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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052092
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】防水コネクタおよび防水部材
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
H01R13/52 301E
H01R13/52 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158559
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 隆一
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE14
5E087FF08
5E087FF13
5E087GG15
5E087GG26
5E087GG32
5E087HH01
5E087LL03
5E087LL04
5E087LL12
5E087MM05
5E087RR12
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】ファミリーシールとしての機能を満たし、かつ、組立時の取り扱いが容易な防水部材、および、その防水部材を備えた防水コネクタを提供する。
【解決手段】防水部材70が、コンタクトが1本挿し込まれる挿入孔711aを有し挿し込まれたコンタクトの周りを防水する、複数のコンタクトに対応して複数設けられた第1防水部711と、ハウジングの内壁面に接してその内壁面とシール部材71との間を防水する第2防水部712とを有するシール部材71、および、第1防水部711を取り巻いて第1防水部711の位置ずれを抑えるとともに第2防水部712を内壁面に押し当てる、外力から解放された状態において、例えば一体成型によりシール部材71と水密に接してシール部材71を支える支持部材72を備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のコンタクト、
相手コネクタと嵌合する前方に開いた第1開口を有する嵌合部と、前記複数本のコンタクトが挿し込まれる後方に開いた第2開口および一周に亘る内壁面を有する被防水部とを有するハウジング、および
前記被防水部に配置されて該被防水部をる防水部材を備え、
前記防水部材が、
シール部材であって、前記コンタクトが1本挿し込まれる挿入孔を有し挿し込まれたコンタクトの周りを防水する、前記複数のコンタクトに対応して複数設けられた第1防水部と、前記被防水部の内壁面に接して該内壁面と該シール部材との間を防水する第2防水部とを有するシール部材、および
前記第1防水部を取り巻いて該第1防水部の位置ずれを抑えるとともに前記第2防水部を前記内壁面に押し当てる、外力から解放された状態において前記シール部材と水密に接して該シール部材を支える支持部材を備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記支持部材が、前記複数の第1防水部の各々を収容する複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記シール部材と前記支持部材が一体成型されていることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記防水部材が、前記被防水部に配置されたときの後端面に、前後方向とは交わる向きに延びる排水溝を有することを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記防水部材が前記被防水部に配置された状態において前記支持部材が前記第2開口から突き出ていて、前記排水溝が該支持部材に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記防水部材を構成する前記シール部材および前記支持部材の、前記防水部材が前記被防水部に配置された状態における前記第2開口側の背面が互いに面一にあり、前記排水溝が、該シール部材および該支持部材の双方に跨って形成されていることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記防水部材が前記被防水部に配置された状態における前記支持部材の後端が前記第2開口よりも前方に位置し、前記排水溝が、前記シール部材に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。
【請求項8】
シール部材であって、コンタクトが1本挿し込まれる挿入孔を有し挿し込まれたコンタクトの周りを防水する、複数のコンタクトに対応して複数設けられた第1防水部と、ハウジングの内壁面に接して該内壁面と該シール部材との間を防水する第2防水部とを有するシール部材、および
