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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052106
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】浮床構造及び浮床施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/00 20060101AFI20240404BHJP
   E04F 15/20 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
E04F15/00 101F
E04F15/20
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158585
(22)【出願日】2022-09-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594192095
【氏名又は名称】株式会社昭和サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 貴士
(72)【発明者】
【氏名】松井 健
(72)【発明者】
【氏名】竹林 健一
(72)【発明者】
【氏名】内田 岳男
(72)【発明者】
【氏名】川俣 貴史
(72)【発明者】
【氏名】岸 保之
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 権也
(72)【発明者】
【氏名】三宅 清市
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA19
2E220AB07
2E220AB10
2E220AC03
2E220CA23
2E220CA63
2E220GA07Y
2E220GB39Y
(57)【要約】
【課題】浮床の高低を自在に調整することができ、施工が容易で、優れた防振・遮音性能を有する浮床構造を提供すること。
【解決手段】床基盤上に間隔を空けて配置され、それぞれ台座部の上部に配置される支持部が上方に移動自在に構成された複数の防振装置と、床基盤との間に第1隙間を空けて複数の支持部に載置される床スラブと、床基盤上で床スラブを囲繞するように配置される絶縁部材と、を有し、絶縁部材の内側面は、上方から下方にテーパ状に下り傾斜する絶縁部材傾斜面を有し、床スラブの外周面は、絶縁部材傾斜面に対応して下方から上方にテーパ状に上り傾斜し、且つ、第2隙間を空けて絶縁部材傾斜面に対向配置されたスラブ傾斜面を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床基盤上に間隔を空けて配置され、それぞれ台座部の上部に配置される支持部が上方に移動自在に構成された複数の防振装置と、
前記床基盤との間に第1隙間を空けて複数の前記支持部に載置される床スラブと、
前記床基盤上で前記床スラブを囲繞するように配置される絶縁部材と、
を有し、
前記絶縁部材の内側面は、上方から下方にテーパ状に下り傾斜する絶縁部材傾斜面を有し、
前記床スラブの外周面は、前記絶縁部材傾斜面に対応して下方から上方にテーパ状に上り傾斜し、且つ、第2隙間を空けて前記絶縁部材傾斜面に対向配置されたスラブ傾斜面を有する、
浮床構造。
【請求項2】
前記第2隙間を形成する前記内側面と前記外周面の離間距離は、前記支持部の上下動に伴って増減する、
請求項1記載の浮床構造。
【請求項3】
前記第1隙間と前記第2隙間は連通している、
請求項1記載の浮床構造。
【請求項4】
前記絶縁部材は、前記絶縁部材傾斜面を有し、且つ、前記床基盤上に配置されるテーパ部と、
前記絶縁部材傾斜面に上方で連続して配置され前記内側面を構成する垂直面を有し、前記テーパ部の上部に立設される垂直部と、
を有し、
前記床スラブの外周面は、前記絶縁部材傾斜面よりも前記垂直面に近接または当接して配置されている、
請求項1記載の浮床構造。
【請求項5】
前記垂直部は、前記テーパ部に対して着脱自在である、
請求項4記載の浮床構造。
【請求項6】
建築物躯体の床基盤上で床スラブを浮上させて浮床を施工する浮床施工方法において、
前記床基盤上で、前記床スラブを形成する領域の周囲に、内側面が上方から下方にテーパ状に下り傾斜する絶縁部材傾斜面を有する絶縁部材を配置する工程と、
台座部の上部の支持部が上方に移動自在に構成された複数の防振装置を、前記床基盤上で前記領域内に間隔を空けて配置する工程と、
底面及び外周面が剥離シートで覆われ且つ前記支持部を一体化させた床スラブを、前記床基盤及び前記防振装置上で、前記絶縁部材に囲繞される前記領域に形成する工程と、
前記支持部を上方に移動して前記床スラブを前記床基盤及び前記絶縁部材から浮上させることにより、前記絶縁部材の内側面と前記床スラブの外周面とを上下方向で離間させる工程と、
を有する、
浮床施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮床構造及び浮床施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンサートホール・音楽スタジオ・フィットネススタジオ等の音楽関連施設や、屋内のTVスタジオ、体育館等の様々な施設では、それらの施設の床を介して伝わる振動・騒音(固体伝搬音等)を低減するために浮床構造が用いられている。
【0003】
