(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052120
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】油脂性菓子
(51)【国際特許分類】
A23G 3/44 20060101AFI20240404BHJP
A23G 1/32 20060101ALI20240404BHJP
A23G 3/36 20060101ALI20240404BHJP
A21D 2/26 20060101ALI20240404BHJP
A21D 13/31 20170101ALI20240404BHJP
A21D 13/36 20170101ALI20240404BHJP
A21D 13/37 20170101ALI20240404BHJP
A21D 13/45 20170101ALI20240404BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20240404BHJP
A23D 9/00 20060101ALN20240404BHJP
【FI】
A23G3/44
A23G1/32
A23G3/36
A21D2/26
A21D13/31
A21D13/36
A21D13/37
A21D13/45
A21D13/80
A23D9/00 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158614
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】蓮池 舞香
(72)【発明者】
【氏名】荒井 萌
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 友哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 みく
(72)【発明者】
【氏名】松田(吉田) 真理子
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GE02
4B014GE03
4B014GG12
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4B014GG14
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4B032DP30
4B032DP31
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】一定範囲内の脂質を含む油脂性菓子であって、タンパク含有量を多く含む油脂性菓子における、食感を改善する新規技術の提供。
【解決手段】タンパクを含む油脂性菓子生地を有し、
前記油脂性菓子生地中の脂質の含有量が20質量%以上60質量%以下であり、
前記油脂性菓子生地中のタンパクの含有量が20質量%以上50質量%以下であり、
油脂性菓子生地の30℃におけるSFCが10%以上45%以下であり、35℃におけるSFCが0.1%以上16%以下であり、40℃におけるSFCが0.1%以上8%以下である、油脂性菓子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパクを含む油脂性菓子生地を有し、
前記油脂性菓子生地中の脂質の含有量が20質量%以上60質量%以下であり、
前記油脂性菓子生地中のタンパクの含有量が20質量%以上50質量%以下であり、
油脂性菓子生地の30℃におけるSFCが10%以上45%以下であり、35℃におけるSFCが0.1%以上16%以下であり、40℃におけるSFCが0.1%以上8%以下である、油脂性菓子。
【請求項2】
油脂性菓子生地中の油脂として、XXX型トリグリセリド及び/又は、UUU型トリグリセリドを含む油脂を含み、
XXX型トリグリセリドを含む場合の、前記油脂中のXXX型トリグリセリド含有量が1~15質量%であり、
UUU型トリグリセリドを含む場合の、前記油脂中の前記UUU型トリグリセリドの含有量が50質量%以下である、請求項1に記載の油脂性菓子;
X:炭素数16~20の直鎖飽和脂肪酸
U:炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸。
【請求項3】
前記油脂性菓子生地中の脂質の含有量が24質量%以上37質量%以下であり、
前記油脂性菓子生地中のタンパクの含有量が27質量%以上45質量%以下である、請求項1又は2に記載の油脂性菓子。
【請求項4】
前記油脂は、水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂、及び/又は、パームステアリンからなる群から選ばれる少なくとも一種の油脂を含み、
水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂を含む場合の、水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂の含有量は0.2質量%以上であり、
パームステアリンを含む場合の、前記パームステアリンの含有量は0.5質量%以上である、請求項1又は2に記載の油脂性菓子。
【請求項5】
油脂性菓子生地中のタンパク中の植物性タンパクの含有割合が、40質量%以上である、請求項1又は2に記載の油脂性菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂性菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリアルバーやグラノーラバーなど、特定の栄養素や食物繊維などを手軽に栄養補給できるようにしたバー成形食品が知られている。運動中や仕事中などにも素早く喫食することができることから、その食行為自体を楽しむことにもつながっている。近年ではタンパク質の補給を目的としたバー成形食品への要望も高まりつつある。
【0003】
ここで、従来、タンパク質の含有量が25質量%以上の油性菓子が知られている(特許文献1 参照)
【0004】
