(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052100
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ガス吸入用マスク
(51)【国際特許分類】
A61M 16/06 20060101AFI20240404BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A61M16/06 A
A41D13/11 Z
A41D13/11 E
A41D13/11 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158571
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 文彦
(72)【発明者】
【氏名】株本 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕也
(57)【要約】
【課題】ガス吸入用マスクのマスク本体は、射出成形で形成されることなどからある程度の厚みを持って形成され、100g程度のプラスチックにより形成されている。一方、酸素吸入用マスク等の医療用のガス吸入用マスクは、被検者に接触した状態で用いられるため、使い捨てとなっている。そのため、多量のプラスチック廃棄物を生じている。このような状況は環境負荷が大きく、SDGs(持続可能な開発目標)における環境問題の観点から改善が求められる。
【解決手段】紙、不織布又は布により形成されたマスク本体と、チューブ取付部材と、を備え、前記チューブ取付部材は、前記マスク本体に設けられた取付開口に取り付けられ、前記マスク本体を被検者に取り付けた際に、前記チューブ取付部材のチューブ接続部に接続したチューブの軸線が、被検者の顔に直に向かないガス吸入用マスクを用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、不織布又は布により形成されたマスク本体と、
チューブ取付部材と、を備え、
前記チューブ取付部材は、前記マスク本体に設けられた取付開口に取り付けられ、
前記マスク本体を被検者に取り付けた際に、前記チューブ取付部材のチューブ接続部に接続したチューブの軸線が、被検者の顔に直に向かないことを特徴とする
ガス吸入用マスク。
【請求項2】
前記チューブ取付部材は、前記マスク本体の前記取付開口に360°又はその一部の範囲で回転可能に取り付けられていることを特徴とする
請求項1に記載されたガス吸入用マスク。
【請求項3】
前記チューブ取付部材は、正面側係止部と背面側係止部を有し、
前記マスク本体における前記取付開口の周囲が、前記正面側係止部と前記背面側係止部に挟まれて取り付けられていることを特徴とする
請求項1に記載されたガス吸入用マスク。
【請求項4】
前記チューブ取付部材は、前記マスク本体に接着により取り付けられていることを特徴とする
請求項1に記載されたガス吸入用マスク。
【請求項5】
前記取付開口の中心は、前記マスク本体を被検者に取り付けた際に、正面から見て被検者の鼻の下と口の間の位置していることを特徴とする
請求項1に記載されたガス吸入用マスク。
【請求項6】
前記取付開口の一部または全部はカバー部により覆われ、
前記カバー部は前記被検者の吐出物又は吐出液をフィルタする、
請求項1に記載されたガス吸入用マスク。
【請求項7】
前記マスク本体は、前記取付開口以外の部分に開口部を設け、
前記開口部から前記マスク本体の内側における被検者の顔を視認可能であることを特徴とする
請求項1に記載されたガス吸入用マスク。
【請求項8】
前記チューブ取付部材は、吸気流路と呼気流路を有し、
前記吸気流路は、チューブ接続部の孔に繋がり、
前記呼気流路は、呼気をマスク外部に導くことを特徴とする
請求項1乃至7のいずれか一項に記載されたガス吸入用マスク。
【請求項9】
前記呼気流路は、両側に測定のために光が透過する窓部を有する
請求項8に記載されたガス吸入用マスク。
【請求項10】
前記紙、不織布又は布に用いる繊維の原材料として、ポリエステル、ポリプロピレン、綿又は木質パルプが含まれている、ことを特徴とする
