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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052188
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】半導体加工用粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
H01L21/78 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158741
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】村上 由夏
(72)【発明者】
【氏名】内田 寛明
(72)【発明者】
【氏名】降旗 渉
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA05
5F063AA18
5F063AA29
5F063AA48
5F063DD69
5F063DD85
5F063DE11
5F063DG03
5F063DG23
5F063EE02
5F063EE04
5F063EE07
5F063EE08
5F063EE22
5F063EE25
5F063EE27
5F063EE31
5F063EE43
5F063EE44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エネルギー線照射前での搬送手段に対する剥離性に優れるエネルギー線硬化型の半導体加工用粘着テープを提供する。
【解決手段】基材1と、基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層2と、を有する半導体加工用粘着テープ10であって、接触荷重0.098N、接触時間30秒の条件にて、プローブタック試験により測定されるタック力が、5.0N以下であり、SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、下記(i)および(ii)の少なくともいずれかを満たす。(i)引張速度300mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、1.5N/20mm以下である。(ii)引張速度1000mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、1.5N/20mm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層と、を有する半導体加工用粘着テープであって、
接触荷重0.098N、接触時間30秒の条件にて、プローブタック試験により測定されるタック力が、5.0N以下であり、
SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、下記(i)および下記(ii)の少なくともいずれかを満たす、半導体加工用粘着テープ。
(i)引張速度300mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、1.5N/20mm以下である。
(ii)引張速度1000mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、1.5N/20mm以下である。
【請求項2】
基材と、前記基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層と、を有する半導体加工用粘着テープであって、
接触荷重0.98N、接触時間30秒の条件にて、プローブタック試験により測定されるタック力が、5.0N以下であり、
SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、下記(i)および下記(ii)の少なくともいずれかを満たす、半導体加工用粘着テープ。
(i)引張速度300mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、2.0N/20mm以下である。
(ii)引張速度1000mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、2.0N/20mm以下である。
【請求項3】
SUS板に対する粘着力が、5.0N/25mm以上である、請求項1または請求項2に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項4】
エネルギー線照射後のSUS板に対する粘着力が、2.0N/25mm以下である、請求項1または請求項2に記載の半導体加工用粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体加工用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程では、ウェハをチップに切断(ダイシング)するダイシング工程において、ウェハおよびチップを保護および固定するために、ダイシングテープと呼ばれる半導体加工用粘着テープが用いられている。
【0003】
半導体加工用粘着テープには、加工工程中はウェハやチップを十分な粘着力で固定できるとともに、加工工程後はチップを破損することなく容易に剥離できることが求められる。
【0004】
このような半導体加工用粘着テープとしては、例えば、エネルギー線硬化型の粘着テープの開発が盛んに行われている(例えば特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6829250号
【特許文献2】特許第6561115号
【特許文献3】特許第5053455号
【特許文献4】特許第5019657号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のエネルギー線硬化型の粘着テープは、エネルギー線の照射により粘着層を硬化させることで粘着力を低下させることができるが、エネルギー線照射前の加工工程中はウェハやチップを強固に固定できる粘着テープである。
【0007】
近年、ウェハおよびチップの高精細化や複雑化に伴い、半導体加工用粘着テープには、より高い粘着力が求められている。しかし、半導体加工用粘着テープの粘着力が高いと、半導体加工用粘着テープが、例えば搬送ロール、チャック等の搬送手段に密着し、貼り付いてしまう場合がある。この場合、半導体加工用粘着テープの搬送が困難になるという問題がある。
【0008】
この問題に対しては、搬送手段を加工する対策が行われている。例えば、搬送手段に、粒子状の非粘着性成分を塗布したり、シリコーン樹脂コーティングまたはフッ素樹脂コーティングを施したり、シリコーン樹脂層またはフッ素樹脂層を巻き付けたりする方法が知られている。しかし、使用する半導体加工用粘着テープに応じて搬送手段を加工した場合においても、半導体加工用粘着テープを変更すると、半導体加工用粘着テープの粘着層の種類によっては、依然として搬送手段への貼り付きが生じる場合がある。
【0009】
また、このような搬送手段への半導体加工用粘着テープの貼りつきは、上述のような半導体加工用粘着テープを用いた半導体の製造工程中のみならず、半導体加工用粘着性テープの作製工程中でも生じる場合がある。
【0010】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、エネルギー線硬化型の粘着テープにおいて、エネルギー線照射前での搬送手段に対する剥離性に優れる粘着テープを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一実施形態は、基材と、上記基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層と、を有する半導体加工用粘着テープであって、接触荷重0.098N、接触時間30秒の条件にて、プローブタック試験により測定されるタック力が、5.0N以下であり、SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、下記(i)および下記(ii)の少なくともいずれかを満たす、半導体加工用粘着テープを提供する。
(i)引張速度300mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、1.5N/20mm以下である。
(ii)引張速度1000mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、1.5N/20mm以下である。
【0012】
本開示の他の実施形態は、基材と、上記基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層と、を有する半導体加工用粘着テープであって、接触荷重0.98N、接触時間30秒の条件にて、プローブタック試験により測定されるタック力が、5.0N以下であり、SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、下記(i)および下記(ii)の少なくともいずれかを満たす、半導体加工用粘着テープを提供する。
(i)引張速度300mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、2.0N/20mm以下である。