また、特許文献2には、内層と外層とが異なる油脂性菓子で形成され、焼成によって外層の表面がべとつかない程度に熱変性している複合油脂性菓子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-72822号公報
【特許文献2】特開2019-000021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記先行技術のあるところ、本発明者らは、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子には、タンパクを原因とした唾液を取られるような食感が生じることや油脂性菓子全体のパサつきが生じることという、特有の課題があることを発見した。
すなわち本発明は、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子における、食感を改善する新規技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、タンパクを含む油脂性菓子生地を有し、
前記油脂性菓子生地中の脂質の含有量が20質量%以上60質量%以下であり、
前記油脂性菓子生地中のタンパクの含有量が20質量%以上50質量%以下であり、
油脂性菓子生地の30℃におけるSFCが10%以上45%以下であり、35℃におけるSFCが0.1%以上16%以下であり、40℃におけるSFCが0.1%以上8%以下である、油脂性菓子である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、
油脂性菓子生地は、
油脂性菓子生地中の油脂として、XXX型トリグリセリド及び/又は、UUU型トリグリセリドを含む油脂を含み、
XXX型トリグリセリドを含む場合の、前記油脂中のXXX型トリグリセリド含有量が1~15質量%であり、
UUU型トリグリセリドを含む場合の、前記油脂中の前記UUU型トリグリセリドの含有量が50質量%以下である。
ここで、本明細書において、Xは炭素数16~20の直鎖飽和脂肪酸であり、Uは炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0009】
本発明のより効果が発揮される形態は、前記油脂性菓子生地中の脂質の含有量が24質量%以上37質量%以下であり、
前記油脂性菓子生地中のタンパクの含有量が27質量%以上45質量%以下である。
上記範囲内の脂質、タンパク含有量の油脂性菓子において、前述の課題(唾液を取られるような食感、油脂性菓子全体のパサつき)がより顕著に生じる。そのため、上記形態において、本発明は、特に好ましい効果を発揮する。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記油脂は、水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂、及び/又は、パームステアリンからなる群から選ばれる少なくとも一種の油脂を含む。
そして、水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂を含む場合の、水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂の含有量は0.1質量%以上である。
また、パームステアリンを含む場合の、前記パームステアリンの含有量は0.5質量%以上である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子において、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0011】
上記範囲内の脂質、タンパク含有量の油脂性菓子において、さらに、植物性タンパク使用割合が多いと、前述の課題(唾液を取られるような食感、油脂性菓子全体のパサつき)がより顕著に生じる。
すなわち、本発明のより効果が発揮される形態は、油脂性菓子生地中のタンパク中の植物性タンパクの含有割合が、40質量%以上である。
本発明によれば、上記形態において、特に好ましい効果を発揮する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一定範囲内の脂質を含む油脂性菓子であって、タンパク含有量の多い油脂性菓子における、食感を改善する新規技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の油脂性菓子の一実施形態について説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0014】
本発明の油脂性菓子は、油脂性菓子生地中の脂質の含有量が20質量%以上60質量%以下であり、
油脂性菓子生地中のタンパクの含有量が20質量%以上50質量%以下である。
【0015】
そして、本発明の油脂性菓子は、
油脂性菓子生地の30℃におけるSFCが10%以上45%以下であり、
35℃におけるSFCが0.1%以上16%以下であり、
40℃におけるSFCが0.1%以上8%以下であることを特徴とする。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0016】
以下、本発明の油脂性菓子のより好ましい実施の形態について説明する。
【0017】
本明細書において、油脂性菓子とは、油脂類等を使用した油脂加工食品全般を意味するものとする。
【0018】
ここで「油脂性菓子」とは、典型的に、脂質含有量が15質量%以上、より典型的に18質量%以上70質量%以下、更により典型的に20質量%以上60質量%以下の菓子をいうものとする。
【0019】
「油脂性菓子」には、例えば、チョコレート、チョコレート風味菓子、チーズ風味菓子、バター風味菓子、抹茶風味菓子、小豆風味菓子、さつまいも風味菓子、イチゴ風味菓子等が含まれる。
また、本発明において、「油脂性菓子」には、焼きチョコ、チョコレート、ビスケット、ウェファーにクリームをサンドしたもの、チョコレート、ガナッシュ、ファットスプレッド、プラリネペーストも含まれる。
【0020】
