IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 帝人フロンティア株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特開-布および繊維製品 図1
  • 特開-布および繊維製品 図2
  • 特開-布および繊維製品 図3
  • 特開-布および繊維製品 図4
  • 特開-布および繊維製品 図5
  • 特開-布および繊維製品 図6
  • 特開-布および繊維製品 図7
  • 特開-布および繊維製品 図8
  • 特開-布および繊維製品 図9
  • 特開-布および繊維製品 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052117
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】布および繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/533 20210101AFI20240404BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20240404BHJP
   D03D 23/00 20060101ALI20240404BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20240404BHJP
   D01F 6/62 20060101ALI20240404BHJP
   A41D 31/30 20190101ALI20240404BHJP
   A41D 31/02 20190101ALI20240404BHJP
【FI】
D03D15/533
D03D15/283
D03D23/00
D04B1/16
D01F6/62 305Z
A41D31/30
A41D31/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158603
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187584
【弁理士】
【氏名又は名称】村石 桂一
(72)【発明者】
【氏名】添田 剛
(72)【発明者】
【氏名】中上 総一郎
(72)【発明者】
【氏名】辻 雅之
【テーマコード(参考)】
4L002
4L035
4L048
【Fターム(参考)】
4L002AA07
4L002AC00
4L002AC03
4L002BA00
4L002EA00
4L002FA01
4L035AA05
4L035BB31
4L035HH10
4L048AA20
4L048AA42
4L048AA52
4L048AA56
4L048AC13
4L048CA05
4L048DA01
4L048EA00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】伸長率が比較的に低い布に対して、より適切に表面電位を発生させることができる布および繊維製品を提供する。
【解決手段】本開示の布は、圧電材料を含み、外部からの力により表面電位を発生させる圧電糸で編まれた編物生地Kと、前記編物生地の両側に配置された織物生地Wと、を備えて成り、前記編物生地は、両側に配置された織物生地に対して50%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料を含み、外部からの力により表面電位を発生させる圧電糸で編まれた編物生地と、前記編物生地の両側に配置された織物生地と、を備えて成り、
前記編物生地は、両側に配置された織物生地に対して50%以下である、布。
【請求項2】
前記編物生地は、幅が1cmより長い、請求項1に記載の布。
【請求項3】
前記編物生地に対する前記織物生地の配置方向は、前記編物生地の編み方向と平行である、請求項1に記載の布。
【請求項4】
前記編物生地に対する前記織物生地の配置方向は、前記編物生地の編み方向と垂直である、請求項1に記載の布。
【請求項5】
前記編物生地の伸長率は、5%よりも大きい伸長率である、請求項1に記載の布。
【請求項6】
前記布全体の伸長率が4%以下である、請求項1に記載の布。
【請求項7】
前記配置の方向と交差する方向の一方側の前記編物生地の外側辺の長さ寸法は、他方側の前記編物生地の外側辺の長さ寸法と異なっている、請求項1に記載の布。
【請求項8】
前記編物生地の前記一方側の外側辺の長さ寸法は、前記他方側の外側辺の長さ寸法よりも長くなっており、前記編物生地の前記一方側が着衣者の関節に近接する、請求項7に記載の布。
【請求項9】
前記圧電糸に含まれる圧電性材料は、ポリ乳酸を含んでいる、請求項1に記載の布。
【請求項10】
前記圧電材料は、結晶化度が20%以上である、請求項9に記載の布。
【請求項11】
前記圧電材料は、添加剤を含有していない、請求項9に記載の布。
【請求項12】
前記圧電材料は、加水分解防止剤を含有する、請求項9に記載の布。
【請求項13】
5Vより大きい電位を発生させことができる、請求項1に記載の布。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の布を用いた繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、布および繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外部からのエネルギーにより電位を発生する圧電糸を有する編物で構成された第1の布および第2の布と、第1の布と第2の布とを接続する織物で構成されたジョイント部と、を備えた筒状構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/106841号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、編物で構成された第1の布および第2の布の伸縮によって圧電糸に外部からのエネルギーが加わることで電場が発生し、抗菌効果を発揮するとされている。
【0005】
また、織物で構成されたジョイント部は、編物で構成された第1の布および第2の布と比較して伸縮しにくいため、筒状構造体が変形する力を外部から受けたとき、第1の布および第2の布が編物だけの場合と比べて大きく歪む。そのため、小さな力を受けても電場を生じさせることができる点が知られている(特許文献1の段落[0043]参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1には「編物で構成された第1の布および第2の布」と「織物で構成されたジョイント部」との適切な割合について開示されておらず、表面電位をより適切に発生させるために改善の余地があった。
【0007】
また、例えばブルゾン等の生地全体の伸長率が低い繊維製品に対し、特許文献1に開示の「主たる構成が伸縮しやすい生地(つまり、編物生地)」に関する技術をそのまま適用することは、生地全体の伸長率が織物生地と編物生地とで相反するため困難であった。
【0008】
