(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052147
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】オリフィス内蔵バルブおよび流量制御装置
(51)【国際特許分類】
F16K 7/16 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
F16K7/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158656
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】執行 耕平
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆博
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一誠
(57)【要約】 (修正有)
【課題】メンテナンス性およびシール性が向上したオリフィス内蔵バルブを提供する。
【解決手段】バルブ要素が内蔵され一次側流路11と二次側流路12とが接続された収容凹部13を画定するボディ10を有し、バルブ要素は、一次側流路に連通する貫通孔20aを有するオリフィスベース20と、オリフィスベースの上に配置されたオリフィスプレート30と、オリフィスプレートの上に配置され、オリフィスに連通する一次側貫通孔40c及び二次側流路に連通する二次側流出孔40pを有するインナー部材40と、インナー部材の一次側貫通孔の開口部に設けられたバルブシート50と、収容凹部13の内周面に螺合してインナー部材及びオリフィスプレート及びオリフィスベースを押圧し固定する固定リング60と、バルブシートに当接・離間して一次側貫通孔と二次側流出孔の間を遮断・連通するダイヤフラム70と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側流路と二次側流路と、上面に開口してバルブ要素が内蔵されかつ前記一次側流路と前記二次側流路とが接続された収容凹部と、を画定するボディを有し、
前記バルブ要素は、
前記収容凹部の底部に配置され、前記一次側流路に連通する貫通孔を有するオリフィスベースと、
前記オリフィスベースの上に配置され、前記貫通孔に連通するオリフィスが形成されたオリフィスプレートと、
前記オリフィスプレートの上に配置され、前記オリフィスに連通して上面に開口する一次側貫通孔及び前記二次側流路に連通して上面に開口する二次側流出孔を有するインナー部材と、
前記インナー部材の上面にて前記一次側貫通孔の開口部周囲に設けられたバルブシートと、
前記収容凹部の内周面に形成されたネジ部に螺合して前記インナー部材を前記底部に向けて押圧することにより、当該インナー部材及び前記オリフィスプレート及び前記オリフィスベースを固定する固定リングと、
前記インナー部材の上に配置され、前記バルブシートから離間または当接して、前記一次側貫通孔と前記二次側流出孔との間を連通または遮断するダイヤフラムと、を含む、オリフィス内蔵バルブ。
【請求項2】
前記ダイヤフラムを押圧するダイヤフラム押えを駆動して、前記ダイヤフラムと前記バルブシートとの間を開閉させるアクチュエータをさらに有し、
前記ダイヤフラムは、前記ネジ部と共通のネジ部に螺合する前記アクチュエータのケーシングにより前記インナー部材に向けて押圧されて当該インナー部材に固定されている、請求項1に記載のオリフィス内蔵バルブ。
【請求項3】
前記オリフィスベースは、前記ボディより柔らかい部材で形成され、
前記一次側流路及び前記二次側流路は、前記ボディの前記収容凹部の底面で開口し、
前記収容凹部の底面には、前記一次側流路の開口部及び前記二次側流路の開口部のうち前記一次側流路の開口部のみを包囲する第1の環状突起部が形成され、
前記インナー部材と前記オリフィスベースを前記ボディに対して固定する際、前記第1の環状突起部が前記オリフィスベースの下面に食い込んで、前記一次側流路と前記貫通孔の接続部がシールされるように構成された、請求項1に記載のオリフィス内蔵バルブ。
【請求項4】
前記ボディ及び前記インナー部材より柔らかい部材で形成され、前記オリフィスベースを包囲するように前記収容凹部の底面に配置された円環状ガスケットをさらに有し、
