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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052112
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20240404BHJP
   F01P 1/02 20060101ALI20240404BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F01N3/24 K
F01N3/24 B
F01N3/24 C
F01P1/02 A
F01P5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158594
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】引地 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 慶子
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 直己
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA03
3G091AA12
3G091AB03
3G091AB05
3G091BA01
3G091FB10
3G091HA10
3G091HA36
3G091HA37
(57)【要約】
【課題】鞍乗型車両において、内燃機関の排気通路に、三元触媒と、NOx吸蔵触媒とを効果的に配置することを可能にする構成を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る鞍乗型車両1は、内燃機関20の排気通路に配置される三元触媒53aと、前記排気通路において前記三元触媒よりも下流側に配置されるNOx吸蔵触媒53bとを備える。前記NOx吸蔵触媒を備えた第1排気浄化部51dの少なくとも一部は、車幅方向において外側に露出している。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(20、111)を搭載した鞍乗型車両(1、101)において、
前記内燃機関(20、111)の排気通路(50E、122)に配置される三元触媒(53a)と、
前記排気通路(50E、122)において前記三元触媒(53a)よりも下流側に配置されるNOx吸蔵触媒(53b)と
を備え、
前記NOx吸蔵触媒(53b)を備えた第1排気浄化部(51d、120b)の少なくとも一部は、車幅方向において外側に露出している
ことを特徴とする鞍乗型車両(1、101)。
【請求項2】
前記三元触媒(53a)を備えた第2排気浄化部(51c、120a)の少なくとも一部は、風除け機能部(WS)の後方に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両(1、101)。
【請求項3】
前記車両(1、101)の上下方向において、前記NOx吸蔵触媒(53b)を備えた前記第1排気浄化部(51d、120b)の上流端(51du、120bu)は前記第1排気浄化部(51d、120b)の下流端(51dd、120bd)と異なる位置にある、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗型車両(1、101)。
【請求項4】
前記三元触媒(53a)を備える第2排気浄化部(51c)は、車幅方向において車体中心に延びる面(IS)を定めるとき、前記面(IS)と交差する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗型車両(1)。
【請求項5】
前記内燃機関(20)は、車幅方向に指向したクランク軸(21)の一端側にファン(56)を有し、
前記NOx吸蔵触媒(53b)を備えた前記第1排気浄化部(51d)は、前記ファン(56)の回転中心軸(C1)を中心として前記ファン(56)の径方向外側に位置付けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗型車両(1)。
【請求項6】
前記内燃機関(20)は、車幅方向に指向したクランク軸(21)の一端側にファン(56)を有し、
前記ファン(56)の軸線方向外側にファンカバー(57)が設けられ、
前記ファンカバー(57)は下方に開く開口部(57h)を備え、
前記NOx吸蔵触媒(53b)を備える前記第1排気浄化部(51d)は、前記ファンカバー(57)の下方に位置し、
前記第1排気浄化部(51d)の少なくとも一部は、前記ファンカバー(57)で覆われている、
ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両(1)。
【請求項7】
前記NOx吸蔵触媒(53b)の上流側かつ前記三元触媒(53a)の下流側の排気通路に設けられた第1センサ(54a)と、
前記NOx吸蔵触媒(53b)の下流側の排気通路に設けられた第2センサ(54b)と
を更に備え、
前記第1センサ(54a)の少なくとも一部及び前記第2センサ(54b)の少なくとも一部の少なくともいずれか一方は、前記ファンカバー(57)で覆われている、
ことを特徴とする請求項6に記載の鞍乗型車両(1)。
【請求項8】
前記ファンカバー(57)には切り欠き部(57e)が設けられ、
前記切り欠き部(57e)に前記排気通路に設けられるセンサ(54a)が配置されている、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の鞍乗型車両(1)。
【請求項9】
前記NOx吸蔵触媒(53b)を備える前記第1排気浄化部(120b)の少なくとも一部は、車幅方向において、ブレーキペダル(108)の内側に位置して前記ブレーキペダル(108)によって覆われている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗型車両(101)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車などの鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より気候変動の緩和または影響軽減を目的とした取り組みが継続され、この実現に向けて有害物質の排出量低減に関する研究開発が行われている。具体的には、内燃機関の排気通路に排気浄化触媒、例えば三元触媒を配置することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1は、内燃機関の排気通路に、三元触媒と、NOx吸蔵触媒とを上流側から順に配置することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4765991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
