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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052153
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240404BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
E02F9/26 A
E02F9/24 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158673
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 彩冬
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 尚生
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智之
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015GA03
2D015GB06
2D015HA03
2D015HB04
(57)【要約】
【課題】 動作を行う前に、その動作内容を周囲に正確に報知できるようにして作業効率を向上する。
【解決手段】 左右の走行レバー・ペダル装置14,15、左右の操作レバー装置16,17は、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bが中立位置から傾転されたときの方向を検出する感圧センサ14C,14D,15C,15D,16B~16E,17B~17Eを備えている。また、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bが中立位置から傾転されたときに、感圧センサ14C,14D,15C,15D,16B~16E,17B~17Eからの検出信号を受信して下部走行体2の走行装置、旋回装置3および作業装置5の動作を導き出す制御装置19と、制御装置19が導き出した動作を周囲に報知する表示装置20,21,22と、を備えている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置で走行する下部走行体と、前記下部走行体の上側に旋回装置を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体の前側に回動可能に設けられた作業装置と、を備え、
前記上部旋回体は、
前記走行装置、前記旋回装置および前記作業装置からなる動作部を制御するコントロールバルブと、
レバー部が操作無効範囲を越えて傾転されることにより前記コントロールバルブに動作信号を送って前記動作部を操作する操作レバー装置と、
を備えてなる建設機械において、
前記レバー部が中立位置から傾転されたときの方向を検出する検出装置を備え、
前記レバー部が前記中立位置から傾転されたときに、前記検出装置からの検出信号を受信して前記動作部の動作を導き出す制御装置と、
前記制御装置が導き出した動作を周囲に報知する報知装置と、
を備えていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記操作レバー装置の前記レバー部を傾転させたときの操作の有効、無効を切換えるゲートロックレバーが設けられ、
前記制御装置は、前記ゲートロックレバーによって前記レバー部の操作が無効に切換えられているときには、前記報知装置による周囲への報知を制限させることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、
前記操作レバー装置は、前記レバー部を前記中立位置から傾転させたときに所定の角度までが前記操作無効範囲となり、所定の角度を越えると操作有効範囲となり、
前記検出装置による前記レバー部の傾転方向の検出は、前記操作無効範囲から実施されていることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械において、
前記制御装置は、前記レバー部が前記操作無効範囲内にあるときは前記報知装置に動作予告を報知させ、前記レバー部が前記操作有効範囲内にあるときは前記報知装置に実動作を報知させることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、回動可能な作業装置、旋回可能な上部旋回体を備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械としての油圧ショベルは、走行装置で走行する下部走行体と、下部走行体の上側に旋回装置を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体の前側に回動可能に設けられた作業装置と、を備えている。走行装置、旋回装置、作業装置等の動作部は、油圧アクチュエータによって動作される。
【0003】