そこで、本開示は、伸長率が比較的に低い布に対して、より適切に表面電位を発生させることができる布および繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の布は、圧電材料を含み、外部からの力により表面電位を発生させる圧電糸で編まれた編物生地と、前記編物生地の両側に配置された織物生地と、を備えて成り、
前記編物生地は、両側に配置された織物生地に対して50%以下である、布。
【0010】
本開示の繊維製品は、上記布が用いられている。
【0011】
本開示によれば、織物生地の割合が編物生地よりも高い布に対し、編物生地の割合を両側に配置された織物生地に対して50%以下とすることによって、より効果的に表面電位を発生させることができる。なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでなく、また、付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)は、本開示の布の模式図であり、図1(B)は、本開示の布の変形例の模式図である。
図2図2(A)は、本開示の布の他の変形例の模式図であり、図2(B)は、本開示の布の他の変形例の模式図である。
図3図3(A)は、圧電糸(S糸)の構成を示す図であり、図3(B)は、図3(A)のA-A線における断面図であり、図3(C)は、図3(A)のB-B線における断面図である。
図4図4(A)および図4(B)は、ポリ乳酸の一軸延伸方向と、電位方向と、電位形成フィラメントの変形との関係を示す図である。
図5図5(A)は、圧電糸(Z糸)の構成を示す図であり、図5(B)は、図5(A)のA-A線における断面図であり、図5(C)は、図5(A)のB-B線における断面図である。
図6図6は、電位形成フィラメントの周りに誘電体を備える糸の断面を模式的に示す断面図である。
図7図7(A)は、本開示の繊維製品の一例を示すブルゾンの模式図、図7(B)は、本開示の繊維製品の一例を示すブルゾンの変形例の模式図である。
図8図8は、本開示の繊維製品の一例を示すブルゾンの他の変形例の模式図である。
図9図9は、本開示の繊維製品の一例を示すパンツの模式図である。
図10図10は、本開示の繊維製品の一例を示すパンツの変形例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の布および繊維製品について説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本開示の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。なお、本明細書で言及する各種の数値範囲は、特に明記しない限り、下限および/または上限の数値そのものも含むことを意図している。つまり、例えば1~10といった数値範囲を例にとれば、下限値の“1”を含むと共に、上限値の“10”をも含むものとして解釈され得る。また、各種数値に“約”または“程度”が付されている場合もあるが、この“約”および“程度”といった用語は、数パーセント、例えば±10パーセント、±5パーセント、±3パーセント、±2パーセント、±1パーセントの変動を含み得ることを意味する。
【0014】
-本開示の布の説明-
本開示の布Fは、圧電材料を含み、外部からの力により表面電位を発生させる圧電糸で編まれた編物生地Kと、編物生地Kの両側に配置された織物生地Wと、を備えて成る。
【0015】
<編物生地>
本開示の編物生地Kは、例えば図1(A)および図1(B)に示すように、複数のループが互いに連結して成る組織を有する構造、すなわちニット構造を有してよい。例えば、圧電糸のループ(例えば輪状の部分)を作りそのループに次のループをひっかけることを連続して面または組織を形成することで編物を編成することができる。編物生地Kは、より具体的には、よこ編み、たて編み、丸編み、筒編み又は靴下編みなどの編み方により形成され得る組織を有していてよい。このような編物生地Kにはトリコットやラッセルなども含まれる。また、カットソーやニットソーなどの縫製品も本開示の編物生地Kに含まれる。さらにホールガーメントなどの無縫製品も本開示の編物生地Kに含まれる(WHOLEGARMENT(登録商標))。
【0016】
本開示の編物生地Kに含まれ得る組織として、例えば、天竺(平編み、メリヤス編みとも呼ばれる)、ベア天竺、プレーティング天竺、スムース(インターロックとも呼ばれる)、鹿の子(表鹿の子、裏鹿の子)、ニットミス(フロートとも呼ばれる)、ハニカム、サーマル(ワッフルとも呼ばれる)、フライスなどの組織が挙げられるが、これらに限定されるものではない。編物生地Kの表裏で組織が異なっていてよい。また、組織に「タック」が含まれていてもよい。つまり、タック編みが併用されてもよい。組織には「ミス」が含まれていてよい。編物生地Kは、裏パイルであっても、裏起毛であってもよい。組織に依存して、布の肌触り、通気性、伸縮性などを変更することができる。
【0017】
本開示において、「ニット」、必要に応じて「タック」および/または「ミス」の繰り返し最小単位を含む組織を「完全組織」と称する。
【0018】
このような組織は編機を用いて形成しても、手編みにより形成してもよい。編機を使用する場合、その種類に特に制限はなく、従来公知の編機を特に制限なく使用することができる。
【0019】
本開示の布Fにおいて、編物生地Kは、両側に配置された織物生地に対して50%以下である。本明細書において「比率」は、面積比率に基づく比率を意図するものの、幅寸法に基づく比率であってもよい。この数値範囲の根拠は、後述する[実施例]にて詳述する。このような数値範囲に設定することにより、伸長率が比較的に低い布Fに対して、より適切に表面電位を発生させることができる。
【0020】
なお、編物生地Kが両側に配置された織物生地に対して50%以下であれば、編物生地Kの形状は、図1(A)および図1(B)に示すような矩形状に限定されるものではない。例えば、編物生地Kの形状は、円形状、楕円形状または多角形状であってもよい。
【0021】
さらに編物生地Kの形状について、図2(A)に示すように編物生地Kが織物生地Wと隣接する方向を隣接方向X、隣接方向Xと交差する方向を交差方向Yとしたときに、交差方向Yの一方側の編物生地の外側辺の長さ寸法L1は、他方側の編物生地の外側辺の長さ寸法L2と異ならせる形状としてもよい。この場合、編物生地Kの比率は、面積比率に基づく比率であってよいが、隣接方向Xと平行に直線を引いたときの編物生地Kの長さ寸法と織物生地Wの長さ寸法を測定し、どのように直線を引いても編物生地Kの比率が上記数値範囲に含まれていることとしてもよい。また、図2(B)に示すように、交差方向Yの中央部の編物生地の面積比率を大きくし、該中央部より外側の編物生地の面積比率を小さくする形状としてもよい。このような形状であっても、編物生地Kは、両側に配置された織物生地Wに対して50%以下であるため、適切に表面電位を発生させることができる。
【0022】
さらに、本開示の布の好ましい態様として、図2(A)に示す編物生地Kにおける長さ寸法の長い側を着衣者の関節に近接させるようにすることが好ましい。このような構成とすることにより、着衣者の関節の動きに伴って編物生地Kが伸縮すると、編物生地Kを構成する圧電糸に外部からの力(例えば、引張応力および/または引張歪み)が編物生地Kの多くの領域に加わるため、より適切に表面電位を発生させることができる。また、図2(B)に示す編物生地Kも上記と同様に、交差方向Yの中央部の編物生地Kの面積比率が大きい箇所に着衣者の関節が近接するようにしてよい。このような構成としても、編物生地Kの多くの領域に外部からの力が加わり、より適切に編物生地Kに表面電位を発生させることができる。