本発明においてチョコレートとは、規約や法規上の規定によって限定されるものではなく、例えば、純チョコレート、チョコレート、準チョコレート、純ミルクチョコレート、ミルクチョコレート、準ミルクチョコレートなどが挙げられ、カカオマスやココアパウダーを含まないホワイトチョコレートも包含するものである。
【0021】
油脂性菓子全体の脂質含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは24質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。
また、油脂性菓子全体の脂質含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは37質量%以下、特に好ましくは35質量%以下である。
上記範囲内の脂質含有量の油脂性菓子において、前述の課題(唾液を取られるような食感、油脂性菓子全体のパサつき)がより顕著に生じる。そのため、上記形態において、本発明は、特に好ましい効果を発揮する。
【0022】
油脂性菓子全体のタンパクの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、より好ましくは27質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。
また、油脂性菓子全体のタンパクの含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
上記範囲内のタンパク含有量の油脂性菓子において、前述の課題(唾液を取られるような食感、油脂性菓子全体のパサつき)がより顕著に生じる。そのため、上記形態において、本発明は、特に好ましい効果を発揮する。
【0023】
ここで、油脂性菓子全体の含水量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。
また、油脂性菓子全体の含水量は、好ましくは16質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下を目安とすることができる。
【0024】
以下、本発明の油脂性菓子生地のより好ましい実施の形態について説明する。
【0025】
本明細書において、油脂性菓子生地とは、油脂性菓子の構成する菓子生地部分であって、油脂性菓子全体から、例えばフルーツ、野菜、菓子粉砕物、小麦、オーツ麦、ライ麦、大麦、玄米、精米、トウモロコシ等の膨化物や焙煎物(例えばコーンフレーク、ブランフレーク、米フレーク)、チョコチップ、キャラメルチップ、マシュマロ、大豆パフ、ホエイパフなどの具材(実施例においては、固形物とも表記する)を除いたものをいう。
ここで、本明細書における油脂性菓子生地は菓子生地に相当する部分を意味するものであり、油脂性菓子生地の用語には、焼成処理前のものも、焼成処理を経たものも含まれる。
【0026】
(1)油脂性菓子生地の全体組成について
以下の説明において「油脂性菓子生地中の含有量」は、前述のとおり、油脂性菓子のうち、固形物を含まない、菓子生地部分中の含有量を意味する。
ここで、固形物には、前述の具材の他、典型的に長径1mm以上、より典型的には長径1.5mm以上、更により典型的には長径2mm以上の粒状のものも含まれる。
上記固形物は、一般に水や油脂やその他の菓子材料を合わせても、独自の食感を呈するにとどまり、当該粒状風味材以外の菓子部分の生地物性や食感に影響を与える素材ではない。
そのため、油脂性菓子生地の全体組成の特定に必要とされる上記成分の含有量には、上記固形物を換算しないものとする。
【0027】
SFC(固体脂含量)に関し、油脂性菓子生地は以下の特徴を有する。
【0028】
油脂性菓子生地の25℃におけるSFCは、好ましくは15%以上である。
また、油脂性菓子生地の25℃におけるSFCは、好ましくは62%以下、より好ましくは55%以下、より好ましくは50%以下である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0029】
油脂性菓子生地の30℃におけるSFCは、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0030】
油脂性菓子生地の30℃におけるSFCは、好ましくは45%以下、より好ましくは39%以下である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0031】
油脂性菓子生地の35℃におけるSFCは、好ましくは0.1%以上、より好ましくは2%以上、より好ましくは4%以上である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0032】
油脂性菓子生地の35℃におけるSFCは、好ましくは16%以下、より好ましくは13%以下、より好ましくは9%以下である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0033】
油脂性菓子生地の40℃におけるSFCは、好ましくは0.1%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは4%以上である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0034】
油脂性菓子生地の40℃におけるSFCは、好ましくは8%以下、より好ましくは7%以下である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0035】
なお、油脂性菓子生地のSFCは、例えば、AOCS Official Method(NMR法)に従い分析することができる。
このとき、油脂性菓子中の視認可能な固形物を除き、油脂性菓子部分のみを試験に供する。
【0036】
油脂性菓子生地中の脂質含有量及び油脂性菓子生地のSFCは、油脂類の種類及び添加量を適宜変更することにより、所望の範囲内とすることできる。
油脂類としては、水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂、及び/又は、パームステアリンからなる群から選ばれる少なくとも一種の油脂を好ましく用いることができる。
【0037】
以下、油脂性菓子生地の組成について、より好ましい形態を説明する。