上部旋回体の旋回フレーム上には、原動機によって駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプから油圧アクチュエータに供給される作動油(圧油)を制御するコントロールバルブと、オペレータが搭乗するキャブと、が設けられている。キャブ内には、オペレータが座る運転席と、運転席の前方のフロアに前後方向に傾転可能に設けられた走行レバー・ペダル装置と、運転席の左右両側に設けられた操作レバー装置と、が配設されている。
【0004】
ここで、油圧ショベルの周囲では、作業者が作業を行っている場合がある。油圧ショベルの周囲で作業を行っている作業者は、油圧ショベルの動作を気にしながらの作業になるために作業の効率が悪くなることがある。
【0005】
そこで、油圧ショベルには、周囲の作業者に対し、油圧ショベルの動作に応じた危険領域を可視光で認識させて注意喚起するものがある(特許文献1)。この特許文献1では、油圧ショベルが行っている動作、例えば、旋回動作、掘削動作等の動作を読み取って注意喚起しているため、周囲の作業者に対する注意喚起が遅くなってしまう。
【0006】
これに対し、他の油圧ショベルには、実行中の作業パターンに基づいて次の動作を予測し、次の動作に移る前に周囲の作業者に対して注意喚起を行うものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-105105号公報
【特許文献2】国際公開第2020/105614号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、油圧ショベルは、様々な現場、作業環境、手順で操作されるため、作業パターンに当てはまらない動作が必要になる場合がある。この場合、油圧ショベルの実際の動作と事前の注意喚起の内容が異なってしまう可能性がある。これにより、注意喚起に対する信頼性が低下するから、作業者は、油圧ショベルの動作を気にしながらの作業になるために作業の効率が悪くなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、動作を行う前に、その動作内容を周囲に正確に報知できるようにして作業効率を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、走行装置で走行する下部走行体と、前記下部走行体の上側に旋回装置を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体の前側に回動可能に設けられた作業装置と、を備え、前記上部旋回体は、前記走行装置、前記旋回装置および前記作業装置からなる動作部を制御するコントロールバルブと、レバー部が操作無効範囲を越えて傾転されることにより前記コントロールバルブに動作信号を送って前記動作部を操作する操作レバー装置と、を備えてなる建設機械において、前記レバー部が中立位置から傾転されたときの方向を検出する検出装置を備え、前記レバー部が前記中立位置から傾転されたときに、前記検出装置からの検出信号を受信して前記動作部の動作を導き出す制御装置と、前記制御装置が導き出した動作を周囲に報知する報知装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建設機械は、動作を行う前に、その動作内容を周囲に正確に報知することができ、作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの左側面図である。
図2】作業装置の一部を省略した油圧ショベルの平面図である。
図3】キャブの内部を示す断面図である。
図4】操作レバーを示す斜視図である。
図5】感圧センサ、制御装置、表示装置を備えた注意喚起システムを示す構成図である。
図6】制御装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図6に従って詳細に説明する。
【0014】
図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走が可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に設けられた上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に回動可能に設けられた作業装置5とにより構成されている。下部走行体2は、駆動輪2A、遊動輪2Bおよび履帯2Cからなる走行装置を左右両側に有している。この走行装置は、駆動輪を走行油圧モータで回転させることによって履帯2Cを周回動作させて前進走行、後進走行することができる。また、左右の走行装置に速度差を持たせたり、周回方向を逆にしたりすることにより、左右に曲がったり、その場で旋回したりすることができる。
【0015】
旋回装置3は、下部走行体2上で上部旋回体4を旋回させる機構である。旋回装置3は、下部走行体2と上部旋回体4との間に設けられた円環状の軸受からなる旋回輪3Aと、旋回輪3Aの内輪に噛合して上部旋回体4を旋回させる旋回油圧モータ(図示せず)と、を備えている。
【0016】
