(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052157
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ハイサイドトランジスタの駆動回路、それを用いたD級アンプ回路、コンバータコントローラ回路、ハイサイドスイッチ回路
(51)【国際特許分類】
H03K 17/687 20060101AFI20240404BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20240404BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20240404BHJP
H03F 3/217 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H03K17/687 A
H02M3/155 H
H02M1/08 A
H03F3/217
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158678
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 光輝
【テーマコード(参考)】
5H730
5H740
5J055
5J500
【Fターム(参考)】
5H730AS05
5H730BB13
5H730DD04
5H730DD26
5H730EE13
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH05
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5H740JB01
5J055AX05
5J055AX14
5J055BX16
5J055DX13
5J055DX22
5J055EY05
5J055EY10
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5J055EZ57
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5J055FX05
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5J055GX01
5J055GX02
5J500AA01
5J500AA66
5J500AC05
5J500AC37
5J500AF18
5J500AH10
5J500AH19
5J500AH29
5J500AH33
5J500AH38
5J500AK18
5J500AK24
5J500AK62
(57)【要約】
【課題】低電圧状態で動作可能な駆動回路を提供する。
【解決手段】駆動回路300Aは、入力信号HINにもとづいてハイサイドトランジスタMHを駆動する。レベルシフト回路320Aは、入力信号HINをレベルシフトする。ハイサイドドライバ310は、レベルシフト回路320Aの出力にもとづいてハイサイドトランジスタMHを駆動する。第1トランジスタM1および第2トランジスタM2はラッチ回路322を構成する。第3トランジスタM3および第4トランジスタM4は、PチャンネルのDMOSトランジスタである。第7トランジスタM7および第8トランジスタM8は、NチャンネルのDMOSトランジスタであり、第3トランジスタM3、第4トランジスタM4と並列に接続されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイサイドトランジスタの駆動回路であって、
入力信号をレベルシフトするレベルシフト回路と、
前記レベルシフト回路の出力にもとづいて前記ハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、
を備え、
前記レベルシフト回路は、
出力側ハイレベルラインと、
出力側ローレベルラインと、
前記出力側ハイレベルラインと接続されたソースを有するPMOSトランジスタである第1トランジスタと、
前記出力側ハイレベルラインと接続されたソースを有するPMOSトランジスタである第2トランジスタと、
前記出力側ローレベルラインと接続されるゲートと、前記第1トランジスタのドレインと接続されるソースと、を有する、PDMOSトランジスタである第3トランジスタと、
前記出力側ローレベルラインと接続されるゲートと、前記第2トランジスタのドレインと接続されるソースと、を有する、PDMOSトランジスタである第4トランジスタと、
前記第3トランジスタのドレインと接地の間に接続されるNMOSトランジスタである第5トランジスタと、
前記第4トランジスタのドレインと接地の間に接続されるNMOSトランジスタである第6トランジスタと、
前記第1トランジスタのドレインと前記接地の間に、前記第3トランジスタおよび前記第5トランジスタの直列接続と並列に接続された、NDMOSトランジスタである第7トランジスタと、