油脂性菓子生地中のXXX型トリグリセリドの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。
また、油脂性菓子生地中のXXX型トリグリセリドの含有量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは11質量%以下、より好ましくは7質量%以下である。
【0038】
油脂性菓子生地中のUUU型トリグリセリドの含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0039】
油脂性菓子生地中の2飽和トリグリセリドの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。
また、油脂性菓子生地中の2飽和トリグリセリドの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
【0040】
油脂性菓子生地中の1飽和トリグリセリドの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
また、油脂性菓子生地中の1飽和トリグリセリドの含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0041】
油脂性菓子生地中のトリパルミチンの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。
また、油脂性菓子生地中のトリパルミチンの含有量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは11質量%以下、より好ましくは7質量%以下である。
【0042】
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0043】
ここで、油脂性菓子生地中の、トリグリセリド含有量は、例えば、水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂、及び/又は、パームステアリンからなる群から選ばれる少なくとも一種の油脂の含有量を変更することで、所望の範囲とすることができる。
【0044】
なお、油脂の構成脂肪酸は、例えば、基準油脂分析試験法(2.4.1.2-2013メチルエステル化法(三フッ化ホウ素-メタノール法))および2.4.2.3-2013脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)を用いて分析することができる。
【0045】
以下、本発明における、油脂性菓子生地中の脂質、タンパクについてより好ましい実施の形態を説明する。
【0046】
(1―1)脂質について
油脂性菓子生地中の脂質含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは24質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。
【0047】
また、油脂性菓子生地中の脂質含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは37質量%以下、特に好ましくは35質量%以下である。
【0048】
後述する実施例の通り、上記範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子において、かかる油脂性菓子を食する際に、タンパクを原因とした唾液を取られるような食感が生じることや油脂性菓子全体のパサつきが生じる。
そのため、上記形態の油脂性菓子生地を備える形態において、食感改善効果はより顕著に発揮される。
【0049】
油脂性菓子生地中の脂質含有量には、塩酸分解後ソックスレー抽出法で測定した値を用いることができる。
【0050】
ここで、油脂性菓子生地の脂質の源となる脂質素材としては、食用として使用可能な脂質素材であればよく、特に制限はない。例えば、植物性油脂、動物性油脂、それらの加工油脂のいずれでもよい。また、油脂の融点も特に限定されず、液状油脂、固形油脂のいずれでもよい。例えば、マーガリン、ショートニング、オリーブ油、サフラワー油、コーン油、やし油、カカオ脂、パーム油などが挙げられる。なかでも、より良好な風味を付与するためには、マーガリン、バター、ショートニング等の加工食用油脂などが好ましく例示される。脂質素材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。
を含むことが好ましい。
【0051】
中でも、油脂性菓子生地に、30℃で固体の高融点油脂を含む形態とすることが好ましい。
ここで、油脂性菓子生地に含める油脂としては、水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂、及び/又は、パームステアリンからなる群から選ばれる少なくとも一種の油脂を好ましく挙げることができる。中でも、油脂として、パームステアリン、菜種極度硬化油、パーム極度硬化油、大豆極度硬化油を好ましく挙げることができる。
【0052】
ここで、水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂を含む場合の、水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂の含有量は0.1質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。
水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂を含む場合の、水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂の含有量は30質量%以下を目安とすることができる。
【0053】
ここで、パームステアリンを含む場合の、パームステアリンの含有量は好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.9質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。
