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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052133
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】接合構造および接合方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/18 20060101AFI20240404BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
E04B1/18 F
E04B1/58 506Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158635
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000130374
【氏名又は名称】株式会社コンステック
(71)【出願人】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 公平
(72)【発明者】
【氏名】中尾 貞治
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸大
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AA32
2E125AB01
2E125AB16
2E125AC15
2E125AC16
2E125AG03
2E125AG04
2E125AG12
2E125AG21
2E125AG41
2E125BB02
2E125BB33
2E125BE08
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】構成部材と補強部材との間に生じるせん断力に対する抵抗力を向上させることが可能な接合構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の接合構造1は、補強部材KBの端部に設けられ、構成部材SBに接合される端部材2と、構成部材SBに接合され、補強部材KBから受ける引張力に抵抗する引張力抵抗部材3と、構成部材SBの外側に配置され、端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定する固定部材4と、構成部材SBに接合されるせん断力抵抗部材5とを備え、せん断力抵抗部材5が、構成部材SBの長手方向D1で端部材2に直接または間接的に当接するように配置されることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を構成する構成部材に補強部材を接合するための接合構造であって、
前記補強部材の端部に設けられ、前記構成部材に接合される端部材と、
前記構成部材に接合され、前記補強部材から受ける引張力に抵抗する引張力抵抗部材と、
前記構成部材の外側に配置され、前記端部材と前記引張力抵抗部材とを互いに対して固定する固定部材と、
前記構成部材に接合されるせん断力抵抗部材と
を備え、
前記せん断力抵抗部材が、前記構成部材の長手方向で前記端部材に直接または間接的に当接するように配置される、接合構造。
【請求項2】
前記せん断力抵抗部材が、前記構成部材と前記端部材との間に配置される、
請求項1記載の接合構造。
【請求項3】
前記せん断力抵抗部材が、積層された複数のせん断力抵抗プレートを備える、
請求項1または2記載の接合構造。
【請求項4】
前記構成部材が、一対のフランジ、および前記一対のフランジを互いに接続するウェブを有するH形鋼であり、
前記端部材および前記引張力抵抗部材は、前記フランジの両側の面から前記フランジを挟持するように配置され、
前記引張力抵抗部材は、前記ウェブに接合され、前記ウェブと前記引張力抵抗部材との間に配置される補助接合部材に接合される、
請求項1または2記載の接合構造。
【請求項5】
前記構成部材が、角形鋼管であり、
前記引張力抵抗部材が、前記角形鋼管の側面に接合される、
請求項1または2記載の接合構造。
【請求項6】
構造物を構成する構成部材に補強部材を接合する方法であって、
前記補強部材の端部に設けられた端部材を前記構成部材に接合する工程と、
前記補強部材から受ける引張力に抵抗する引張力抵抗部材を前記構成部材に接合する工程と、
前記構成部材の外側に配置された固定部材により前記端部材と前記引張力抵抗部材とを互いに対して固定する工程と、
せん断力抵抗部材を前記構成部材に接合する工程と
を含み、
前記せん断力抵抗部材が、前記構成部材の長手方向で前記端部材に直接または間接的に当接するように配置される、方法。
【請求項7】
前記せん断力抵抗部材が、前記構成部材と前記端部材との間に配置される、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記せん断力抵抗部材が、積層された複数のせん断力抵抗プレートを備える、
請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記構成部材が、一対のフランジ、および前記一対のフランジを互いに接続するウェブを有するH形鋼であり、
前記端部材および前記引張力抵抗部材は、前記フランジの両側の面から前記フランジを挟持するように配置され、
前記引張力抵抗部材は、前記ウェブに接合され、前記ウェブと前記引張力抵抗部材との間に配置される補助接合部材に接合される、
請求項6または7記載の方法。
【請求項10】
前記構成部材が、角形鋼管であり、
前記引張力抵抗部材が、前記角形鋼管の側面に接合される、
請求項6または7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造および接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
H形鋼などにより形成された柱、梁などの構成部材により構成された構造物の耐震補強を目的に、方杖やブレースなどの補強部材が構造物の構成部材に接合される。構成部材への補強部材の接合は、一般的には、溶接によって行われる。ところが、すでに稼働中の工場などにおいては、火気の使用が制限されるため、溶接による接合方法を採用することが難しい。このような観点から、たとえば特許文献1において、溶接を使用しない接合方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-32689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された接合方法では、補強部材である方杖に取り付けられたガセットプレートの固定面部が挟締金具によって構成部材であるH形鋼のフランジに固定されることで、方杖がH形鋼に接合される。ガセットプレートの固定面部とH形鋼のフランジとが互いに接触して挟締金具によって挟持されることで、H形鋼の長手方向に対して垂直方向に生じる引張力に対しては、挟締金具の挟締力が抵抗し、H形鋼の長手方向に生じるせん断力に対しては、ガセットプレートの固定面部とH形鋼のフランジとの間の摩擦力が抵抗する。