浮床構造は、建築物躯体(床基盤を含む)から施設の床(以下、浮床とも称する)を浮かして支持する構造である。
【0004】
浮床構造の一例として、本出願人は、施設に応じて浮床の防振性能・遮音性能(以下、両者をまとめて防振・遮音性能という)を調整可能な浮床構造として、特許文献1に示すように、浮床の高さの高低を調整できる点状支持の浮床構造を開発した。
【0005】
この浮床構造は、まず、床基盤上に浮床の施工範囲を囲む型枠を形成し、その型枠の内側全体を覆うようにシートを敷設し、型枠内でシートを敷設した床基盤上に、上部の高さレベルを変更可能な複数の防振装置を所要間隔で点状に設置する。そして、型枠の内側で配筋すると共にコンクリートを打設して、養生して固化させて、シートを介して周囲から縁切りされた床スラブを形成する。この床スラブを床基盤から浮上させて、浮床が形成される。
【0006】
型枠は、床基盤上面から離間する床スラブの外周部分と、それを囲む躯体部分との間の絶縁部材として機能しており、特許文献1の浮床構造は優れた防振・遮音性能を有し、さらに、浮床である床スラブの高さを任意で調整可能としている。
また、上述した防振装置において、床基盤上への防振装置の設置後に、床スラブを形成するためにコンクリートを打設する前に、防振装置内にコンクリート流入しないように防振装置にカバーを設けた構造が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-328538号公報
【特許文献2】特許第6194375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年では、浮床である床スラブの高さを任意で調整可能であるとともに、更に、防振・遮音性能が向上し、施工の容易な床構造が望まれている。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、浮床の高低を自在に調整することができ、施工が容易で、優れた防振・遮音性能を有する浮床構造及び浮床施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の浮床構造は、
床基盤上に間隔を空けて配置され、それぞれ台座部の上部に配置される支持部が上方に移動自在に構成された複数の防振装置と、
前記床基盤との間に第1隙間を空けて複数の前記支持部に載置される床スラブと、
前記床基盤上で前記床スラブを囲繞するように配置される絶縁部材と、
を有し、
前記絶縁部材の内側面は、上方から下方にテーパ状に下り傾斜する絶縁部材傾斜面を有し、
前記床スラブの外周面は、前記絶縁部材傾斜面に対応して下方から上方にテーパ状に上り傾斜し、且つ、第2隙間を空けて前記絶縁部材傾斜面に対向配置されたスラブ傾斜面を有する構成を採る。
【0011】
本発明の浮床施工方法は、
建築物躯体の床基盤上で床スラブを浮上させて浮床を施工する浮床施工方法において、
前記床基盤上で、前記床スラブを形成する領域の周囲に、内側面が内側に上方から下方にテーパ状に下り傾斜する絶縁部材傾斜面を有する絶縁部材を配置する工程と、
台座部の上部の支持部が上方に移動自在に構成された複数の防振装置を、前記床基盤上で前記領域内に間隔を空けて配置する工程と、
底面及び外周面が剥離シートで覆われ且つ前記支持部を一体化させた床スラブを、前記床基盤及び前記防振装置上で、前記絶縁部材に囲繞される前記領域に形成する工程と、
前記支持部を上方に移動して前記床スラブを前記床基盤及び前記絶縁部材から浮上させることにより、前記絶縁部材の内側面と前記床スラブの外周面とを上下方向で離間させる工程と、を有するようにした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高低を自在に調整することができ、施工が容易で、優れた防振・遮音性能を有する床を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る浮床構造を説明するための縦断側面図。
図2】同浮床構造の平面図。
図3図1の同浮床構造を部分的に示す拡大断面図。
図4図4A図4Bは、防振装置の説明に供する説明図。
図5図1に示す浮床構造の浮床施工方法において、床基盤上に、絶縁部材を含む型枠を配置した状態を示す断面図。
図6図1に示す浮床構造の浮床施工方法において、床基盤上に、型枠上に剥離シートを配置した状態を示す断面図。
図7図1に示す浮床構造の浮床施工方法において、床基盤上に配置した剥離シート上に防振装置を配置した状態を示す断面図。
図8図1に示す浮床構造の浮床施工方法において、床基盤上に配置した防振装置上にコンクリートを打設した状態を示す拡大断面図。
図9図8の同浮床構造を部分的に示す断面図。
図10】浮床構造の変形例1を示す図。
図11】浮床構造の変形例2を示す図。
図12】浮床構造の変形例3を示す図。
図13】浮床構造の変形例4を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
図1は、本発明に係る浮床構造を説明するための縦断側面図であり、図2は、同浮床構造の平面図である。図3は、図1の同浮床構造を部分的に示す拡大断面図である。
【0015】
図1図3に示す浮床構造1は、建築物躯体等の床基盤2上に配置される絶縁部材3と、剥離シート4と、防振装置5と、コンクリート流入防止用の筒状部材6と、コンクリート71製の浮床(床スラブ)7と、を有する。図1及び図3に示す防振装置5は、模式的に示しており、部分的に断面で示している。なお、図7図12のそれぞれに示す防振装置5も同様に部分的に断面で示している。
