(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052109
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】キッチンペーパーロール
(51)【国際特許分類】
A47L 13/16 20060101AFI20240404BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20240404BHJP
B31F 1/07 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A47L13/16 A
D21H27/00 F
B31F1/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158588
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀星 壮真
【テーマコード(参考)】
3B074
3E078
4L055
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AA04
3B074AB01
3B074AC03
3B074BB01
3E078BB51
3E078BC06
3E078DD09
4L055AJ07
4L055BE15
4L055EA08
4L055GA29
(57)【要約】
【課題】巻長さが長くても意匠性、吸油性に優れるキッチンペーパーロールを提供する。
【解決手段】
1プライの坪量が15.0~23.0g/m2のシートが2プライに積層された、
エンボス加工による凹凸を有するキッチンペーパーが、巻き取られたキッチンペーパーロールであって、巻長さが22~32mであり、紙厚が1.5mm/5枚~2.2mm/5枚であり、各シートのエンボス加工時の凸部の頂部同士が対面して積層され、かつ、巻き取り内面側のシートの、巻き取り外面側のシートのエンボス加工による凸部に対応する部分に、巻き取り内面側シートの積層外面側に凸となっている部分が形成されている、キッチンペーパーロールにより解決される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1プライの坪量が15.0~23.0g/m2のシートが2プライに積層された、
エンボス加工による凹凸を有するキッチンペーパーが、巻き取られたキッチンペーパーロールであって、
巻長さが22~32mであり、紙厚が1.5mm/5枚~2.2mm/5枚であり、
各シートのエンボス加工時の凸部の頂部同士が対面して積層され、かつ、巻き取り内面側のシートの、巻き取り外面側のシートのエンボス加工による凸部に対応する部分に、巻き取り内面側シートの積層外面側に凸となっている部分が形成されている、
ことを特徴とする、キッチンペーパーロール。
【請求項2】
巻き取り内面側のシートのエンボス加工時の凸部頂部に対応する部分の縁に沿って、積層外面側に額縁状に凸となっている凸縁部が形成されている、
請求項1記載のキッチンペーパーロール。
【請求項3】
巻き取り外面側シートの凹部の深さ(D表)が、0.060~0.765mmである、請求項1記載のキッチンペーパーロール。
【請求項4】
巻き取り内面側シートの積層外面側に凸となっている部分の高さ(H裏)が、0.060μm~0.250μmである、請求項1記載のキッチンペーパーロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンペーパーロールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙ロール製品の長尺化が進んでいる。キッチンペーパーを巻き取ったキッチンペーパーロールにおいても同様である。これは、購入後における持ち運びの便宜、購入・交換回数が少なくなるメリット、保管スペースに利便性があるなどの利点を要因としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長尺化は、ロール径を大径化すればよいが、大径化は持ち運びやすさや保管時、販売時におけるスペースが大きくなるため、巻径を従来品と同程度としつつ、長尺化することが望まれる。
【0005】
