(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052193
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】線香
(51)【国際特許分類】
A01N 65/06 20090101AFI20240404BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20240404BHJP
A01N 25/20 20060101ALI20240404BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240404BHJP
A01P 7/02 20060101ALI20240404BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A01N65/06
A01N25/00
A01N25/20
A01P3/00
A01P7/02
A01P7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158746
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 夏基
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA03
4H011AC01
4H011AC04
4H011BB15
4H011BB22
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC22
4H011DA10
4H011DB04
4H011DC05
4H011DC08
4H011DC11
(57)【要約】
【課題】製造条件の見直しや特定の香料の配合を伴わなくても燃焼時の刺激臭や煙臭さを低減できる線香を提供すること。
【解決手段】本発明は、ヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉を含有する線香に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉を含有する線香。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線香に関する。
【背景技術】
【0002】
蚊取り線香や仏壇線香等の線香は、基材として木粉等の支燃剤を含有する。このような線香を燃焼すると刺激臭や煙臭さが発生する場合がある。線香の刺激臭を低減するために、木粉以外の有機粉を配合することや、特定の香料を配合することが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、緑茶及び/又は半発酵茶の抽出粕を乾燥し、粉砕して得た粉末を原料の一部に含むことを特徴とする線香用基材が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、蚊取り線香基材、殺虫成分および香料成分を含有し、香料成分が、酢酸エステル、酪酸エステルおよびヘキセノールを含むことを特徴とする蚊取り線香が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-137987号公報
【特許文献2】国際公開第2017/110403号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、線香の燃焼時の刺激臭を低減するために、線香に木粉以外の有機粉を配合する場合、有機粉の配合に伴い線香の製造条件の見直しが必要となり、生産性の点で劣る場合がある。
また、線香に特定の香料を配合する場合、昔ながらの線香の情緒感を損なう場合がある。
【0007】
そこで本発明は、製造条件の見直しや特定の香料の配合を伴わなくても燃焼時の刺激臭や煙臭さを低減できる線香を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討の結果、線香にヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉を含有させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉を含有する線香に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造条件の見直しや香料の配合を伴わなくても燃焼時の刺激臭や煙臭さを低減できる線香を提供できる。これにより、生産性に優れ、また、昔ながらの線香の情緒感を損なうことなく、刺激臭や煙臭さを効果的に低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の線香は、ヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉を含有する。
ヒノキ科アスナロ属に属する樹木としては、例えば、ヒバ(学名Thujopsis dolabrata)が挙げられる。ヒバは日本の固有種であり、アスナロと称される場合もある。本明細書においてヒバとは、アスナロ、ヒノキアスナロ及びホソバアスナロを含む。
【0012】
本明細書において、木粉とは、樹木を粉末状に加工したものをいう。ヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉としては、ヒノキ科アスナロ属に属する樹木を粉末状に加工して用いてもよく、市販のヒバ粉等を用いてもよい。
【0013】
本発明者は、線香にヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉を含有させることにより、線香の燃焼時の刺激臭や煙臭さを低減できることを見出した。その明確な理由は定かではないが、ヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉を含有させることにより線香が効率よく燃焼することが関連していると考えられる。
