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特開2024-52111電動サスペンション装置及び電動サスペンションの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052111
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】電動サスペンション装置及び電動サスペンションの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/015 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B60G17/015 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158593
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】大野 智史
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA04
3D301AA05
3D301AA59
3D301AA62
3D301CA01
3D301DA35
3D301EA04
3D301EA08
3D301EA19
3D301EA31
3D301EA34
3D301EC01
3D301EC06
3D301EC50
(57)【要約】
【課題】システム構成を簡略化又は省略しつつ、電動アクチュエータの位置の測定精度を向上させることができる電動サスペンション装置を提供すること。
【解決手段】車両に搭載される電動サスペンション装置は、車両の挙動に応じてストローク動作する電動アクチュエータと、電動アクチュエータを駆動させるモータと、モータの回転角を検出する回転角センサと、電動アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、制御装置は、回転角センサの回転角変化量に基づいて電動アクチュエータのストローク量を算出し、算出したストローク量に基づいて電動アクチュエータを制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電動サスペンション装置であって、
前記車両の挙動に応じてストローク動作する電動アクチュエータと、
前記電動アクチュエータを駆動させるモータと、
前記モータの回転角を検出する回転角センサと、
前記電動アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記回転角センサの回転角変化量に基づいて前記電動アクチュエータのストローク量を算出し、算出したストローク量に基づいて前記電動アクチュエータを制御する、電動サスペンション装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記電動サスペンション装置の起動時における前記電動アクチュエータのストローク量を、固定の初期値に設定する、請求項1に記載の電動サスペンション装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記電動サスペンション装置の起動時における前記電動アクチュエータのストローク量を、前記電動サスペンション装置の前回終了時の値に設定する、請求項1に記載の電動サスペンション装置。
【請求項4】
前記車両の振動を検出する振動検出センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記振動検出センサの検出結果に基づいて前記車両の振動がないと判断した場合に、前記電動アクチュエータのストローク量を、固定値に設定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電動サスペンション装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記振動検出センサの検出結果に基づいて、所定回数又は所定時間に亘って前記車両の振動がないと判断した場合に、前記電動アクチュエータのストローク量を、固定値に設定する、請求項4に記載の電動サスペンション装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記算出したストローク量が所定の上限値を超えた又は所定の下限値を下回った場合に、前記電動アクチュエータの制御を停止する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電動サスペンション装置。
【請求項7】
前記電動アクチュエータは、前記車両の複数の前記車輪にそれぞれ設けられ、
前記制御装置は、複数の前記電動アクチュエータのうち、1つの前記車輪に対応する前記電動アクチュエータのストローク量が前記所定の上限値を超えた又は前記所定の下限値を下回った場合に、当該車輪に隣接する前記車輪又は全ての前記車輪に対応する前記電動アクチュエータの制御を停止する、請求項6に記載の電動サスペンション装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記電動アクチュエータのストローク量が前記所定の上限値を超えた又は前記所定の下限値を下回った場合に、車速を制限する信号を出力する、請求項6に記載の電動サスペンション装置。
【請求項9】
車両に搭載されて前記車両の挙動に応じてストローク動作する電動アクチュエータを備える電動サスペンションの制御方法であって、
前記電動アクチュエータを駆動させるモータの回転角を検出する回転角センサの回転角変化量に基づいて前記電動アクチュエータのストローク量を算出し、算出したストローク量に基づいて前記電動アクチュエータを制御する、電動サスペンションの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動サスペンション装置及び電動サスペンションの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも高齢者や障がい者や子供といった脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて、車両の挙動安定性に関する開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
