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特開2024-52159昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052159
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20240404BHJP
   E06B 9/01 20060101ALI20240404BHJP
   E04H 1/00 20060101ALI20240404BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20240404BHJP
【FI】
G06F30/13
E06B9/01 E
E04H1/00
G06F30/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158683
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 悠太
【テーマコード(参考)】
2E020
5B146
【Fターム(参考)】
2E020BA01
2E020BC01
5B146AA04
5B146DJ01
(57)【要約】
【課題】縦型ルーバーを、建物の開口部に設置した状態において、開口部を介した室内の昼光自立率および昼光暴露率をより簡単に演算することができる昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システムを提供する。
【解決手段】評価システム1の処理装置10は、縦型ルーバー5を構成する羽板部材51の寸法と、隣接する羽板部材51同士の間隔の大きさと、を設定する条件設定部12と、条件設定部12により設定された縦型ルーバー5に基づいて、昼光自立率を以下の式(1)により算出する昼光自立率算出部14と、昼光暴露率を以下の式(2)により算出する昼光暴露率算出部16と、備える。
sDA300/50%=α×(S’/S)×K…(1)
ASE1000/250=α’×(S’/S)×K’…(2)
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿って延在した複数の羽板部材が水平方向に間隔を空けて保持された縦型ルーバーを、建物の開口部に設置した状態において、前記開口部を介した室内の昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システムであって、
前記昼光自立率は、前記室内の机上面照度が300lx以上となる年間の時間が、年間の日中時間に対して50%以上の時間となる室内領域の面積率であり、
前記昼光暴露率は、前記机上面照度が1000lx以上となる年間の時間が、250時間以上となる室内領域の面積率であり、
前記評価システムは、評価対象となる昼光自立率および昼光暴露率を演算する処理装置を備えており、
前記処理装置は、
前記縦型ルーバーが無く前記開口部のみの前記昼光自立率および前記昼光暴露率の解析結果が登録された解析結果登録部と、
前記縦型ルーバーを構成する羽板部材の寸法と、隣接する前記羽板部材同士の間隔の大きさとの条件を設定する条件設定部と、
登録された前記昼光自立率の前記解析結果と、設定された前記条件とに基づいて、前記縦型ルーバーを設置した状態の昼光自立率を以下の式(1)により算出する昼光自立率算出部と、
登録された前記昼光暴露率の前記解析結果と、設定された前記条件とに基づいて、前記縦型ルーバーを設置した状態の前記昼光暴露率を以下の式(2)により算出する昼光暴露率算出部と、
を備えることを特徴とする昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システム。
sDA300/50%=α×(S’/S)×K…(1)
ASE1000/250=α’×(S’/S)×K’…(2)
ただし、
sDA300/50%:前記縦型ルーバーを設置した状態の昼光自立率
ASE1000/250:前記縦型ルーバーを設置した状態の昼光暴露率
α:前記縦型ルーバーが無く前記開口部のみの昼光自立率の前記解析結果
α’:前記縦型ルーバーが無く前記開口部のみの昼光暴露率の前記解析結果
S’:前記開口部に直交する方向から視たときの前記縦型ルーバーを介して視える開口部の面積
S:前記開口部の面積
K:第1補正係数
K’:第2補正係数
である。
【請求項2】
前記処理装置は、前記第1補正係数を以下の式(3)により算出する第1補正係数算出部と、前記第2補正係数を以下の式(4)により算出する第2補正係数算出部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システム。
K=ax+bx+c…(3)
K’=a’x+b’x+c’…(4)
ただし、
x:前記開口部に向かう方向の前記縦型ルーバーの奥行寸法〔mm〕
a:8.8×10-7~10.7×10-7の範囲の定数
b:10.0×10-4~-11.6×10-4の範囲の定数
c:1.18~1.20の範囲の定数
a’:12.0×10-7~17.6×10-7の範囲の定数
b’:-13.2×10-4~-17.8×10-4の範囲の定数
c’:1.30~1.38の範囲の定数
である。
【請求項3】
建物の開口部の上縁に沿って庇を設置した状態において、前記開口部を介した室内の昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システムであって、