四輪自動車においては燃費向上のためにリーン燃焼させて内燃機関を運転することが行われている。自動二輪車などの鞍乗型車両においても、そこに搭載した内燃機関の燃費向上のためにリーン燃焼を導入したいとの要望がある。この場合、内燃機関をリーン燃焼運転するとき、ストイキ運転時に比べて多量の窒素酸化物(NOx)が大気中に放出されるおそれがあり、リーン燃焼時に排出され得る窒素酸化物を除去するために、鞍乗型車両においても排気系にNOx吸蔵触媒を設けることが望まれる。
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載のように、内燃機関の排気通路に、三元触媒と、NOx吸蔵触媒とを配置することで排気ガス中の有害物質を効果的に低減することができるが、自動二輪車等の鞍乗型車両においてはその配置に課題を有する。例えば、NOx吸蔵触媒は、三元触媒よりも耐熱温度が低いので、耐熱性の点から、三元触媒とは異なる位置に配置することが望まれるが、鞍乗型車両では各種部材の配置スぺースが限られる。
【0007】
本願は上記課題の解決のため、鞍乗型車両において、内燃機関の排気通路に、三元触媒と、NOx吸蔵触媒とを効果的に配置することを可能にする構成を提供することを目的とする。そして、延いては気候変動の緩和または影響軽減に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
内燃機関を搭載した鞍乗型車両において、
前記内燃機関の排気通路に配置される三元触媒と、
前記排気通路において前記三元触媒よりも下流側に配置されるNOx吸蔵触媒と
を備え、
前記NOx吸蔵触媒を備えた第1排気浄化部の少なくとも一部は、車幅方向において外側に露出している、
鞍乗型車両
を提供する。
【0009】
上記構成によれば、鞍乗型車両の内燃機関の排気通路に三元触媒とNOx吸蔵触媒とが上流側からこの順序で配置され、NOx吸蔵触媒を備えた第1排気浄化部の少なくとも一部は、車幅方向において外側に露出している。したがって、第1排気浄化部のNOx吸蔵触媒を走行風で適温に冷却することができ、NOx吸蔵触媒の熱害による劣化を防ぐことが可能になる。また、NOx吸蔵触媒を備えた第1排気浄化部の少なくとも一部は車幅方向において外側に露出しているので、例えばNOx吸蔵触媒を備えた第1排気浄化部を鞍乗型車両のその他の各種部材の配置スペースなどを大きく修正することなしに鞍乗型車両に搭載することができる。したがって、上記構成によれば、鞍乗型車両において、内燃機関の排気通路に、三元触媒と、NOx吸蔵触媒とを効果的に配置することが可能になる。
【0010】
好ましくは、前記三元触媒を備えた第2排気浄化部の少なくとも一部は、風除け機能部の後方に配置されている。この構成によれば、三元触媒を備えた第2排気浄化部の少なくとも一部を、例えば車体カバー又は前輪等の風除け機能部の後方に位置付け、第2排気浄化部に走行風を当たり難くすることができ、よって三元触媒の温度を適温に維持することが可能になる。
【0011】
好ましくは、前記車両の上下方向において、前記NOx吸蔵触媒を備えた前記第1排気浄化部の上流端は前記第1排気浄化部の下流端と異なる位置にある。この構成により、NOx吸蔵触媒を備えた第1排気浄化部を地上水平面に対して斜め又は直角に配置することができる。よって、NOx吸蔵触媒を備える第1排気浄化部に、特にその長手方向に延びる面に効率良く走行風を当てることができ、NOx吸蔵触媒を適温に冷却することができる。
【0012】
好ましくは、前記三元触媒を備える前記第2排気浄化部は、車幅方向において車体中心に延びる面を定めるとき、前記面と交差する。この構成によれば、三元触媒を、風除け機能部の後方により積極的に位置付けることができ、三元触媒を備えた第2排気浄化部に走行風をより当たり難くすることができ、三元触媒の温度を適温に維持し続けることが可能になる。
【0013】
好ましくは、前記内燃機関は、車幅方向に指向したクランク軸の一端側にファンを有し、前記NOx吸蔵触媒を備えた前記第1排気浄化部は、前記ファンの回転中心軸を中心として前記ファンの径方向外側に位置付けられているとよい。この構成によれば、NOx吸蔵触媒を備えた第1排気浄化部をファンの近くにコンパクトに配置することができ、省スペース化を図ることができる。
【0014】
好ましくは、前記内燃機関は、車幅方向に指向したクランク軸の一端側にファンを有し、前記ファンの軸線方向外側にファンカバーが設けられ、前記ファンカバーは下方に開く開口部を備え、前記NOx吸蔵触媒を備える前記第1排気浄化部は、前記ファンカバーの下方に位置し、前記第1排気浄化部の少なくとも一部は、前記ファンカバーで覆われているとよい。この構成によれば、第1排気浄化部をファンからの風で好適に冷却することができ、NOx吸蔵触媒を適温に冷却することができる。
【0015】
好ましくは、上記鞍乗型車両は、前記NOx吸蔵触媒の上流側かつ前記三元触媒の下流側の排気通路に設けられた第1センサと、前記NOx吸蔵触媒の下流側の排気通路に設けられた第2センサとを更に備え、前記第1センサの少なくとも一部及び前記第2センサの少なくとも一部の少なくともいずれか一方は、前記ファンカバーで覆われているとよい。この構成によれば、第1センサ及び第2センサの少なくともいずれか一方を、飛石等の障害物から保護することができる。なお、例えば、第1センサは温度センサであり、第2センサは排気ガスセンサであり得る。
【0016】
好ましくは、前記ファンカバーには切り欠き部が設けられ、前記切り欠き部に前記排気通路に設けられるセンサが配置されているとよい。この構成によれば、センサへのアクセス性を高めることができ、よってセンサのメンテナンスがし易くなる。
【0017】
好ましくは、前記NOx吸蔵触媒を備える前記第1排気浄化部の少なくとも一部は、車幅方向において、ブレーキペダルの内側に位置して前記ブレーキペダルによって覆われているとよい。この構成によれば、NOx吸蔵触媒を備える第1排気浄化部の少なくとも一部をブレーキペダルで覆うことによって、NOx吸蔵触媒の保護性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記態様によれば、上記構成を備えるので、鞍乗型車両において、内燃機関の排気通路に、三元触媒と、NOx吸蔵触媒とを効果的に配置することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る自動二輪車の全体右側面図である。
図2図1の車両の一部の拡大左側面図である。
図3図1の自動二輪車のパワーユニット、吸気装置及び排気装置の側面図である。
図4図3の平面図である。
図5】自動二輪車の一部の下面図である。
図6】パワーユニットの内燃機関のクランク軸に沿って切断した一部断面図である。
図7図1の自動二輪車の全体左側面図である。
図8図1の自動二輪車の一部の正面図である。
図9図1の自動二輪車における、ファンカバーの斜視図である。
図10図1の自動二輪車の車両前面視の模式図である。
図11】実験結果を示すグラフである。
図12】本発明の第2実施形態に係る自動二輪車の全体左側面図である。
図13図12の自動二輪車の一部の正面図である。
