(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052192
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】薬剤揮散装置
(51)【国際特許分類】
A01M 1/20 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A01M1/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158745
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 暁介
(72)【発明者】
【氏名】宮地 彩雅
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121CA02
2B121CA15
2B121CA16
2B121CA44
2B121CA51
2B121CA52
2B121CA53
2B121CA58
2B121CA90
2B121CC02
2B121CC03
2B121CC13
2B121CC31
2B121EA01
2B121EA02
2B121FA01
2B121FA02
2B121FA13
(57)【要約】
【課題】吊下げ部材の突出長さ調節が容易にでき、かつ、容器がずれ落ちにくい薬剤揮散装置を提供する。
【解決手段】容器3は、常温揮散性の薬剤を保持した薬剤揮散体2を内部に収容する。フック4が、容器3に対してスライド自在に取り付けられ、容器3からの突出長さが調整できる。容器3は、フック4のスライド方向に沿って並んで設けられた複数の係止凸部63を有する。フック4は、複数の係止凸部63の一つに係止され、係止している係止凸部63上を摺動して、隣接する係止凸部63に係止できる係止部43を有する。係止部43との摺動強度が異なる2種類以上の係止凸部63が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温揮散性の薬剤を保持した薬剤揮散体と、前記薬剤揮散体を内部に収容し且つ前記薬剤揮散体を外部に露出させる開口部を有する容器と、を備えた薬剤揮散装置において、
前記容器に対してスライド自在に取り付けられ、前記容器からの突出長さが調整できる吊下げ部材をさらに備え、
前記容器及び前記吊下げ部材のうち一方は、前記吊下げ部材のスライド方向に沿って並んで設けられた複数の第1係止部を有し、
前記容器及び前記吊下げ部材のうち他方は、複数の前記第1係止部の一つに係止され、係止している前記第1係止部上を摺動して、隣接する前記第1係止部に係止できる第2係止部を有し、
前記第2係止部との摺動強度が異なる2種類以上の前記第1係止部が設けられた、
薬剤揮散装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薬剤揮散装置において、
前記第1係止部は、係止凸部から構成され、
高さが異なる2種類以上の前記係止凸部が設けられた、
薬剤揮散装置。
【請求項3】
請求項1に記載の薬剤揮散装置において、
前記第1係止部は、係止凸部から構成され、
前記係止凸部は、前記スライド方向の中央から前記スライド方向に離れるに従って高さが低くなる傾斜面が設けられ、
前記傾斜面の傾斜角が異なる2種類以上の前記係止凸部が設けられた、
薬剤揮散装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の薬剤揮散装置において、
前記摺動強度が高い前記第1係止部と、前記摺動強度が低い前記第1係止部と、が前記スライド方向に沿って交互に並べて設けられた、
薬剤揮散装置。
【請求項5】
請求項4に記載の薬剤揮散装置において、
前記吊下げ部の前記突出長さが最も短いときに前記第2係止部に係止される前記第1係止部は、前記摺動強度が高く設けられている、
薬剤揮散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤揮散装置としては、常温揮散性の薬剤を保持した薬剤揮散体と、薬剤揮散体を収容する容器とを備えたものが知られている。また、容器の上部にフック(吊下げ部材)を取り付け、フックによって薬剤揮散装置を吊下げて使用することができ、さらにフックの長さを調整できる薬剤揮散装置も提案されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-97611号公報