前記収容凹部の底面には、前記第1の環状突起部を包囲するとともに前記二次側流路の開口部を包囲する第2の環状突起部がさらに形成され、前記インナー部材の下面には、全周が前記第2の環状突起部に対向し前記二次側流出孔の開口部を包囲する第3の環状突起部が形成され、
前記インナー部材と前記オリフィスベースを前記ボディに対して固定する際、前記第2及び第3の環状突起が、前記円環状ガスケットの下面及び上面にそれぞれ食い込んで、前記二次側流出孔と前記二次側流路の接続部がシールされるように構成された、請求項3に記載のオリフィス内蔵バルブ。
【請求項5】
前記バルブシートは、樹脂からなり、前記インナー部材に対してカシメにより固定されている、請求項1に記載のオリフィス内蔵バルブ。
【請求項6】
前記インナー部材は、外周面の一部が前記収容凹部の内周面に嵌合して位置決めされ、前記オリフィスベースは、外周面の一部が前記インナー部材の内周面に嵌合して位置決めされている、請求項1に記載のオリフィス内蔵バルブ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のオリフィス内蔵バルブを備える、流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリフィス内蔵バルブおよびこのオリフィス内蔵バルブを流量制御バルブとして用いた流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいては、特に、ALD(Atomic Layer Deposition)やALE(Atomic Layer Ethching)等の微細プロセスにおいては、処理チャンバに短時間で正確に計量した処理ガスを供給するために、圧力式流量制御装置及びその構成要素としてのオリフィス内蔵バルブが用いられている。このようなオリフィス内蔵バルブでは、オリフィスプレートを、ボディ(又は、ボディに載せたホルダ)と弁座体との間に挟み、上からインナーディスク、ダイヤフラム等を載せて、アクチュエータハウジングをボディに螺合して押圧することにより一括して固定していた(例えば、特許文献1の
図1,
図8等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなオリフィス内蔵バルブでは、アクチュエータハウジングの螺合を緩めると全の構成要素が緩むので、メンテナンス性の点で改善の余地があった。例えば、アクチュエータやダイヤフラムのメンテナンスのためにアクチュエータハウジングの螺合を緩めると、その下側にあるオリフィスプレートを保持する構成要素の間のシール性に影響を与える懸念があった。
【0005】
本発明の目的の一つは、メンテナンス性およびシール性が向上したオリフィス内蔵バルブ及びこのオリフィス内蔵バルブを用いた流量制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のオリフィス内蔵バルブは、
一次側流路と二次側流路と、上面に開口してバルブ要素が内蔵されかつ前記一次側流路と前記二次側流路とが接続された収容凹部と、を画定するボディを有し、
前記バルブ要素は、
前記収容凹部の底部に配置され、前記一次側流路に連通する貫通孔を有するオリフィスベースと、
前記オリフィスベースの上に配置され、前記貫通孔に連通するオリフィスが形成されたオリフィスプレートと、
前記オリフィスプレートの上に配置され、前記オリフィスに連通して上面に開口する一次側貫通孔及び前記二次側流路に連通して上面に開口する二次側流出孔を有するインナー部材と、
前記インナー部材の上面にて前記一次側貫通孔の開口部周囲に設けられたバルブシートと、
前記収容凹部の内周面に形成されたネジ部に螺合して前記インナー部材を前記底部に向けて押圧することにより、当該インナー部材及び前記オリフィスプレート及び前記オリフィスベースを固定する固定リングと、
前記インナー部材の上に配置され、前記バルブシートから離間または当接して、前記一次側貫通孔と前記二次側流出孔との間を連通または遮断するダイヤフラムと、を含む。
【0007】
好適には、前記ダイヤフラムを押圧するダイヤフラム押えを駆動して、前記ダイヤフラムと前記バルブシートとの間を開閉させるアクチュエータをさらに有し、