しかし、ガセットプレートの固定面部とH形鋼のフランジとの間の摩擦力ではせん断力に十分に抵抗することができず、特に、固定面部は、H形鋼の長手方向に対して垂直方向に生じる引張力も受けるために、その引張力によって摩擦力が低下し、せん断力に十分に抵抗することができない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、構成部材と補強部材との間に生じるせん断力に対する抵抗力を向上させることが可能な接合構造および接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の接合構造は、構造物を構成する構成部材に補強部材を接合するための接合構造であって、前記補強部材の端部に設けられ、前記構成部材に接合される端部材と、前記構成部材に接合され、前記補強部材から受ける引張力に抵抗する引張力抵抗部材と、前記構成部材の外側に配置され、前記端部材と前記引張力抵抗部材とを互いに対して固定する固定部材と、前記構成部材に接合されるせん断力抵抗部材とを備え、前記せん断力抵抗部材が、前記構成部材の長手方向で前記端部材に直接または間接的に当接するように配置されることを特徴とする。
【0007】
また、前記せん断力抵抗部材が、前記構成部材と前記端部材との間に配置されることが好ましい。
【0008】
また、前記せん断力抵抗部材が、積層された複数のせん断力抵抗プレートを備えることが好ましい。
【0009】
また、前記構成部材が、一対のフランジ、および前記一対のフランジを互いに接続するウェブを有するH形鋼であり、前記端部材および前記引張力抵抗部材は、前記フランジの両側の面から前記フランジを挟持するように配置され、前記引張力抵抗部材は、前記ウェブに接合され、前記ウェブと前記引張力抵抗部材との間に配置される補助接合部材に接合されることが好ましい。
【0010】
また、前記構成部材が、角形鋼管であり、前記引張力抵抗部材が、前記角形鋼管の側面に接合されることが好ましい。
【0011】
本発明の接合方法は、構造物を構成する構成部材に補強部材を接合する方法であって、前記補強部材の端部に設けられた端部材を前記構成部材に接合する工程と、前記補強部材から受ける引張力に抵抗する引張力抵抗部材を前記構成部材に接合する工程と、前記構成部材の外側に配置された固定部材により前記端部材と前記引張力抵抗部材とを互いに対して固定する工程と、せん断力抵抗部材を前記構成部材に接合する工程とを含み、前記せん断力抵抗部材が、前記構成部材の長手方向で前記端部材に直接または間接的に当接するように配置されることを特徴とする。
【0012】
また、前記せん断力抵抗部材が、前記構成部材と前記端部材との間に配置されることが好ましい。
【0013】
また、前記せん断力抵抗部材が、積層された複数のせん断力抵抗プレートを備えることが好ましい。
【0014】
また、前記構成部材が、一対のフランジ、および前記一対のフランジを互いに接続するウェブを有するH形鋼であり、前記端部材および前記引張力抵抗部材は、前記フランジの両側の面から前記フランジを挟持するように配置され、前記引張力抵抗部材は、前記ウェブに接合され、前記ウェブと前記引張力抵抗部材との間に配置される補助接合部材に接合されることが好ましい。
【0015】
また、前記構成部材が、角形鋼管であり、前記引張力抵抗部材が、前記角形鋼管の側面に接合されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、構成部材と補強部材との間に生じるせん断力に対する抵抗力を向上させることが可能な接合構造および接合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る接合構造によって、構造物を構成する構成部材に補強部材が接合された状態を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る接合構造の正面図である。
図3図2の接合構造の部分分解図である。
図4図2の接合構造のIV-IV線断面図である。
図5図2の接合構造の変形例の部分分解図である。
図6図2の接合構造の変形例の部分分解図である。
図7図2の接合構造の変形例の正面図である。
図8図7の接合構造のVIII-VIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る接合構造および接合方法を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまで一例にすぎず、本発明の接合構造および接合方法は以下の例に限定されることはない。
【0019】
本実施形態の接合構造1および接合方法は、図1に示されるように、構造物Sを構成する梁SBや柱SPなどの構成部材SB、SPに補強部材KBを接合するために用いられる。接合構造1が適用される構造物Sとしては、特に限定されることはなく、たとえば工場建屋、倉庫、ビルなどが例示される。接合構造1および接合方法は、以下の説明から理解できるように、溶接の必要がないので、新設構造物はもちろんのこと、特に既設構造物に好適に適用することができる。補強部材KBが接合される構成部材SB、SPは、たとえばH形鋼や角形鋼管などの鋼材により構成される。接合構造1および接合方法は、たとえば図2および図4に示されるように、H形鋼である構成部材(梁)SBに補強部材KBを接合するために、また、たとえば図7および図8に示されるように、角形鋼管である構成部材(柱)SPに補強部材KBを接合するために用いることができる。
【0020】
構成部材SB、SPに接合される補強部材KBは、構成部材SB、SPに接合されることで構造物Sを補強する部材である。補強部材KBは、構造物Sが地震動や風などの外乱を受けることにより構成部材SB、SPに生じる振動エネルギーを吸収して、および/または、構成部材SB、SPから受ける外力に抵抗して、構造物Sの変形を抑制し、構造物Sの強度を向上させることで、構造物Sの耐震性や制振性を向上させる。補強部材KBとしては、構成部材SB、SPに接合されて構造物Sを補強することができれば、特に限定されることはなく、たとえば図1に示されるような方杖や、それ以外にもブレースなどの公知の補強部材、既設鉄骨枠内に新設する枠架構を有する補強部材を用いることができる。
【0021】