図14図12の自動二輪車の車両前面視の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明に係る第1実施形態について説明する。本実施形態に係るスクータ型の自動二輪車1の側面図を図1に示す。
なお、本明細書の説明において、前後左右及び上下の向きは、本実施の形態に係る自動二輪車1の直進方向を前方とする通常の基準に従うものとし、図面において、FRは前方を,REは後方を、LHは左方を,RHは右方を、UPは上方を、DWは下方を示すものとする。
【0021】
図1に示されるように、車体前部1Fと車体後部1Rとが、低いフロア部1Cを介して連結されており、車体の骨格をなす車体フレームFは、概ねダウンチューブ3とメインパイプ4とからなる。
すなわち車体前部1Fのヘッドパイプ2からダウンチューブ3が下方へ延出し、同ダウンチューブ3は下端で水平に屈曲してフロア部1Cの下方を後方へ延び、その後端において左右一対のメインパイプ4が連結され、メインパイプ4は該連結部から後方斜め上に延びた傾斜部4aを形成し、傾斜部4aの上部がさらに屈曲して後方に略水平に延びた水平部4bを形成している。
【0022】
車体前部1Fでは、ヘッドパイプ2及びダウンチューブ3の上下指向部がフロントカバー1aとレッグシールド1bにより前後から覆われ、フロア部1Cは、ダウンチューブ3の前後指向部がロアサイドカバー1cにより覆われ、車体後部1Rは、メインパイプ4がボデイカバー1dにより左右及び後方が覆われる。車両の下方を覆うロアサイドカバー1cは、図2及び図7に示されるように、フロントカバー1aの下部から車両後方に延伸して、パワーユニットPの右側の一部を覆っている。なお、フロントカバー1a、レッグシールド1b、ロアサイドカバー1c、ボデイカバー1dは車体カバーBCに含まれる。
【0023】
一対のメインパイプ4の間には前後に収納ボックス5と燃料タンク(不図示)が支持され、収納ボックス5と燃料タンクの上方はシート7が覆って配置されている。
一方、車体前部1Fにおいては、ヘッドパイプ2に軸支されて上方にハンドル8が設けられ、下方にフロントフォーク9が延びてその下端に前輪10が軸支されている。
【0024】
図1に示されるように、メインパイプ4の傾斜部4aの長手方向における略半分に位置して、支持ブラケット11が後方に向けて突設されている。図2に示されるように、パワーユニットPの上部には、ハンガー22hが、斜め上方に向かって突設されている。メインパイプ4の支持ブラケット11とハンガー22hはリンク部材12を介して連結されており、これらのリンク機構により、パワーユニットPはメインパイプ4に揺動可能に連結支持される。
【0025】
図3を参照して、パワーユニットPには、その前部に単気筒4ストローク空冷式の内燃機関20が、クランク軸21を車幅方向に指向させて軸支するクランクケース22から順次重ね合わされたシリンダブロック23,シリンダヘッド24,ヘッドカバー25を略水平に近い状態にまで大きく前傾した姿勢で前方に突出させて設けられている。なお、ここでは、クランクケース22、シリンダブロック23,シリンダヘッド24,ヘッドカバー25の部分を含む内燃機関20の部分を機関本体Bと称する。
【0026】
図6を参照して、クランクケース22は、左右割りで、左クランクケース部22Lと右クランクケース部22Rからなり、車幅方向に指向したクランク軸21を左クランクケース部22Lと右クランクケース部22Rがそれぞれ主軸受21b,21bを介して回転自在に軸支している。
【0027】
クランク軸21の右側軸部にACジュエネレータ55が設けられ、ACジュエネレータ55のアウタローター55rに遠心冷却ファン56が一体に取り付けられている。
右クランクケース部22Rを右側から覆うファンカバー57が、遠心冷却ファン56を内部に収容する。図2も参照して、ファンカバー57には、遠心冷却ファン56に対向して外気導入口であるグリル57gが形成されている。このように、遠心冷却ファン56は空冷ファンであり、単にファンと称されてもよい。
【0028】
図6に示されるように、左クランクケース部22Lは、後方に延出して伝動ケース部を兼ね、同伝動ケース部(左クランクケース部)22Lを左側から伝動ケースカバー65が覆い、内部にはベルト式無段変速機60が配設される。クランク軸21の左側軸部には、主軸受21bに隣接して駆動チェーンスプロケット58が設けられ、左側軸端部には、ベルト式無段変速機60の駆動プーリ61が設けられている。
【0029】
駆動チェーンスプロケット58に巻き掛けられるカムチェーン59によりシリンダヘッド24側の動弁機構に動力が伝達される。
図1及び図3を参照して、ベルト式無段変速機60の後部に設けられた減速機構64の減速機出力軸が後車軸28aであり、後車軸28aに後輪28が設けられている。
伝動ケース部22Lの減速機構64を収容する後部の上端と前記メインパイプ4の上部屈曲部間にリヤクッション(不図示)が介装されている。
【0030】
図3に示されるように、減速機構64の減速機入力軸64aに、ベルト式無段変速機60の被動プーリ63が軸支されており、クランク軸21に設けられる駆動プーリ61と減速機入力軸64aに設けられる被動プーリ63とにベルト62が巻き掛けられて、内燃機関20の動力がベルト62を介して被動プーリ63に伝達され、被動プーリ63の回転は遠心クラッチ(不図示)を介して減速機構64の減速機入力軸64aに伝達され、減速機構64で減速されて後輪28に動力伝達される。図6に示されるように、駆動プーリ61の左側のプーリ半体には外気吸入ファン61Fが形成されている。
【0031】
シリンダブロック23及びシリンダヘッド24の周囲を、図6に示されるような導風部材であるシュラウド70が囲繞し、シュラウド70は右側においてファンカバー57に連結される。したがって、シュラウド70内を通してシリンダブロック23及びシリンダヘッド24の各部に、例えば内燃機関20シリンダヘッド24の排気ポート24bの出口周囲に送風することができる。
【0032】
図3を参照して、パワーユニットPの前部の内燃機関20のシリンダヘッド24の上面側に吸気ポート24aが形成され、該吸気ポート24aから吸気管としてのインレットパイプ31が上方に延出している。シリンダヘッド24の下面側に排気ポート24bが形成され、該排気ポート24bから排気管51が下方に延出する。
また、シリンダヘッド24には、点火プラグ26が中央のヘッドカバー25寄りに嵌挿されるとともに、排気管51が延出する箇所に酸素濃度センサ27が嵌挿されている。
【0033】
内燃機関20の吸気ポート24aには、外気を吸入して内燃機関20に送る吸気装置30が接続されている。吸気装置30内は、内燃機関20の燃焼室20aに吸気を導入する内燃機関20に送られる吸気が通過する吸気通路となっている。
吸気装置30は、外気を取入れて浄化するエアクリーナ装置40と、エアクリーナ装置40に連結されるコネクティングチューブ36と、コネクティングチューブ36の下流側に連結されるスロットルボディ33と、スロットルボディ33の下流側に接続されるインレットパイプ31と、を備えており、これらにより吸気系が構成される。
【0034】