前記第2トランジスタのドレインと前記接地の間に、前記第4トランジスタおよび前記第6トランジスタの直列接続と並列に接続された、NDMOSトランジスタである第8トランジスタと、
減電圧時に、前記入力信号に応じて、前記第7トランジスタおよび前記第8トランジスタを駆動する補助ドライバ回路と、
を備える、駆動回路。
【請求項2】
前記ハイサイドトランジスタは、NMOSトランジスタである、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記ハイサイドトランジスタは、PMOSトランジスタである、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項4】
車載機器に使用され、
前記ハイサイドトランジスタに入力される電圧が、10Vより低いとき、前記補助ドライバ回路はアクティブとなる、請求項1から3のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項5】
入力ラインと出力ラインの間に接続されたハイサイドトランジスタと、
前記出力ラインと接地の間に接続されたローサイドトランジスタと、
前記ハイサイドトランジスタを駆動する請求項1から3のいずれかに記載の駆動回路と、
を備える、D級アンプ回路。
【請求項6】
ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを備える降圧DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラ回路であって、
前記降圧DC/DCコンバータの出力が目標状態に近づくように、ハイサイドパルス信号を生成するフィードバック回路と、
前記ハイサイドパルス信号にもとづいて、前記ハイサイドトランジスタを駆動する請求項1から3のいずれかに記載の駆動回路と、
を備える、コンバータコントローラ回路。
【請求項7】
入力端子と、
出力端子と、
制御端子と、
前記入力端子と前記出力端子の間に接続されたハイサイドトランジスタと、
前記制御端子に入力される信号にもとづいて、前記ハイサイドトランジスタを駆動する請求項1から3のいずれかに記載の駆動回路と、
を備える、ハイサイドスイッチ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイサイドトランジスタの駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる電圧レベルを有する電源電圧が供給される2つの回路ブロックの間で、デジタル信号を送受するために、レベルシフト回路が利用される。受信側の回路ブロックの電源電圧の方が高い場合には、レベルシフト回路は、レベルシフトアップ回路と称され、受信側の回路ブロックの電源電圧の方が低い場合には、レベルシフト回路は、レベルシフトダウン回路と称される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車載機器に使用されるIC(Integrated Circuit)では、受信側の回路ブロックは、バッテリ電圧VBATを電源電圧として動作する。車載ICでは、通常状態ではVBAT=12~14.4Vで動作することが要求され、さらに、非常時動作として、VBATが5V付近まで低下した場合にも、動作することが求められる場合がある。
【0004】
本開示は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、低電圧状態で動作可能な駆動回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のある態様は、ハイサイドトランジスタの駆動回路に関する。駆動回路は、入力信号をレベルシフトするレベルシフト回路と、レベルシフト回路の出力にもとづいて、ハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、を備える。レベルシフト回路は、出力側ハイレベルラインと、出力側ローレベルラインと、出力側ハイレベルラインと接続されたソースを有するPMOSトランジスタである第1トランジスタと、出力側ハイレベルラインと接続されたソースを有するPMOSトランジスタである第2トランジスタと、出力側ローレベルラインと接続されるゲートと、第1トランジスタのドレインと接続されるソースと、を有する、PDMOSトランジスタである第3トランジスタと、出力側ローレベルラインと接続されるゲートと、第2トランジスタのドレインと接続されるソースと、を有する、PDMOSトランジスタである第4トランジスタと、第3トランジスタのドレインと接地の間に接続されるNMOSトランジスタである第5トランジスタと、第4トランジスタのドレインと接地の間に接続されるNMOSトランジスタである第6トランジスタと、第1トランジスタのドレインと接地の間に、第3トランジスタおよび第5トランジスタの直列接続と並列に接続された、NDMOSトランジスタである第7トランジスタと、第2トランジスタのドレインと接地の間に、第4トランジスタおよび第6トランジスタの直列接続と並列に接続された、NDMOSトランジスタである第8トランジスタと、減電圧時に、入力信号に応じて、第7トランジスタおよび第8トランジスタを駆動する補助ドライバ回路と、を備える。