補強部材KBは、たとえば、図1に示されるように、長手方向LDに沿って延びる長尺状の部材として形成され、構造物Sの構成部材である梁SBと柱SPとの間に架け渡される。これにより、補強部材KBは、補強部材KBの長手方向LDが、梁SBまたは柱SPの延びる方向である長手方向(以下、第1の方向ともいう)D1に対して直交する方向(第2の方向D2)から傾斜するように、梁SBまたは柱SPに接合される。なお、第2の方向D2は、補強部材KBの長手方向LDおよび梁SBまたは柱SPの第1の方向D1を含む面内(図中、紙面内)で第1の方向D1に対して垂直な方向である。たとえば、補強部材KBから長手方向LDに沿って梁SBまたは柱SPに対して圧縮力(押圧力)または引張力が作用するような場合には、補強部材KBと梁SBまたは柱SPとの間には、第2の方向D2に沿った圧縮力(押圧力)または引張力が生じるとともに、第1の方向D1に沿ったせん断力が生じる。本実施形態の接合構造1は、以下で詳しく述べるように、このような、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間に生じる第1の方向D1のせん断力ならびに第2の方向D2の圧縮力および引張力を、減衰させることなく、または減衰を抑制するように、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で伝達することができる。なお、補強部材KBは、たとえば隣り合う梁SB同士の間や、隣り合う柱SP同士の間に架け渡されて、補強部材KBの長手方向LDが梁SBまたは柱SPの第1の方向D1に対して略直交するように、梁SBまたは柱SPに接合されてもよい。
【0022】
接合構造1は、図2および図4、ならびに図7および図8に示されるように、補強部材KBの端部に設けられ、構成部材SB、SPに接合される端部材2と、構成部材SB、SPに接合される引張力抵抗部材3と、端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定する固定部材4と、構成部材SB、SPに接合されるせん断力抵抗部材5とを備えている。
【0023】
端部材2は、図2および図4、ならびに図7および図8に示されるように、補強部材KBの端部に設けられ、構成部材SB、SPに接合される引張力抵抗部材3に対して固定されることで、構成部材SB、SPに接合される。端部材2は、構成部材SB、SPに接合されることで、補強部材KBを構成部材SB、SPに接合する。端部材2は、本実施形態では補強部材KBと一体として形成されているが、補強部材KBとは別部材として形成され、ボルトなどの固定手段を介して補強部材KBの端部に連結されてもよい。
【0024】
端部材2は、図2および図7に示されるように、第2の方向D2に沿って、構成部材SB、SPに対して直接または間接的に当接するように配置される。端部材2は、構成部材SB、SPに対して第2の方向D2に沿って直接または間接的に当接するように配置されることで、第2の方向D2において、構成部材SB、SPに対して近接する方向への相対移動が抑制される。これにより、端部材2は、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で第2の方向D2の圧縮力が生じた場合に、構成部材SB、SPに対して近接する方向への相対移動が抑制されて、その圧縮力を、減衰させることなく、または減衰を抑制しながら、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で伝達することができる。
【0025】
端部材2は、本実施形態では、図2および図4、ならびに図7および図8に示されるように、第2の方向D2でせん断力抵抗部材5に当接し、せん断力抵抗部材5を介して間接的に構成部材SB、SPに当接するように配置される。これにより、端部材2は、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で第2の方向D2に圧縮力が生じたときに、構成部材SB、SPに対してせん断力抵抗部材5を第2の方向D2に沿って押圧する。構成部材SB、SPに対してせん断力抵抗部材5が第2の方向D2に沿って押圧されることで、構成部材SB、SPとせん断力抵抗部材5との間の接合力(接着力)が増大する。これにより、せん断力抵抗部材5は、構成部材SB、SPに対してより強固に接合されるので、以下で詳しく述べる第1の方向D1に沿ったせん断力に対する抵抗力がより増大する。ただし、端部材2は、本実施形態に限定されることはなく、せん断力抵抗部材5を介さずに、構成部材SB、SPに直接当接するように配置されてもよい。
【0026】
端部材2は、構成部材SB、SPに対して直接または間接的に当接して接合することができればよく、構成部材SB、SPの当接対象位置は特に限定されない。たとえば、図2および図4に示されるように、構成部材(梁)SBが、一対のフランジSB1、SB1、および一対のフランジSB1、SB1を互いに接続するウェブSB2を有するH形鋼である場合は、端部材2は、H形鋼の一方のフランジSB1の外側の外面に直接または間接的に当接して接合される。また、図7および図8に示されるように、構成部材(柱)SPが、隣接する側面が互いに略直交する4つの側面SP1~SP4を有する角形鋼管である場合には、端部材2は、角形鋼管の4つの側面SP1~SP4のうちの1つである第1の側面SP1に直接または間接的に当接して接合される。
【0027】
端部材2は、構成部材SB、SPに対して直接または間接的に当接するように形成されていればよく、その構造は特に限定されない。本実施形態では、端部材2は、図2および図4、ならびに図7および図8に示されるように、略平面状の当接面2aを有する略平板状の鋼材により形成されている。端部材2は、その当接面2aがせん断力抵抗部材5の略平面状の表面に面接触して当接することで、せん断力抵抗部材5を介して構成部材SB、SPに対して間接的に当接する。これにより、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間に第2の方向D2の圧縮力が生じた際に、圧縮力が当接面2a内で分散されて、局所的な応力の発生が抑制されて、端部材2およびせん断力抵抗部材5だけでなく、補強部材KBおよび構成部材SB、SPの破損が抑制される。なお、端部材2は、少なくとも構成部材SB、SPまたはせん断力抵抗部材5の表面に対して面接触する当接面2aを有していればよく、略平板とは異なる形状を有していてもよい。また、端部材2は、たとえば、図5に示されるように、端部材2が当接するせん断力抵抗部材5の表面の形状に対応して、当接面2a上に凹部2bが形成されていてもよい。
【0028】
端部材2は、図2および図4、ならびに図7および図8に示されるように、構成部材SB、SPに接合される引張力抵抗部材3に対して第2の方向D2で固定されることで、第2の方向D2で構成部材SB、SPから離間する方向への、引張力抵抗部材3に対する相対移動が抑制され、構成部材SB、SPに対する相対移動が抑制される。これにより、端部材2は、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で第2の方向D2の引張力が生じた場合に、第2の方向D2で構成部材SB、SPから離間する方向への相対移動が抑制されて、その引張力を、減衰させることなく、または減衰を抑制しながら、引張力抵抗部材3を介して補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で伝達することができる。
【0029】
