(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052156
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】中継通信装置、通信方法及び通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 56/00 20090101AFI20240404BHJP
H04W 84/18 20090101ALI20240404BHJP
H04L 12/28 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H04W56/00 130
H04W84/18
H04L12/28 200Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158677
(22)【出願日】2022-09-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/海中・水中IoTにおける無線通信技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 久雄
(72)【発明者】
【氏名】池崎 一生
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩二
【テーマコード(参考)】
5K033
5K067
【Fターム(参考)】
5K033CB06
5K033CB15
5K033DB11
5K033DB18
5K067AA21
5K067DD51
5K067EE02
5K067EE25
5K067GG01
(57)【要約】
【課題】通信ネットワークにおいてブロードキャスト送信を適切に行うこと。
【解決手段】本開示の一実施例に係る中継通信装置は、第1通信装置からブロードキャスト送信された第1信号を受信する受信部と、前記第1信号をブロードキャスト送信する送信部と、前記第1通信装置からブロードキャスト送信された第1信号を受信した第2通信装置が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、前記送信部が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、を同期させる同期制御部と、を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信装置からブロードキャスト送信された第1信号を受信する受信部と、
前記第1信号をブロードキャスト送信する送信部と、
前記第1通信装置からブロードキャスト送信された第1信号を受信した第2通信装置が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、前記送信部が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、を同期させる同期制御部と、
を備える中継通信装置。
【請求項2】
前記送信部は、前記中継通信装置と前記第1通信装置と前記第2通信装置とを含む通信システムにおけるマスタ通信装置に、前記第1信号をブロードキャスト送信することを示す情報を含む第2信号をユニキャスト送信し、
前記受信部は、前記マスタ通信装置によって前記第2信号からブロードキャスト送信用に変換された前記第1信号を受信する、
請求項1に記載の中継通信装置。
【請求項3】
前記同期制御部は、前記第2通信装置が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、前記送信部が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、を、ブロードキャスト送信に専用の期間において同期させる、
請求項1又は2に記載の中継通信装置。
【請求項4】
前記第1通信装置から前記中継通信装置までのホップ数と前記第1通信装置から前記第2通信装置までのホップ数とは、同一である、
請求項3に記載の中継通信装置。
【請求項5】
前記同期制御部は、IEEE1588に準拠させて、前記第2通信装置が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、前記送信部が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、を同期させる、
請求項1に記載の中継通信装置。
【請求項6】
中継通信装置が、
第1通信装置からブロードキャスト送信された第1信号を受信し、
前記第1通信装置からブロードキャスト送信された第1信号を受信した第2通信装置が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと同期させて、前記第1信号をブロードキャスト送信する、
通信方法。
【請求項7】
第1通信装置と、
前記第1通信装置からブロードキャスト送信された信号を受信し、同期して前記信号をブロードキャスト送信する第2通信装置及び第3通信装置と、
前記第2通信装置及び前記第3通信装置が同期してブロードキャスト送信した前記信号を受信する第4通信装置と、
を備える通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中継通信装置、通信方法及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力線通信(PLC:Power Line Communication)でのマルチホップ通信が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなマルチホップ通信では、複数台の通信端末から構成される通信ネットワーク(以下、単にネットワーク(NW:network)と呼ぶこともある)において、通信端末間で通信信号を中継することで、自端末と直接通信できない端末との通信を行う。特許文献1には、同時にブロードキャスト送信することによる信号の衝突を回避するために、ターミナルがマスタにユニキャスト送信し、マスタがブロードキャスト送信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、ターミナルがマスタにユニキャストすることから、マスタに信号が集中し、遅延が発生してしまうおそれがある。また、マスタから遠いターミナルには信号が届かないおそれがある。なお、これらのことは、有線通信でも無線通信でも生じ得る。
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、通信ネットワークにおいてブロードキャスト送信を適切に行うことができる中継通信装置、通信方法及び通信システムの提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例に係る中継通信装置は、第1通信装置からブロードキャスト送信された第1信号を受信する受信部と、前記第1信号をブロードキャスト送信する送信部と、前記第1通信装置からブロードキャスト送信された第1信号を受信した第2通信装置が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、前記送信部が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、を同期させる同期制御部と、を備える。
【0007】
本開示の一実施例に係る通信方法は、中継通信装置が、第1通信装置からブロードキャスト送信された第1信号を受信し、前記第1通信装置からブロードキャスト送信された第1信号を受信した第2通信装置が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと同期させて、前記第1信号をブロードキャスト送信する。
【0008】
本開示の一実施例に係る通信システムは、第1通信装置と、前記第1通信装置からブロードキャスト送信された信号を受信し、同期して前記信号をブロードキャスト送信する第2通信装置及び第3通信装置と、前記第2通信装置及び前記第3通信装置が同期してブロードキャスト送信した前記信号を受信する第4通信装置と、を備える。
【0009】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施例によれば、通信ネットワークにおいてブロードキャスト送信を適切に行うことができる。
【0011】
本開示の一実施例における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】マルチホップ通信システム及び端末間の通信品質を示す図