前記ダイヤフラムは、前記ネジ部と共通のネジ部に螺合する前記アクチュエータのケーシングにより前記インナー部材に向けて押圧されて当該インナー部材に固定されている、構成を採用できる。
【0008】
前記オリフィスベースは、前記ボディより柔らかい部材で形成され、
前記一次側流路及び前記二次側流路は、前記ボディの前記収容凹部の底面で開口し、
前記収容凹部の底面には、前記一次側流路の開口部及び前記二次側流路の開口部のうち前記一次側流路の開口部のみを包囲する第1の環状突起部が形成され、
前記インナー部材と前記オリフィスベースを前記ボディに対して固定する際、前記第1の環状突起部が前記オリフィスベースの下面に食い込んで、前記一次側流路と前記貫通孔の接続部がシールされるように構成された、ものであってよい。
【0009】
前記ボディ及び前記インナー部材より柔らかい部材で形成され、前記オリフィスベースを包囲するように前記収容凹部の底面に配置された円環状ガスケットをさらに有し、
前記収容凹部の底面には、前記第1の環状突起部を包囲するとともに前記二次側流路の開口部を包囲する第2の環状突起部がさらに形成され、前記インナー部材の下面には、全周が前記第2の環状突起部に対向し前記二次側流出孔の開口部を包囲する第3の環状突起部が形成され、
前記インナー部材と前記オリフィスベースを前記ボディに対して固定する際、前記第2及び第3の環状突起部が、前記円環状ガスケットの下面及び上面にそれぞれ食い込んで、前記二次側流出孔と前記二次側流路の接続部がシールされるように構成された、ものであってよい。
【0010】
前記バルブシートは、樹脂からなり、前記インナー部材に対してカシメにより固定されている構成を好ましく採用できる。
【0011】
好適には、前記インナー部材は、外周面の一部が前記収容凹部の内周面に嵌合して位置決めされ、前記オリフィスベースは、外周面の一部が前記インナー部材の内周面に嵌合して位置決めされている、構成を採用できる。
【0012】
本発明の流量制御装置は、上記のオリフィス内蔵バルブを備える。
【発明の効果】
【0013】
本実施形態によれば、収容凹部の内周ネジ部に螺合してインナー部材及びオリフィスプレート前記オリフィスベースを固定する固定リングを用いたので、アクチュエータやダイヤフラムのメンテナンスのためにアクチュエータハウジングの螺合を緩めても、オリフィスプレートを保持する構成要素の間のシール性に影響を与えることがなく、メンテナンス性およびシール性の向上が可能となる。
特に、ボディの収容凹部底面やインナー部材下面に環状突起部を設けて、固定リングの締め付けにより環状突起部がオリフィスベースや円環状ガスケット食い込む構成にすれば、シール性がさらに向上できる。
本発明によれば、メンテナンス性及びシール性の向上が可能となったオリフィス内蔵バルブおよびこれを用いた流量制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るオリフィス内蔵バルブの縦断面図。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る流量制御装置の要部断面を含む正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。説明において同様の要素には同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。尚、本明細書及び特許請求の範囲における「上面」「下面」等の語は、ボディにおける収容凹部の位置を「上面」側と定義した場合の部材同士の相対的な位置関係を示す語であり、地面に対する位置関係を示す語ではない。
(第1の実施形態)
図1に本実施形態に係るオリフィス内蔵バルブ1を示す。
図1において、10はボディ、20はオリフィスベース、25は環状ガスケット、30はオリフィスプレート、40はインナー部材、50はバルブシート、60は固定リング、65はピュアリング、70はダイヤフラム、80は押えアダプタ、90はアクチュエータである。
尚、オリフィスベース20、環状ガスケット25,オリフィスプレート30、インナー部材40、バルブシート50,固定リング60、ピュアリング65,ダイヤフラム70および押えアダプタ80は本発明の一実施形態に係るバルブ要素を構成している。
【0016】