大径化せずに長尺化するには、シートの低米坪化、薄厚化及びロールの巻きを硬くすることが検討されるが、単に低米坪化、薄厚化及び巻きを硬くすると、薄く破れやすくなり、従来の長尺化ではない製品との品質差が、消費者において不満となることがある。
【0006】
また、キッチンペーパーでは、意匠性や吸液性の向上等のためエンボス加工によって紙面に凹凸が形成されているものがある。このエンボス加工による凹凸を有するものでは、ロールを硬く巻くと、その凹凸やシート間の空隙が潰れたりして、所望の意匠性や吸液量等の品質が得られないことがある。
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、意匠性及び吸液量における品質が十分で、長尺化による大径化を抑えエンボス加工による凹凸を有するキッチンペーパーロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した第一の手段は、
1プライの坪量が15.0~23.0g/m2のシートが2プライに積層された、
エンボス加工による凹凸を有するキッチンペーパーが、巻き取られたキッチンペーパーロールであって、
巻長さが22~32m(ピッチ×カット数)であり、紙厚が1.5mm/5枚~2.2mm/5枚であり、
各シートのエンボス加工時の凸部の頂部同士が対面して積層され、かつ、巻き取り内面側のシートの、巻き取り外面側のシートのエンボス加工による凸部に対応する部分に、巻き取り内面側シートの積層外面側に凸となっている部分が形成されている、
ことを特徴とする、キッチンペーパーロールである。
【0009】
第二の手段は、
巻き取り内面側のシートのエンボス加工時の凸部頂部に対応する部分の縁に沿って、積層外面側に額縁状に凸となっている凸縁部が形成されている、
上記第一の手段に係るキッチンペーパーロールである。
【0010】
第三の手段は、
巻き取り外面側シートの凹部の深さ(D表)が、0.060~0.765mmである、上記第一の手段に係るキッチンペーパーロールである。
【0011】
第四の手段は、
巻き取り内面側シートの積層外面側に凸となっている部分の高さ(H裏)が、0.060μm~0.250μmである、上記第一の手段に係るキッチンペーパーロールである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、意匠性及び吸液量における品質が十分で、長尺化による大径化を抑えエンボス加工による凹凸を有するキッチンペーパーロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】キッチンペーパーロールの概要説明図である。
【
図3】キッチンペーパーの断面図の例を示す図である。
【
図4】キッチンペーパーのエンボス加工の例を説明するための図である。
【
図5】巻き取り外面側のシートの平面図の例である。
【
図6】巻き取り外面側のシートの凹部の深さの測定方法を説明するための図である。
【
図7】巻き取り内面側のシートの積層外面の凸部の高さの測定方法等を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次いで、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら以下に詳述する。
図1に示すように、キッチンペーパーロール1は、2プライの帯状のキッチンペーパー10を紙管(管芯とも称される)20にロール状に巻いたものである。
【0015】
巻長さは、20~32mであり、好ましくは、25m~28mである。巻径L2は、105~125mmが望ましく、110~120mmが特に望ましい。
【0016】
市販されている2プライのキッチンペーパーロール1が一般に10~15m程度であるのに対し、本発明に係るキッチンペーパーロール1によれば、巻長さが22~32mとかなり長尺であり、また、好ましい巻径L2が105~125mmであるから、購入後における持ち運びの便宜が高く、保管スペースに利便性がある。
【0017】
なお、キッチンペーパーロールにおける巻長さは、(カットピッチ)×(カット数)で算出される値である。キッチンペーパーロール1では、枚葉のように使用しやすいように所定間隔でカットしやすいようにミシン目12が形成されている。このミシン目12間の距離L4がカットピッチである。カットピッチは、18~25cm程度とされる。実施形態のキッチンペーパーロールにおいてもこの範囲とされる。