図4に示されるように、吸気装置30のエアクリーナ装置40は、左右の未浄化室ケース42と浄化室ケース43が合体したエアクリーナケース41が、未浄化室ケース42と浄化室ケース43の間に配設されエアクリーナエレメント44が配設されている仕切部45により、エアクリーナエレメント44が未浄化室ケース42側の未浄化室Caと浄化室ケース43側の浄化室Cbとに仕切られている。
図3に示されるように未浄化室ケース42には、走行風などが取り込まれる空気導入管47が、その開口部47aが前方を向くように配設されている。開口部47aから導入された吸気は、未浄化室Ca内からエアクリーナエレメント44を通過して浄化され、浄化室Cbに送られる。エアクリーナ装置40の浄化室Cbは、ゴム製の弾性変形可能なコネクティングチューブ36により、スロットルボディ33と連通されている。燃料噴射弁37が、スロットルボディ33及びインレットパイプ31のそれぞれの上面から取り付けられ、吸気通路内に燃料が噴射される。
【0035】
図5に示されるように、シリンダヘッド24の排気ポート24bには、排気装置50が接続されている。排気装置50は、排気ポート24bに接続される排気管51と、排気管51の後端に接続され大気開放口52aを車両後向に向けたマフラー52とを備えていて、これらはそれぞれ排気通路50Eの一部を区画形成する。排気管51の途中には、触媒装置53a、53bが収容されている。
内燃機関20から排出される排気ガスは、排気ポート24bから排気管51に流入し、排気管51の途中に設けられた触媒装置(以下、上流側触媒装置)53a及び触媒装置(以下、下流側触媒装置)53bで浄化され、マフラー52を通過し、大気開放口52aより大気中に排出される。
【0036】
排気管51は、排気ポート24bに連通してシリンダヘッド24の下面から下方に延出し、左側斜め前方に屈曲し、さらに後方から右方へに屈曲して、クランクケース22の下部の左側から右側へ屈曲し、後方へ延びて後輪28の右側に配設されるマフラー52に連結されている。
【0037】
排気管51は、途中に上流側触媒装置53aが収容される触媒装置収容排気管51cと、下流側触媒装置53bが収容される触媒装置収容排気管51dと、触媒装置収容排気管51cの上流側に接続される上流側排気管51aと、触媒装置収容排気管51cの下流側及び触媒装置収容排気管51dの上流側に接続される中間排気管51bと、触媒装置収容排気管51dの下流側に接続される下流側排気管51eとから構成されている。
【0038】
上流側排気管51aは、排気ポート24bに連通してシリンダヘッド24の下面から下方に延出し(図3も参照)、その後左側斜め前方に屈曲してさらに後方から右方へと屈曲して触媒装置収容排気管51cに接続される。
【0039】
触媒装置収容排気管51cは、内燃機関20の下方に位置し、車幅方向に指向して車両の左側から右側に向かって排気が流れるように配設されている。ここで、自動二輪車1の前方から後方に延びる中央仮想面ISを定める。中央仮想面ISは車幅方向において車体中心に延びる面であり、車幅方向(左右方向LH-RH)に直交するとともに、自動二輪車1では図5及び図8に示すように前輪10及び後輪28をそれぞれ実質的に二等分するように延びる。図5に示すように、触媒装置収容排気管51cは、この中央仮想面ISと交差し、そこに収容される上流側触媒装置53aも中央仮想面ISと交差する。
触媒装置収容排気管51cは、上流端が車幅方向における左側に位置し、下流端が車幅方向における右側に位置するように配設されている。上流端には上流側排気管51aが接続され、下流端には中間排気管51bが接続されている。
【0040】
触媒装置収容排気管51cの内部には、その軸線方向が車幅方向に向かうように上流側触媒装置53aが収容されている。上流側触媒装置53aは、その軸線方向に向かって延びる多数の細孔を有するハニカム状の多孔構造体であり、その多孔構造体に排気ガスを分解する成分として、例えば、白金、ロジウム及びパラジウムという所謂三元触媒(TWC)が担持されている。ここでは、第2排気浄化部に相当する触媒装置収容排気管51cの上流側触媒装置53aを単に三元触媒と称し得る。
【0041】
中間排気管51bは、図5に示されるように、触媒装置収容排気管51cの下流側に接続し、車幅方向に延びたのち、後方に向かって湾曲している。中間排気管51bは、図5の車両下面視において、ユニットケースPcを構成するクランクケース22より車幅方向における外側を車両前後方向に沿って後方に向かって延伸されていて、触媒装置収容排気管51dに接続されている。さらに、中間排気管51bは、図2及び図7に示されるように、車体右側面視において、パワーユニットPの下部の右側から後方へ延びて、触媒装置収容排気管51dに接続されている。
【0042】
触媒装置収容排気管51dは、図2及び図7に示す車体右側面視において視認でき、露出していて、特にここでは触媒装置収容排気管51cよりも視認できる。触媒装置収容排気管51dは、ユニットケースPcを構成するクランクケース22より車幅方向における外側を車両前後方向に沿って後方に向かって延伸されている。さらに、触媒装置収容排気管51dは、図2及び図7に示されるように、車体右側面視において、パワーユニットPの下部を前後方向で斜め下後方へ延びて、下流側排気管51eに接続されている。
【0043】
触媒装置収容排気管51dの内部には、その軸線方向が車両前後方向に概ね向かうように下流側触媒装置53bが収容されている。下流側触媒装置53bは、その軸線方向に向かって延びる多数の細孔を有するハニカム状の多孔構造体であり、その多孔構造体に排気ガスの窒素酸化物(NOx)の浄化用に、例えば、白金及びNOx吸収剤を有する所謂NOx吸蔵触媒が担持されている。ここでは、第1排気浄化部に相当する触媒装置収容排気管51dの下流側触媒装置53bを単にNOx吸蔵触媒と称し得る。ただし、下流側触媒装置53bつまりNOx吸蔵触媒はこの構成に限定されず、種々の構成を備えることができ、例えば白金以外の貴金属を有してもよい。なお、NOx吸蔵触媒では、内燃機関20の運転において燃料希薄(リーン)の状態では、排気ガス中のNOxをNOx吸収剤に吸収させ、内燃機関20の運転において燃料過剰(リッチ)の状態(所謂リッチスパイクを含む。)では、NOxはNOx吸収材から放出され、CO、HCと反応し、Nになる。このように、NOx吸蔵触媒では、リーン燃焼運転時に排出され得るNOxを除去つまり浄化することができるので、NOx吸蔵触媒を排気通路50Eに配置することで内燃機関20を積極的にリーン燃焼運転することが可能になる。
【0044】
下流側排気管51eは、図5に示されるように、触媒装置収容排気管51dの下流側に接続し、クランクケース22より車幅方向における外側を車両前後方向に沿って後方に向かって延伸されている。さらに、下流側排気管51eは、図2及び図7に示されるように、車体右側面視において、パワーユニットPの下部の左側から斜め上方に向かって屈曲されて延び、後輪28の右側に配設されるマフラー52に連結されている。
【0045】