【0006】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0007】
本開示のある態様によれば、低電圧状態で動作可能な駆動回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、ハイサイドトランジスタを備える半導体集積回路のブロック図である。
【
図2】
図2は、比較技術に係るレベルシフト回路を備える半導体集積回路の回路図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るレベルシフト回路を備える半導体集積回路の回路図である。
【
図4】
図4は、低電圧検出回路および補助ドライバ回路の構成例を示す回路図である。
【
図5】
図5は、ハイサイドトランジスタがPMOSトランジスタであるスイッチング回路のブロック図である。
【
図6】
図6は、オーディオシステムのブロック図である。
【
図7】
図7は、降圧コンバータのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0010】
一実施形態に係るハイサイドトランジスタの駆動回路は、入力信号をレベルシフトするレベルシフト回路と、レベルシフト回路の出力にもとづいてハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、を備える。レベルシフト回路は、出力側ハイレベルラインと、出力側ローレベルラインと、出力側ハイレベルラインと接続されたソースを有するPMOSトランジスタである第1トランジスタと、出力側ハイレベルラインと接続されたソースを有するPMOSトランジスタである第2トランジスタと、出力側ローレベルラインと接続されるゲートと、第1トランジスタのドレインと接続されるソースと、を有する、PDMOSトランジスタである第3トランジスタと、出力側ローレベルラインと接続されるゲートと、第2トランジスタのドレインと接続されるソースと、を有する、PDMOSトランジスタである第4トランジスタと、第3トランジスタのドレインと接地の間に接続されるNMOSトランジスタである第5トランジスタと、第4トランジスタのドレインと接地の間に接続されるNMOSトランジスタである第6トランジスタと、第1トランジスタのドレインと接地の間に、第3トランジスタおよび第5トランジスタの直列接続と並列に接続された、NDMOSトランジスタである第7トランジスタと、第2トランジスタのドレインと接地の間に、第4トランジスタおよび第6トランジスタの直列接続と並列に接続された、NDMOSトランジスタである第8トランジスタと、減電圧時に、入力信号に応じて、第7トランジスタおよび第8トランジスタを駆動する補助ドライバ回路と、を備える。
【0011】
ハイサイドトランジスタの一端に供給される入力電圧が低下すると、第3トランジスタおよび第4トランジスタが制御不能となり、第1トランジスタおよび第2トランジスタを含むラッチ回路に、入力信号を伝えることができなくなる。この低電圧状態において、第7トランジスタおよび第8トランジスタを駆動することで、入力信号を、ラッチ回路に伝えることが可能となり、低電圧状態での動作が可能となる。
【0012】
一実施形態において、ハイサイドトランジスタは、NMOSトランジスタであってもよい。
【0013】
一実施形態において、ハイサイドトランジスタは、PMOSトランジスタであってもよい。
【0014】
一実施形態において、駆動回路は、車載機器に使用されてもよい。ハイサイドトランジスタに入力される電圧が10Vより低いとき、補助ドライバ回路はアクティブとなってもよい。
【0015】
一実施形態において、駆動回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0016】
一実施形態に係るD級アンプ回路は、入力ラインと出力ラインの間に接続されたハイサイドトランジスタと、出力ラインと接地の間に接続されたローサイドトランジスタと、ハイサイドトランジスタを駆動する上述のいずれかの駆動回路と、を備えてもよい。
【0017】
一実施形態に係るコンバータコントローラ回路は、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを備える降圧DC/DCコンバータを制御する。コンバータコントローラ回路は、降圧DC/DCコンバータの出力が目標状態に近づくように、ハイサイドパルス信号を生成するフィードバック回路と、ハイサイドパルス信号にもとづいて、ハイサイドトランジスタを駆動する駆動回路と、を備えてもよい。
【0018】