(ii)引張速度1000mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、2.0N/20mm以下である。
【発明の効果】
【0013】
本開示における半導体加工用粘着テープは、エネルギー線照射前において、搬送手段に対して優れた剥離性を有するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示における半導体加工用粘着テープの一例を示す概略断面図である。
図2】半導体の製造方法を例示する工程図である。
図3】半導体の製造方法を例示する工程図である。
図4】半導体加工用粘着テープを切断する工程を例示する模式図である。
図5】半導体加工用粘着テープの余剰部分の搬送工程を例示する模式図である。
図6】SUS製ロールに対する引き剥がし強度の測定に用いられる剥離治具を例示する概略正面図および側面図である。
図7】SUS製ロールに対する引き剥がし強度の測定方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈が限定されるべきではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0016】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0017】
本開示の発明者らは、半導体加工用粘着テープにおいて、粘着特性と搬送手段への貼り付きとの関連性について鋭意検討を行った。そして、半導体加工用粘着テープの粘着力と、搬送手段への貼り付きとは、相関しないことを知見した。一方で、半導体加工用粘着テープのタックと、搬送手段への貼り付きとは、相関することを知見した。ここで、粘着力は、恒久的な接着性の指標と考えられている。一方、タックは、瞬間的な接着性の指標と考えられている。半導体加工用粘着テープの作製工程および半導体加工用粘着テープを用いた半導体の製造工程において、半導体加工用粘着テープの粘着層と搬送手段とが接触している時間は、半導体加工用粘着テープの粘着層と被着体とが接触している時間に比べ、通常、非常に短い。そこで、本開示の発明者らは、瞬間的な接着性に着目した。さらに、瞬間的な接着性の指標として、タックに加えて、搬送ロールを模したSUS製ロールに対する引き剥がし強度にも着目し、これらを指標とすることで、搬送手段への貼り付きを適切に評価できることを見出した。本開示は、このような知見に基づき完成された。
【0018】
本開示の半導体加工用粘着テープについて、第一実施形態および第二実施形態に分けて詳細に説明する。
【0019】
A.第一実施形態
本実施形態の半導体加工用粘着テープは、基材と、上記基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層と、を有する半導体加工用粘着テープであって、接触荷重0.098N、接触時間30秒の条件にて、プローブタック試験により測定されるタック力が、5.0N以下であり、SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、下記(i)および下記(ii)の少なくともいずれかを満たす。
(i)引張速度300mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、1.5N/20mm以下である。
(ii)引張速度1000mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、1.5N/20mm以下である。
【0020】
図1は、本実施形態の半導体加工用粘着テープを例示する概略断面図である。図1における半導体加工用粘着テープ10は、基材1と、基材1の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層2とを有している。本実施形態の半導体加工用粘着テープ10においては、接触荷重0.098N、接触時間30秒の条件にて、プローブタック試験により測定されるタック力が、所定の値以下である。さらに、本実施形態の半導体加工用粘着テープ10においては、SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、上記(i)および(ii)の少なくともいずれかを満たす。
【0021】
図2(a)~(f)は、半導体加工用粘着テープを用いた半導体の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、リングフレーム21に半導体加工用粘着テープ10を貼り付けて、ウェハ11を半導体加工用粘着テープ10に貼り付ける。次に、図2(b)に示すように、半導体加工用粘着テープ10をリングフレーム21に沿って切断する。次に、図2(c)に示すように、ウェハ11をチップ12に切断(ダイシング)するダイシング工程を行う。次に、図2(d)に示すように、半導体加工用粘着テープ10を引き伸ばして、チップ12同士の間隔を広げるエキスパンド工程を行う。次に、図示しないが、半導体加工用粘着テープ10のエネルギー線硬化性の粘着層にエネルギー線を照射して硬化させることで粘着力を低下させ、図2(e)に示すように、チップ12を半導体加工用粘着テープ10から剥離して、チップ12をピックアップするピックアップ工程を行う。次いで、図2(f)に示すように、ピックアップされたチップ12を基板30に接着するマウント(ダイボンディング)工程を行う。
【0022】
図3(a)~(e)は、半導体加工用粘着テープを用いた半導体の製造方法の他の例を示す工程図である。まず、図3(a)に示すように、リングフレーム21に半導体加工用粘着テープ10を貼り付けて、ウェハ11を半導体加工用粘着テープ10に貼り付ける。次に、図3(b)に示すように、半導体加工用粘着テープ10をリングフレーム21に沿って切断する。次に、図3(c)に示すように、ウェハ11をチップ12に切断(ダイシング)するダイシング工程を行う。次に、図3(d)に示すように、チップ12の半導体加工用粘着テープ10とは反対側の面に転写テープ40を貼り付けた後、図示しないが、半導体加工用粘着テープ10のエネルギー線硬化性の粘着層にエネルギー線を照射して硬化させることで粘着力を低下させ、図3(e)に示すように、半導体加工用粘着テープ10をチップ12およびリングフレーム21から剥離して、チップ12およびリングフレーム21を転写テープ40に転写する転写工程を行う。
【0023】
ここで、例えば、半導体加工用粘着テープは、半導体加工用粘着テープが巻回されて構成された巻回体から巻き出された後、必要に応じて半導体加工用粘着テープからセパレータが剥がされる剥離工程、図2(a)および図3(a)に示すような貼付工程、図2(c)および図3(c)に示すような切断工程、図示しないが、切断後に半導体加工用粘着テープの余剰部分を巻き取る除去工程に順に送られる。これらの工程において、半導体加工用粘着テープの粘着層が、搬送ロール、チャック等の搬送手段に接触する場合がある。
【0024】
具体的には、全自動ウェハマウンターを用いて、図2(b)および図3(b)に示すように半導体加工用粘着テープを切断する場合、図4(a)に示すように、ウェハ11およびリングフレーム21に貼付した半導体加工用粘着テープ10を、カッターCを円周状に移動させることによって切断する。その後、図4(b)~(c)に示すように、半導体加工用粘着テープ10の余剰部分10xをチャック等の掴み部材で掴み上げる。次に、図5に示すように、半導体加工用粘着テープ10の余剰部分10xを、搬送ロールにより搬送し、図示しないが、巻取ロールによって巻き取る。このように半導体加工用粘着テープの余剰部分を搬送する場合にも、半導体加工用粘着テープの粘着層が、搬送手段と接触する場合がある。
【0025】
なお、搬送ロールやチャック等の搬送手段の材質は、SUSであることが多い。
【0026】
本実施形態の半導体加工用粘着テープにおいては、プローブタック試験により測定されるタック力が、所定の値以下であり、かつ、SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、上記(i)および(ii)の少なくともいずれかを満たすことにより、搬送手段への貼り付きを抑制できる。したがって、搬送手段に対する半導体加工用粘着テープの剥離性を向上できる。さらに、搬送手段への貼り付きによる半導体加工用粘着テープのちぎれを抑制でき、作業性を向上できる。
【0027】
以下、本実施形態の半導体加工用粘着テープの各構成について説明する。
【0028】
1.半導体加工用粘着テープの特性
(1)プローブタック試験によるタック力
本実施形態の半導体加工用粘着テープにおいては、接触荷重0.098N、接触時間30秒の条件にて、プローブタック試験により測定されるタック力が、5.0N以下であり、好ましくは4.5N以下であり、より好ましくは4.0N以下である。上記タック力が、上記範囲であることにより、エネルギー線照射前において、半導体加工用粘着テープの粘着層が搬送手段と接触しても容易に剥離できる。一方、上記タック力は、例えば、0.1N以上であり、0.4N以上であってもよい。上記タック力が上記範囲であることにより、エネルギー線照射前において、ウェハやチップを十分に固定することができる。
【0029】