【
図2】本開示の実施の形態に係る通信システムの構成例を示す図
【
図3】本開示の実施の形態に係る端末のハードウェア構成例を示す図
【
図4】本開示の実施の形態に係る端末のCPUの機能構成例を示す図
【
図5】本開示の実施の形態に係るタイムスタンプ取得の例を示す図
【
図6】本開示の実施の形態に係る、フレーム受信時のタイムスタンプ取得の例を示すフローチャート
【
図7】本開示の実施の形態に係る、端末間の通信品質に基づく時刻同期の例を示す図
【
図8】本開示の実施の形態に係る、
図7に示す例におけるパスの仮想TCマスタポート及び仮想TCスレーブポートを示す図
【
図9】本開示の実施の形態に係る通信フレームフォーマット例を示す図
【
図10】本開示の実施の形態に係る、ブロードキャストフレーム同期送信の概括的な動作例を示すフローチャート
【
図11】本開示の実施の形態に係る、ブロードキャスト同期送信の動作手順例を示す図
【
図12】本開示の実施の形態に係る、ブロードキャスト同期送信の動作手順例を示す図
【
図13】本開示の実施の形態に係る、ブロードキャスト専用期間におけるブロードキャストフレーム送信例を示す図
【
図14A】本開示の実施の形態に係る、端末のトポロジー例及びID割り当て例を示す図
【
図14B】本開示の実施の形態に係る、ブロードキャスト専用期間におけるブロードキャストフレーム送信例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本開示に至った経緯)
マルチホップ通信システムでは、例えば、システム内に最大1024台の端末が接続され、マスタ端末を最上位として、最大10ホップまでの中継伝送網が構築される。システム内では、相互の端末間の伝送路状態に応じて、中継端末が自動的に選択され、マスタ端末から末端端末の間で通信データが中継される。このように、マルチホップ通信システムでは、マルチホップが形成され、マルチホップ通信が行われる。このようなマルチホップ通信システムを構築可能な高速PLCとして、HD-PLC(High Definition Power Line Communication)が知られている。なお、システムは、通信システム、ネットワーク、通信ネットワーク等で読み替えられてよい。
【0014】
マルチホップ通信システムでは、各端末によって、隣接端末との通信品質が評価され、通信品質評価後に、マスタ端末によって、適切な中継経路が設定される。そして、ユニキャストフレームは、マスタ端末によって設定された中継経路に従って中継される。
【0015】
図1A及び
図1Bを参照して、マルチホップ通信システムの中継経路の設定例について説明する。
【0016】
図1Aは、マスタ端末M 10と、端末A~F 20A~20F(端末A~E 20A~20E:中継端末、端末F 20F:末端端末)と、を有するマルチホップ通信システムを示す図である。
図1Aはまた、端末間の通信品質を表すリンクコスト(LC:link cost)を示す。
【0017】
図1Bは、
図1Aにも示される、端末F 20Fの観点での各種リンクコストを含むメディアコストを示す図である。
【0018】
端末F 20Fと端末A 20Aとの間のリンクコストは、受信側としては8であり、送信側としては23である。端末A 20Aのルートコスト(上位ルートコストと呼ぶ)、すなわち、端末A 20Aとマスタ端末M 10との間の受信品質を表すメディア(媒体)コストは、11であるので、端末F 20Fの端末A経由の仮ルートコストは、受信側のリンクコストのみを考慮して、19(=8+11)である。また、端末F 20Fの端末A経由のルートコストは、送信側のリンクコストも考慮して(送信側のリンクコストの方が受信側のリンクコストよりも大きいので)、34(=23+11)である。
【0019】
端末F 20Fと端末C 20Cとの間のリンクコストは、受信側としては28である。端末C 20Cのルートコストは、20であるので、端末F 20Fの端末C経由の仮ルートコストかつルートコストは、48である。
【0020】
端末F 20Fと端末D 20Dとの間のリンクコストは、受信側としては6である。端末D 20Dのルートコストは、30であるので、端末F 20Fの端末D経由の仮ルートコストかつルートコストは、36である。
【0021】
端末F 20Fと端末E 20Eとの間のリンクコストは、受信側としては7であり、送信側としては5である。端末E 20Eのルートコストは、16であるので、端末F 20Fの端末E経由の仮ルートコストは、受信側のリンクコストのみを考慮して、23である。また、端末F 20Fの端末E経由のルートコストは、送信側のリンクコストも考慮して(受信側のリンクコストの方が送信側のリンクコストよりも大きいので)、23である。
【0022】
以上のメディアコストに基づいて、マスタ端末M 10は、端末E 20E経由での端末F 20Fとの経路、すなわち、端末A 20A-端末E 20E-端末F 20Fという中継経路を設定する。したがって、マスタ端末M 10と端末F 20Fとの間では、ユニキャストフレームは、設定された上記の中継経路を介して中継(転送)される。このように、上述したマルチホップ通信システムでは、ユニキャストフレームの中継(転送)に関して、中継回数及び中継経路の転送レートから、メディアコストが最小となり、中継(転送)に要するメディア占有時間が最小となるように、中継経路が最適化される。
【0023】
一方で、ブロードキャストフレームに関しては、対象フレームを全ての端末に届ける必要があるため、ある端末から送信されたブロードキャストフレームは、マスタ端末及び中継端末の全てによって受信された後、これらの端末が、対象フレームを、再度ブロードキャスト送信することによって他の端末に転送する。
【0024】
例えば、中継端末が増大するほど、1つのブロードキャストフレームを送信するのに必要なメディアリソースも増大する。また、ブロードキャストフレームに対しては、ロバスト性能が最大となる変調が施されるため、通信レートが最低である。したがって、マルチホップ通信システムでは、マルチキャストフレーム送信により膨大なメディアリソースが消費される。
【0025】
なお、ブロードキャスト通信とマルチキャスト通信とは厳密には異なるが、本明細書では、これらがほぼ同義で使用される。
【0026】
通信フレームが、「同一データのフレームを複数端末から送信する場合、複数端末の送信信号間の干渉による受信信号のCINR(Carrier to Interference and Noise Ratio)の劣化は、群遅延によるシンボル間干渉と同等」という特性を有する場合(例えば、HD-PLCのフレーム)、ブロードキャストのようなロバスト性の高いフレームであれば、送信端末間でタイミングを同期して送信することで1つの端末から送信する場合よりも多数の端末に同時送信可能であり、メディア占有時間を短縮することが可能である。
【0027】
また、例えば、
図1Aに示す例の場合、端末A 20A及び端末B 20Bからブロードキャストフレームが同期送信されていれば、衝突が発生しても受信フレームは誤りの発生しないCINRとなり、端末C 20Cは、ブロードキャストフレームを受信することができる。
【0028】
さらに、システム内の全端末の時刻同期を取って適切に送信する端末及び/又は送信タイミングをスケジューリングすると、送信回数及びメディア占有コストを削減することができる。
【0029】
上記を踏まえて、有線又は無線を介する通信ネットワークにおいてブロードキャスト送信を適切に行うことを可能にする技術について説明する。
【0030】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0031】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0032】
(実施の形態)
<通信システムの構成>
図2は、本開示の実施の形態に係る通信システム1の構成例を示す図である。通信システム1は、例えば、HD-PLCシステムであってよい。
【0033】
通信システム1は、
図2に示すように、マスタ端末M 10と、端末A~F 20A~20F(端末A~E 20A~20E:中継端末、端末F 20F:末端端末)と、を有する。なお、通信システム1(通信ネットワーク)を構成する端末の数及び接続形態は、図示されるものに限定されない。
【0034】