一実施形態に係るハイサイドスイッチ回路は、入力端子と、出力端子と、制御端子と、入力端子と出力端子の間に接続されたハイサイドトランジスタと、制御端子に入力される信号にもとづいて、ハイサイドトランジスタを駆動する駆動回路と、を備えてもよい。
【0019】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
また図面に記載される各部材の寸法(厚み、長さ、幅など)は、理解の容易化のために適宜、拡大縮小されている場合がある。さらには複数の部材の寸法は、必ずしもそれらの大小関係を表しているとは限らず、図面上で、ある部材Aが、別の部材Bよりも厚く描かれていても、部材Aが部材Bよりも薄いこともあり得る。
【0021】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0023】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタ、インダクタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは回路定数(抵抗値、容量値、インダクタンス)を表すものとする。
【0024】
図1は、ハイサイドトランジスタを備えるスイッチング回路100のブロック図である。半導体集積回路200の入力ピンVINには、入力電圧V
INが供給される。半導体集積回路200は、ハイサイドトランジスタMHおよび駆動回路300を備える。
図1において、ハイサイドトランジスタMHは、NチャンネルMOSFETであり、そのドレインは、入力端子VINと接続され、そのソースが、スイッチングピンSWと接続される。
【0025】
駆動回路300は、入力信号HINに応じて、ハイサイドトランジスタMHを駆動する。たとえば駆動回路300は、入力信号HINがハイのときにハイサイドトランジスタMHをオン、ローのときにハイサイドトランジスタMHをオフする。入力信号HINは、電源電圧VDDをハイレベル、接地電圧をローレベルとするデジタル信号である。
【0026】
ブートストラップピンBSとスイッチングピンSWの間には、ブートストラップキャパシタCBSが外付けされている。ブートストラップキャパシタCBSと整流素子206は、ブートストラップ回路を形成している。整流素子206は、カソードがブートストラップライン202と接続され、アノードに電源電圧VCCを受けるダイオードである。整流素子206は、ハイサイドトランジスタMHと同期してスイッチングする同期整流スイッチであってもよい。
【0027】
レベルシフト回路320は、入力信号HINを受け、ブートストラップライン202の電圧VBSをハイレベル、スイッチングライン204の電圧をローレベルとする制御信号LVSFTを生成する。レベルシフト回路320は、入力側のハイレベルラインINHおよびローレベルラインINLと、出力側のハイレベルラインOUTHおよびローレベルラインOUTLを有している。入力側のハイレベルラインINH、ローレベルラインINLは、入力信号のハイレベル電圧とローレベル電圧に対応する電圧が供給される。また出力側のハイレベルラインOUTH、ローレベルラインOUTLは、レベルシフト回路320の出力信号LVSFTのハイレベル電圧とローレベル電圧に対応する電圧が供給される。
【0028】
ハイサイドドライバ310は、レベルシフト後の制御信号LVSFTにもとづいて、ハイサイドトランジスタMHを駆動する。
【0029】
以上がスイッチング回路100の構成である。
【0030】
図2は、比較技術に係るレベルシフト回路320Rを備える半導体集積回路200Rの回路図である。レベルシフト回路320Rは、第1トランジスタM1~第6トランジスタM6、ドライバ回路330を備える。
【0031】
第1トランジスタM1および第2トランジスタM2それぞれのソースは、ブートストラップライン202と接続される。第1トランジスタM1のゲートは、第2トランジスタM2のドレインと接続され、第2トランジスタM2のゲートは、第1トランジスタM1のドレインと接続され、たすき掛けの形式で接続される第1トランジスタM1および第2トランジスタM2は、ラッチ回路322を形成している。
【0032】
第5トランジスタM5および第6トランジスタM6それぞれのソースは接地されている。第1トランジスタM1と第5トランジスタM5の間には、耐圧保護のために第3トランジスタM3が挿入される。同様に、第2トランジスタM2と第6トランジスタM6の間には、耐圧保護のために、第4トランジスタM4が挿入される。第3トランジスタM3および第4トランジスタM4は、Pチャンネルの二重拡散構造を有するDMOSトランジスタ(Double-Diffused MOSFET)である。第3トランジスタM3および第4トランジスタM4それぞれのゲートは、スイッチングライン204と接続される。第5トランジスタM5および第6トランジスタM6は、DMOSトランジスタで構成してもよい。
【0033】