前記第1防水部を取り巻いて該第1防水部の位置ずれを抑えるとともに前記第2防水部を前記内壁面に押し当てる、外力から解放された状態において前記シール部材と水密に接して該シール部材を支える支持部材を備えたことを特徴とする防水部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本のコンタクトを備えた防水コネクタと、その防水コネクタに使用される防水部材に関する。
【背景技術】
【0002】
複数本のコンタクトを備えた防水コネクタを構成するには、それら複数のコンタクトの各々に沿う第1の侵入経路を通って侵入しようとする水の侵入を防止するとともに、ハウジングの内壁面に沿う第2の侵入経路を通って侵入しようとする水の侵入についても防止する必要がある。
【0003】
これら第1の侵入経路および第2の侵入経路の双方についての水の侵入を1つのシール部材で阻止する、いわゆるファミリーシールと呼ばれるシール部材が知られている(特許文献1,2参照)。このファミリーシールは、コンタクトが1本挿し込まれる挿入孔を有し挿し込まれたコンタクトの周りを防水する、複数のコンタクトに対応して複数設けられた第1防水部と、ハウジングの内壁面に接して内壁面とシール部材との間を防水する第2防水部とを有するシール部材である。このファミリーシールは、ハウジングや硬質の部材で前後から挟んだ状態に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-008904号公報
【特許文献2】特開2016-143574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このファミリーシールは、ゴム材料等の弾性に富んだ材料で作製されていて、このため、コンタクトが挿し込まれる向きとは交わる向きへの変形や位置ずれが問題となる。すなわち、コンタクトが挿入される挿入孔が形成された第1防水部に変形や位置ずれがあるとコンタクトの挿入が困難となり、あるいは挿入は可能であってもそのコンタクトの周りの防水が不完全となるおそれがある。また、第2防水部についても位置ずれがあると内壁面に沿う第2の侵入経路の防水が不完全となるおそれがある。このため、組立時には、変形や位置ずれを生じさせないようにファミリーシールを各部分ごとに高精度に位置決めするなど、ファミリーシールを慎重に取り扱う必要がある。
【0006】
特許文献2では、この変形や位置ずれを防いで防水の信頼性を向上するために、ファミリーシールの後ろ側に配置されるリアホルダを、その前面から複数本の圧縮ピンが突き出た形状とするとともに、前後方向に可動式としている。そして、ファミリーシールの挿入孔にコンタクトを挿し込んだ後リアホルダを前方に移動させて、圧縮ピンをファミリーシールに形成された圧縮孔に挿し込む。これにより、ファミリーシールをコンタクトに強く押し当てて、防水の信頼性を向上させている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、ファミリーシールとしての機能を満たし、かつ、組立時の取り扱いが容易なシール部材を備えた防水部材、および、その防水部材を備えた防水コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の防水コネクタは、
複数本のコンタクト、
相手コネクタと嵌合する前方に開いた第1開口を有する嵌合部と、それら複数本のコンタクトが挿し込まれる後方に開いた第2開口および一周に亘る内壁面を有する被防水部とを有するハウジング、および
被防水部に配置されて被防水部を防水する防水部材を備え、
その防水部材が、
シール部材であって、コンタクトが1本挿し込まれる挿入孔を有し挿し込まれたコンタクトの周りを防水する、上記複数のコンタクトに対応して複数設けられた第1防水部と、上記被防水部の内壁面に接してその内壁面とシール部材との間を防水する第2防水部とを有するシール部材、および
第1防水部を取り巻いて第1防水部の位置ずれを抑えるとともに第2防水部を内壁面に押し当てる、外力から解放された状態においてシール部材と水密に接してシール部材を支える支持部材を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明のコネクタは、上記のシール部材と支持部材とを有する防水部材を備えている。そして、その支持部材は、外力から解放された状態においてシール部材と水密に接している。すなわち、本発明のコネクタは、上記の防水部材を採用したことにより、ゴム材料等からなる弾性に富んだシール部材を単独の部品として取り扱う場合と比べ、シール部材の変形や位置ずれが支持部材により抑えられ、取り扱いが容易となる。
【0010】
ここで、本発明のコネクタにおいて、上記支持部材が、複数の第1防水部の各々を収容する複数の貫通孔を有することが好ましい。
【0011】