端部材2は、引張力抵抗部材3に対して固定するために、本実施形態では、図4および図8に示されるように、構成部材SB、SPの第1の方向D1および第2の方向D2に対して直交する第3の方向D3において、構成部材SB、SPの両側の外側に突出する大きさに形成されている。端部材2は、構成部材SB、SPの外側に突出した部分において固定部材4によって引張力抵抗部材3に固定される。ただし、端部材2は、固定部材4により引張力抵抗部材3に対して固定することができればよく、第3の方向D3において、構成部材SB、SPの外側に突出することなく、構成部材SB、SPと略同じ大きさを有していてもよいし、構成部材SB、SPよりも小さい大きさを有していてもよい。
【0030】
端部材2は、図2および図7に示されるように、構成部材SB、SPの長手方向(第1の方向)D1で、構成部材SB、SPに接合されたせん断力抵抗部材5に当接するように配置される。これにより、端部材2は、第1の方向D1において、せん断力抵抗部材5に対する相対移動が抑制され、構成部材SB、SPに対する相対移動が抑制される。したがって、端部材2は、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で第1の方向D1のせん断力が生じた場合に、第1の方向D1における構成部材SB、SPに対する相対移動が抑制され、そのせん断力を、減衰させることなく、または減衰を抑制しながら、せん断力抵抗部材5を介して補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で伝達することができる。本実施形態の接合構造1および接合方法では、従来技術のように端部材2と構成部材SB、SPとの間の摩擦力によって第1の方向D1のせん断力に抵抗するのではなく、端部材2および構成部材SB、SPとは別のせん断力抵抗部材5によって第1の方向D1のせん断力に抵抗することで、従来技術と比べて、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間に生じるせん断力に対する抵抗力を向上させることができる。
【0031】
端部材2は、本実施形態では、図2および図7に示されるように、第1の方向D1における端部材2の両端部2c、2cが、せん断力抵抗部材5に第1の方向D1で互いに対向して形成された当接部5a、5aに直接当接するように、せん断力抵抗部材5に対して配置される。これにより、端部材2は、第1の方向D1における両方向への、せん断力抵抗部材5に対する相対移動が抑制され、構成部材SB、SPに対する相対移動が抑制される。ただし、端部材2は、第1の方向D1における少なくとも一方向への相対移動が抑制されればよく、端部材2の両端部2c、2cのうち少なくとも一方の端部2cがせん断力抵抗部材5の両方の当接部5a、5aのうちの一方に当接するように配置されても構わない。また、端部材2は、第1の方向D1に沿った相対移動が抑制されればよく、せん断力抵抗部材5に対して他の部材を介して間接的に当接するように配置されても構わない。
【0032】
端部材2は、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で生じる第2の方向D2の引張力が直接的にせん断力抵抗部材5に作用しないように、または、たとえ作用したとしても、その作用が抑制されるように、せん断力抵抗部材5に対して配置されることが好ましい。その目的のために、本実施形態では、端部材2は、せん断力抵抗部材5との間の関係のみにおいて、第2の方向D2でせん断力抵抗部材5から離間する方向への、せん断力抵抗部材5に対する相対移動が許容されるように、せん断力抵抗部材5に対して配置される(実際には、端部材2は、引張力抵抗部材3に固定されているので、せん断力抵抗部材5に対する相対移動が抑制される)。より具体的には、端部材2は、せん断力抵抗部材5に対して接着剤やボルトなどの固定手段を介して固定されない。このように、せん断力抵抗部材5が、端部材2を介して第2の方向D2の引張力を受けない、またはたとえ受けたとしても引張力が抑制されることで、せん断力抵抗部材5の構成部材SB、SPに対する接合力(接着力)の低下が抑制され、せん断力抵抗部材5によるせん断力に対する抵抗力の低下が抑制される。これにより、本実施形態の接合構造1および接合方法では、従来技術と比べて、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間に生じるせん断力に対する抵抗力をさらに向上させることができる。
【0033】
引張力抵抗部材3は、構成部材SB、SPに接合され、補強部材KBの端部材2に対して第2の方向D2で固定されることで、補強部材KBから受ける第2の方向D2の引張力に抵抗する。引張力抵抗部材3は、図2および図4、ならびに図7および図8に示されるように、補強部材KBから第2の方向D2に沿った引張力を受けたときに、第2の方向D2の補強部材KB側への、端部材2に対する相対移動が抑制されるように端部材2に対して固定される。また、引張力抵抗部材3は、第2の方向D2の補強部材KB側への、構成部材SB、SPに対する相対移動が抑制されるように、構成部材SB、SPに接合される。これにより、引張力抵抗部材3は、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で第2の方向D2の引張力が生じた場合に、補強部材KBおよび構成部材SB、SPに対する相対移動が抑制されて、第2の方向D2の引張力に抵抗する。したがって、引張力抵抗部材3は、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で生じる第2の方向D2の引張力を、減衰させることなく、または減衰を抑制しながら、端部材2を介して補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で伝達することができる。
【0034】
引張力抵抗部材3は、少なくとも構成部材SB、SPの第2の方向D2における補強部材KB側への相対移動が抑制されるように構成部材SB、SPに接合されていればよく、その接合方法は特に限定されない。たとえば、図2および図4に示されるように、構成部材(梁)SBがH形鋼の場合、引張力抵抗部材3は、補強部材KBの端部材2が接合されるH形鋼のフランジSB1の外面とは反対側の内面に当接して接合される。引張力抵抗部材3は、本実施形態では、図4に示されるように、ウェブSB2を挟んで第3の方向D3の両側に配置される2つの引張力抵抗部材3、3を含んでいる。端部材2およびそれぞれの引張力抵抗部材3は、フランジSB1の両側の面からフランジSB1を第2の方向D2で挟持するように配置され、固定部材4によって互いに対して固定される。引張力抵抗部材3は、フランジSB1を挟んで端部材2に対して固定されることで、接着剤を介することなくフランジSB1に接合される。引張力抵抗部材3は、補強部材KBと構成部材SBとの間で第2の方向D2の引張力が生じた場合に、第2の方向D2でフランジSB1と係合することで、第2の方向D2における補強部材KB側への相対移動が抑制される。なお、引張力抵抗部材3は、図2および図4に示された例ではフランジSB1の内面に接着剤を介さずに直接当接するように配置されているが、フランジSB1の内面にエポキシ系接着剤などの接着剤を介して接着されてもよいし、他の部材を介してフランジSB1の内面に間接的に当接するように配置されてもよい。また、引張力抵抗部材3は、第2の方向D2で構成部材SBと係合し、第2の方向D2における補強部材KB側への相対移動が抑制されればよく、たとえば一対のフランジSB1、SB1の他方側のフランジSB1の外側の外面に配置され、端部材2とともに、構成部材SBの全体を挟持するように配置されてもよい。