【0018】
カット数は、ミシン目12でカットして得られる枚葉状のキッチンペーパーの数であり、枚数に相当する。従来一般的なキッチンペーパーロール1では、50~70カット程度である。本形態における望ましいカット数は90~180カット、より望ましいカット数は、100~140カットである。カット数増によって長尺となる。
【0019】
巻径L2は、ロールの外周を幅方向3か所でダイヤメータールール(ムラテックKDS株式会社)を用いて測定し3か所の平均値として求める。
【0020】
ロール幅L1は限定されないが市販品と同程度の200~230mmとすることができる。ロール幅は、ロールの外周面の軸方向の長さをロール外周3か所でJIS1級金尺を用いて測定し平均値として求める。
【0021】
紙管径L3は、必ずしも限定されないが、35~45mmとされる。紙管径は、後述の巻密度の調整の要素となる。紙管径は、紙管の外周を幅方向3か所でダイヤメータールール(ムラテックKDS株式会社)を用いて測定し3か所の平均値として求める。
【0022】
この実施形態に係るキッチンペーパー1は、クレープ紙であるシート10A,10Bが2プライに積層されたものであり、シート10A,10Bは、エンボス加工に起因する凹凸を有している。このエンボス加工は、スチールラバー式のエンボス加工が好適である。
【0023】
実施形態のキッチンペーパーでは、特に、各シート10A,10Bがエンボス加工時の凸部の頂部同士が対面して積層されている。エンボス加工後の各シート10A,10Bが積層された直後は、
図2に示すとおり、キッチンペーパー1の一方面を構成する第一のクレープ紙10Aの凸部11Aの頂部と、他方面を構成する第二のクレープ紙10Bの凸部11Bの頂部とが対面する、ティップトウティップ(TIP to TIP)の形態とされる。この積層の際には、第一のクレープ紙10Aと第二のクレープ紙10Bは、各々に接する凸部の頂部で接着されて一体化するのが望ましい。接着糊10Cは、積層構造を採るキッチンペーパーに採用される公知の接着糊が使用できる。例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系接着剤等である。エンボスの形態は、他に、キッチンペーパーの一方面を構成する第一のクレープ紙の凸部の頂部と、他方面を構成する第二のクレープ紙の非凸部の部分とが対面している、ネステッドの形態が知られる。ネステッドの形態は、各シートの凸部が対面しないため、ティップトウティップの形態よりも、シート坪量を低下させずにシートの嵩(厚み)を抑さえられる。長尺化には向いているように思われるが、シート間空隙が狭くなるため吸油量が低くなる傾向にある。特に長尺化によって硬く巻かれるとシート間の空隙がつぶれやすく吸油量低下の傾向が顕著となると思われる。
【0024】
本形態のキッチンペーパーロール1は、キッチンペーパー10の嵩が高くなりやすく、長尺化が難しいティップトウティップのエンボス形態を採用し、意匠性及び吸液量における品質を十分なものとしつつ、長尺化による大径化を抑えるべくエンボス加工の凹凸形状及び巻きを工夫した。すなわち、一般的な、ティップトウティップのエンボス形態は、エンボス加工時のままのシート状態、つまり、
図2に示すように、各シート10A,10Bの凸部11A,11Bの頂部同士が対面したままで、各シートの表面には凹部13A,13Bのみが存在する形態となっているが、本形態のキッチンペーパーロール1は、
図3及び
図7(A)に示すように、各シート10A,10Bがエンボス加工時の凸部11A,11Bの頂部同士が対面して積層されているものの、巻き取り状態で紙管側に位置する巻き取り内面側のシート10Bの、巻き取り外面側のシート10Aのエンボス加工による凸部11Aに対応する部分に、巻き取り内面側シート10Bの積層外面側に凸となっている部分13b,13cが形成されている、ものとなっている。なお、積層外面側とは、シート同士が対面していない側の面側である。
【0025】
