IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-画像形成装置 図1
  • 特開-画像形成装置 図2
  • 特開-画像形成装置 図3
  • 特開-画像形成装置 図4
  • 特開-画像形成装置 図5
  • 特開-画像形成装置 図6
  • 特開-画像形成装置 図7
  • 特開-画像形成装置 図8
  • 特開-画像形成装置 図9
  • 特開-画像形成装置 図10
  • 特開-画像形成装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052146
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20240404BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B41J29/38
G03G21/00 370
B41J29/38 204
B41J29/38 203
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158655
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】後藤 圭吾
【テーマコード(参考)】
2C061
2H270
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AP03
2C061AP04
2C061AP07
2C061AQ06
2C061AS02
2C061HJ01
2C061HJ02
2C061HK06
2C061HK07
2C061HK11
2C061HK15
2C061HN15
2H270KA59
2H270LB01
2H270MD17
2H270MH05
2H270NA01
2H270NA09
2H270NB22
2H270ND22
2H270ND28
2H270ND32
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】印刷処理に先立って、準備処理を実行可能な画像形成装置において、無駄な準備処理の実行を抑制することを目的とする。
【解決手段】制御部10は、オプション情報が示す印刷処理の実行条件を満たし、印刷処理を実行可能であると判断する場合は、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行する。制御部10は、実行条件を満たさず、印刷処理を実行不可能であると判断する場合は、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行しない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部端末からのデータを受信する通信インタフェースと、
シートに画像を形成する画像形成部と、
加熱回転体と、前記加熱回転体を加熱するヒータと、前記加熱回転体との間でシートをニップするニップ部を形成する加圧回転体と、を有し、前記画像をシートに定着させる定着部と、
前記定着部のいずれかの回転体を回転させるための駆動力を伝達するメインモータと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記外部端末から前記通信インタフェースを介して先行コマンドを取得し、取得された前記先行コマンドを解析してオプション情報を取得する取得処理と、
前記ヒータを用いて前記加熱回転体を加熱することによって、前記加熱回転体の温度を定着温度まで昇温し、前記定着温度を維持する準備処理であって、前記メインモータの駆動を制御して前記定着部の回転体を回転させる準備処理と、
前記準備処理の実行後に、前記画像形成部を用いて、前記通信インタフェースを介して受信した印刷データに従って画像をシートに形成し、前記定着部を用いてシートに形成された画像を定着する印刷処理と、
を実行し、
前記制御部は、
前記オプション情報が示す前記印刷処理の実行条件を満たし、前記印刷処理を実行可能であると判断する場合は、前記先行コマンドの取得を契機に、前記準備処理を実行し、その後、印刷指示に応じて前記印刷処理を実行し、
前記実行条件を満たさず、前記印刷処理を実行不可能であると判断する場合は、前記先行コマンドの取得を契機に、前記準備処理を実行せず、その後、前記実行条件を満たしていない状態から前記実行条件を満たした場合において、前記印刷指示に応じて前記準備処理と前記印刷処理とを実行する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
シートが載置される供給トレイを備え、
前記オプション情報には、前記画像形成部により画像が形成されるシートのサイズを指定する前記実行条件を含んでおり、
前記制御部は、
前記オプション情報が示すサイズのシートが前記供給トレイに載置されず、前記実行条件を満たしていない場合に、前記印刷処理を実行不可能であると判断し、前記先行コマンドの取得を契機に、前記準備処理を実行せず、その後、前記実行条件を満たしていない状態から前記実行条件を満たした場合において、前記印刷指示に応じて前記準備処理と前記印刷処理とを実行する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
シートが載置される供給トレイを備え、
前記オプション情報には、前記画像形成部により画像が形成されるシートのサイズを指定する前記実行条件を含み、
前記制御部は、
前記オプション情報が示すサイズのシートを載置する前記供給トレイが無く、前記実行条件を満たしていない場合に、前記印刷処理を実行不可能であると判断し、前記先行コマンドの取得を契機に、前記準備処理を実行せず、その後、前記実行条件を満たしていない状態から前記実行条件を満たした場合において、前記印刷指示に応じて記準備処理と前記印刷処理とを実行する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
記憶部を備え、
前記記憶部には、前記画像形成装置において前記印刷処理の実行を許可するユーザを示すユーザ情報が記憶されており、
前記オプション情報には、印刷データの送信元のユーザを示すユーザ情報を含み、
前記制御部は、
前記オプション情報で示されるユーザ情報と、前記記憶部に記憶された前記ユーザ情報とが同じユーザを示している場合に、前記印刷処理を実行可能であると判断し、前記先行コマンドの取得を契機に、前記準備処理を実行し、その後、前記印刷指示に応じて前記印刷処理を実行し、
前記オプション情報で示されるユーザ情報と、前記記憶部に記憶された前記ユーザ情報とが同じユーザを示していない場合に、前記印刷処理を実行不可能であると判断し、前記準備処理と前記印刷処理とを実行しない、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記憶部には、前記ユーザ情報に関連付けて、1回の前記印刷指示での印刷可能枚数が記憶されており、
前記オプション情報には、前記ユーザ情報に関連付けて、1回の前記印刷指示での印刷枚数を指定する情報を含んでおり、