車両の挙動安定性の観点では、車両に搭載されるサスペンション装置の動作精度を向上させることが望まれる。特許文献1には、車両の各車輪に対応して設けられるアクチュエータの位置(ストローク位置、相対位置、絶対位置)を検出し、その位置の変化に基づいてアクチュエータの逆ぶりの異常を判定するサスペンションの制御技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6480202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の挙動安定性の向上を図る上では、電動サスペンションのアクチュエータの位置を検出するに当たり、システム構成を簡略化しつつ、測定精度を向上させることが求められる。
【0006】
本発明は、システム構成を簡略化又は省略しつつ、電動アクチュエータの位置の測定精度を向上させることができる電動サスペンション装置及び電動サスペンションの制御方法を提供することを目的とする。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る電動サスペンション装置は、車両(例えば、後述の車両1)に搭載される電動サスペンション装置(例えば、後述の電動サスペンション装置10)であって、前記車両の挙動に応じてストローク動作する電動アクチュエータ(例えば、後述の電動アクチュエータ12)と、前記電動アクチュエータを駆動させるモータ(例えば、後述のモータ13)と、前記モータの回転角を検出する回転角センサ(例えば、後述のレゾルバS1)と、前記電動アクチュエータを制御する制御装置(例えば、後述の制御装置20)と、を備え、前記制御装置は、前記回転角センサの回転角変化量に基づいて前記電動アクチュエータのストローク量を算出し、算出したストローク量に基づいて前記電動アクチュエータを制御する。
【0008】
(2) 上記(1)に記載の電動サスペンション装置において、前記制御装置は、前記電動サスペンション装置の起動時における前記電動アクチュエータのストローク量を、固定の初期値に設定してもよい。
【0009】
(3) 上記(1)に記載の電動サスペンション装置において、前記制御装置は、前記電動サスペンション装置の起動時における前記電動アクチュエータのストローク量を、前記電動サスペンション装置の前回終了時の値に設定してもよい。
【0010】
(4) 上記(1)~(3)のいずれかに記載の電動サスペンション装置において、前記車両の振動を検出する振動検出センサ(例えば、後述のレゾルバS1、ばね上GセンサS2、車体ロールレートセンサS3、車体ピッチレートセンサS4、及び車速センサS5)をさらに備え、前記制御装置は、前記振動検出センサの検出結果に基づいて前記車両の振動がないと判断した場合に、前記電動アクチュエータのストローク量を、固定値に設定してもよい。
【0011】
(5) 上記(4)に記載の電動サスペンション装置において、前記制御装置は、前記振動検出センサの検出結果に基づいて、所定回数又は所定時間に亘って前記車両の振動がないと判断した場合に、前記電動アクチュエータのストローク量を、固定値に設定してもよい。
【0012】
(6) 上記(1)~(5)のいずれかに記載の電動サスペンション装置において、前記制御装置は、前記算出したストローク量が所定の上限値(例えば、後述の上限閾値XHi)を超えた又は所定の下限値(例えば、後述の下限閾値XLo)を下回った場合に、前記電動アクチュエータの制御を停止してもよい。
【0013】
(7) 上記(6)に記載の電動サスペンション装置において、前記電動アクチュエータは、前記車両の複数の前記車輪にそれぞれ設けられ、前記制御装置は、複数の前記電動アクチュエータのうち、1つの前記車輪に対応する前記電動アクチュエータのストローク量が前記所定の上限値を超えた又は前記所定の下限値を下回った場合に、当該車輪に隣接する前記車輪又は全ての前記車輪に対応する前記電動アクチュエータの制御を停止してもよい。
【0014】
(8) 上記(6)又は(7)に記載の電動サスペンション装置において、前記制御装置は、前記電動アクチュエータのストローク量が前記所定の上限値を超えた又は前記所定の下限値を下回った場合に、車速を制限する信号を出力してもよい。
【0015】
(9) 本発明に係る電動サスペンションの制御方法は、車両(例えば、後述の車両1)に搭載されて前記車両の挙動に応じてストローク動作する電動アクチュエータ(例えば、後述の電動アクチュエータ12)を備える電動サスペンションの制御方法であって、前記電動アクチュエータを駆動させるモータ(例えば、後述のモータ13)の回転角を検出する回転角センサ(例えば、後述のレゾルバS1)の回転角変化量に基づいて前記電動アクチュエータのストローク量を算出し、算出したストローク量に基づいて前記電動アクチュエータを制御する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、システム構成を簡略化又は省略しつつ、電動アクチュエータの位置の測定精度を向上させることができる電動サスペンション装置及び電動サスペンションの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る電動サスペンション装置を搭載した車両の構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る電動サスペンション装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る電動サスペンション装置のインバータの構成の一例を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る電動サスペンション装置における電動サスペンションの制御の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係る電動サスペンション装置における電動サスペンションの中点学習処理の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る電動サスペンション装置における電動サスペンションの異常判定処理の一例を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係る電動サスペンション装置におけるレゾルバ電気角の変化量を説明する図である。