このような巻き取り内面側のシート10Bの積層外面側に凸となっている部分13b,13cを形成するには、巻取外面側のシート10A側から凸部11Bを押して、巻取内面側のシート10Bの凸部10Bを積層外面側に向かって押し出すようにすればよいが、その方法としては、例えば、
図4に示すように、エンボスロール61A,61B及び弾性ロール61A,62Aにより各シート10A,10Bにエンボス加工を行って凹凸を形成した後に、例えば、巻き取り外面側のシート10Aのエンボスロール61A上で各シート10A,10Bを積層し、そのエンボスロール61Aに弾性のマリッジロールを当てるようにし、適宜のニップ圧で両者を積層するようにすることが挙げられる。また、この際、彫刻(主に凸部の高さ)の異なる金属エンボスロールを用いるなどして、各シートに深さの異なる凹部を形成するエンボス加工を行ってもよい。また、各シートのエンボス加工時のニップ幅(ニップ圧)を異ならしめるようにしてもよい。但し、これら例示の方法に限定されない。
【0026】
本形態のキッチンペーパーロール1では、上記の特徴的な凹凸形状によって、長尺化による硬巻きにともなう意匠性に影響の大きい巻き取り外面側のクレープ紙のエンボスの潰れがなくエンボス鮮明度が確保され、さらに、巻取内面側のシート10Bの、巻取り外面側のクレープ紙10Aのエンボス加工による凹部(凸部)に対応する位置に、積層内面側にやや突出させるように凸となる部分13b,13cを構成することで、吸油量の低下を小さいものとしている。また、この表裏のエンボス加工による凹凸の形状変化によって、特に巻き取り外面のクレープ紙10Aの凹部11Aの深さがあり、巻き取り内面のクレープ紙10Bに凸部13b,13cが形成されていることによって、巻き取り時のシート10A,10Bの表裏の張力差や変形さを生じロール状に巻きやすくなっているとも考えられる。
【0027】
また、特に凸部13b,13cに関し、巻き取り内面側のシート10Bのエンボス加工時の凸部頂部に対応する部分の縁に沿って、積層外面側に額縁状に凸となっている凸縁部13cが形成されているのが望ましい。但し、凸縁部13cは必ずしも形成されていなくてもよい。また、凸部頂部に対応する部分の縁の一部のみにあってもよい。この凸縁部13cによってふき取り性が向上する。また、この凸部頂部に対応する部分の縁は、図に示されるように、エンボス加工時にシート同士が接していない部分に対応するため、係る凸縁部13cは、シート同士が密着していないか、シート間に空隙が存在している。したがって、この凸縁部13cにより吸油性の低下が小さいものとなると推測される。なお、この凸縁部13cは、巻き取り外面側のシートの凸部頂部が巻取内面側の凸部頂部を押した際に凸部頂部の縁部が歪むことによって形成されると推測される。
【0028】
巻き取り外面側のクレープ紙10Aの凹部13Aのエンボス深さ(D表)は、好ましくは、0.060~0.765mm、より好ましくは、0.102~0.493mm、特に好ましくは、0.120~0.255mmである。この範囲であれば意匠性や吸油性を確保しやすい。
【0029】
このエンボス凹部の深さは、株式会社キーエンス社製ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3200又はその相当機と、画像解析ソフトウェア「VR-H1A」又はその相当ソフトウェアにより画像解析を行ない求める。エンボス部画像の測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。但し、倍率と視野面積は、凸部の大きさによって、適宜変更することができる。
エンボス深さは線粗さ測定により求める。具体的な測定手順は、
図6を参照して説明すると、上記ソフトウェアを用いて、平面視点で示される画像部(図中X部分)中の一つの凹部13Aの周縁の最長部を横切る線分Q1における「エンボス深さ(測定曲線)プロファイルQ2」を得る。この視点で示される画像部(図中Y部分)の「エンボス深さ(測定曲線)プロファイルQ2」のうち、上に凸で最も曲がりが強くなる2つの凹部エッジ点P1,P2を抽出し、その凹部エッジ点P1,P2で挟まれる部分の深さの最小値を求め、深さ最小値Minとする。さらに、凹部エッジ点P1,P2の深さの値の平均値を深さの最大値Maxとする。そして、エンボス深さ=最大値Max-最小値Minとして算出する。ただし、「エンボス深さ(測定曲線)プロファイルQ2」は、シートのうねりを考慮して傾斜の補正を「自動補正」として補正後のプロファイル曲線とする。測定は使い始めの最外端から30%の位置での10点平均値を凹部の深さとする。なお、上記の上に凸で最も曲がりが強くなる2つの凹部エッジ点P1,P2は目視にて選択する。なお、その選択にあたっては、当該測定中の凹部13Aの平面視点の画像中の輪郭Eを参考としてもよい。