前記昼光自立率は、前記室内の机上面照度が300lx以上となる年間の時間が、年間の日中時間に対して50%以上の時間となる室内領域の面積率であり、
前記昼光暴露率は、前記机上面照度が1000lx以上となる年間の時間が、250時間以上となる室内領域の面積率であり、
前記評価システムは、評価対象となる昼光自立率および昼光暴露率を演算する処理装置を備えており、
前記処理装置は、
前記庇が無く前記開口部のみの前記昼光自立率および前記昼光暴露率の解析結果が登録された解析結果登録部と、
室外側から室内側に向かう方向の前記庇の奥行寸法を設定する条件設定部と、
登録された前記昼光自立率の前記解析結果と、設定された前記奥行寸法に基づいて、前記庇を設置した状態の昼光自立率を以下の式(5)により算出する昼光自立率算出部と、
登録された前記昼光暴露率の前記解析結果と、設定された前記奥行寸法に基づいて、前記庇を設置した状態の昼光暴露率を以下の式(6)により算出する昼光暴露率算出部と、
を備えることを特徴とする昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システム。
sDA300/50%=α×(dx+e)…(5)
ASE1000/250=α’×(d’x+e’)…(6)
ただし、
sDA300/50%:前記庇を設置した状態の昼光自立率
ASE1000/250:前記庇を設置した状態の昼光暴露率
α:前記庇が無く前記開口部のみの昼光自立率の前記解析結果
α’:前記庇が無く前記開口部のみの昼光暴露率の前記解析結果
x:室外側から室内側に向かう方向の庇の奥行寸法〔mm〕
d:-0.0003(定数)
e:0.995~-0.997の範囲の定数
d’:-0.0003(定数)
e’:0.990~-0.994の範囲の定数
である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型ルーバーまたは庇を、建物の開口部に設置した状態において、開口部を介した室内の昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽の日射光により、室内に作用する熱負荷などを演算する処理装置が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、近年、熱負荷ばかりでなく、年間を通じた昼光による空間の快適性も重視されており、北米照明学会(IES)で提唱された昼光評価手法(IES LM-83-12)に準拠して、空間昼光自立性と年間日射量が算出されることがある。具体的には、これらの指標として、昼光自立率(sDA)と、昼光暴露率(ASE)が利用される。これらの指標は、建築物の環境性能を評価する目的で米国グリーンビルディング協会(USGBC)により開発され、世界的に使用されている評価システムにおいても、利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-128710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、昼光自立率と、昼光暴露率とは、一般的に市販されたソフトウエアで演算できることは、一般的に知られているが、これらを演算する際には、建物の開口部を含めた間取りなど、細かな寸法を特定した解析用のモデルを作成して演算することになる。特に、縦型ルーバーや庇などを、開口部に設置した場合には、モデルを作成して、改めて演算しなければならず、手間がかかる。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、縦型ルーバーまたは庇を設置した状態において、開口部を介した室内の昼光自立率および昼光暴露率をより簡単に演算することができる昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題に鑑みて、第1本発明に係る昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システムは、鉛直方向に沿って延在した複数の羽板部材が水平方向に間隔を空けて保持された縦型ルーバーを、建物の開口部に設置した状態において、前記開口部を介した室内の昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システムであって、前記昼光自立率は、前記室内の机上面照度が300lx以上となる年間の時間が、年間の日中時間に対して50%以上の時間となる室内領域の面積率であり、前記昼光暴露率は、前記机上面照度が1000lx以上となる年間の時間が、250時間以上となる室内領域の面積率であり、前記評価システムは、評価対象となる昼光自立率および昼光暴露率を演算する処理装置を備えており、前記処理装置は、前記縦型ルーバーが無く前記開口部のみの前記昼光自立率および前記昼光暴露率の解析結果が登録された解析結果登録部と、前記縦型ルーバーを構成する羽板部材の寸法と、隣接する前記羽板部材同士の間隔の大きさとの条件を設定する条件設定部と、登録された前記昼光自立率の前記解析結果と、設定された前記条件とに基づいて、前記縦型ルーバーを設置した状態の昼光自立率を以下の式(1)により算出する昼光自立率算出部と、登録された前記昼光暴露率の前記解析結果と、設定された前記条件とに基づいて、前記縦型ルーバーを設置した状態の前記昼光暴露率を以下の式(2)により算出する昼光暴露率算出部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
