d、同2e,62e、同3c,63c、同3d、63d等は、いずれも同じ構造である)。
【0072】
まず、
図7を用いて、本実施形態の破風部材61を、軒天26を有する片流れ屋根1に使用した構成を説明する。本実施形態の破風部材61は、第1部材62側に第2換気口5Bを形成する点において、第1実施形態と異なり、さらに後述するように、篏合凹部8Aと篏合凸部8Bを第2部材63と第1部材62の下端の一部に形成したことが異なる。
【0073】
第1部材62の下端は、略水平に伸びる横片となる第1片62b1とそれから上方に斜めに跳ね上がる第2片62b2と、さらに垂下する第3片62b3とから構成され、第2片62b2にスリット状の第2換気口5Bを形成している。また、第3片62b3は、篏合凸部8Aを構成する。
【0074】
また、第2部材63の下端63Eはフック状に折り曲げられ、第1部材62の篏合凸部8Aを嵌め込む篏合凹部8Bとなり、第1部材62と第2部材63の下端部での水平方向の移動を規制する構造となっている。このため、ネジ等を使って固定する必要がなく、施工作業を簡単に行うことができる。
【0075】
次に、
図8を用いて、本実施形態の破風部材61を、軒天を有さず、外壁27の上方に直接取り付ける片流れ屋根1の構成を説明する。この場合、まず破風部材61を上記したように敷設し、その後、外壁27のパネル上端を破風部材61に当接させて位置決めするように取り付ける。
【0076】
この場合、外壁27の上端は、破風部材61の第1部材62の下端、第1片62b1の底面に当接させて配置する。このため、窪んだ第2片62b2に形成される第2換気口5Bが塞がれることなく、換気路Fの機能を保つことができる。
【0077】
このように、本実施形態の破風部材61は、外壁27と換気通路5Bとの取り合いを調整して外壁27に連続して直接取り付けることができ、、納まり対応性が向上させることができる。そして、軒天を有す片流れ屋根、及び軒天を有さない片流れ屋根の両者に使用可能となることで、汎用性の高い破風部材とすることができる。
【0078】
[他のバリエーション]
第1実施形態及び第2実施形態の破風部材では、第1部材2,12と第2部材3,13 との間の距離を、第2部材3,13を屈曲させて形成した凹部3C,3D,13C,13Dのスペーサ凸部により保ったが、このスペーサ凸部は、第1部材2,12を屈曲させて形成してもよく、また、別体として、それを第1部材2,12と第2部材3,13 との間に配置してもよい。
【0079】
また、第1実施形態及び第2実施形態の第2部材2,12では、2つの張出部3A,3B,13A,13Bを設けてこの間に中途部の凹部3D,13Dを設けたが、第1張出部3A,13Aを設けず、換気空間4が形成される、第2張出部3B,13Bのみを設ける構造としてもよい。
【0080】
また、第1実施形態及び第2実施形態の破風部材では、外気と連通する第2換気口5B,5Cを第1部材2側に設けたが、第2部材3の下端形状によっては、第2部材3に開口してもよい。
【0081】
さらに、第1換気口、第2換気口は多様な形状を選択することができ、スリットについても、防水性、意匠性に配慮して、スリット5bに示したような目隠しスリットとしてもよく、換気性、加工性に配慮して、スリット5aのような打ち抜きスリットとしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,11,31,41,61…破風部材
2,12,32,42,62…第1部材
2a,12a,32a,42a,62a…ガイド部
2b,12b,32b,42b,62b…位置決め部
2c,12c,32c,42c,62c…ネジ穴
2d,12d,32d,42d,62d…ネジ穴
3,13,33,43,63…第2部材
3A,13A,33A,43A,63A…第1張出部
3B,13B,33B,43B,63B…第2張出部
3C,13C,33C,43C,63C…上端部の第1凹部(スペーサ凸部)
3D,13D,33D,43D,63D…中途部の第2凹部(スペーサ凸部)
3E,13E,33E,43E,63E…下端部
3c,13c,33c,43c,63c…ネジ穴
3d,13d,33d,43d,63d…ネジ穴
4…換気空間
5A…第1換気口
5B,5C,5D,5E,5D…第2換気口
6…水返し板
7…ネジ
8A…篏合凹部
8B…篏合凸部
20…破風
21…小屋裏空間
22…垂木
23…破風下地材
24…野縁
25…軒天下地材
26…軒天材(軒天)
27…外壁(建物外壁)
50…片流れ屋根
51…野地板
52…屋根葺き材
53…下地板
54…棟カバー
55…防水用の下葺きシート
F…換気通路
WL…水密線