【0016】
床基盤2は、例えば、建築物躯体の一部となるものである。床基盤2は、例えば、鉄筋コンクリート等により構成された躯体であり、その上面に浮床7が配置されている。
【0017】
浮床7は、コンクリート71製の床スラブであり、補強芯材74が配筋され補強されている。なお、図1の浮床7は、コンクリート打設により形成された床スラブを床基盤2から浮かせることで形成される。
【0018】
図3に示すように、浮床7の外周面及び下面には、剥離シート4が貼り付いた状態となっており、便宜上、これらを含めて、浮床7の外周面7a、下面7dとする。浮床7の外周面7aは、上方から下方につれて浮床7の平断面の面積が小さくなるように形成される、下方から上方にテーパ状に上り傾斜する上り傾斜面である。外周面7aは、絶縁部材3の傾斜面301に対して隙間(後述する第2隙間に相当する)G1を空けて対向している。絶縁部材3は、床基盤2上で、図2のように周壁23の内側部分に取り付けた場合、建築物に対して傾斜面301が内側面を形成する。なお、外周面7aは、下端部から上端部に向かって鉛直方向よりも外方に傾斜するように形成される部位を有していればよい。すなわち、上下方向で仕切られる一部の部位に傾斜面を有していればよい。これにより、浮床7の少なくとも一部において、浮床7の平断面の面積が上方から下方に小さくなるように形成されている。
【0019】
図1に示すように、床スラブ浮上後、浮床7は、複数の防振装置5を介して、床基盤2の床面から離間して隙間(第1隙間に相当)Gを空けて形成され、更に、浮床を囲む周囲の部材から所定間隔の隙間G1を空けた状態で形成されている。なお、隙間G1の上部近傍(具体亭には、浮床7の上面外周縁近傍と絶縁部材3の上面の内側縁部近傍とで形成される隙間)をコーキング材などの充填材で充填して埋めてもよい。隙間G1を充填材で埋めた場合、所望の防振・遮音性能を有しつつ、ゴミなどの侵入を防ぐことができる。なお、充填材を充填する当該隙間が大きい(例えば5mm以上の)場合はバックアップ材を施工してもよい。
【0020】
ここで、防振装置5の一例を説明する。図4A及び図4Bは、防振装置の説明に供する説明図であり、図4Aはスラブ支持部の高さ調整前の状態を示す図であり、図4Bはスラブ支持部の高さ調整後の状態を示す図である。
【0021】
防振装置5は、床基盤2上に、所定のピッチで配置され、浮床(床スラブ)7を支持する。防振装置5は、台座部52と、台座部52に対して上下方向で移動自在に設けられ、上部の浮床7を支持するスラブ支持部54と、高さ調整部56と、台座部52の側面を包囲するように設けられる弾力部材58とを有する。防振装置5は、床基盤2上に配置される台座部52に対して上下動可能に配置されるスラブ支持部54が、移動した高さ位置(台座部52或いは床基盤2から離間した位置)で保持可能に構成されていれば、どのように構成されてもよい。
【0022】
台座部52は、例えば、弾性を有し、天然ゴム等により構成されるゴム状弾性体であり、逆円錐台形状に形成され、上面中央部に凹みを有し、且つ、外周縁に突起部522を有する。
【0023】
一方、スラブ支持部54は、ゴム状弾性体の上面を覆うドーム形状に形成され、外周部分で下方に突出する外周突部542を有する。スラブ支持部54は床スラブを支持可能な材料、例えば、金属で形成され、その外周突部542で、ゴム状弾性体の突起部522に当接し、台座部52上で弾性的に支持されている。スラブ支持部54は、打設されるコンクリート71と一体化する。スラブ支持部54は上部でコンクリート71に一体的に設けられる。また、スラブ支持部54の中央部には貫通孔が設けられ、スラブ支持部54の下面中央部には、貫通孔と同軸心となるように例えば溶接などによりナット状のねじ機構部544が設けられる。
【0024】
高さ調整部56は、ねじ機構部544に螺合するレベリングボルト564と、台座部52の上面中央部に配置され、レベリングボルト564の先端部(下端部)を受けて支承する受け部566とを有する。
【0025】
レベリングボルト564は、スラブ支持部54を昇降(上下動)させるものであり、スラブ支持部54の中央部に設けられたねじ機構部544の雌ねじ部と螺合する。
【0026】
レベリングボルト564は、その先端部がスラブ支持部54中央部の貫通孔を貫通してねじ機構部544よりも台座部52側に突出可能に配置され、台座部52側に突出する方向に回動されると、台座部52の受け部566に当接して台座部52を押圧し、スラブ支持部54を上昇させる。また、レベリングボルト564は、その先端部が台座部52側から後退する方向に回動されると、スラブ支持部54を下降させる。レベリングボルト564は、基端部にレベリングボルト564を回動させるための頭部を有し、この頭部を回動させることでレベリングボルト564は回転する。このように、レベリングボルト564を回動させることにより、スラブ支持部54が上下動して台座部52に対して接近または離間するように移動する。このスラブ支持部54の移動とともに浮床(床スラブ)7が移動し、浮床(床スラブ)7の高さ調整を含むレベリングを行うことができる。
【0027】
なお、図1及び図3に示す浮床7は、スラブ支持部54を上昇させる方向にレベリングボルト564が回動された状態で固定され、これに伴い、床基盤2上から浮上して間隙を形成した状態で配設されている。なお、図1図3図7図12に示す防振装置5には、台座部52、スラブ支持部54及び筒状部材6の下方を覆うカバー部材62(図1図3参照)が設けられている。カバー部材62は、例えば、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂により構成され、可撓性を有し、更に透光性を有する。カバー部材62は無くてもよいが、カバー部材62を設けることにより、筒状部材6とともに防振装置5へのコンクリート71の流入を防止することができる。