通信システム1は、例えば、水中(例えば、海中)に配置されてもよい。このように通信システム1が配置される場合、例えば、マスタ端末M 10には、制御装置(図示せず)が接続され、端末A~F 20A~20Fの各々には、この制御装置によって制御されるセンサ等の電子機器(図示せず)が接続されてもよい。あるいは、通信システム1は、例えば、工場やオフィスビル等の施設で用いられてもよい。このように通信システム1が配置される場合、マスタ端末M 10には、制御装置(図示せず)が接続され、端末A~F 20A~20Fの各々には、この制御装置によって制御されるセンサ、照明器具、空調機器等の電子機器(図示せず)が接続されてもよい。なお、端末A~F 20A~20Fの一部には電子機器が接続されなくてもよく、電子機器が接続されない端末A~F 20A~20Fは、中継器(リピータ)として機能してもよい。
【0035】
なお、これらのマスタ端末M 10及び端末A~F 20A~20Fは、通信端末又は単に端末100、通信ノード又は単にノード100、通信機器又は単に機器100、通信装置又は単に装置100、通信端末又は単に端末100等と総称されてもよい。また、マスタ端末は、親機、親端末、マスタ、ルート、ルート端末等と称されてもよく、端末A~F 20A~20Fは、子機、子端末、ターミナル等と称されてもよい。
【0036】
通信システム1において、各端末100(マスタ端末M 10及び端末A~F 20A~20Fの各々)は、電力線を通信回線として利用し電力線に信号を重畳するPLCを用いてマルチホップ通信を行う。
【0037】
例えば、
図1Aにおいて、端末A 20A及び端末B 20Bの(マスタ端末M 10からの)ホップ数は1であり、端末C 20C、端末D 20D及び端末E 20Eの(マスタ端末M 10からの)ホップ数は2であり、端末F 20Fの(マスタ端末M 10からの)ホップ数は3である。なお、本実施の形態において、ホップ上限数は10であり、通信システム1に接続可能な端末の最大数は1024台であるものとするが、ホップ上限数及び端末の最大数は、これらの値に限定されない。
【0038】
通信システム1では、マスタ端末M 10が、端末A~F 20A~20Fから所定の情報を収集し、端末A~F 20A~20Fの遠隔監視又は遠隔制御を行う。ここで、マスタ端末M 10と端末A~F 20A~20Fの各々との間で直接的に又は間接的に通信が行われ、マスタ端末M 10と直接通信できない端末A~F 20A~20Fは、直接通信可能な他の端末A~F 20A~20Fに通信信号を順次中継することで、マスタ端末M 10と間接的に通信を行う。
【0039】
各端末100(マスタ端末M 10及び端末A~F 20A~20Fの各々)は、以下で説明するように他の端末との間の通信品質(リンク品質と称されてもよい)を示すリンクコストを算出し、リンクコストに基づいて、他の端末と通信を行う。例えば、マスタ端末M 10と端末A~F 20A~20Fの各々との間では、これらの端末間のメディアコストが最良(最小)となる経路(ルート)で、ユニキャストフレームが中継(転送)されてよい。また、同期用のフレームも、端末間のメディアコストに基づいて、端末間で中継されてよい。
【0040】
なお、通信システム1における通信方式は、有線通信方式であるPLCに限定されず、マルチホップ通信が可能であれば、PLC以外の有線通信方式であってもよいし、無線通信方式であってよい。
【0041】
<端末の構成>
図3は、本実施の形態に係る端末100のハードウェア構成例を示す図である。
【0042】
図3に示すように、端末100は、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)201と、記憶装置202と、通信装置203と、機器インターフェース装置204と、を備える。端末100は、上記以外の構成要素を備えてもよい。
【0043】
CPU201は、端末100の全体の動作(例えば、通信装置203による通信等の、各種構成要素による処理等)を制御する。CPU201は、例えば、記憶装置202に含まれるHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等に記憶された所定のプログラムを、記憶装置202に含まれるRAM(Random Access Memory)等にロードして実行することにより、端末100の各種機能(後述する処理を含む)を実現する。CPU201が実行するプログラムは、記憶装置202に予め記憶されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて又はメモリカード等の非一時的な記憶媒体に記憶されて提供されてもよい。
【0044】
記憶装置202は、非一時的な記憶媒体であり、HDD、SSD、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の電気的に書換え可能な不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリ等を含む。記憶装置202は、通信経路、トポロジー情報、通信可能な端末(例えば、直接通信可能な他の端末等)等に関する情報を記憶する(例えばテーブル形式で)。記憶装置202は、端末100を動作させるための制御プログラム等のプログラム、このプログラムの実行に必要なデータ、端末100の識別情報、端末100(例えば、CPU201)が処理(加工)した他の情報/データ等も記憶する。
【0045】
端末100がマスタ端末M 10である場合には、記憶装置202に、例えば、ネットワーク内で構築された端末間の全通信経路を登録するための通信経路データテーブル、各端末が直接通信可能な隣接端末の情報(リンク情報)を記録するためのトポロジーテーブル等が記憶される。
【0046】
また、端末100が端末A~F 20A~20Fである場合には、記憶装置202に、例えば、当該端末100が通信可能な隣接端末と、当該端末100と隣接端末との間の通信品質を示す通信コスト値(リンクコスト)と、隣接端末を経由した当該端末100とマスタ端末M 10との間の通信品質を示す通信コスト値(ルートコスト)と、を表す通信可能端末データテーブル等が記憶される。
【0047】
通信装置203は、他の端末100との間で通信するための通信インターフェース装置である。通信装置203は、PLC用の通信インターフェース装置であってよい。なお、通信方式として、PLC以外の有線通信方式又は無線通信方式が用いられる場合、通信装置203は、当該有線通信方式又は無線通信方式に対応する通信インターフェース装置であってよい。通信装置203は、本開示に係る受信部及び送信部の例である。
【0048】
機器インターフェース装置204は、端末100に接続される制御装置又は電子機器との間でデータを授受(入出力)するためのインターフェース装置である。機器インターフェース装置204は、例えば、イーサネット(登録商標)の規格に準拠した通信インターフェース装置であってよい。
【0049】
図4は、本実施の形態に係るCPU201の機能構成例を示す図である。
【0050】
CPU201は、パケット解析部301と、認証処理部302と、リンクコスト算出部303と、トポロジー管理部304と、パケット生成部305と、同期制御部306と、を備える。
【0051】
CPU201には、ハローパケット(Hパケット:Hello packet)(ハローメッセージ又はハロー信号と称されてもよい)、認証パケット、同期用のパケット及び通常パケットが入力される。Hパケットは、通信システム1(通信ネットワーク)で行われる認証処理に先だって一方の端末から、接続中の端末に向けて一斉に同報送信される。また、これ以外にも、Hパケットは、経路情報を更新するために各端末によって隣接端末に定期的に送信又は同報送信される(このようなHパケットは、定期信号と称されてもよい)。Hパケットは、自端末の存在を通知するパケットを意味してよい。例えば、Hパケットには、ネットワークにおけるマスタ端末の識別情報、Hパケットの送信元の情報、自端末の隣接端末の情報、リンクの通信品質の情報等が含まれる。認証パケットは、認証処理中に送受信されるパケットであり、同期用のパケットは、Syncパケット、Follow Upパケット等の時刻同期に用いられるパケットであり、通常パケットは、例えば、センサによって取得されるセンサデータ等であってよい。
【0052】