図2は、ファンカバー57の前側の一部を切り欠いた状態の、パワーユニットP近傍の右側面図である。触媒装置収容排気管51dは、図2の側面視において、上流側の中間排気管51bと、下流側の下流側排気管51eとの2つの湾曲部の間に位置し、車幅方向に指向したクランク軸21の一端側のファンカバー57で覆われた遠心冷却ファン56の回転中心軸C1を中心として遠心冷却ファン56の径方向外側に、ここでは特にその径方向下側に位置付けられている。なお、遠心冷却ファン56の回転中心軸C1は、クランク軸21の回転軸つまり回転軸線に一致する。
【0046】
図2及び図6に示されるように、遠心冷却ファン56の右側方を覆うように、ユニットケースPcの一部を構成するファンカバー57が配設されている。ファンカバー57は、内燃機関20の一部の周囲を覆うシュラウド70と一体に連結され、内燃機関20の右側方を覆っている。ファンカバー57の庇部57dは、触媒装置収容排気管51dの上部及び右側面の一部を覆うように形成されている。
【0047】
ここで、ファンカバー57について図9に基づいて説明する。ファンカバー57は、ファンカバーの右側方を覆う側壁部57aを備えている。側壁部57aには、グリル57gがファン56の回転中心軸C1を中心点とする円形に形成されており、ファン56の回転により、外気がグリル57gを通過してパワーユニットP内に取り込まれる。
このような側壁部57aの周縁の上部及び後部において、側壁部57aから内燃機関20側に向かって、周壁部57bが立設されている。側壁部57aと周壁部57bの前方の端縁は、シュラウド70と接合されるシュラウド接合縁部57cとなっている。
【0048】
側壁部57aの下部には、触媒装置収容排気管51dに沿って触媒装置収容排気管51dの略上半分を覆う庇部57dが形成されている。さらに、庇部57dは、図2に示されるように、車両前後方向において、側壁部57a前後の幅よりも前後方向に延伸するように長く形成されている。庇部57dは、触媒装置収容排気管51dの軸方向長さよりも長く形成されている。
【0049】
庇部57dは、側壁部57aから車幅方向外側に延出する延出部57dと、延出部57dから下方に向かうように湾曲した形状に延伸される湾曲部57dと、湾曲部57dから下方に延び触媒装置収容排気管51dの右側面の一部を覆うように形成された側壁部57dから構成されている。
【0050】
ファンカバー57の庇部57dの端縁には、車両前後方向において前方に開口した切り欠き部57eが形成されている。切り欠き部57eは、温度センサ54aを避けるように形成されている。温度センサ54aは触媒装置収容排気管51dのすぐ上流側に取り付けられたセンサであり、NOx吸蔵触媒の上流側かつ三元触媒の下流側の排気通路に設けられた第1センサに相当する。図2に示されるように、車両側面視において、切り欠き部57eとセンサ54aとは重なる。このように、温度センサ54aの一部はファンカバー57で覆われている。なお、切り欠き部57eは、開口部が徐々に広がるように奥側に向かって斜めに傾斜した傾斜部57fが設けられている。ファンカバー57を車両から取り外す際に、温度センサ54aがファンカバー57に当たって取り外し難くなることを防いでいる。
【0051】
なお、ファンカバー57の庇部57dの延出部57d及び湾曲部51d後方の端縁に車両前後方向において後方に開口する切り欠き部が設けられ、その切り欠き部に、触媒装置収容排気管51dつまりNOx吸蔵触媒の下流側の排気通路に設けられた第2センサである排気ガスセンサ54bが配置されてもよい。これにより、排気ガスセンサ54bの一部を温度センサ54aと同様にファンカバー57で覆い、その少なくとも一部を保護することができる。また、排気ガスセンサ54bを切り欠き部に設けることで、そのアクセス性を維持し、その取り外し易さを確保することができる。なお、排気ガスセンサ54bは、LAFセンサ(リニア・エア・フューエルレシオ・センサ)であるが、酸素濃度センサであってもよい。
【0052】
また、図9に示すように、ファンカバー57の庇部57dの延出部57dには、下方に開く開口部57hが形成されている。この開口部57hは、ファンカバー57の下方に位置して庇部57dが部分的に覆う触媒装置収容排気管51dに向かって開いている。したがって、遠心冷却ファン56の風を触媒装置収容排気管51dに送り、そのNOx吸蔵触媒を冷却することが可能になる。
【0053】
上記内燃機関20の各部の作動を制御するために、不図示のECU(電子制御ユニット)が備えられている。ECUは、コンピュータとしての構成を備え、プロセッサ(例えばCPU)及びメモリ(例えばROM、RAM)を備え、各種センサからの出力信号が入力される。例えば、エンジン回転速度センサ、スロットル開度センサなどのエンジン負荷センサ、酸素濃度センサ27、温度センサ54a、排気ガスセンサ54bがECUに接続されていて、ECUは、これらのセンサからの入力に基づき運転状態を解析し、解析した運転状態に基づいて、点火プラグ26、燃料噴射弁37、スロットルボディ33のスロットル弁などの各作動を制御する。これにより、例えば、ECUは内燃機関20にリーン燃焼運転をさせることができる。このとき、ECUは、触媒装置収容排気管51dの下流側触媒装置53bでNOx浄化を好適に行うべく、温度センサ54a及び排気ガスセンサ54bからの入力に基づいて燃料噴射弁37の作動を制御し、具体的には所定のタイミングで燃料を過多に噴射する所謂リッチスパイクを生じさせる。
【0054】
上記構成を有する鞍乗型車両である自動二輪車1の特徴的構成及び作用効果について、以下説明する。
【0055】
自動二輪車1の内燃機関20の排気通路50Eには、上流側触媒装置53aつまり三元触媒と、その上流側触媒装置53aよりも下流側に配置される下流側触媒装置53bつまりNOx吸蔵触媒とが配置される。図5において、車幅方向において車体中心に延びる面つまり自動二輪車1の前方から後方に延びる中央仮想面ISは、触媒装置収容排気管51cの上流側触媒装置53aと交差するが、触媒装置収容排気管51dの下流側触媒装置53bからは離れて交差しない。そして、自動二輪車1を前方から見た図8の自動二輪車1の正面視つまり車両前面視において、下流側触媒装置53bが収容される触媒装置収容排気管51dの少なくとも一部は車幅方向において外側に位置して露出しているが、上流側触媒装置53aが収容される触媒装置収容排気管51cは前輪10及び車体カバーBCのフロントカバー1a等の風除け機能部WSの背後に位置し、隠れている。これらの関係は、自動二輪車1の車両前面視を模式化して表す図10においてより明らかである。このように、NOx吸蔵触媒を備えた触媒装置収容排気管51dは、車幅方向において外側に配置され、排気管51dの少なくとも一部は車幅方向において外側に露出している。特にここでは、NOx吸蔵触媒を備えた触媒装置収容排気管51dは、三元触媒を備えた触媒装置収容排気管51cよりも車幅方向において外側に露出している。このように、NOx吸蔵触媒を備えた触媒装置収容排気管51dの少なくとも一部を車幅方向において外側に露出させることで、NOx吸蔵触媒を走行風で適温に冷却することができ、NOx吸蔵触媒の熱害による劣化を防ぐことが可能になる。