sDA300/50%=α×(S’/S)×K…(1)
ASE1000/250=α’×(S’/S)×K’…(2)
ただし、
sDA300/50%:前記縦型ルーバーを設置した状態の前記昼光自立率
ASE1000/250:前記縦型ルーバーを設置した状態の前記昼光暴露率
α:前記縦型ルーバーが無く前記開口部のみの昼光自立率の解析結果
α’:前記縦型ルーバーが無く前記開口部のみの昼光暴露率の解析結果
S’:前記開口部に直交する方向から視たときの前記縦型ルーバーを介して視える開口部の面積
S:前記開口部の面積
K:第1補正係数
K’:第2補正係数
である。
【0008】
通常、開口部のみの条件で解析した昼光自立率および昼光暴露率は、縦型ルーバーの仕様条件の開口率S’/Sに対して、比例関係にあるように予想されるが、この予想が異なることを発明者は発見した。すなわち、発明者は、縦型ルーバーを設置せず開口部のみの状態で解析した昼光自立率および昼光暴露率は、縦型ルーバーの仕様条件である(S’/S)に対して、比例関係にあるとの新たな知見を取得した。
【0009】
第1発明は、この発明者の新たな知見に基づくものである。第1発明によれば、開口部のみの昼光自立率と昼光暴露率の解析結果を予め解析結果登録部に登録しておくだけで、縦型ルーバーの仕様条件である(S’/S)さえ算出すれば、縦型ルーバーを設置した状態の昼光自立率および昼光暴露率がどのように変化するか、その変化の傾向を簡単に把握することができる。特に、複数の縦型ルーバーの仕様条件において、開口部に向かう方向の縦型ルーバーの奥行寸法が一定の場合には、仕様条件の異なる縦型ルーバーに対して、縦型ルーバーを設置した状態の昼光自立率および昼光暴露率の変化の傾向をより正確に評価することができる。
【0010】
より好ましい態様としては、前記処理装置は、前記第1補正係数を以下の式(3)により算出する第1補正係数算出部と、前記第2補正係数を以下の式(4)により算出する第2補正係数算出部と、を備える。
K=ax+bx+c…(3)
K’=a’x+b’x+c’…(4)
ただし、
x:前記開口部に向かう方向の前記縦型ルーバーの奥行寸法〔mm〕
a:8.8×10-7~10.7×10-7の範囲の定数
b:10.0×10-4~-11.6×10-4の範囲の定数
c:1.18~1.20の範囲の定数
a’:12.0×10-7~17.6×10-7の範囲の定数
b’:-13.2×10-4~-17.8×10-4の範囲の定数
c’:1.30~1.38の範囲の定数
である。
【0011】
発明者が鋭意検討を重ねた結果、第1補正係数および第2補正係数を、縦型ルーバーの羽板部材の奥行寸法を変数とした2次関数で特定すると、縦型ルーバーを設置した状態の昼光自立率および昼光暴露率をより精度良く算出することができることがわかった。そこで、上述した式(3)および式(4)で示す2次関数を前提として、これらの2次関数の係数a~cおよびa’~c’の範囲の中からそれぞれ定数を設定し、第1補正係数および第2補正係数を算出すれば、縦型ルーバーを設置した状態の昼光自立率および昼光暴露率をより精度良く算出することができる。
【0012】
第2本発明に係る昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システムは、建物の開口部の上縁に沿って庇を設置した状態において、前記開口部を介した室内の昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システムであって、前記昼光自立率は、前記室内の机上面照度が300lx以上となる年間の時間が、年間の日中時間に対して50%以上の時間となる室内領域の面積率であり、前記昼光暴露率は、前記机上面照度が1000lx以上となる年間の時間が、250時間以上となる室内領域の面積率であり、前記評価システムは、評価対象となる昼光自立率および昼光暴露率を演算する処理装置を備えており、前記処理装置は、前記庇が無く前記開口部のみの前記昼光自立率および前記昼光暴露率の解析結果が登録された解析結果登録部と、室外側から室内側に向かう方向の前記庇の奥行寸法を設定する条件設定部と、登録された前記昼光自立率の前記解析結果と、設定された前記奥行寸法に基づいて、前記庇を設置した状態の昼光自立率を以下の式(5)により算出する昼光自立率算出部と、登録された前記昼光暴露率の前記解析結果と、設定された前記奥行寸法に基づいて、前記庇を設置した状態の昼光暴露率を以下の式(6)により算出する昼光暴露率算出部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
sDA300/50%=α×(dx+e)…(5)
ASE1000/250=α’×(d’x+e’)…(6)
ただし、
sDA300/50%:前記庇を設置した状態の昼光自立率
ASE1000/250:前記庇を設置した状態の昼光暴露率
α:前記庇が無く前記開口部のみの昼光自立率の前記解析結果
α’:前記庇が無く前記開口部のみの昼光暴露率の前記解析結果
x:室外側から室内側に向かう方向の庇の奥行寸法〔mm〕
d:-0.0003(定数)
e:0.995~-0.997の範囲の定数
d’:-0.0003(定数)