パケット解析部301は、入力される各種のパケット(Hパケット、認証パケット、同期用のパケット及び通常パケット)のデータ構造を解析してパケットの種別を判定し、その判定結果に基づいてパケットの転送先を振り分ける。パケット解析部301は、例えば、入力されたパケットがHパケットであると判定した場合には、そのHパケットをリンクコスト算出部303に出力する。パケット解析部301は、例えば、入力されたパケットが認証パケットであると判定した場合には、その認証パケットを認証処理部302に出力する。パケット解析部301は、例えば、入力されたパケットが通常パケットであると判定した場合には、その通常パケットをトポロジー管理部304に出力する。パケット解析部301は、例えば、入力されたパケットが同期用のパケットであると判定した場合には、その同期用のパケットを同期制御部306に出力する。
【0053】
認証処理部302は、パケット解析部301から入力された認証パケットを用いて、その認証パケットの送信元である端末との間で認証処理を実行する。認証処理部302は、認証処理中に生成するパケットである認証パケット、又は、他の端末から送信された認証パケットの応答をトポロジー管理部304に出力する。
【0054】
リンクコスト算出部303は、パケット解析部301から入力されたHパケットを用いて、当該端末が送信元の端末から受信したHパケットの受信品質を示すリンクコストを算出する。リンクコスト算出部303は、そのリンクコストの算出結果を、Hパケットのデータ構造に書き込む(格納する)。また、Hパケットには、マスタ端末M 10からHパケットが送信された場合の各リンクコストの値も格納されている。リンクコスト算出部303は、リンクコストの算出結果を格納したHパケットをトポロジー管理部304に出力する。
【0055】
トポロジー管理部304は、マスタ端末M 10により生成されたトポロジー(すなわち、通信システム1を構成する端末及ぶその接続形態)を示すトポロジー情報を管理(取得)し、トポロジー情報に基づいて各種のパケットの出力先(例えば、パケット生成部305)を振り分けて出力する。トポロジー情報は、各端末のトポロジー管理部304又は記憶装置202において保存される。また、トポロジー管理部304は、トポロジー情報だけでなく、上述した通信経路、通信可能な端末(例えば、直接通信可能な他の端末等)、自端末等に関する情報もトポロジー管理部304又は記憶装置202に記憶させる。なお、マスタ端末M 10のトポロジー管理部304は、認証処理の対象となる1つ以上の端末の各々から送信されたHパケットに応じてマスタ端末M 10のリンクコスト算出部303により算出された各リンクコストに基づいて、トポロジーを生成(形成)し、トポロジーを示すトポロジー情報を他の端末に提供する。
【0056】
パケット生成部305は、トポロジー管理部304から入力された認証パケット又は通常パケットに基づいて、送信先となる他の端末へのデータ通信用のパケット、Hパケット等を生成して出力する。
【0057】
同期制御部306は、通信システム1における時刻同期に関わる制御を行う。同期制御部306は、例えば、ツリー構造のネットワークにおいてナノ秒精度の時刻同期を取る規格であるIEEE1588(PTP Ver2)に準拠させて、このような制御を行う。
【0058】
IEEE1588は、非同期のパケットネットワークを経由して、マスタクロックからクライアントクロックに高精度な時刻情報を正確に転送することができるよう規定した規格である。なお、IEEE1588では、システムのクロック源であるOrdinary Clock Master(OC Master)及びこれに対して同期させるクロックを保持するOrdinary Clock Slave(OC Slave)を、中継ノードであるEnd to End Transparent Clockノード(E2E TC)やPeer to Peer Transparent Clockノード(P2P TC)とイーサネット等のネットワークを介して接続することで、OC ClockをOC Master Clockに同期させることが可能である。例えば、本実施の形態では、
図7に示すように、OC MasterとOC Slaveとの間に、通信システム1が接続されてよい。
【0059】
本実施の形態では、Pdelay_Reqフレーム、Pdelay_Respフレーム及びPdelay_Resp_Follow_Upフレームを用いて、端末間の伝送路遅延(伝送遅延とも呼ぶ)を予め測定しておき、Syncフレーム転送時に、その遅延情報を付加してクロック誤差補正を行うP2P TCが用いられる。これは、隣接リンクの伝送遅延を一度測定すれば、伝送遅延が変化しない場合再度測定する必要がなく、Syncパケット及びFollow Upパケットの1方向の転送のみでクロック補正が可能であり、通信媒体共有型のPLCには有利であるためである。もちろん、E2E TCが用いられてもよい。
【0060】
なお、以下において、「フレーム」という用語は、「パケット」、「メッセージ」、「信号」等といった用語で適宜読み替えられてもよい。
【0061】
同期制御部306は、これらのPdelay_Reqフレーム、Pdelay_Respフレーム、Syncフレーム、Follow Upフレーム、以下で説明するフレーム等を生成して通信相手端末に送信する。あるいは、同期制御部306は、このようなフレームを、パケット生成部305に生成させて通信相手端末に送信させてもよい。
【0062】
同期制御部306は、時刻同期のために、以下で説明する伝送路遅延測定及びタイムスタンプ取得を行う。
【0063】
同期制御部306は、測定した伝送路遅延の情報等に基づいて、自端末のクロック調整を行う。
【0064】
中継端末の同期制御部306は、例えば、通信システム1における他の中継端末(例えば、通信システム1において当該中継端末と同ホップに位置する他の中継端末)がフレームをブロードキャスト送信するタイミングと、当該中継端末がフレームをブロードキャスト送信するタイミングと、を同期させる。
【0065】
同期制御部306は、本開示に係る同期制御部又は(ブロードキャスト)送信制御部の例である。
【0066】
<通信システムの動作>
以下、通信システム1のブロードキャスト同期送信に関わる動作について説明する。
【0067】
[IEEE1588に基づく同期]
-Syncフレームの中継について
TCには、Syncフレーム送信時にハード的に送信フレームのSyncポイントのタイムスタンプを埋め込むことができるOne-Step TCと、それができないTwo-Step TCと、がある。本実施の形態では、Two-Step TCを用いられるが、One-Step TCが用いられてもよい。
【0068】
TCスレーブポートには、上流のOrdinary Clock Masterが生成したSyncメッセージが到着する。Syncメッセージには、Syncメッセージの中に送信時刻が埋め込まれたOne-Step Syncメッセージと、Syncメッセージの中に送信時刻が埋め込まれず、Syncメッセージの後に送信時刻情報の入ったFollow Upメッセージが送信されるTwo-Step Syncメッセージと、がある。
【0069】
Two-Step TCに対応した端末にOne-Step Syncメッセージが到着した場合には、端末の同期制御部306は、まずSyncメッセージ中のtwoStepFlagのみTrueに改変して、できる限り早くSyncメッセージを下流の端末に送信する。このとき、同期制御部306は、Syncメッセージ到着時刻(dt1)及びSync送信時刻(dt2)を記録しておく(例えば、記憶装置202の同期情報記憶領域に)。次に、同期制御部306は、IEEE 1588-2008の11.5.2.2に記載されるように、Syncメッセージの情報からFollow Upメッセージを生成し、Syncメッセージを送信した端末と自端末との間の伝送路遅延(peerMeanPathDelay)に滞在時間(=dt2-dt1)を加算した値をCollection Field(CF)に格納して、Follow Upメッセージを下流端末に送信する。なお、伝送路遅延(peerMeanPathDelay)の測定については後述する。
【0070】
一方、Two-Step TCに対応した端末にTwo-Step Syncメッセージが到着した場合には、端末の同期制御部306は、できる限り早くSyncメッセージをそのまま下流の端末に送信する。このとき、同期制御部306は、Syncメッセージ到着時刻(dt1)及びSync送信時刻(dt2)を記録する(例えば、記憶装置202の同期情報記憶領域に)。次に、この端末にFollow Upメッセージが到着したときに、端末の同期制御部306は、Syncメッセージを送信した端末と自端末との間の伝送路遅延(peerMeanPathDelay)に滞在時間(=dt2-dt1)を加算した値をCollection Field(CF)に格納して、Follow Upメッセージを下流端末に送信する。