ボディ10は、本実施形態では、19mm幅の統合ガスシステム(IGS)用のボディで、ステンレス鋼等の金属材料でブロック状に形成されている。
ボディ10には、
図1に示すように、一次側流路11と二次側流路12が画定され、ボディ10の上面に開口する断面が円形の穴からなる収容凹部13が形成されている。一次側流路11は、収容凹部13の底面13tの中央部で開口しており、二次側流路12は、底面13tの中央部と周辺部の中間付近で開口している。収容凹部13の内周面にはネジ部13aが上面から深さ方向の中途まで形成されている。
収容凹部13の下部には、後述するインナー部材40を受ける段差面13sが形成されている。
収容凹部13の底面13tには、一次側流路11の開口部を包囲する第1の環状突起部13pが形成され、後述するオリフィスベース20の下面20bに食い込んで、一次側流路11と後述するオリフィスベース20の貫通孔20aとの接続部をシールするように構成されている。また、第1の環状突起部13pの外側には、これを同心円状に包囲するとともに、二次側流路12の開口部も包囲する第2の環状突起部13qが形成され、後述する環状ガスケット25の下面に食い込んで、二次側流路12と後述する二次側流出孔40pとの接続部をシールするように構成されている。
【0017】
オリフィスベース20は、収容凹部13の底面13tに配置され、一次側流路11に連通する貫通孔20aを有する部材である。
本実施形態では、オリフィスベース20は、焼鈍したステンレス合金等の金属、すなわち、ボディ10より軟らかい金属で形成されている。
図3A,3Bに示すように、外周側に上側の小径部20f1と中央部の中径部20f2と下側の大径部20f3を有する段付の略円柱状に形成され、中心軸上に流路となる貫通孔20aを有する。
図2に示すように、オリフィスベース20は、その外周面中央部の中径部20f2が後述するインナー部材40の凹部40aの内周面(
図6B参照)に嵌合することにより位置決めされ、貫通孔20aはボディ10の一次側流路11(
図2参照)と連通している。尚、中径部20f2の軸方向一箇所には、全周に渡って外周突起部20gが設けられ、中央部の中径部20f2がインナー部材4の凹部40aの内周面(
図6B参照)に嵌合すると、外周突起部20gが潰れてシールするようになっている。オリフィスベース20の外周面下側の大径部20f3は、隙間Gpを隔てて後述する環状ガスケット25に包囲されている。この隙間Gpは、二次側流路12と後述する二次側流出孔40pの接続部を構成している
オリフィスベース20の上端部の貫通孔20aの開口部周囲は、オリフィスプレート30を支持する支持面20sとなっている。
【0018】
環状ガスケット25は、ボディ10及びインナー部材40より柔らかい部材で形成され、オリフィスベース20を隙間Gpを隔てて包囲するように収容凹部13の底面13tに配置されている。本実施形態では、環状ガスケット25は、
図4に示す略円環状の部材で、焼鈍したステンレス合金等の金属で形成されている。環状ガスケット25は、その外周面が収容凹部13の底部の内周面に緩く嵌合して位置決めされている。
【0019】
オリフィスプレート30は、オリフィスベース20の上に配置され、貫通孔20aに連通するオリフィス30hが形成された部材である。
本実施形態では、オリフィスプレート30は、
図5に示すように、ステンレス合金等の金属製の薄い円盤で、中心部に複数(4つ)のオリフィス30hが形成されている。オリフィスプレート30は、オリフィスベース20の上面中央部の支持面20sに配置され、複数のオリフィス30hが貫通孔20aの開口部を絞るように構成されている。
【0020】
インナー部材40は、オリフィスプレート30の上に配置され、オリフィス30hに連通して上面に開口する一次側貫通孔40c及び二次側流路12に連通して上面に開口する二次側流出孔40pを有する部材である。
本実施形態では、インナー部材40は、ステンレス合金等の金属製で、
図6A,6Bに示すように、外周側が、上側の小径部40f1と下側の大径部40f2を有する略段付円筒状に形成されている。インナー部材40の内周側には、下面側から断面が円形の凹部40aが形成され、その天井面40bから一次側貫通孔40cが形成されている。大径部40f2の外周面は、ボディ10の収容凹部13の下部の内周面13b(