また、この排気管51dの露出する配置により、NOx吸蔵触媒を備えた触媒装置収容排気管51dを、例えば自動二輪車1のその他の各種部材の配置スペースなどを大きく修正することなしに自動二輪車1に搭載することができる。したがって、上記構成によれば、鞍乗型車両である自動二輪車1において、内燃機関20の排気通路50Eに、三元触媒と、NOx吸蔵触媒とを効果的に配置することが可能になる。更に、図5に基づいて説明したように、触媒装置収容排気管51dは、ユニットケースPcを構成するクランクケース22より車幅方向における外側を車両前後方向に沿って後方に向かって延伸されているので、機関本体Bのクランクケース22の車幅方向外側に配置される。したがって、NOx吸蔵触媒を備えた触媒装置収容排気管51dの上記搭載性及び上記冷却能力は更に優れる。ただし、NOx吸蔵触媒を備えた触媒装置収容排気管51dの少なくとも一部、例えばその一部又は全部の車幅方向において外側に露出する程度は、自動二輪車1における触媒装置収容排気管51dへの走行風の当たり具合、自動二輪車1の加速性能などに応じて設定されるとよい。なお、自動二輪車1における車両前面視は、自動二輪車1の車輪10、28が正に前後方向を向いているとき、つまり、車輪10、28の車幅方向に指向して延びている車軸10a、28aが前後方向に直交しかつ上下方向に対して直交している姿勢での自動二輪車1を前方から見た図ここでは図8に相当する。
【0056】
また、前述のように、図5において、触媒装置収容排気管51cつまり上流側触媒装置53aは、自動二輪車1の前方から後方に延びる中央仮想面ISと交差するが、触媒装置収容排気管51dつまり下流側触媒装置53bは中央仮想面ISから離れて交差しない。このように、上流側触媒装置53aつまり三元触媒は、車幅方向において、下流側触媒装置53bつまりNOx吸蔵触媒よりも車体中心側に位置付けられている。したがって、上流側触媒装置53aつまり三元触媒を例えば車体カバーBC及び前輪10等の風除けの機能を発揮する部分又は部材つまり風除け機能部WSの後方に積極的に位置付けることができ、三元触媒を備える触媒装置収容排気管51cに走行風を当たり難くすることができ、三元触媒の温度を適温に維持し続けることが可能になる。
【0057】
特に、図8の自動二輪車1の車両前面視において上流側触媒装置53aが収容される触媒装置収容排気管51cは実質的に表れず、三元触媒を備えた第2排気浄化部である触媒装置収容排気管51cの少なくとも一部ここでは全部は、風除け機能部WSの後方に配置されている。よって、三元触媒を備えた触媒装置収容排気管51cを風除け機能部WSの後方に位置付け、触媒装置収容排気管51cに走行風を当たり難くすることができ、よってそこに収容されている三元触媒の温度を適温に維持することが可能になる。
【0058】
更に、前述のように、触媒装置収容排気管51dは、図2及び図7に示されるように、車体右側面視において、パワーユニットPの下部を前後方向で斜め下後方へ延びている。つまり、自動二輪車1の上下方向において、NOx吸蔵触媒を備えた第1排気浄化部である触媒装置収容排気管51dの上流端51duは触媒装置収容排気管51dの下流端51ddと異なる位置にある。このように、触媒装置収容排気管51dを地上水平面に対して斜めに配置しているので、触媒装置収容排気管51dを地上水平面に対して平行に配置する場合に比べて、触媒装置収容排気管51dの長手方向に延びる面つまり周側面に効率良く走行風を当てることができ、触媒装置収容排気管51dのNOx吸蔵触媒を適温に冷却することができる。
【0059】
ここで、触媒装置収容排気管51dの地上水平面に対する傾きと触媒装置収容排気管51dの温度との関係を実験により調べたので、その実験結果を図11に示す。図11の横軸は時間であり右に進むほど時間は経過し、図11の縦軸は温度であり、上側ほど温度が高い。この実験では、次に示す姿勢で触媒装置収容排気管51dを配置して、触媒装置収容排気管51d内に高温の排気ガスを流し、前方より冷風を送り、触媒装置収容排気管51dの温度変化を測定した。図11のグラフの実線は触媒装置収容排気管51dの軸線を地上水平面に直角に立てて触媒装置収容排気管51dを配置したときの結果を示し、一点鎖線は触媒装置収容排気管51dの軸線を地上水平面に対して約45°傾けて触媒装置収容排気管51dを配置したときの結果を示し、二点鎖線は触媒装置収容排気管51dの軸線を地上水平面に平行にして触媒装置収容排気管51dを配置したときの結果を示す。なお、この実験では、触媒装置収容排気管51dの軸線がその前方からの冷風に対して左右に傾かないように触媒装置収容排気管51dを配置した。図11のグラフでは、下から実線、一点鎖線、二点鎖線が順に並んだ。これより、車両の上下方向において、触媒装置収容排気管51dの上流端を触媒装置収容排気管51dの下流端と異なる位置に位置付け、つまり触媒装置収容排気管51dを地上水平面に対して斜め又は直角に配置した方が、触媒装置収容排気管51dを地上水平面に平行に配置したときよりも、触媒装置収容排気管51dつまりNOx吸蔵触媒の冷却能を高めることができることがより理解できる。
【0060】
また、内燃機関20は、車幅方向に指向したクランク軸21の一端側に遠心冷却ファン56を有し、触媒装置収容排気管51dは、遠心冷却ファン56の回転中心軸C1を中心として遠心冷却ファン56の径方向外側に位置付けられている。したがって、NOx吸蔵触媒を備えた第1排気浄化部である触媒装置収容排気管51dを遠心冷却ファン56の近くにコンパクトに配置することができ、省スペース化を図ることができる。
【0061】
また、内燃機関20は、車幅方向に指向したクランク軸21の一端側に遠心冷却ファン56を有し、その遠心冷却ファン56の軸線方向外側にファンカバー57が設けられ、そのファンカバー57は下方に開く開口部57hを備えている。そして、触媒装置収容排気管51dは、ファンカバー57の下方に位置し、触媒装置収容排気管51dの少なくとも一部は、ファンカバー57で覆われている。よって、触媒装置収容排気管51dつまりそこに備えられたNOx吸蔵触媒を遠心冷却ファン56からの風で好適に冷却することができる。
【0062】
また、自動二輪車1は、触媒装置収容排気管51dのNOx吸蔵触媒の上流側かつ触媒装置収容排気管51cの三元触媒の下流側の排気通路に設けられた第1センサである温度センサ54aと、NOx吸蔵触媒の下流側の排気通路に設けられた第2センサである排気ガスセンサ54bとを備え、特に温度センサ54aの少なくとも一部は、ファンカバー57で覆われている。よって、温度センサ54aの少なくとも一部を、飛石等の障害物から保護することができる。同様に、排気ガスセンサ54bの少なくとも一部もファンカバー57で覆われるように配置し、その保護性能を高めてもよい。
【0063】
また、ファンカバー57には切り欠き部57eが設けられ、切り欠き部57eに排気通路に設けられるセンサここでは温度センサ54aが配置されている。したがって、温度センサ54aへのアクセス性を高めることができ、よって温度センサ54aのメンテナンスがし易くなる。同様に、排気ガスセンサ54bは、ファンカバー57の更なる切り欠き部に配置されてもよい。
【0064】