前記制御部は、
前記オプション情報で示されるユーザ情報と、前記記憶部に記憶されているユーザ情報とが同じユーザを示しており、かつ前記オプション情報で示される前記印刷枚数が、前記記憶部に記憶された印刷可能枚数以下であれば、前記印刷処理を実行可能であると判断し、前記先行コマンドの取得を契機に、前記準備処理を実行し、その後、前記印刷指示に応じて前記印刷処理を実行し、
前記オプション情報で示されるユーザ情報と、前記記憶部に記憶されているユーザ情報とが同じユーザを示しており、かつ前記オプション情報で示される前記印刷枚数が、前記記憶部に記憶された印刷可能枚数よりも大きければ、前記印刷処理を実行不可能であると判断し、前記準備処理と前記印刷処理とを実行しない、ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成部は、互いに異なる色の画像を形成可能であって、
前記制御部は、
前記印刷処理の実行に先行して、前記画像形成部により記録される画像の色ずれを補正する色ずれ補正処理を実行可能であり、
前記オプション情報には、前記画像形成部が画像をカラーで形成するか、画像をモノクロで形成するかを示す情報を含み、
前記制御部は、
前記先行コマンドから解析された前記オプション情報が示す前記実行条件が、前記画像をカラーで形成することを示しており、かつ前記色ずれ補正の開始条件が成立している場合に、前記先行コマンドの取得を契機に、前記準備処理を実行せず、前記色ずれ補正処理を実行し、その後、前記印刷指示に応じて前記準備処理と前記印刷処理とを実行する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像形成部は、感光体ドラムと、前記感光体ドラムにトナーを供給する現像ローラと、前記感光体ドラムに形成されたトナー像をシートに転写する転写部材と、を有し、
前記メインモータは、前記感光体ドラム及び前記現像ローラに駆動力を伝達可能であり、
前記制御部は、
前記準備処理において、前記メインモータの駆動を制御して前記感光体ドラム及び前記現像ローラを回転させる、ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成部は、光源から出射された光ビームを偏向して、前記感光体ドラムを露光するポリゴンミラーと、前記ポリゴンミラーを回転させる駆動力を供給するポリゴンモータと、を有し、
前記制御部は、
前記準備処理において、前記ポリゴンモータの駆動を制御して前記ポリゴンミラーを回転させる、ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、
外部装置から、前記通信インタフェースを介して前記先行コマンドを取得後、前記印刷データを受信し、前記印刷データから画データを作成してメモリに保存し、
前記メモリに少なくとも1ページ分の画データが保存されたことを前記印刷指示とする、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、シートへの画像の形成が指示されてから1枚目のシートの後端が排出されるまでの時間、いわゆるファーストプリント時間を短縮する技術が知られている。特許文献1には、印刷データの受信に先行して、取得された先行コマンドをトリガーとして準備処理を開始することで、ファーストプリント時間を短縮する画像形成装置が記載されている。ここで、準備処理は、定着部の回転体をモータからの駆動力により回転させると共に加熱ローラを昇温して温度を維持する処理である。特許文献1に記載された画像形成装置は、先行コマンドから定着部の回転体の回転速度を決定するための情報を取得し、取得した情報に基づいて定着部の回転体の回転速度を決定し、定着部の回転体を回転させる準備処理を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-102898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置が、先行コマンドを取得したことを契機に準備処理を実行する構成では、例えば、用紙切れなどの印刷処理の実行条件を満たさないと、定着部の回転体の回転を停止させると共に、加熱ローラの昇温の維持を停止させる場合がある。その場合、画像形成装置は、印刷処理の実行条件を満たした段階で、再度、準備処理を実行することになるため、準備処理を無駄に実行する場合があるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、画像の形成に先立って準備処理を実行可能な画像形成装置において、無駄な準備処理の実行を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本実施形態で開示された画像形成装置では、外部端末からのデータを受信する通信インタフェースと、シートに画像を形成する画像形成部と、加熱回転体と、加熱回転体を加熱するヒータと、加熱回転体との間でシートをニップするニップ部を形成する加圧回転体と、を有し、画像をシートに定着させる定着部と、定着部のいずれかの回転体を回転させるための駆動力を伝達するメインモータと、制御部と、を備えている。制御部は、外部端末から通信インタフェースを介して先行コマンドを取得し、取得された先行コマンドを解析してオプション情報を取得する取得処理と、ヒータを用いて加熱回転体を加熱することによって、加熱回転体の温度を定着温度まで昇温し、定着温度を維持する準備処理であって、メインモータの駆動を制御して定着部の回転体を回転させる準備処理と、準備処理の実行後に、画像形成部を用いて、通信インタフェースを介して受信した印刷データに従って画像をシートに形成し、定着部を用いてシートに形成された画像を定着する印刷処理と、を実行する。制御部は、オプション情報が示す印刷処理の実行条件を満たし、印刷処理を実行可能であると判断する場合は、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行し、その後、印刷指示に応じて前記印刷処理を実行し、実行条件を満たさず、印刷処理を実行不可能であると判断する場合は、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行せず、その後、前記実行条件を満たしていない状態から前記実行条件を満たした場合において、印刷指示に応じて準備処理と印刷処理とを実行する。
【0007】
上記構成では、制御部は、オプション情報が示す印刷処理の実行条件を満たし、印刷処理を実行可能であると判断する場合は、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行し、その後、印刷指示に応じて印刷処理を実行する。一方、制御部は、オプション情報が示す実行条件を満たさず、印刷処理を実行不可能であると判断する場合は、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行せず、その後、実行条件を満たしていない状態から実行条件を満たした場合において、印刷指示に応じて準備処理と印刷処理を実行する。これにより、無駄な準備処理の実行を抑制することができる。