【特許文献2】特開2016-129513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の薬剤揮散装置は、バンド(吊下げ部材)の長さをスライド調節できないため、バンドの長さ調整が容易ではない。また、特許文献2の薬剤揮散装置は、容器に対してフックがスライド自在に取り付けられ、簡単にフックの長さを調整することができる。しかしながら、フックと容器の保持力を高くすると、フックの長さ調節にかかる力が大きくなり、長さ調整がしにくい。また、フックの長さ調整にかかる力を少なくすると、フックの保持力が低くなり、フックを調節した長さに保持できず容器がずれ落ちてしまう、という問題があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吊下げ部材の突出長さ調整が容易にでき、かつ、容器がずれ落ちにくい薬剤揮散装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る薬剤揮散装置は、下記[1]~[5]を特徴としている。
[1]
常温揮散性の薬剤を保持した薬剤揮散体と、前記薬剤揮散体を内部に収容し且つ前記薬剤揮散体を外部に露出させる開口部を有する容器と、を備えた薬剤揮散装置において、
前記容器に対してスライド自在に取り付けられ、前記容器からの突出長さが調整できる吊下げ部材をさらに備え、
前記容器及び前記吊下げ部材のうち一方は、前記吊下げ部材のスライド方向に沿って並んで設けられた複数の第1係止部を有し、
前記容器及び前記吊下げ部材のうち他方は、複数の前記第1係止部の一つに係止され、係止している前記第1係止部上を摺動して、隣接する前記第1係止部に係止できる第2係止部を有し、
前記第2係止部との摺動強度が異なる2種類以上の前記第1係止部が設けられた、
薬剤揮散装置であること。
[2]
[1]に記載の薬剤揮散装置において、
前記第1係止部は、係止凸部から構成され、
高さが異なる2種類以上の前記係止凸部が設けられた、
薬剤揮散装置であること。
[3]
[1]に記載の薬剤揮散装置において、
前記第1係止部は、係止凸部から構成され、
前記係止凸部は、前記スライド方向の中央から前記スライド方向に離れるに従って高さが低くなる傾斜面が設けられ、
前記傾斜面の傾斜角が異なる2種類以上の前記係止凸部が設けられた、
薬剤揮散装置であること。
[4]
[1]~[3]の何れか1項に記載の薬剤揮散装置において、
前記摺動強度が高い前記第1係止部と、前記摺動強度が低い前記第1係止部と、が前記スライド方向に沿って交互に並べて設けられた、
薬剤揮散装置であること。
[5]
[4]に記載の薬剤揮散装置において、
前記吊下げ部の前記突出長さが最も短いときに前記第2係止部に係止される前記第1係止部は、前記摺動強度が高く設けられている、
薬剤揮散装置であること。
【0007】
上記[1]の構成の薬剤揮散装置によれば、吊下げ部材の突出長さ調整が容易にでき、かつ、容器がずれ落ちにくくできる。
【0008】
上記[2]の構成の薬剤揮散装置によれば、容易に摺動強度の異なる2種類以上の第1係止部を設けることができる。
【0009】
上記[3]の構成の薬剤揮散装置によれば、容易に摺動強度の異なる2種類以上の第1係止部を設けることができる。
【0010】
上記[4]の構成の薬剤揮散装置によれば、より一層、吊下げ部材の突出長さ調整が容易にでき、かつ、容器がずれ落ちにくくできる。
【0011】
上記[5]の構成の薬剤揮散装置によれば、より一層、吊下げ部材の突出長さ調整が容易にできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、吊下げ部材の突出長さ調節が容易にでき、かつ、容器がずれ落ちにくい薬剤揮散装置を提供することができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の薬剤揮散装置の一実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0016】
以下、説明の便宜上、
図1~
図4に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。また、上下方向は、本発明の「スライド方向」に対応する。
【0017】
本実施形態に係る薬剤揮散装置1は、
図1における上下方向に長く、前後方向に薄い縦長の扁平な長方形状を有している。以下の説明では、
図1に示すように、上下方向に長い形状について説明するが、本形状はあくまで一例であり、薬剤揮散装置1の形状は
図1に示す形状に限定されない。例えば、薬剤揮散装置1は、
図1における左右方向に長い横長の長方形状の形状を有してもよいし、正方形状の形状を有してもよいし、他の多角形状の形状を有してもよいし、円形や長方形の形状を有してもよい。
【0018】
図1及び
図2に示すように、薬剤揮散装置1は、常温揮散性の薬剤を保持した薬剤揮散体2と、薬剤揮散体を収容する容器3と、容器3に対してスライド自在に取り付けられ、容器3からの突出長さが調整できるフック(吊下げ部材)4と、を備えている。なお、