e’:0.990~-0.994の範囲の定数
である。
【0014】
庇の奥行寸法を変数とした1次関数で補正係数を特定すると、庇を設置した状態の昼光自立率および昼光暴露率をより精度良く算出することができるとの新たな知見に基づくものである。第2発明によれば、開口部のみの昼光自立率と昼光暴露率の解析結果を予め解析結果登録部に登録しておくだけで、室外側から室内側に向かう方向の庇の奥行寸法さえ入力すれば、昼光自立率および昼光暴露率を正確に算出することができる。そこで、上述した式(5)および式(6)で示す1次関数を前提として、これらの1次関数の係数d、eおよびd’、e’の範囲の中からそれぞれ定数を設定し、第1補正係数および第2補正係数を算出すれば、庇を設置した状態の昼光自立率および昼光暴露率をより精度良く算出することができる。
【発明の効果】
【0015】
第1発明によれば、縦型ルーバーを、建物の開口部に設置した状態において、開口部を介した室内の昼光自立率および昼光暴露率をより簡単に演算することができる。第2発明によれば、建物の開口部の上縁に沿って庇を設置した状態において、開口部を介した室内の昼光自立率および昼光暴露率をより簡単に演算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は、第1発明の本実施形態において、建物の外側から視た、縦型ルーバーの模式的斜視図であり、(b)は、建物の室内から視た、縦型ルーバーの模式的斜視図である。
図2】第1発明の本実施形態に係る昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システムの模式図である。
図3】第1発明の本実施形態に係る処理装置のブロック図である。
図4図1に示す水平方向に沿った縦型ルーバーの拡大断面図である。
図5】(a)前記開口部の面積を説明するための平面図であり、(b)は、開口部に直交する方向から視たときの縦型ルーバー以外の開口部の面積を説明するための平面図である。
図6】(a)は、開口部に向かう方向の縦型ルーバーの奥行寸法と、第1補正係数および第2補正係数の2次関数を説明するためのグラフであり、(b)は(a)で求めた2次関数の係数の範囲を設定するためのグラフである。
図7】第2発明の本実施形態において、建物の外側から視た、開口部と、開口部の上方の庇の模式的斜視図である。
図8】(a)は、室外側から室内側に向かう方向の庇の奥行寸法と、第1補正係数および第2補正係数の1次関数を説明するためのグラフであり、(b)は(a)で求めた1次関数の係数の範囲を設定するためのグラフである。
図9】第2発明の実施形態に係る処理装置を用いた作業フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図1図9を参照しながら、第1および第2発明の本実施形態に係る昼光自立率および昼光暴露率を評価する評価システムを説明する。
【0018】
〔第1発明の実施形態について〕
1.建物100の開口部7と縦型ルーバー5について
図1(a)は、第1発明の本実施形態において、建物の外側から視た、縦型ルーバーの模式的斜視図であり、図1(b)は、建物の室内から視た、縦型ルーバーの模式的斜視図である。本実施形態に係る評価システム1は、縦型ルーバー5を、建物100の開口部7に設置した状態において、開口部7を介した室内21の昼光自立率および昼光暴露率を評価するシステムである。
【0019】
本実施形態では、開口部7には、窓ガラス71が取り付けられており、開口部7を覆うように、建物100の壁部4には、縦型ルーバー5が取り付けられている。本実施形態では、縦型ルーバー5は、鉛直方向に沿って延在する、複数の長尺状の羽板部材51、51、…から構成されており、隣接する羽板部材51、51同士は、水平方向に等間隔(等ピッチ)で間を空けて保持されている。
【0020】
2.評価システム1のハードウエア構成について
図2は、第1実施形態に係る評価システム1の模式図である。評価システム1は、ハードウエアとして、ROM、RAM等で構成された記憶部10Aと、CPU等で構成された演算部10Bと、を備えた処理装置10を有している。記憶部10Aは、後述する算出を行うための数式を含むプログラム、建物100の開口部7の寸法、羽板部材51の寸法、隣接する羽板部材51、51同士の隙間の大きさの条件を記録しており、演算部10Bは、プログラム等を実行する。
【0021】
評価システム1は、入力装置31と出力装置32とを備えてもよい。この場合、処理装置10には、入力装置31と出力装置32とが接続されている。本実施形態では、入力装置31と出力装置32とが一体となったタッチパネルディスプレイであってもよい。
【0022】
入力装置31を用いて、上述したプログラムを実行するための初期条件(たとえば、羽板部材の寸法、これらの間隔、ただし後述する第2発明の実施形態では庇の奥行寸法)、プログラムのデータが入力される。入力装置31で入力されたデータは、記憶部10Aに記憶される。出力装置32は、処理装置10で演算された結果が、表示される。
【0023】