【0014】
本実施形態に係る線香において、刺激臭や煙臭さの低減効果を好適に得る観点から、線香におけるヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉の割合は1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。一方で、生産性の観点から、線香におけるヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉の割合は70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0015】
線香の基材には、燃焼性や成形性の観点から支燃剤としての木粉が広く用いられている。本発明によれば、かかる木粉の一部または全部をヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉とすることで線香の燃焼時の刺激臭や煙臭さを低減できる。すなわち、本製造方法によれば、木粉の総配合量を既存の配合から変更することなく刺激臭や煙臭さを低減できるため、木粉以外の有機粉等を新たに添加する場合に比べ、各成分の配合量といった製造条件の見直しを要さず、生産性の点で優れる。また、本発明によれば、特定の香料を配合する必要がないため、昔ながらの線香の情緒感を損なうことなく、刺激臭や煙臭さを効果的に低減できる。ただし、用途等に応じて、本発明の実施形態に係る線香にさらに有機粉や特定の香料等を配合することを妨げるものではない。
以下、本実施形態に係る線香についてより詳細に説明する。
【0016】
本実施形態に係る線香は、例えば、基材と、結合剤とを含む。本実施形態に係る線香は、必要に応じ、さらに用途等に応じた有効成分や添加剤等を含んでもよい。
【0017】
(基材)
基材としては例えば植物由来の粉末等の支燃剤が好適に用いられる。基材(支燃剤)は主に、線香に適切な燃焼性や燃焼速度等を付与する役割を有する。本実施形態におけるヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉は、例えば基材として線香に含有される。本実施形態に係る線香において、基材はヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉のみであってもよいし、他の植物由来の粉末等と組み合わせて用いられてもよい。
【0018】
他の植物由来の粉末としては、特に限定されないが、例えば、ビャクシン粉末、ビャクダン粉末、クスノキ粉末、モミノキ粉末、スギ粉末、ツガ粉末、マツ粉末、ヤナギ粉末、ハリギリ粉末、ホオノキ粉末、シナノキ粉末、トウヒ粉末、イエローポプラ粉末、カツラ粉末、アカシア粉末、ヤマナラシ粉末、オオバボダイジュ粉末、オオバヤナギ粉末、サワグルミ粉末、ネズコ粉末、キリ粉末、シオジ粉末、バルサ粉末、ラワン粉末、シラカバ粉末、柑橘類木粉末等の木粉;キク科植物粉末、アカネ科植物粉末、スイカズラ科植物粉末、センダン科植物粉末、ジンチョウゲ科植物粉末、シソ科植物粉末、フトモモ科植物粉末、セリ科植物粉末、イネ科植物粉末、クワ科植物粉末、モクセイ科植物粉末、除虫菊抽出粉末(カス粉)、ココナッツ粉等の植物乾燥粉末、茶葉粉、コーヒー豆殻の内皮粉末、トウモロコシの芯の粉末等が挙げられる。他の植物由来の粉末の1種類をヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉と組み合わせてもよく、2種類以上をヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉と組み合わせてもよい。
【0019】
原料供給や生産性の観点から、線香は、基材としてヒノキ科アスナロ属に属する樹木以外の木粉(以下、他の木粉という。)を含んでもよい。この場合、線香に占める他の木粉の割合は、例えば20質量%~70質量%が好ましく、30質量%~50質量%がより好ましい。
【0020】
ヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉又は他の木粉において、木粉の粒径は特に限定されないが、例えば約40~350μmとするのが、製造時の舞い上がりがなく、線香の強度を確保できるため好ましい。
【0021】
線香は基材としてココナッツ粉を含有してもよい。例えば、線香が後述する結合剤としてジョス粉を含有する場合、基材としてココナッツ粉を含有すると、線香に着火した際の炎を自然に消化させ、無炎燃焼の状態としやすくなり、安全性の観点で好ましい。この場合、線香に占めるココナッツ粉の割合は、乾燥粉末の状態で例えば9質量%~30質量%が好ましく、10質量%~25質量%がより好ましく、15質量%~25質量%がさらに好ましい。ココナッツ粉はココヤシ果実の乾燥粉末であり、一般に市販されているものを用いることができる。
【0022】
線香における基材の割合は、燃焼性や成形性を好適なものとする観点から、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、30質量%~70質量%がさらに好ましい。
【0023】
また、線香における刺激臭や煙臭さは主に基材の燃焼に由来すると考えられる。したがって、刺激臭や煙臭さの低減効果を好適に得る観点から、基材におけるヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉の含有量は1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。基材におけるヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉の含有量は100質量%であってもよい。
【0024】
(結合剤)
結合剤は主に、線香の原料を結合して固めるためのバインダーとしての役割を有する。