図1は、フック4の突出長さが最大の状態の正面図であり、
図2は、フック4が容器3に没した状態の背面図である。
【0019】
上記薬剤揮散体2は、上下方向に長尺な矩形の薄いシート形状を有する。薬剤揮散体2の詳細については後述する。
【0020】
図1及び
図2に示すように、上記容器3は、前後方向に2分割された正面側筐体5と、背面側筐体6と、を有している。正面側筐体5及び背面側筐体6は、樹脂により成型されている。正面側筐体5及び背面側筐体6は、互いの間に薬剤揮散体2を挟んで保持する。また、正面側筐体5及び背面側筐体6は各々、薬剤揮散体2を外部に露出する複数の開口部51,61を有する。
【0021】
フック4は、樹脂により成型されている。フック4は、背面側筐体6に対してスライド自在に取り付けられている。
図2に示すように、背面側筐体6は、フック4をスライド自在に取り付けるための一対のスライドレール62,62を有する。一対のスライドレール62,62は、背面側筐体6の左右端から左右方向中央に向かって立設されている。一対のスライドレール62,62は、上下方向に沿って設けられ、フック4は一対のスライドレール62,62に沿って上下にスライドする。
【0022】
背面側筐体6は、
図3に示すように、上下方向に沿って並んで設けられた複数の係止凸部(第1係止部)63を有する。複数の係止凸部63は、一対のスライドレール62,62から前側に向かって突出して設けられている。係止凸部63は、上下方向の中央から上下方向に離れるに従って高さが低くなる上傾斜面631及び下傾斜面632が設けられている。本実施形態では、上傾斜面631の傾斜角θ1の方が傾斜角θ2よりも小さくなるように設けられている。これにより、フック4の突出長さを長くする際に、後述する係止部43が、角度の大きい傾斜角θ2の下傾斜面632を乗り上げた後、角度の小さい傾斜角θ1の上傾斜面631を乗り上げるため、力をかけずに一つ上の係止凸部63に係止することができる。また、フック4の突出長さを短くする際に傾斜角θ1が小さいと、小さい力でフック4を押し下げることができる。
【0023】
図4に示すように、フック4は、上部がドアノブなどに引っ掛けられるようフック状に設けられている。フック4は、フック状に設けられたフック本体41と、一対のガイドリブ42,42(
図2参照)と、一対の係止部43,43(第2係止部)と、一対の挟み部44,44と、を有している。一対のガイドリブ42,42は、フック本体41から後側に突出し、上下方向に延びている。一対のガイドリブ42,42は、左右方向に並べて設けられている。フック4において右側のガイドリブ42よりも右側(挟み部44除く)が、背面側筐体6に設けた右側のスライドレール62よりも前側に配置される。フック4において左側のガイドリブ42よりも左側(挟み部44除く)が、背面側筐体6に設けた左側のスライドレール62よりも前側に配置される。
【0024】
一対の係止部43,43は、フック本体41から左右方向に突出して設けられる。一対の挟み部44,44は、フック本体41から左右方向に突出して設けられる。
図3に示すように、一対の係止部43,43は、一対のスライドレール62,62の前側に配置され、一対の挟み部44,44は、スライドレール62,62の後側に配置される。すなわち、一対の係止部43,43と、一対の挟み部44,44と、によりスライドレール62,62の前後方向を挟み、これにより、フック4を一対のスライドレール62,62に沿ってスライド自在に取り付けることができる。
【0025】
次に、一対の係止部43,43の詳細について説明する。
図3に示すように、一対の係止部43,43は、前側に向かって窪み、係止凸部63が挿入されて係止する係止凹部431が設けられている。係止凹部431は、上下方向に並ぶ複数の係止凸部63の一つと係止する。フック4を上側に引っ張ると、係止部43は、係止している係止凸部63上を摺動して上側に乗り越え、隣接する一つ上の係止凸部63に係止される。これにより、フック4の突出長さを長く調整できる。また、フック4を下側に押すと、係止凹部431は、係止している係止凸部63上を摺動して下側に乗り越え、隣接する一つ下の係止凸部63に係止される。これにより、フック4の突出長さを短く調整できる。
【0026】
また、本実施形態では、係止部43との摺動強度が高い係止凸部63と、係止部43との摺動強度が低い係止凸部63と、が上下方向に沿って交互に並べて設けられている。すなわち、本実施形態では、摺動強度が高い係止凸部63と摺動強度の低い係止凸部63の2種類の係止凸部63が設けられている。
【0027】