【0008】
シートが載置される供給トレイを備え、オプション情報には、画像形成部により画像が形成されるシートのサイズを指定する実行条件を含んでおり、制御部は、オプション情報が示すサイズのシートが供給トレイに載置されず、実行条件を満たしていない場合に、印刷処理を実行不可能であると判断し、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行せず、その後、実行条件を満たしていない状態から実行条件を満たした場合において準備処理と印刷処理とを実行する。上記構成では、指定されたシートが供給トレイに載置されていない場面において、無駄な準備処理の実行を抑制することができる。
【0009】
シートが載置される供給トレイを備え、オプション情報には、画像形成部により画像が形成されるシートのサイズを指定する印刷処理の実行条件を示す情報を含み、制御部は、オプション情報が示すサイズのシートを載置する供給トレイが無く、実行条件を満たしていない場合に、印刷処理を実行不可能であると判断し、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行せず、その後、実行条件を満たしていない状態から実行条件を満たした場合において、記準備処理と印刷処理とを実行する。上記構成では、指定されたシートを載置する供給トレイがない場面において、無駄な準備処理が実行されるのを抑制することができる。
【0010】
記憶部を備え、記憶部には、画像形成装置において印刷処理の実行を許可するユーザを示すユーザ情報が記憶されており、オプション情報には、印刷データの送信元のユーザを示すユーザ情報を含み、制御部は、オプション情報で示されるユーザ情報と、記憶部に記憶されたユーザ情報とが同じユーザを示している場合に、印刷処理を実行可能であると判断し、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行し、その後、印刷指示に応じて印刷処理を実行し、オプション情報で示されるユーザ情報と、記憶部に記憶されたユーザ情報とが同じユーザを示していない場合に、印刷処理を実行不可能であると判断し、準備処理と印刷処理とを実行しない。これにより、印刷処理が許可されていないユーザに対しては準備処理を実行しないことで、無駄な準備処理が実行されるのを抑制することができる。
【0011】
記憶部には、ユーザ情報に関連付けて、1回の印刷指示での印刷可能枚数が記憶されており、オプション情報には、ユーザ情報に関連付けて、1回の前記印刷指示での印刷枚数を指定する情報を含んでおり、制御部は、オプション情報で示されるユーザ情報と、記憶部に記憶されているユーザ情報とが同じユーザを示しており、かつオプション情報で示される前記印刷枚数が、記憶部に記憶された印刷可能枚数以下であれば、印刷処理を実行可能であると判断し、前記先行コマンドの取得を契機に、前記準備処理を実行し、その後、印刷指示に応じて前記印刷処理を実行し、オプション情報で示されるユーザ情報と、記憶部に記憶されているユーザ情報とが同じユーザを示しており、かつオプション情報で示される印刷枚数が、記憶部に記憶された印刷可能枚数よりも大きければ、印刷処理を実行不可能であると判断し、準備処理と印刷処理とを実行しない。特定ユーザに対して、印刷可能枚数が制限されている場合において、印刷枚数が印刷可能枚数よりも多いと、印刷処理を実行できない場合が想定される。
【0012】
画像形成部は、互いに異なる色の画像を形成可能であって、制御部は、印刷処理の実行に先行して、画像形成部により記録される画像の色ずれを補正する色ずれ補正処理を実行可能であり、オプション情報には、画像形成部が画像をカラーで形成するか、画像をモノクロで形成するかを示す情報を含み、制御部は、先行コマンドから解析されたオプション情報が示す実行条件が、画像をカラーで形成することを示しており、かつ色ずれ補正の実行条件が成立している場合に、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行せず、色ずれ補正処理を実行し、その後、印刷指示に応じて準備処理と印刷処理とを実行する。画像形成部が各色のトナーにより画像を形成する構成では、制御部は、印刷処理に先行して色ずれ補正を実行する場合がある。上記構成では、色ずれ補正が開始される場合に、印刷処理を直ちに実行することは不可能であるとして、印刷指示に応じて、準備処理と印刷処理とを実行することとした。これにより、色ずれ補正処理の実行時において、無駄な準備処理が実行されるのを抑制することができる。
【0013】
画像形成部は、感光体ドラムと、感光体ドラムにトナーを供給する現像ローラと、感光体ドラムに形成されたトナー像をシートに転写する転写部材と、を有し、メインモータは、感光体ドラム及び現像ローラに駆動力を伝達可能であり、制御部は、準備処理において、メインモータの駆動を制御して感光体ドラム及び現像ローラを回転させる。上記構成では、無駄な準備処理を実行することによる感光体ドラムと現像ローラの回転に伴う摩耗等による消耗を減らすことができる。
【0014】
画像形成部は、光源から出射された光ビームを偏向して、感光体ドラムを露光するポリゴンミラーと、ポリゴンミラーを回転させる駆動力を供給するポリゴンモータと、を有し、制御部は、準備処理において、ポリゴンモータの駆動を制御してポリゴンミラーを回転させる。上記構成では、無駄な準備処理を実行することによるメインモータ及びポリゴンモータの回転による消費電力の増加を抑制することができる。
【0015】
制御部は、外部装置から、通信インタフェースを介して先行コマンドを取得後、印刷データを受信し、印刷データから画データを作成してメモリに保存し、メモリに少なくとも1ページ分の画データが保存されたことを印刷指示とする。上記構成では、メモリに少なくとも1ページ分の画データが保存されたことを契機に、準備処理が開始されるため、印刷に要する時間が長くなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】画像形成システムの構成図である。
図2】プリンタのブロック図である。
図3】PCが実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
図4】プリンタが実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
図5】実行条件の判断の手順を説明するフローチャートである。
図6】準備処理の手順を説明するフローチャートである。
図7】準備処理と、シートへの画像形成との関係を説明するタイミングチャートである。
図8】RIP処理の手順を説明するフローチャートである。
図9】準備処理と、シートへの画像形成との関係を説明するタイミングチャートである。
図10】第2実施形態において、プリンタが実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
図11図10のS22で実行される処理の手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態の構成)