【0023】
・圧電糸
次に、本開示の布Fにおいて編物生地Kを構成する圧電糸1を、図3~6を参照しながら説明する。圧電糸1は、「電位形成フィラメント10」(又は表面電荷により電場を形成することのできる繊維)を含んで成る。電位形成フィラメント10の数に特に制限はなく、例えば、2本以上、2~500本、好ましくは10~350本、より好ましくは20~200本程度フィラメントが本開示の糸に含まれてよい。
【0024】
本開示において、「電位形成フィラメント」とは、基本的には、上述のとおり、「外部からのエネルギー(例えば、張力および/または応力等)により電荷を発生して電位(具体的には、表面電位)および/または電場を形成することができる繊維(フィラメント)」を意味する(以下、「電位形成繊維」、「電位発生フィラメント」、「電場形成繊維」、「電荷発生繊維」または「電荷発生フィラメント」と称する場合もある)。電位形成フィラメントとして、例えば、特許第6428979号公報に記載の電荷発生繊維などを使用してよい。なお、「電位形成フィラメント」との用語は「電場形成フィラメント」と実質的に同義に用いることができる。
【0025】
「外部からのエネルギー」として、例えば、外部からの力(以下、「外力」と称する場合もある)、具体的には圧電糸1もしくは電位形成フィラメント10に変形もしくは歪みを生じさせるような力および/または圧電糸1もしくは電位形成フィラメント10の軸方向にかかる力、より具体的には、張力(例えば圧電糸1もしくは電位形成フィラメント10の軸方向の引張力)および/または応力もしくは歪力(圧電糸1もしくは電位形成フィラメント10にかかる引張応力もしくは引張歪み)および/または圧電糸1もしくは電位形成フィラメント10の横断方向にかかる力などの外力が挙げられる。
【0026】
圧電糸1において、外力の適用により発生する表面電位は、例えば0.5Vより大きい、好ましくは1.0V以上であってよい(正負いずれの電位も発生させることができる)。表面電位が0.5Vより大きい電位を発生させると、本開示の布Fにおいて、菌の増殖を抑制することができる。ここで、表面電位の測定方法に特に制限はなく、例えば走査型プローブ顕微鏡などを用いて測定することができる。また、表面電位により、直接的な殺菌・殺ウイルス作用を有していてもよく、細菌や真菌などの菌やウイルスが有する電位とは反対の電位を発生させることで菌やウイルスを寄せ付けないことに起因する作用であってもよい。
【0027】
電位形成フィラメント10の寸法(長さ、太さ(径)など)や、形状(断面形状など)に特に制限はない。このような電位形成フィラメント10を有して成る圧電糸1は、太さの異なる複数の電位形成フィラメント10を含んでよい。従って、圧電糸1は、長さ方向において、径が一定であっても、一定でなくてもよい。
【0028】
電位形成フィラメント10は、長繊維であっても、短繊維であってもよい。電位形成フィラメント10は、例えば0.01mm以上の長さ(寸法)を有してよい。長さは、所望の用途に応じて、適宜、選択すればよい。
【0029】
電位形成フィラメント10の太さ(径)に特に制限はなく、電位形成フィラメント10の長さに沿って、同一(一定)であっても、同一でなくてもよい。電位形成フィラメント10は、例えば0.001μm(1nm)~1mmの太さを有してよい。太さは、所望の用途に応じて、適宜、選択すればよい。
【0030】
さらに、圧電糸1の繊維強度は、1~10cN/dtexであることが好ましい。これにより、圧電糸1は、高い電位を発生するためにより大きな変形が生じたとしても、破断することなく耐えることができる。繊維強度は、1~7cN/dtexがより好ましく、1~5cN/dtexが最も好ましい。同様の趣旨により、圧電糸1の伸長率は、5%より大きく50%以下であることが好ましい。
【0031】
電位形成フィラメント10の形状、特に断面形状に特に制限はないが、例えば円形、楕円形、矩形、異形の断面を有していてよい。円形の断面形状を有することが好ましい。
【0032】
電位形成フィラメント10は、例えば、圧電効果(外力による分極現象)または圧電性(機械的ひずみを与えたときに電圧を発生する、あるいは逆に電圧を加えると機械的ひずみを発生する性質)を有する材料(以下、「圧電材料」又は「圧電体」と称する場合もある)を含んで成ることが好ましい。なかでも、圧電材料を含んで成る繊維(以下、「圧電繊維」と称する場合もある)を使用することが特に好ましい。圧電繊維は、圧電気により電場を形成することができるため、電源が不要であるし、感電のおそれもない。なお、圧電繊維に含まれる圧電材料の寿命は、例えば、薬剤等による抗菌効果よりも長く持続する。また、このような圧電繊維では、アレルギー反応を引き起こす可能性も低い。
【0033】
「圧電材料」は、圧電効果または圧電性を有する材料であれば特に制限なく使用することができ、圧電セラミックスなどの無機材料であっても、ポリマーなどの有機材料であってもよい。
【0034】
「圧電材料」(又は「圧電繊維」)は、「圧電性ポリマー」を含んで成ることが好ましい。 「圧電性ポリマー」として、「焦電性を有する圧電性ポリマー」や、「焦電性を有していない圧電性ポリマー」などが挙げられる。
【0035】
「焦電性を有する圧電性ポリマー」とは、概して、焦電性を有し、温度変化を与えるだけで、その表面に電荷(又は電位)を発生させることもできるポリマー材料から成る圧電材料を意味する。このような圧電性ポリマーとして、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。特に、人体の熱エネルギーによって、その表面に電荷(又は電位)を発生させることができるものが好ましい。
【0036】
「焦電性を有していない圧電性ポリマー」とは、概して、ポリマー材料から成り、上記の「焦電性を有する圧電性ポリマー」を除く圧電性ポリマーを意味する。このような圧電性ポリマーとして、例えば、ポリ乳酸(PLA)などが挙げられる。ポリ乳酸としては、L体モノマーが重合したポリ-L-乳酸(PLLA)や、D体モノマーが重合したポリ-D-乳酸(PDLA)などが知られている。
【0037】
なお、圧電糸1は、電位形成フィラメント10(又は電荷発生繊維)として、芯糸に導電体を用いて、当該導電体に絶縁体を巻き(カバリング)、該導電体に電圧を加えて電荷を発生させる構成を有するものであってもよい。
【0038】
圧電糸1は、複数の電位形成フィラメント10を単に引きそろえただけの糸(引きそろえ糸または無撚糸)であってよく、撚りをかけた糸(撚り合わせ糸または撚糸)であってもよく、捲縮をかけた糸(捲縮加工糸または仮撚糸)であってもよく、紡いだ糸(紡績糸)であってもよい。なお、糸の撚り合わせ方法、捲縮方法、紡績方法に特に制限はなく、従来公知の方法を使用することができる。
【0039】