【0028】
弾力部材58は、台座部52の側面を包囲するように、例えば発泡材やゴム材料などを用いてリング状に形成される。弾力部材58は、例えば、横断面丸形のゴムあるいはプラスチック製の弾性紐を、台座部52の側面を囲むように巻き付けて形成されてもよい。
【0029】
弾力部材58は、コンクリート71の打設前に配置され、スラブ支持部54の底部と剥離シート4との間の隙間を塞ぐことによって、打設直後のコンクリート71が流動して台座部52に接触してしまうことなどを防止する。
【0030】
なお、スラブ支持部54が所定高さまで移動したとき、台座部52では、突起部522が上方に持ち上げられた状態に変形するが、弾力部材58の存在により、鉛直方向の防振・遮音性能を妨げることなく水平方向への異常変形が抑えられる。
【0031】
なお、筒状部材6は、例えば、塩化ビニールパイプなどによって構成されており、防振装置5のレベリングボルト564を包囲するようにしてスラブ支持部54上に配置される。筒状部材6は、設置することによりレベリングボルト564の周囲にコンクリートが流れ込まなければどのように構成されてもよく、金属管により形成してもよい。
【0032】
絶縁部材3は、浮床7を囲む型枠の一部として機能し、本実施の形態では、浮床7となる床スラブを形成する領域を囲繞するように配置され、浮床7の外周部の型枠となる。絶縁部材3は、例えばグラスウールや高強度の発泡スチロールのような材料などで構成される。
【0033】
絶縁部材3を浮床7の外周部の型枠とすることにより、浮床構造1形成後は、絶縁部材3の浮床(床スラブ)7側の面(内側面)3a(本実施の形態では、傾斜面301)と、浮床7の外周面(傾斜面であり、実際は床スラブ外面の剥離シート4の外面)7aとの間に隙間G1が形成される。
【0034】
絶縁部材3は、周壁23の内側部分(立上り部分)に取り付けられる。絶縁部材3は、床基盤2上に載置されて所定の厚み、高さ及び幅を有し、内側面である傾斜面301により浮床7の外周部の形状を規定する。
【0035】
絶縁部材3において浮床7側の面である内側面3aは、上方から下方にテーパ状に傾斜する傾斜面301である。絶縁部材3は、本実施の形態では内側面3aが全面傾斜面301を形成しているが、内側面に傾斜面301を有していれば内側面の一部が傾斜面でないように形成してもよい。傾斜面301は、絶縁部材3の内側にコンクリート71を打設して固化させた後で浮上させる際に、絶縁部材3から隙間G1を空けて離間可能な形状である。絶縁部材3の傾斜面301によって浮床7は、打設するコンクリート71を介して、浮床7の外周部において下方から上方に向かって水平方向外方に傾斜する外周面7aが形成される。
【0036】
剥離シート4は、床基盤2上に浮床7を施工する際に、絶縁部材3の傾斜面301である内側面及び床基盤2上に敷設されるものである。剥離シート4は、レベリングにより床スラブを床基盤2から浮上させた後の状態を示す図1及び図3では、浮床7の下面及び外周面を覆う状態となる。剥離シート4は、絶縁部材3の傾斜面301及び床基盤2から、打設したコンクリート部分(床スラブ)を剥離させる。剥離シート4は、絶縁部材3の内側面及び床基盤2上と打設したコンクリート部分とを仕切る。
【0037】
剥離シート4は、可撓性及び防水性を有するプラスチック等の合成樹脂等で形成される。剥離シート4は、例えば、所定の厚さ(例えば、0.15mm)のポリエチレンフィルム等によって構成されてもよい。剥離シート4は、伸縮性を有する構成としてもよい。
【0038】
次に、施工方法について図5図9を参照して説明する。
図5において、先ず、床基盤2上に、浮床7となる床スラブを囲繞する形枠として絶縁部材3を配設する。尚、図5では床基盤2には、浮床7を囲む建築物躯体である周壁23が立設されている。この周壁23が別体の場合は、絶縁部材3を配置する前に、床スラブを囲繞するように周壁23を設け、その周壁23の内側に、傾斜面301を有する絶縁部材3を配置する。ここでは絶縁部材3は矩形枠状に配置することが好ましいが、周壁部の内側の一部、例えば対向する一対の辺部に絶縁部材3を配置するようにしてもよい。
【0039】
絶縁部材3により床基盤2上には、上方から床基盤2上面まで、下り傾斜で傾斜する傾斜面で囲繞された空間が形成される。
【0040】
次いで、図6に示すように、床基盤2及び絶縁部材3上に、これらを覆うように、剥離シート4を敷設する。このとき、剥離シート4は、床基盤2の上面と、絶縁部材3により形成される凹状の空間を仕切る立ち上がり部分(傾斜面301)を被覆するように配置される。
【0041】
次に、剥離シート4上に、レベリングボルト564を有する複数個の防振装置5を、図7に示すように、適宜ピッチで配置する。なお、このピッチは、防振装置5の支持荷重とばね定数によって決定される。
【0042】
次いで、複数の各防振装置5の上部に、筒状部材6を、各防振装置5のレベリングボルト564の外周を包囲するように立設する。また、弾力部材58は、台座部52を側方から囲むように配置される。筒状部材6を各防振装置5のスラブ支持部54に立設した後、カバー部材62は防振装置5の上方から被せて配置される。
【0043】