以下、本実施形態に係る画像形成システムについて図面を参照して説明する。図1に示す、画像形成システム100は、画像形成装置の一例であるプリンタ80と、外部端末の一例であるPC90と、を含んでいる。プリンタ80とPC90とは、通信可能に接続されている。なお、図1では、1台のPC90を含む画像形成システム100を例示しているが、これに限定されない。画像形成システム100は、2台以上の外部端末を含んでいてもよく、この場合において、外部端末は、スマートフォンやタブレットなど、PC以外の装置であってもよい。
【0018】
PC90は、不図示のCPU、メモリ、ディスプレイ等を備える。PC90のメモリは、プリンタドライバプログラムを格納している。PC90のCPUは、プリンタドライバプログラムを利用して、印刷データを生成することができる。以下では、プリンタドライバプログラムを、プリンタドライバ91とも記載する。この例では、PC90のメモリに格納されているプリンタドライバ91は、プリンタ80のベンダと同じベンダから提供されたプログラムである。
【0019】
プリンタ80は、モノクロプリンタであり、図1図2に示すように、制御部10と、操作パネル11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、NVRAM14と、USBIF15と、LAN(Local Area Network)IF16と、画像形成部17と、メインモータ20と、定着器21と、給紙部70とを備えている。
【0020】
制御部10は、ASIC(Application Specification Integrated Circuit)10であり、不図示のCPUや、モータドライバを有し、プリンタ80の駆動を制御する。ROM12には、プリンタ80の各部を制御するための各種プログラム及び各種パラメータが保存されている。制御部10のCPUは、ROM12に保存されたプログラムや、パラメータを、RAM13に展開して実行することで、プリンタ80の各部を制御することが可能である。
【0021】
RAM13には、後述するRIP処理により生成される画データを一時的に記憶するための領域であるページメモリ51や、作業領域であるバッファ50を有している。また、制御部10は、ROM12に記憶されたプログラムを実行することで、画データ管理部52としても機能する。画データ管理部52は、ページメモリ51に1ページ分の画データが記録された場合に、1ページ分の画データに対応する印刷キューを登録する。
【0022】
操作パネル11は、プリンタ80を操作するユーザと、制御部10との間に介在するインタフェースであり、例えば、タッチパネル部や、操作ボタンを有している。
【0023】
USBIF15とLANIF16とは、PC90と、プリンタ80とを接続し、通信を行わせるためのインタフェースとして機能する。USBIF15は、USB形式の有線ケーブルにより、PC90とプリンタ80とを接続する。LANIF16は、USB以外の接続形式により、PC90とプリンタ80とを接続する。LANIF16は、プリンタ80との間で、Wifi(登録商標)等の無線LAN通信、又は近距離無線通信を行うことが可能なインタフェースである。これ以外にも、LANIF16は、プリンタ80との間で、イーサネット等の有線LAN通信を行うことが可能なインタフェースであってもよい。
【0024】
メインモータ20は、不図示の動力伝達機構を介して、画像形成部17、定着器21、及び給紙部70に動力を供給する。メインモータ20は、例えば、DCモータであり、制御部10のモータドライバにより、駆動が制御される。
【0025】
給紙部70は、供給トレイ71と、ピックアップローラ72と、シート押圧板73と、搬送ローラ74と、レジストレーションローラ75と、を備えており、供給トレイ71に載置されたシートMを、画像形成部17に向けて搬送させる。ピックアップローラ72は、電磁クラッチ22を介してメインモータ20に接続されている。電磁クラッチ22は、制御部10による切換えにより、メインモータ20からの動力をピックアップローラ72に供給する状態と、動力を供給しない状態とに変化する。
【0026】
シートMが送り出される給紙動作では、供給トレイ71に載置されたシートMは、シート押圧板73によってピックアップローラ72側に寄せられ、ピックアップローラ72の回転に伴い搬送ローラ74に給送される。搬送ローラ74は、シートMを、レジストレーションローラ75に向けて搬送する。レジストレーションローラ75は、シートMの先端の位置を揃える。シートMは、レジストレーションローラ75等のローラにより、画像形成部17に向けて搬送される。
【0027】
画像形成部17は、シートMに対して画像を形成する。画像形成部17は、レーザユニット18と、ドラムカートリッジ19と、を備えている。本実施形態では、プリンタ80は、モノクロプリンタであるため、画像形成部17は、ブラックに対応するドラムカートリッジ19のみを有している。
【0028】
レーザユニット18は、ポリゴンモータ30、ポリゴンミラー31、レーザ発光部32、反射ミラー42を有している。ポリゴンミラー31は正六角柱の側面を6つの反射面とする回転多面鏡である。ポリゴンミラー31は、ポリゴンモータ30によって回転し、レーザ発光部32から出射された光ビームを感光体ドラム35に向かう方向へ偏向する。ポリゴンモータ30は、例えば、DCモータであり、制御部10が備える不図示のモータドライバにより回転が制御される。ポリゴンミラー31によって偏向された光ビームは、反射ミラー42を介して、後述する感光体ドラム35の表面を走査する。
【0029】
ドラムカートリッジ19は、帯電器33、転写ローラ34、感光体ドラム35、現像ローラ36、トナー容器37を有している。帯電器33は、例えば、帯電ワイヤ及びグリッド部を有するスコロトロン型の帯電器であり、感光体ドラム35の表面を一様に帯電する。転写ローラ34は、感光体ドラム35との間でシートMを挟むローラである。トナー容器37には、ブラックのトナーが載置されている。現像ローラ36は、回転によりトナー容器37に載置されたトナーを感光体ドラム35の表面に供給する。感光体ドラム35と現像ローラ36とは、メインモータ20に接続されており、メインモータ20からの動力の供給により、回転する。
【0030】
帯電器33によって帯電された感光体ドラム35には、レーザユニット18からの光ビームが出射され、画データに基づく静電潜像が形成される。現像ローラ36は、トナー容器37内のトナーを静電潜像が形成された感光体ドラム35に供給する。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム35上に現像剤像が形成される。その後、シートMが、感光体ドラム35と転写ローラ34との間である転写位置に搬送されることで、感光体ドラム35上に形成された現像剤像がシートMに転写される。
【0031】