本実施形態では、摺動強度の高い係止凸部63は、摺動強度の低い係止凸部63よりも高さが高くなるように設けられている。また、本実施形態では、摺動強度の高い係止凸部63は、摺動強度の低い係止凸部63よりも上傾斜面631の傾斜角θ1及び、又は、下傾斜面632の傾斜角θ2が大きくなるように設けられている。このように係止凸部63の高さ、係止凸部63の上傾斜面631及び、又は下傾斜面632の傾斜角θ1,θ2を異ならせることにより、容易に係止凸部63の摺動強度を異ならせることができる。傾斜角θ1については、90度より小さく、吊下げ部材の突出長さ調節を容易に行う観点から、80度以下であることが好ましく、70度以下であることが更に好ましく、吊り下げ部材のずれ落ち防止の観点から、20度以上であることが好ましく、30度以上であることが更に好ましい。また、傾斜角θ2については、90度よりも小さく、吊下げ部材の突出長さ調節を容易に行う観点から、85度以下であることが好ましく、75度以下であることが更に好ましく、吊り下げ部材のずれ落ち防止の観点から、30度以上であることが好ましく、40度以上であることが更に好ましい。
【0028】
次に、薬剤揮散体2について説明する。薬剤を保持する薬剤揮散体2は、薬剤を保持できれば特に限定されない。具体的には、薬剤揮散体の材料としては、例えば、糸(撚り糸など)、不織布、木材、パルプ(紙)、無機高分子物質、無機多孔質物質(ケイ酸塩、シリカ、ゼオライトなど)、有機高分子物質(セルロース、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコールなど)などの担体が挙げられる。また、自重の数倍以上を保持できる担体、例えば高吸液性ポリマー、綿、海綿体、連続気泡の発泡体などを用いてもよい。
さらに、効率よく薬剤を揮散する担体としては、例えば、紙、不織布、フェルト状織物、無機繊維等、繊維材を用いたネットが挙げられる。ネットを用いる場合、ネットは、一般に、多数の通気孔を有し、薬剤の揮散効果に優れる。ネットに用いる繊維材は、例えば、短繊維または長繊維の糸をレース編みやメリヤス編みなどの手法を用いて編むことで製造し得る。糸の材料として、例えば、パルプ、綿、羊毛、麻および絹などの天然繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリサルフォン、レーヨン、メタアクリル酸樹脂および生分解性樹脂(例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸およびポリ(β-ヒドロキシ酪酸))などが挙げられる。これら材料の1種または2種以上を混合して用いてもよい。特に、強度や加工性などの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンを用いることが好ましい。更に、例えば、繊維材には、防カビ剤、色素、紫外線吸収剤および香料などの添加物を含有させてもよい。
【0029】
繊維材を用いたネットの開口度合いについて、ネットの総面積に占める開口部分の総面積の割合は、5~80%であることが好ましく、10~50%であることが更に好ましい。なお、開口度合いが小さいほど薬剤の揮散性が低下する傾向があり、開口度合いが大きいほど効果の持続期間が短くなる傾向がある。
【0030】
薬剤揮散体2が保持する薬剤は、常温で揮散しうる薬剤であり、各種の害虫防除剤(殺虫剤および忌避剤等)、芳香剤、消臭・防臭剤、殺菌剤、防カビ剤等の各種薬剤のなかから、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。薬剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0031】
害虫防除剤としては、例えば、有機リン系、カーバメート系、ピレスロイド系等の各種殺虫剤、忌避剤、及び、昆虫成長調節剤などが挙げられる。有機リン系殺虫剤としては、DDVP及びダイアジノン等が挙げられ、カーバメート系殺虫剤としては、プロポクサー等が挙げられ、ピレスロイド系殺虫剤としては、フタルスリン、プラレトリン、テフルスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、ジメフルトリン、メパフルトリン、プロフルトリン、エムペントリン及びテラレスリン等が挙げられる。これらのうち、プロフルトリン、エンペントリン、トランスフルトリン及びメトフルトリンが、殺虫効果に優れる点で好ましい。また、その他の害虫防除剤として、植物精油、テルペン、及び、これらの異性体や誘導体等が挙げられる。
【0032】