図8】本発明の実施形態に係る電動サスペンション装置における電動サスペンションのストローク量の算出処理の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電動サスペンション装置10を搭載した車両1の構成図である。図2は、電動サスペンション装置10の構成を示す図である。本実施形態の車両1はガソリン車を示すが、ディーゼル車又は電気自動車(ハイブリッド車及び燃料電池車を含む。)であってもよい。
【0019】
図1に示すように、車両1は、車体BDと、4本の車輪TRと、電動サスペンション装置10と、を備える。電動サスペンション装置10は、電動アクチュエータ12と、モータ13と、制御装置20と、を含む。これらの電動アクチュエータ12、モータ13、及び制御装置20は、電動サスペンションを構成する。
【0020】
電動アクチュエータ12は、4つの車輪TRに対応する第1電動アクチュエータ12A、第2電動アクチュエータ12B、第3電動アクチュエータ12C、及び第4電動アクチュエータ12Dで構成される。第1電動アクチュエータ12Aは、車体BDと右側前輪との間に配置される。第2電動アクチュエータ12Bは、車体BDと左側前輪との間に配置される。第3電動アクチュエータ12Cは、車体BDと右側後輪との間に配置される。第4電動アクチュエータ12Dは、車体BDと左側後輪との間に配置される。
【0021】
第1電動アクチュエータ12A~第4電動アクチュエータ12Dの各々は、略同一の構成を有する。そのため、以下では、第1電動アクチュエータ12A~第4電動アクチュエータ12Dについて、各々を区別しない場合には、単に電動アクチュエータ12と記載する場合がある。
【0022】
次に、図2を参照して電動アクチュエータ12の構成について説明する。図2に示すように、電動アクチュエータ12は、連結部121、内筒122及びボールねじナット123を、車輪TR側の部材として備える。また、電動アクチュエータ12は、外筒124、ボールねじ軸125、及び軸受126を、車体BD側の部材として備える。モータ13は、電動アクチュエータ12における車体BD側の部材と同様に車体BD側に配置される。外筒124及び軸受126は、車体BDの下部に配置されたシャーシ11に固定される。
【0023】
ボールねじ軸125は、軸受126及びボールねじナット123によって支持される。ボールねじナット123の内面は、ボールねじ軸125の外面に形成されたねじ溝に対して、ベアリングを介して螺合する。ボールねじ軸125は、モータ13の回転軸に同軸状に連結される。モータ13は、ボールねじ軸125を回動させることによって、ボールねじナット123を上下方向に移動させる。ボールねじナット123が下向きに移動することによって、内筒122が下向きに移動する。ボールねじナット123が上向きに移動することによって、内筒122が上向きに移動する。このようにして、車体BDのシャーシ11に固定された外筒124に対する内筒122の上下方向のストローク量(ストローク位置)が調整される。
【0024】
連結部121は、サスペンション装置のナックル(図示せず)に固定されることで、車輪TRに連結される。電動アクチュエータ12は、車両1の走行時の車輪TRの挙動に応じてストローク動作する。すなわち、車両1の走行時、車輪TR側から連結部121に対して振動が入力されると、連結部121に加速度が加わる。連結部121に上向きの加速度が加わると、内筒122及びボールねじナット123は上昇する。また、連結部121に下向きの加速度が加わると、内筒122及びボールねじナット123は下降する。電動アクチュエータ12の内筒122及びボールねじナット123が上昇又は下降すると、これに伴って、モータ13が、上向きの加速度を吸収する方向(電動アクチュエータ12を圧縮する方向)又は下向きの加速度を吸収する方向(電動アクチュエータ12を引張する方向)にボールねじ軸125を回転させる。これによって、車輪TRから車体BDへ伝達される振動が減衰される。
【0025】
電動アクチュエータ12には、レゾルバS1が配置される。レゾルバS1は、電動アクチュエータ12のモータ13の回転角(電気角)を検出する回転角センサの一例である。なお、電動アクチュエータ12のモータ13の回転角の検出は、レゾルバS1に限定されず、例えばロータリーエンコーダ等の他の回転角センサを用いてもよい。このような回転角センサは、三相交流ブラシレス式のモータの場合には一般に搭載されているものである。
【0026】
図1及び図2に示すように、車体BDには、車体BDのばね上の加速度を検出するばね上GセンサS2、車体BDの前後方向を回転軸とした角速度を検出する車体ロールレートセンサS3、車体BDの左右方向を回転軸とした角速度を検出する車体ピッチレートセンサS4、及び車速を検出する車速センサS5がそれぞれ設けられる。ばね上GセンサS2は、第1電動アクチュエータ12Aに対応する第1ばね上GセンサS2A、第2電動アクチュエータ12Bに対応する第2ばね上GセンサS2B、第3電動アクチュエータ12Cに対応する第3ばね上GセンサS2C、及び第4電動アクチュエータ12Dに対応する第4ばね上GセンサS2Dによって構成される。レゾルバS1、ばね上GセンサS2、車体ロールレートセンサS3、車体ピッチレートセンサS4、及び車速センサS5の各検出値は、制御装置20に入力される。これらのレゾルバS1、ばね上GセンサS2、車体ロールレートセンサS3、車体ピッチレートセンサS4、及び車速センサS5は、いずれも車両1の振動を検出する振動検出センサとしても機能するため、本実施形態において、車両1の振動を検出する振動検出センサに対応する。