現像剤像が転写されたシートMは、感光体ドラム35、転写ローラ34、によって、定着器21に搬送される。定着器21は、加圧ローラ38、加熱ローラ39、ヒータ40及び温度センサ41を有しており、シートMに形成された現像剤像を熱定着させる。加圧ローラ38は、メインモータ20からの動力により回転し、加熱ローラ39との間で、シートMを挟むニップ部を形成する。加熱ローラ39の内部には、加熱ローラ39の温度を上昇させるためのヒータ40が配置されており、加熱ローラ39の温度を定着温度まで上昇させることができる。ヒータ40は、例えばハロゲンランプである。
【0032】
なお、本実施形態では、定着器21は、加圧ローラ38がメインモータ20により回転され、加熱ローラ39が加圧ローラ38に対して従動回転する構成である。これに限らず、定着器21は、加熱ローラ39がメインモータ20により回転され、加圧ローラ38が加熱ローラ39に対して従動回転する構成であってもよい。
【0033】
定着器21によって現像剤像が熱定着されたシートMは、搬送ローラ76及び排出ローラ77によって排出トレイに排出される。
【0034】
次に、PC90のプリンタドライバにより、印刷データを生成する処理の手順を、図3を用いて説明する。この例では、PC90のプリンタドライバ91は、プリンタ80のベンダにより提供されたプログラムである。
【0035】
図3のステップ(以下、ステップを「S」とも記載する。)10では、PC90のプリンタドライバ91は、印刷実行ボタンが操作されると(S10:YES)、S11に進み、オプション情報を含む先行コマンドを生成する。先行コマンドは、印刷データのプリンタ80への送信に先立って、プリンタ80に送信されるコマンドである。オプション情報は、画像が形成されるシートMのサイズを指定するシートサイズ指定情報、シートタイプを指定するシートタイプ指定情報、印刷モード(モノクロ、カラー)を指定する印刷モード指定情報、更には印刷データを作成したユーザを示すユーザ情報を含んだ情報である。
【0036】
例えば、プリンタ80とPC90とが、LANIF16により接続されている場合、オプション情報は、プリンタジョブ言語(PJL:Printer Job Language)により記述されるとよい。一方、プリンタ80とPC90とが、USBIFに15により接続されている場合、オプション情報は、USBコントロール転送形式のコマンドで記述されるとよい。
【0037】
S12では、PC90は、は、S11で生成されたオプション情報を含む先行コマンドを、プリンタ80に送信する。上述のように、プリンタ80は、USBIF15又はLAN1F16のいずれかにより、PC90に接続されており、プリンタ80の制御部10は、いずれかのIF15,16を介して先行コマンドを受信する。
【0038】
S13では、PC90は、プリンタドライバ91を用いて印刷データを生成する。印刷データは、印刷ジョブとも呼ばれ、ヘッダ情報と、ボディと、フッタ情報とを有する。ヘッダ情報には、印刷データを送信したPC90のIPアドレス、印刷データの作成者を示すユーザ情報、印刷データの名称、印刷設定情報などが含まれている。なお、印刷データに含まれるユーザ情報は、S11で生成された先行コマンドに含まれるユーザ情報と同じ情報である。ボディは、画像形成の対象の文字やイメージデータなどをプリンタ80が解釈可能な言語に変換した部分である。フッタ情報には、ページ番号、作成日、作成者名などのページ情報が含まれている。
【0039】
S14では、PC90は、S13で生成された印刷データを、プリンタ80に向けて送信する。なお、プリンタドライバ91が、プリンタ80のベンダと異なるベンダから提供されているプログラムである場合や、ユニバーサルドライバである場合は、印刷実行ボタンが操作された場合に(S10:YES)、先行コマンドを生成することなく、S13に進み、印刷データの生成を開始する。
【0040】
次に、プリンタ80の制御部10が、実行する印刷処理の手順を、図4を用いて説明する。S20では、制御部10は、先行コマンドを受信しているか否かを判断する。
【0041】
制御部10は、PC90から先行コマンドを受信していれば(S20:YES)、S21に進み、先行コマンドに含まれているオプション情報を取得する。本実施形態では、制御部10が、S21で実行する処理が取得処理の一例である。
【0042】
S22では、制御部10は、印刷処理の実行条件を判断する。図5は、S22で実行される印刷処理の実行条件の判断手順を示すフローチャートである。S40では、制御部10は、オプション情報であるシートサイズ指定情報で指定されたサイズのシートMが、供給トレイ71に載置されているか否かを判断する。給紙部70が、供給トレイ71に載置されたシートMのサイズを直接検知できるセンサを有している場合、制御部10は、センサにより検知されたシートMのサイズと、シートサイズ指定情報で示されるサイズとの一致の有無によりS40での判断を行えばよい。
【0043】
給紙部70が、供給トレイ71に対して、この供給トレイに載置されるシートMのサイズを予め定めている構成では、制御部10は、S40での判断を以下のように行えばよい。この場合、制御部10は、シートサイズ指定情報で示されるサイズのシートが指定されている供給トレイ71が無い場合に、S40で、指定されたシートサイズがない(S40:NO)と判断すればよい。
【0044】
制御部10は、指定されたサイズのシートMが供給トレイ71に載置されていれば(S40:YES)、S41に進み、状態フラグを、印刷処理の実行条件を満たすことを示す値に設定する。一方、制御部10は、指定されたサイズのシートMが供給トレイ71に載置されていなければ(S40:NO)、S42に進み、状態フラグを、印刷処理の実行条件を満たさないことを示す値に設定する。
【0045】
図4に戻り、S23で、制御部10は、S22で設定された状態フラグが、印刷処理の実行条件を満たすことを示していれば(S23:YES)、印刷処理が可能であるため、S24に進み、準備処理を開始する。即ち、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行する。準備処理は、シートMへの画像形成に先行して、加圧ローラ38の回転や、ヒータ40による加熱ローラ39を昇温する処理であり、図6に示す手順に従い実行される。
【0046】
まずは、図6を用いた準備処理の説明に先立ち、図7を用いて、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行することの意義を説明する。図7は、PC90により先行コマンドが生成されてから、プリンタ80により画像形成が実行されるまでの時間の推移を示している。図7に示すように、印刷処理の実行条件を満たしている場合、プリンタ80が時刻t1で先行コマンドを受信完了したことを契機に準備処理を開始することで、その後、時刻t2で、印刷データの受信を完了し、RIP処理を開始する。プリンタ80は、RIP処理の完了の後、時刻t3で、シートMに対する画像形成を直ちに開始できるようになる。
【0047】
図6のS50では、制御部10は、ヒータ40の設定温度を定着温度に設定する。定着温度は、加熱ローラ39が、シートMに形成された画像を熱定着させるのに必要となる温度である。
【0048】