図2参照)に嵌合して、インナー部材40自体を位置決めし、凹部40aの内周面は、前記のように、それに嵌合するオリフィスベース20を位置決めしている。
インナー部材40の環状下端面40dは、ボディ10の収容凹部13の段差面13s(
図2参照)に当接し、これによりインナー部材40の上下方向位置が位置決めされている。この環状下端面40dの内側には、ボディの第2の環状突起部13qに全周に渡って対向する第3の環状突起部40gが形成され、第2の環状突起部13q(
図2参照)とともに環状ガスケット25に食い込んで、二次側流路12と後述する二次側流出孔40pの接続部をシールするように構成されている。
【0021】
一方、インナー部材40の上面側には、中心部に一次側貫通孔40cの開口部が設けられ、その周囲には、それぞれ円環状のバルブシート配置溝40h、環状流出溝40i,ダイヤフラム支持部40j,環状上端面40kが、この順に同心円状に形成されている。
下面側から環状流出溝40iに連通する二次側流出孔40pが、円周上に周方向に等間隔で6本形成されている。本実施形態では、各二次側流出孔40pを穿設するドリルをインナー部材40の上面まで通さずに、環状流出溝40iに連通させて止めており、それにより、ダイヤフラム支持部40jの形状を維持している。この二次側流出孔40pの下面側は、オリフィスベース20と環状ガスケット25との隙間Gpを通って、ボディ10の二次側流路12と連通している。
【0022】
バルブシート50は、インナー部材40上面の一次側貫通孔40cの開口部周囲に設けられた円環状の部材である。本実施形態では、フッ素樹脂(PCTFE)製で、
図7に示すように、略円環状に形成されている。このバルブシート50は、インナー部材40上面のバルブシート配置溝40h(
図6B参照)に嵌め込まれ、その両側の円環状壁面によってカシメられ、固定されている。
【0023】
固定リング60は、ステンレス鋼等の金属材料で形成されており、
図8に示すように、略円環状を有する。固定リング60の外周面にネジ部60aが形成され、内周面60bは回転工具を係合させるためにダブルヘックス構造を有している。
図2に示すように、固定リング60のネジ部60aを収容凹部13のネジ部13aに螺合させて締め付けると、インナー部材40の段差面40eは、固定リング60によって押圧され、インナー部材40の環状下端面40dが、ボディ10の収容凹部13の段差面13sに当接し、これによりインナー部材40の上下方向位置が位置決めされている。
このとき、オリフィスベース20は、オリフィスプレート30を挟んでインナー部材40の凹部40aの天井面40b(
図6B参照)に押圧されて、オリフィスベース20の下面20bに、ボディ10の第1の環状突起部13pが食い込み、シールが形成される。同時に、インナー部材40下面側の第3の環状突起部40gが環状ガスケット25の上面に食い込むとともに、ボディ10の第2の環状突起部13qが環状ガスケット25の下面に食い込むことにより、シールが形成される。
尚、固定リング60下端部とインナー部材40の段差面40sとの間にピュアリング65が2枚配置されている。このピュアリング65は、
図9に示すように略ワッシャ状を成すステンレス鋼板に摩擦低減コーティングを施した部材で、これにより、固定リング60で締め付けるための回転時の摩擦を低減し、インナー部材40の供回りを防止している。
このピュアリング65は、上記ステンレス鋼板製のものに限られず、回転時の摩擦を低減できるものであれば、いずれでもよい。例えば、略ワッシャ状の樹脂板やスラストベアリングを用いてもよい。
【0024】
ダイヤフラム70は、
図2に示すように、インナー部材40の上に配置され、バルブシート50から離間または当接して、一次側貫通孔40cと二次側流出孔40pとの間を連通または遮断する部材である。
ダイヤフラム70は、特殊ステンレス鋼等の金属製薄板およびニッケル・コバルト合金薄板を積層したものの中央部を上方へ膨出させることにより形成され、自然状態で上に凸の球殻状を有する。ダイヤフラム70は、
図2に示すように、インナー部材40のダイヤフラム支持部40j(
図6B参照)により支持され、リング状の押えアダプタ80を介してアクチュエータ90のケーシング91の下端部91bの環状の端面によって押圧されることにより、固定されている。ダイヤフラム70は、流路の一部を画定しており、ダイヤフラム押え92により押圧されて弾性変形し、バルブシート50に当接すると流路が閉鎖され、バルブシート50から離間すると、流路が開放される。