【0035】
引張力抵抗部材3は、少なくとも補強部材KBと構成部材SBとの間に生じる第2の方向D2の引張力に対して抵抗する際に変形が抑制される剛性を有していれば、その構造は特に限定されない。本実施形態では、引張力抵抗部材3は、図2および図4に示されるように、略平板状の鋼材により形成される。引張力抵抗部材3は、端部材2に固定するために、フランジSB1の第3の方向D3の外側に突出する大きさに形成されている(図4参照)。引張力抵抗部材3は、フランジSB1の第3の方向D3の外側に突出する部分において、固定部材4によって端部材2に固定される。ただし、引張力抵抗部材3は、固定部材4により端部材2に対して固定することができればよく、第3の方向D3において、フランジSB1の第3の方向D3の外側に突出しない大きさを有していてもよい。
【0036】
引張力抵抗部材3は、図2および図4に示されるように、構成部材(梁)SBがH形鋼の場合、補助接合部材6によってH形鋼のフランジSB1に対する接合力が強化されてもよい。補助接合部材6は、引張力抵抗部材3が当接するフランジSB1とは反対側の引張力抵抗部材3の面とウェブSB2の表面との間に配置されて接合される。引張力抵抗部材3は、ウェブSB2に接合され、ウェブSB2と引張力抵抗部材3との間に配置される補助接合部材6に接合されることで、ウェブSB2に対する相対移動が抑制され、それによって第2の方向D2でフランジSB1から離間する方向(補強部材KB側とは反対側)への相対移動が抑制される。引張力抵抗部材3は、補強部材KBと構成部材SBとの間で第2の方向D2の引張力が生じた場合に、フランジSB1の第3の方向D3の外側で固定部材4を介して第2の方向D2における補強部材KB側(図4中、下側)への力を受けるため、ウェブSB2に隣接する部分が第2の方向D2でフランジSB1から離間する方向(図4中、上側)の力を受ける。引張力抵抗部材3がこのような力を受けたときに、補助接合部材6は、ウェブSB2に隣接する引張力抵抗部材3の部分が、第2の方向D2でフランジSB1から離間する方向に相対移動するのを抑制する。これにより、引張力抵抗部材3は、第2の方向D2でフランジSB1とより強固に係合して、第2の方向D2における補強部材KB側への相対移動がさらに抑制される。
【0037】
補助接合部材6は、引張力抵抗部材3とH形鋼のウェブSB2との間に配置されて、第2の方向D2でフランジSB1から離間する方向への引張力抵抗部材3の相対移動を抑制することができればよく、その構造や接合方法は特に限定されない。本実施形態では、補助接合部材6は、図2および図4に示されるように、第1の方向D1に対して垂直な断面が略L字状で、第1の方向D1に沿って延びる鋼材(たとえばL形鋼)により構成される。補助接合部材6は、一方の辺61の外面がウェブSB2の表面にエポキシ系接着剤などの接着剤により接合され、他方の辺62の外面がウェブSB2に隣接する引張力抵抗部材3の表面に直接または間接的に当接されることで、ウェブSB2および引張力抵抗部材3に接合される。補助接合部材6が、引張力抵抗部材3に対して、接着剤で接合されることなく、直接または間接的に当接して接合されることで、引張力抵抗部材3が第1の方向D1に沿ったせん断力を受けたとしても、そのせん断力が補助接合部材6を介してウェブSB2に伝達されることが抑制される。
【0038】
引張力抵抗部材3は、図7および図8に示されるように、構成部材(柱)SPが角形鋼管の場合、角形鋼管の側面SP2、SP3に接合される。引張力抵抗部材3は、本実施形態では、2つの引張力抵抗部材3、3を含み、2つの引張力抵抗部材3、3は、それぞれ、角形鋼管の4つの側面SP1~SP4のうち、補強部材KBの端部材2が接合される第1の側面SP1の両側に配置され、互いに対向する第2の側面SP2および第3の側面SP3にエポキシ系接着剤などの接着剤により接合される。本実施形態では、引張力抵抗部材3には、第1の方向D1に対して垂直な断面が略U字状または略C字状で、第1の方向D1に沿って延びる鋼材(たとえば溝形鋼)が用いられる。引張力抵抗部材3は、図8に示されるように、第2の方向D2に沿って延びる底部31と、第2の方向D2における底部31の両端から第3の方向D3の一方側に延びる側部32、32とを有している。2つの引張力抵抗部材3、3の底部31、31が、それぞれ、角形鋼管の第2の側面SP2および第3の側面SP3に接着剤を介して接合され、2つの引張力抵抗部材3の側部32、32が、それぞれ、固定部材4により補強部材KBの端部材2に固定される。なお、引張力抵抗部材3は、本実施形態では、底部31上で側部32、32間に延びるリブ33を有している。引張力抵抗部材3は、2つの側部32、32を有することで、また、2つの側部32、32間に延びるリブ33をさらに有することで、補強部材KBと構成部材SPとの間に引張力などが生じた場合に、底部31の変形を抑制し、構成部材SPに対する接合力(接着力)の低下を抑制することができる。ただし、引張力抵抗部材3は、少なくとも、構成部材SPの側面SP2、SP3に接着剤により接合する部分と、固定部材4により補強部材KBの端部材2に対して固定する部分とを有していればよく、たとえば、第1の方向D1に対して垂直な断面が略L字状に形成された鋼材(たとえばL形鋼)であってもよい。また、上記記載に関わらず、引張力抵抗部材3は、略平板状に形成され、第1の側面SP1に対向する第4の側面SP4に当接し、端部材2とともに、構成部材SPの全体を挟持するように配置されてもよい。
【0039】
固定部材4は、図4および図8に示されるように、構成部材SB、SPの外側に配置され、補強部材KBの端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定する。固定部材4は、端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定することで、端部材2および引張力抵抗部材3の、第2の方向D2で互いに離間する方向への、互いに対する相対移動を抑制する。ここで、固定部材4が構成部材SB、SPの外側に配置されるとは、少なくとも構成部材SB、SPを貫通することなく配置されることを意味する。本実施形態では、固定部材4は、第2の方向D2に沿って延びるボルトとして具現化され、構成部材SB、SPを貫通することなく、第3の方向D3において構成部材SB、SPの外側に配置されている。固定部材4であるボルトは、構成部材SB、SPの外側に突出した端部材2の部分に設けられたボルト孔と、引張力抵抗部材3に設けられたボルト孔とを貫通して、端部材2および引張力抵抗部材3を互いに対して固定する。ただし、固定部材4は、構成部材SB、SPの外側に配置され、端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定することができればよく、第3の方向D3における構成部材SB、SPの内側において、端部材2および引張力抵抗部材3を第2の方向D2の外側から挟持して、互いに対して固定する部材であってもよい。