本実施形態に係る評価システム1は、昼光自立率および昼光暴露率を評価する。ここで、昼光自立率は、室内21の机上面照度が300lx以上となる年間の時間が、年間の日中時間に対して50%以上の時間となる室内領域の面積率である。なお、年間の日中時間とは、年間において、室内に自然光が取り込まれるトータルの時間のことである。昼光自立率の値が大きいほど、昼光を有効活用できており、LEED(Leadership in Energy & Environmental Design)の基準では55%以上で加点される。昼光暴露率は、前記机上面照度が1000lx以上となる年間の時間が250時間以上となる室内領域の面積率である。昼光暴露率の値が小さいほど、日射による不快感を抑えられ、LEEDの基準では10%未満が推奨されている。なお、ここでいう机上面照度は、室内の床面から特定の高さにおける照度であり、床面の照度を基準としてもよい。なお、室内領域の面積率とは、室内全体の床面積に対して、各条件となる室内の床面積の割合である。
【0024】
3.処理装置10のソフトウエア構成について
本実施形態では、図3に示すように、処理装置10は、解析結果登録部11と、条件設定部12と、第1補正係数算出部13と、昼光自立率算出部14と、第2補正係数算出部15と、昼光暴露率算出部16と、を少なくとも備えている。
【0025】
3-1.解析結果登録部11について
解析結果登録部11は、縦型ルーバー5が無く(第2発明の実施形態の庇52も無く)、開口部7のみの昼光自立率および昼光暴露率の解析結果が登録されている。ここでは、開口部7の大きさが異なり、室内の大きさ等も異なる初期条件の複数の昼光自立率および昼光暴露率が登録されていてもよい。異なる初期条件の複数の昼光自立率および昼光暴露率を登録することにより、評価したい縦型ルーバー5の仕様さえ、以下の条件設定部12において設定すれば、縦型ルーバー5を設置した状態の昼光自立率および昼光暴露率を簡単に算出することができる。
【0026】
3-2.条件設定部12について
図4は、水平方向に沿った縦型ルーバー5の羽板部材51の断面図である。条件設定部12は、入力装置31からの入力により、縦型ルーバー5を構成する羽板部材51の寸法と、隣接する羽板部材51同士の間の隙間の大きさSと、を設定する。例えば、本実施形態では、図4に示すように、羽板部材51の寸法として、羽板部材51の厚さt、奥行寸法xが設定されいる。本実施形態では、隣接する羽板部材51同士の配置間隔(ピッチ)Pは、等ピッチであり、羽板部材51の厚さtと羽板部材51同士の間の隙間の大きさSとの和に相当する。なお、隙間の大きさSは、複数の羽板部材51、51同士が配列された状態で、この配列方向(水平方向)に沿って対向する羽板部材51、51の表面間距離である。
【0027】
3-3.昼光自立率算出部14および昼光暴露率算出部16について
以下に、第1補正係数算出部13および第2補正係数算出部15を説明する前に、昼光自立率算出部14および昼光暴露率算出部16について説明する。なお、本実施形態では、第1補正係数算出部13および第2補正係数算出部15を設けているが、これらの構成を省略し、特定の定数を入力してもよい。特に、縦型ルーバー5の奥行寸法xが同じ条件で、羽板部材51の厚さおよび羽板部材51、51同士の間隔が異なる縦型ルーバー5同士の昼光自立率および昼光暴露率を評価するのに有効である。
【0028】
昼光自立率算出部14は、解析結果登録部11で登録された昼光自立率のうち、評価対象となる初期条件の解析結果と、条件設定部12で設定された縦型ルーバー5の条件に基づいて、縦型ルーバー5を設置した状態の昼光自立率を以下の式(1)により算出する。昼光暴露率算出部16は、解析結果登録部11で登録された昼光自立率のうち、評価対象となる初期条件の解析結果と、条件設定部12で設定された縦型ルーバー5の条件に基づいて、縦型ルーバーを設置した状態の昼光暴露率を以下の式(2)により算出する。
【0029】
sDA300/50%=α×(S’/S)×K…(1)
ASE1000/250=α’×(S’/S)×K’…(2)
ただし、
sDA300/50%:縦型ルーバー5を設置した状態の昼光自立率
ASE1000/250:縦型ルーバー5を設置した状態の昼光暴露率
α:前記縦型ルーバーが無く前記開口部のみの昼光自立率の前記解析結果
α’:前記縦型ルーバーが無く前記開口部のみの昼光暴露率の前記解析結果
S’:前記開口部に直交する方向から視たときの縦型ルーバーを介して視える開口部の面積
S:前記開口部の面積
K:第1補正係数
K’:第2補正係数
である。
【0030】
αは、縦型ルーバー5を設けない状態(図5(a))における開口部7のみの昼光自立率の解析結果であり、α’は、縦型ルーバー5を設けない状態における開口部7のみの昼光暴露率の解析結果であり、これらの解析結果は、解析結果登録部11に登録されている。なお、これらの解析結果は、一般的に市販されたソフトウエアで演算することができる。
【0031】
さらに、図5(a)のハッチング部分で示すように、Sは、開口部7の面積であり、図5(b)のハッチング部分で示すように、S’は、開口部7に直交する方向から視たときの縦型ルーバー5を除いた開口部7の面積である。したがって、式(1)および式(2)で示すS’/Sは、縦型ルーバー5の開口率βに相当する。
【0032】
発明者は、縦型ルーバー5を設置せず開口部7のみの状態で解析した昼光自立率および昼光暴露率は、縦型ルーバー5の仕様条件である(S’/S)に対して、比例関係にあるとの新たな知見を取得した。
【0033】
ここで、縦型ルーバー5を設置せず開口部7のみの状態(窓ガラス71が配置されている状態も含む)で解析した昼光自立率および昼光暴露率は、縦型ルーバー5の仕様条件である(S’/S)に対して、比例関係にあることが、後述する発明者の解析結果から分かった。