第1防水部を、例えば2つずつ、あるいは4つずつなど、何個かの第1防水部をグループにして、各グループごとにその周囲を取り巻いて位置ずれを抑える構造の支持部材とすることも考えられるが、複数の第1防水部と同数の複数の貫通孔を設けて貫通孔の各々に第1防水部の各々を収容する構造の支持部材とすることで、第1防水部の位置ずれがさらに有効に抑えられる。
【0012】
また、本発明のコネクタにおいて、上記シール部材と上記支持部材が一体成型されていることが好ましい。
【0013】
シール部材と支持部材との間から水が浸入すると防水性能が損なわれるため、支持部材は、シール部材を支持するだけでなく外力から解放された状態においてもシール部材と水密に接している必要がある。これを実現するにあたり、シール部材と支持部材を別々に作製して、例えば接着等により、あるいはシール部材の伸びや圧縮を利用して、支持部材がシール部材と水密に接する構造を実現してもよいが、シール部材と支持部材を一体成型とすることにより、信頼性の高い水密構造が実現でき、かつ、別々に作製したシール部材と支持部材を組み立てるという後工程も不要となる。
【0014】
ここで、本発明のコネクタにおいて、上記防水部材が、上記被防水部に配置されたときの後端面に、前後方向とは交わる向きに延びる排水溝を有することが好ましい。
【0015】
挿入孔にコンタクトが挿し込まれるとそのコンタクトの周りは水密構造となり、ハウジングの内側への水の浸入が阻止されるが、挿入孔の入り口部分に水が溜まりやすくなることが考えられる。そこで、上記の排水溝を形成しておくとその排水溝を伝って水が流れやすくなり、挿入孔の入り口部分に水が溜まることが抑制される。
【0016】
ここで、被防水部に防水部材が配置された状態において支持部材が上記第2開口から突き出ている構造の場合には、上記排水溝が該支持部材に形成されていることが好ましい。
【0017】
あるいは、防水部材を構成するシール部材および支持部材の、防水部材が被防水部に配置された状態における上記第2開口側の背面が互いに面一にある構造の場合には、上記排水溝が、シール部材および支持部材の双方に跨って形成されていることが好ましい。
【0018】
さらには、防水部材が被防水部に配置された状態における支持部材の後端が第2開口よりも前方に位置する構造の場合には、上記排水溝が、シール部材に形成されていることが好ましい。
【0019】
このように、上記の排水溝は、防水部材の構造により、適切に形成される。
【0020】
また、上記目的を達成する本発明の防水部材は、
シール部材であって、コンタクトが1本挿し込まれる挿入孔を有し挿し込まれたコンタクトの周りを防水する、複数のコンタクトに対応して複数設けられた第1防水部と、ハウジングの内壁面に接して該内壁面と該シール部材との間を防水する第2防水部とを有するシール部材、および
第1防水部を取り巻いて第1防水部の位置ずれを抑えるとともに第2防水部を上記内壁面に押し当てる、外力から解放された状態においてシール部材と水密に接してシール部材を支える支持部材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記の本発明によれば、ファミリーシールとしての機能を満たし、かつ、組立時の取り扱いが容易な防水部材、および、その防水部材を備えた防水コネクタが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態の防水コネクタの斜視図である。
図2図1に示した防水コネクタの分解斜視図である。
図3】防水コネクタの6面図である。
図4図3(C)に示す矢印A-Aに沿う断面図である。
図5図3(C)に示す矢印B-Bに沿う断面図である。
図6図3(D)に示す矢印C-Cに沿う断面図である。
図7】後方斜めから見たときの防水部材の拡大斜視図である。
図8図4の断面図の中の防水部材を拡大して示した断面図である。
図9図5の断面図の中の防水部材を拡大して示した断面図である。
図10図6の断面図の中の防水部材を拡大して示した断面図である。
図11】第2実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の斜視図である。
図12】第2実施形態の防水コネクタにおける、第1実施形態の図4に対応する断面図である。
図13】第2実施形態の防水コネクタにおける、第1実施形態の図5に対応する断面図である。
図14】第2実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の、第1実施形態の図8に対応する断面図である。
図15】第2実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の、第1実施形態の図9に対応する断面図である。
図16】第3実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の斜視図である。
図17】第3実施形態の防水コネクタにおける、第1実施形態の図4に対応する断面図である。