【0040】
固定部材4は、構成部材SBがH形鋼の場合には、図2および図4に示されるように、構成部材SBの第3の方向D3の外側において、フランジSB1を挟んで第2の方向D2で互いに離間した状態の端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定する。端部材2と引張力抵抗部材3との間に、端部材2と引張力抵抗部材3との間の間隔を維持するためのスペーサ7が設けられてもよい。端部材2と引張力抵抗部材3との間にスペーサ7が設けられることで、固定部材4であるボルトの締め付けによって、端部材2と引張力抵抗部材3との間の間隔がフランジSB1の厚さよりも小さくなることが抑制され、それによってウェブSB2に隣接する引張力抵抗部材3の部分がフランジSB1から離間するのを抑制することができる。また、固定部材4は、構成部材SPが角形鋼管の場合には、図7および図8に示されるように、構成部材SPの第3の方向D3の外側において、第2の方向D2で互いに対して当接した状態の端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定する。
【0041】
せん断力抵抗部材5は、図2および図7に示されるように、構成部材SB、SPに接合され、構成部材SB、SPの長手方向(第1の方向)D1で端部材2に当接するように配置される。せん断力抵抗部材5は、第1の方向D1で端部材2と当接して、端部材2と構成部材SB、SPとの間に生じる第1の方向D1に沿ったせん断力に抵抗する。せん断力抵抗部材5は、第1の方向D1に沿ったせん断力に抵抗して、第1の方向D1において、せん断力抵抗部材5に対する端部材2の相対移動を抑制し、構成部材SB、SPに対する端部材2の相対移動を抑制する。これにより、せん断力抵抗部材5は、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間に生じる第1の方向D1のせん断力を、減衰させることなく、または減衰を抑制して、端部材2を介して補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で伝達することができる。本実施形態の接合構造1および接合方法では、従来技術のように端部材2と構成部材SB、SPとの間の摩擦力によって第1の方向D1のせん断力に抵抗するのではなく、端部材2および構成部材SB、SPとは別のせん断力抵抗部材5によって第1の方向D1のせん断力に抵抗することで、従来技術と比べて、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間に生じるせん断力に対する抵抗力を向上させることができる。
【0042】
せん断力抵抗部材5は、本実施形態では、図2図3および図7に示されるように、構成部材SB、SPの長手方向(第1の方向)D1で対向して設けられた2つの当接部5a、5aを備えている。せん断力抵抗部材5は、2つの当接部5a、5aがそれぞれ端部材2の両方の端部2c、2cに直接当接するように、端部材2に対して配置される。これにより、せん断力抵抗部材5は、第1の方向D1における両方向への、せん断力抵抗部材5に対する端部材2の相対移動を抑制し、構成部材SB、SPに対する端部材2の相対移動を抑制する。ただし、せん断力抵抗部材5は、第1の方向D1における少なくとも一方向への端部材2の相対移動を抑制することができればよく、両方の当接部5a、5aのうちのいずれか一方のみを備えていてもよい。それとは逆に、せん断力抵抗部材5は、第1の方向D1のせん断力に対してより確実に抵抗するために、図5に示されるように、3つ以上(図示された例では4つ)の当接部5aを備えていてもよい。また、せん断力抵抗部材5は、第1の方向D1に沿った端部材2の相対移動を抑制することができればよく、端部材2に対して他の部材を介して間接的に当接するように配置されても構わない。当接部5aは、図3および図5から理解できるように、凹部の端部に形成された壁部により構成されてもよいし、突部の端部に形成された壁部により構成されてもよい。
【0043】
せん断力抵抗部材5は、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で第1の方向D1のせん断力が生じた場合に、そのせん断力に抵抗するために、第1の方向D1における構成部材SB、SPに対する相対移動が抑制されるように構成部材SB、SPに接合される。本実施形態では、せん断力抵抗部材5は、エポキシ系接着剤などの接着剤により構成部材SB、SPに接合される。なお、せん断力抵抗部材5は、構成部材SB、SPに接合されるにあたって、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で生じる第2の方向D2の引張力がせん断力抵抗部材5に作用しないように、または、たとえ作用したとしてもその作用が抑制されるように、端部材2(または引張力抵抗部材3)に対して配置されることが好ましい。その目的のために、本実施形態では、せん断力抵抗部材5は、端部材2(または引張力抵抗部材3)との間の関係のみにおいて、第2の方向D2でせん断力抵抗部材5から離間する方向への、せん断力抵抗部材5に対する端部材2(または引張力抵抗部材3)の相対移動が許容されるように端部材2(または引張力抵抗部材3)に対して配置される(実際には、端部材2と引張力抵抗部材3とが互いに対して固定されているので、せん断力抵抗部材5に対する端部材2および引張力抵抗部材3の相対移動が抑制される)。より具体的には、せん断力抵抗部材5は、端部材2(または引張力抵抗部材3)に対して接着剤やボルトなどの固定手段を介して固定されない。このように、せん断力抵抗部材5が、端部材2(または引張力抵抗部材3)を介して第2の方向D2の引張力を受けない、または、たとえ受けたとしても引張力が抑制されることで、せん断力抵抗部材5の構成部材SB、SPに対する接合力(接着力)の低下が抑制され、せん断力抵抗部材5によるせん断力に対する抵抗力の低下が抑制される。したがって、本実施形態の接合構造1および接合方法では、従来技術と比べて、構成部材SB、SPと補強部材KBとの間に生じるせん断力に対する抵抗力をさらに向上させることができる。
【0044】
せん断力抵抗部材5は、第1の方向D1で端部材2に当接するように配置されていればよく、特に限定されることはないが、図2および図4、ならびに図7および図8に示されるように、構成部材SB、SPと端部材2との間に配置されることが好ましい。せん断力抵抗部材5は、構成部材SB、SPと端部材2との間に配置されることで、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間で第2の方向D2の圧縮力が生じた場合には、端部材2によって構成部材SB、SPに押圧されるので、構成部材SB、SPとの間の接合力(接着力)が増加する。これにより、せん断力抵抗部材5は、構成部材SB、SPに対してより強固に固定され、第1の方向D1のせん断力に対する抵抗力がさらに増加する。ただし、せん断力抵抗部材5は、たとえば図6に示されるように、部分的にまたは全体的に、構成部材SB、SPと端部材2との間に配置されることなく、端部材2を挟んで第1の方向D1の両側に配置されてもよい。