【0071】
-伝送路遅延(peerMeanPathDelay)の測定について
上述したように、P2P TC中継装置(端末)は、Syncメッセージ中継時に、Syncメッセージの送信元端末との伝送路遅延(peerMeanPathDelay)を用いた値をCFに格納して送信する必要があるため、Syncメッセージ送信端末が判明した時点で伝送路遅延を測定する。伝送路遅延測定には、Pdelay_Reqフレーム、Pdelay_Respフレーム及びPdelay_Resp_Follow_Upフレームが用いられる。伝送路遅延を知りたい端末をRequesterと呼び、その相手となる端末をResponderと呼ぶ。
【0072】
Requester(の同期制御部306)は、Pdelay_ReqフレームをResponderに送信し、その送信時刻を、t1として記録する(例えば、記憶装置202の同期情報記憶領域に)。
【0073】
Responder(の同期制御部306)は、Pdelay_Reqフレームを受信した時刻を、t2として記録する(例えば、記憶装置202の同期情報記憶領域に)。その後、Responder(の同期制御部306)は、Pdelay_Respフレームを生成してRequesterに送信し、その送信時刻を、t3として記録する(例えば、記憶装置202の同期情報記憶領域に)。Requester(の同期制御部306)は、Pdelay_Respフレームを受信した時刻を、t4として記録する(例えば、記憶装置202の同期情報記憶領域に)。
【0074】
その後、Responder(の同期制御部306)は、D2=t3-t2をPdelay_Resp_Follow_Upフレームに格納してRequesterに送信する。これにより、Requester(の同期制御部306)は、peerMeanPathDelay={(t4-t1)-(t3-t2)}/2として、伝送路遅延を求めることができる。
【0075】
伝送路遅延測定を行う回数は、基本的に、Syncメッセージ送信開始時及びSyncメッセージ送信元変更時の1回であってよい。
【0076】
-タイムスタンプ取得
IEEE1588を実装したイーサネット機器では、パケットのMACヘッダの先頭が当該機器と回線との境界を超えるときに、その時刻をタイムスタンプとして採取(取得)する。本実施の形態においては、同期制御部306は、
図5の矢印で示す「TMI(Tone Map Index)」直後の「Tail」の先頭が自端末と回線との境界を超えるときに、自端末のタイマにトリガ信号を通知し、その時刻をタイムスタンプとして採取(取得)する。
【0077】
図6は、フレーム受信時のタイムスタンプ取得の例を示すフローチャートである。
【0078】
ステップS601において、端末(例えば、Responder)は、フレームの受信を開始する。
【0079】
ステップS602において、端末の同期制御部306は、フレーム内でTMIシンボルの受信が完了したか否かを判断する。
【0080】
フレーム内でTMIシンボルの受信が完了していない場合(ステップS602;NO)、フローはステップS602に戻る。
【0081】
一方、フレーム内でTMIシンボルの受信が完了した場合(ステップS602;YES)、ステップS603において、端末の同期制御部306は、タイムスタンプを取得する。
【0082】
なお、フレーム送信時(例えば、Requesterによるフレームの送信時)のタイムスタンプ取得については、上記の「受信」が「送信」に読み替えられてよい。
【0083】
以上のようにして取得されたタイムスタンプが、上記時刻(例えば、t1~t4)として記録されることになる。
【0084】
本実施の形態において、Syncパケット等(すなわち、ブロードキャストパケット)は、ユニキャストパケットの中継パス情報(マルチホップトポロジーを作成するために収集される、例えば
図1A及び
図1Bに示すのと同様のいわゆるルート情報と呼ばれる情報)に基づいて、中継される。例えば
図7に示す例では、
図1A及び
図1Bに示すのと同じ、端末間の通信コスト評価結果から、太線で示すブロードキャスト用のルート情報が形成される。これにより、全パス中継に対して転送回数を4回に削減できる。また、ループも発生しない。なお、全端末同期後には、転送回数は3回に削減される。
【0085】
このようにすることで、マスタ端末から末端端末まで複数の中継経路が存在し得る通信システムにおいて、Syncパケットが全方向に中継されて無限ループになることや、無駄なSyncパケット中継が発生することを抑制又は防止することができる。
【0086】
本実施の形態において、各端末は、下記情報をトポロジー管理部304又は記憶装置202に保持している。
・自端末が中継端末であるか否か
・マスタ端末からのパケットを受信する1台の上位中継端末(なお、上位中継端末は必ず1台である)(ルート情報の一部)
・マスタ端末からのパケットを中継する下位端末(0~n台)(ルート情報の一部)
【0087】
上記の情報を利用して、各パスの中継元を仮想TCマスタポート、中継先を仮想TCスレーブポートとすることで、Syncパケット中継ルートを構築することができる。
【0088】
図8は、
図7に示す例におけるパスの仮想TCマスタポート及び仮想TCスレーブポートを示す図である。なお、図中、Mは、仮想TCマスタポートを表し、Sは、仮想TCスレーブポートを表す。
【0089】
このように、マルチホップシステム情報を利用することで、当該システム上でIEEE1588トポロジーを効率的に構成することができる。図示する例において、TCマスタポートから送出されるSyncパケットはマルチキャストパケットであるので、1回の同期でのSyncパケット数は4つ(マスタ端末M 10から端末A 20A及び端末B 20B、端末A 20Aから端末C 20C及び端末E 20E、端末B 20Bから端末D 20D、端末E 20Eから端末F 20F)となる。
【0090】
なお、本実施の形態において、自端末の1つ上位の端末以外の端末からのフレームも到着する可能性があるため、TCスレーブ(ポート)は、以下を行う。
・上位端末情報を獲得し、送信元が1つ上位の端末以外のSyncフレーム及びFollow Upフレームを破棄する。
・ユニキャストフレームを用いて、Pdelay_Reqフレームを上位端末に送信する。
・自端末が中継端末又はマスタ端末であり、Pdelay_Reqフレームを受信する場合、ユニキャストのPdelay_Reqフレームのみを受信し、送信元(ソース)アドレスと送信先(デスティネーション)アドレスとを入れ替えて、Pdelay_Respフレーム及びPdelay_Resp_Follow_Upフレームをユニキャスト送信する。
・Pdelay_Respフレーム及びPdelay_Resp_Follow_Upフレームを受信する場合、ユニキャストのPdelay_Respフレーム及びPdelay_Resp_Follow_Upフレームのみを受信し、マルチキャストのPdelay_Respフレーム及びPdelay_Resp_Follow_Upフレームを破棄する。
【0091】
また、本実施の形態において、自端末と無関係のパスを介するSyncパケット中継を防ぐために、TCマスタ(ポート)は、以下を行う。
・初期状態では、Syncパケット及び同様のパケットを送信しない。
・通常のPLCフレームの規則に従って、Announceをブリッジする。
・Announceを認識した端末によって上位端末が存在するか確認され、上位端末が存在する場合にはPdelay_Reqフレームを送信する。
・Pdelay_Respフレーム、Pdelay_Resp_Follow_Upフレームを受信できた場合には、端末によって下位端末数が確認され、下位端末が1台以上存在する場合には、Syncフレーム、Follow Upフレームをブリッジする(ネットワークが再構成されない限り、ブリッジを続ける)。
・ネットワークが再構成される場合(トポロジーが変化した場合)には、初期状態になる。
【0092】
これにより、1つの通信媒体を使用するPLC(例えば、HD-PLC)においても、複数仮想通信パスを構築することができる。
【0093】
-グローバルクロック機能
IEEE1588対応端末は、自端末が有するタイマ(自端末タイマ又は自己タイマとも呼ぶ)の時刻をグローバルな時刻に合わせる必要はないが、中継するSyncパケットや、TC機能として獲得する伝送遅延情報を利用して、自己タイマをグローバルな時刻に合わせることも可能である。
【0094】