油脂性菓子生地中のパームステアリンの含有量は50質量%以下、より好ましくは30.8質量%以下、さらに好ましくは20%以下を目安とすることができる。
【0054】
また、本発明の油脂性菓子は、油脂性生地中の油脂として、XXX型トリグリセリド及び/又は、UUU型トリグリセリドを含む油脂を含むことが好ましい。
本明細書において、Xは炭素数16~20の直鎖飽和脂肪酸であり、Uは炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0055】
XXX型トリグリセリドを含む油脂を用いる場合の、油脂中のXXX型トリグリセリドの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。
また、XXX型トリグリセリドを含む油脂を用いる場合の、油脂中のXXX型トリグリセリドの含有量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0056】
XXX型トリグリセリドを含む油脂としては水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂、及び/又は、パームステアリンからなる群から選ばれる少なくとも一種の油脂を挙げることができる。
XXX型トリグリセリドを含む油脂の含有量は、例えば、水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂、及び/又は、パームステアリンからなる群から選ばれる少なくとも一種の油脂の含有量を変更することで、所望の範囲とすることができる。
【0057】
UUU型トリグリセリドを含む油脂を用いる場合のUUU型トリグリセリドを含む油脂を用いる場合の、油脂中のUUU型トリグリセリドの含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0058】
UUU型トリグリセリドを含む油脂としては水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂、及び/又は、パームステアリンからなる群から選ばれる少なくとも一種の油脂を挙げることができる。
UUU型トリグリセリドを含む油脂の含有量は、例えば、水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂、及び/又は、パームステアリンからなる群から選ばれる少なくとも一種の油脂の含有量を変更することで、所望の範囲とすることができる。
【0059】
なお、油脂の構成脂肪酸は、例えば、基準油脂分析試験法(2.4.1.2-2013メチルエステル化法(三フッ化ホウ素-メタノール法))および2.4.2.3-2013脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)を用いて分析することができる。
【0060】
(1―2)タンパクについて
【0061】
油脂性菓子生地中のタンパクの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、より好ましくは27質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。
【0062】
また、油脂性菓子生地中のタンパクの含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0063】
ここで、本発明において、タンパクとしては、植物性タンパクを好ましく用いることができる。中でも、植物性タンパクとして、大豆タンパクを好ましく用いることができる。
【0064】
油脂性菓子生地中のタンパク中の、植物性タンパクの含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
【0065】
ここで、油脂性菓子生地中のタンパク含有量には、ケルダール法で測定した値を用いることができる。
【0066】
本発明により提供される油脂性菓子において、含有されるタンパク質の源となるタンパク質素材としては、特に制限はないが、例えば、豆タンパク質を含有する素材、乳タンパク質を含有する素材、コラーゲンを含有する素材などが挙げられる。ただし、これらの種類のタンパク質を含有する素材に限られない。タンパク質素材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0067】
具体的に、豆タンパク質を含有する素材としては、大豆、脱脂大豆粉、濃縮大豆蛋白質、分離大豆蛋白質、豆乳等の原料から所定条件下で抽出した抽出物、大豆パウダーなどが挙げられる。このような大豆タンパク質素材としては、例えば、不二製油株式会社製の「フジプロAL」、「フジプロSEH」、「プロリーナ700」、「プロリーナ800」、「プロリーナ900」や、日清オイリオグループ株式会社製の「ソルピー4000H」、「ソルピー5000H」や、ADM社製の「プロファム649」、「プロファム974」、「プロファム781」、「プロファム825」や、Solae社製の「SUPRO XT219D」、「SUPRO PM」等が大豆パウダーとして市販されているので、そのような市販の素材を用いてもよい。また、特開平8-173052号公報や特開平9-121780号公報には大豆タンパク質を含有する素材の調製方法が記載されているので、そのような公知の方法に準じて調製して用いてもよい。あるいは、Emsland Food GmbH 社製の「Empro E86」や、デュポン スペシャルティ プロダクツ社製の「TRUPRO2000」や、CBC社製「PISANE C9」や、ROQUETTE社製の「NUTRALYS S85F」等、エンドウ豆由来のタンパク質素材を用いてもよい。
【0068】