【0027】
制御装置20は、ECU(Electronic Control Unit)によって構成され、第1電動アクチュエータ12A~第4電動アクチュエータ12Dの各々のモータ13を制御する。制御装置20は、第1電動アクチュエータ12A~第4電動アクチュエータ12Dの各々のモータ13と配線を介して電気的に接続される。第1電動アクチュエータ12A~第4電動アクチュエータ12Dの各モータ13及び制御装置20には、それぞれバッテリ30から所定の電力が供給される。制御装置20は、レゾルバS1、ばね上GセンサS2、車体ロールレートセンサS3、車体ピッチレートセンサS4、及び車速センサS5の検出結果に基づいて、インバータ15を介して、第1電動アクチュエータ12A~第4電動アクチュエータ12Dの各モータ13を制御する。
【0028】
図2に示すように、制御装置20は、メモリ20A及びプロセッサ20Bを備え、インバータ31を介して、電動アクチュエータ12のモータ13を制御する。メモリ20Aは、プロセッサ20Bが実行するプログラムやデータを不揮発的に記憶する記憶装置である。メモリ20Aは、磁気的記憶装置、フラッシュROM(Read Only Memory)等の半導体記憶素子、あるいはその他の種類の不揮発性記憶装置により構成される。メモリ20Aは、プロセッサ20Bのワークエリアを構成するRAM(Random Access Memory)を含んでもよい。メモリ20Aは、制御装置20により処理されるデータや、プロセッサ20Bが実行する制御プログラムを記憶する。プロセッサ20Bは、単一のプロセッサで構成されてもよいし、複数のプロセッサによってプロセッサ20Bの機能を構成するものであってもよい。プロセッサ20Bは、制御プログラムを実行して電動サスペンション装置10の各部を制御する。但し、制御プログラムは、図示しない外付けのHDD等に記憶され、そこから読み出されるように構成されてもよい。
【0029】
制御装置20は、ストローク量算出部21、中点学習部22、異常判定部23、及び出力制御部24を含む。具体的には、制御装置20のプロセッサ20Bが制御プログラムを実行することによって、制御装置20は、ストローク量算出部21、中点学習部22、異常判定部23、及び出力制御部24の各機能を実行する。
【0030】
ストローク量算出部21は、レゾルバS1から入力される電動アクチュエータ12のモータ13の回転角(電気角)の検出値に基づいて、車両1の挙動に応じてストロークする電動アクチュエータ12のストローク量を算出する。このストローク量は電動アクチュエータ12のストローク位置でもある。モータ13の回転軸はボールねじ軸125に同軸状に連結されるため、電動アクチュエータ12のストローク量は、内筒122及びボールねじナット123の上下動作に伴って回転するボールねじ軸125の回転量でもある。
【0031】
中点学習部22は、車速=0km/hのとき、すなわち車両1の静止状態における電動アクチュエータ12のストローク位置を求める。中点とは、車両1の静止状態において電動アクチュエータ12のストローク動作が停止しているときのストローク位置である。制御装置20は、車速センサS5の検出値から車速=0km/hとなった場合に、レゾルバS1、ばね上GセンサS2、車体ロールレートセンサS3、及び車体ピッチレートセンサS4から入力される各検出値に基づいて車両1の振動の有無を判断する。制御装置20は、車両1が静止状態であることを検出した場合に、そのときの電動アクチュエータ12のストローク位置を中点とする。ストローク動作停止時の電動アクチュエータ12のストローク位置は、サスペンションスプリングの作用によって中点付近まで戻って停止する。この中点は、乗員数、積載荷物量等に応じて変化し得る。
【0032】
異常判定部23は、ストローク量算出部21によって算出された電動アクチュエータ12のストローク量が所定の上限値(上限閾値)を超えたかどうか又は所定の下限値(下限閾値)を下回ったかどうか、すなわち、ストローク量が所定の上限値(上限閾値)を超えて引張側にストロークしているか、所定の下限値(下限閾値)を下回って圧縮側にストロークしているか、を判断する。
【0033】
出力制御部24は、異常判定部23の判定結果に応じて、電動アクチュエータ12への出力制御を行い、電動アクチュエータ12の動作を含む車両1の動作を制御する。具体的には、制御装置20は、異常判定部23において、電動アクチュエータ12のストローク量が所定の上限値(上限閾値)を超えた又は所定の下限値(下限閾値)を下回ったと判定された場合に、出力制御部24によって、電動アクチュエータ12の動作を停止するための制御、及び車速を制限するための制御等を行う。
【0034】
制御装置20は、駆動回路14を介して、インバータ15、短絡回路16、及び昇圧回路17を制御する。制御装置20は、電動アクチュエータ12のモータ13の動作を停止する際、駆動回路14及び短絡回路16を介して、モータ13の三相線を短絡させて電磁ブレーキを作用させることによって電動アクチュエータ12のモータ13の動作を停止させる。
【0035】
図2及び図3に示すように、制御装置20は、駆動回路14を介して、インバータ15を制御する。制御装置20は、インバータ15を介して、モータ13の回転方向及び回転速度を制御する。また、制御装置20は、例えば、インバータ15をオフ固定することによって、モータ13への電力の供給を停止させる。インバータ15や昇圧回路17の電源線にリレーを設けることで、制御装置20は、リレーを遮断してモータ13への電力供給を停止してもよい。
【0036】
図3は、インバータ15の構成の一例を示す図である。バッテリ30とインバータ15との間には、昇圧回路17が配置される。昇圧回路17は、バッテリ30から供給される電圧を昇圧して、インバータ15に電力を供給する。
【0037】