ここで、本実施形態において、上記タック力は、下記条件にて、プローブタック試験により測定した値である。プローブタック試験法においては、半導体加工用粘着テープの粘着層の表面に、円柱状のプローブを接触させた後、引き剥がし、引き剥がすときの最大荷重を測定する。この測定を5回行い、平均値を算出し、タック力とする。測定装置としては、例えば、RHESCA社製のタッキング試験機「TAC-II」を使用できる。
【0030】
(測定条件)
接触速度:30mm/分
接触荷重:0.098N
接触時間:30秒
剥離速度:600mm/分
プローブ:円柱直径 5mm
プローブ材質:SUS
プローブ温度:25℃
ステージ温度:25℃
測定環境:25±2℃、40±5%RH
【0031】
上記タック力を制御する手段としては、例えば、粘着層に含有される成分または組成を調整する方法、粘着層の弾性率を調整する方法等が挙げられる。
【0032】
粘着層に含有される成分または組成を調整する方法としては、具体的には、樹脂(粘着主剤)の分子量を調整する方法、エネルギー線硬化性化合物の分子量、含有量、官能基数を調整する方法、添加剤のガラス転移温度を調整する方法が挙げられる。例えば、樹脂(粘着主剤)の分子量が大きくなると、タック力が小さくなる傾向にある。また、エネルギー線硬化性化合物の分子量が大きくなると、タック力が小さくなる傾向にある。また、エネルギー線硬化性化合物の含有量が少なくなると、タック力が小さくなる傾向にある。また、エネルギー線硬化性化合物の官能基数が多くなると、含有量が少ない場合でもエネルギー線照射後の剥離性が十分に得られるため、結果的にエネルギー線照射前のタック力が小さくなる傾向にある。また、添加剤のガラス転移温度が高くなると、タック力が小さくなる傾向にある。
【0033】
粘着層の弾性率を調整する方法においては、粘着層の弾性率が大きくなると、タック力が小さくなる傾向にある。
【0034】
(2)SUS製ロールに対する引き剥がし強度
本実施形態の半導体加工用粘着テープにおいては、SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、下記(i)および下記(ii)の少なくともいずれかを満たす。
(i)引張速度300mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、1.5N/20mm以下である。
(ii)引張速度1000mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、1.5N/20mm以下である。
【0035】
本実施形態の半導体加工用粘着テープは、上記(i)のみを満たしていてもよく、上記(ii)のみを満たしていてもよく、上記(i)および(ii)の両方を満たしていてもよい。中でも、本実施形態の半導体加工用粘着テープは、上記(i)および(ii)の両方を満たすことが好ましい。
【0036】
なお、上記(i)と上記(ii)とで引張速度が異なるのは、半導体加工用粘着テープを用いた半導体の製造工程および半導体加工用粘着テープの作製工程において、引張速度は適宜設定されるためである。そのため、引張速度は、低速および高速の2種類としている。
【0037】
上記(i)を満たす半導体加工用粘着テープにおいては、引張速度300mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、1.5N/20mm以下であり、好ましくは1.0N/20mm以下である。
【0038】
上記(ii)を満たす半導体加工用粘着テープにおいては、引張速度1000mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、1.5N/20mm以下であり、好ましくは1.0N/20mm以下である。
【0039】
ここで、上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度は、SUS製ロールを有する剥離治具と、引張試験機とを用いて測定された値である。
【0040】
剥離治具としては、JIS C6481:1996(プリント配線板用銅張積層板試験方法)に準拠する90°剥離試験に用いられる剥離治具を使用する。具体的には、剥離治具としては、A&D(エーアンドディ)社製「J-PZ-200N」(テンシロン万能試験機アプリケーション)を使用する。図6(a)は、剥離治具の概略正面図、図6(b)は剥離治具の概略側面図である。図7は、剥離治具に半導体加工用粘着テープを取り付けた際のSUS製ロール近傍の部分拡大断面図である。図6(a)および図6(b)に示すように、剥離治具50は、4本のロールR1~R4を有する。SUS製ロールに対する引き剥がし強度の測定には、これらのロールR1~R4のうち、第1ロールR1、第2ロールR2、第3ロールR3が用いられる。第1ロールR1の直径d1は8±2mm、第2ロールR2のロールの直径d2は8±2mm、第3ロールR3のロールの直径d3は8mm以上10mm以下である。また、第1ロールR1の中心O1と第2ロールR2の中心O2との間の距離Dは、26±1mmである。また、剥離治具50の底面からの第1ロールR1の中心O1までの高さと、剥離治具50の底面から第2ロールR2の中心O2までの高さとは同一である。
【0041】
また、引張試験機としては、エー・アンド・デイ社製のテンシロン万能試験機「RTF-1150-H」を使用できる。
【0042】
上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度は、下記の方法により測定できる。まず、半導体加工用粘着テープを剥離治具に取り付ける。具体的には、図7に示すように、半導体加工用粘着テープ10の基材1側の面が第1ロールR1および第3ロールR3と接触するように、かつ、半導体加工用粘着テープ10の粘着層2側の面が第2ロールR2と接触するように、半導体加工用粘着テープ10を配置する。続いて、半導体加工用粘着テープ10を上方90°に引き出す。これにより、半導体加工用粘着テープ10の粘着層2の面が、第2ロールR2に巻き付くことになる。次いで、上方90°に引き出された半導体加工用粘着テープ10の先端を、図示しないが、引張試験機に取り付ける。次に、所定の引張速度にて、半導体加工用粘着テープ10を上方90°に引っ張り、最大強度を測定する。この測定を5回行い、平均値を算出し、SUS製ロールに対する引き剥がし強度とする。
【0043】
なお、上記のような剥離治具は、搬送ロールを模していると考えられる。また、上記のような測定方法においては、半導体加工用粘着テープが、剥離治具の第2ロールに巻き付いてから引き剥がされるときの引き剥がし強度を測定できる。そのため、このような剥離治具を用いて測定されるSUS製ロールに対する引き剥がし強度を指標とすることによって、搬送手段への貼り付きを適切に評価できると推量される。
【0044】
上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度を制御する手段としては、例えば、粘着層に含有される成分または組成を調整する方法、粘着層の弾性率を調整する方法、基材のヤング率を調整する方法等が挙げられる。
【0045】
粘着層に含有される成分または組成を調整する方法としては、具体的には、樹脂(粘着主剤)の分子量を調整する方法、エネルギー線硬化性化合物の分子量、含有量、官能基数を調整する方法、添加剤のガラス転移温度を調整する方法が挙げられる。例えば、樹脂(粘着主剤)の分子量が大きくなると、引き剥がし強度が小さくなる傾向にある。また、エネルギー線硬化性化合物の分子量が大きくなると、引き剥がし強度が小さくなる傾向にある。また、エネルギー線硬化性化合物の含有量が少なくなると、引き剥がし強度が小さくなる傾向にある。また、エネルギー線硬化性化合物の官能基数が多くなると、含有量が少ない場合でもエネルギー線照射後の剥離性が十分に得られるため、結果的にエネルギー線照射前の引き剥がし強度が小さくなる傾向にある。また、添加剤のガラス転移温度が高くなると、引き剥がし強度が小さくなる傾向にある。
【0046】
粘着層の弾性率を調整する方法においては、粘着層の弾性率が大きくなると、引き剥がし強度が小さくなる傾向にある。
【0047】
基材のヤング率を調整する方法においては、基材のヤング率が大きくなると、引き剥がし強度が小さくなる傾向にある。
【0048】
(3)SUS板に対する粘着力
本実施形態の半導体加工用粘着テープにおいては、SUS板に対する粘着力が、例えば、3.0N/25mm以上であることが好ましく、5.0N/25mm以上であることがより好ましい。SUS板に対する粘着力が上記範囲であることにより、エネルギー線を照射するまでの間、半導体加工用粘着テープにウェハや分割されたチップを十分に固定することができる。一方、上記のSUS板に対する粘着力の上限は、特に限定されない。
【0049】
ここで、SUS板に対する粘着力は、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)の試験方法の方法1(温度23℃湿度50%、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠し、幅25mm、剥離角度180°、剥離速度300mm/minの条件で、試験片の長さ方向に剥がすことにより、測定できる。SUS板は、SUS304、表面仕上げBA、厚さ1.5mm、大きさ100mm×150mmのSUS板を使用できる。