請求項1に記載されたガス吸入用マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸入用マスク等の医療用のガス吸入用マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者等の被検者に酸素等のガスを供給する場合、ガス吸入用マスクを被検者の顔部に装着してチューブを接続し、チューブからガスを供給して被検者に吸入させる。このようなガス吸入用マスクは、全体がプラスチックで形成されている。特許文献1には、患者に酸素を供給するためのマスク装置が記載されている。特許文献1のマスク装置において、患者の鼻部及び口部を覆うようにして装着されるマスク本体は、ほぼ透明な軟質塩化ビニルで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸素吸入用マスク等の医療用のガス吸入用マスクにおいて、被検者の鼻と口を覆うように装着するマスク本体は、射出成形で形成されることなどからある程度の厚みを持っている。マスク本体を形成する塩化ビニル等のプラスチックは、100g程度の重量となる。一方、酸素吸入用マスク等の医療用のガス吸入用マスクは、被検者に接触した状態で用いられるため、使い捨てとなっている。そのため、多量のプラスチック廃棄物を生じている。このような状況は環境負荷が大きく、SDGs(持続可能な開発目標)における環境問題の観点から改善が求められる。医療用以外のガス吸入用マスクについても、同様に多量のプラスチックが使い捨てで使用される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一実施例におけるガス吸入用マスクは、紙、不織布又は布により形成されたマスク本体と、チューブ取付部材と、を備え、前記チューブ取付部材は、前記マスク本体に設けられた取付開口に取り付けられ、前記マスク本体を被検者に取り付けた際に、前記チューブ取付部材のチューブ接続部に接続したチューブの軸線が、被検者の顔に直に向かないものとしている。
【発明の効果】
【0006】
マスク本体を、紙、不織布または布で形成することにより、プラスチック廃棄物を減少させることができる。紙、不織布または布により形成されていることにより、プラスチックよりもマスク本体の強度が低下する。しかし、チューブ取付部材のチューブ接続部に接続したチューブの軸線が、被検者の顔に直に向かないようにしているため、マスク本体を変形させる力がチューブからマスク本体に伝わりにくい。よって、環境に優しく、強度が十分なガス吸入用マスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1におけるガス吸入用マスクの正面図。
【
図2】実施例1におけるガス吸入用マスクの側面図。
【
図4】実施例1におけるチューブ取付部材の正面図。
【
図5】実施例1におけるチューブ取付部材の背面図。
【
図6】実施例1におけるチューブ取付部材の側面図。
【
図7】実施例1における被検者に取り付けたガス吸入用マスクの側面図。
【
図8】実施例2におけるガス吸入用マスクの正面図。
【
図9】実施例2におけるガス吸入用マスクの側面図。
【
図10】実施例2におけるチューブ取付部材の正面図。
【
図11】実施例2におけるチューブ取付部材の側面図。
【
図12】実施例2におけるチューブ取付部材の下面図。
【
図13】実施例2におけるチューブ取付部材の背面図。
【
図14】実施例2におけるガスセンサを取り付けたチューブ取付部材の下面図。
【
図15】実施例3における被検者に取り付けたガス吸入用マスクの側面図。
【
図18】実施例5における被検者に取り付けたガス吸入用マスクの側面図。
【
図19】実施例6におけるガス吸入用マスクの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願において、図面上で被検者に取り付けた際の額の方向を上と記載し、顎の方向を下と記載し、頬の方向を側方と記載する。回転するチューブ取付部材であっても、図面の回転位置での上下方向で記載する。また、ガス吸入用マスクを被検者に取り付けた際における被検者が向く方向を正面、その反対方向を背面と記載する。
【実施例0009】
図1に、実施例1におけるガス吸入用マスク1の正面図を示す。実施例1では、ガス吸入用マスク1は、半球面状のマスク本体11の中心にチューブ取付部材12を取り付けて形成される。マスク本体11には、2本の弾性バンド13が固定されている。2本の弾性バンド13を被検者Sの後頭部にまわすことにより、被検者Sの顔にガス吸入用マスク1を固定することができる。