ドライバ回路330は、入力信号HINのポジティブエッジに応答して、第5トランジスタM5をターンオンし、入力信号HINのネガティブエッジに応答して、第6トランジスタM6をターンオンする。たとえばドライバ回路330は、入力信号HINがハイレベルのときに、制御信号Spをハイレベル、制御信号Snをローレベルとし、入力信号HINがローレベルのときに、制御信号Spをローレベル、制御信号Snをハイレベルとしてもよい。あるいは、ドライバ回路330は、入力信号HINのポジティブエッジから所定時間の間、制御信号Spをハイレベルとし、入力信号HINのネガティブエッジから所定時間の間、制御信号Snをハイレベルとしてもよい。ドライバ回路330の構成は特に限定されない。
【0034】
図2のレベルシフト回路320Rは、入力電圧V
INが十分に高い状態(たとえばV
IN>10V)において正しく動作する。ところが、入力電圧V
INが10Vを下回ると、DMOSトランジスタである第3トランジスタM3および第4トランジスタM4を介して、ラッチ回路322に、信号が正しく伝わらなくなる。
【0035】
したがって、
図2のレベルシフト回路320Rは、入力電圧V
INが10Vを下回る用途において使用することが難しい。
【0036】
続いて、低電圧で動作可能なレベルシフト回路320Aについて説明する。
【0037】
図3は、実施形態に係るレベルシフト回路320Aを備える半導体集積回路200Aの回路図である。レベルシフト回路320Aは、
図2のレベルシフト回路320Rに加えて、第7トランジスタM7、第8トランジスタM8、低電圧検出回路332、補助ドライバ回路334を備える。
【0038】
低電圧検出回路332は、入力電圧VINを監視し、入力電圧VINが所定のしきい値電圧VTHを下回ると、低電圧検出信号UVLOをアサート(たとえばハイレベル)する。
【0039】
補助ドライバ回路334は、低電圧検出信号UVLOがアサートされているとき、制御信号Spに応じて第7トランジスタM7を駆動し、制御信号Snに応じて第8トランジスタM8を駆動する。
【0040】
図4は、低電圧検出回路332および補助ドライバ回路334の構成例を示す回路図である。低電圧検出回路332は、電圧コンパレータCOMP1と、抵抗R11,R12を含む。抵抗R11、R12は、入力電圧V
INを分圧する。電圧コンパレータCOMP1は、分圧後の入力電圧V
IN’を、しきい値電圧V
THと比較し、比較結果を示す低電圧検出信号UVLOを生成する。
【0041】
補助ドライバ回路334は、論理ゲートの組み合わせで構成することができる。たとえば補助ドライバ回路334は、2個のANDゲート336,338を含みうる。ANDゲート336は、UVLO信号と、制御信号Spの論理積を生成し、第7トランジスタM7のゲートに供給する。ANDゲート338は、UVLO信号と、制御信号Snの論理積を生成し、第8トランジスタM8のゲートに供給する。ANDゲート336の出力と第7トランジスタM7のゲートの間に、バッファを追加してもよい。
【0042】
以上が実施形態に係る半導体集積回路200Aの構成である。
【0043】
この半導体集積回路200Aでは、入力電圧VINが低下した状態において、第3トランジスタM3、第4トランジスタM4が制御不能となると、補助ドライバ回路334がイネーブル状態となる。補助ドライバ回路334は、イネーブル状態において、制御信号Spがアサートされると、第7トランジスタM7をターンオンする。これにより、第2トランジスタM2のゲートにローレベルが印加され、ラッチ回路322が第1状態に遷移する。また補助ドライバ回路334は、イネーブル状態において、制御信号Snがアサートされると、第8トランジスタM8をターンオンする。これにより、第1トランジスタM1のゲートにローレベルが印加され、ラッチ回路322が第2状態に遷移する。
【0044】
このように、実施形態に係るレベルシフト回路320Aによれば、低電圧状態においても、入力信号HINに応じたラッチ回路322の状態変化を引き起こすことができ、動作不能となるのを防止できる。
【0045】
ハイサイドトランジスタMHは、PMOSトランジスタであってもよい。
【0046】
図5は、ハイサイドトランジスタがPMOSトランジスタであるスイッチング回路100Bのブロック図である。半導体集積回路200Bは、PMOSトランジスタのハイサイドトランジスタMHを備える。入力ライン207は、レベルシフト回路320の出力側のハイレベルラインOUTHと接続され、ローレベルライン208は、レベルシフト回路320の出力側のローレベルラインOUTLと接続される。定電圧回路350は、ローレベルライン208の電圧を、入力電圧V
INよりも一定電圧ΔV低い電圧レベルに安定化する。
【0047】
ハイサイドトランジスタMHが、PMOSトランジスタである場合においても、レベルシフト回路320として、上述のレベルシフト回路320Aを用いることができる。これにより、入力電圧VINが低い低電圧状態において、入力信号HINにもとづいてハイサイドトランジスタMHを駆動することができる。