例えば、図3(A)に示す通り、圧電糸1sは、複数の電位形成フィラメント10を撚り合わせることによって構成することもできる。図3(A)に示す態様では、圧電糸1sは、電位形成フィラメント10を左旋回して撚られた左旋回糸(以下、「S糸」と称する)であるが、電位形成フィラメント10を右旋回して撚られた右旋回糸(以下、「Z糸」と称する)であってもよい(例えば、図5(A)の圧電糸1zを参照のこと)。このように、圧電糸1は、撚り合わせ糸の場合、「S糸」、「Z糸」のいずれであってもよい。
【0040】
圧電糸1において、電位形成フィラメント10の間隔は、約0μm~約10μm、一般的には5μm程度である。尚、電位形成フィラメント10の間隔が0μmである場合、電場形成フィラメント同士が互いに接触していることを意味する。
【0041】
以下、圧電糸1を詳述するために、電位形成フィラメント10として圧電材料を含んで成り、かかる圧電材料が「ポリ乳酸」である態様を一例として挙げて、図3図5を参照しながら、圧電糸1の例をより詳しく説明する。
【0042】
圧電材料として使用することができるポリ乳酸(PLA)は、キラル高分子であり、主鎖が螺旋構造を有する。ポリ乳酸は、一軸延伸されて分子が配向すると、圧電性を発現することができる。さらに熱処理を加えて結晶化度を高めると圧電定数が高くなる。このように結晶化度を高めることで表面電位の値を向上させることができる。
【0043】
ポリ乳酸(PLA)の光学純度(エナンチオマー過剰量(e.e.))は、下記式にて算出することができる。
光学純度(%)={|L体量-D体量|/(L体量+D体量)}×100
例えば、D体およびL体のいずれにおいても、光学純度は、90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは98重量%以上100重量%以下、さらにより好ましくは99.0重量%以上100重量%以下、特に好ましくは99.0重量%以上99.8重量%以下である。ポリ乳酸(PLA)のL体量とD体量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法により得られる値を用いることができる。
【0044】
図3(A)に示すとおり、一軸延伸されたポリ乳酸を含んで成る電位形成フィラメント(又は圧電繊維)10は、厚み方向を第1軸、延伸方向900を第3軸、第1軸および第3軸の両方に直交する方向を第2軸と定義したとき、圧電歪み定数としてd14およびd25のテンソル成分を有する。
【0045】
したがって、ポリ乳酸は、一軸延伸された方向に対して45度の方向に歪みが生じた場合に最も効率よく電荷(又は電位)を発生することができる。
【0046】
ポリ乳酸の数平均分子量(Mn)は、例えば6.2×10であり、重量平均分子量(Mw)は、例えば1.5×10である。なお、分子量は、これらの値に限定されるものではない。
【0047】
図4(A)および図4(B)は、ポリ乳酸の一軸延伸方向と、電場方向と、電位形成フィラメント10および/または圧電糸1を含む繊維の変形との関係を示す図である。
【0048】
図4(A)に示すように、電位形成フィラメント10は、第1対角線910Aの方向に縮み、第1対角線910Aに直交する第2対角線910Bの方向に伸びると、紙面の裏側から表側に向く方向に電場を生じさせることができる。すなわち、電位形成フィラメント10は、紙面表側では、負の電荷を発生させることができる。電位形成フィラメント10は、図4(B)に示すように、第1対角線910Aの方向に伸び、第2対角線910Bの方向に縮む場合も電荷(又は電位)を発生することができるが、極性が逆になり、紙面の表面から裏側に向く方向に電場を生じさせることができる。すなわち、電位形成フィラメント10は、紙面表側では、正の電荷を発生させることができる。
【0049】
ポリ乳酸は、延伸による分子の配向処理で圧電性が生じ得るため、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の他の圧電性ポリマーまたは圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。一軸延伸されたポリ乳酸の圧電定数は、5~30pC/N程度であり、ポリマーの中では非常に高い圧電定数を有する。さらに、ポリ乳酸の圧電定数は経時的に変動することがなく、極めて安定している。
【0050】
電位形成フィラメント10は、断面が円形状の繊維であることが好ましい。電位形成フィラメント10は、例えば、圧電性ポリマーを押し出し成型して繊維化する手法、圧電性ポリマーを溶融紡糸して繊維化する手法(例えば、紡糸工程と延伸工程とを分けて行う紡糸・延伸法、紡糸工程と延伸工程とを連結した直延伸法、仮撚り工程も同時に行うことのできるPOY-DTY法、または高速化を図った超高速紡糸法などを含む)、圧電性ポリマーを乾式あるいは湿式紡糸(例えば、溶媒に原料となるポリマーを溶解してノズルから押し出して繊維化するような相分離法もしくは乾湿紡糸法、溶媒を含んだままゲル状に均一に繊維化するようなゲル紡糸法、または液晶溶液もしくは融体を用いて繊維化する液晶紡糸法などを含む)により繊維化する手法、または圧電性ポリマーを静電紡糸により繊維化する手法等により製造され得る。なお、電位形成フィラメント10の断面形状は、円形に限るものではない。
【0051】
例えば図3に示す圧電糸1sは、このようなポリ乳酸を含んで成る電位形成フィラメント10を複数本で撚ってなる糸(マルチフィラメント糸)(S糸)であってよい(撚り方に特に制限はない)。各電位形成フィラメント10の延伸方向900は、それぞれの電位形成フィラメント10の軸方向に一致している。したがって、電位形成フィラメント10の延伸方向900は、圧電糸1sの軸方向に対して、左に傾いた状態となる。なお、その角度は、撚り回数に依存する。
【0052】
このようなS糸である圧電糸1sに「外力」として例えば張力(好ましくは軸方向の張力)または応力(好ましくは軸方向の引張応力)をかけた場合、圧電糸1の表面には負(-)の電荷(又は電位)が発生し、その内側には正(+)の電荷(又は電位)を発生させることができる。
【0053】
圧電糸1は、この電荷により生じ得る電位差によって電場を形成することができる。この電場は近傍の空間にも漏れて他の部分と結合電場を形成することができる。また、圧電糸1に生じる電位は、近接する所定の電位、例えば人体等の所定の電位(グランド電位を含む)を有する物体に近接した場合に、圧電糸1と該物体との間に電場を生じさせることもできる。
【0054】
次に、図5を参照すると、圧電糸1zは、Z糸であるため、電位形成フィラメント(又は圧電繊維)10の延伸方向900は、圧電糸1zの軸方向に対して、右に傾いた状態となる。なお、その角度は、糸の撚り回数に依存する。
【0055】
このようなZ糸である圧電糸1zに「外力」として例えば張力(好ましくは軸方向の張力)または応力(好ましくは軸方向の引張応力)をかけた場合、圧電糸1zの表面には正(+)の電荷(又は電位)が発生し、その内側には負(-)の電荷(又は電位)を発生させることができる。
【0056】
圧電糸1zも、この電荷により生じ得る電位差によって電場を形成することができる。この電場は近傍の空間にも漏れて他の部分と結合電場を形成することができる。また、圧電糸1zに生じる電位は、近接する所定の電位、例えば人体等の所定の電位(グランド電位を含む)を有する物体に近接した場合に、圧電糸1zと該物体との間に電場を生じさせることもできる。