S51では、制御部10は、ヒータ40をオンすることで、加熱ローラ39の昇温を開始する。S52では、制御部10は、メインモータ20の駆動を開始させることで、加圧ローラ38を回転させる。図2に示したように、メインモータ20は、加圧ローラ38に加えて、感光体ドラム35及び現像ローラ36にも駆動力を供給するため、S52でのメインモータ20の駆動により、感光体ドラム35、及び現像ローラ36も回転する。
【0049】
なお、S52での感光体ドラム35、現像ローラ36、加圧ローラ38の回転速度は、所定回転速度に設定すればよい。この場合において、回転速度は、第1の速度と、この第1の速度よりも遅い第2の速度の何れかに設定するものであってもよい。例えば、第1の速度が全速である場合、第2の速度は、全速の75%の速度でもよいし、全速の25%の速度でもよい。
【0050】
S53では、制御部10は、ポリゴンモータ30を駆動させて、ポリゴンミラー31を回転させる。S54では、制御部10は、温度センサ41の検出結果により、加熱ローラ39の温度が定着温度に達したか否かを判断する。制御部10は、加熱ローラ39の温度が定着温度に達していなければ(S54:NO)、待機する。一方、制御部10は、加熱ローラ39の温度が定着温度に達していれば(S54:YES)、準備処理を終了する。
【0051】
図4に戻り、S25では、1ページ分の印刷キューが登録されているか否かを判断する。制御部10は、図4で示す処理と平行して、PC90から印刷データを受信する場合に、図8の処理を実行する。図8のS60では、制御部10は、PC90から印刷データを受信しているか否かを判断する。制御部10は、印刷データを受信していれば(S60:YES)、S61に進み、RIP処理を開始する。RIP処理は、印刷データを解釈することによって、シートMに画像を形成させるための画データを生成する処理である。本実施形態では、画データは、ラスタ形式のデータである。制御部10は、RIP処理を実行することで、RAM13に記憶されている印刷データを解析して、1ページ分の画データを生成し、ページメモリ51に記憶していく。
【0052】
制御部10は、RIP処理により、1ページ分の画データの生成が完了していれば(S62:YES)、S63に進み、1ページ分の画データに対応する印刷キューを登録する。S64では、制御部10は、印刷データに対するRIP処理が終了したか否かを判断する。印刷データが1ページに対応する場合は、制御部10は、1ページ分の画データに対応する印刷キューの登録により、RIP処理の終了を判断する。一方、印刷データが複数ページに対応する場合は、制御部10は、印刷データから解析された全てのページの画データに対して、印刷キューが登録されていなければ、S62に戻り、1ページ分の画像データの生成の判断(S62)と、生成された1ページ分の画データに対応する印刷キューの登録(S63)とを繰り返す。制御部10は、RIP処理が完了したと判断すると(S64:YES)、図8に示す処理を終了する。
【0053】
図4に戻り、制御部10は、図8のS63の処理により、1ページ分の印刷キューが登録されていれば(S25:YES)、S26に進み、S24での処理により開始された準備処理が完了したか否かを判断する。本実施形態では、制御部10は、温度センサ41により検出された加熱ローラ39の温度が、定着温度まで達していれば、準備が完了している。
【0054】
S27では、制御部10は、印刷キューを参照して、ページメモリ51に記憶された画データを用いてシートMへの画像形成処理を実行する。シートMへの画像形成処理では、画データを用いて、感光体ドラム35に潜像が形成され、現像ローラ36により供給されるトナーにより、感光体ドラム35にトナー像が形成される。そして、感光体ドラム35と、転写ローラ34との間の転写位置を通過するシートMに対して、画像が形成されていく。その後、加圧ローラ38と加熱ローラ39との間のニップ部により、シートMが加熱把持され、シートMに形成された画像が熱定着される。なお、制御部10は、シートMへの画像形成処理を終了する場合、メインモータ20及びポリゴンモータ30の駆動を停止させる。
【0055】
一方、S23において、制御部10は、状態フラグが印刷処理の実行条件を満たしていないことを示す値であれば(S23:NO)、S28に進む。この例では、オプション情報であるシートサイズ指定情報で指定されるサイズのシートMが供給トレイ71に載置されておらず、図5のS42で状態フラグが実行条件を満たさないことを示す値に設定されている。
【0056】
S28では、制御部10は、1ページ分の印刷キューが登録されているか否かを判断する。制御部10は、1ページ分の印刷キューが登録されていなければ待機する。一方、制御部10は、1ページ分の印刷キューが登録されていれば(S28:YES)、S29に進み、給紙が可能であるか否かを判断する。制御部10は、オプション情報であるシートサイズ指定情報により示されるサイズのシートMが給紙不可能であれば(S29:NO)、S30に進み、操作パネル11にエラー表示を行わせる。この場合、ユーザが、シートサイズ指定情報により示されるサイズのシートMを、供給トレイ71にセットしない限りは、制御部10は、操作パネル11のエラー表示を継続し、印刷処理を実行しない。
【0057】
図9(a)は、比較例での、PC90により先行コマンドが生成されてから、プリンタ80により画像形成処理が実行されるまでの時間の推移を示している。図9(b)は、本実施形態における、PC90により先行コマンドが生成されてから、プリンタ80により画像形成処理が実行されるまでの時間の推移を示している。図9(a)に示すように、時刻t12でプリンタ80が印刷データの受信を完了し、RIP処理を実行した後も、用紙切れエラーが継続していれば、シートMに対する画像形成処理を開始できない。この場合、時刻t14で、供給トレイ71にシートサイズ指定情報で指定されたサイズのシートMが補充され、エラーが解除されることで、シートMに対する画像形成処理が開始できるようになる。そのため、時刻t11で、先行コマンドの受信を契機に、準備処理を開始すると、時刻t14でエラーが解除されるまで準備処理を継続する必要が生じる。図9(a)で示す例では、時刻t13で、タイムアウトエラーが生じ、準備処理が中断されている。そのため、制御部10は、シートMへの画像形成処理が可能になった時刻t14の後、再び、準備処理を実行した後、画像形成処理を実行することとなる。
【0058】
一方、本実施形態では、図9(b)に示すように、印刷処理の実行条件を満たしていない場合は、プリンタ80が時刻t21で先行コマンドを受信した場合でも、準備処理を開始しない。プリンタ80は、時刻t22で印刷データの受信を完了し、RIP処理を開始した後、時刻t23でエラー状態が解除された後、準備処理を開始する。これにより、無駄な準備処理の実行を抑制することができる。
【0059】
図4に戻り、ユーザが、シートサイズ指定情報により示されるサイズのシートMを、供給トレイ71にセットすることで、制御部10は、エラー状態を解除し(S29:YES)、S31に進み、準備処理を開始する。なお、S31での処理に応じて、実行される準備処理は、図6で説明する処理と同様の処理であるため、説明を省略する。制御部10は、準備処理が完了したと判断すると(S32:YES)、S27に進み、シートMへの画像形成処理を実行する。本実施形態では、制御部10が、S27の処理により実行する処理が、印刷処理の一例である。