【0045】
せん断力抵抗部材5は、第1の方向D1で端部材2と当接し、第1の方向D1のせん断力に抵抗することができればよく、その構造は特に限定されない。本実施形態では、せん断力抵抗部材5は、図2図6に示されるように、積層された複数(図2図5に示された例では3層、図6に示された例では4層)のせん断力抵抗プレート51~54を備えている。せん断力抵抗部材5は、複数のせん断力抵抗プレート51~54により形成されることで、同じ厚さで1つの部材として形成される場合と比べて、構成部材SB、SPの変形に追従して変形しやすくなる。これにより、せん断力抵抗部材5は、たとえ構成部材SB、SPが変形したとしても、構成部材SB、SPの変形に追従して変形することで、構成部材SB、SPとの間の界面における平行性が維持され、構成部材SB、SPとの間の接合力(接着力)の低下が抑制される。たとえば、図4に示されるように、構成部材SBがH形鋼の場合に、補強部材KBと構成部材SBとの間に引張力が生じると、フランジSB1の第3の方向D3の外側に設けられた固定部材4を介して、端部材2と引張力抵抗部材3との間で引張力が伝達される。そのため、フランジSB1の第3の方向D3の両方の端部側に引張力が作用し、フランジSB1は、両方の端部側で第2の方向D2に変形して、第3の方向D3の中心付近で第2の方向D2に凹となるように変形する。このような場合に、せん断力抵抗部材5のそれぞれのせん断力抵抗プレート51~54は、フランジSB1の変形に追従して容易に変形することができるので、せん断力抵抗部材5とフランジSB1との間の接触面積の減少が抑制され、接合力(接着力)の低下が抑制される。したがって、せん断力抵抗部材5の第1の方向D1のせん断力に対する抵抗力の低下を抑制することができる。ただし、せん断力抵抗部材5は、図7および図8に示されるように、1つの略板状の部材として形成されてもよい。
【0046】
複数のせん断力抵抗プレート51~54は、補強部材KBと構成部材SB、SPとの間に第1の方向D1のせん断力が生じた場合に、そのせん断力に抵抗するために、第1の方向D1における互いに対する相対移動が抑制されるように互いに対して接合される。本実施形態では、複数のせん断力抵抗プレート51~54は、互いに対してエポキシ系接着剤などの接着剤により接合される。せん断力抵抗プレート51~54は、第1の方向D1のせん断力を受けた際にせん断力抵抗部材5の全体として変形が抑制される剛性を有しながらも、第2の方向D2の引張力を受けた際の構成部材SB、SPの変形に対してそれぞれが追従し得る柔軟性を有していればよく、その構造は特に限定されない。せん断力抵抗プレート51~54は、それぞれ、たとえば、略平板状に形成された鋼材によって構成される。
【0047】
本実施形態では、複数のせん断力抵抗プレート51~54のうち、構成部材SB、SPから最も離間した位置に配置されたせん断力抵抗プレート53、54が、補強部材KBの端部材2に当接するように配置される。図3に示された例では、せん断力抵抗プレート53は、端部材2側に位置する面に凹部が形成され、第1の方向D1における凹部の両端に当接部5a、5aが形成されている。また、図5に示された例では、せん断力抵抗プレート53は、端部材2側に位置する面に凹部が形成され、第1の方向D1における凹部の両端に当接部5a、5aが形成されるとともに、凹部内に凸部が形成され、第1の方向D1における凸部の両端にも当接部5a、5aが形成されている。また、図6に示された例では、せん断力抵抗プレート54は、第1の方向D1において互いに離間して配置される2つのプレートに分離され、第1の方向D1で互いに対向する2つのプレートの端部に当接部5a、5aが形成されている。
【0048】
端部材2に直接または間接的に当接するせん断力抵抗プレート53、54は、第1の方向D1のせん断力に抵抗するために、せん断力抵抗プレート52、53に対して所定以上の接着力が必要であり、そのために所定以上の面積でせん断力抵抗プレート52、53に接着される必要がある。図3および図5に示されたせん断力抵抗プレート53は、1つのプレートで、第1の方向D1の両方向で端部材2の当接が可能に形成されているので、図6に示されたせん断力抵抗プレート54のように、第1の方向D1のうちのそれぞれの方向での端部材2の当接用にそれぞれ1つのプレートを設ける場合と比べて、せん断力抵抗プレート53の設置面積を小さくすることができる。また、図6に示されたせん断力抵抗プレート54は、端部材2を設けた後に、2つのプレートを端部材2に当接するように配置できるので、図3および図5に示されたせん断力抵抗プレート53のように、端部材2の形状に適合するように予め加工する必要がないので、容易にせん断力抵抗部材5を形成することができる。
【0049】
つぎに、本実施形態の接合構造1のための接合方法を説明する。ただし、以下の接合方法の説明は、一例にすぎず、本発明の接合方法は、以下の例に限定されることはない。また、以下では、いくつかの工程について説明するが、いくつかの工程は、説明する順序で実施されることもあるし、説明する順序と異なる順序で実施されることもある。また、いくつかの工程のうち1つまたは複数の工程は、いくつかの工程のうち他の1つまたは複数の工程を実施することによって実施されることもある。本実施形態の接合構造1に関する上記説明は、本実施形態の接合方法に適用可能である。
【0050】
本実施形態の接合方法は、図2および図4、ならびに図7および図8に示されるように、補強部材KBの端部に設けられた端部材2を構成部材SB、SPに接合する工程と、引張力抵抗部材3を構成部材SB、SPに接合する工程と、固定部材4により端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定する工程と、せん断力抵抗部材5を構成部材SB、SPに接合する工程とを含んでいる。
【0051】
端部材2を構成部材SB、SPに接合する工程は、固定部材4により端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定する工程によって実施することができる。たとえば、図2および図4に示された例では、せん断力抵抗部材5を構成部材SBに接合する工程を実施した後に、構成部材SBであるH形鋼のフランジSB1の外面に、せん断力抵抗部材5を介して端部材2を間接的に当接するように配置し、引張力抵抗部材3をフランジSB1の内面に当接するように配置する。その後、固定部材4により端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定することによって、端部材2を構成部材SBに接合することができる。また、図7および図8に示された例では、引張力抵抗部材3を構成部材SPに接合する工程と、せん断力抵抗部材5を構成部材SPに接合する工程とを実施した後に、構成部材SPである角形鋼管の第1の側面SP1に、せん断力抵抗部材5を介して端部材2を間接的に当接するように配置する。その後、固定部材4により端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定することによって、端部材2を構成部材SBに接合することができる。