結合剤としては、例えば、ジョス粉(タブ粉)、シャム粉、トビ粉、澱粉、トランガム、アラビアガム、グァーガム、ガンビル抽出粉末、カゼイン等の天然高分子;ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、加工澱粉(例えば、カルボキシメチル澱粉、ジアルデヒド澱粉およびカチオン澱粉)等の合成高分子等が挙げられる。結合剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
線香は結合剤としてジョス粉を含んでもよい。先述の通り、基材がココナッツ粉を含む場合にジョス粉を含有すると、安全性の観点から好ましい。この場合、線香に占めるジョス粉の割合は、乾燥粉末の状態で例えば10質量%~50質量%が好ましく、10質量%~30質量%がより好ましく、15質量%~25質量%がさらに好ましい。ジョス粉(タブ粉)は、クスノキ科タブノキ属の常緑高木の葉や樹皮の乾燥粉末である。ジョス粉は一般に市販されているものを用いることができる。
【0026】
線香における結合剤の割合は、成形性や燃焼性を好適なものとする観点から、10質量%~40質量%が好ましく、15質量%~35質量%がより好ましく、20質量%~30質量%がさらに好ましい。
【0027】
(有効成分)
本実施形態に係る線香は、線香の用途や目的に応じて種々の有効成分を含んでもよい。有効成分として、具体的には殺虫成分、害虫忌避成分、防カビ・除菌成分、香料成分、消臭成分等が挙げられ、これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本実施形態に係る線香は、上述の通り燃焼時の刺激臭や煙臭さを低減するための特定の香料成分を必須としないものであるが、用途や目的に応じた有効成分または添加剤として、香料成分を含有してもよい。
【0028】
例えば、線香が蚊取り線香である場合には、線香は有効成分として殺虫成分及び害虫忌避成分から選択されるいずれか1以上を含むことが好ましく、殺虫成分を含むことがより好ましい。なお、蚊取り線香は、蚊、ブユ、アブ等の刺咬性害虫に適用されるだけでなく、殺虫成分又は害虫忌避成分の種類や使用量に応じて、例えばゴキブリ、ハエ、ノミ、シミ、ダニ、トコジラミ、ユスリカ等の各種害虫にも適用可能である。
【0029】
また、線香が防カビ線香である場合には、線香は有効成分として防カビ・除菌成分を含むことが好ましい。なお、防カビ線香は、例えばカビ、細菌、真菌等の微生物に適用される。
【0030】
殺虫成分としては、例えば、除虫菊、除虫菊から単離される天然ピレトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、エムペントリン、トランスフルトリン、テラレスリン、ピレトリン、アレスリン、フラメトリン、ジメフルスリン、テトラフルメトリン、メパフルスリン等のピレスロイド系化合物並びにこれらの化合物の異性体、誘導体、類縁体等、ゼラニウム油、ユーカリ油、シトロネラ油、蚊連草油等の精油類等が挙げられる。
【0031】
害虫忌避成分としては、例えば、ディート、ジメチルフタレート、p-メンタン-3,8-ジオール、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボン酸1-メチルプロピルエステル等が挙げられる。
【0032】
防カビ・除菌成分としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、ジンクピリチオン、チアベンダゾール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、エニルコナゾール、パラオキシ安息香酸エステル、PCMX(p-クロロ-m-キシレノール)、IPBC(3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート)、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、またこれらの塩等が挙げられる。
【0033】
香料成分としては、様々な植物や動物から抽出された天然香料や、化学的に合成される合成香料、さらにはこれらの香料成分を多数混合して作られる調合香料等が挙げられる。具体的には例えば、じゃ香(ムスク)、霊猫香(シベット)、竜涎香(アンバーグリス)、海狸香(カストリウム)等の動物性香料;オレンジ油、カモミール油、グレープフルーツ油、シトロネラ油、ジャスミン油、バニラ油、ビャクダン油、ハッカ油、ペパーミント油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ローズ油、ローズマリー油、百檀油、沈香油、ゼラニウム油、イランイラン油等の植物性精油からなる天然香料;オイゲノール、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、ダマスコン、バニリン、α-ピネン、β-ピネン、メントール、リモネン、リナロール、ヒノキチオール、アセト酢酸エチル、アセトフェノン、アニスアルデヒド、α-ミルシンナムアルデヒド、アントラニル酸メチル、イオノン、イソオイゲノール、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、イソチアシアネート類、イソチオシアン酸アリル、イソブタノール、インドール及びその誘導体、γ-ウンデカラクトン、2-エチル3-ジメチルピラジン、2-エチル5-ジメチルピラジン、2-エチル6-ジメチルピラジン、エチルバニリンオクタナール、オクタン酸エチル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、桂皮酸、桂皮酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸ゲラニル、酢酸シクロヘキシニル、酢酸シトロネリル、酢酸シンナミル、酢酸テルピニル、酢酸フェネチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、酢酸l-メンチル、酢酸リナリル、サリチル酸メチル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