【0048】
続いてスイッチング回路の用途を説明する。
【0049】
図6は、オーディオシステム400のブロック図である。オーディオシステム400は、オーディオIC200C、スピーカ402、フィルタ404、ブートストラップキャパシタC
BSを備える。
【0050】
オーディオIC200Cは、D級アンプであり、ハイサイドトランジスタMH、ローサイドトランジスタML、駆動回路300C、パルス幅変調器210を備える。ハイサイドトランジスタMHは、入力ピンVINとスイッチングピンSWの間に接続され、ローサイドトランジスタMLは、スイッチングピンSWと接地ピンGNDの間に接続される。
【0051】
パルス幅変調器210は、オーディオ信号VAUDを、PWM(パルス幅変調)信号に変換し、制御信号HINおよびLINを生成する。
【0052】
制御信号HINは、レベルシフト回路320Aによってレベルシフトアップされ、ハイサイドドライバ310に供給される。
【0053】
レベルシフト回路370は、ハイサイドとローサイドとで遅延量を揃えるためにダミーでもうけられている。レベルシフト回路370は省略してもよい。ローサイドドライバ360は、レベルシフト回路370の出力に応じて、ローサイドトランジスタMLを駆動する。
【0054】
オーディオシステム400は車載用であってもよい。この場合、入力ピンVINには、入力電圧VINとしてバッテリ電圧VBATが供給される。車載バッテリの電圧VBATは、12~14Vを定格とするが、バッテリ電圧VBATが10V以下まで低下した場合であっても、オーディオIC200Cが動作を維持することが求められる。
【0055】
図6のオーディオシステム400によれば、上述したレベルシフト回路320Aを用いることで、バッテリ電圧V
BATが低下した状態においても、オーディオ信号を再生することが可能となる。
【0056】
図7は、降圧コンバータ500のブロック図である。降圧コンバータ500は、コントローラIC200Dおよび降圧コンバータの主回路510を備える。降圧コンバータ500は、入力ライン502の入力電圧V
INを、所定の電圧レベルを有する出力電圧V
OUTに降圧し、出力ライン504に接続される負荷(不図示)に供給する。主回路510は、ハイサイドトランジスタMH、ローサイドトランジスタML、インダクタL2、出力キャパシタC2を含む。
【0057】
コントローラIC200Dは、駆動回路300Dおよびフィードバック回路220を備える。抵抗R21,R22は、出力電圧VOUTを分圧し、分圧後のフィードバック電圧VFBをコントローラIC200DのフィードバックピンFBに供給する。
【0058】
フィードバック回路220は、フィードバック電圧VFBが所定の基準電圧VREFに近づくように、デューティサイクルが調節されるPWM信号を生成する。フィードバック回路220は、PWM信号に応じて、制御信号HINおよびLINを生成する。レベルシフト回路320Aは、制御信号HINをレベルシフトし、ハイサイドドライバ310に供給する。また制御信号LINはローサイドドライバ360に直接供給される。フィードバック回路220とローサイドドライバ360の間に、ダミーのレベルシフト回路を挿入してもよい。
【0059】
降圧コンバータ500はダイオード整流型であってもよく、その場合、ローサイドトランジスタMLに代えて整流ダイオードが接続され、ローサイドドライバ360は省略される。
【0060】
降圧コンバータ500は車載用であってもよい。この場合、入力ピンVINには、入力電圧VINとしてバッテリ電圧VBATが供給される。車載バッテリの電圧VBATは、12~14Vを定格とするが、バッテリ電圧VBATが10V以下まで低下した場合であっても、降圧コンバータ500が動作を維持することが求められる。
【0061】
図7の降圧コンバータ500によれば、上述したレベルシフト回路320Aを用いることで、バッテリ電圧V
BATが低下した状態においても、出力電圧V
OUTを目標レベルに安定化することができる。
【0062】
図8は、回路システム600のブロック図である。回路システム600は、ハイサイドスイッチIC200Eを備える。ハイサイドスイッチIC200Eは、制御ピンCTRLに、外部からの制御信号HINを受ける。半導体集積回路200Eの入力ピンVINには、入力ライン602を介して入力電圧VINが供給され、出力ピンOUTには、負荷回路606が接続される。半導体集積回路200Eは、ハイサイドトランジスタMHおよび駆動回路300Eを備える。駆動回路300Eは、制御信号HINがオンレベル(たとえばハイレベル)であるとき、ハイサイドトランジスタMHをオンする。このとき、出力ピンOUTには、入力電圧V
INと実質的に同じ電圧レベルの出力電圧V
OUTが発生する。駆動回路300Eは、制御信号HINがオフレベル(たとえばローレベル)であるとき、ハイサイドトランジスタMHをオフする。このとき、出力ピンOUTはハイインピーダンスとなる。