なお、防振装置5は、剥離シート4を敷設した後に設置したが、剥離シート4の敷設前に、防振装置5を設置し、防振装置5の上から、剥離シート4を、床基盤2及び絶縁部材3を覆うように配置してもよい。
【0044】
次に、図8及び図9に示すように、床基盤2上における複数の防振装置5の周囲に、鉄筋等の補強芯材74を縦横に配設(いわゆる配筋)し(配筋は図示省略)、絶縁部材3の内側にコンクリート71を打設する。このとき、コンクリートが筒状部材6の頂部開口から中に入り込まないようにする。このコンクリート71を養生し固化させて床スラブを形成する。
【0045】
床スラブの成形後、レベリングにより床スラブを床基盤2から浮上させるようにする。本実施の形態では、レベリングは、各防振装置5のレベリングボルト564を筒状部材6の上部開口から回動操作することにより行う。このとき、剥離シート4は、床スラブとともに浮上する。
【0046】
すなわち、レベリングボルト564を回動して床スラブを床基盤2の上面から上方に離間するように移動させると、床スラブの外周部は、絶縁部材3(より具体的には、絶縁部材の内側面である傾斜面301)から離間して上方に移動する。
【0047】
浮床構造1における絶縁部材3は、外側から内側に下る下り傾斜である傾斜面301を有するので、床スラブが上方に移動すると、絶縁部材3と床スラブとの互いの対向面間に隙間が空くように平行状態を維持しつつ移動する。すなわち、絶縁部材3の傾斜面301(内側面3a)と床スラブの外周面7aとを上下方向で離間させて、隙間(第2隙間)G1を形成できる。この隙間G1である傾斜面301と外周面7aの離間距離は、スラブ支持部54の上下動に伴って増減する。
【0048】
このようにして建築物躯体等の床基盤2上から床スラブを所定の高さに浮上させ、図1に示すように、下面7d側及び外周面7aからも離間して、それぞれとの間に隙間G、G1が形成された浮床7が形成される。浮上した浮床7の上面と絶縁部材3の上面とが面一になるように、絶縁部材3の上部をカットしてもよい。この場合、浮床構造1としての見栄えがよくすることができる。
【0049】
なお、上記工程のように床スラブをレベリングして浮床7を形成する場合、複数の防振装置5を端から渦巻き状に順番にレベルアップ(高さ調整)していく。そのため、一時的に浮床7が床基盤2に対して傾斜する場合がある。ここで、防振装置の台座部52とスラブ支持部54との接触面での接着面積が大きいほど、スラブ支持部54によるゴム状弾性体である台座部52への拘束力が大きくなり、床スラブの傾斜に伴いスラブ支持部54も傾斜して台座部52に局部的な荷重が加わる。この現象を避けるためには一回のレベリング量を少なくして対応できるが、その分、作業に手間が掛かることになる。
【0050】
しかしながら、防振装置5では、スラブ支持部54の外周突部542の最下端部のみが、ゴム状弾性体である台座部52の突起部522に接着され、スラブ支持部54による台座部52への拘束力を小さくしている。このため、接着部分以外ではスラブ支持部54が台座部52に対して自在に離間して容易に上下動する。これにより、レベリングの際、スラブ支持部54は、スムーズに傾斜して床スラブの斜動に追従でき、一回のレベリング量を大きくすることができ、作業効率を向上させることができる。
【0051】
なお、設置状況次第ではスラブ支持部54と台座部52との接着面積を図4の実施形態よりも一層広くして、スラブ支持部54が台座部52を拘束する力を増加させてもよい。あるいは、スラブ支持部54を台座部52に全く接着せずに当接させるだけの構成として、同拘束力をゼロにする構成にしてもよい。
【0052】
本実施の形態の浮床構造1では、防振装置5が床基盤2上に間隔を空けて配置され(図1及び図2参照)、防振装置5は、それぞれ台座部52の上部に配置されるスラブ支持部54が上方に移動自在に構成されている(図3参照)。複数の防振装置5のスラブ支持部54にはコンクリート71製の床スラブである浮床7が載置され、浮床7は、防振装置5を介して床基盤2との間に隙間(第1隙間)Gを空けて配置されている。また、床基盤2上で浮床7となる床スラブを囲繞するように絶縁部材3が配置されており、絶縁部材3の床スラブ側の面(内側面)3aは、上方から下方にテーパ状に下り傾斜する絶縁部材傾斜面301である。一方、床スラブである浮床7の外周面(スラブ傾斜面)7aは、絶縁部材傾斜面301に対応して下方から上方にテーパ状に上り傾斜し、且つ、絶縁部材傾斜面301に対して隙間(第2隙間)G1を空けて対向配置されている。
【0053】
この浮床構造1を施工する浮床施工方法では、まず、床基盤2上で、床スラブを形成する領域の周囲に、床スラブ側の面(内側面)3aが上方から下方に下り傾斜する絶縁部材傾斜面301を有する絶縁部材3を配置する。次いで、台座部52の上部のスラブ支持部54が上方に移動自在に構成された複数の防振装置5を、床基盤2上で領域内に間隔を空けて配置する。次いで、底面7d及び外周面7aが剥離シート4で覆われ且つスラブ支持部54を一体化させた床スラブを、床基盤2及び防振装置5上で、絶縁部材3に囲繞される領域に形成する。次いで、レベリングによりスラブ支持部54を上方に移動させて床スラブを床基盤2及び絶縁部材3から浮上させることにより、絶縁部材3の内側面(3a)と床スラブの外周面7aとを上下方向で離間させる。本実施の形態では、レベリングは、レベリングボルト564を回動することにより、スラブ支持部54を上方に移動させている。
【0054】