、シトロネロール、1,8‐シネオール、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、デカナール、デカノール、デカン酸エチル、3,5,6-テトラメチルピラジン、テルピネオール、γ-ナノラクトン、パラメチルアセトフェノン、ヒドロキシシトロネラール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、ピペロナール、フェニル酢酸イソアミル、フェニル酢酸イソブチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ベンジル、ヘキサン酸、ヘキサン酸アリル、ヘキサン酸エチル、l-ペリルアルデヒド、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、ボルネオール、マルトール、N-メチルアントラニル酸メチル、メチルβ-ナフチルケトン、酪酸、酪酸イソアミル、酪酸エチル、酪酸シクロヘキシル、酪酸ブチル等の合成香料等が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0034】
消臭成分としては、例えば、メタクリル酸ラウリル、ゲラニルクロトネート、カテキン、ポリフェノール等が挙げられる。
【0035】
上記有効成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、有効成分は、乳剤、油剤、マイクロカプセル化製剤、サイクロデキストリン包接化製剤等の剤形で線香の原料に用いられてもよい。
【0036】
線香における有効成分の含有量は、その種類等に応じて特に限定されないが、例えば0.001質量%~20質量%が好ましく、0.005質量%~15質量%がより好ましく、0.01質量%~10質量%がさらに好ましい。
【0037】
線香が蚊取り線香である場合、蚊取り線香における殺虫成分の含有量は例えば0.001質量%~3質量%が好ましく、0.005質量%~1質量%がより好ましく、0.01質量%~0.5質量%がさらに好ましい。また、蚊取り線香が害虫忌避成分を含有する場合、蚊取り線香における害虫忌避成分の含有量は例えば0.01質量%~10質量%が好ましく、0.05質量%~7質量%がより好ましく、0.1質量%~5質量%がさらに好ましい。
【0038】
線香が防カビ線香である場合、防カビ線香における防カビ・除菌成分の含有量は例えば0.01質量%~20質量%が好ましく、0.05質量%~15質量%がより好ましく、0.1質量%~10質量%がさらに好ましい。
【0039】
(添加剤)
本発明の実施形態に係る線香は、各種の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば増量剤、燃焼調節剤、乳化剤、防腐剤、着色剤等が挙げられる。また、線香に含有させる有効成分の種類や用途等に応じた添加剤を含んでもよい。例えば、線香が殺虫成分や害虫忌避成分を含有する場合に共力剤等を併用してもよい。
【0040】
増量剤には燃焼調節剤として作用するものも存在する。増量剤または燃焼調節剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、パーライト、ケイソウ土等が挙げられる。
【0041】
乳化剤としては、例えば、モノステアリン酸ソルビタン、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等の界面活性剤が挙げられる。
【0042】
防腐剤としては、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、イソプロピルメチルフェノール、p-クロロ-m-キシレノール(PCMX)、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート(IPBC)、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、またこれらの塩等が挙げられる。
【0043】
着色剤としては、例えば、赤色106号、赤色102号、青色1号、青色2号、黄色5号、黄色4号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、橙色207号、黒色401号等の法定色素、マラカイトグリーン等が挙げられる。
【0044】
共力剤としては、例えば、ピペロニルブトキサイド、N-プロピルイゾーム、N-(2-エチルヘキシル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボキシミド(サイネピリン222(商品名))、N-(2-エチルヘキシル)-1-イソプロピル-4-メチルビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3-ジカルボキシミド(サイネピリン500(商品名))、(2-ブトキシエチル)(2-チオシアノエチル)エーテル(リーセン384(商品名))、オクタクロロジプロピルエーテル、チオシアノ酢酸イソボルニル、シネトリン等が挙げられる。
【0045】
線香における添加剤の含有量は、その種類等に応じて特に限定されないが、例えば0.05質量%~15質量%が好ましく、0.1質量%~12質量%がより好ましく、0.3質量%~10質量%がさらに好ましい。
【0046】
本実施形態に係る線香の形状は特に限定されないが、例えば、円形渦巻状、多角形渦巻状、棒状、円筒形状、管状、平板状、塊状等が挙げられる。
【0047】
本実施形態に係る線香は、線香の使用時間を調整するために、連結部を備えていてもよい。さらに、着火しやすくするために、着火部に燃焼助剤(例えば、パラフィンワックス、硝酸エステル、硝酸塩、過塩素酸塩等)を塗布したり、燃焼性を高めるために流動パラフィン等を練り込んだりしてもよい。
【0048】