【0050】
一方、エネルギー線硬化性の粘着層は、エネルギー線の照射により硬化することで粘着力が低下する。本実施形態の半導体加工用粘着テープにおいて、エネルギー線照射後のSUS板に対する粘着力は、例えば、2.5N/25mm以下であることが好ましく、2.0N/25mm以下であることがより好ましい。エネルギー線照射後のSUS板に対する粘着力が上記範囲であることにより、エネルギー線照射後には半導体加工用粘着テープからチップを容易に剥離することができる。一方、エネルギー線照射後のSUS板に対する粘着力の下限は特に限定されないが、例えば、0.01N/25mm以上である。
【0051】
ここで、エネルギー線照射後のSUS板に対する粘着力は、下記の方法により、測定することができる。まず、半導体加工用粘着テープの粘着層にエネルギー線を照射し、硬化させる。この際、例えば、半導体加工用粘着テープの基材側の面からエネルギー線を照射することができる。次に、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)の試験方法の方法1(温度23℃湿度50%RH、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠し、幅25mm、剥離角度180°、剥離速度300mm/minの条件で、試験片の長さ方向に剥がすことにより、エネルギー線照射後のSUS板に対する粘着力を測定できる。SUS板は、SUS304、表面仕上げBA、厚さ1.5mm、幅100mm、長さ150mmのSUS板を使用できる。
【0052】
(4)ヤング率
本実施形態の半導体加工用粘着テープにおいて、ヤング率は、例えば、20MPa以上であり、30MPa以上であることが好ましく、40MPa以上であることが特に好ましい。一方、500MPa以下であることがより好ましく、300MPa以下であることがさらに好ましい。半導体加工用粘着テープのヤング率が上記範囲内であれば、半導体加工用粘着テープを適度に硬くできるため、上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度を上記範囲となるように容易に調整できる。また、搬送ロールを用いた搬送が容易になる。さらに、エキスパンド性を向上できる。一方、半導体加工用粘着テープのヤング率が低すぎると、半導体加工用粘着テープが極端に柔らかくなるため、搬送時やエキスパンド時に半導体加工用粘着テープがちぎれてしまう可能性がある。
【0053】
ここで、半導体加工用粘着テープのヤング率は、JIS K7127に準拠して測定できる。具体的な測定条件を下記に示す。引張試験機としては、例えば、エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTF1150」を使用できる。
【0054】
(測定条件)
・試験片:試験片タイプ5
・チャック間距離:60mm
・引張速度:100mm/min
・温度:23℃
・湿度:50%RH
【0055】
2.粘着層
本実施形態における粘着層は、基材の一方の面に配置され、エネルギー線硬化性を有する部材である。エネルギー線硬化性の粘着層は、エネルギー線の照射により硬化することで粘着力が低下する。エネルギー線硬化性の粘着層においては、その初期粘着力により、ダイシング工程ではウェハや分割されたチップを固定できる。また、ピックアップ工程または転写工程では、エネルギー線を照射して硬化させることで粘着力が低下して剥離性が向上するため、チップを容易に剥離または転写できる。
【0056】
エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が挙げられる。中でも、汎用性等の観点から、紫外線、電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0057】
粘着層としては、上記のタック力およびSUS製ロールに対する引き剥がし強度を満たしていれば特に限定されず、例えば、樹脂(粘着主剤)と、エネルギー線硬化性化合物とを少なくとも含有することができる。粘着層がエネルギー線硬化性化合物を含有することにより、エネルギー線の照射によりエネルギー線硬化性化合物を硬化させることで、粘着力を低下させることができ、また、このとき凝集力が高まるため、剥離が容易になる。
【0058】
(1)樹脂(粘着主剤)
樹脂(粘着主剤)としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂等、一般に粘着剤の主剤として用いられる樹脂が挙げられる。中でも、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂を用いることにより、電子部品等の被着体への糊残りや汚染を低減できる。
【0059】
よって、粘着層は、アクリル系樹脂と、エネルギー線硬化性化合物と、架橋剤とを少なくとも含有することが好ましい。粘着層内において、アクリル系樹脂は、通常、架橋剤によりアクリル系樹脂間が架橋されてなる架橋体として存在するが、架橋体と共にアクリル系樹脂の単体が含まれていてもよい。
【0060】
(アクリル系樹脂)
アクリル系樹脂としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステルを単独重合させた(メタ)アクリル酸エステル重合体、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させた(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルおよび他の単量体の具体例としては、特開2012-31316号公報に開示されるものが挙げられる。他の単量体は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ここでの主成分とは、共重合割合が51質量%以上であることを意味し、好ましくは65質量%以上である。
【0061】
中でも、アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な水酸基含有モノマーとの共重合により得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーとの共重合により得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体を好適に用いることができる。
【0062】
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方をいう。
【0063】
共重合可能な水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーとしては、特に限定されず、例えば特開2012-31316号公報に開示される水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーが用いられる。
【0064】
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、例えば、1万以上100万以下であることが好ましく、20万以上80万以下であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量を上記範囲内とすることで、十分な初期粘着力を発揮できる。また、電子部品等の被着体への糊残りや汚染を低減できる。一方、アクリル系樹脂の重量平均分子量が大きすぎると、粘着層が硬く脆くなる可能性がある。
【0065】
ここで、本明細書において、重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際のポリスチレン換算値である。重量平均分子量は、例えば、測定装置に東ソー株式会社製のHLC-8220GPCを、カラムに東ソー株式会社製のTSKGEL-SUPERMULTIPORE-HZ-Mを、溶媒にTHFを、標準品として分子量が1050、5970、18100、37900、96400、706000の標準ポリスチレンを用いることで測定することができる。
【0066】
また、アクリル系樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーとの(メタ)アクリル酸エステル共重合体である場合、上記水酸基含有モノマーと上記カルボキシル基含有モノマーとの質量比としては、例えば、51:49~100:0であることが好ましく、中でも75:25~100:0であることが好ましい。各モノマーの質量比が上記範囲内であれば、エネルギー線照射による効果的な粘着力の低下が期待でき、糊残りの発生を抑制できる。
【0067】
また、アクリル系樹脂は、エネルギー線硬化性を有していてもよく、例えば、側鎖にエネルギー線硬化性官能基を有していてもよい。エネルギー線硬化性官能基としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有することが好ましく、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0068】
(2)エネルギー線硬化性化合物
エネルギー線硬化性化合物は、エネルギー線の照射を受けて重合するものであれば特に限定されず、例えば、エネルギー線硬化性官能基を有する化合物が挙げられる。