この浮床構造によれば、浮床7は、外周面7aと底面7dとが、建築物躯体(床基盤2、周壁23)から、隙間G、G1を空けた状態で配置されているので、浮床7から建築物躯体(床基盤2、周壁23)への振動伝達を抑え、防振・遮音性能を向上させることができる。また、傾斜面301と外周面7aの離間距離を、スラブ支持部54の上下動に伴って増減させることにより隙間G1の大きさを変更でき、好適な防振効果を得ることができる。
【0055】
特に本実施の形態では、建築物躯体と浮床7とが完全に分離している、具体的には、建築物躯体である床基盤2及び周壁23から分離しているだけでなく、周壁23の内側部分(立上り部分)に取り付けられた絶縁部材3からも分離している。したがって、建築物躯体(床基盤2)及び絶縁部材3と、浮床7との間で隙間G、G1で連通する空気の逃げ道を確保でき、これにより共振現象を抑制でき、より優れた防振・遮音性能を有している。
【0056】
また、絶縁部材3にテーパ部を設けることで絶縁部材3が埋め殺し可能となり、コンクリート硬化後に型枠を除去する工程が不要である。これにより、型枠撤去工程を省略でき、施工の短縮化、簡易化をはかることができる。このように、本実施の形態によれば、浮床7の高低を自在に調整することができ、施工が容易で、優れた防振・遮音性能を実現することができる。なお、レベル調整した後の筒状部材6は無収縮モルタル等の充填材を充填して、フラットな表面の浮床7にすることができる。
【0057】
<変形例1>
図10は、浮床構造の変形例1を示す図である。具体的には、図10Aは、変形例1の浮床構造1Aにおける防振装置の高さ調整前の状態を示す断面図であり、図10Bは、浮床構造1Aにおける防振装置の高さ調整後の断面図である。
【0058】
図10A及び図10Bに示す浮床構造1Aでは、浮床構造1と比較して、床基盤2上に配置される絶縁部材3Aにおいて、テーパ部31の上部に、傾斜面311と連続する垂直面331を有する垂直部33を設けた点と、浮床7Aの外周面形状が異なる点が異なる。また、絶縁部材3Aにおいて、浮床7Aの外周部に対応する内側面(床スラブ側の面3a)は、傾斜面311と垂直面331とで構成される。その他の構成と施工方法は同様であるので同様の構成要素、施工方法についての説明は省略する。
【0059】
図10Aに示すように、絶縁部材3Aは、テーパ部31と、テーパ部31上に設けられた垂直部33とを有する。図10では、テーパ部31と垂直部33は同一材料で一体的に形成されているため、テーパ部31と垂直部33とは連設している。テーパ部31は、浮床7A側の面が上方から下方にテーパ状に下り傾斜する傾斜面311を有する。垂直部33は、傾斜面311に連続する垂直面331を有する。
【0060】
この浮床構造1Aの施工は、浮床構造1を施工する上述の浮床施工方法において、床基盤2上で周壁23内に、テーパ部31及び垂直部33を有する絶縁部材3Aを、浮床7Aとなる床スラブを形成する領域を囲繞するように配置する。
【0061】
次いで、絶縁部材3A及び床基盤2上に剥離シート4を敷設し、剥離シート4の上に複数の防振装置5、補強芯材74を配筋し、コンクリート71を打設する。打設したコンクリート71を養生して固化し、床スラブが形成される。防振装置5においてレベリングボルト564を回動してスラブ支持部54を台座部52に対して離間するように移動させることで床スラブを浮床7Aとして床基盤2から浮上させる。
【0062】
すると、浮床7Aは、図10Bに示すように、床基盤2及び絶縁部材3Aのテーパ部31に対して、隙間(第1隙間)G、隙間(第2隙間に相当する)G21を空けて上方に位置する。浮床7Aの外周面(ここでは剥離シート4が取り付けられている)では、傾斜面311とは隙間G21を空けて離間した状態で配置され、浮床7の上端縁部7bが垂直面331に近接あるいは当接して配置される。浮上した浮床7Aの上面と絶縁部材3Aの上面とが面一になるように、絶縁部材3Aの上部をカットしてもよい。この場合、浮床構造1Aとしての見栄えをよくすることができる。
【0063】
この構成によれば、建築物躯体(床基盤2、周壁23)と防振対象である浮床7との間の隙間G、G21により、浮床7から建築物躯体(床基盤2、周壁23)への振動伝達を抑え、防振・遮音性能を向上させることができる。すなわち、浮床7Aの外周面の上端縁部7bで絶縁部材3Aに当接しているものの、床スラブ全面で絶縁部材3Aに当接する構成と比較して、接触面積が少ない。
【0064】
このように、絶縁部材3Aがテーパ部31及び垂直部33を有するので、建築物躯体と防振対象である浮床7Aの上端縁部7b間の隙間、具体的には、建築物躯体である周壁23の内側部分(立上り部分)に取り付けられた絶縁部材3Aと防振対象である浮床7Aの上端絶縁部7b間の隙間が埋まることになる。これにより、建築物躯体とコンクリートの衝突による破損のおそれが無く、さらにはコンクリートの欠け防止やごみの侵入を防ぐことができる。
【0065】
なお、図10では、テーパ部31と垂直部33が同一材料で一体的に形成されている場合について説明したが、テーパ部31と垂直部33を別材料により絶縁部材3Aとして一体的に形成してもよい。この構成では、垂直部33は浮床(浮床7Aに相当)に接触するため、グラスウールやフォーム等の柔軟な素材により形成してもよい。一方、テーパ部31は、浮床7を浮上させれば接触しない為、木材、樹脂、コンクリート等の硬質な材料で形成されてもよい。テーパ部31を、コンクリート等の低コスト材料により形成して、浮床構造全体のコストダウンを図ることができる。
【0066】