図3に示すように、インバータ15(駆動素子の一部)は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)15U1、MOSFET15U2、MOSFET15V1、MOSFET15V2、MOSFET15W1、及びMOSFET15W2を備える。これら6つのMOSFETの各々は、制御装置20からの指示に基づいてオンオフする。
【0038】
モータ13は、例えば、三相交流ブラシレス式であり、図3に示すように、3つのモータコイル13u、モータコイル13v、及びモータコイル13wを備える。モータ13は、バッテリ30からインバータ15を介して供給される電力によって、図2に示すボールねじ軸125を回転駆動する。
【0039】
駆動回路14は、制御装置20の出力制御部24から、モータ13への電力供給停止の指示を受けた場合に、例えば、プラス側の3つのMOSFET、すなわち、MOSFET15U1、MOSFET15V1、及びMOSFET15W1をオフ固定する。MOSFET15U1、MOSFET15V1、及びMOSFET15W1をオフ固定することによって、電力線40u、電力線40v、及び電力線40wが昇圧回路17から開放される。その結果、モータ13のモータコイル13u、モータコイル13v、及びモータコイル13wに対する電圧の印加が停止される。
【0040】
また、制御装置20は、短絡回路16を介して、モータ13を短絡させる。短絡回路16は、制御装置20からの指示に従ってオンオフするスイッチ(図示せず)と、抵抗器(図示せず)と、を備える。短絡回路16のスイッチは、出力制御部24からの指示に従って、例えばモータコイル13u、及びモータコイル13vの各々に対応する電力線40uと電力線40vとを短絡する。短絡回路16の抵抗器は、上記の場合、電力線40uと電力線40vとをスイッチが短絡した場合に、モータコイル127u、及びモータコイル13vに流れる電流を調整する。同様にして、電力線40vと、電力線40wについても短絡させることにより、モータコイル13u,13v,13wに対して三相短絡状態を実現できる。
【0041】
以下、上述のように構成された電動サスペンション装置10による異常判定のための電動サスペンションの制御方法について説明する。図4は、本実施形態に係る電動サスペンション装置10における電動サスペンションの制御の一例を示すフローチャートである。以下の処理は、電動サスペンション装置10の4つの第1電動アクチュエータ12A~第4電動アクチュエータ12Dの各モータ13に対して実行されるが、ここでは説明の簡略化のため、1つの電動アクチュエータ12のモータ13に対する処理として説明する。
【0042】
まず、制御装置20は、ステップS101において、車両1のイグニッションON後に電動サスペンション装置10のシステム起動時であるかどうかを判断する。システム起動時であると判定された場合(ステップS101:YES)、処理はステップS102に移行し、制御装置20は、ストローク量算出部21において、電動アクチュエータ12の起動時のストローク量(積算ストローク位置X)を固定の初期値に設定する。ここでは、積算ストローク位置X=0に設定されているが、固定の初期値は0以外の任意の値であってもよい。このようにシステム起動時のストローク量を固定の初期値に設定することによって、制御装置20は、ストローク量算出部21においてストローク量を算出する際に前回最終値を引き継ぐことがないため、算出制御を簡素化できる。
【0043】
次に、制御装置20は、ステップS103において、電動アクチュエータ12のモータ13に配置されるレゾルバS1からモータ13の回転角(電気角)の検出値を取得する。取得された検出値は、今回値θとして制御装置20に設定される。
【0044】
次に、制御装置20は、ステップS104において、中点学習部22において中点学習処理を実行する。この中点学習処理のフローチャートを図5に示す。
【0045】
中点学習処理において、制御装置20は、まず、ステップS201において、車速センサS5から入力される検出値から車速が0km/hであるかどうか、すなわち、車両1が停止しているかどうかを判断する。車両1が停止していると判定された場合(ステップS201:YES)、処理はステップS202に移行する。
【0046】
ステップS202において、制御装置20は、ばね上GセンサS2から入力される検出値がゼロ近傍であるかどうかによって、車両1に振動の入力があるかどうかを判断する。検出値がゼロ近傍であることによって車両1に振動の入力がないと判定された場合(ステップS202:YES)、処理はステップS203に移行する。
【0047】
ステップS203において、制御装置20は、車体ロールレートセンサS3から入力される検出値がゼロ近傍であるかどうかによって、さらに車両1に振動の入力があるかどうかを判断する。検出値がゼロ近傍であることによって車両1に振動の入力がないと判定された場合(ステップS203:YES)、処理はステップS204に移行する。
【0048】
ステップS204において、制御装置20は、車体ピッチレートセンサS4から入力される検出値がゼロ近傍であるかどうかによって、さらに車両1に振動の入力があるかどうかを判断する。検出値がゼロ近傍であることによって車両1に振動の入力がないと判定された場合(ステップS204:YES)、処理はステップS205に移行する。
【0049】
ステップS205において、制御装置20は、レゾルバS1から入力される回転角(電気角)の差分Δθがゼロ近傍であるかどうか、すなわち、モータ13が正逆方向のいずれにも回転していないことを検出することによって、さらに車両1に振動の入力があるかどうかを判断する。差分Δθがゼロ近傍であることによって車両1に振動の入力がないと判定された場合(ステップS205:YES)、処理はステップS206に移行する。
【0050】
ステップS206において、制御装置20は、車両1の振動がないと判断し、中点学習処理を実行して、電動アクチュエータ12の起動時のストローク量(積算ストローク位置X)を中点に設定する。ここでは、図4に示すステップS102で設定されたX=0が中点に設定される。システム起動時、すなわちイグニッションON時の車両1には、さまざまな乗員数及び積載荷物量が想定されるため、制御装置20は、これらの乗員数及び積載荷物量の状況変化に対応した電動アクチュエータ12の正確なストローク量を算出することができる。