【0060】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。制御部10は、先行コマンドに含まれるオプション情報で指定されるシートMのサイズが供給トレイ71に載置されており、印刷処理を実行可能であると判断する場合は、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行し、その後、印刷キューが登録されていることに応じて印刷処理を実行する。一方、制御部10は、オプション情報で指定されるサイズのシートMが供給トレイ71に載置されておらず、印刷処理を実行不可能であると判断する場合は、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行せず、その後、供給トレイ71にオプション情報で指定されるサイズのシートMがセットされた場合に、1ページ分の印刷キューの登録に応じて準備処理と印刷処理とを実行する。これにより、印刷データで指定されたサイズのシートが供給トレイ71に載置されていない場面において、無駄な準備処理が実行されるのを抑制することができる。
【0061】
制御部10は、準備処理において、メインモータ20の駆動を制御して感光体ドラム35及び現像ローラ36を回転させる。これにより、無駄な準備処理を実行することによる感光体ドラム35と現像ローラ36の回転に伴う摩耗等による消耗を減らすことができる。
【0062】
制御部10は、準備処理において、ポリゴンモータ30の駆動を制御してポリゴンミラー31を回転させる。これにより、無駄な準備処理を実行することによる、メインモータ20及びポリゴンモータ30の回転に伴う消費電力の増加を抑制することができる。
【0063】
制御部10は、PC90から、先行コマンドを取得後、印刷データを受信し、印刷データからRIP処理により画データを作成して、印刷キューを登録する。制御部10は、1ページ分の印刷キューが登録されたことを印刷指示とする。これにより、1ページ分の画データが印刷キューに登録されたことを契機に準備処理を実行するため、印刷に要する時間が長くなることを抑制することができる。
【0064】
(第1実施形態の変形例)
本実施形態では、定着器21は、加熱ローラ39と、加圧ローラ38と、ヒータ40とを有する構成であって、加圧ローラ38がメインモータ20によって回転するが、これに限定されない。例えば、定着器21は、ヒータと、ヒータからの輻射熱を受けるニップ板と、ニップ板の周りを回転する加熱ベルトと、加圧ローラとを有する構成であって、メインモータによって加熱ベルトが回転してもよい。
【0065】
また、定着器21は、発熱パターンが形成された基板と、基板の周りを回転するベルトと、加圧ローラとを有し、基板及びベルトが接触する構成であって、ベルトをメインモータ20によって回転してもよい。
【0066】
また、定着器21は、加熱ローラと、ヒータと、加圧ベルトとを有する構成であって、加圧ベルトをメインモータ20によって回転してもよい。
【0067】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明を行う。第2実施形態において第1実施形態と同一の箇所については同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。本実施形態では、第1実施形態と比べて、準備処理を開始するタイミングを判断するための条件が異なる。
【0068】
本実施形態では、プリンタ80は、カラープリンタであり、ブラック以外の色(例えば、シアン、イエロー、マゼンタ)に対応する複数のドラムカートリッジ19を有している。これにより、プリンタ80の画像形成部17は、シートMに対して、互いに異なる色の画像を形成可能になっている。
【0069】
シートMに各色の画像を形成する場合に、各色のトナーが形成される位置等がずれてしまい、それにより所謂色ずれが生じることがある。本実施形態では、制御部10は、この色ずれを補正すべく、色ずれ補正処理を実行可能である。制御部10は、色ずれ補正処理において、画像形成部17を制御して転写ベルトの表面に色ずれ補正用のパッチを形成させ、検出位置においてパッチが形成された範囲のベルトの反射光の強度を不図示のセンサによって検出する。そして、制御部10は、検出された反射光強度が予め定められた閾値を超えて大きくなった範囲の転写ベルトの移動方向における位置が基準の位置と一致するように、印刷条件を変更する。これをトナーの色毎に行うことにより、色ずれを補正することができる。なお。上記した内容は色ずれ補正処理の一例であり、色ずれ補正処理は種々の方法で行うことができる。
【0070】
図10は、第2実施形態において、制御部10が、実行する印刷処理の手順を説明するフローチャートである。制御部10は、PC90から先行コマンドを受信していれば(S20:YES)、S21に進み、先行コマンドに含まれているオプション情報を取得する。S22では、制御部10は、印刷処理の実行条件を判断する。
【0071】
図11は、第2実施形態において、S22で実行される印刷処理の実行条件の判断手順を示すフローチャートである。S70では、制御部10は、シートサイズ指定情報で指定されたサイズのシートMを給紙可能であるか否かを判断する。制御部10は、指定されたサイズのシートMを給紙可能でなければ(S70:NO)、S42に進み、状態フラグを、印刷処理の実行条件を満たさないことを示す値に設定する。
【0072】
一方、制御部10は、指定されたサイズのシートMを給紙可能であれば(S70:YES)、S71に進み、オプション情報に含まれるユーザ情報により示されるユーザに対して、印刷処理が許可されているか否かを判断する。本実施形態では、プリンタ80は、ファンクションロック機能を実行可能である。ファンクションロック機能では、プリンタ80に対して事前にユーザ情報を登録しておき、登録されたユーザ情報に関連付けて、特定の機能の許可や不許可、更には機能を許可する場合の制限を設定することができる。具体的には、制御部10は、NVRAM14に記憶された管理テーブルに、ユーザ情報と、このユーザ情報に関連付けて、許可される機能や、制限を登録しておく。制御部10は、オプション情報に含まれるユーザ情報で示されるユーザが、管理テーブルに登録されたユーザと一致する場合に、このユーザに対して関連付けられた印刷処理の許可の有無や、許可する場合の制限の有無を判断する。ユーザ情報により示されるユーザに対して、印刷処理が許可されていなければ(S71:NO)、S42に進み、状態フラグを、印刷処理の実行条件を満たさない値に設定する。
【0073】
制御部10は、ユーザ情報により示されるユーザに対して、印刷処理が許可されていれば(S71:YES)、S72に進み、オプション情報に含まれる印刷枚数が、ファンクションロック機能により制限されている印刷可能枚数以下であるか否かを判断する。オプション情報で示される印刷枚数が印刷可能枚数を超えていれば(S72:NO)、S42に進み、状態フラグを印刷処理の実行条件を満たさない値に設定する。制御部10は、オプション情報で示される印刷枚数が、印刷可能枚数以下であれば(S72:YES)、S41に進み、状態フラグを、印刷処理の実行条件を満たすことを示す値に設定する。