また、乳タンパク質を含有する素材としては、ホエイ蛋白濃縮物(WPC)、ホエイ蛋白分離物(WPI)、ホエイ蛋白加水分解物(WPH)、濃縮ミルクたんぱく質(MPC)、分離ミルクたんぱく質(MPI)などが挙げられる。このようなホエイ素材としては、例えば、フォンテラ社製の「WPC392」、「WPC472」、「WPI894」、「WPH817」や、TATUA社製の「TATUA901」、「TATUA942」や、森永乳業社製の「W800」等がホエイパウダーとして市販されているので、そのような市販の素材を用いてもよい。また、乳タンパク濃縮物としては、ミライ社製の「ミライMC80」や、日本新薬社製の「ミルカMPI」や、Ingredia社製の「Prodiet 87B Fluid」などが挙げられる。また、乳タンパク質を含有する素材としては、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼインペプチド等であってもよい。このようなカゼイン素材としては、例えば、FrieslandCampina DMV社製の「Excellion Calcium Caseinate S」等がカゼインカルシウムとして、FrieslandCampina DMV社製の「Excellion Sodium Caseinate S」等がカゼインナトリウムとして、それぞれ市販されているので、そのような市販の素材を用いてもよい。
【0069】
以下、本発明の油脂性菓子生地における、含水量と油脂の含有量について、より好ましい実施の形態を説明する。
以下の説明において、「タンパク由来の水分を除く油脂性菓子生地の水分の含有量」は、以下の算出式により計算した値を用いることができる。
算出式:タンパク由来の水分を除く油脂性菓子生地の水分の含有量=固形分を除く油脂性菓子生地全体の水分量-(タンパク含有量×0.05)
【0070】
ここで、固形分を除く全体水分量には、常圧加熱乾燥助剤法(105℃、5時間)で測定した値を用いることができる。
【0071】
(i)油脂性菓子生地中の、タンパク由来の水分を除く水分の含有量が1質量%以上15質量%以下(高水分系とも表記する)のとき
【0072】
SFC(固体脂含量)に関し、高水分系の油脂性菓子生地は以下の特徴を有する。
【0073】
高水分系の油脂性菓子生地の30℃におけるSFCは、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0074】
高水分系の油脂性菓子生地の35℃におけるSFCは、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上である。
また、高水分系の油脂性菓子生地の35℃におけるSFCは、好ましくは15.4%以下、より好ましくは10%以下である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0075】
高水分系の油脂性菓子生地の40℃におけるSFCは、好ましくは0.1%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは4%以上である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0076】
油脂性菓子生地中のXXX型トリグリセリドの含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。
また、油脂性菓子生地中のXXX型トリグリセリドの含有量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0077】
油脂性菓子生地中のUUU型トリグリセリドの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。
また、油脂性菓子生地中のUUU型トリグリセリドの含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。
【0078】
(ii)油脂性菓子生地中の、タンパク由来の水分を除く水分の含有量が1質量%未満(低水分系とも表記する)のとき
【0079】
SFC(固体脂含量)に関し、低水分系の油脂性菓子生地は以下の特徴を有する。
【0080】
低水分系の油脂性菓子生地の30℃におけるSFCは、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0081】
低水分系の油脂性菓子生地の35℃におけるSFCは、好ましくは15%以上、より好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0082】
低水分系の油脂性菓子生地の40℃におけるSFCは、好ましくは0.1%以上、より好ましくは1.6%以上、さらに好ましくは2%以上である。
上記形態とすることで、一定範囲内の脂質を含み、かつタンパク含有量の多い油脂性菓子においても、食感に優れた油脂性菓子を提供することができる。
【0083】
油脂性菓子生地中のXXX型トリグリセリドの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。
また、油脂性菓子生地中のXXX型トリグリセリドの含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。
【0084】
油脂性菓子生地中のUUU型トリグリセリドの含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。
また、油脂性菓子生地中のUUU型トリグリセリドの含有量は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0085】
油脂性菓子の含水量は、例えば酒類、クリーム、糖液等の水系原料の配合を変更することなどによって、所望の範囲とすることができる。
ここで、油脂性菓子の含水量は、油脂性菓子に求められる食感に応じて調整することができる。ここで、高水分系(本実施例における、「ベイクドタイプ」「ショートニング使用」相当)においては、成形性などの課題の解決も求められる。
この場合には、高水分系(本実施例における、「ベイクドタイプ」「ショートニング使用」相当)においては、乳化剤の使用により成形性の良好な生地を得ることができる。
【0086】
ここで、高水分系(生地由来水分1~15%)の油脂性菓子生地には、ショートニングなどのソフトタイプの油脂を使用することが好ましい。
【0087】
低水分系(生地由来水分1%未満)の油脂性菓子生地には、カカオバターなどのハードタイプの油脂を使用することが望ましい