図18】第3実施形態の防水コネクタにおける、第1実施形態の図5に対応する断面図である。
図19】第3実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の、第1実施形態の図8に対応する断面図である。
図20】第3実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の、第1実施形態の図9に対応する断面図である。
図21】第4実施形態の防水コネクタの斜視図である。
図22】第4実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の斜視図である。
図23】第4実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の、第1実施形態における図10に対応する断面図である。
図24】第5実施形態の防水コネクタの斜視図である。
図25】第5実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の斜視図である。
図26】第5実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の、第1実施形態における図10に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態の防水コネクタの斜視図である。
【0025】
この防水コネクタ10は、プラグハウジング20と、5本のメス型のコンタクト30を備えている。この図1では、それら5本のコンタクト30のうちの1本については、プラグハウジング20に挿し込む前の形状が示されている。各コンタクト30には、電線31が接続されている。電線31は、さらに長く延びているが、ここではその前端部のみが示されている。
【0026】
ここで、プラグハウジング20は、本発明にいうハウジングの一例に相当し、コンタクト30は、本発明にいうコンタクトの一例に相当する。
【0027】
また、図2は、図1に示した防水コネクタの分解斜視図である。
【0028】
この防水コネクタ10は、プラグハウジング20と5本のコンタクト30のほか、フロントキャビティ40、リテーナ50、シールリング60、および防水部材70を備えている。防水部材70は、本発明にいう防水部材の第1実施形態に相当する。
【0029】
プラグハウジング20の上面には、上方に開いた上面開口21が形成され、また、その上面開口21の下に潜り込むように延びるロックアーム22が形成されている。ロックアーム22には、この防水コネクタ10と嵌合する相手コネクタ90(図5参照)の係合部91が入り込むロック孔221が形成されている。ロック孔221に係合部91が入り込むことによって、この防水コネクタ10と相手コネクタ90が嵌合状態にロックされる。
【0030】
このプラグハウジング20は樹脂成型品であり、このプラグハウジング20の上面開口21は、成型時に、ロックアーム22のロック孔221を形成するために必要とされた開口である。
【0031】
また、このプラグハウジング20の前側、すなわち相手コネクタ90と嵌合する側には、相手コネクタ90と嵌合する嵌合部23(例えば図4参照)が設けられている。この嵌合部23には前方に開いた前面開口231が形成されていて、その前面開口231からは、シールリング60とフロントキャビティ40が装入され、さらに、嵌合時には相手コネクタ90が挿し込まれる。
【0032】
この前面開口231は、本発明にいう第1開口の一例に相当する。
【0033】
また、このプラグハウジング20には、その背面20aに開いた背面開口241と一周に亘る内壁面242を有する被防水部24が設けられている。この背面開口241からは、防水部材70が装入され、その防水部材70にはコンタクト30が挿し込まれる。
【0034】
この背面開口241は、本発明にいう第2開口の一例に相当する。
【0035】
さらに、このプラグハウジング20の底面にも、下方に開いた底面開口25(図4参照)が形成されている。この底面開口25からは、リテーナ50が差し込まれる。
【0036】
この防水コネクタ10の組立てにあたっては、プラグハウジング20に、先ずはシールリング60が装着され、次に、リテーナ50が仮係止位置まで差し込まれ、さらに、フロントキャビティ40が装着される。そしてさらに、防水部材70が装着され、コンタクト30が挿し込まれて、リテーナ50が完全係止位置まで差し込まれる。
【0037】
図3は、防水コネクタの6面図である。すなわち、図3(A)~(F)は、それぞれ、平面図(A)、左側面図(B)、正面図(C)、右側面図(D)、背面図(E)、および底面図(F)である。ただし、この図3以降の各図においてはコンタクトについての図示は省略している。
【0038】
この図3には、以下において図示する断面図の断面位置が示されている。
【0039】
図4は、図3(C)に示す矢印A-Aに沿う断面図である。