【0030】
他方で、巻き取り内面側のクレープ紙10Bに形成された積層外面側に凸となる部分の特に頂部に対応する部分13bの高さ(H裏)は、0.060μm~0.200μmであるのが好ましい。より好ましくは、0.070μm~0.200μmである。
【0031】
この凸部13bの高さも、株式会社キーエンス社製ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3200又はその相当機と、画像解析ソフトウェア「VR-H1A」又はその相当ソフトウェアにより画像解析を行ない求める。凸部13bの高さも線粗さ測定により求める。具体的な測定手順は、
図7を参照して説明すると、上記ソフトウェアを用いて、平面視点で示される画像部(
図7(A))中から直線的に隣り合う五つの凸部を抽出する。次に、
図7(B)に示すように、これらの五つの凸部を横切る線分Q3における「高低差曲線Q4」を得る。この「高低差曲線Q4」は、シートのうねりを考慮して傾斜の補正を「自動補正」として補正した補正後のプロファイル曲線とする。次に、
図7(A)に示す平面視点で示される画像部と「
図7(B)に示す「高低差曲線Q4」とから、5つの凸部(エンボス加工時の凹部)の中心位置P1~P5を目視にてそれぞれ特定し、それらP1~P5の深さ(高さ)を基準高さとして抽出する。次に、
図7(A)に示す平面視点で示される画像部と「
図7(B)に示す「高低差曲線Q4」とからP1~P5の2点間にあるエンボスが付与されていない4つの部分のそれぞれの中央部位置D1~D4を目視にてそれぞれ特定し、それらD1~D4の深さ(高さ)をそれぞれ基準深さとして抽出する。凸部P1~P5の基準高さの平均値と、エンボスが付与されていない4つの部分D1~D4の基準深さの平均値との差を、凸部の高さ(H裏)とする。なお、この凸部の高さの値が、好ましい範囲であるか否かに関係なくプラスの値となれば、巻き取り内面に凸部が形成されているといえる。
【0032】
実施の形態のキッチンペーパー10は、エンボス加工がされているものであるが、その平面視におけるエンボスパターンは必ずしも限定されるわけではない。エンボスは、適宜のエンボスパターンとすることができる。好ましいエンボスパターンの一例として、
図5に巻取外面側のシートの平面図の例を示すように、複数の凹部が配列されている略矩形のエンボスセクション40と、その間に位置する非エンボスセクション50とを有するパターンが例示できる。エンボスセクションの形状は、正方形、長方形、菱形、円形などでもよい。一つのエンボスセクション40の面積は必ずしも限定されないが、3~16cm
2が例示できる。エンボスセクション内の凹部13A,13Bの数は、10~100個程度が例示できる。非エンボスセクション50は、エンボスセクション40の間の凹部のない幅L8が3.0~10.0mmの部分とされる。
【0033】
ここで、実施形態に係るキッチンペーパー10は、1プライの坪量が15.0~23.0g/m2とされる。好ましくは16~21g/m2である。坪量は、JIS P 8124(1998)による。但し、坪量の値は、キッチンペーパー1の坪量を測定し、これを積層枚数、すなわち2枚で割った数値とする。この坪量の範囲は、キッチンペーパーとしては低坪量である。坪量が過度に厚いと、巻長さを短くせざるを得ず、反対に過度に低いと強度の低下を招き、使用時に紙の薄さを感じやすくなる。本実施形態に係るキッチンペーパー1では、既述の特徴的なエンボス加工によるシートの凹凸部の構成によって、低い坪量であっても、意匠性や吸油量において十分な品質とされる。
【0034】