芳香剤としては、例えば、ラベンダー油、じゃ香、竜延香、アビエス油、シトロネラ油、ユーカリ油、フェンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、レモン油、レモングラス油、ナツメッグ油、ハッカ油、オレンジ油、テレピン油およびセイジ油などの精油類、ピネン、リモネン、リナロール、ゲラニオール、シトロネラール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、アネトール、オイゲノール、アルデヒド、シトラール、シトロネラール、ワニリン、カルボン、ケトン、メントン、アセトフェノン、クマリン、シネオール、酢酸エチル、酢酸オクチル、酢酸リナリル、酢酸ブチルシクロヘキシル、酢酸ブチルシクロヘプチル、イソ酪酸イソプロピル、カプロン酸アリル、安息香酸エチル、桂皮酸メチル及びサリチル酸メチルなどの香料等が挙げられる。
【0033】
消臭・防臭剤としては、例えば、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、アミルシンナミックアルデヒド、アニシックアルデヒド、ジフェニルオキサイド、安息香酸メチル、安息香酸エチル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、ネオリン、サフロール、シトロネラ油およびレモングラス油等が挙げられる。
【0034】
殺菌剤としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、PCMX(p-クロロ-m-キシレノール)、AIT(アリルイソチオシアネート)、ヒノキチオール、及び、安定化二酸化塩素等が挙げられる。
【0035】
防カビ剤としては、例えば、ナトリウムピリチオン、ジンクピリチオン、IPBC(3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート)、チアベンダゾール、イマザリル、オルトフェニルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0036】
薬剤には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、効力増強剤、揮散率向上剤および安定剤等が挙げられる。添加剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0037】
効力増強剤としては、例えば、ペロニルブトキサイド、N-プロピルイゾーム、N-(2-エチルヘキシル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボキシミド(サイネピリン222(商品名))、N-(2-エチルヘキシル)-1-イソプロピル-4-メチルビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3-ジカルボキシミド(サイネピリン500(商品名))、(2-ブトキシエチル)(2-チオシアノエチル)エーテル(リーセン384(商品名))、オクタクロロジプロピルエーテル、チオシアノ酢酸イソボルニル、シネトリン等が挙げられる。
【0038】
揮散率向上剤としては、例えば、フェネチルイソチオシアネート等が挙げられる。安定剤としては、例えば、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、メルカプトベンズイミダゾール、ジラウリル-チオ-ジ-プロピオネート、2,2'-メチレン-ビス-(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、4,4'-メチレン-ビス-(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4'-チオ-ビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、フェニル-β-ナフチルアミン、2-t-ブチル-4-メトキシフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、α-トコフェロール、アスコルビン酸及びエリソルビン酸等が挙げられる。
【0039】
薬剤を薬剤揮散体2に保持させる方法は、特に制限されない。例えば、薬剤を溶剤に溶解させた溶液を調製し、その溶液中に上述したネットを浸漬して薬剤を含浸させる方法、その溶液や薬剤の原体をネットの上に噴霧または滴下してネットに薬剤を含浸させる方法、及び、ネットに薬剤を練り込む方法などを用い得る。更に、必要に応じて、薬剤をネットに含浸させた後、乾燥等によって溶剤を除去してもよい。
【0040】