なお、本実施形態では、ダイヤフラム70がケーシング91と連れ回りするのを防ぐため、金属製の押えアダプタ80を用いてダイヤフラム70をインナー部材40に固定したが、アクチュエータ90のケーシング91の下端部91bを伸ばすことで、押えアダプタ80を用いずにダイヤフラム70を直接に固定することも可能である。
【0025】
アクチュエータ90は、例えば、ケーシング91内にピストンを内蔵するエアシリンダを用いることができるが、これに限定されるわけではない。アクチュエータ90は、図示しない駆動部分にダイヤフラム押え92を保持しており、このダイヤフラム押え92をバルブシート50に対して接近および離隔する向きに駆動する。
ダイヤフラム押え92は、ポリイミド等の合成樹脂で形成され先端部が凸状に湾曲しており、ダイヤフラム70の中央部上面に当接するようになっている。
アクチュエータ90のケーシング91の外周面には、ネジ部91aが形成され、このネジ部91aがボディ10の収容凹部13の内周面に形成されたネジ部13aに螺合し、ケーシング91の下端部91bの環状の端面が、押えアダプタ80を介してダイヤフラム70の外周部を押圧している。これにより、ダイヤフラム70がインナー部材40に固定されるとともに、アクチュエータ90がボディ10に対して固定される。
【0026】
ここで、上記したオリフィス内蔵バルブの組立手順について主に
図1及び
図2を参照して説明する。
まず、オリフィスベース20の支持面20s(
図3B参照)上にオリフィスプレート30を設置し、この状態でオリフィスベース20をインナー部材40の下面側の凹部40a(
図6B)に嵌入させる。これにより、オリフィスプレート30が支持面20sとインナー部材40の天井面40b(
図6B)で挟持されるとともに、外周突起部20g(
図3B)が潰れてオリフィスベース20の外周とインナー部材40の内周がシールされる。
次いでインナー部材40の上面のバルブシート配置溝40h(
図6B)にバルブシート50を嵌め込み、その両側の円環状壁面によってカシメて固定する。これにより、オリフィスベース20とオリフィスプレート30とインナー部材40とバルブシート50との結合体が形成される。
次いで、ボディ10の収容凹部13の底部に、環状ガスケット25を載置し、その上に前記オリフィスベース20とオリフィスプレート30とインナー部材40とバルブシート50との結合体を載置し、収容凹部13のネジ部13aに固定リング60を螺合させることにより、オリフィスベース20とオリフィスプレート30とインナー部材40とバルブシート50との結合体及び環状ガスケット25をボディ10に固定する。
次いで、ダイヤフラム70をインナー部材40のダイヤフラム支持部40j(
図6B)に設置し、ダイヤフラム70上に押えアダプタ80を設置し、アクチュエータ90のケーシング91のネジ部91aをボディ10の収容凹部13のネジ部13aにねじ込む。これにより、本実施形態のオリフィス内蔵バルブが組立てられる。
【0027】
本実施形態のオリフィス内蔵バルブでは、
図2に示すように、一次側流路11からオリフィスベース20の貫通孔20aに流入した流体は、オリフィスプレート30に形成されたオリフィス30h(
図5参照)を通過し、インナー部材40の一次側貫通孔40cを通過し、バルブシート50とダイヤフラム70との隙間を通過してインナー部材40の環状流出溝40iに流入する。環状流出溝40iに流入した流体は、複数の二次側流出孔40pを通過して、オリフィスベース20の外周と環状ガスケット25の内周との間の環状の隙間Gpに流入し、収容凹部13の底面13tに開口する二次側流路12へ流出する。
【0028】
本実施形態では、上記のような構造を採用することで、オリフィス内蔵バルブを小型化できるとともに、インナー部材50内部に複数の二次側流出孔40pを形成することで、流量も確保できる。
本実施形態によれば、インナー部材40を収容凹部13のネジ部13aに螺合する固定リング60を用いて固定し、ダイヤフラム70を共通のネジ部13aに螺合するアクチュエータ90のケーシング91を用いて固定することにより、ダイヤフラム70とオリフィスプレート30をそれぞれ別々に組み付けることができるので、シール性の向上およびメイテナンス性の向上が可能となる。