【0051】
ステップS201において車両1が停止時以外であると判定された場合、及びステップS202,S203,S204,S205において車両に振動の入力があると判定された場合(ステップS202~S205:NO)、処理はステップS207に移行する。ステップS207において、制御装置20は、中点学習部22における中点学習処理を終了させ、処理を次の異常判定処理のステップに移行させる。
【0052】
なお、以上の各センサS2~S4の検出値がゼロ近傍であるかどうかを判断する閾値は、一般に電動アクチュエータ12が動作していないと見なせる範囲に定められる。センサノイズ程度の値はゼロ近傍と見なすことができる。車両1の振動の入力の有無は、以上の各センサS1~S5のうちの少なくとも1つの検出値から判断してもよい。車両1の振動の入力の有無は、以上の各センサS1~S5の全ての検出値から判断しなくてもよく、車両1に搭載されるセンサの種類に応じて適宜設定されればよい。
【0053】
車両1に振動の入力がない場合(ステップS201~S205:YES)には、1回で中点学習処理を実行せずに、中点学習可能な判定時間を制御装置20内のタイマでカウントしている間にステップS201~S205の処理を繰り返し、そのカウント値が予め設定される所定時間継続しても車両1に振動の入力がないと判定した場合に中点学習処理を実行し、中点を図4に示すステップS102で設定された固定値(例えば0)に設定するようにしてもよい。これによれば、頻繁に中点が設定されることが抑制され、制御の簡素化が図られる。制御装置20は、タイマで所定時間をカウントすることに代えて、車両1に振動の入力がないと判断される回数が予め設定される所定回数継続しても車両1に振動の入力がないと判定した場合に中点学習処理を実行し、中点を図4に示すステップS102で設定された固定値(例えば0)に設定するようにしても、上記同様に制御の簡素化が図られる。
【0054】
図4に戻り、ステップS104における中点学習処理の後、処理はステップS105の異常判定処理に移行し、制御装置20は、車両1の走行時に異常判定部23において電動アクチュエータ12の異常判定を行う。この異常判定処理のフローチャートを図6に示す。
【0055】
異常判定処理において、まず、制御装置20は、ステップS301において、レゾルバS1の検出値から算出される電動アクチュエータ12の中点からのストローク量(ストローク位置X)が予め設定された上限閾値XHiを超えたかどうかを判断する。ストローク量(ストローク位置X)が上限閾値XHiを超えていないと判定された場合(ステップS301:NO)、ストローク量の引張側の過剰はないと判断され、処理はステップS302に移行する。
【0056】
ステップS302において、制御装置20は、レゾルバS1の検出値から算出される電動アクチュエータ12の中点からのストローク量(ストローク位置X)が予め設定された下限閾値XLoを下回ったかどうかを判断する。ストローク量(ストローク位置X)が下限閾値XLoを下回っていないと判定された場合(ステップS302:NO)、ストローク量の圧縮側の過剰はないと判断され、処理はステップS303に移行する。
【0057】
ステップS303では、制御装置20は、電動アクチュエータ12のストローク量(ストローク位置)の異常判定なしを決定し、続くステップS304において、制御装置20は、モータ13の制御有効を決定する。そのため、電動アクチュエータ12の動作制御は継続される。
【0058】
一方、ステップS301において、中点からのストローク量(ストローク位置X)は上限閾値XHiを超え、ストローク量の引張側の過剰があると判定された場合(ステップS301:YES)、及びステップS302において、中点からのストローク量(ストローク位置X)は下限閾値XLoを下回り、ストローク量の圧縮側の過剰があると判定された場合(ステップS302:YES)、処理はステップS305に移行する。
【0059】
ステップS305において、制御装置20は、電動アクチュエータ12のストローク量に異常があると判断し、続くステップS306において、制御装置20は、モータ13の制御停止を決定する。その後、ステップS307では、制御装置20は、出力制御部24において、駆動回路14及びインバータ15を介して短絡回路16を制御し、モータ三相線の短絡リレー処理を実行してモータ13を強制的に停止させる。モータ13の停止時は、例えば車両1内の計器盤等に警告表示(警告音を含む。)される。これによって、電動アクチュエータ12の誤作動が防止される。但し、電動アクチュエータ12に物理故障が発生した場合において、発生している故障の程度を制御装置20が診断できた際には、故障の程度に応じて、必要最低限の範囲内で電動アクチュエータ12を使用する構成としてもよい。
【0060】
なお、モータ制御の停止処理は、車両1がイグニッションOFFとなるまで継続される。この間、車両1内の計器盤等には継続して警告表示(警告音を含む。)される。また、車両1のイグニッションOFF後に再度イグニッションONとなった場合でも、警告表示(警告音を含む。)を継続してもよい。
【0061】
電動アクチュエータ12のストローク量(ストローク位置X)の上限閾値XHi及び下限閾値XLoは、電動アクチュエータ12のストローク量の上限及び下限の設計値を基準とし、必要に応じて安全率を加味して設定することができる。上限閾値XHi及び下限閾値XLoは、中点に対して引張側及び圧縮側で同一ストローク量に設定されるものに限らず、互いに異なるストローク量に設定されてもよい。
【0062】