【0034】
したがって、開口部7のみの昼光自立率および昼光暴露率の解析結果を予め解析結果登録部に登録しておくだけで、縦型ルーバーの仕様条件である(S’/S)さえ算出すれば、縦型ルーバー5を設置した状態の昼光自立率および昼光暴露率を簡単に算出することができる。なお、仕様条件の異なる縦型ルーバー5に対して、第1補正係数および第2補正係数ごとに、同じ一定値を代入すれば、それぞれの縦型ルーバー5に応じて、昼光自立率および昼光暴露率がどのように変化するか、その傾向を簡単に把握することができる。特に、複数の縦型ルーバー5の仕様条件において、開口部7に向かう方向の縦型ルーバー5の奥行寸法xが一定の場合には、仕様条件の異なる縦型ルーバー5に対して、昼光自立率および昼光暴露率の変化の傾向をより正確に評価することができる。
【0035】
ここで、たとえば、第1補正係数Kとして、0.9~1.2の範囲にある値を用いることが好ましく、第2補正係数K’として、0.8~1.1の範囲にある値を用いることが好ましい。なお、第1補正係数Kおよび第2補正係数K’は、後述する発明者の解析結果(表1および表2)から明らかである。
【0036】
4.第1補正係数算出部13と第2補正係数算出部15について
ここで、第1補正係数Kおよび第2補正係数K’は、上述した如く、一定の値を代入することで、異なる縦型ルーバー5の仕様条件(具体的には、羽板部材51の厚さtと羽板部材51同士の間の隙間の大きさSとを変化させた仕様条件)に対して、昼光自立率および昼光自立率がどのように変化するか、その変化の傾向を簡単に把握することができる。
【0037】
ただし、後述する発明者の解析結果によれば、第1補正係数算出部13を用いて第1補正係数を算出し、第2補正係数算出部15を用いて、第2補正係数を算出すれば、式(1)および式(2)に示す昼光自立率および昼光暴露率をより精度良く算出できることがわかった。
【0038】
処理装置10は、第1補正係数Kを算出する第1補正係数算出部13と、第2補正係数K’を算出する第2補正係数算出部15と、を備えている。より具体的には、第1補正係数算出部13は、第1補正係数を以下の式(3)により算出し、第2補正係数算出部15は、第2補正係数を以下の式(4)により算出する。
【0039】
K=ax+bx+c…(3)
K’=a’x+b’x+c’…(4)
ただし、
K:第1補正係数
K’:第2補正係数
x:前記開口部に向かう方向の前記縦型ルーバーの奥行寸法〔mm〕
a:8.8×10-7~10.7×10-7の範囲の定数
b:10.0×10-4~-11.6×10-4の範囲の定数
c:1.18~1.20の範囲の定数
a’:12.0×10-7~17.6×10-7の範囲の定数
b’:-13.2×10-4~-17.8×10-4の範囲の定数
c’:1.30~1.38の範囲の定数
である。
【0040】
上述する係数a~c、および、係数a’~c’は、以下のように求めた。具体的には、表1および表2に示す奥行寸法およびピッチが異なる仕様条件1~4の縦型ルーバー5に対して、市販の解析ソフトを用いて、開口部のみの昼光自立率αと開口部のみの昼光暴露率α’を算出した。さらに、仕様条件1~4の縦型ルーバー5に対して、縦型ルーバー5の開口率β(=S’/S)を算出した。さらに、市販の解析ソフトを用いて、解析により仕様条件1~4の縦型ルーバー5を設置した状態の昼光自立率sDA300/50%(sDA解析値)と、昼光暴露率ASE1000/250(ASE解析値)と、を求めた。これらの結果を、それぞれ、表1および表2に示す。
【0041】
次に、各仕様条件1~4ごとに、奥行寸法x〔mm〕に対して、昼光自立率sDA300/50%(sDA解析値)÷(α×β)を計算し、この計算した値を図6(a)にプロットした。同様に、各仕様条件1~4ごとに、奥行寸法x〔mm〕に対して、昼光暴露率ASE1000/250(ASE解析値)÷(α×β)を計算し、この計算した値を図6(b)にプロットした。
【0042】
次に、これらのプロットした値から、奥行寸法x〔mm〕を変数として、第1補正係数Kおよび第2補正係数K’をyとして、最小二乗法により2次関数の近似式を定式化した。この定式化した2次関数が、上述した式(3)および式(4)に相当する。
【0043】
この結果を、図6(a)に示す。次に、この2次関数の近似式を用いて、仕様条件1~4ごとに、奥行寸法x〔mm〕を代入し、第1補正係数Kおよび第2補正係数K’を算出した。この結果を表1および表2に示す。さらに、算出した第1補正係数Kおよび第2補正係数K’を、式(1)および式(2)に代入し、昼光自立率sDA300/50%(sDA算出値)および昼光暴露率ASE1000/250(ASE算出値)を求め、対応する解析値との誤差を算出した。これらの結果を表1および表2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1および表2からも明らかなように、縦型ルーバー5を設置した状態の昼光自立率sDA300/50%(sDA算出値)および昼光暴露率ASE1000/250(ASE算出値)は、それぞれの解析値(sDA解析値、ASE解析値)に近い値を示し、これらの誤差は殆ど無かった。さらに、仕様条件1~4から、3つの仕様条件の組み合わせに対して、それぞれ、係数a~c、a’~c’を求めた。これらのうち、係数a~c、a’~c’が最も大きくなった組み合わせは、仕様条件1、2および4であった(図6(b)参照)。なお、仕様条件1~4を用いて算出した係数a~c、a’~c’が、これらの組み合わせから算出したいずれの係数a~c、a’~c’よりも最小であった。