【0069】
エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、エネルギー線硬化性モノマー、エネルギー線硬化性オリゴマー、エネルギー線硬化性ポリマーが挙げられる。なお、エネルギー線硬化性ポリマーは、上記の樹脂(粘着主剤)とは異なるポリマーである。中でも、エネルギー線照射前後の粘着力のバランスの観点から、エネルギー線硬化性オリゴマーが好ましい。また、エネルギー線硬化性モノマー、エネルギー線硬化性オリゴマー、エネルギー線硬化性ポリマーを組み合わせて用いてもよい。例えば、エネルギー線硬化性オリゴマーに加えてエネルギー線硬化性モノマーを用いる場合には、エネルギー線を照射した際に、粘着層を三次元架橋により硬化させて粘着力を低下させるとともに、凝集力を高めてチップ側へ転着させないようにすることができる。
【0070】
また、エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性化合物が好ましい。硬化速度が速く、また、多種多様な化合物から選択することができ、さらには、エネルギー線照射前後の粘着力等の物性を容易に制御することができる。
【0071】
エネルギー線硬化性化合物において、エネルギー線硬化性官能基の数は、1分子中に2個以上であることが好ましく、1分子中に3個以上であることがより好ましく、1分子中に4個以上であることがさらに好ましい。エネルギー線硬化性官能基の数が上記範囲内であれば、エネルギー線照射後の粘着層の架橋密度が十分となるので、所望の剥離性を実現できる。また、凝集力の低下による糊残りの発生を抑制できる。また、1分子中に4個以上の上記官能基を有するエネルギー線硬化性化合物であれば、1分子中に2個の上記官能基を有するエネルギー線硬化性化合物と比べ、含有量が少なくとも、上述した所望の剥離性が得られる。そのため、エネルギー線照射前において、上記タック力および上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度を低減できる。また、エネルギー線硬化性官能基の数の上限は、特に限定されない。
【0072】
エネルギー線硬化性化合物は、ラジカル重合性オリゴマーであることが好ましく、ラジカル重合性多官能オリゴマーであることがより好ましい。ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば特開2012-31316号公報に開示されるものが挙げられる。
【0073】
また、エネルギー線硬化性化合物として、ラジカル重合性オリゴマーおよびラジカル重合性モノマーを用いてもよく、中でも、ラジカル重合性多官能オリゴマーおよびラジカル重合性多官能モノマーを用いてもよい。ラジカル重合性モノマーとしては、例えば特開2010-173091号公報に開示されるものが挙げられる。
【0074】
また、エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー、(メタ)アクリレート系ポリマー等を挙げることができる。また、エネルギー線硬化性化合物として、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等を用いることもできる。
【0075】
また、エネルギー線硬化性化合物は、市販品を用いてもよい。例えば、三菱ケミカル社製のウレタンアクリレート「紫光UV7620EA(分子量:4100)」;根上工業社製のウレタンアクリレート「アートレジンUN-905(分子量:50000~210000)」、「アートレジンUN-905DU1(分子量:26000)」、「アートレジンUN-951SC(分子量:12500)」、「アートレジンUN-952(分子量:6500~9500)」、「アートレジンUN-953(分子量:14000~40000)」、「アートレジンUN-954(分子量:4200)」、「アートレジンH-219(分子量:25000~50000)」、「アートレジンH-315M(分子量:6600)」、「アートレジンH-417M(分子量:4000)」;大成ファインケミカル社製のアクリルウレタンポリマー「8BR-600(分子量:100000)」;DIC社製のポリマーアクリレート「ユニディックV-6850」;共栄社化学社製のアクリルポリマー「SMP-250AP(分子量:20000~30000)」、「SMP-360A(分子量:20000~30000)」;昭和電工マテリアルズ社製のアクリル樹脂アクリレート「HA7975」等が挙げられる。
【0076】
エネルギー線硬化性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
また、エネルギー線硬化性化合物の分子量を調整することにより、上記タック力および上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度の制御が可能となる。例えば、エネルギー線硬化性化合物の分子量が小さいと、上記タック力および上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度が大きくなる傾向にあり、エネルギー線硬化性化合物の分子量が大きいと、上記タック力および上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度が小さくなる傾向にある。エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、3,000以上であることが好ましく、3,500以上であることがより好ましく、4,100以上であることがさらに好ましい。エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量が上記範囲であれば、上記タック力および上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度を所定の範囲内になるように容易に調整できる。一方、エネルギー線硬化性樹脂組成物の重量平均分子量は、例えば、50,000以下であることが好ましく、30,000以下であることがより好ましく、10,000以下であることがさらに好ましい。エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量が上記範囲であれば、アクリル系樹脂(粘着主剤)と十分な相溶性を示し、粘着層が、エネルギー線照射前には所望の粘着力を示し、エネルギー線照射後には糊残りの発生が抑制され、容易に剥離可能となる。また、粘着層は、重量平均分子量が10,000以上のエネルギー線硬化性化合物を含むことが好ましい。一方、粘着層は、重量平均分子量が3,000以下のエネルギー線硬化性化合物を含まないことが好ましい。
【0078】
また、エネルギー線硬化性化合物の含有量を調整することにより、上記タック力および上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度の制御が可能となる。例えば、エネルギー線硬化性化合物の含有量が少ないと、上記タック力および上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度が小さくなる傾向にあり、エネルギー線硬化性化合物の含有量が多いと、上記タック力および上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度が大きくなる傾向にある。エネルギー線硬化性化合物の含有量は、例えば、樹脂(粘着主剤)100質量部に対して、5質量部以上150質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、50質量部以上80質量部以下であることがさらに好ましい。エネルギー線硬化性化合物の含有量が上記範囲内であれば、エネルギー線照射後の粘着層の架橋密度が十分となるので、所望の剥離性を実現することができる。また、凝集力の低下による糊残りの発生を抑制できる。
【0079】
(3)重合開始剤
粘着層は、樹脂(粘着主剤)およびエネルギー線硬化性化合物に加えて、重合開始剤を含有できる。
【0080】
重合開始剤としては、一般的な光重合開始剤を用いることができる。具体的には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α-ヒドロキシケトン類、ベンジルメチルケタール類、α-アミノケトン類、ビスアシルフォスフィンオキサイド類が挙げられる。エネルギー線硬化性化合物としてウレタンアクリレートを使用する場合には、重合開始剤がビスアシルフォスフィン系重合開始剤であることが好ましい。この重合開始剤は耐熱性を有するため、基材に粘着剤組成物を塗布してエネルギー線照射を行う際に、基材を介してエネルギー線照射を行う場合であっても、確実にエネルギー線硬化性化合物を硬化できる。
【0081】
重合開始剤は、波長230nm以上に吸収を有することが好ましく、波長300nm以上400nm以下に吸収を有することが好ましい。このような重合開始剤は、波長300nm以上の幅の広いエネルギー線を吸収し、エネルギー線硬化性化合物の重合反応を誘発する活性種を効率的に生成することができる。そのため、少量のエネルギー線照射量でもエネルギー線硬化性化合物を効率的に硬化させることができ、容易に剥離可能となる。また、後述するように基材には樹脂等を用いることができ、樹脂には、波長300nm程度までのエネルギー線を吸収するものの、波長300nm程度以上のエネルギー線を透過するものが多い。さらに、近年では、エネルギー線照射装置において、波長300nm以上のLEDランプを使用することが多い。そのため、波長230nm以上に吸収を有する重合開始剤を用いることにより、基材を透過したエネルギー線を利用してエネルギー線硬化性化合物を硬化できる。