制御装置20は、異常判定部23において、4つの第1電動アクチュエータ12A~第4電動アクチュエータ12Dのうちのいずれか1つのストローク量(ストローク位置X)について、上限閾値XHiを超えた又は下限閾値XLoを下回ったと判定した場合、その1つの電動アクチュエータ12に対応する車輪TRの左右又は前後に隣接する他の車輪TRに対応する電動アクチュエータ12についても、モータ13の制御を停止させるようにしてもよい。異常判定された電動アクチュエータ12とは別の電動アクチュエータ12についても同様の異常(故障)が発生している可能性が高いと判断されるためである。これによって、4つの車輪TRのうちの一輪のみに対応する電動アクチュエータ12について制御を停止するよりも、車両1の挙動が安定するため、乗員に与える違和感を低減することができる。
【0063】
また、制御装置20は、異常判定部23において、電動アクチュエータ12のストローク量(ストローク位置)が上限閾値XHiを超えた又は下限閾値XLoを下回ったと判定した場合、出力制御部24において、車速を、例えば60km/h以下にする等のように制限する信号を出力してもよい。これによって、車両1の運転時の安全性を向上させることができる。
【0064】
図4に戻り、ステップS101において、システム起動時以外(1ステップ前のフローチャート処理において、レゾルバ電気角の値とストローク量の値とが既に設定されており、前回値として利用可能となった状態)であると判定された場合(ステップS101:NO)、処理はステップS106に移行する。ステップS106では、制御装置20は、ストローク量算出部21において、レゾルバS1における回転角(電気角)の検出値θを、前回値、すなわち前回の検出値θN-1に設定する。
【0065】
次に、ステップS107において、制御装置20は、レゾルバS1から入力される回転角(電気角)の検出値θを今回値として設定し、その後、ステップS108において、レゾルバS1の回転角(電気角)の変化量を算出する。すなわち、図7に示すように、電動アクチュエータ12がストローク動作すると、レゾルバS1の回転角(電気角)の検出値は0deg~360degの間で変化する。制御装置20は、レゾルバS1の回転角(電気角)の変化量として、前回のレゾルバS1の回転角(電気角)の検出値である前回値θN-1と今回値θとの差分Δθ=θ-θN-1を算出する。
【0066】
次に、ステップS109において、制御装置20は、360degと0degのまたぎ判定処理を行う。具体的には、制御装置20は、ステップS107で求めたΔθが-180deg以下である場合には、Δθ=Δθ+360とし、Δθが180deg以上である場合には、Δθ=Δθ-360とする。その後、ステップS110において、制御装置20は、ストローク量(ストローク位置)の前回値XN-1=Xと設定する。
【0067】
次に、ステップS111において、制御装置20は、電動アクチュエータ12のストローク量(ストローク位置)の今回値X=XN-1+K・Δθを算出する。Kは係数であり、モータ13の極対数、ボールねじ軸125の仕様等から定められる。その後、処理は上記したステップS104からの処理に移行し、制御装置20は、中点学習部22及び異常判定部23によって中点学習処理の後に異常判定処理を実行する。
【0068】
以上のように、本実施形態の電動サスペンション装置10及び電動サスペンションの制御方法によれば、一般に電動アクチュエータ12のモータ13に配置されているレゾルバS1等の回転角センサを用いて、電動アクチュエータのストローク量(ストローク位置)を算出するので、新たなセンサ等を追加設置する必要がなく、電動サスペンション装置10のシステム構成を簡略化しつつ、電動アクチュエータ12のストローク量(ストローク位置)の測定精度を向上させることができる。
【0069】
ところで、図4に示すフローチャートでは、制御装置20は、車両1のイグニッションON後にシステム起動時であるかどうかを判断するステップS101を備えるが、図8に示すフローチャートのように、制御装置20は車両1のイグニッションON後に、システム起動時であるかどうかを判断することなく、ステップS401~ステップS408の処理を実行するようにしてもよい。この場合、制御装置20は、車両1のイグニッションON時に常にレゾルバS1の前回のシステム終了時の電気角の検出値から算出される、ストローク量の前回のシステム終了時の算出値を電動アクチュエータ12のストローク量(ストローク位置)の値として設定するため、ストローク量(ストローク位置)の算出精度を向上させることができる。
【0070】
なお、図8に示すフローチャートにおいて、ステップS401~ステップS406、ステップS407、及びステップS408は、図4に示すフローチャートにおけるステップS106~ステップS111、ステップS104、及びステップS105と同一の処理内容であるため、これらの説明は図4における説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【0071】
本実施形態の電動サスペンション装置10及び電動サスペンションの制御方法によれば、以下の効果を奏する。
【0072】
本実施形態の電動サスペンション装置10は、車両1に搭載される電動サスペンション装置であって、車両1の挙動に応じてストローク動作する電動アクチュエータ12と、電動アクチュエータ12を駆動させるモータ13と、モータ13の回転角を検出する回転角センサであるレゾルバS1と、電動アクチュエータ12を制御する制御装置20と、を備え、制御装置20は、レゾルバS1の回転角変化量に基づいて電動アクチュエータ12のストローク量を算出し、算出したストローク量に基づいて電動アクチュエータ12を制御する。
【0073】
これによれば、一般に電動アクチュエータ12のモータ13に配置されるレゾルバS1等の回転角センサをそのまま用いて、電動アクチュエータ12のストローク量を算出することができるため、電動サスペンション装置10のシステム構成を簡略化又は省略しつつ、電動アクチュエータ12のストローク量の測定精度を向上させることができる。
【0074】
制御装置20は、電動サスペンション装置10の起動時における電動アクチュエータ12のストローク量を、固定の初期値に設定してもよい。
【0075】
これによれば、前回のシステム起動時の最終値を引き継ぐことがないため、電動サスペンション装置10の制御の簡素化を図ることができる。