本実施形態に係る線香は、屋内および屋外のいずれでも使用することができ、線香の形状にもよるが、渦巻状の場合1~14時間程度、コーン状(円錐状)等の小塊状の場合1~60分程度燻煙される。本実施形態に係る線香によれば、燃焼時の刺激臭や煙臭さを低減できる。また、製造条件の見直しや香料の配合を伴わなくても燃焼時の刺激臭や煙臭さを低減できることで、生産性に優れ、また、昔ながらの線香の情緒感を損なうことなく、刺激臭や煙臭さを効果的に低減できる。
【0049】
(線香の製造方法)
本実施形態に係る線香は、例えば、1)線香原料を必要により水又は温水を加えて練り合わせ、得られた練合物を押出成形機、打抜機等によって成形し、乾燥する、一括混合により製造する方法、2)基材、結合剤及び必要に応じて添加剤等を含む原料を必要により水又は温水を加えて練り合わせ、押出成形機、打抜機等によって成形し、乾燥した後、有効成分等のその他の成分を含浸させる、ベース線香への有効成分添加により製造する方法等により製造することができる。
【0050】
<線香原料の一括混合による製造>
この製造方法では、ヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉を含む配合原料を所定の割合で混合し、その混合物に対して必要により水又は温水を加えて十分に練り合わせ、得られた練合物を押出成形機、打抜機等によって成形した後、乾燥する。
各工程での条件は、従来の線香を製造する際の条件と同様の条件を採用することができる。
【0051】
<ベース線香への有効成分添加による製造>
この製造方法では、まず、基材、結合剤及び必要に応じて添加剤等を含む原料を必要により水又は温水を加えて十分に練り合わせ、押出成形機、打抜機等によって成形し、乾燥させてベース線香を得る。その後、ベース線香に有効成分等のその他の成分を含浸させる。この製造方法では、ヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉はベース線香に含有される。
ベース線香を作製する工程での条件は、従来の線香を製造する際の条件と同様の条件を採用することができる。
【0052】
この製造方法において、ベース線香に有効成分等を含浸させる際、有機溶剤を併用することが好ましい。有効成分等と有機溶剤を併用することにより、ベース線香への含浸成分の拡散性が高まり、線香表面における薬液痕を目立たなくすることができるため、外観不良を抑制することができる。
【0053】
好ましい有機溶剤の具体例としては、例えば、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ベンジルアルコール、エタノール、ジプロピレングリコール、安息香酸ベンジル等が挙げられる。
【0054】
有効成分等をベース線香に含浸させる工程では、含浸させる成分は有機溶剤と混合させた混合液の状態でベース線香に添加してもよく、含浸させる成分をベース線香に添加した後に有機溶剤を添加してもよく、また、有機溶剤をベース線香に添加した後に含浸させる成分を添加してもよい。含浸させる成分と有機溶剤を別々にベース線香に添加する場合、一方を添加した直後から24時間以内にもう一方を添加することが好ましい。
【0055】
ベース線香へ有効成分等と有機溶剤を添加する方法としては、特に限定されないが、例えば、液滴状で滴下する方法、噴霧する方法、ベース線香を浸漬させる方法等が挙げられる。
【実施例0056】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の線香を具体的に説明するが、本発明の線香はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
(参考例1、実施例1~4)
表1に示す成分を表1に示す割合で混合して、50gの混合物を得た。得られた混合物に65℃±5℃程度のお湯を約35mL加えて十分に練合した。練合後、押出成形機を用いて棒状(約3mm×約7mm×約10cmの直方体状)に成形した。成形後、乾燥機に入れて65℃で10時間乾燥させ、線香を得た。なお、表1中の数値は質量%を表す。
【0058】
なお、表中の「木粉」とは、日本国外で採取された樹木の木粉であるため、ヒノキ科アスナロ属に属する樹木を含有しないものであり、上述の他の木粉に該当する。
【0059】
【0060】
(評価)
以下の方法で各例の線香の燃焼時の刺激臭及び煙臭さについて官能評価を行った。
(1)各例の線香を試験室(6畳、高さ2.5m(約25m3))の中央床面にて無換気条件で10分間燃焼させた。
(2)試験室内の刺激感及び煙臭さについて、以下の評価基準により5段階で評価した。なお、各例につき21名の評価者により評価し、平均値を算出した(n=21)。
(評価基準)
刺激または煙臭さを感じる程度が小さいほど点数の数字が小さく、刺激または煙臭さを感じる程度が大きい程点数の数字が大きいものとして、1、2、3、4、5の5段階で評価した。
刺激感 1:刺激を感じない・・・5:刺激を感じる
煙臭さ 1:煙臭さを感じない・・・5:煙臭さを感じる
【0061】
各例につき、各項目の評価結果の平均点を表2に示す。また、参考例1の各項目の評価結果を100とした場合の実施例1~4の評価結果の相対値を表3に示す。
【0062】
【0063】
【0064】
表2、3の結果から、ヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉を含有する実施例1~4の線香では、参考例1の線香と比較して刺激臭が約15~35%、煙臭さが約20~35%も低減される結果となった。
【0065】
なお、実施例1~4の線香は、そのまま線香として用いてもよく、さらに有効成分等を配合する処方で製造して用いてもよく、実施例1~4の線香をベース線香として、有効成分等をさらに含浸させて用いてもよい。
線香が有効成分をさらに含有する場合の処方例としては、特に限定されないが、例えば次の処方が例示される。
【0066】
【0067】
【0068】
以上の実施例からも明らかなように、本実施形態に係る線香は、ヒノキ科アスナロ属に属する樹木の木粉を含有することで燃焼時の刺激臭及び煙臭さを低減できる。