作業装置5は、ブーム5A、アーム5B、バケット5C、ブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fを含んで構成されている。ブーム5A、アーム5B、バケット5Cをブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fによって回動させることにより土砂の掘削作業等を行う。
【0017】
ここで、下部走行体2の走行油圧モータ、旋回装置3の旋回油圧モータ、作業装置5のブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fは、油圧ショベル1を走行、動作させるための動力源であり、油圧アクチュエータ6(図5参照)を構成している。
【0018】
上部旋回体4は、旋回フレーム7と、旋回フレーム7の左前側に搭載され、内部に運転室を形成するキャブ8と、旋回フレーム7の後部に取付けられ、作業装置5との重量バランスを取るカウンタウエイト9と、キャブ8とカウンタウエイト9との間に位置して旋回フレーム7に搭載されたエンジン(図示せず)と、エンジンによって駆動され、油圧アクチュエータ6に圧油(作動油)を供給する油圧ポンプ10と、下部走行体2の走行装置、旋回装置3および作業装置5からなる動作部を制御するコントロールバルブ11と、キャブ8とカウンタウエイト9との間でエンジン、油圧ポンプ10等を収容する外装カバー12と、を備えている。
【0019】
外装カバー12は、左側を覆う縦板からなる左面板12A、右側を覆う縦板からなる右面板12Bおよび左面板12Aと右面板12Bとの間で上側を覆う横板からなる上面板12Cを備えている。
【0020】
図3に示すように、キャブ8の内部には、後側に位置してオペレータが座る運転席13と、運転席13の前側に位置して下部走行体2の走行装置を操作する左走行レバー・ペダル装置14、右走行レバー・ペダル装置15と、運転席13の左側に位置して旋回装置3、作業装置5を操作する左操作レバー装置16と、運転席13の右側に位置して作業装置5を操作する右操作レバー装置17と、が設けられている。なお、右操作レバー装置17を用いて旋回装置3を操作するようにしてもよい。左走行レバー・ペダル装置14、右走行レバー・ペダル装置15、左操作レバー装置16、右操作レバー装置17は、操作レバー装置を構成している。
【0021】
ここで、図3中に矢示で示すように、左走行レバー・ペダル装置14、右走行レバー・ペダル装置15は、レバー部14Aとペダル部14Bとが連動し、レバー部15Aとペダル部15Bとが連動している。レバー部14A,15Aは、前後方向に傾転操作され、ペダル部14B,15Bが前踏み、後踏み操作される。左操作レバー装置16、右操作レバー装置17は、レバー部16A,17Aが左右方向と前後方向に傾転操作される。左走行レバー・ペダル装置14、右走行レバー・ペダル装置15、左操作レバー装置16、右操作レバー装置17は、検出装置を備えている。
【0022】
本実施形態では、検出装置として、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bを傾転するときの押圧力を感知することにより、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bの傾転方向(操作方向)を検出する感圧センサが用いられている。検出装置としては、感圧センサ以外にも、加速度センサ、角度センサ等を用いることもできる。
【0023】
図5に示すように、左走行レバー・ペダル装置14には、レバー部14Aの前位置およびペダル部14Bの上面前位置に感圧センサ14Cが設けられ、レバー部14Aの後位置およびペダル部14Bの上面後位置に感圧センサ14Dが設けられている。感圧センサ14C,14Dは、レバー部14Aまたはペダル部14Bが中立位置から前後方向に傾転されたときの方向を検出し、後述の制御装置19に出力する。
【0024】
同様に、右走行レバー・ペダル装置15には、レバー部15Aの前位置およびペダル部15Bの上面前位置に感圧センサ15Cが設けられ、レバー部15Aの後位置およびペダル部15Bの上面後位置に感圧センサ15Dが設けられている。感圧センサ15C,15Dは、レバー部15Aまたはペダル部15Bが中立位置から前後方向に傾転されたときの方向を検出し、後述の制御装置19に出力する。
【0025】
図4に示すように、左操作レバー装置16には、レバー部16Aの前後位置および左右位置に感圧センサ16B,16C,16D,16Eが設けられている。前後左右の感圧センサ16B,16C,16D,16Eは、レバー部16Aが中立位置から前後方向、左右方向に傾転されたときの方向を検出し、制御装置19に出力する。
【0026】
同様に、右操作レバー装置17には、レバー部17Aの前後位置および左右位置に感圧センサ17B,17C,17D,17Eが設けられている。前後左右の感圧センサ17B,17C,17D,17Eは、レバー部17Aが中立位置から前後方向、左右方向に傾転されたときの方向を検出し、制御装置19に出力する。
【0027】