実施形態に係るキッチンペーパー10は、紙厚が1.5mm/5枚~2.2mm/5枚とされる。この紙厚は、巻き終わりから最初の1カットを除いて、次の5カット分を重ねて測定する。5枚重ね(10プライ重ね)での紙厚は、測定時におけるエンボス加工による凹凸の潰れの影響が小さい。5枚での紙厚が、但し、紙厚が過度に厚いと、巻長さを短くせざるを得ず、反対に過度に低いと強度の低下を招き、使用時に紙の薄さを感じやすくなる。紙厚の測定は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定する。紙厚は各プライを剥がすことなく測定する。測定の具体的な手順は、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この厚みの測定時の荷重は、120μmの際に約70gfである。なお、厚みは測定を10回行って得られる平均値とする。なお、実施の形態においてキッチンペーパー1枚当たりの紙厚の値を用いる場合、例えば、ロール密度の算出等における値は、5枚重ねの値を5で除した値とする。
【0035】
実施形態に係るキッチンペーパー10は、既述の構成、特にエンボスの特徴により、下記式(1)による吸油性能の値(吸油性能値)が33.0~43.0と高い数値が達成される。式(1)・・・[吸油性能の値(吸油性能値)]=吸油量[g/m2]×[ロール密度]/米坪1プライ(g/m2)。ロール密度=(2プライの紙厚×巻長さ)/((巻径の半径)2×π-(紙管径の半径)2×π)で算出される。
すなわち、ロール密度が高いと硬く巻かれてエンボス加工による凹凸が潰れやすくなり吸油量は低下する。他方で、米坪を低下させて紙厚を下げて、巻密度を改善さるようにしても低坪量化によって吸油量が低下すると考えられる。したがって、これらの点を考慮して、上記の[吸油性能の値(吸油性能値)]の値の範囲であるとキッチンペーパーロール全体として吸油性能が高いものといえる。市販品、従来品との比較は後述する。
【0036】
実施形態のキッチンペーパーロール1のロール密度は、限定されないが、1.20以下、好ましくは0.95~1.19であるのが望ましい。ロール密度が過度に高いと、既述のとおりエンボスがつぶれやすい。ダブルエンボスでは特に影響されやすい。
【0037】
実施形態の吸油量の測定は下記(1)~(5)のとおりである。
(1)試験片を105℃の乾燥機内で3分間キュアリングした後、その試験片の質量を電子天秤(A&D HR300等)により測定する。試験片の大きさは100mm×100mmである。
(2)試験片よりも大きいトレイ(例えば、内寸:215mm×160mm)に、20mm程度の深さとなるように、25℃のサラダ油(日清サラダ油:日清オイリオグループ株式会社製)を入れる。
(3)試験片を、試験片以上の大きさの剛性のある平網(例えば、120mm×120mm、網目30mm)の上に拡げて載せ、前記サラダ油を入れたトレイ内におろして、油面に接触するように試験片を浸油させる。
(4)試験片の表面にまで十分にサラダ油が浸みこんだら、平網を油面より真上に上げ、そのまま26~27秒静止した後、ピンセットにより試験片の角を摘み、予め秤量された測定容器に試験片を移す。このとき、平網を油面より上げて静止を開始してから測定容器に移すまで30秒を超えないようにする。
(5)試験片が入った測定容器の質量を電子天秤により測定し、その測定値より測定容器の質量を差し引いて、吸油後の試験片の質量を算出する。そして、下記式により1m2当たりの吸油量を算出する。
吸油量(g/m2)=((上記(4)で測定した吸油した試験片の質量)-(上記(1)で測定した3分間キュアリング後の試験片の質量))×100(注:試験片1枚100cm2の100倍)
【0038】
実施形態のキッチンペーパー10の引張強度は、必ずしも限定されないが、縦方向の引張強度は、650~1350cN/25mmが好ましく、780~1220cN/25mmがより好ましく、横方向の引張強度は、250~550cN/25mmが好ましく、320~480cN/25mmがより好ましい。なお、引張強度は、乾燥時の引張強度(乾燥引張強度)を示す。引張強度が、この範囲であれば使用時に必要な強度といえる。
なお、引張強度は、JIS P 8113:2006に準拠し、紙の幅を25mmとした試験片で測定する。
【0039】