このために、各端末は、Two-Step Syncメッセージ及びFollow Upメッセージをスニフして、自端末のタイマの時刻調整及びクロック周期補正を行う。また、Ordinary Clock Masterが存在しなくても同期を取ることができるように、オプションとして、マスタ端末が、Two-Step Syncメッセージ及びFollow Upメッセージを生成できるようにしてもよい。
【0095】
-タイマ時刻調整
TC機能を有するIEEE1588対応端末は、上記のように、伝送路遅延情報(peerMeanPathDelay)(pt1)と、Two-Step Syncメッセージ受信時刻(dt1)と、Two-Step Syncメッセージ中のCollection Field(CF1)と、Follow Upメッセージ中のTwo-Step Syncメッセージ送信時刻(t1)と、Follow Upメッセージ中のCollection Field(CF2)と、を有する。
【0096】
Ordinary Master ClockにおけるTwo-Step Syncメッセージ受信時刻をtxとすると、tx=t1+CF1+CF2+pt1であるので、Ordinary Master Clockに対する自端末クロック(自己クロック)の補正値gは、以下のように算出できる。
g=t1+CF1+CF2+pt1-dt1
【0097】
上記の遅延情報及び時刻情報に基づいて、端末が有するクロックがOrdinary Master Clockに合わせられる(補正される)。なお、本実施の形態(例えば、HD-PLC)では、システム全体で媒体を共有する方式が用いられるので、補正に要するパケット数をできるだけ少なくすることが望ましい。
【0098】
補正には、時刻補正及びクロック周期補正の2種類の補正が含まれる。
【0099】
時刻補正については、Syncパケット及び対応するFollow Upパケットを受信し、当該パケットの転送処理を行った後、同期制御部306は、自己タイマの時刻を、補正値gずらすように制御する。
【0100】
クロック周期補正については、同期制御部306は、時刻の補正値g0及び補正評価時刻At経過後の補正値gtから、誤差変化量dt=gt-g0を求め、クロック周期Tを、T・(1+α・dt/At)に補正するように制御する。
【0101】
例えば、クロック発信器の性能が50ppmである場合、Sync周期を15秒、At(誤差変化量計測時刻)を15秒、α(クロック同期補正係数)を2.1600499167(1000000000×4.638671875×2/4294967296)とすると、30秒の補正期間後、100ナノ秒の精度でOrdinary Master Clockに自己クロックを同期させることができる。
【0102】
[ブロードキャスト同期送信の概括的な動作例]
上記のようにIEEE1588を適用することにより、通信システム1内の全ての端末のクロック同期が確立されているものとし、クロック同期が確立されている状態で複数の端末に同時に(同期して)ブロードキャストフレームを送信させる際の効率化を図る動作手順例について説明する。以下の説明において、HD-PLCの準拠するIEEE1901-2020のフレームフォーマットを通信フレームの一例として説明する。なお、IEEE1901-2020の通信フレームフォーマットは、TTC(Telecommunication Technology Committee:情報通信技術委員会)標準JJ-300.20v2の
図7.38(FCW MPDU frame format)でも同一の通信フレームフォーマットを定義する。
図9は、TTC標準JJ-300.20v2の
図7.38(IEEE1901-2020のFigure 6-17)に示される通信フレームフォーマットであって、本開示の実施の形態に係る通信フレームフォーマット例を示す図である。
【0103】
同時ブロードキャストフレーム送信を利用するための制約として、同時に送信するフレームの送信データは同じである必要がある。そのために、送信(通信)フレームフォーマットは、以下の構成をとってよい。
・フレーム中の送信先アドレス(
図9に示すDA(Destination Address))は、ブローキャストアドレス(FF-FF-FF-FF-FF-FF)又は特定のマルチキャストアドレス(01-00-5E―XX-XX―XX)(XX-XX-XXはシステムで規定する任意の値)に固定される。
・フレーム中の送信元アドレス(
図9に示すSA(Source Address))は、最初にブロードキャストフレームを送信する端末(以下、初期送信端末と呼ぶ)のアドレス(最初の送信元アドレス)である(中継端末のアドレスではない)。
・フレーム中の初期化ベクトル(
図9に示すIV(Initialization Vector))は、初期送信端末によって生成され、全ての中継フレームで同一である(コピーされる)。
【0104】
なお、IVは、フレームを暗号化するためのシード(Seed)として利用されてよい。例えば、マスタ端末からブロードキャスト通信を行う場合、マスタ端末が生成したIVを中継端末に通知することで、各中継端末によって生成されるブロードキャストフレームが同一となる。結果として、各中継端末から同時に送信されるフレームは同一であるので、衝突が発生しても、他の端末はフレームを受信することができる。
【0105】
図10は、ブロードキャストフレーム同期送信の概括的な動作例を示すフローチャートである。なお、以下で説明するフィールド以外の、フレーム中の他のフィールドには、適切な値が適宜設定(格納)されるものとする。
【0106】
ステップS1001において、端末の同期制御部306は、ブロードキャストアドレス(FF-FF-FF-FF-FF-FF)又は特定のマルチキャストアドレス(01-00-5E―XX-XX―XX)をフレームの送信先アドレスに格納する。
【0107】
ステップS1002において、端末の同期制御部306は、初期送信端末のアドレスをフレームの送信元アドレスに格納する。
【0108】
ステップS1003において、端末の同期制御部306は、自端末が初期送信端末であるか否かを判断する。
【0109】
自端末が初期送信端末である場合(ステップS1003;YES)、ステップS1004において、端末の同期制御部306は、IVを生成してフレームに格納する。
【0110】
一方、自端末が初期送信端末でない場合(ステップS1003;NO)、ステップS1005において、端末の同期制御部306は、受信した(ブロードキャスト)フレームからIVをコピーしてフレームに格納する。
【0111】
ステップS1006において、端末の同期制御部306は、上記のように情報を格納することにより生成したフレームをブロードキャスト送信する。
【0112】
[ブロードキャスト同期送信の動作手順例1]
本動作手順例1では、まず、初期送信端末は、バックオフ等で送信権を獲得し、最初のブロードキャストフレームを送信する。例えば、初期送信端末が、
図2に示すマスタ端末M 10であるものとする。
【0113】
次いで、マスタ端末M 10によって送信されたブロードキャストフレームを受信した中継端末(例えば、
図2に示す端末A 20A及び端末B 20B)は、フレーム長から算出されたインターバル時間を受信開始時刻に加算し、その加算結果の時刻に、ブロードキャストフレームを中継送信する。なお、中継端末は、一度中継送信したフレームを、他の端末から受信したとしても、再送信を行わない。
【0114】
以降、同様の動作が繰り返される。すなわち、中継端末によって送信されたブロードキャストフレームを受信した中継端末は、上述したようにブロードキャストフレームの送信を行う。
【0115】
以上、動作手順例1によれば、初期送信端末(例えば、マスタ端末M 10)から同じホップ数の位置に存在する(例えば、端末A 20A及び端末B 20B)が、同期を取ってブロードキャストフレームを送信することにより、ブロードキャスト送信によるメディア占有時間を削減することができる。例えば、
図2に示す例では、
図11に示すように、3回のブロードキャスト送信ですみ、メディア占有時間を削減することができる。また、同期を取ってブロードキャストフレームを送信することにより、衝突が発生せず又は抑制され、例えば、
図2に示す端末C 20Cは、ブロードキャストフレームを受信することができる可能性が高くなる。また、上記のようにIEEE1588に準拠するように同期を取ることにより、高精度で同期を取ることが可能である。
【0116】
[ブロードキャスト同期送信の動作手順例2]
本動作手順例2では、上記の動作手順例1に加えて、以下が追加される。
【0117】