【0074】
図10に戻り、S80では、制御部10は、色ずれ補正処理の開始条件が成立しているか否かを判断する。色ずれ補正処理の開始条件は、オプション情報に含まれる印刷モードがカラーを指定しており、かつ所定条件が成立していることである。開始条件に含まれる所定条件としては、前回色ずれ補正処理を実行してからの経過時間が所定時間を経過していることや、前回色ずれ補正処理を実行してからの累積印刷回数が所定回数を経過していること、更には、ドラムカートリッジ19が交換されたタイミングである。ここでは、色ずれ補正処理の開始条件が成立していないとして(S80:NO)、制御部10は、S23進み、印刷処理の実行条件を満たすか否かを判断する。制御部10は、S22で設定された状態フラグが、印刷処理の実行条件を満たすことを示していれば(S23:YES)、S24に進み、準備処理を開始する。即ち、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行する。
【0075】
以下、第1実施形態で説明したのと同様、制御部10は、1ページ分の印刷キューが登録されていれば(S25:YES)、S26に進み、S24の処理により開始された準備処理が完了したか否かを判断する。制御部10は、準備処理が完了していれば(S26:YES)、S27では、制御部10は、印刷キューを参照し、ページメモリ51に記憶された画データを用いてシートMへの画像形成処理を実行する。
【0076】
一方、制御部10は、色ずれ補正処理の開始条件が成立していれば(S80:YES)、S81に進み、色ずれ補正処理を開始する。この場合、色ずれ補正処理が完了した後に、シートMへの画像形成が実行されるため、色ずれ補正処理を実行しない場合と比べて、プリンタ80が先行コマンドを受信してから、1ページ分の印刷キューが登録されるまでの時間が長くなる。そのため、S20での先行コマンドの受信を契機に準備処理を実行してしまうと、例えば、準備処理の継続中にタイムアウトエラーが生じ、改めて準備処理を実行しなければならない場合がある。
【0077】
制御部10は、S81で色ずれ補正処理を実行した場合は、S28に進み、1ページ分の印刷キューが登録されているか否かを判断する。制御部10は、1ページ分の印刷キューが登録されていれば(S28:YES)、S82に進み、印刷処理の実行条件を満たさないことによるエラーが解除されたか否かを判断する。具体的には、シートサイズ指定情報で指定されたサイズのシートMが給紙できないことによるエラーの場合は、指定されたサイズのシートMが供給トレイ71にセットされた場合に、エラーが解除されたとして(S82:YES)、S31に進む。これ以外にも、オプション情報で指定された印刷枚数が、ファンクションロック機能により制限された印刷可能枚数以上であれば、S30でのエラー表示において、制御部10は、操作パネル11に対する操作により、印刷枚数を印刷可能枚数内に変更する操作を受付けることで、エラー状態を解除する。
【0078】
ファンクションロック機能により印刷処理が許可されていないユーザからの印刷データの送信により、印刷処理の実行条件を満たさない場合は、シートMへの画像形成が実行されることはない。この場合、制御部10は、S30でのエラー表示において、操作パネル11に対して、印刷キューに登録された画データを消去する操作を受付けることで、画データを消去し、図10の処理を終了する。
【0079】
制御部10は、エラーが解除された場合(S82:YES)、S31に進み、準備処理を開始する。制御部10は、準備処理が完了したと判断すると(S32:YES)、S33で、S27と同様にシートMへの画像形成処理を実行する。
【0080】
以上説明した本実施形態では、制御部10は、オプション情報で示されるユーザ情報に対して、印刷処理を許可することが登録されている場合に、印刷処理を実行可能であると判断し、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行し、その後、印刷指示に応じて印刷処理を実行する。オプション情報で示されるユーザ情報に対して、印刷処理を許可することが登録されていなければ、印刷処理を実行不可能であると判断し、準備処理と印刷処理とを実行しない。これにより、ファンクションロック機能により、画像形成が許可されていないユーザに対して、無駄な準備処理が実行されるのを抑制することができる。
【0081】
印刷処理が許可されたユーザに対して、印刷可能枚数が制限されている場合において、印刷枚数が印刷可能枚数よりも多い場合は、先行コマンドの取得を契機に、準備処理を実行しない。これにより、ファンクションロック機能により、印刷枚数が制限されているユーザに対して、無駄な準備処理が実行されるのを抑制することができる。
【0082】
画像形成部が各色のトナーにより画像を形成する構成では、制御部は、印刷処理に先行して色ずれ補正処理を実行する場合がある。上記構成では、色ずれ補正処理が実行される条件が成立している場合に、印刷キューが登録されたことを契機に、準備処理と印刷処理とを実行することとした。これにより、色ずれ補正処理の実行時において、無駄な準備処理が実行されるのを抑制することができる。
【0083】
(第2実施形態の変形例)
図10のS22で実行する実行条件の判断は、S70~S72の全ての処理を実行しなくともよい。例えば、プリンタ80が、ファンクションロック機能を備えていない場合、制御部10は、S71,S72の判断を実行しなくともよい。
【0084】
プリンタ80が、第1実施形態と同様、モノクロプリンタである場合は、S81での色ずれ補正処理を実行しない。そのため、制御部10は、図10のS80で、補正の開始条件を判断しなくともよい。
【0085】
(その他の実施形態)
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上述の実施形態では、印刷指示は、1ページ分の印刷キューが登録されたことであった。これに代えて、PC90から印刷データと共に印刷命令が送信される場合において、PC90から送信された印刷命令を印刷指示としてもよい。
【0086】
画像形成装置は、プリンタに限らず、画像を読み取る読取部や、FAXIFを備える、複合機であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10…制御部、15…USBIF、16…LANIF、17…画像形成部、18…レーザユニット、19…ドラムカートリッジ、20…メインモータ、21…定着器、30…ポリゴンモータ、34…転写ローラ、35…感光体ドラム、36…現像ローラ、38…加圧ローラ、39…加熱ローラ、40…ヒータ、80…プリンタ、90…PC、91…プリンタドライバ、100…画像形成システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11