【0057】
さらに、S糸である圧電糸1sと、Z糸である圧電糸1zとを近接させた場合には、圧電糸1sと圧電糸1zとの間に電場を生じさせることもできる。
【0058】
圧電糸1sと圧電糸1zとで生じる電荷(又は電位)の極性は互いに異なる。各所の電位差は、繊維同士が複雑に絡み合うことにより形成され得る電場結合回路、または水分等で糸の中に偶発的に形成され得る電流パスで形成され得る回路により定義され得る。
【0059】
圧電糸1s、圧電糸1zについては、特許第6428979号公報を読むとより深く理解することができる。また、特許第6428979号公報は、本明細書中に参照することで組み込まれる。
【0060】
圧電糸1において、電位形成フィラメント10がポリ乳酸(PLA)から構成されることが好ましい。電位形成フィラメント10がポリ乳酸などの圧電材料を含むことで表面電位をより適切に制御することができる。また、ポリ乳酸は疎水性であることから、さらりとした肌触りを提供することができ、これによって、編み物構造体に快適性を付与することもできる。また、ポリ乳酸は、生分解性プラスチックとして知られているため、最終的にCOと水に分解することができ、環境に対する負荷を低減することができる。
【0061】
「ポリ乳酸」の結晶化度は、例えば20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらにより好ましくは、50%以上、特に好ましくは55%以上であることが好ましい。結晶化度は、例えば、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimetry)、X線回折法(XRD:X-ray diffraction)、広角X線回折測定(WAXD:Wide Angle X-ray Diffraction)などの測定方法により決定することができる。このような範囲内であると、ポリ乳酸結晶に由来する圧電性が高くなり、ポリ乳酸の圧電性による分極をより効果的に生じさせることができる。なお、本開示において、WAXDを用いて測定された結晶化度の測定値と、DSCを用いて測定された結晶化度の測定値は、約1.5倍異なる知見(DSC測定値/WAXD測定値≒1.5)が得られている。
【0062】
圧電糸1において、可塑剤や滑剤等の添加剤は入っていない。一般的に、圧電糸1において添加剤が含有されていると、表面電位が発生し難い傾向にあることが分かっている。そこで、適切に表面電位を発生させるため、圧電糸1には添加剤を含有させないことが好ましい。本開示でいう「可塑剤」とは、圧電糸1に柔軟性を与えるための材料であり、「滑剤」とは、圧電糸1の分子の滑りを向上させる材料である。具体的には、ポリエチレングリコール、ヒマシ油系脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ステアリン酸アマイド、グリセリン脂肪酸エステル等を意図している。これらの材料が本開示の圧電糸1に含有されていない。
【0063】
圧電糸1において、加水分解防止剤を含有してよい。特に、ポリ乳酸(PLA)に対する加水分解防止剤を含有してよい。加水分解防止剤の一例として、カルボジイミドを含有してよい。より好ましくは環状カルボジイミドを含有してよい。より具体的には、特許5475377号に記載の環状カルボジイミドとしてもよい。このような環状カルボジイミドによれば、高分子化合物の酸性基を有効に封止することができる。なお、環状カルボジイミド化合物に対し、高分子の酸性基を有効に封止できる程度にカルボキシル基封止剤を併用してもよい。かかるカルボキシル基封止剤としては、特開2005-2174号公報記載の剤、例えば、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物および/またはオキサジン化合物、などが例示される。
【0064】
以下、加水分解防止剤の役割について説明する。従来から一般的に知られたPLAを含有する繊維またはフィラメント(表面電位を発生させない繊維またはフィラメント)は、PLAの加水分解によって酸が発生し、当該酸が菌に作用することによって抗菌効果を奏していた。そのため、PLAに加水分解が起きると繊維またはフィラメントの劣化が生じていた。しかしながら、本開示の電位形成繊維または電位形成フィラメントは、抗菌メカニズムが従来と異なり、上述したとおり表面電位を発生させることによって抗菌効果を奏するため、加水分解を起こす必要はない。さらに、本開示の電位形成繊維または電位形成フィラメントは加水分解防止剤を含有するため、繊維またはフィラメントに加水分解が起きることを防止して繊維またはフィラメントの劣化を抑えることが可能となる。
【0065】
圧電糸1は、上記の態様、特にポリ乳酸から構成され得る糸に限定して解釈されるべきではない。また、圧電糸1の製造方法についても特に制限はなく、上記の製造方法に限定されるものではない。
【0066】
・圧電糸の他の態様
さらに、圧電糸1は、電位形成フィラメント10の周りに「誘電体」が設けられてよい。例えば、図6の断面図で模式的に示すとおり、電位形成フィラメント(又は圧電繊維)10の周りには誘電体100を設けることができる。
【0067】
本開示において「誘電体」とは、「誘電性」(電場により電気的に正負に分極(又は誘電分極又は電気分極)する性質)を有する材料または物質を含んで成るものを意味し、その表面には電荷を溜めることができる。
【0068】
誘電体100は、電位形成フィラメント10の長手軸方向および周方向に存在してよく、電場形成フィラメントを完全に被覆していても、部分的に被覆していてもよい。なお、誘電体100が電位形成フィラメント10を部分的に被覆する場合、被覆されていない部分は、電位形成フィラメント10自体がそのまま露出していてよい。
【0069】
従って、誘電体100は、電位形成フィラメント10の長手軸方向において、全体的に設けられていても、部分的に設けられていてよい。また、誘電体100は、電位形成フィラメント10の周方向において、全体的に設けられていても、部分的に設けられていてもよい また、誘電体100は、その厚みが均一であっても、不均一であってもよい。
【0070】
誘電体100は、複数の電位形成フィラメント10の間に存在していてもよく、この場合、複数の電位形成フィラメント10の間に誘電体100が存在しない部分があってもよい。また、誘電体100の中に気泡や空洞が存在していてもよい。
【0071】
誘電体100は、誘電性を有する材料または物質を含む限り特に制限はない。誘電体100として、主に繊維産業において表面処理剤(又は繊維処理剤)として使用できることが知られている誘電性の材料(例えば、油剤、帯電防止剤など)を用いてもよい。
【0072】