【0047】
図6(a)および図6(b)の結果から、係数a~c、a’~c’の範囲は、上述した範囲であれば、最適な第1補正係数Kおよび第2補正係数K’を算出し、昼光自立率sDA300/50%と、昼光暴露率ASE1000/250とを精度良く算出することができる。
【0048】
このように、第1補正係数Kおよび第2補正係数K’を、縦型ルーバー5の羽板部材51の奥行寸法xを変数とした2次関数で特定すると、昼光自立率および昼光暴露率をより精度良く算出することができることがわかった。さらに、縦型ルーバー5を設置せず開口部7のみの状態で解析した昼光自立率および昼光暴露率は、縦型ルーバー5の仕様条件である(S’/S)に対して、比例関係にあることが前提となることは、これらの結果からも明らかである。
【0049】
〔第2発明の実施形態について〕
第2発明の実施形態は、図7に示すように、評価システム1は、開口部7の上縁7aに沿って、庇52を設置した状態において、開口部7を介した室内の昼光自立率および昼光暴露率を評価する。図7に示すように、庇52は、水平方向に沿って延在しており、室外側から室内側に向かう庇52の奥行方向は、窓ガラス71の法線方向に一致し、庇52は、奥行寸法(x〔mm〕)を有している。
【0050】
本実施形態では、図3で示した第1発明の実施形態と同様に、処理装置10が、解析結果登録部11と、条件設定部12と、第1補正係数算出部13と、昼光自立率算出部14と、第2補正係数算出部15と、昼光暴露率算出部16と、を少なくとも備えている。以下に、第1発明の実施形態と共通する点の説明は省略し、相違する点を主に説明する。
【0051】
解析結果登録部11は、庇52が無く(第1発明の実施形態の縦型ルーバー5も無く)、開口部7のみの昼光自立率および昼光暴露率の解析結果が登録されている。ここでは、開口部7の大きさが異なり、室内の大きさ等も異なる初期条件の複数の昼光自立率および昼光暴露率が登録されていてもよい。条件設定部12は、入力装置31からの入力により、室外側から室内側に向かう方向の庇52の奥行寸法xを設定する。
【0052】
昼光自立率算出部14は、解析結果登録部11で登録された昼光自立率の解析結果と、条件設定部12で設定された前記奥行寸法に基づいて、庇52を設置した状態の昼光自立率を以下の式(5A)により算出する。昼光暴露率算出部16は、解析結果登録部11で登録された昼光暴露率の解析結果と、条件設定部12で設定された前記奥行寸法に基づいて、庇52を設置した状態の昼光暴露率を以下の式(6A)により算出する。
【0053】
sDA300/50%=α×K…(5A)
ASE1000/250=α’×K’…(6A)
ただし、
sDA300/50%:庇52を設置した状態の昼光自立率
ASE1000/250:庇52を設置した状態の昼光暴露率
α:庇52が無く開口部7のみの昼光自立率の前記解析結果
α’:庇52が無く開口部7のみの昼光暴露率の前記解析結果
K:第1補正係数
K’:第2補正係数
である。
【0054】
処理装置10は、第1補正係数Kを算出する第1補正係数算出部13と、第2補正係数K’を算出する第2補正係数算出部15と、を備えている。より具体的には、第1補正係数算出部13は、第1補正係数Kを以下の式(5B)により算出し、第2補正係数算出部15は、第2補正係数K’を以下の式(6B)により算出する。なお、式(5A)に式(5B)を代入したものが、本発明の式(5)に相当し、なお、式(6A)に式(6B)を代入したものが、本発明の式(6)に相当する。
【0055】
K=dx+e…(5B)
K’=d’x+e’…(6B)
ただし、
x:室外側から室内側に向かう方向の前記庇の奥行寸法〔mm〕
d:-0.0003(定数)
e:0.995~-0.997の範囲の定数
d’:-0.0003(定数)
e’:0.990~-0.994の範囲の定数
である。
【0056】
ここで、表3および表4に示す奥行寸法およびピッチが異なる仕様条件5~9の縦型ルーバー5に対して、市販の解析ソフトを用いて、開口部7のみの昼光自立率αと開口部7のみの昼光暴露率α’を算出した。さらに、市販の解析ソフトを用いて、解析により仕様条件5~9の庇52を設置した際の昼光自立率sDA300/50%(sDA解析値)と、昼光暴露率ASE1000/250(ASE解析値)を求めた。これらの結果を、それぞれ、表3および表4に示す。
【0057】
次に、各仕様条件5~9ごとに、奥行寸法x〔mm〕に対して、昼光自立率sDA300/50%(sDA解析値)÷αを計算し、この計算した値を図8(a)にプロットした。同様に、各仕様条件1~4ごとに、奥行寸法x〔mm〕に対して、昼光暴露率ASE1000/250(ASE解析値)÷α’を計算し、この計算した値を図8(b)にプロットした。
【0058】
次に、これらのプロットした値から、奥行寸法x〔mm〕を変数として、第1補正係数Kおよび第2補正係数K’をyとして、最小二乗法により1次関数の近似式を定式化した。この定式化した1次関数が、上述した式(5)および式(6)に相当する。
【0059】