初期送信端末はマスタ端末であるようにする。したがって、マスタ端末以外の端末がブロードキャストフレームを送信することを望む場合には、当該端末(例えば、端末C 20C)は、ブロードキャストフレームをマスタ端末(マスタ端末M 10)宛のユニキャストフレームに変換して、ユニキャストフレームをマスタ端末に送信する(例えば、端末A 20Aを経由して)。このことが、
図12の時間区間[t0,t1]に示されている。なお、当該端末がマスタ端末に送信するユニキャストフレームには、(マスタ端末から)ブロードキャストフレームを送信することを示す情報(例えば、フラグ)が含まれてよい。
【0118】
次いで、当該ユニキャストフレームを受信したマスタ端末は、ユニキャストフレームをブロードキャストフレームに戻して(再変換して)送信する。このことが、
図12の時間区間[t1,t3]に示されている(動作手順例1と同様である)。
【0119】
そして、マスタ端末は、トポロジー情報から最大中継回数を算出して、中継完了に要する時間が経過するまで、次のフレームを送信しない。
【0120】
以上、動作手順例2によれば、異なるブロードキャストフレームが衝突することを完全に回避することができる。例えば、隠れ端末状態にある複数の端末が、互いの通信状態を把握できずに通信が重なるタイミングでブロードキャスト送信を開始した場合に衝突が発生し、衝突したフレームがそのままロストしまう状況を回避することができる。
【0121】
[ブロードキャスト同期送信の動作手順例3]
本動作手順例3では、周期的にブロードキャスト専用送信期間が設定される。なお、本動作手順例3を適用するに際し、上記の動作手順例1又は2の少なくとも一部が適用されるものとする。
【0122】
より具体的には、システム内の現在時刻の特定条件(すなわち、特定条件を満たす時間(ブロードキャスト専用送信期間))において、基本的に送信は抑制され(少なくともユニキャスト送信は行われず)、マスタ端末及び中継端末は、現在時刻の特定条件においてブロードキャストフレームを送信する。
【0123】
このような送信制御の一例について、
図13を参照して説明する。
【0124】
本例において、50ミリ秒単位の周期で5ミリ秒のブロードキャスト送信期間を設定するものとする。
【0125】
現在時刻をミリ秒単位で表した値をβとして、0≦β mod 50≦5である期間は、基本的に送信は抑制される。
【0126】
マスタ端末にID:0を割り当て、Nホップ目(N段目)の中継端末にID:Nを割り当て、floor(β/50) mod (M+1)=ID(Nの最大値をMとする)である期間に、当該IDが割り当てられた端末は、ブロードキャストフレームを送信する。なお、Nは中継端末のホップ数を表す(マスタ端末及び末端端末はホップ数に含められない)。
【0127】
図13は、M=2である(例えば
図1Aに示すような3ホップのマルチホップシステムである)場合のブロードキャスト専用期間におけるブロードキャストフレーム送信例を示す図である。
【0128】
図13に示すように、ブロードキャスト送信期間P0では、マスタ端末がブロードキャスト送信を行い、ブロードキャスト送信期間P1では、1ホップ目の中継端末がブロードキャスト送信を行い、ブロードキャスト送信期間P2では、2ホップ目の中継端末がブロードキャスト送信を行う。
【0129】
上記において、マスタ端末にID:0が割り当てられる例を示したが、本開示はこの例に限定されない。初期送信端末にID:0を割り当て、初期送信端末からKホップ目に存在する端末にID:Kを割り当てるようにしてもよい。
【0130】
以上、動作手順例3によれば、ブロードキャストフレームとユニキャストフレームとの衝突を回避できる。例えば、ある端末がブロードキャストフレーム送信を開始し、別の端末がユニキャストフレーム送信を開始した場合に衝突が発生し、衝突したブロードキャストフレームがロストしまう状況を回避することができる。
【0131】
[ブロードキャスト同期送信の動作手順例4]
本動作手順例4でも、上記の動作手順例3と同様に、周期的にブロードキャスト専用送信期間が設定されるが、ブロードキャストフレーム送信端末に関する条件が変更される。なお、本動作手順例4を適用するに際し、上記の動作手順例1、2又は3の少なくとも一部が適用されるものとする。
【0132】
【0133】
本例において、50ミリ秒単位の周期で5ミリ秒のブロードキャスト送信期間を設定するものとする。
【0134】
現在時刻をミリ秒単位で表した値をβとして、0≦β mod 50≦5である期間は、基本的に送信は抑制される。
【0135】
図14Aに示すように、マスタ端末にID:0を割り当て、Nホップ目(N段目)の中継端末にID:N mod kを割り当てる。そして、floor(β/50) mod (L+1)=ID(N mod kの最大値をLとする)である期間に、当該IDが割り当てられた端末は、ブロードキャストフレームを送信する。なお、Nは中継端末のホップ数を表す(マスタ端末はホップ数に含められない)。
【0136】
図14Bは、N=10かつk=4である場合のブロードキャスト専用期間におけるブロードキャストフレーム送信例を示す図である。
【0137】
図14Bに示すように、ブロードキャスト送信期間P0では、ID:0が割り当てられたマスタ端末並びに4ホップ目及び8ホップ目の中継端末がブロードキャスト送信を行い、ブロードキャスト送信期間P1では、ID:1が割り当てられた1ホップ目、5ホップ目及び9ホップ目の中継端末がブロードキャスト送信を行い、ブロードキャスト送信期間P2では、ID:2が割り当てられた2ホップ目、6ホップ目及び10ホップ目の中継端末がブロードキャスト送信を行い、ブロードキャスト送信期間P3では、ID:3が割り当てられた3ホップ目及び7ホップ目の中継端末がブロードキャスト送信を行う。
【0138】
ここで、端末N2について検討する。マスタ端末Mから連続してブロードキャストフレームを送信すると、ある時刻において、端末N1と端末N9、N10、N11とが異なるブロードキャストフレームを同時(同期)送信する。しかしながら、端末N1と端末N2との間は1ホップであるのに対し、端末N2と端末N9、N10、N11との間は3ホップである。よって、端末N1のブロードキャストフレームが、同時送信された端末N9、N10、N11のブロードキャストフレームに影響を及ぼすことはなく、逆も同様である。
【0139】
したがって、ホップ数の異なる同IDが割り当てられた端末間では、異なるブロードキャストフレームが同時送信されることがあるが、受信エラーとはならない。これは、マルチホップのトポロジー形成の性質上、中継ホップ数が特定以上離れると送信波は必ず減衰しているからである。これにより、中継時間をL/Mにすることができ、スループットをM/L倍にすることができる。
【0140】
なお、kは、経験則上十分に大きい値に設定されてもよいし、マスタ端末によって端末間の現在の減衰状態(端末間のCINR値、PHY速度等)に基づいて算出及び設定されてもよいし、他の方法により設定されてもよい。
【0141】
以上、動作手順例4によれば、ブロードキャストフレームとユニキャストフレームとの衝突を回避するとともに、中継ホップ数が増えた場合に、ブロードキャストフレームの中継に要する時間が増大するのを抑制し、スループットが低下するのを抑制することができる。
【0142】
上記の動作手順例1~4は、アプリケーションに応じて切り替えられてもよい。また、上記の動作手順例1~4の全てが、端末において実装される必要はない。
【0143】
例えば、アプリケーションのプロトコルとして、通信によるメディア占有時間が極端に小さく、かつ、端末が同時刻に通信パケットを生成しない場合には、動作手順例1が用いられてもよいし、動作手順例1のみが実装されてもよい。また、マスタ端末のみがブロードキャストフレームを送信するアプリケーションでも、動作手順例1が用いられてもよいし、動作手順例1のみが実装されてもよい。
【0144】
<実施の形態における効果>
本実施の形態に係る中継端末(例えば、端末A 20A)は、マルチホップ通信が行われる通信システム1における中継通信装置である。中継端末の通信装置203は、通信システム1における第1端末(例えば、マスタ端末M 10)からブロードキャスト送信されたフレームを受信し、フレームをブロードキャスト送信する。中継端末の同期制御部306は、第1端末からブロードキャスト送信されたフレームを受信した、通信システム1における第3端末(例えば、端末B 20B)がフレームをブロードキャスト送信するタイミングと、中継端末の通信装置203がフレームをブロードキャスト送信するタイミングと、を同期させる。本実施の形態によれば、中継端末(例えば、端末A 20A)と第2端末(例えば、端末B 20B)との間でタイミングを同期してフレームをブロードキャスト送信することで、メディア占有時間を短縮することができる。また、本実施の形態によれば、中継端末及び第2端末からブロードキャストフレームが同期送信されるので、衝突が発生せず又は抑制され、通信システム1における第3端末(例えば、端末C 20C)は、ブロードキャストフレームを受信することができる可能性が高くなる。よって、通信ネットワークにおいてブロードキャスト送信を適切に行うことができる。