ここで、左走行レバー・ペダル装置14のレバー部14Aおよびペダル部14B、右走行レバー・ペダル装置15のレバー部15Aおよびペダル部15B、左操作レバー装置16のレバー部16A、右操作レバー装置17のレバー部17Aは、傾転操作されることにより、コントロールバルブ11に油圧、電気等の動作信号(パイロット信号)を出力する。この場合、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bは、中立位置(非操作状態)から傾転されたときに、所定の角度までがコントロールバルブ11に動作信号を出力しない操作無効範囲(所謂、遊び)となっている。即ち、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bは、所定の角度(操作無効範囲)を越えて傾転されることによって操作有効範囲となり、コントロールバルブ11に動作信号を送って動作部を操作することができる。
【0028】
そして、感圧センサ14C,14D,15C,15D,16B~16E,17B~17Eは、検出装置によるレバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bの傾転方向の検出は、操作無効範囲から実施されている。
【0029】
ゲートロックレバー18は、左操作レバー装置16から前側に延び、上下方向に回動可能に設けられている。ゲートロックレバー18は、左走行レバー・ペダル装置14のレバー部14Aおよびペダル部14B、右走行レバー・ペダル装置15のレバー部15Aおよびペダル部15B、左操作レバー装置16のレバー部16A、右操作レバー装置17のレバー部17Aを傾転させたときの操作の有効、無効を切換える。
【0030】
ゲートロックレバー18を上側に回動させてセンサ18AがONまたはOFFになったロック状態では、キャブ8に乗降するときに、左走行レバー・ペダル装置14のレバー部14Aおよびペダル部14B、右走行レバー・ペダル装置15のレバー部15Aおよびペダル部15B、左操作レバー装置16のレバー部16A、右操作レバー装置17のレバー部17Aに誤って接触してもコントロールバルブ11への動作信号を無効にする。一方、ゲートロックレバー18を下側に回動させてセンサ18AがOFFまたはONになった解除状態では、左走行レバー・ペダル装置14のレバー部14Aおよびペダル部14B、右走行レバー・ペダル装置15のレバー部15Aおよびペダル部15B、左操作レバー装置16のレバー部16A、右操作レバー装置17のレバー部17Aからコントロールバルブ11への動作信号を有効にする。
【0031】
制御装置19は、例えば、キャブ8内に設けられている。なお、制御装置19の設置場所は、雨水の浸入を防ぐことができる場所であればキャブ8内に限らない。制御装置19は、左走行レバー・ペダル装置14のレバー部14Aおよびペダル部14B、右走行レバー・ペダル装置15のレバー部15Aおよびペダル部15B、左操作レバー装置16のレバー部16A、右操作レバー装置17のレバー部17Aが中立位置から傾転されたときに、感圧センサ14C,14D,15C,15D,16B~16E,17B~17Eからの検出信号を受信して動作部、即ち、下部走行体2の走行装置、旋回装置3および作業装置5の動作を導き出す。
【0032】
一例としては、左操作レバー装置16のレバー部16Aを前側に傾転させると旋回装置3が右旋回し、後側に傾転させると旋回装置3が左旋回する操作パターンでは、レバー部16Aを後側に傾転させたときの押圧力を検出した感圧センサ16Bからの信号を受信し、旋回装置3が右旋回することを導き出す。
【0033】
また、制御装置19は、左走行レバー・ペダル装置14のレバー部14Aおよびペダル部14B、右走行レバー・ペダル装置15のレバー部15Aおよびペダル部15B、左操作レバー装置16のレバー部16A、右操作レバー装置17のレバー部17Aが操作無効範囲内にあるときには後述の表示装置20,21,22に動作予告を報知させ、左走行レバー・ペダル装置14のレバー部14Aおよびペダル部14B、右走行レバー・ペダル装置15のレバー部15Aおよびペダル部15B、左操作レバー装置16のレバー部16A、右操作レバー装置17のレバー部17Aが操作有効範囲内にあるときには表示装置20,21,22に実動作を報知させる。
【0034】
さらに、制御装置19は、ゲートロックレバー18によって左走行レバー・ペダル装置14のレバー部14Aおよびペダル部14B、右走行レバー・ペダル装置15のレバー部15Aおよびペダル部15B、左操作レバー装置16のレバー部16A、右操作レバー装置17のレバー部17Aの操作が無効(ロック状態)に切換えられているときには、表示装置20,21,22への導出結果の送信を制限する。即ち、表示装置20,21,22には動作予告を表示させないようになっている。
【0035】
表示装置20,21,22は、制御装置19が導き出した油圧ショベル1の動作を周囲に報知する。表示装置20,21,22は、電光掲示板、モニタ、ディスプレイ等を用いて周囲に報知する報知装置を構成している。表示装置20,21,22は、外装カバー12の左面板12A、右面板12Bおよびカウンタウエイト9の後面に設けられている。なお、外装カバー12の左面板12A、右面板12Bおよびカウンタウエイト9の後面以外に表示装置を設けることもできる。表示例としては、左旋回、右旋回、後進走行等が表示される。また、表示装置20,21,22の表示にブザーや音声を合わせることでより一層認識し易くなる。