次に、この1次関数の近似式を用いて、仕様条件5~9ごとに、奥行寸法x〔mm〕を代入し、第1補正係数Kおよび第2補正係数K’を算出した。この結果を表3および表4に示す。さらに、算出した第1補正係数Kおよび第2補正係数K’を、式(1)および式(2)に代入し、昼光自立率sDA300/50%(sDA算出値)および昼光暴露率ASE1000/250(ASE算出値)を求め、対応する解析値との誤差を算出した。これらの結果も表3および表4に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
表3および表4からも明らかなように、昼光自立率sDA300/50%(sDA算出値)および昼光暴露率ASE1000/250(ASE算出値)は、それぞれの解析値に対して、誤差は無かった。さらに、仕様条件5~9から、3つの仕様条件の組み合わせに対して、それぞれ、係数d、e、d’およびe’を求めた。これらのうち、係数d、e、d’、およびe’が最も大きくなった組み合わせは、仕様条件5、7および9であった(図8(b)参照)。なお、仕様条件5~9のすべてを用いて算出した係数d、e、d’およびe’が、全ての組み合わせの中で、最小であった。
【0063】
図8(a)および図8(b)の結果から、係数d、e、d’、およびe’の範囲は、上述した範囲であれば、最適な第1補正係数Kおよび第2補正係数K’を算出し、昼光自立率sDA300/50%と、昼光暴露率ASE1000/250とを精度良く算出することができる。
【0064】
このように、庇52を設置した場合には、第1補正係数Kおよび第2補正係数K’を、庇52の奥行寸法xを変数とした1次関数で特定すると、昼光自立率および昼光暴露率をより精度良く算出することができることがわかった。
【0065】
5.処理装置10を用いた作業フローについて
以下に、第1および第2発明の実施形態の処理装置10を用いた作業フローを、図9を参照しながら説明する。図9は、本実施形態に係る処理装置を用いた作業フロー図である。まず、ステップS81では、開口部のみ(縦型ルーバー5無し、庇52無し)における昼光自立率と昼光暴露率を算出する。
【0066】
次に、ステップS82に進み、式(3)~式(5B)の定式化を行うためのデータとして、市販の解析ソフトを用いて、第1発明の実施形態では、寸法等の仕様が異なる縦型ルーバー5の設置時の昼光自立率および昼光暴露率を解析し、第2発明の実施形態では、奥行寸法が異なる庇52の設置時の昼光自立率および昼光暴露率を解析する。次に、ステップS83に進み、ステップS82で解析した、昼光自立率および昼光暴露率を用いて、第1補正係数および第2補正係数の近似式を算出する。具体的には、第1発明の実施形態では、縦型ルーバー5の奥行寸法x〔mm〕を変数とした、第1補正係数および第2補正係数の2次関数の式を算出する。第2発明の実施形態では、庇52の奥行寸法x〔mm〕を変数とした、第1補正係数および第2補正係数の1次関数の式を算出する。
【0067】
次に、ステップS84に進み、第1発明の実施形態では、評価対象となる縦型ルーバー5の寸法等の条件を、処理装置10に入力し、条件設定部12により、縦型ルーバー5を構成する羽板部材51の寸法と、隣接する羽板部材51同士の間の隙間の大きさSと、が設定される。第2発明の実施形態では、庇52の奥行寸法x〔mm〕が設定される。
【0068】
次に、ステップS85に進み、第1発明の実施形態では、第1補正係数算出部13と第2補正係数算出部15は、条件設定部12で設定された縦型ルーバー5に対して、式(3)、式(4)を選択し、第1補正係数Kおよび第2補正係数K’を算出する。第2発明の実施形態では、第1補正係数算出部13と第2補正係数算出部15は、条件設定部12で設定された庇52に対して、式(5B)、式(6B)を選択し、第1補正係数Kおよび第2補正係数K’を算出する。
【0069】
次に、ステップS86に進み、第1発明の実施形態では、昼光自立率算出部14は、ステップS84で設定された縦型ルーバー5に基づいて、昼光自立率を、式(1)により算出する。昼光暴露率算出部16は、ステップS84で設定された縦型ルーバー5に基づいて、昼光暴露率を、式(2)により算出する。第2発明の実施形態では、昼光自立率算出部14は、昼光自立率を、式(5A)により算出する。昼光暴露率算出部16は、昼光暴露率を、式(5B)により算出する。
【0070】
最後に、ステップS87では、ステップS86で算出した昼光自立率および昼光暴露率が、処理装置10は、予め設定された所定の範囲にあるかを判定し、所定の範囲内にある場合(YES)には、作業を終了する。一方、昼光自立率および昼光暴露率が、所定の範囲から外れている場合(NO)には、ステップS84に進み、第1発明の実施形態では、評価対象となる縦型ルーバーの寸法等の仕様条件を変更し、第2発明の実施形態では、評価対象となる庇の奥行寸法を変更し、所定の昼光自立率および昼光暴露率となるまで、ステップS84~ステップS87までの作業を繰り返す。
【0071】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0072】
1:評価システム、7:開口部、5:縦型ルーバー、51:羽板部材、52:庇、10:処理装置、11:解析結果登録部、12:条件設定部、13:第1補正係数算出部、14:昼光自立率算出部、15:第2補正係数算出部、16:昼光暴露率算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9