実施の形態のクレープ紙10A,10Bの繊維材料は、パルプ繊維であり、パルプ組成は、キッチンペーパー1における既知の組成が採用できる。バージンパルプを90~100質量%を含むのがよい。本発明特有の効果が顕著となるパルプ組成は、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)やNUKP(針葉樹未晒しパルプ)などの針葉樹パルプと、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)やLUKP(広葉樹未晒しパルプ)などの広葉樹パルプと、を適宜の比率で配合したものである。針葉樹パルプを広葉樹パルプに比してより多い組成のパルプ組成であるのがよい。特に、針葉樹パルプ:広葉樹パルプの比が50:50~80:20であるのがよい。針葉樹パルプは、広葉樹パルプに比して、繊維長が長いため、針葉樹パルプを多く含むパルプ組成では、針葉樹パルプの長いパルプ繊維に沿って液体が拡散しやすく、本発明の効果が特に発現しやすい。また、しっかりとしたコシが発現しやすくなるため、特に液体を拭き取ったり吸収したりする用途に用いられるキッチンペーパーの使用態様に適する。
【0040】
以下、キッチンペーパーロール1の実施例、比較例を参照しながらさらに本発明に係るキッチンペーパーロールの効果について説明する。
【実施例0041】
また、各例に係るトイレットペーパーは、キッチンペーパーから引き出したものとした。各例に係る物性・組成の値は、表1のとおりである。
なお、表1中において、凸部の高さ(凹部の深さ(巻取内面))の欄は、実施例については、巻き取り内面側において積層外面に凸となっている部分の高さであり、比較例については、巻き取り外面の凹部の深さと同様にして測定した凹部の深さの値となっている。
【0042】
また、実施例2と比較例4について、巻き取り外面側のシートのエンボスの鮮明度に関して、官能評価試験で対比を行った。試験は17名で行い、評価点のうち最高点、最低点を除く15名の点数の平均値を評価点とした。評価は、比較例4を基準として、実施例2を評価する方法で行った。すなわち、比較例4と同等を4点として、やや良い5点、良い6点、とても良い7点、やや劣る3点、劣る2点、とても劣る1点、として点数付けを行ない、その平均値を算出して判断することとした。
【0043】
【0044】
表1の結果によると、実施例は、坪量のより高いネステッドの比較例1、比較例2、比較例5、比較例6よりも吸油量が多い傾向がみられる。ネステッドでは、巻長さが21m程度、エンボスの凹部を深い比較例1で26m超の実施例1と同程度となっている。ネステッドでは、十分な長尺化と吸油量を得るのが難しい傾向がみられている。
また、実施例は、巻き取り外面側のエンボス凹部の深さが深く、巻き取り内面側に凸となる部分が形成されているが、比較例3を除く巻取長さの長い比較例よりも吸油量が高くなっている。ロール密度の低い、短尺の比較例3と同程度である。
ここで、吸油性能値を見てみると、比較例2は、高坪量で巻長さが長いがネステッドであるためロール全体としてみると吸油性能は低いといえる。比較例3は、高坪量でティップトウティップであるが巻長さが短いためロール全体としてみると吸油性能が低い。
また、実施例と比較例4を比較すると、比較例4のほうが、吸油量が低い。ティップトウティップであっても、単に低坪量として巻長さを長くすると吸油量が低下すると考えられる。また、ロール全体の吸油性能が十分に高まらない。エンボスの潰れやエンボス形状の崩れもあるが、エンボスによる凹部以外の部分の紙層間が近くなっていること、つまりシート間の空隙の潰れも要因と考えられる。
また、表層のエンボスの鮮明度(意匠性)に関する結果は、実施例2の点数が4.7点となり、比較例4を上回った。凹部の深さは比較例4のほうが深いが、エンボスが鮮明は実施例2のほうが良好との結果となった。
以上の実施形態に示されるように、本発明の構成によって、匠性及び吸液量における品質が十分で、長尺化による大径化を抑えエンボス加工による凹凸を有するキッチンペーパーロールを提供することができる。
1…キッチンペーパーロール、10…キッチンペーパー、10A,10B…クレープ紙、12…ミシン目、20…紙管(管芯)、L2…キッチンペーパーロールの巻径(直径)、L3…トイレットロールの管芯の直径、L1…キッチンペーパーロールの幅、L4…カットピッチ、10C…接着糊、L6…D表、L7…D裏
40…エンボスセクション、50…非エンボスセクション、
11A,11B…凸部、13A,13B…凹部、L8…非エンボスセクションの幅。