【0029】
(第2実施形態)
第2の実施形態は、流量制御装置を提供する。
図10に本実施形態に係る流量制御装置100を示す。
本流量制御装置は、第1の実施形態のオリフィス内蔵バルブ1のボディ10を変形したボディ10Aを含むオリフィス内蔵バルブ1Aと、流量制御バルブ110と、圧力検出器120および130を含む。
【0030】
ボディ10Aは、第1の実施形態のボディ10と同様に、ステンレス鋼等の金属材料でブロック状に形成され、一次側流路11a,11b,11c及び二次側流路12a,12b、さらに第1の実施形態の収容凹部13を画定している。
【0031】
流量制御バルブ110は、オリフィス内蔵バルブ1Aの一次側の流路11aと流路11bとの間に設けられており、外部から供給されて流路11a,11bを流通する流体の流量を制御可能となっている。
圧力検出器120は、流路11bと流路11cの間に設けられ、オリフィス内蔵バルブ1Aの一次側流路である流路11b,11cの圧力を検出する。
圧力検出器130は、オリフィス内蔵バルブ1Aの二次側流路である流路12a,12bの圧力を検出する。
【0032】
オリフィス内蔵バルブ1Aの構成は、ボディ10Aの形状がボディ10と異なる点を除いて、第1の実施形態のオリフィス内蔵バルブ1と同じである。
【0033】
このように構成された流量制御装置100は、所謂圧力式の流量制御装置であり、プロセッサ、メモリ等のハードウエアおよび所要のソフトウエアで構成される図示しない制御回路を備えており、圧力検出器120の検出する圧力P1および圧力検出器130の検出する圧力P2に基づいて、流路11a~12bを流通する流体の流量を計量し、計量流量が目標流量となるように、流量制御バルブ110を駆動制御する。
【0034】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、上記各実施形態では、オリフィスベース20や円環状ガスケット25を焼鈍したステンレス合金等の金属で構成したが、耐熱性がそれほど要求されない場合等では、例えば、フッ素樹脂(PCTFE)等の樹脂材料で構成しても良い。
【0035】
また、上記各実施形態では、固定リング60の摩擦低減のためにピュアリング65を用いたが、インナー部材40の供回りが発生しなければ、ピュアリング65は用いなくても良い。
【0036】
また、円環状ガスケット25も必須ではない。代替として、オリフィスベース20の下部を円環状ガスケット25部分までフランジ状に拡げて形成し、このフランジ状部分に貫通孔を設けて、二次側流出孔40pと二次側流路12を連通させてもよい。
また、オリフィスベース20やインナー部材40は、上記各実施形態のような段付円筒状ではなく、例えばストレートの円筒状でも良い。
【0037】
なお、本実施形態ではオリフィスを用いた構造について説明をしたが、オリフィスに代わって音速ノズルなどの流路を絞る構造を用いても良いことはもちろんである。
【符号の説明】
【0038】
1,1A オリフィス内蔵バルブ
10 ボディ
10A ボディ
11,11a,11b,11c 一次側流路(流路)
12,12a,12b 二次側流路(流路)
13 収容凹部
13a ネジ部
13b 内周面
13p 第1の環状突起部
13q 第2の環状突起部
13s 段差面
13t 底面
20 オリフィスベース
20a 貫通孔
20b 下面
20f1 小径部
20f2 中径部
20f3 大径部
20g 外周突起部
20s 支持面
25 環状ガスケット
30 オリフィスプレート
30h オリフィス
40 インナー部材
40a 凹部
40b 天井面
40c 一次側貫通孔
40d 環状下端面
40e 段差面
40f1 小径部
40f2 大径部
40g 第3の環状突起部
40h バルブシート配置溝
40i 環状流出溝
40j ダイヤフラム支持部
40k 環状上端面
40p 二次側流出孔
40s 段差面
50 バルブシート
60 固定リング
60a ネジ部
60b 内周面
65 ピュアリング
70 ダイヤフラム
80 押えアダプタ
90 アクチュエータ
91 ケーシング
91a ネジ部
91b 下端部
92 ダイヤフラム押え
100 流量制御装置
110 流量制御バルブ
120,130 圧力検出器
Gp 隙間
P1,P2 圧力