【0040】
また、図5は、図3(C)に示す矢印B-Bに沿う断面図である。
【0041】
さらに、図6は、図3(D)に示す矢印C-Cに沿う断面図である。
【0042】
これら、図4図6の断面図は、図3に示した各図よりも拡大されている。
【0043】
シールリング60は、プラグハウジング20の筒状部26の外壁261を取り巻くように嵌め込まれている。このシールリング60は、嵌合した相手コネクタ90の内壁面92に接し、相手コネクタ90の内部への水の浸入を防ぐ役割を担っている。
【0044】
リテーナ50は、図4図5では、完全係止位置に嵌め込まれている。リテーナ50の仮係止位置は、完全係止位置よりもリテーナ50が図4において少し下がった位置である。リテーナ50が仮係止位置にあるときは、リテーナ50のコンタクト通過部51が、プラグハウジング20の筒状部26の、前後にくり抜かれたコンタクト通過部262と連通していて、コンタクト30を挿し込むことができる。
【0045】
また、フロントキャビティ40には、コンタクトの先端部が挿し込まれる空洞41と、前方に開いてその空洞41に繋がったピン挿込口42が設けられている。こ0のピン挿込口42からは、相手コネクタ90に備えられているオス型のコンタクト(不図示)が挿し込まれて、この防水コネクタ10に備えられているコンタクト30(図2参照)に接触し、電気的に導通する。
【0046】
また、防水部材70は、プラグハウジング20の背面開口241から被防水部24に装入される。この防水部材70は、シール部材71と支持部材72とで構成されている。支持部材72には、貫通孔721が形成されている。また、シール部材71は、貫通孔721の内部に配置された、挿入孔711aを有する第1防水部711と、支持部材72の外周を取り巻くように配置された第2防水部712を有する。
【0047】
この防水部材70についての詳細説明は、後に譲る。
【0048】
リテーナ50が仮係止位置にある状態において、コンタクト30(図2参照)が防水部材70の挿入孔711aから、そのコンタクト20の先端がフロントキャビティ40の空洞41内の正規の位置まで挿し込まれる。すると、そのコンタクト30は、プラグハウジング20内に設けられているランス27に仮係止される。その後、リテーナ50を、図4に示す本係止位置まで差し込むと、コンタクト30が本係止されて抜け止めされる。
【0049】
図7は、後方斜めから見たときの防水部材の拡大斜視図である。
【0050】
この防水部材70は、本発明の防水部材の第1実施形態である。
【0051】
シール部材71は、弾性に富む柔らかいゴム材料で作られている。
【0052】
一方、支持部材72は、樹脂材料で作られていてシール部材71を支持し、シール部材71の形が崩れるのを抑える役割を担っている。
【0053】
この支持部材72には、前後方向に貫通した5つの貫通孔721が形成されている。
【0054】
この支持部材72は、シール部材71よりも後方に突き出ていて、この支持部材72の後方に突き出た部分には、貫通孔721につながり、前後方向とは交わる向き(ここに示す例では上下方向および左右方向)に支持部材70の端まで延びる排水溝73が形成されている。
【0055】
図8図9、および図10は、それぞれ、図4図5、および図6の断面図の中の防水部材を拡大して示した断面図である。
【0056】
シール部材71は、ファミリーシールタイプのシール部材であって、支持部材72の貫通孔721の内側に配置されている第1防水部711と、支持部材72の外周を取り巻く第2防止部712とを有する。支持部材72には、5つの貫通孔721が形成されていて、第1防水部711は、それら5つの貫通孔721の内側に1つずつ、合計5つ設けられている。
【0057】
この防水部材70は、シール部材71と支持部材72との一体成型品であり、シール部材71と支持部材72は互いに水密に密着している。すなわち、第1防水部711は支持部材72の貫通孔721の内壁面721aに密着して、その内壁面721aに沿って水が浸入するのを防止している。また、第2防水部712は支持部材72の外壁面72bに密着して、その外壁面72bに沿って水が浸入するのを防止している。
【0058】
また、第1防水部711は、コンタクト30が挿し込まれる挿入孔711aを有し、第1防水部711の、挿入孔711aを形成している内壁面711bは、前後方向に凹凸を繰り返す防水形状となっている。この挿入孔711aにコンタクト30が挿し込まれると、内壁面711bが押し潰されながらコンタクト30に接し、コンタクト30に沿う水の侵入路が遮断される。
【0059】
ここで、挿入孔711にコンタクト30が挿し込まれた状態にあると、コンタクト30に沿う水の侵入路が遮断されるが、その遮断された直ぐ後部に水が溜まりがちとなる。支持部材72のシール部材71よりも後ろに突き出た部分に形成された排水溝73は、遮断された直ぐ後部に溜まりがちな水を流出させて、そこに水たまりができるのを抑える役割を成している。