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る自動二輪車101の側面図を図12に、自動二輪車101の一部の正面図つまり車両前面視を図13に示す。
【0065】
自動二輪車101は、パワーユニットP、電装品を搭載する車体フレーム102を備えている。車体フレーム102のメインチューブは、前端部に位置するヘッドパイプ103から後方に延出されている。車体フレーム102のダウンチューブ104は、ヘッドパイプ103から後斜め下方に延出されるように設けられている。ヘッドパイプ103の後方には、内部に燃料の収容される燃料タンク105が配置されている。この燃料タンク105の後方には、運転者が着座するシート106が搭載されている。シート106の下方には、運転中において運転者の足置きとなるフットレスト107が設けられている。
【0066】
図12に示す車体右側のフットレスト107の近傍には、駆動輪である後輪WR用のブレーキペダル108が設けられている。ブレーキペダル108は、フットレスト107より後方に位置する後端部108rが軸支され、フットレスト107より前方に位置する前端部108fが上下に揺動可能に設けられる。ブレーキペダル108は、図12の自動二輪車101の側面視において、後端部108rから前端部108fに向かうに従い、はじめは前下方に向けてわずかに傾斜し、その後、おおむね水平になり、更にその後、前上方に向けてわずかに傾斜するように形作られていて、略U字形状を有する。つまり、ブレーキペダル108は、自動二輪車101の側面視においておおむね上下方向に傾かずに前後方向に延びている。ブレーキペダル108の前端部108fは、ペダル部として機能し、後述するクランクケース109の前端側部分の右側方に位置し、また、フットレスト107と概ね同じ高さに位置し、フットレスト107に置かれた運転者の足によって踏み込み操作可能である。
【0067】
更に図12に示す車体右側のフットレスト107の近傍には、特にフットレスト107の上側にはキックペダル110が設けられている。キックペダル110は、フットレスト107の斜め後上側に位置付けられた後端部110rと、パワーユニットPの内燃機関111の機関本体Bのシリンダヘッド112の後部付近に位置する前端部110fとを有する。キックペダル110は、後端部110rから前端部110fに向かうに従い、まず上側に延び、前方に向けて湾曲する。キックペダル110は使用時に車幅方向外側に延びるように展開される。キックペダル110の前端部110fは、ペダル部として機能し、運転者の足によって踏み込まれる。この踏み込みにより、キックペダル110は後端部110rを中心に所定範囲で回動し、よって内燃機関111を始動させることができる。
【0068】
車体フレーム102におけるメインチューブ及びダウンチューブ104には、内燃機関111の機関本体Bが懸架されている。機関本体Bは、ダウンチューブ104にブラケットを介して支持されるクランクケース109と、このクランクケース109の上方に順に設けられたシリンダブロック113、シリンダヘッド112及びヘッドカバー114とを備えている。クランクケース109の上方にシリンダブロック113が前傾した状態で連結されている。したがって、図12に示すように、機関本体Bの気筒のシリンダー軸線111cは、クランクケース109のクランク軸側からシリンダヘッド112側に向けて斜め前方に傾く。なお、クランク軸は車幅方向に延び、上下方向かつ前後方向に概ね直交する。図12では、クランク軸の回転軸線115を示す。
【0069】
機関本体Bのシリンダヘッド112には、排気装置116のうちの上流側排気管117の上端(上流端)側が接続されている。燃焼室(不図示)から排出される排気ガスは、上流側排気管117を流れて、後輪WRの右側方に位置するつまり車体右側後方に位置するマフラー118から排出される。なお、シリンダヘッド112の排気ポート、上流側排気管117、触媒装置収容排気管120a、中間排気管121、触媒装置収容排気管120b及びマフラー118はこの順で排気流れ方向につながり、それぞれ排気通路122の一部を区画形成する。
【0070】
触媒装置収容排気管120aは、上流側触媒装置53aつまり三元触媒が収容される上記触媒装置収容排気管51cに相当し、上流側触媒装置53aつまり三元触媒をその内部に備える。触媒装置収容排気管120bは、下流側触媒装置53bつまりNOx吸蔵触媒が収容される上記触媒装置収容排気管51dに相当し、上流側触媒装置53bつまりNOx吸蔵触媒をその内部に備える。
【0071】
なお、メインチューブの前端部には、ヘッドパイプ103に設けられたステアリングシャフトを介してフロントフォーク123が回動可能に支持されている。ステアリングシャフトの上端部にはハンドルバー124が設けられており、ハンドルバー124の両端部にはグリップ125が装着されている。フロントフォーク123の下部には、前輪WFが回転可能に支持されている。前輪WFの上方は、フロントフェンダ126で部分的に覆われている。
【0072】
また、機関本体Bの後方には、スイングアームを介して、内燃機関111の動力が伝達される後輪WRが回転可能に支持されている。スイングアームと車体フレーム102との間には、路面からの衝撃を緩和させるサスペンション126が配置されている。後輪WRの後上側であってシート106の後方には、リヤフェンダ127が配置されている。
【0073】
さて、前述のように、機関本体Bのシリンダヘッド112の前壁には、排気装置116のうちの上流側排気管117が接続され、その下流に、上流側触媒装置53aつまり三元触媒を備える触媒装置収容排気管120a、中間排気管121、下流側触媒装置53bつまりNOx吸蔵触媒を備える触媒装置収容排気管120b及びマフラー118が上流側から順に配置されている。
【0074】
図12及び図13に示すように、機関本体Bのシリンダヘッド112の排気ポートから続く排気通路122は、機関本体Bの前側に延びつまり延出し、その後下側に延びて、さらに機関本体Bの下方を通って後方に延びる。つまり、排気装置116は、内燃機関111の機関本体Bの前側からその下方に延び、機関本体Bの下方を通って後方に延びる。触媒装置収容排気管120aは車両前後方向において機関本体Bの前側に位置付けられていて、特にクランクケース109の前側に位置付けられている。したがって、この触媒装置収容排気管120aは、ブレーキペダル108の前端部108fよりも車両前方に位置している。ここでは、排気通路122が前述のように機関本体Bの周囲において延びるので、触媒装置収容排気管120aは、自動二輪車101の側面視においてシリンダー軸線111cと同様に斜めに延び、上流側から下流側に向けて斜め後下方に延びるように配置されている。図13の自動二輪車101の前面視に示すように、触媒装置収容排気管120aは自動二輪車101の前方から後方に延びる中央仮想面ISを定めるとき、その右側に位置し、ここでは前輪WFの右側に延在し、その上流側部分よりも下流側部分がわずかに車幅方向内側に入るように傾いて設けられている。触媒装置収容排気管120aの一部は前輪WFの周囲構成、具体的にはフロントフォーク123及びフロントフェンダ126のような風除け機能部WSに隠れるように自動二輪車101に設けられている。なお、中央仮想面ISは、車幅方向に直交するとともに前輪WF及び後輪WRを実質的に二等分するように定められることができる。