【0052】
引張力抵抗部材3を構成部材SB、SPに接合する工程は、図2および図4に示された例では、固定部材4により端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定する工程によって実施することができる。せん断力抵抗部材5を構成部材SBに接合する工程を実施した後に、構成部材SBであるH形鋼のフランジSB1の外面に、せん断力抵抗部材5を介して端部材2を間接的に当接するように配置し、フランジSB1の内面に引張力抵抗部材3を当接するように配置する。その後、固定部材4により端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定することによって、引張力抵抗部材3を構成部材SBに接合することができる。また、図7および図8に示された例では、引張力抵抗部材3を接着剤により、構成部材SPである角形鋼管の第2および第3の側面SP2、SP3に接着することにより、引張力抵抗部材3を構成部材SPに接合することができる。
【0053】
固定部材4により端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定する工程では、端部材2および引張力抵抗部材3が構成部材SB、SPに対して所定の位置に配置された後に、固定部材4を構成部材SB、SPの外側に配置し、構成部材SB、SPの外側に配置された固定部材4により、端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定する。固定部材4により端部材2と引張力抵抗部材3とを互いに対して固定することで、補強部材KBを構成部材SB、SPに接合することができる。
【0054】
せん断力抵抗部材5を構成部材SB、SPに接合する工程は、接着剤によりせん断力抵抗部材5を構成部材SB、SPに接着することにより実施することができる。せん断力抵抗部材5は、後に実施される、端部材2を構成部材SB、SPに接合する工程において、構成部材SB、SPの長手方向(第1の方向)D1で端部材2に直接または間接的に当接するように配置される。せん断力抵抗部材5が、図6に示されるように、積層された複数のせん断力抵抗プレート51~54により構成され、構成部材SB、SPから最も離間した位置に配置されたせん断力抵抗プレート54が、2つのプレートにより構成される場合には、せん断力抵抗プレート51~53を構成部材SB、SPに接合し、端部材2を構成部材SB、SPに接合した後に、接着剤によりせん断力抵抗プレート54をせん断力抵抗プレート53に接着する。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。なお、上記した実施形態は、以下の構成を有する発明を主に説明するものである。
【0056】
(1)構造物を構成する構成部材に補強部材を接合するための接合構造であって、
前記補強部材の端部に設けられ、前記構成部材に接合される端部材と、
前記構成部材に接合され、前記補強部材から受ける引張力に抵抗する引張力抵抗部材と、
前記構成部材の外側に配置され、前記端部材と前記引張力抵抗部材とを互いに対して固定する固定部材と、
前記構成部材に接合されるせん断力抵抗部材と
を備え、
前記せん断力抵抗部材が、前記構成部材の長手方向で前記端部材に直接または間接的に当接するように配置される、接合構造。
【0057】
(2)前記せん断力抵抗部材が、前記構成部材と前記端部材との間に配置される、
(1)に記載の接合構造。
【0058】
(3)前記せん断力抵抗部材が、積層された複数のせん断力抵抗プレートを備える、
(1)または(2)に記載の接合構造。
【0059】
(4)前記構成部材が、一対のフランジ、および前記一対のフランジを互いに接続するウェブを有するH形鋼であり、
前記端部材および前記引張力抵抗部材は、前記フランジの両側の面から前記フランジを挟持するように配置され、
前記引張力抵抗部材は、前記ウェブに接合され、前記ウェブと前記引張力抵抗部材との間に配置される補助接合部材に接合される、
(1)~(3)のいずれか1つに記載の接合構造。
【0060】
(5)前記構成部材が、角形鋼管であり、
前記引張力抵抗部材が、前記角形鋼管の側面に接合される、
(1)~(3)のいずれか1つに記載の接合構造。
【0061】
(6)構造物を構成する構成部材に補強部材を接合する方法であって、
前記補強部材の端部に設けられた端部材を前記構成部材に接合する工程と、
前記補強部材から受ける引張力に抵抗する引張力抵抗部材を前記構成部材に接合する工程と、
前記構成部材の外側に配置された固定部材により前記端部材と前記引張力抵抗部材とを互いに対して固定する工程と、
せん断力抵抗部材を前記構成部材に接合する工程と
を含み、
前記せん断力抵抗部材が、前記構成部材の長手方向で前記端部材に直接または間接的に当接するように配置される、方法。
【0062】
(7)前記せん断力抵抗部材が、前記構成部材と前記端部材との間に配置される、
(6)に記載の方法。
【0063】
(8)前記せん断力抵抗部材が、積層された複数のせん断力抵抗プレートを備える、
(6)または(7)に記載の方法。
【0064】
(9)前記構成部材が、一対のフランジ、および前記一対のフランジを互いに接続するウェブを有するH形鋼であり、
前記端部材および前記引張力抵抗部材は、前記フランジの両側の面から前記フランジを挟持するように配置され、
前記引張力抵抗部材は、前記ウェブに接合され、前記ウェブと前記引張力抵抗部材との間に配置される補助接合部材に接合される、
(6)~(8)のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
(10)前記構成部材が、角形鋼管であり、
前記引張力抵抗部材が、前記角形鋼管の側面に接合される、
(6)~(8)のいずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0066】
1 接合構造
2 端部材
2a 当接面
2b 凹部
2c 端部
3 引張力抵抗部材
31 底部
32 側部
33 リブ
4 固定部材
5 せん断力抵抗部材
51~54 せん断力抵抗プレート
5a 当接部
6 補助接合部材
61、62 辺
7 スペーサ
D1 第1の方向(長手方向)
D2 第2の方向
D3 第3の方向
LD 補強部材の長手方向
KB 補強部材
S 構造物
SB 構成部材(梁)
SB1 フランジ
SB2 ウェブ
SP 構成部材(柱)
SP1 第1の側面
SP2 第2の側面
SP3 第3の側面
SP4 第4の側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8