【0060】
また、この第1実施形態の防水部材70の場合、支持部材72がシール部材71よりも後方にまで突き出ている。このため、電線31(図1図2参照)に曲げの力が加わっても、その力が第1防水部711には伝わりにくく、したがって、第1防水部711の防水性能の高い信頼性が保たれる。
【0061】
さらに、第2防水部712も、その外壁面712bが、前後方向に凹凸を繰り返す防水形状となっている。この防水部材70は、プラグハウジング20の背面開口241から被防水部24に装入されると、シール部材71の第2防水部712の外壁面712bが押し潰されながら被防水部24の内壁面242に一周に亘って接し、この内壁面242に沿う水の浸入路が遮断される。
【0062】
なお、図4図6の各図においては、第2防水部712がプラグハウジング20の被防水部24の内壁面242に食い込んでいるように示されている。これは、外力が作用していない状態にある第2防水部712の形状をそのまま示しているからであり、実際には、被防水部24の内壁面242から反力を受けて凹凸形状の凸部が押し潰されて、水密状態となる。
【0063】
このように、この防水コネクタ10は、ファミリーシールタイプのシール部材71と支持部材72とが一体成型されたものであり、支持部材72によりシール部材71の不都合な変形が抑えられる。したがって、支持部材と一体にはなっていないファミリーシールタイプのシール部材と比べ、組み立て時の取り扱いが容易である。
【0064】
なお、ここでは、防水部材70を構成するシール部材71と支持部材72は、一体成型されている旨、説明した。一体成型は好ましい製造方法ではあるが、シール部材71と支持部材72は、必ずしも一体成型されたものである必要はない。例えば、シール部材と支持部材を別々に作製して、例えば接着等により、あるいはシール部材の伸びや圧縮を利用して、シール部材71と支持部材72が水密に接する構造を実現してもよい。
【0065】
次に、第2実施形態の防水コネクタについて説明する。以下の第2実施形態の説明およびそれに続く第3実施形態の説明にあたっては、第1実施形態における要素に対応する要素には、第1実施形態で用いた用語および符号と同じ用語および符号を用い、第1実施形態との相違点について説明する。
【0066】
図11は、第2実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の斜視図である。
【0067】
この防水部材70は、本発明の防水部材の第2実施形態である。
【0068】
また、図12および図13は、第2実施形態の防水コネクタにおける、第1実施形態の図4および図5にそれぞれ対応する断面図である。
【0069】
さらに、図14および図15は、第2実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の、第1実施形態の図8および図9にそれぞれ対応する断面図である。
【0070】
なお、第1実施形態における図6および図10の断面図は、この第2実施形態においても同一の図として現れるため、ここでの重複した図示は省略している。
【0071】
この第2実施形態における防水部材70を構成するシール部材71と支持部材72は、それらの背面71a,72aが互いに面一となっている。また、この第2実施形態の場合、この面一の背面71a,72aは、図12および図13に示すように、プラグハウジング20の背面72aとも面一となっている。そして、排水溝73は、シール部材71の背面71aと支持部材72の背面とに跨って延びている。
【0072】
前述の第1実施形態の防水コネクタ70の場合、防水部材70の支持部材72がプラグハウジング20の背面20aから突き出ていて、その分、大型のコネクタとなっている。これに対し、この第2実施形態の防水コネクタ10の場合、防水部材70を構成しているシール部材71と支持部材72の背面71a,72aが互いに面一、かつプラグハウジング20の背面20aとも面一となっている。これにより、第1実施形態の防水コネクタ10よりも小型である。また、第1実施形態の防水コネクタ10のように防水部材70が突き出ていないため、防水部材70が不用意に何かにぶつかって破損あるいは水の浸入を許すという事故の発生が抑えられる。
【0073】
図16は、第3実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の斜視図である。
【0074】
この防水部材70は、本発明の防水部材の第3実施形態である。
【0075】
また、図17および図18は、第3実施形態の防水コネクタにおける、第1実施形態の図4および図5にそれぞれ対応する断面図である。
【0076】
さらに、図19および図20は、第3実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の、第1実施形態の図8および図9にそれぞれ対応する断面図である。