【0036】
次に、感圧センサ14C,14D,15C,15D,16B~16E,17B~17E、制御装置19、表示装置20~22を利用して油圧ショベル1の動作を導き出して周囲に報知するときの処理について、図6を参照して説明する。なお、図6に示すフローチャートのステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ1を「S1」として示す。
【0037】
図6のS1では、ゲートロックレバー18が解除されているか否かを判定する。このS1でゲートロックレバー18が解除されている(YES)と判定されたら、S2に移行する。また、S1でゲートロックレバー18が解除されていない(NO)と判定されたら、S1を繰り返す。S2では、左右の走行レバー・ペダル装置14,15、左右の操作レバー装置16,17のいずれかが操作されたか否かを判定する。このS2で左右の走行レバー・ペダル装置14,15、左右の操作レバー装置16,17のいずれかが操作された(YES)と判定されたら、S3に移行する。また、S2で左右の走行レバー・ペダル装置14,15、左右の操作レバー装置16,17が操作されていない(NO)と判定されたら、S2を繰り返す。
【0038】
S3では、左右の走行レバー・ペダル装置14,15、左右の操作レバー装置16,17の操作内容として感圧センサ14C,14D,15C,15D,16B~16E,17B~17Eからの検出信号を制御装置19に送信する。次に、S4に移って、操作内容を示す感圧センサ14C,14D,15C,15D,16B~16E,17B~17Eから送られた検出信号から、動作部としての下部走行体2の走行装置、旋回装置3または作業装置5の動作を導き出す。続いて、S5では、導き出した下部走行体2の走行装置、旋回装置3または作業装置5の動作予告を表示装置20,21,22に表示させる。ここまでの処理が、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bの操作無効範囲で実行され、この時点では動作部は動作していない。
【0039】
S6では、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bの操作角度(中立位置からの角度)が操作有効範囲に達したか否かを判定する。このS6でレバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bが操作有効範囲に達した(YES)と判定されたら、S7に移行する。また、S6でレバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bが操作有効範囲に達していない(NO)と判定されたら、操作有効範囲に達するまでS2の処理を繰り返す。
【0040】
S7では、操作内容に対応する油圧アクチュエータ6、即ち、下部走行体2の走行油圧モータ、旋回装置3の旋回油圧モータ、作業装置5のブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fを適宜に起動させる。続くS8では、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bが中立位置に配置されたか否かを判定する。このS8でレバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bが中立位置に配置された(YES)と判定されたら、S9に移行する。また、S8でレバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bが中立位置に配置されていない(NO)と判定されたら、S8の処理を繰り返す。さらに、S9では、ゲートロックレバー18がロックされたか否かを判定する。このS9でゲートロックレバー18がロックされた(YES)と判定されたら、処理を終了する。また、S9でゲートロックレバー18がロックされていない(NO)と判定されたら、S9の処理を繰り返す。
【0041】
本実施形態に適用された油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0042】
まず、オペレータは、キャブ8に搭乗して運転席13に座り、左右の走行レバー・ペダル装置14,15のレバー部14A,15A、ペダル部14B,15Bを操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。また、左右の操作レバー装置16,17のレバー部16A,17Aを操作することにより、旋回装置3を旋回させたり、作業装置5を回動させたりして土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0043】