なお、一般的な絶縁部材の構成として、テーパ部の無い矩形枠状の絶縁部材の場合、構成上、所定の厚みが必要(例えば、25mm~50mm)である。しかしながら、本変形例1の構成のように、型枠となる絶縁部材3Aを、テーパ部31の上部に垂直部33を設けた構成としたので、垂直部33の厚みを所定の厚みよりも薄くできる。これにより、浮床構造を施工した際に、浮床7Aの上端縁部7bと周壁23との間に、所定の厚みよりも薄い垂直部33を配置できるので、浮床7の外周部と周壁23との間の隙間を小さくして意匠性に優れた浮床構造1Aにできる。また、浮床7Aの外周部(上端縁部3bを含む部位)と周壁23との間にシーリングする際にも従来と比べて隙間が小さいので作業性の効率化を図ることができる。
【0067】
<変形例2>
図11は、浮床構造の変形例2を示す図であり、図11Bは、変形例2の浮床構造1Bにおける防振装置の高さ調整前の状態を示す断面図であり、図11Bは、浮床構造1Bにおける防振装置の高さ調整後の断面図である。
【0068】
図11A及び図11Bに示す浮床構造1Bでは、浮床構造1Aと比較して、浮床7Bを施工する際に用いられる絶縁部材3Bにおいて、テーパ部31Bの上部の垂直部33Bを、テーパ部31Bとは別体で、かつテーパ部31Bに対し着脱自在に設けた点が異なる。
【0069】
絶縁部材3Bでは、テーパ部31Bは、上方から下方にテーパ状に下り傾斜する傾斜面311を有し、このテーパ部31B上に、垂直部33Bが着脱自在に設けられている。垂直部33Bは、傾斜面311と連続する垂直面331を有する。
【0070】
絶縁部材3Bにおいて、浮床7Bの外周部に対応する内側面(床スラブ側の面3a)は、変形例1の絶縁部材3Aと同様に、傾斜面311と垂直面331とで構成される。
【0071】
絶縁部材3Bにおいて、別体であるテーパ部31Bと垂直部33Bを別材料により構成する場合、垂直部33Bは浮床(浮床7Bに相当)に接触するため、グラスウールやフォーム等の柔軟な素材により形成してもよい。一方、テーパ部31Bは、浮床7Bを浮上させれば接触しない為、木材、樹脂、コンクリート等の硬質な材料で形成されてもよい。テーパ部31Bを、コンクリート等の低コスト材料により形成して、浮床構造全体のコストダウンを図ることができる。なお、別体であるテーパ部31Bと垂直部33Bを同一材料で形成してもよい。
【0072】
この浮床構造1Bの施工は、浮床構造1を施工する浮床施工方法と同様の施工方法で行う。
【0073】
すなわち、床基盤2上で、周壁23内に、絶縁部材3Bが、浮床7Bとなる床スラブを形成する領域を囲繞するように配置される。
【0074】
次いで、絶縁部材3B及び床基盤2上に剥離シート4を敷設し、剥離シート4の上に複数の防振装置5、補強芯材74を配筋し、コンクリート71を打設する(図11A参照)。打設したコンクリート71を養生して固化し、床スラブが形成される。防振装置5においてレベリングボルト564を回動してスラブ支持部54を台座部52に対して離間するように移動させることで床スラブを浮床7Bとして床基盤2から浮上させる。
【0075】
すると、浮床7Bは、図11Bに示すように、床基盤2及び絶縁部材3Bのテーパ部31に対して、隙間G、隙間(第2隙間に相当する)G22を空けて上方に位置する。浮床7Bの外周面(ここでは剥離シート4が取り付けられている)7aでは、傾斜面311とは隙間G21を空けて離間して配置され、浮床7Bの上端縁部7bが垂直面331に近接あるいは当接して配置される。
【0076】
次いで、絶縁部材3Bにおいて垂直部33Bをテーパ部31Bから取り外す(矢印P1参照)。これにより、浮床(床スラブ)7と建築物躯体(床基盤2、周壁23)との間に隙間を確保することができ、優れた防振・遮音性能を得ることができる。
【0077】
さらに、垂直部33Bを外すことで形成された空間36にコーキング材などの充填材を充填して埋めてもよい(矢印P2参照)。空間36を充填材で埋めた場合、所望の防振・遮音性能を有しつつ、ゴミなどの侵入を防ぐことができる。
【0078】
<変形例3>
図12は、浮床構造の変形例3を示す図であり、浮床構造1Cにおける防振装置の高さ調整後の断面図である。
【0079】
図12に示す浮床構造1Cでは、浮床構造1(図3参照)と比較して、浮床7Cの上面7cの外周部近傍に浮き壁26が配設されている点で異なる。
【0080】
絶縁部材3Cの構成は、浮床構造1における絶縁部材3と同様の構成である。浮床構造1Cは、上方から下方にテーパ状に下り傾斜する傾斜面301を有するテーパ部31Cを有する。浮床7Cの上面7cの外周部近傍には、浮き壁26が配設されている。
【0081】
絶縁部材3Cの浮床7Cの外周部に対応する面(内側面)3aは、実施の形態の絶縁部材3(図3参照)と同様に、傾斜面301のみで構成される。
【0082】
この浮床構造1Cは、浮床構造1を施工する浮床施工方法と同様の施工方法で形成される。すなわち、床基盤2上で、周壁23内に、絶縁部材3Cが、浮床7Cとなる床スラブを形成する領域を囲繞するように配置される。
【0083】
次いで、絶縁部材3C及び床基盤2上に剥離シート4を敷設し、剥離シート4の上に複数の防振装置5、補強芯材74を配筋し、コンクリート71を打設する。打設したコンクリート71を養生して固化し、床スラブが形成される。防振装置5においてレベリングボルト564を回動してスラブ支持部54を台座部52に対して離間するように移動させることで床スラブを浮床7Cとして床基盤2から浮上させる。
【0084】