薬剤の溶液を調製するための溶剤としては、特に制限はないが、例えば、水、ナフテン、灯油、パラフィン等の炭化水素類、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、メタノール、イソプロパノール、1-オクタノール、1-ドデカノール等のアルコール類、アセトン、アセトフェノン等のケトン類、ジヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アジピン酸ジオクチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジエチル等のエステル類、キシレン、及び、シリコーンオイル等の1種もしくは2種以上が挙げられる。
【0041】
薬剤揮散体2における薬剤の保持量は、薬剤の種類等を考慮して、所望の効果(揮散性や有効期間)を発揮するように適宜決定されればよい。また、薬剤揮散体2は、交換可能なカートリッジ式に構成されてもよい。薬剤揮散装置1を長期間にわたって使用して薬剤が全て又は殆ど揮散して薬剤の効果が消失または低下した場合、薬剤揮散体2を新たなものに交換することで、優れた効果を再び発揮させることができる。
【0042】
上述した実施形態によれば、係止部43との摺動強度が高い係止凸部63と、係止部43との摺動強度が低い係止凸部63と、の2種類の係止凸部63が設けられている。これにより、フック4の突出長さ調整が容易にでき、かつ、容器3をずれ落ちにくくすることができる。
【0043】
次に、本発明者らは、後述する本発明品P1,P2、比較品P3,P4を作製して、後述する容器3のずれ落ち確認試験及びフック4の引き上げやすさ確認試験を行って、本発明の効果を確認した。
【0044】
本発明品P1,P2、比較品P3,P4は、複数の係止凸部63の形状が各々異なる。今、上下方向に等間隔に並んだ10個の係止凸部63について試験を行った。試験の便宜上、上下方向の一番下を係止凸部63-1とし、上下方向の一番上を係止凸部63-10となるように符号を振り直して、説明する。一番下の係止凸部63-1は、フック4が容器3に没して突出長さが最も短いときに係止部43に係止され、一番上の係止凸部63-10は、フック4の突出長さが最も長いときに係止部43に係止される。
【0045】
下記の表1に本発明品P1,P2、比較品P3,P4の各係止凸部63-1~63-10の摺動強度を示す。摺動強度は、係止凸部63-1~63-10上を係止部43が摺動して乗り越える際にかかる力であり、単位はNである。なお、1N~2.5N以下を摺動強度が低い、5N~8.5Nを摺動強度が高いと設定した。摺動強度が低く設定された係止凸部63は全て同じ高さに設けられ、傾斜角θ1同士も同じ角度に設けられ、傾斜角θ2同士も同じ角度に設けられているが、摺動強度が1N~2.5Nの範囲で調整されている。また、摺動強度が高く設定された係止凸部63も全て同じ高さに設けられ、傾斜角θ1同士も同じ角度に設けられ、傾斜角θ2同士も同じ角度に設けられているが、摺動強度が5N~8.5Nの範囲で調整されている。本試験を行った本発明品P1,P2、比較品P3,P4は、係止凸部63の高さのみを異ならせることにより、摺動強度を調整している。
【0046】
【0047】
本発明品P1は、下から上に向かって摺動強度の低い係止凸部63-1,63-2、摺動強度の高い係止凸部63-3~63-5、摺動強度の低い係止凸部63-6~63-8、摺動強度の高い係止凸部63-9,63-10の順に配置されている(低高低高)。
【0048】
本発明品P2は、下から上に向かって摺動強度の高い係止凸部63-1,63-2、摺動強度の低い係止凸部63-3~63-5、摺動強度の高い係止凸部63-6~63-7、摺動強度の低い係止凸部63-8~63-10の順に配置されている(高低高低)。
【0049】
比較品P3は、全ての係止凸部63-1~63-10の摺動強度が高く設けられ(高高高高)、比較品P4は、全ての係止凸部63-1~63-10の摺動強度が低く設けられている(低低低低)。
【0050】
次に、容器3のずれ落ち試験について説明する。ずれ落ち試験においては、L字レバーのドアノブ(レバーハンドルタイプ)に本発明品P1,P2、比較品P3,P4を吊るした。ドアノブが取り付けられた扉への出入りを想定し、扉を90度開けてから手をはなし、自動で扉が閉まるという操作を2回繰り返し行い、これを1回の試験とした。その後、本発明品P1,P2、比較品P3,P4のフック4の突出長さが延びて容器3がずれ落ちているかどうか目視で確認し、これを10回行った。結果を下記の表2に示す。なお、目視でずれ落ちが確認できた場合を「×」、目視でずれ落ちが確認できなかった場合を「〇」としている。
【0051】
【表2】
表2に示す結果により、比較品P4は目視でのずれ落ちが確認され、本発明品P1,P2,比較品P3は目視でのずれ落ちは確認されなかった。今回の試験では、本発明品P1,P2においては、摺動強度の高い係止凸部63と係止部43とが係止した状態で吊下げられている。しかしながら、摺動強度の弱い係止凸部63と係止部43とが係止した状態で吊下げた場合であっても、容器3は多少ずれ落ちるが、摺動強度の高い係止凸部63と係止部43とが係止すると、それ以上の容器3のずれ落ちがないため、目視で確認できるほど、容器3のずれ落ちが確認できないものと思われる。