【0076】
制御装置20は、電動サスペンション装置10の起動時における電動アクチュエータ12のストローク量を、電動サスペンション装置10の前回終了時の値に設定してもよい。
【0077】
これによれば、電動アクチュエータ12のストローク量の算出精度を向上することができる。
【0078】
車両1の振動を検出する振動検出センサ(レゾルバS1、ばね上GセンサS2、車体ロールレートセンサS3、車体ピッチレートセンサS4、及び車速センサS5)をさらに備え、制御装置20は、振動検出センサの検出結果に基づいて車両1の振動がないと判断した場合に、電動アクチュエータ12のストローク量を、固定値に設定してもよい。
【0079】
これによれば、電動サスペンション装置10のシステム起動後の車両1の乗員や積載荷物量の増減等の状態変化に対応することができ、より高精度に電動アクチュエータ12のストローク量の測定を行うことができる。
【0080】
制御装置20は、振動検出センサの検出結果に基づいて、所定回数又は所定時間に亘って車両1の振動がないと判断した場合に、電動アクチュエータ12のストローク量を、固定値に設定してもよい。
【0081】
これによれば、頻繁に固定値が設定されることが抑制されるため、電動サスペンション装置10の制御をさらに簡素化することができる。
【0082】
制御装置20は、算出したストローク量が所定値(上限閾値XHi)を超えた又は所定値(下限閾値XLo)を下回った場合に、電動アクチュエータ12の制御を停止してもよい。
【0083】
これによれば、電動アクチュエータ12の誤作動を防止することができる。
【0084】
電動アクチュエータ12は、車両1の複数の車輪TRにそれぞれ設けられ、制御装置20は、複数の電動アクチュエータ(第1電動アクチュエータ12A~第4電動アクチュエータ12D)のうち、1つの車輪TRに対応する電動アクチュエータ12のストローク量が所定値(上限閾値XHi)を超えた又は所定値(下限閾値XLo)を下回った場合に、当該車輪TRに隣接する車輪TR又は全ての車輪TRに対応する電動アクチュエータ12の制御を停止してもよい。
【0085】
これによれば、複数の車輪TRのうちの一輪のみに対応する電動アクチュエータ12の制御が停止する場合よりも、車両1の挙動が安定し、乗員に与える違和感を低減することができる。
【0086】
制御装置20は、電動アクチュエータ12のストローク量が所定値(上限閾値XHi)を超えた又は所定値(下限閾値XLo)を下回った場合に、車速を制限する信号を出力してもよい。
【0087】
これによれば、車両1の運転時の安全性を向上させることができる。
【0088】
本実施形態の電動サスペンションの制御方法は、車両1に搭載されて車両1の挙動に応じてストローク動作する電動アクチュエータ12を備える電動サスペンションの制御方法であって、電動アクチュエータ12を駆動させるモータ13の回転角を検出する回転角センサであるレゾルバS1の回転角変化量に基づいて電動アクチュエータ12のストローク量を算出し、算出したストローク量に基づいて電動アクチュエータ12を制御する。
【0089】
これによれば、一般に電動アクチュエータ12のモータ13に配置されるレゾルバS1等の回転角センサをそのまま用いて、電動アクチュエータ12のストローク量を算出することができるため、電動サスペンション装置10のシステム構成を簡略化又は省略しつつ、電動アクチュエータ12のストローク量の測定精度を向上させることができる。
【0090】
図4図6図8に示すフローチャートの処理単位は、電動サスペンション装置10の制御装置20の処理に関する理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。各フローチャートに示す処理単位の分割の仕方や名称によって実施形態が制限されることはない。制御装置20の処理は、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできるし、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。上記のフローチャートの処理順序は、図示した例に限られるものではない。
【0091】
電動サスペンション装置10の制御装置20による制御方法は、制御装置20のプロセッサ20Bに、制御装置20の制御方法に対応した制御プログラムを実行させることで実現できる。制御プログラムは、コンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体に記録しておくことが可能である。記録媒体は、磁気的、光学的記録媒体または半導体メモリデバイスを用いることができる。具体的には、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、Blu-ray(登録商標)Disc、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、カード型記録媒体等の可搬型、或いは固定式の記録媒体が挙げられる。記録媒体は、電動サスペンション装置10が備える内部記憶装置であるRAM、ROM、HDD等の不揮発性記憶装置であってもよい。電動サスペンション装置10の制御装置20による制御方法に対応した制御プログラムは、サーバ装置等に記憶し、サーバ装置から制御装置20に、制御プログラムをダウンロードすることで制御装置20の制御方法を実現することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 車両
10 電動サスペンション装置
12 電動アクチュエータ
13 モータ
20 制御装置
S1 レゾルバ(回転角センサ、振動検出センサ)
S2,S2A~S2D ばね上Gセンサ(振動検出センサ)
S3 車体ロールレートセンサ(振動検出センサ)
S4 車体ピッチレートセンサ(振動検出センサ)
S5 車速センサ
TR 車輪
Hi 上限閾値
Lo 下限閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8