【0082】
重合開始剤の含有量は、例えば、樹脂(粘着主剤)およびエネルギー線硬化性化合物の合計100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上6質量部以下であることがより好ましい。重合開始剤の含有量が上記範囲に満たないと、エネルギー線硬化性化合物の重合反応が十分起こらず、エネルギー線照射後の粘着層の粘着力が過剰に高くなり、剥離性を実現することができない場合がある。一方、重合開始剤の含有量が上記範囲を超えると、エネルギー線照射面の近傍にしかエネルギー線が届かず、粘着層の硬化が不十分となる場合がある。また、凝集力が低下し、糊残りの発生の原因となる場合もある。
【0083】
(4)架橋剤
粘着層は、樹脂(粘着主剤)およびエネルギー線硬化性化合物に加えて、架橋剤を含有することができる。
【0084】
架橋剤は、少なくとも樹脂(粘着主剤)間を架橋するものであれば特に限定されるものではなく、樹脂(粘着主剤)の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤の具体例としては、特開2012-31316号公報に開示されるものが挙げられる。架橋剤は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
架橋剤の含有量は、架橋剤の種類に応じて適宜設定できる。架橋剤の含有量は、例えば、樹脂(粘着主剤)100質量部に対して、0.01質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲に満たないと、密着性が劣る場合や、チップを剥離または転写する際に粘着層が凝集破壊を起こして糊残りが生じる場合がある。一方、架橋剤の含有量が上記範囲を超えると、エネルギー線照射後の粘着層中に架橋剤が未反応モノマーとして残留することで、凝集力の低下により糊残りの発生の原因となる場合がある。
【0086】
(5)添加剤
粘着層は、必要に応じて、各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、粘着付与剤、耐電防止剤、可塑剤、シランカップリング剤、金属キレート剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、防腐剤、消泡剤、ぬれ性調整剤等が挙げられる。
【0087】
これらの添加剤においては、添加剤のガラス転移温度を調整することにより、上記タック力および上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度の制御が可能となる。例えば、添加剤のガラス転移温度が高くなると、上記タック力および上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度が小さくなる傾向にある。添加剤のガラス転移温度は、特に限定されないが、例えば、-10℃以上、150℃以下であることが好ましく、5℃以上、100℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内である添加剤は、常温で粘着性を有さない。そのため、そのような添加剤が含まれることにより、上記タック力および上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度を上記範囲となるように容易に調整できる。粘着層が添加剤を含む場合、少なくとも1つの添加剤のガラス転移温度が上記範囲内であることが好ましい。中でも、後述する粘着力調整剤のガラス転移温度が、上記範囲内であることが好ましい。
【0088】
また、粘着層は、粘着力調整剤を含むことが好ましい。粘着力調整剤としては、例えば、アクリル系ブロック共重合体、ポリエステル樹脂等が挙げられる。アクリル系ブロック共重合体としては、例えば、クラレ社製のクラリティシリーズ(例えば、「LA4285(Mw:約65000)」、「LA2250(Mw:約67000)」、「LA2140(Mw:約125000)」、「LA3320(Mw:約115000)」等)、アルケマ社製のNANOSTRENGTH(例えば、「M22(Mw:約130000)」、「M22N(Mw:約100000~200000)」、「M52N(Mw:約100000)」等)が挙げられる。また、ポリエステル樹脂としては、例えば、東洋紡社製のバイロンシリーズ(例えば、「バイロン200(Mn:約17000)」、「バイロン600(Mn:約16000)」等)、ユニチカ社製のエリーテルシリーズ(「エリーテルUE3210(Mw:約20000)」、「エリーテルUE9200(Mw:約15000)」等)が挙げられる。
【0089】
(6)貯蔵弾性率
本実施形態における粘着層は、温度25℃、周波数1Hzでの貯蔵弾性率が、例えば、5MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましい。粘着層の貯蔵弾性率が上記範囲であれば、粘着層を適度に硬くできるため、上記タック力および上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度を上記範囲となるように容易に調整できる。一方、上記貯蔵弾性率の上限は、特に限定されないが、例えば、50MPa以下であることが好ましく、40MPa以下であることがより好ましい。上記貯蔵弾性率が上記範囲であれば、剥離するときの硬さ(弾性率)を低くでき、粘着層を適度に柔らかくできるので、ウェハやチップを十分に固定することができる。
【0090】
ここで、貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(DMA)によって測定された値である。動的粘弾性測定装置(DMA)によって、粘着層の貯蔵弾性率を測定する際には、粘着層を巻くことによって、直径5mm以上7mm以下、高さ5mm以上10mm以下程度の円柱状のサンプルとする。まず、動的粘弾性測定装置の圧縮冶具(パラレルプレートφ8mm)の間に、上記の円柱状の測定サンプルを取り付ける。次に、温度25℃、周波数1Hzの条件で、圧縮荷重をかけ、動的粘弾性測定を行う。動的粘弾性測定装置としては、例えば、ティー・エー・インスツルメント・ジャパン社製のRSA-3を使用できる。
【0091】
(7)粘着層の厚さおよび形成方法
粘着層の厚さは、十分な粘着力が得られ、かつ、エネルギー線が内部まで透過することが可能な厚さであればよく、例えば、3μm以上50μm以下であり、5μm以上40μm以下であってもよい。
【0092】
粘着層の形成方法としては、例えば、基材上に粘着剤組成物を塗布する方法や、セパレータ上に粘着剤組成物を塗布して粘着層を形成し、粘着層および基材を貼り合わせる方法が挙げられる。
【0093】
3.基材
本実施形態における基材は、上記粘着層を支持する部材である。
【0094】
基材としては、特に限定されないが、ピックアップ工程または転写工程では半導体加工用粘着テープの基材側からエネルギー線を照射して粘着層を硬化させることにより、粘着層の粘着力を低下させることが好ましいことから、基材は、エネルギー線を透過することが好ましい。
【0095】
基材のヤング率は、例えば、20MPa以上500MPa以下であることが好ましく、30MPa以上300MPa以下であることがより好ましく、40MPa以上150MPa以下であることがさらに好ましい。基材のヤング率が上記範囲であれば、基材を適度に硬くできるため、上記SUS製ロールに対する引き剥がし強度を上記範囲となるように容易に調整できる。また、搬送ロールを用いた搬送が容易になる。さらに、エキスパンド性を向上できる。一方、基材のヤング率が低すぎると、基材が極端に柔らかくなるため、搬送時やエキスパンド時に半導体加工用粘着テープがちぎれてしまう可能性がある。
【0096】
ここで、基材のヤング率は、JIS K7127に準拠して測定できる。具体的な測定条件を下記に示す。引張試験機としては、例えば、エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTF1150」を使用できる。
【0097】
(測定条件)
・試験片:試験片タイプ5
・チャック間距離:60mm
・引張速度:100mm/min
・温度:23℃
・湿度:50%RH
【0098】
基材の材質としては、上記の特性を満たすことが好ましく、例えば、オレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム系材料が挙げられる。オレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。塩化ビニル樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アクリル系エラストマー、アミド系エラストマーが挙げられる。ゴム系材料としては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴムが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