【0052】
次に、フック4の引き上げやすさ確認試験について説明する。引き上げやすさ確認試験においては、被験者A~Jの10人(男性2人、女性8人)に、フック4が容器3に没した状態の本発明品P1,P2、比較品P3,P4のフック4を引き上げてもらい、後述する評価基準にて10段階で評価してもらった。結果を下記の表3に示す。なお、数値が低いほど引き上げやすく、数値が高いほど引き上げにくいとした。また、「6」以上を引き上げにくいとし、「5」以下を引き上げやすい、とした。
【0053】
【0054】
表3に示す結果により、比較品P3は全員が引き上げにくいと感じ、本発明品P1,P2、比較品P4は全員が引き上げやすいと回答した。また、ほぼ全員が本発明品P1よりも本発明品P2の方がフック4を引き上げやすいと回答した。これは、本発明品P2は、最初にフック4を引き上げる際に大きな力がかかるが、大きな力で勢いよく引っ張って、摺動強度の低い係止凸部63を摺動するため、被験者としては引き上げやすいと感じるものと思われる。一方、本発明品P1は、最初にフック4を引き上げる際にかかる力が小さいため、勢いがつかない状態で、摺動強度の高い係止凸部63を摺動するため、被験者としては引き上げにくいと感じるものと思われる。
【0055】
以上のずれ落ち試験及び引き上げやすさ確認試験により、比較品P3は、容器3がずれ落ちにくいが、フック4が引き上げにくい、比較品P4は、フック4は引き上げやすいが、容器3が落ちやすい。これに対して、本発明品P1,P2は、フック4が引き上げやすく(フック4の突出長さ調整が容易にでき)、かつ、容器3をずれ落ちにくくすることができることが分かった。
【0056】
上述した実施形態によれば、高さが異なる2種類以上の係止凸部63が設けられている。これにより、容易に複数の係止凸部63の摺動強度を異ならせることができる。
【0057】
上述した実施形態によれば、傾斜角θ1,θ2の異なる2種類以上の係止凸部63が設けられている。これにより、容易に複数の係止凸部63の摺動強度を異ならせることができる。
【0058】
また、上述した実施形態によれば、摺動強度の高い係止凸部63と摺動強度の低い係止凸部64が交互に設けられている。これにより、係止部43が、摺動強度の低い係止凸部63で係止された状態で吊下げられ、自重や扉の開け閉め時に発生する衝撃などによって摺動強度の低い係止凸部63を乗り上げたとしても、摺動強度の高い係止凸部63で係止されると、それ以上容器3のずれ落ちが発生しにくくなる。
【0059】
また、上述した実施形態によれば、本発明品P2は、フック4の突出長さが最も短いときに係止部43に係止される係止凸部63の摺動強度が高い。これにより、表3に示すように、本発明品P2は、フック4の突出長さが最も短いときに係止部43に係止される係止凸部63の摺動強度が低い本発明品P1よりも、引き上げやすいと感じることができる。
【0060】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0061】
上述した試験で用いた本発明品P1,P2では、係止凸部63の高さを異ならせて摺動強度を異ならせていたが、これに限ったものではない。摺動強度を異ならせる手段としては、上述した実施形態で説明したように係止凸部63の傾斜角θ1を異ならせてもよいし、傾斜角θ2を異ならせてもよい。すなわち、係止凸部63の高さ、傾斜角θ1,θ2の何れか1つ以上を異ならせてもよい。
【0062】
上述した実施形態では、複数の係止凸部63を容器3に設け、係止部43をフック4に設けていたが、これに限ったものではない。複数の係止凸部63をフック4に設け、係止部43を容器3に設けてもよい。
【0063】
上述した実施形態では、摺動強度が異なる2種類の係止凸部63を設けていたが、これに限ったものではない。摺動強度が異なる3種類以上の係止凸部63を設けてもよい。
【0064】
上述した試験で用いた本発明品P1,P2は、摺動強度が高い2個以上の係止凸部63と、摺動強度が低い2個以上の係止凸部63と、が上下方向に沿って交互に並べて配置されていたが、これに限ったものではない。摺動強度が高い係止凸部63と、摺動強度が低い係止凸部63と、が1個ずつ交互に並べて配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 薬剤揮散装置
2 薬剤揮散体
3 容器
4 フック(吊下げ部材)
51,61 開口部
43 係止部(第2係止部)
63 係止凸部(第1係止部)
631,632 傾斜面
θ1,θ2 傾斜角