【0075】
一方、触媒装置収容排気管120aの下流側の触媒装置収容排気管120bは、図12の側面視に示すように車両前後方向に実質的に延び、車両上下方向において触媒装置収容排気管120bの下流端120bdが上流端120buよりもわずかに上側に位置している。そして、図13の車両前面視に示すように、三元触媒を備えた触媒装置収容排気管120aはNOx吸蔵触媒を備えた触媒装置収容排気管120bよりも車体中心側に位置付けられていて、触媒装置収容排気管120bは触媒装置収容排気管120aよりも露出傾向にあり、露出している。
【0076】
図13の車両前面視に示す、三元触媒を備えた触媒装置収容排気管120aと、NOx吸蔵触媒を備えた触媒装置収容排気管120bとの位置関係を、図14の模式図に示す。図14から、触媒装置収容排気管120aの三元触媒よりも、触媒装置収容排気管120bのNOx吸蔵触媒の方が、車両前面視において露出していることがより理解できる。
【0077】
以上述べたように、自動二輪車101においても、自動二輪車101に搭載された内燃機関111の排気通路122には、上流側触媒装置53aつまり三元触媒と、その上流側触媒装置53aよりも下流側に配置される下流側触媒装置53bつまりNOx吸蔵触媒とが配置される。そして、自動二輪車101を前方から見た図13及び図14の車両前面視に示すように、下流側触媒装置53bが収容される触媒装置収容排気管120bは車幅方向において外側に配置され、排気管120bの少なくとも一部は車幅方向において外側に露出している。特にここでは、下流側触媒装置53bが収容される触媒装置収容排気管120bの方が、上流側触媒装置53aが収容される触媒装置収容排気管120aよりも車幅方向において外側に配置されていて、特にここでは露出している。したがって、下流側触媒装置53bつまりNOx吸蔵触媒を走行風で適温に冷却することができ、NOx吸蔵触媒の熱害による劣化を防ぐことが可能になる。また、この構成により、例えばNOx吸蔵触媒を備えた触媒装置収容排気管120bを自動二輪車101のその他の各種部材の配置スペースなどを大きく修正することなしに自動二輪車101に搭載することができる。したがって、鞍乗型車両である自動二輪車101においても、内燃機関20の排気通路122に、三元触媒と、NOx吸蔵触媒とを効果的に配置することが可能になる。なお、NOx吸蔵触媒を備えた触媒装置収容排気管120bの少なくとも一部、例えばその一部又は全部の車幅方向において外側に露出する程度は、自動二輪車101における触媒装置収容排気管120bへの走行風の当たり具合、自動二輪車101の加速性能などに応じて設定されるとよい。
【0078】
更に、図13及び図14に示すように、上流側触媒装置53aつまり三元触媒は、下流側触媒装置53bつまりNOx吸蔵触媒よりも車体中心側につまり中央仮想面IS寄りに位置付けられている。したがって、触媒装置収容排気管120aの上流側触媒装置53aつまり三元触媒を風除け機能部WSの後方に少なくとも部分的に隠れるように積極的に配置することができ、よって三元触媒を備えた触媒装置収容排気管120aに走行風を当たり難くすることができ、三元触媒の温度を適温に維持し続けることが可能になる。
【0079】
特に、三元触媒を備えた第2排気浄化部である触媒装置収容排気管120aの少なくとも一部は、風除け機能部WSの後方に配置されている。よって、三元触媒を備えた触媒装置収容排気管120aを風除け機能部WSの後方に位置付け、触媒装置収容排気管120aに走行風を当たり難くすることができ、よってそこに収容されている三元触媒の温度を適温に維持することが可能になる。
【0080】
更に、前述のように、触媒装置収容排気管120bは、図12の車体右側面視において、車両上下方向においてその下流端120bdが上流端120buよりもわずかに上側に位置している。つまり、自動二輪車101の上下方向において、NOx吸蔵触媒を備えた第1排気浄化部である触媒装置収容排気管120bの上流端120buは触媒装置収容排気管120bの下流端120bdと異なる位置にある。このように、触媒装置収容排気管120bを地上水平面に対して斜めに配置することができるので、触媒装置収容排気管120bの長手方向に延びる面に効率良く走行風を当てることができ、触媒装置収容排気管120bの触媒装置53bつまりNOx吸蔵触媒を適温に冷却することができる。なお、自動二輪車101では、触媒装置収容排気管120bの傾きはわずかであるが、既に図11に基づいて説明したように冷却性能を更に高めるように、触媒装置収容排気管120bは更に大きな傾きを有して自動二輪車101に配置されてもよい。この傾きは、自動二輪車101における触媒装置収容排気管120bへの走行風の当たり具合、自動二輪車101の加速性能などに応じて設定されるとよい。
【0081】
また、図12に示すように、NOx吸蔵触媒を備える第1排気浄化部である触媒装置収容排気管120bの少なくとも一部は、車幅方向において、ブレーキペダル108の内側に位置してブレーキペダル108によって覆われている。この構成により、NOx吸蔵触媒を備える触媒装置収容排気管120bの少なくとも一部をブレーキペダル108で覆うことによって、NOx吸蔵触媒の保護性能を高めることができる。
【0082】
なお、図12から図14には、図示しないが、触媒装置収容排気管120bのすぐ上流側に温度センサが取り付けられ、そのすぐ下流側に排気ガスセンサが取り付けられるとよい。これにより、不図示のECUの制御により、排気ガスのNOxをNOx吸蔵触媒でより効果的に浄化することができる。ECUによる制御、例えば内燃機関111のリーン燃焼運転に関する制御に関しては、第1実施形態において既に説明したことと同じであるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0083】
以上、本発明に係る実施形態及びその変形例について説明したが、本発明はそれらに限定されない。本願の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【0084】
例えば、風除け機能部WSは、第1実施形態では前輪10及びフロントカバー1a等であり、第2実施形態ではフロントフォーク123及びフロントフェンダ126等であったが、これらに限定されない。風除け機能部WSとして、種々の既存の部材等が機能し得、またそのように風除けとして機能する部分又は部材が風除け機能部WSとして更に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1、101…自動二輪車
20、111…内燃機関
50、116…排気装置
51c、51d、120a、120b…触媒装置収容排気管
53a、53b…触媒装置
WS…風除け機能部
図1
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