このように、油圧ショベル1を動作させるときには、実際に油圧ショベル1が動作する前の段階で、表示装置20,21,22にこれからの動作内容の予告を表示し、周囲の作業者に注意を促している。例えば、油圧ショベル1は、左操作レバー装置16のレバー部16Aを中立位置から後側に傾転させたことを感圧センサ16Bが検出することで、レバー部16Aが操作無効範囲にあるうちに旋回装置3が右旋回することを導き出し、表示装置20,21,22に「左旋回」と表示することができる。
【0044】
かくして、本実施形態によれば、左右の走行レバー・ペダル装置14,15、左右の操作レバー装置16,17は、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bが中立位置から傾転されたときの方向を検出する検出装置としての感圧センサ14C,14D,15C,15D,16B~16E,17B~17Eを備えている。また、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bが中立位置から傾転されたときに、感圧センサ14C,14D,15C,15D,16B~16E,17B~17Eからの検出信号を受信して動作部としての下部走行体2の走行装置、旋回装置3および作業装置5の動作を導き出す制御装置19と、制御装置19が導き出した動作を周囲に報知する報知装置としての表示装置20,21,22と、を備えている。
【0045】
従って、油圧ショベル1は、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bが傾転されたときの方向を基に、下部走行体2の走行装置、旋回装置3および作業装置5の動作を正確に導くことができる。これにより、表示装置20,21,22で報知する注意喚起の信頼性を向上することができる。この結果、油圧ショベル1が動作を行う前に、その動作内容の予告を周囲に正確に報知することができ、作業効率を向上することができる。
【0046】
左右の走行レバー・ペダル装置14,15、左右の操作レバー装置16,17のレバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bを傾転させたときの操作の有効、無効を切換えるゲートロックレバー18が設けられている。また、制御装置19は、ゲートロックレバー18によってレバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bの操作が無効に切換えられているときには、表示装置20,21,22への導出結果の送信(周囲への報知)を制限する構成としている。従って、ゲートロックレバー18が動作をロックしているにも関わらず、表示装置20,21,22に動作予告が表示される事態を未然に防ぐことができる。これにより、表示装置20,21,22の報知に対する信頼性を向上することができる。
【0047】
左右の走行レバー・ペダル装置14,15、左右の操作レバー装置16,17は、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bを中立位置から傾転させたときに所定の角度までが操作無効範囲となり、所定の角度を越えると操作有効範囲となる。この上で、感圧センサ14C,14D,15C,15D,16B~16E,17B~17Eによるレバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bの傾転方向の検出は、操作無効範囲から実施されている。これにより、下部走行体2の走行装置、旋回装置3および作業装置5が動作する前に、表示装置20,21,22によって動作予告を報知することができる。
【0048】
さらに、制御装置19は、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bが操作無効範囲内にあるときには表示装置20,21,22に動作予告を報知させ、レバー部14A,15A,16A,17A、ペダル部14B,15Bが操作有効範囲内にあるときには表示装置20,21,22に実動作を報知させる。これにより、操作無効範囲から操作有効範囲まで連続的に動作予告と実動作を報知することができる。
【0049】
なお、実施形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、ホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
2A 駆動輪(走行装置)
2B 遊動輪(走行装置)
2C 履帯(走行装置)
3 旋回装置(動作部)
4 上部旋回体
5 作業装置(動作部)
5D ブームシリンダ
5E アームシリンダ
5F バケットシリンダ
6 油圧アクチュエータ
11 コントロールバルブ
14 左走行レバー・ペダル装置(操作レバー装置)
14A,15A,16A,17A レバー部
14B,15B ペダル部(レバー部)
14C,14D,15C,15D,16B~16E,17B~17E 感圧センサ(検出装置)
15 右走行レバー・ペダル装置(操作レバー装置)
16 左操作レバー装置(操作レバー装置)
17 右操作レバー装置(操作レバー装置)
18 ゲートロックレバー
19 制御装置
20,21,22 表示装置(報知装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6