【0088】
(2)油脂性菓子の製造方法について
(2-1)油脂性菓子生地の調製、成形
本発明で用いる油脂性菓子生地は、常法に従って、製造することができる。
具体的に例えば、上述したとおり、通常、チョコレートは、原料をミキシングし、リファイニングを行った後、コンチングを行うことで調製される。
ここで、乳化剤やたんぱくの添加・配合は、ミキシング、リファイニング、コンチング等の工程の途中や、各工程の間隙のタイミングすることができる。
また、乳化剤やたんぱくの添加・配合は、製造の簡便化の観点から、チョコレートの溶融、流動化のための加温を適宜行い、これに混合する形態とすることもできる。
【0089】
このとき、前述の油脂の少量を融解させ、該油脂原料をタンパクと混合する事前混合工程と、
別途予め用意した他の原料を混合したものに、上記で混合した少量の油脂原料と大豆タンパクを加え混合する本混合工程と、
を行うことで、油脂性菓子生地を調製する形態とすることもできる。
【0090】
このとき、事前混合工程は、前述の油脂原料をタンパクと混合した後、油脂原料を固化させることを含むことが好ましい。
【0091】
ここで、タンパクと予め混合する油脂としては、30℃で固体の高融点油脂を用いることが好ましい。
また、タンパクと予め混合する油脂としては、前述の水素添加油脂、及び/又は、パーム中融点部、菜種油、大豆油をエステル交換した油脂、及び/又は、パームステアリンからなる群から選ばれる少なくとも一種の油脂を好ましく用いることができる。
【0092】
また、前述の事前混合工程を経たタンパクは、予め油脂にて被覆された状態で含有される。
ここで「被覆」とは、タンパク粒子表面を油脂で被覆した状態、あるいはタンパク粒子中に油脂が吸着されている状態の少なくとも一方をいう。そのため、本発明の油脂性菓子生地には、予め油脂にて被覆された状態のタンパクを用いる形態とすることもできる。
【0093】
なお、本混合工程では、さらに、油脂性菓子生地とは別に、例えばフルーツ、野菜、菓子粉砕物、小麦、オーツ麦、ライ麦、大麦、玄米、精米、トウモロコシ等の膨化物や焙煎物(例えばコーンフレーク、ブランフレーク、米フレーク)、チョコチップ、キャラメルチップ、マシュマロ、大豆パフ、ホエイパフなどの具材を含有させてもよい。
【0094】
本発明の油脂性菓子を成形する方法としては、例えば、押出成形装置を用い、バー形状とする方法、モールド(型)を用いバー形状またはブロック形状とする方法、ウェファーにクリームを挟み成形する方法を採ることもできる。
【0095】
ここで、油脂性菓子生地が高水分系(生地由来水分1~15%)である場合、押出成形装置を用い、成形する方法を好ましく採ることができる。
油脂性菓子生地が低水分系(生地由来水分1%未満)である場合、モールド(型)を用い、成形する方法を好ましく採ることができる。
【0096】
(2-2)焼成処理
用意した油脂性菓子生地を所定の形状に形成し、焼成することにより、本実施例で用いる、油脂性菓子を製造することもできる。ここで、焼成の手段には特に制限はなく、焼成は、オーブン、シュバンクバーナー、ガスバーナー、電子レンジなどを用いて行うことができる。
また、焼成条件は、用いる装置の能力、特性に応じ、適宜調整すればよい。その調整によって、油脂性菓子による外層の表層が手で持ったときにべとつかない程度に焼成により熱変性しているようにすることもできる。
【実施例0097】
[実施例1] 課題の所在の検討:油脂性菓子中の脂質含有量及びタンパク含有量の関係について
油脂性菓子中の脂質含有量及びタンパク含有量の関係による、食感の悪化、パサつきの検証を行った。
【0098】
(1)油脂性菓子の製造
(1-1)油脂性菓子生地の調製
表1に示す配合となるよう、タンパクを油脂原料に添加し、油脂性菓子生地を調製した。
表1に示す試験例で使用した、表中に示していない脂質及びタンパクの原料、表中に示していない他の成分は、同じものである。また、実施例1で用いる油脂原料として、30℃で固体の高融点油脂は用いていない。
【0099】
(1-2)油脂性菓子の製造
用意した油脂性菓子生地を表1記載の実施形態に応じた方法により成形等することで、本実施例で用いる油脂性菓子を製造した。
【0100】
ここで、油脂性菓子中の各種パラメータは、以下の方法により測定した。
【0101】
脂質含有量: 塩酸分解後ソックスレー抽出法で測定した。
タンパク含有量:ケルダール法で測定した。
含水量:常圧加熱乾燥助剤法(105℃、5時間)で測定した。
【0102】
(2)評価
製造した油脂性菓子について、食品の製造を専門とするパネラー5名により、以下の評価をした。
【0103】
・タンパクを原因とした唾液を取られるような食感、パサつきの有無
◎・・・タンパクを原因とした唾液を取られるような食感、パサつきがない
〇・・・タンパクを原因とした唾液を取られるような食感、パサつきがあまりない
×・・・タンパクを原因とした唾液を取られるような食感、パサつきがある
【0104】
・油脂性菓子らしいくちどけがあるか
◎・・・油脂性菓子らしい滑らかなくちどけが十分にある
〇・・・油脂性菓子らしい滑らかなくちどけがある
×・・・-油脂性菓子らしい滑らかなくちどけがない
【0105】
結果を表1に示す。
【0106】
【0107】
(i) ブラウニータイプ
油脂性菓子生地を二重ノズルによる押し出し成形をすることで、バー形状とした。
その後、バー形状とした油脂性菓子生地を焼成することにより、油脂性菓子を製造した。
【0108】
(ii) 焼きチョコタイプ
油脂性菓子生地を二重ノズルによる押し出し成形することで、バー形状とした。
その後、バー形状とした油脂性菓子生地を焼成することにより、油脂性菓子を製造した。
【0109】
(iii) チョコレートタイプ
油脂性菓子生地をモールド成形することで、バー形状もしくはブロック形状とした。
【0110】
(3)結果及び考察
表1に示すとおり、脂質含有量が23質量%である形態(参考例1-2)、脂質含有量が37質量%である形態において、タンパク含有量を20質質量%以上とした場合に、タンパク由来の唾液を取られるような食感、パサつきが生じることがわかった。