すると、床スラブである浮床7Cは、図12に示すように、床基盤2及び絶縁部材3Cの内側面3a(傾斜面301)に対して、隙間(第1隙間)G、隙間(第2隙間)G23を空けて上方に位置する。浮床7Cの外周面(剥離シート4)7aでは、絶縁部材3Cの傾斜面311とは隙間G23を空けて離間して配置される。
【0085】
浮き壁26を設けることで、浮上した浮床7Cの上面7cと絶縁部材3Cの上面333とが面一にならない場合、絶縁部材3Cの上部をカットしなくてもよい。
浮き壁26は、壁下地材262を浮床7Cの上面に固定することにより形成される。
【0086】
浮床7Cの上面7cの外周部に浮き壁26を設ける場合、壁下地材262を介して浮床7Cの上面に固定されるが、壁下地材262を浮床7Cに固定するためのアンカーピン264の最小母材厚さの制約上、浮き壁26は、アンカーピン264を使用するのに必要な厚さが確保できるように、浮床7Cの上面7cの外周縁部(厚さが確保できない位置A)近傍よりも内側の位置Bに配置される。
【0087】
本変形例3における浮床構造1Cにおいても、実施の形態における浮床構造1と同様の効果を得ることができる。
【0088】
<変形例4>
図13は、浮床構造の変形例4を示す図であり、浮床構造1Dにおける防振装置の高さ調整後の断面図である。
【0089】
図13に示す浮床構造1Dでは、浮床構造1A(図10B参照)と比較して、浮床7Dの上面7cの外周部近傍に浮き壁27が配設されている点で異なる。
【0090】
絶縁部材3Dは、上方から下方にテーパ状に下り傾斜する傾斜面311を有するテーパ部31Dと、テーパ部31D上に着脱自在に設けられ、傾斜面311と連続する垂直面331を有する垂直部33Dと、を有する。浮床7Dの上面7cの外周部には、浮き壁27が配設されている。
【0091】
絶縁部材3Dの浮床7Dの外周部に対応する面(内側面)3aは、変形例1の絶縁部材3Aと同様に、傾斜面311と垂直面331とで構成される。
【0092】
この浮床構造1Dは、浮床構造1Aを施工する浮床施工方法と同様の施工方法で形成される。すなわち、床基盤2上で、周壁23内に、絶縁部材3Dが、浮床7Dとなる床スラブを形成する領域を囲繞するように配置される。
【0093】
次いで、絶縁部材3D及び床基盤2上に剥離シート4を敷設し、剥離シート4の上に複数の防振装置5、補強芯材74を配筋し、コンクリート71を打設する。打設したコンクリート71を養生して固化し、床スラブが形成される。防振装置5においてレベリングボルト564を回動してスラブ支持部54を台座部52に対して離間するように移動させることで床スラブを浮床7Dとして床基盤2から浮上させる。
【0094】
すると、床スラブである浮床7Dは、図13に示すように、床基盤2及び絶縁部材3Dのテーパ部31D(具体的には傾斜面311)に対して、隙間(第1隙間)G、隙間(第2隙間)G24を空けて上方に位置する。浮床7Dの外周面(剥離シート4)7aでは、絶縁部材3Dの傾斜面311とは隙間G24を空けて離間して配置され、浮床7Dの上端縁部7bでは垂直部33Dに近接あるいは当接する。
【0095】
本変形例4では、絶縁部材3Dの傾斜面311と垂直面331とで構成される内側面3aに対応して、浮床7Dもテーパ部と垂直部で構成される。浮き壁27は、壁下地材272を浮床7Dの上面に固定することにより形成される。浮床7Dの垂直部の高さをアンカーピン274の最小母材厚さ以上にすることによって、壁下地材272を固定するアンカーピン274の最小母材厚さを浮き床端部でも確保できるため、浮き壁27を浮床7Dの上面7cにおいて外周端部7b近傍に載置することができる。これにより、浮き壁27を浮床7D上に配設する場合、浮き壁26を浮床7C上に配設する場合(図12参照)に比較して、浮床7D上の内部空間を広くすることができる。
【0096】
本変形例4における浮床構造1Dにおいても、変形例1における浮床構造1Aと同様の効果を得ることができる。
【0097】
また、浮床構造1B(図11B参照)の浮床7Bの上面7cの外周部に浮き壁を設けてもよい。この場合、浮き壁の配置の点では、変形例4と同様の効果を得ることができ、絶縁部材の構成の点では、変形例2と同様の効果を得ることができる。
【0098】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る浮床構造は、浮床の高低を自在に調整することができ、施工が容易で、優れた防振・遮音性能を実現することができる効果を有し、より効果的な防音機能及び防振機能を有する部屋等の床構造として有用である。
【符号の説明】
【0100】
1、1A、1B、1C、1D 浮床構造
2 床基盤
3、3A、3B、3C、3D 絶縁部材
3a 内側面
4 剥離シート
5 防振装置
6 筒状部材
7、7A、7B、7C、7D 浮床
7a 外周面(スラブ傾斜面)
7b 上端縁部
7c 上面
7d 下面
23 周壁
26 浮き壁
31、31B、31C、31D テーパ部
33、33B、33D 垂直部
36 充填材
52 台座部
54 スラブ支持部
56 高さ調整部
58 弾力部材
62 カバー部材
71 コンクリート
74 補強芯材
301、311 傾斜面(絶縁部材傾斜面)
331 垂直面
333 上面
522 突起部
542 外周突部
544 ねじ機構部
564 レベリングボルト
566 受け部
G 隙間(第1隙間)
G1、G21、G22、G23、G24 隙間(第2隙間)
S1 内部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13