【0145】
<変形例>
同期制御部として衛星を用いたGPS/GNSS受信機からの同期信号を使用して複数端末間の同期を行ってもよい。
【0146】
また、上述した実施の形態において、CPU201の機能部は、適宜、他の機能部と統合されてもよいし、2つ以上のサブ機能部に分割されてもよい。
【0147】
また、上述した実施の形態において、フローチャート等に示すステップの順番は、図示するものに限定されない。
【0148】
<実施の形態のまとめ>
本開示の一実施例に係る中継通信装置は、第1通信装置からブロードキャスト送信された第1信号を受信する受信部と、前記第1信号をブロードキャスト送信する送信部と、前記第1通信装置からブロードキャスト送信された第1信号を受信した第2通信装置が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、前記送信部が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、を同期させる同期制御部と、を備える。
【0149】
本中継通信装置において、前記送信部は、前記中継通信装置と前記第1通信装置と前記第2通信装置とを含む通信システムにおけるマスタ通信装置に、前記第1信号をブロードキャスト送信することを示す情報を含む第2信号をユニキャスト送信し、前記受信部は、前記マスタ通信装置によって前記第2信号からブロードキャスト送信用に変換された前記第1信号を受信する。
【0150】
本中継通信装置において、前記同期制御部は、前記第2通信装置が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、前記送信部が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、を、ブロードキャスト送信に専用の期間において同期させる。
【0151】
本中継通信装置において、前記第1通信装置から前記中継通信装置までのホップ数と前記第1通信装置から前記第2通信装置までのホップ数とは、同一である。
【0152】
本中継通信装置において、前記同期制御部は、IEEE1588に準拠させて、前記第2通信装置が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、前記送信部が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと、を同期させる。
【0153】
本開示の一実施例に係る通信方法は、中継通信装置が、第1通信装置からブロードキャスト送信された第1信号を受信し、前記第1通信装置からブロードキャスト送信された第1信号を受信した第2通信装置が前記第1信号をブロードキャスト送信するタイミングと同期させて、前記第1信号をブロードキャスト送信する。
【0154】
本開示の一実施例に係る通信システムは、第1通信装置と、前記第1通信装置からブロードキャスト送信された信号を受信し、同期して前記信号をブロードキャスト送信する第2通信装置及び第3通信装置と、前記第2通信装置及び前記第3通信装置が同期してブロードキャスト送信した前記信号を受信する第4通信装置と、を備える。
【0155】
上述の実施の形態においては、各構成要素に用いる「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0156】
以上、図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかである。そのような変更例又は修正例についても、本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態における各構成要素は任意に組み合わされてよい。
【0157】
本開示はソフトウェア、ハードウェア、又は、ハードウェアと連携したソフトウェアで実現することが可能である。上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、部分的に又は全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上記実施の形態で説明した各プロセスは、部分的に又は全体的に、一つのLSI又はLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部又は全てを含むように一つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力を備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0158】
集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサ又は専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。本開示は、デジタル処理又はアナログ処理として実現されてもよい。
【0159】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0160】
本開示は、通信機能を持つあらゆる種類の装置、デバイス、システム(通信装置と総称)において実施可能である。通信装置は無線送受信機(トランシーバー)と処理/制御回路を含んでもよい。無線送受信機は受信部と送信部、またはそれらを機能として、含んでもよい。無線送受信機(送信部、受信部)は、RF(Radio Frequency)モジュールと1または複数のアンテナを含んでもよい。RFモジュールは、増幅器、RF変調器/復調器、またはそれらに類するものを含んでもよい。通信装置の、非限定的な例としては、電話機(携帯電話、スマートフォン等)、タブレット、パーソナル・コンピューター(PC)(ラップトップ、デスクトップ、ノートブック等)、カメラ(デジタル・スチル/ビデオ・カメラ等)、デジタル・プレーヤー(デジタル・オーディオ/ビデオ・プレーヤー等)、着用可能なデバイス(ウェアラブル・カメラ、スマートウオッチ、トラッキングデバイス等)、ゲーム・コンソール、デジタル・ブック・リーダー、テレヘルス・テレメディシン(遠隔ヘルスケア・メディシン処方)デバイス、通信機能付きの乗り物又は移動輸送機関(自動車、飛行機、船等)、及び上述の各種装置の組み合わせがあげられる。
【0161】
通信装置は、持ち運び可能又は移動可能なものに限定されず、持ち運びできない又は固定されている、あらゆる種類の装置、デバイス、システム、例えば、スマート・ホーム・デバイス(家電機器、照明機器、スマートメーター又は計測機器、コントロール・パネル等)、自動販売機、その他IoT(Internet of Things)ネットワーク上に存在し得るあらゆる「モノ(Things)」をも含む。
【0162】
通信には、セルラーシステム、無線LANシステム、通信衛星システム等によるデータ通信に加え、これらの組み合わせによるデータ通信も含まれる。
【0163】
また、通信装置には、本開示に記載される通信機能を実行する通信デバイスに接続又は連結される、コントローラやセンサー等のデバイスも含まれる。例えば、通信装置の通信機能を実行する通信デバイスが使用する制御信号やデータ信号を生成するような、コントローラやセンサーが含まれる。
【0164】
また、通信装置には、上記の非限定的な各種装置と通信を行う、あるいはこれら各種装置を制御する、インフラストラクチャ設備、例えば、基地局、アクセスポイント、その他あらゆる装置、デバイス、システムが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本開示の一実施例は、マルチホップ通信システムに有用である。
【符号の説明】
【0166】
1 通信システム
10 マスタ端末M
20A~20E 中継端末A~E
20F 末端端末
100 端末
201 CPU
202 記憶装置
203 通信装置
204 機器インターフェース装置
301 パケット解析部
302 認証処理部
303 リンクコスト算出部
304 トポロジー管理部
305 パケット生成部
306 同期制御部