【0010】
図2に、実施例1のガス吸入用マスク1の側面図を示す。
図2では、マスク本体11を側断面で示し、マスク本体11に取り付けられたチューブ取付部材12を側面で示す。マスク本体11の形状は、半球面状である。チューブ取付部材12は、内部に吸気流路122を有している。吸気流路122は、チューブ接続部122aからチューブ取付部材12を通過して、マスク本体11の取付開口111からマスク本体11の中へ通じている。
【0011】
実施例1のマスク本体11は、天然繊維を原料とした厚紙により形成され、チューブ取付部材12は、硬質プラスチックである硬質塩化ビニルで形成されている。従って、ガス吸入用マスク1を廃棄する際には、マスク本体11とチューブ取付部材12を分離して、分別することもできる。
【0012】
図3に、
図1、2に記載したガス吸入用マスク1におけるマスク本体11の正面図を示す。マスク本体11には、中央に円形の取付開口111が設けられている。また、マスク本体11の周端部近傍には、外面の4箇所に2本の弾性バンド13が固定されている。実施例1のマスク本体11は、天然繊維を原料とした厚紙で形成されており、マスク本体11に必要な強度と、ある程度の柔軟性を有している。
【0013】
図4~6に、
図1、2に記載したチューブ取付部材12を拡大して記載する。
図4に、ガス吸入用マスク1におけるチューブ取付部材12の正面図を、
図5に背面図を、
図6に側面図を示す。チューブ取付部材12は、背面側(
図6における右側)の正面側係止部121aから、4つの係止部接続部121bが背面方向に突出している。そして、係止部接続部121bの先端に、チューブ取付部材12の上下方向および側方に向けて、背面側係止部121cが延在している。
【0014】
図5に示すように、チューブ取付部材12の背面側では、吸気流路122の孔がカバー部123により覆われている。カバー部123は網目材で形成されており、チューブ取付部材12の背面において、吸気流路122の孔の周囲に接着して固定されている。吸気流路122を通過した酸素はカバー部123を通過してマスク本体11の背面側に供給される。一方で、カバー部123があることにより、被検者Sの口からの吐出物又は吐出液は吸気流路122に入らない。吸気流路122からの酸素供給を停止している時であっても、吐出物等は吸気流路122には入らない。そのため、酸素を供給するためのチューブに吐出物又は吐出液が入ることを防止できる。吐出物等により汚染されていないチューブは使い捨てにする必要がなく、再利用をすればプラスチックの廃棄量をさらに削減することができる。
【0015】
図6に示すように、背面側係止部121cの正面側は、正面側係止部121aの面となっている。
図2に示すように、背面側係止部121cが取付開口111の背面側に位置するように、チューブ取付部材12がマスク本体11の取付開口111に取り付けられる。そして、
図6に示す係止部接続部121bが、
図3に示す円形である取付開口111の内側に位置し、マスク本体11における取付開口111の周囲を正面側係止部121aと背面側係止部121cで挟んでいる。これにより、チューブ取付部材12はマスク本体11に回転可能に取り付けられる。
図1において、チューブ取付部材12のチューブ接続部122aは右方へ突出し、チューブ軸線TAは右方となっているが、左方や上下方向等を含めてチューブ軸線TAの方向を360°回転することができる。
【0016】
マスク本体11にチューブ取付部材12を取り付ける際には、
図2における左側であるマスク本体11の正面側から取付開口111に向けて、チューブ取付部材12を近づける。そして、チューブ取付部材12に4つ形成されている背面側係止部121cを、マスク本体11の取付開口111に順次差し入れる。このようにして取り付けが終了すると、取付開口111の周囲が4箇所で正面側係止部121aと背面側係止部121cで挟まれているため、チューブ取付部材12はマスク本体11から容易には外れない。また、円形である取付開口111の内側の4箇所に係止部接続部121bが位置しており、係止部接続部121bは、取付開口111の内側に沿って移動可能であり、チューブ取付部材12は360°回転可能である。このようにして、
図1に示すチューブ接続部122aおよびチューブ軸線TAの向く方向は、360°回転可能となっている。
【0017】
図7に、被検者Sの顔に実施例1のガス吸入用マスク1を取り付けた状態の側面図を示す。マスク本体11は断面図で示す。