圧電糸1において、誘電体100は、油剤を含んで成ることが好ましい。油剤として、電位形成フィラメント10の製造で使用され得る表面処理剤(又は繊維処理剤)として用いられる油剤(製糸油剤)などを使用することができる(例えば、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の界面活性剤など)。また、製布(たとえば製編、製織など)の工程で使用され得る表面処理剤(又は繊維処理剤)として用いられる油剤(例えば、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の界面活性剤など)や、仕上工程で使用され得る表面処理剤(又は繊維処理剤)として用いられる油剤(例えば、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の界面活性剤など)も使用することができる。ここでは代表例として、フィラメント製造工程、製布工程、仕上げ工程などを挙げたが、これらの工程に限定されるものではない。油剤として、特に電位形成フィラメント10の摩擦を低減するために用いられる油剤などを使用することが好ましい。
【0073】
油剤として、例えば、竹本油脂株式会社製デリオン・シリーズ、松本油脂製薬株式会社製マーポゾール・シリーズ、マーポサイズ・シリーズ、丸菱油化工業株式会社製パラテックス・シリーズなどが挙げられる。
【0074】
油剤は、電位形成フィラメント10に沿って、全体的に存在していても、少なくとも一部に存在していてもよい。また、電位形成フィラメント10を圧電糸1に加工した後、洗濯によって油剤の少なくとも一部または全部が電位形成フィラメント10から脱落していてもよい。
【0075】
また、電位形成フィラメント10の摩擦を低減するために用いられる誘電体100は、洗濯時に使用される洗剤や柔軟剤などの界面活性剤であってもよい。
【0076】
洗剤として、例えば、花王株式会社製アタック(登録商標)・シリーズ、ライオン株式会社製トップ(登録商標)・シリーズ、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社製アリエール(登録商標)・シリーズなどが挙げられる。
【0077】
柔軟剤として、例えば、花王株式会社製ハミング(登録商標)・シリーズ、ライオン株式会社製ソフラン(登録商標)・シリーズ、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社製レノア(登録商標)・シリーズなどが挙げられる。
【0078】
誘電体100は、導電性(電気を通す性質)を有していてよく、その場合、誘電体100は、帯電防止剤を含んで成ることが好ましい。帯電防止剤として、電位形成フィラメント10の製造で使用され得る表面処理剤(又は繊維処理剤)として用いられる帯電防止剤などを使用することができる。帯電防止剤として、特に電位形成フィラメント10のほぐれを低減するために用いられる帯電防止剤を使用することが好ましい。
【0079】
帯電防止剤として、例えば、株式会社日新化学研究所製カプロン・シリーズ、日華化学株式会社製ナイスポール・シリーズ、デートロン・シリーズなどが挙げられる。
【0080】
帯電防止剤は、電位形成フィラメント10に沿って、全体的に存在していても、少なくとも一部に存在していてもよい。また、電位形成フィラメント10を圧電糸1に加工した後、洗濯によって帯電防止剤の少なくとも一部または全部が電位形成フィラメント10から脱落していてもよい。
【0081】
また、上述の油剤や帯電防止剤などの表面処理剤(又は繊維処理剤)や、洗剤、柔軟剤などは、電位形成フィラメント10の周りに存在していなくてもよい。すなわち、電位形成フィラメント10または圧電糸1は、上述の油剤や帯電防止剤などの表面処理剤(又は繊維処理剤)や、洗剤、柔軟剤などを含まない場合もある。その場合、電位形成フィラメント10の間に存在する空気(又は空気層)が誘電体として機能し得る。従って、この場合、誘電体は空気を含んで成る。
【0082】
例えば、電位形成フィラメント10の周りに上述の油剤や帯電防止剤などの表面処理剤(又は繊維処理剤)や、洗剤、柔軟剤などが付着した糸を洗濯や溶剤浸漬によって処理することで上述の表面処理剤(又は繊維処理剤)や、洗剤、柔軟剤などを含まない圧電糸1を使用してもよい。その場合、無垢の電位形成フィラメント10が露出することになる。あるいは、本開示において、無垢の電位形成フィラメント10のみを含んで成る圧電糸1を使用してもよい。
【0083】
また、本開示では、例えば洗濯や溶剤浸漬などの処理によって、上述の油剤や帯電防止剤などの表面処理剤(又は繊維処理剤)や、洗剤、柔軟剤などが部分的に除去されて無垢の電位形成フィラメント10が部分的に露出した糸を使用してもよい。
【0084】
誘電体100の厚み(又は電位形成フィラメント10の間隔)は、約0μm~約10μm、好ましくは約0.5μm~約10μm、より好ましくは約2.0μm~約10μm、一般的には5μm程度である。
【0085】
<織物生地>
織物生地Wは、図1(A),(B)に示すように、経糸を平行に並べ、それに対して直角に緯糸を一定の法則に従って交錯させて形成された生地としてよい。織物生地Wに用いられる経糸および緯糸は、一般的な天然繊維でも化学繊維でもよい。また、織物生地Wに上述の「電場形成フィラメントを含む圧電糸」を用いてもよい。織物生地Wに電場形成フィラメントを含む圧電糸を用いた場合、織物生地Wを構成する圧電糸に外部からのエネルギーが加わることによって、織物生地Wに対して電場を形成してもよい。なお、編物生地Kをより伸長させる観点から、織物生地Wには、編物生地Kに用いられた糸よりも伸長し難い糸を用いることが好ましい。
【0086】
織物生地Wにおいて、織物組織は特に限定されない。例えば、織物組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、完全二重織、たてビロードなどが例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。なかでも、布帛を2層以上の多層構造織物として、各層を構成する繊維の総繊度や単繊維繊度を異ならせたり、密度を異ならせることにより、毛細管現象による吸水性を高めることも好ましい。
【0087】
織物生地Wは、織物生地Wによって挟まれた編物生地Kよりも比率が大きくされている。一般的に織物生地Wは、編物生地Kよりも伸長しにくいため、織物生地Wの比率が大きい布の伸長率は低くなる。一例として、布F全体の伸長率は4%以下であってよい。このような伸長率が低い布に対し、両側から布を伸長させると、伸長に基づく外部エネルギーを編物生地Kに効果的に付与することができる。具体的には、面積比率が大きい編物生地は伸長しにくく、面積比率が小さい編物生地が伸長する。そのため、編物生地Kを構成する圧電糸に外部エネルギーが付与されて、圧電糸に表面電位を発生させることができ、当該表面電位によって抗菌効果を発揮させることができる。
【0088】
織物生地Wは、図1Aに示すとおり、編物生地Kの編み方向と垂直に配置されてよい。ここで、本明細書でいう「編み方向」とは、編物生地Kを構成する糸が供給される方向を意図しており、図1Aでは、編み方向は、交差方向Yと一致している。このように織物生地Wを編物生地Kに対して配置することにより、編物生地Kを構成する圧電糸に対して適切に外部からのエネルギーを付与することができる。具体的には、編物生地Kの編み方向の伸長は、編みのループが緩むことによって伸長し易いが、編物生地Kの交差方向Yの伸長は、編み方向と比較して伸長しにくい。そのため、編物生地Kを構成する圧電糸には編物生地Kが伸長しにくい分、より多くのエネルギーを編物生地Kに付与することができる。したがって、より効率的に編物生地Kに表面電位を発生させることができる。