中でも、エキスパンド性および作業性が良好な基材を得る観点においては、オレフィン系樹脂または塩化ビニル樹脂が好ましい。すなわち、基材は、オレフィン系樹脂または塩化ビニル樹脂を含有することが好ましい。
【0100】
基材は、必要に応じて、例えば、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、分散剤、難燃剤、着色剤等の各種の添加剤を含有していてもよい。
【0101】
基材は、例えば、単層であってもよく、多層であってもよい。
【0102】
基材の粘着層側の面には、粘着層との密着性を向上させるために、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、特に限定されず、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、蒸着処理、アルカリ処理等が挙げられる。
【0103】
基材の厚さは、特に限定されず、例えば、20μm以上500μm以下であり、40μm以上350μm以下であってもよく、50μm以上200μm以下であってもよい。基材の厚さが上記範囲内であれば、エキスパンドしやすく、また破断しない程度の十分な強度を有する基材とすることができる。
【0104】
4.その他の構成
本実施形態の半導体加工用粘着テープは、上記の基材および粘着層の他に、必要に応じて、他の構成を有することができる。
【0105】
本実施形態の半導体加工用粘着テープは、粘着層の基材とは反対側の面にセパレータを有していてもよい。セパレータにより粘着層を保護することができる。
【0106】
また、本実施形態の半導体加工用粘着テープは、基材と粘着層との間にプライマー層を有していてもよい。プライマー層により基材および粘着層の密着性を高めることができる。
【0107】
5.用途
本実施形態の半導体加工用粘着テープは、ダイシングテープとして好適に使用できる。
【0108】
B.第二実施形態
本実施形態の半導体加工用粘着テープは、基材と、上記基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層と、を有する半導体加工用粘着テープであって、接触荷重0.98N、接触時間30秒の条件にて、プローブタック試験により測定されるタック力が、5.0N以下であり、SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、下記(i)および下記(ii)の少なくともいずれかを満たす。
(i)引張速度300mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、2.0N/20mm以下である。
(ii)引張速度1000mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、2.0N/20mm以下である。
【0109】
図1は、本実施形態の半導体加工用粘着テープを例示する概略断面図である。図1における半導体加工用粘着テープ10は、基材1と、基材1の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層2とを有している。本実施形態の半導体加工用粘着テープ10においては、接触荷重0.98N、接触時間30秒の条件にて、プローブタック試験により測定されるタック力が、所定の値以下である。さらに、本実施形態の半導体加工用粘着テープ10においては、SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、上記(i)および(ii)の少なくともいずれかを満たす。
【0110】
本実施形態の半導体加工用粘着テープにおいては、プローブタック試験により測定されるタック力が、所定の値以下であり、かつ、SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、上記(i)および(ii)の少なくともいずれかを満たすことにより、搬送手段への貼り付きを抑制できる。したがって、搬送手段に対する半導体加工用粘着テープの剥離性を向上できる。さらに、搬送手段への貼り付きによる半導体加工用粘着テープのちぎれを抑制でき、作業性を向上できる。
【0111】
1.半導体加工用粘着テープの特性
(1)プローブタック試験によるタック力
本実施形態の半導体加工用粘着テープにおいては、接触荷重0.98N、接触時間30秒の条件にて、プローブタック試験により測定されるタック力が、5.0N以下であり、好ましくは4.5N以下であり、より好ましくは4.0N以下である。上記タック力が、上記範囲であることにより、エネルギー線照射前において、半導体加工用粘着テープの粘着層が搬送手段と接触しても容易に剥離できる。一方、上記タック力は、例えば、0.1N以上であり、0.5N以上であってもよい。上記タック力が上記範囲であることにより、エネルギー線照射前において、ウェハやチップを十分に固定することができる。
【0112】
ここで、上記タック力は、接触荷重を0.98Nとする以外は、上記「A.第一実施形態」に記載したプローブタック試験と同様の方法により測定した値である。
【0113】
なお、第一実施形態と第二実施形態とで接触荷重が異なるのは、半導体加工用粘着テープを用いた半導体の製造工程および半導体加工用粘着テープの作製工程において、半導体加工用粘着テープに搬送手段が接触する際の荷重は変動するためである。そのため、接触荷重は、軽荷重および重荷重の2種類としている。
【0114】
本開示においては、半導体加工用粘着テープが、接触荷重が0.098Nのときの上記タック力および接触荷重が0.98Nのときの上記タック力の両方を満たすことが好ましい。
【0115】
(2)SUS製ロールに対する引き剥がし強度
本実施形態の半導体加工用粘着テープにおいては、SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、下記(i)および下記(ii)の少なくともいずれかを満たす。
(i)引張速度300mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、2.0N/20mm以下である。
(ii)引張速度1000mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、2.0N/20mm以下である。
【0116】
SUS製ロールに対する引き剥がし強度および測定方法については、上記「A.第一実施形態」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0117】
本実施形態における半導体加工用粘着テープの他の特性については、上記「A.第一実施形態」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0118】
2.構成
本実施形態における粘着層、基材、その他の構成、および用途については、上記「A.第一実施形態」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0119】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0120】
以下、実施例および比較例を示し、本開示をさらに説明する。
【0121】
[材料]
下記に、粘着剤組成物に用いた材料を示す。
・アクリル系粘着主剤(アクリル酸エステル共重合体、重量平均分子量80万)
・紫外線硬化性化合物A(官能基数9、分子量4,100)
・紫外線硬化性化合物B(官能基数6、分子量4,200)
・紫外線硬化性化合物C(官能基数6、分子量20,000)
・紫外線硬化性化合物D(官能基数2、分子量3,000)
・重合開始剤(IGM Resins B.V.製 商品名:Omnirad 819)
・架橋剤A(エポキシ系硬化剤)
・架橋剤B(イソシアネート系硬化剤)
【0122】
[実施例1]
アクリル系粘着主剤 100質量部と、紫外線硬化性化合物A 40質量部と、紫外線硬化性化合物B 30質量部と、光重合開始剤 0.35質量部と、架橋剤A 1.0質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
【0123】
ポリエチレンテレフタレート(PET)セパレータ上に、乾燥後の厚さが20μmとなるように上記粘着剤組成物を塗工し、110℃オーブンで3分間乾燥させて、粘着層を形成した。
【0124】
次に、上記粘着層上に、基材(ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ロンシール製「FV5-RP-TR-90」、厚さ90μm)をラミネートした後、50℃で3日間エージングを行い、半導体加工用粘着テープを作製した。
【0125】
[実施例2]
下記のように粘着剤組成物を調製した。得られた粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着層を形成し、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤 100質量部と、紫外線硬化性化合物B 70質量部と、光重合開始剤 0.35質量部と、架橋剤A 1.0質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