図7では、仰向けに寝た被検者Sの顔にガス吸入用マスク1が取り付けられている。弾性バンド13の記載は省略している。
図7に示すように、取付開口111の中心は、マスク本体11を被検者Sに取り付けた際に、矢印で示す正面から見て被検者Sの鼻Nの下と口Mの間の位置している。
【0018】
実施例1では、取付開口111の中心はマスク本体11の中心と一致している。また、図示していないが、チューブ取付部材12におけるマスク本体11側に設けられた吸気流路122の出口は円形であり、その中心は取付開口111の中心と一致している。ガス吸入用マスク1を被検者Sの顔に取り付けた際の額F-顎C方向を縦方向とし、顔の左右方向を横方向とした場合、マスク本体11の中心と取付開口111の中心のずれは、縦方向、横方向ともに、マスク本体11の幅の10%以内であることが好ましい。
【0019】
また、
図7に示すように、マスク本体11は、被検者Sの顔との間に、ある程度の体積の空間が生じる形状となっている。この体積が小さいと、被検者Sの呼気のタイミングでマスク本体11内に供給された酸素は、被検者Sに吸われることなくマスク本体11の外へ漏出する。しかし、ある程度の体積があると、呼気のタイミングでマスク本体11内に供給された酸素の一部は空間に滞留して、吸気のタイミングで被検者Sに吸われる。そのため、被検者Sへの酸素の良好な供給効率が得られる。被検者Sの顔にガス吸入用マスク1を取り付けた際に、空間は30cc以上200cc以下であることが好ましく、80cc以上、150cc以下の空間があることが更に好ましい。
【0020】
図1、6から理解されるように、チューブ接続部122aは、取り付けられるチューブ(図示せず)の軸線である
図1に点線で示したチューブ軸線TAが、顔に対して側方方向である。そして、チューブ軸線TAは、
図2に点線で示した取付開口111の垂直方向Vに対して90°の方向となっている。これにより、チューブ接続部122aは、取付開口111の垂直方向Vからずらした方向に向けてチューブが接続するように構成されている。そして、実施例1のガス吸入用マスク1は、マスク本体11を被検者Sの顔に取り付けた際に、チューブ軸線TAが被検者Sの顔に直に向かないようになっている。そのため、マスク本体11を変形させる力がチューブからマスク本体11に伝わりにくい。また、ガス吸入用マスク1を被検者Sに取り付けた際に、チューブの取り回しが容易である。加えて、実施例1のガス吸入用マスク1は、
図1に示すチューブ接続部122aおよびチューブ軸線TAの向く方向が360°回転可能となっている。そのため、さらにチューブの取り回しが容易であるとともに、マスク本体11を変形させる力がチューブからマスク本体11に伝わりにくい。
【0021】
チューブ取付部材12の中では、チューブ取付部材12の背面からチューブ接続部122aの中まで、吸気流路122の孔が形成されている。吸気流路122は、正面側係止部121aの面に垂直に設けられた孔が、チューブ取付部材12の中で90°曲がって、チューブ接続部122aの中を通過している。したがって、カバー部123がなくても、吸気流路122の曲がりにより、酸素を供給するためのチューブに吐出物又は吐出液が入ることは、ある程度抑止できる。しかし、実施例1では、カバー部123と吸気流路122の曲がりにより、吐出物等がチューブに入ることを確実に防止することができる。
チューブ取付部材22の中には、吸気流路222と呼気流路223が設けられている。チューブ取付部材22の中では、チューブ取付部材22の背面からチューブ接続部222aの中まで、吸気流路222の孔が形成されている。吸気流路222は、正面側係止部221aの面に垂直に設けられた孔が、チューブ取付部材22の中で90°側方に曲がって、チューブ接続部222aの中を通過している。吸気流路222には実施例1のようなカバー部はないが、吸気流路222の曲がりにより、酸素を供給するためのチューブに吐出物又は吐出液が入ることが抑止できる。しかし、実施例1のようにカバー部を設ければ、吐出物等がチューブに入ることを確実に防止することができる。呼気流路223は、正面側係止部221aの面に垂直に設けられた四角い孔が、チューブ取付部材22の中で90°下方に曲がってセンサ取付部223bに設けられた窓部223cの間を通過し、下方を向いた呼気排出口223aに接続している。呼気流路223にはカバー部はない。