【0089】
なお、織物生地Wを図1Bに示すとおり、編物生地Kの編み方向(隣接方向X)と平行に配置してもよい。この場合であっても、編物生地Kに対し表面電位を発生させることができる。
【0090】
-本開示の繊維製品の説明-
次に、本開示の繊維製品Cの具体的な形態について説明する。本開示の繊維製品Cには、上述した布Fが用いられている。本開示の繊維製品Cの一例として、ブルゾン(図7および図8参照)またはパンツ(図9および図10参照)が挙げられる。以下、具体的な繊維製品Cについて説明する。
【0091】
1.ブルゾン
繊維製品Cがブルゾンである場合、上半身の動きにより編物生地Kを構成する圧電糸を伸縮させることができる。そのため、本明細書でいう「ブルゾン」は、上半身に着用可能な着用物を意図している。つまり、「ブルゾン」以外のその他のトップス、ジャケットなどにも応用することが可能である。
【0092】
繊維製品Cにおける編物生地Kが配置される位置の一例として、図7(A)に示すように、肩関節の近傍の脇部であってよい。より好ましくは、着衣者の脇部から腸骨にかけて編物生地Kが伸びていてよい。図7(A)に示す繊維製品Cの場合、編物生地Kの比率は、編物生地Kの幅D1と織物生地Wの幅D2に基づいて算出されるが、編物生地Kの面積と織物生地Wの面積に基づいて算出されてもよい。
【0093】
また、図7(B)に示すように、脇部側の編物生地Kの長さ寸法L3は、腸骨側の編物生地Kの長さ寸法L4よりも長くしてもよい。図7(B)に示す態様であれば、脇部側の編物生地Kの領域が広いため、着衣者の肩関節の可動に伴いさらに適切に編物生地Kを構成する圧電糸に効率的にエネルギーを付与することができる。したがって、汗をかきやすく菌が繁殖し易い脇部に対し、適切に抗菌性を付与することができる。なお、編物生地Kの比率は、編物生地Kの幅D1と織物生地Wの幅D2に基づいて算出されるが、編物生地Kの面積と織物生地Wの面積に基づいて算出されてもよい。なお、図7(B)に示す繊維製品Cの場合、編物生地Kの比率は、隣接方向と平行に直線を引いたときの編物生地Kの長さ寸法と織物生地Wの長さ寸法を測定し、どのように直線を引いても編物生地Kの比率が上述した50%以下の数値範囲に含まれていることとしてもよい。また、編物生地Kの面積比率と織物生地Wの面積比率とを算出し、当該面積比率から編物生地Kの比率を算出してもよい。
【0094】
なお、編物生地Kが配置される位置は、肩関節の近傍に限定されるものではなく、図8に示すように肘関節の近傍としてもよい。図8に示す繊維製品Cの場合、編物生地Kの比率は、編物生地の丈D3と織物生地Wの丈D4に基づいて算出されるが、編物生地Kの面積と織物生地Wの面積に基づいて算出されてもよい。また、編物生地Kの面積比率と織物生地Wの面積比率とを算出し、当該面積比率から編物生地Kの比率を算出してもよい。
【0095】
2.パンツ
繊維製品Cがパンツである場合、下半身の動きにより編物生地Kを構成する圧電糸1を伸縮させることができる。そのため、本明細書でいう「パンツ」は、下半身に着用可能な着用物を意図している。
【0096】
繊維製品Cにおける編物生地Kが配置される位置の一例として、図9に示すように、膝関節の近傍であってよい。図9に示す繊維製品Cの場合、編物生地Kの比率は、編物生地Kの丈D5と織物生地Wの丈D6に基づいて算出されるが、編物生地Kの面積と織物生地Wの面積に基づいて算出されてもよい。このような態様によれば、着衣者の膝関節の可動によって編物生地Kを構成する圧電糸1に効率的にエネルギーを付与することができる。なお、編物生地Kが配置される位置は、膝関節の近傍に限定されるものではなく、図10に示すように腸骨から足首にかけて編物生地Kが伸びていてもよい。図10に示す繊維製品Cの場合、編物生地Kの比率は、編物生地Kの幅D7と織物生地Wの幅D8に基づいて算出されるが、編物生地Kの面積と織物生地Wの面積に基づいて算出されてもよい。
【実施例0097】
本開示の布を用いた繊維製品の実施例1~5および比較例1について説明する。なお、実施例1~5および比較例1の繊維製品の編物生地は、PLA(総繊度84デシテックス、フィラメント数72本)およびナイロン(総繊度78デシテックス、フィラメント数48本)をそれぞれ48:52の比率で含む丸編、目付180g/mとした。また、実施例1,2の繊維製品の織物生地は、ポリエチレンテレフタレート100%からなる平織、目付65g/mとし、実施例3~5および比較例1の繊維製品の織物生地は、綿およびポリエチレンテレフタレートをそれぞれ65:35の比率で含む平織、目付250g/mとした。ここで、編物生地および織物生地の構成は、上記構成に限定されるものではなく、「本開示の布の説明」の<編物生地>および<織物生地>で説明した構成としてもよい。つまり、織物生地は、「電場形成フィラメントを含む圧電糸」を含んでいてもよい。
【0098】
-実施例1-
編物生地の両側に織物生地が配置された布を備え、編物生地は、両側に配置された織物生地に対して2.5%であるブルゾンを製造した。具体的には、図7(A)に示すように、編物生地Kの幅D1が2.5cmであり、編物生地Kの両側(表側と裏側)に位置する織物生地の幅D2が、それぞれ50cm(合計100cm)であるブルゾンを製造した。そして、編物生地Kの比率は、幅D1および幅D2に基づいて算出した。
【0099】
-実施例2-
編物生地の両側に織物生地が配置された布を備え、編物生地は、両側に配置された織物生地に対して10%であるブルゾンを製造した。具体的には、図7(A)に示すように、編物生地Kの幅D1が10cmであり、編物生地Kの両側(表側と裏側)に位置する織物生地の幅D2が、それぞれ50cm(合計100cm)であるブルゾンを製造した。そして、編物生地Kの比率は、幅D1および幅D2に基づいて算出した。
【0100】
-実施例3-
編物生地の両側に織物生地が配置された布を備え、編物生地は、両側に配置された織物生地(に対して17%であるパンツを製造した。具体的には、図10に示すように、編物生地Kの幅D7が5cmであり、編物生地Kの両側に位置する織物生地の幅D8が、それぞれ15cm(合計30cm)であるパンツを製造した。そして、編物生地Kの比率は、幅D7および幅D8に基づいて算出した。
【0101】
-実施例4-
編物生地の両側に織物生地が配置された布を備え、編物生地は、両側に配置された織物生地に対して25%であるパンツを製造した。具体的には、図9に示すように、編物生地Kの丈D5が20cmであり、編物生地Kの両側に位置する織物生地の丈D6が、それぞれ45cm、35cm(合計80cm)であるパンツを製造した。そして、編物生地Kの比率は、丈D5および丈D6に基づいて算出した。
【0102】
-実施例5-
編物生地の両側に織物生地が配置された布を備え、編物生地は、両側に配置された織物生地に対して50%であるパンツを製造した。具体的には、図9に示すように、編物生地Kの丈D5が50cmであり、編物生地Kの両側に位置する織物生地の丈D6が、それぞれ30cm、20cm(合計50cm)であるパンツを製造した。そして、編物生地Kの比率は、丈D5および丈D6に基づいて算出した。