【0063】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0064】
(項目1)
ハイサイドトランジスタの駆動回路であって、
入力信号をレベルシフトするレベルシフト回路と、
前記レベルシフト回路の出力にもとづいて前記ハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、
を備え、
前記レベルシフト回路は、
出力側ハイレベルラインと、
出力側ローレベルラインと、
前記出力側ハイレベルラインと接続されたソースを有するPMOSトランジスタである第1トランジスタと、
前記出力側ハイレベルラインと接続されたソースを有するPMOSトランジスタである第2トランジスタと、
前記出力側ローレベルラインと接続されるゲートと、前記第1トランジスタのドレインと接続されるソースと、を有する、PDMOSトランジスタである第3トランジスタと、
前記出力側ローレベルラインと接続されるゲートと、前記第2トランジスタのドレインと接続されるソースと、を有する、PDMOSトランジスタである第4トランジスタと、
前記第3トランジスタのドレインと接地の間に接続されるNMOSトランジスタである第5トランジスタと、
前記第4トランジスタのドレインと接地の間に接続されるNMOSトランジスタである第6トランジスタと、
前記第1トランジスタのドレインと前記接地の間に、前記第3トランジスタおよび前記第5トランジスタの直列接続と並列に接続された、NDMOSトランジスタである第7トランジスタと、
前記第2トランジスタのドレインと前記接地の間に、前記第4トランジスタおよび前記第6トランジスタの直列接続と並列に接続された、NDMOSトランジスタである第8トランジスタと、
減電圧時に、前記入力信号に応じて、前記第7トランジスタおよび前記第8トランジスタを駆動する補助ドライバ回路と、
を備える、駆動回路。
【0065】
(項目2)
前記ハイサイドトランジスタは、NMOSトランジスタである、項目1に記載の駆動回路。
【0066】
(項目3)
前記ハイサイドトランジスタは、PMOSトランジスタである、項目1に記載の駆動回路。
【0067】
(項目4)
車載機器に使用され、
前記ハイサイドトランジスタに入力される電圧が、10Vより低いとき、前記補助ドライバ回路はアクティブとなる、項目1から3のいずれかに記載の駆動回路。
【0068】
(項目5)
入力ラインと出力ラインの間に接続されたハイサイドトランジスタと、
前記出力ラインと接地の間に接続されたローサイドトランジスタと、
前記ハイサイドトランジスタを駆動する項目1から4のいずれかに記載の駆動回路と、
を備える、D級アンプ回路。
【0069】
(項目6)
ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを備える降圧DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラ回路であって、
前記降圧DC/DCコンバータの出力が目標状態に近づくように、ハイサイドパルス信号を生成するフィードバック回路と、
前記ハイサイドパルス信号にもとづいて、前記ハイサイドトランジスタを駆動する項目1から4のいずれかに記載の駆動回路と、
を備える、コンバータコントローラ回路。
【0070】
(項目7)
入力端子と、
出力端子と、
制御端子と、
前記入力端子と前記出力端子の間に接続されたハイサイドトランジスタと、
前記制御端子に入力される信号にもとづいて、前記ハイサイドトランジスタを駆動する項目1から4のいずれかに記載の駆動回路と、
を備える、ハイサイドスイッチ回路。
【0071】
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものであり、したがって、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
100 スイッチング回路
200 半導体集積回路
200C オーディオIC
200D コントローラIC
200E ハイサイドスイッチIC
MH ハイサイドトランジスタ
ML ローサイドトランジスタ
202 ブートストラップライン
204 スイッチングライン
206 整流素子
208 ローレベルライン
210 パルス幅変調器
220 フィードバック回路
310 ハイサイドドライバ
320 レベルシフト回路
322 ラッチ回路
360 ローサイドドライバ
M1 第1トランジスタ
M2 第2トランジスタ
M3 第3トランジスタ
M4 第4トランジスタ
M5 第5トランジスタ
M6 第6トランジスタ
M7 第7トランジスタ
M8 第8トランジスタ
300 駆動回路
330 ドライバ回路
332 低電圧検出回路
334 補助ドライバ回路
400 オーディオシステム
402 スピーカ
404 フィルタ
500 降圧コンバータ
502 入力ライン
504 出力ライン
510 主回路
600 回路システム