【0077】
なお、第1実施形態における図6および図10の断面図は、この第3実施形態においても同一の図として現れるため、重複した図示は省略している。
【0078】
この第3実施形態における防水部材70を構成するシール部材71の背面71aは、図17および図18に示すように、プラグハウジング20の背面20aと面一となっている。これに対し、この支持部材72の背面72aは、プラグハウジング20の背面開口241よりも前方、プラグハウジング20の内側にある。すなわち、支持部材72は、プラグハウジング20内に埋め込まれた埋込み形状となっている。このため、排水溝73は、シール部材71の背面71aに形成されている。
【0079】
このように、支持部材72は、その防水コネクタ10の用途あるいは防水の信頼性等によって、第1実施形態のようにプラグハウジング20の背面20aから突き出ていてもよく、第2実施形態のように背面20aと面一であってもよく、第3実施形態のような埋込み形状であってもよい。
【0080】
図21は、第4実施形態の防水コネクタの斜視図である。
【0081】
また、図22は、第4実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の斜視図である。
【0082】
さらに、図23は、第4実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の、第1実施形態における図10に対応する断面図である。
【0083】
これまで説明してきた第1-第3実施形態における防水部材70は、挿入孔711aを有する第1防水部711が横に一列に5つ並んだタイプの防水部材であるが、この第4実施形態の防水コネクタ10は、横に一列にさらに多数の第1防水部711が配列された防水部材70を備えている。
【0084】
この第4実施形態に示すように、第1防水部711が横に並ぶ数は5つには限らず、もっと多数、例えば20個等であってもよい。あるいは、5つよりも少ない、例えば2つあるいは3つ等であってもよい。
【0085】
図24は、第5実施形態の防水コネクタの斜視図である。
【0086】
また、図25は、第5実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の斜視図である。
【0087】
さらに、図26は、第5実施形態の防水コネクタを構成する防水部材の、第1実施形態における図10に対応する断面図である。
【0088】
これまで説明してきた第1-第4実施形態における防水部材70は、挿入孔711aを有する第1防水部711が横に一列に並んでいるタイプの防水部材であるが、この第5実施形態の防水コネクタ10は、縦にも多数の第1防水部711が配列された防水部材70を備えている。
【0089】
この第5実施形態に示すように、第1防水部711は横一列に配列されるとは限らず、縦にも多数段、例えば10段等に配列されていてもよい。あるいは、例えば2段あるいは3段等、縦に少数の段数だけ配列されていてもよい。
【0090】
このように、本発明にいう防水部材は、第1防水部711の数に上限はなく、2つ以上であれば例えば数百等、多数の第1防水部711が並んでいてもよい。
【0091】
さらに、この第5実施形態における防水部材70には、多数の第1防水部711が単純に縦横に配列されているが、本発明にいう防水部材は、第1防水部711が単純に縦横に配列されている必要はなく、例えば千鳥状等、他の配列形態で配列されていてもよい。
【0092】
なお、ここでは、プラグハウジング20およびメス型のコンタクトを例に挙げて説明したが、本発明にいうハウジングはリセプタクルタイプのハウジングであってもよく、あるいは、本発明にいうコンタクトはオス型のコンタクトであってもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 防水コネクタ
20 プラグハウジング
20a プラグハウジングの背面
21 上面開口
22 ロックアーム
221 ロック孔
23 嵌合部
231 前面開口
24 被防水部
241 背面開口
242 内壁面
25 底面開口
26 筒状部
261 筒状部の外壁
262 コンタクト通過部
27 ランス
30 コンタクト
31 電線
40 フロントキャビティ
41 フロントキャビティの空洞
42 挿入孔
50 リテーナ
51 コンタクト通過部
60 シールリング
70 防水部材
71 シール部材
71a シール部材の背面
711 第1防水部
711a 挿入孔
711b 挿入孔の内壁面
712 第2防水部
712b 第2防水部の外壁面
72 支持部材
72a 支持部材の背面
72b 支持部材の外壁面
73 排水溝
図1
図2
図3
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図5
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