【0103】
-比較例1-
編物生地の両側に織物生地が配置された布を備え、編物生地は、両側に配置された織物生地に対して75%であるパンツを製造した。具体的には、図9に示すように、編物生地Kの丈D5が45cmであり、編物生地Kの両側に位置する織物生地の丈D6が、それぞれ35cm、25cm(合計60cm)であるパンツを製造した。そして、編物生地Kの比率は、丈D5および丈D6に基づいて算出した。
【0104】
なお、他の繊維製品として、編物生地の両側に織物生地が配置された布を備え、編物生地は、両側に配置された織物生地に対して1.6%であるの製造を試みた。具体的には、図7(A)に示すように、編物生地Kの幅D1が1.0cmであり、編物生地Kの両側(表側と裏側)に位置する織物生地の幅D2が、それぞれ50cm(合計100cm)であるブルゾンの製造を試みた。しかしながら、編物生地Kの幅が狭いため、編物生地と織物生地との縫製が不可能であった。言い換えると、編物生地の幅が1.0cm以下であるブルゾンは、現実的に製造することが不可能であった。以上の見解に基づくと、編物生地の下限は、幅1.0cmより長くすることが好ましい。
【0105】
上記実施例1~5および比較例1に対し、伸長率評価、表面電位評価および抗菌評価を行った。具体的な評価内容を以下、記載する。
【0106】
(伸長率評価)
・布全体の伸長率評価について
実施例および比較例の製品を着用した後に、歩行動作を行って衣服として伸長する部位(例えば、脇部や股間部)に対し歪みを計測し、当該計測に基づいて伸長率を測定した。測定機器、測定範囲、測定条件は下記のとおりである。
測定機器:ARAMIS Adjustable Base 12M
測定範囲:1160×940×940mm2
測定条件:7Hz, f4.0
【0107】
・編物生地の伸長率評価について
布全体の伸長率評価と同様の方法を用い、編物生地部分に対して計測し、当該計測に基づいて伸長率を測定した。
【0108】
(表面電位評価)
実施例および比較例の製品について、静電気力顕微鏡(Electric Force Microscope (EFM))(トレック社製、Model 1100TN)を用いて布の表面電位を測定した。なお、表面電位の評価は、接地電極としての導電性ブロック上に配置した実施例および比較例の製品を少なくとも1方向に引っ張ることが可能な引張機構を備えた電位測定装置(特願2021-065673号参照)を用いた手法を採用した。つまり、特許文献1(国際公開第2020/241432号)に記載の(a)糸を一軸方向に所定量伸張する。(b)導電繊維からなる芯材に繊維をカバリングする。(c)芯材を接地する。(d)電気力顕微鏡により糸の表面電位を測定する。との測定手法とは異なる手法を採用した。
【0109】
(抗菌評価)
抗菌試験の内容は、以下のとおりである。
(1)初期状態の比較例および実施例の製品について、生菌数を測定する。
(2)比較例および実施例の製品の18時間静置後の生菌数を測定する。
(3)18時間静置した比較例および実施例の製品に対し、18時間連続して製品を伸縮させて表面電位を発生させた後の生菌数を測定する。
つまり、本開示の「抗菌活性値」とは、以下より算出される値を意図している。
抗菌活性値=生菌数A-生菌数B
生菌数A:18時間静置後の生菌数
生菌数B:18時間連続して製品を伸縮させて表面電位を発生させた後の生菌数
なお、生菌数の評価は、特許6922546号公報および特許6292368号公報に記載されているように、JIS L1902の手法に基づいて行った。なお、生菌数の数値は、Colony Forming Unit(コロニー フォーミング ユニット)の対数値(1gあたりのコロニーの対数値)を示すものである。
【0110】
上記伸長率評価、表面電位評価および抗菌評価の結果を以下の表に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1の結果によれば、実施例1~5の繊維製品は、両側に配置された織物生地に対して編物生地が50%以下であるため、比較例1の繊維製品の表面電位0.5Vより大きい値が得られた。また、抗菌活性値が比較例1の繊維製品の抗菌活性値1.1より大きいため、抗菌性が良好である結果が得られた。
【0113】
一方で、比較例1の繊維製品は、両側に配置された織物生地に対して編物生地が50%以下の数値範囲から外れており、表面電位および抗菌活性値が実施例1~5の繊維製品よりも悪い結果が得られた。
【0114】
本開示の布および繊維製品の態様は、以下のとおりである。
<1>圧電材料を含み、外部からの力により表面電位を発生させる圧電性糸で編まれた編物生地と、前記編物生地の両側に配置された織物生地と、を備えて成り、前記編物生地は、両側に配置された織物生地に対して50%以下である、布。
<2>前記編物生地は、幅が1cmより長い、<1>に記載の布。<3>前記編物生地に対する前記織物生地の配置方向は、前記編物生地の編み方向と平行である、<1>または<2>に記載の布。
<4>前記編物生地に対する前記織物生地の配置方向は、前記編物生地の編み方向と垂直である、<1>または<2>に記載の布。
<5>前記編物生地の伸長率は、5%よりも大きい伸長率である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の布。
<6>前記布全体の伸長率が4%以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の布。
<7>前記配置の方向と交差する方向の一方側の前記編物生地の外側辺の長さ寸法は、他方側の前記編物生地の外側辺の長さ寸法と異なっている、<1>~<6>のいずれか1つに記載の布。
<8>前記編物生地の前記一方側の外側辺の長さ寸法は、前記他方側の外側辺の長さ寸法よりも長くなっており、前記編物生地の前記一方側が着衣者の関節に近接する、<7>に記載の布。
<9>前記圧電材料は、ポリ乳酸を含んでいる、<1>~<8>のいずれか1つに記載の布。
<10>前記圧電材料は、結晶化度が20%以上である、<9>に記載の布。
<11>前記圧電材料は、添加剤を含有していない、<9>または<10>に記載の布。
<12>前記圧電材料は、加水分解防止剤を含有する、<9>~<11>のいずれか1つに記載の布。
<13>0.5Vより大きい電位を発生させことができる、<1>~<12>のいずれか1つに記載の布。
<14><1>~<13>のいずれか1つに記載の布を用いた繊維製品。
【0115】
なお、今回開示した実施態様は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施態様のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本開示は、例えば、伸長率が比較的に低い布に対して、より適切に表面電位を発生させることができる布および繊維製品に利用することができる。
【符号の説明】
【0117】
1,1s,1z 圧電糸
10 電位形成フィラメント
100 誘電体
900 延伸方向
910A 第1対角線
910B 第2対角線
F 布
C 繊維製品
K 編物生地
W 織物生地
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10