【0126】
[実施例3]
下記のように粘着剤組成物を調製した。得られた粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着層を形成し、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤 100質量部と、紫外線硬化性化合物C 70質量部と、光重合開始剤 0.35質量部と、架橋剤A 1質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
【0127】
[実施例4]
下記のように粘着剤組成物を調製した。得られた粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着層を形成し、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤 100質量部と、紫外線硬化性化合物A 40質量部と、紫外線硬化性化合物B 30質量部と、光重合開始剤 0.35質量部と、架橋剤B 5質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
【0128】
[実施例5]
下記のように粘着剤組成物を調製した。得られた粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着層を形成し、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤 100質量部と、紫外線硬化性化合物D 60質量部と、重合開始剤 0.3質量部と、架橋剤A 1質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
【0129】
[比較例1]
下記のように粘着剤組成物を調製した。得られた粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着層を形成し、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤 100質量部と、紫外線硬化性化合物A 40質量部と、紫外線硬化性化合物C 15質量部と、紫外線硬化性化合物D 15質量部と、光重合開始剤 0.35質量部と、架橋剤A 1.0質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
【0130】
[比較例2]
下記のように粘着剤組成物を調製した。得られた粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着層を形成し、半導体加工用粘着テープを作製した。
アクリル系粘着主剤 100質量部と、紫外線硬化性化合物A 70質量部と、光重合開始剤 0.35質量部と、架橋剤A 1質量部とを、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(混合比1:1)で固形分20%となるように希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
【0131】
[評価]
(1)プローブタック試験によるタック力
上記で得られた半導体加工用粘着テープからセパレータを剥離して、粘着層を露出させた。露出した粘着層の表面に対し、上述した「A.第一実施形態」に記載の方法で、プローブタック試験によるタック力を測定した。この際、接触荷重は0.098Nまたは0.98Nとした。
【0132】
(2)SUS製ロールに対する引き剥がし強度
上記で得られた半導体加工用粘着テープからセパレータを剥離して、粘着層を露出させた。上述した「A.第一実施形態」に記載の方法で、SUS製ロールに対する引き剥がし強度を測定した。
【0133】
(3)貯蔵弾性率
動的粘弾性測定装置(ティー・エー・インスツルメント・ジャパン(株)製 RSA-3)を用いて、上記で得られた半導体加工用粘着テープの粘着層の貯蔵弾性率を測定した。粘着層は、直径5mm以上7mm以下、高さ5mm以上10mm以下程度の円柱状に丸めて、測定サンプルとした。測定条件は、温度25℃、周波数1Hzとした。
【0134】
(4)SUS板に対する粘着力
半導体加工用粘着テープのSUS板に対する粘着力は、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)の試験方法の方法1(温度23℃湿度50%、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠し、幅25mm、剥離角度180°、剥離速度300mm/minの条件で、試験片の長さ方向に剥がすことにより、測定した。SUS板は、SUS304、表面仕上げBA、厚さ1.5mm、幅100mm、長さ150mmのSUS板を用いた。
【0135】
(5)UV照射後のSUS板に対する粘着力
エネルギー線照射後のSUS板に対する粘着力を、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)の試験方法の方法1(温度23℃湿度50%RH、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠し、測定した。まず、半導体加工用粘着テープからセパレータを剥離し、手動ローラーを用いてSUS板に貼合した。半導体加工用粘着テープの基材側の面から、積算光量が500mJ/cmとなるように紫外光を照射し、粘着層を硬化させた。次に、幅25mm、剥離角度180°、剥離速度300mm/minの条件で、試験片の長さ方向に剥がすことにより、エネルギー線照射後のSUS板に対する粘着力を測定した。SUS板は、SUS304、表面仕上げBA、厚さ1.5mm、幅100mm、長さ150mmのSUS板を用いた。
【0136】
[評価]
全自動DFRフィルム貼り付け装置(株式会社タカトリ製 ATM-1100K)を用い、半導体加工用粘着テープをシリコンウェハに貼合する工程を連続して行った。具体的には、幅180mm、長さ50mの上記の半導体加工用粘着テープが巻き取られた巻回体から粘着テープを送り出し、セパレータを剥離しつつ、6インチ径のシリコンウェハに貼合する工程を連続して行った。この際の作業効率を以下の評価基準で評価した。
【0137】
[評価基準]
A:半導体加工用粘着テープの連続貼合可能。
B:半導体加工用粘着テープが搬送ロールに対して貼り付いたものの、ウェハ5枚以上に連続貼合が可能。
C:半導体加工用粘着テープが搬送ロールに対して貼り付き、連続貼合枚数4枚以下で運転停止。
D:半導体加工用粘着テープが搬送ロールに対して貼り付き、連続貼合枚数2枚以下で運転停止。
【0138】
【表1】
【0139】
表1に示されるように、実施例1~実施例5の半導体加工用粘着テープは、エネルギー線照射前での搬送手段に対する剥離性に優れるものとなった。一方、比較例では、半導体加工用粘着テープが搬送ロールに対して貼り付き、実施例に対して搬送手段に対する剥離性に劣る結果となった。
【0140】
すなわち、本開示においては、以下の発明を提供できる。
【0141】
[1] 基材と、前記基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層と、を有する半導体加工用粘着テープであって、
接触荷重0.098N、接触時間30秒の条件にて、プローブタック試験により測定されるタック力が、5.0N以下であり、
SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、下記(i)および下記(ii)の少なくともいずれかを満たす、半導体加工用粘着テープ。
(i)引張速度300mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、1.5N/20mm以下である。
(ii)引張速度1000mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、1.5N/20mm以下である。
【0142】
[2] 基材と、前記基材の一方の面に配置されたエネルギー線硬化性の粘着層と、を有する半導体加工用粘着テープであって、
接触荷重0.98N、接触時間30秒の条件にて、プローブタック試験により測定されるタック力が、5.0N以下であり、
SUS製ロールに対する引き剥がし強度が、下記(i)および下記(ii)の少なくともいずれかを満たす、半導体加工用粘着テープ。
(i)引張速度300mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、2.0N/20mm以下である。
(ii)引張速度1000mm/分のときのSUS製ロールに対する引き剥がし強度が、2.0N/20mm以下である。
【0143】
[3] SUS板に対する粘着力が、5.0N/25mm以上である、[1]または[2]に記載の半導体加工用粘着テープ。
【0144】
[4] エネルギー線照射後のSUS板に対する粘着力が、2.0N/25mm以下である、[1]から[3]までのいずれかに記載の半導体加工用粘着テープ。
【符号の説明】
【0145】
1 … 基材
2 … 粘着層
10 … 半導体加工用粘着テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7