すなわち、油脂性菓子生地中の脂質の含有量が20質量%以上60質量%以下であり、油脂性菓子生地中のタンパクの含有量が20質量%以上50質量%以下である場合に、タンパク由来の唾液を取られるような食感、パサつきが生じることがわかった。
【0111】
[実施例2]高融点油脂の配合による効果の検証
次に、高融点油脂の配合による効果の検証を行った。
【0112】
(1)油脂性菓子の製造
(1-1)油脂性菓子生地の調製
表2に示す配合となるよう、以下の方法により、油脂性菓子生地を調製した。
まず、油脂原料7質量部を融解させ、該油脂原料を表2に示す量の大豆タンパク及び乳タンパクと混合したのち、油脂融点以下まで温度を下げ固化させた(事前混合工程)。
次に、他の原料を混合したものに、上記で用意したタンパクを加え混合すること(本混合工程)で、油脂性菓子生地を調製した。
表2に示す試験例で使用した、表中に示していない脂質及びタンパクの原料、表中に示していない他の成分は、同じものである。
また、実施例2-1では、事前混合工程に用いる油脂として、30℃で固体の高融点油脂を用いた。また、参考例2-1、比較例2-1、比較例2-2、比較例2-3については、事前混合工程を行わず、タンパクを油脂原料に添加し、油脂性菓子生地を調製した。
【0113】
(1-2)油脂性菓子の製造
用意した油脂性菓子生地を表2記載の実施形態に応じた方法により成形等することで、本実施例で用いる油脂性菓子を製造した。
【0114】
(2)評価
製造した油脂性菓子について、食品の製造を専門とするパネラー5名により、以下の評価をした。
【0115】
・高融点油脂由来のくちどけの悪さの有無
◎・・・高融点油脂由来のくちどけの悪さがない
〇・・・高融点油脂由来のくちどけの悪さがあまりない
×・・・- 高融点油脂由来のくちどけの悪さがある
【0116】
【0117】
(iii) チョコレートタイプ
実施例1と同じ方法により、油脂性菓子を製造した。
【0118】
(iv) クリームタイプ
ウェファーに油脂性菓子生地を挟みバー形状に成形した。
【0119】
(3)結果及び考察
表2に示すとおり、高融点油脂を配合することで、タンパク由来の唾液を取られるような食感、パサつきを改善できることがわかった。
また、実施例2-1と比較例2-4の対比より、油脂性菓子生地中の脂質の含有量が20質量%以上60質量%以下であり、油脂性菓子生地中のタンパクの含有量が20質量%以上50質量%以下である形態において、特に効果を発揮することがわかった。
【0120】
[実施例3] 油脂性菓子生地の物性による効果の検証。
油脂性菓子生地の物性による効果の検証を行った。
【0121】
(1)油脂性菓子の製造
(1-1)油脂性菓子生地の調製
表3~6に示す配合となるよう、以下の方法により、油脂性菓子生地を調製した。
まず、油脂原料のうち表3~6に示す割合の量の高融点油脂原料を融解させ、該油脂原料を表3~6に示す量の大豆タンパク及び乳タンパクと混合したのち、油脂融点以下まで温度を下げ固化させた(事前混合工程)。
次に、他の原料を混合したものに、上記で用意した大豆タンパクを加え混合すること(本混合工程)で、油脂性菓子生地を調製した。
【0122】
表3~6に示す試験例で使用した、表中に示していない脂質及びタンパクの原料、表中に示していない他の成分は、同じものである。
また、実施例3-2、実施例3-6、実施例5-7については、事前混合工程を行わず、タンパクを油脂原料に添加し、油脂性菓子生地を調製した。
【0123】
(1-2)油脂性菓子の製造
用意した油脂性菓子生地を表3~6記載の実施形態に応じた方法により成形等することで、本実施例で用いる油脂性菓子を製造した。
ていない脂質及びタンパクの原料、表中に示していない他の成分は、同じものである。
【0124】
(2)評価
製造した油脂性菓子について、食品の製造を専門とするパネラー5名により、前述の評価をした。結果を以下に示す。
【0125】
【0126】
【0127】
(iii) チョコレートタイプ
実施例1と同じ方法により、油脂性菓子を製造した。
【0128】
【0129】
(ii) 焼きチョコタイプ、(iv) クリームタイプ
実施例1、2と同じ方法により、油脂性菓子を製造した。
【0130】
(v)ビスケットタイプ 脂性菓子生地をワイヤーカットすることによって円形状に成形した。その後、円形状とした油脂性菓子生地を焼成することにより、油脂性菓子を製造した。
【0131】
【0132】
(ii) 焼きチョコタイプ、(iii) チョコレートタイプ、(iv) クリームタイプ
実施例1、2と同じ方法により、油脂性菓子を製造した。
【0133】
(3)結果及び考察
表3~6に示すとおり、油脂性菓子生地自体のSFCを所定の範囲内とすることで、タンパク由来の唾液を取られるような食感、パサつきを改善できることがわかった。
具体的には、比較例6-1~比較例6-6と実施例との対比から、油脂性菓子生地の25℃におけるSFCが62質量%以下であり、30℃におけるSFCが10%以上45%以下であり、35℃におけるSFCが0.1%以上16%以下であり、40℃におけるSFCが0.1%以上8%以下であることで、油脂性菓子生地中の脂質の含有量が20質量%以上60質量%以下であり、油脂性菓子生地中のタンパクの含有量が20質量%以上50質量%以下である形態において、タンパク由来の唾液を取られるような食感、パサつきを改善できることがわかった。
【0134】
また、比較例6-1~比較例6-3と実施例との対比より、3飽和トリグリセリド(XXX型トリグリセリド)の含有量を1~15質量%とすることで、油脂性菓子生地中の脂質の含有量が20質量%以上60質量%以下であり、油脂性菓子生地中のタンパクの含有量が20質量%以上50質量%以下である形態において、高融点油脂由来のくちどけの悪さを改善できることがわかった。
【0135】
また、比較例6-5と実施例との対比より、0飽和トリグリセリド(UUU型トリグリセリド)の含有量を50質量%以下とすることで、油脂性菓子生地中の脂質の含有量が20質量%以上60質量%以下であり、油脂性菓子生地中のタンパクの含有量が20質量%以上50質量%以下である形態において、タンパク由来の唾液を取られるような食感、パサつきを改善できることがわかった。