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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052198
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びこれを含む成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20240404BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20240404BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20240404BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L77/06
C08L67/02
C08L23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158752
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】堂山 大介
(72)【発明者】
【氏名】隣 雅也
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002BB051
4J002BB121
4J002BB211
4J002CF102
4J002CL072
4J002FD080
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】 流動性及び引張永久ひずみに優れる、樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ポリエーテルを含むソフトセグメントを有するエラストマー(A)と、密度が0.900g/cm~0.930g/cmであるポリオレフィン(B)とを配合してなる樹脂組成物であって、該組成物中に、前記エラストマー(A)を0質量%超50質量%未満、前記ポリオレフィン(B)を、50質量%超100質量未満含み、引張永久ひずみ試験を行ったときの引張永久ひずみが27%未満であり、射出圧力100MPa、シリンダー温度230℃、金型温度40℃、射出速度38mm/秒、射出時間4秒及び冷却時間15秒の成形条件にて成形した試験片の長さが85mm以上である、樹脂組成物である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルを含むソフトセグメントを有するエラストマー(A)と、密度が0.900g/cm~0.930g/cmであるポリオレフィン(B)とを配合してなる樹脂組成物であって、該組成物中に、
前記エラストマー(A)を0質量%超50質量%未満、
前記ポリオレフィン(B)を、50質量%超100質量未満含み、
ISO294-1に基づき作製したISO TYPE A形状の2mm厚試験片を、23℃、50%相対湿度環境下で、JIS K 6273に基づき、引張試験機にて、20%ひずみ及び30分の引張永久ひずみ試験を行ったときの引張永久ひずみが27%未満であり、キャビティ厚み1mm、幅15mm(ゲートサイズ:厚み1.0mm×幅3.0mm×長さ2.0mm)のバーフロー金型を設置した射出成形機を使用し、射出圧力100MPa、シリンダー温度230℃、金型温度40℃、射出速度38mm/秒、射出時間4秒及び冷却時間15秒の成形条件にて射出した樹脂組成物の流動長が85mm以上である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記エラストマー(A)がポリアミドエラストマー及びポリエステルエラストマーからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィン(B)が、少なくとも一部に反応性官能基を有していてもよい、低密度ポリエチレンである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記エラストマー(A)がポリアミドエラストマー及びポリエステルエラストマーからなる群から選択される少なくとも1種を含み、前記ポリオレフィン(B)が、主鎖の少なくとも一部に反応性官能基を有していてもよい、低密度ポリエチレンである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
非空気入りタイヤ用である、請求項1~4のいずれか一項記載の樹脂組成物。
【請求項6】
タイヤの骨格部材用の、請求項1~4のいずれか一項記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、成形品。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、非空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びこれを含む成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン、ポリアミド等の高分子有機化合物を含む樹脂組成物は、強度、剛性、耐衝撃性等の機械物性に優れることで各種成形品の部品として、広範に使用されている材料である(特許文献1~5)。これらの材料は金属と較べて軽く、所望の形状に成形することが容易であるので、軽量化の目的で金属部品からの置き換えが進んでいる。
【0003】
金属部品からの置き換えがなされている例として、タイヤの部材への利用が行われている。内部に加圧空気が充填されて用いられる従来の空気入りタイヤでは、パンクの発生は構造上不可避的な問題となっている。このような問題を解決するため、タイヤ径の中心から外周に向かって車軸/アルミニウム製取り付け体/樹脂製スポーク/ゴム製トレッドの構成を持ち、空気の充填を必要としない非空気入りタイヤが提案されている(特許文献6~8)。非空気入りタイヤは、軽量化、転がり抵抗の減少、メンテナンス性の向上、特に自動車用途では燃費改善のような、タイヤという構造体が抱える課題へのアプローチとして注目されており、特に高い機械的物性を要求されるスポーク部分への樹脂の利用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59-193959号公報
【特許文献2】特開平3-290464号公報
【特許文献3】特開平5-202239号公報
【特許文献4】特開2008-106249号公報
【特許文献5】国際公開公報第2022/138726号
【特許文献6】特開2014-125080号公報
【特許文献7】国際公開公報第2018/211734号
【特許文献8】国際公開公報第2019/093212号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂は流動性があるため成形が容易という特長を有しているが、成形する際の樹脂の流動性や、樹脂そのものの製造コストは改良が望まれる点である。さらに、非空気入りタイヤにおいて上記構成で車重を支持し、走行時のタイヤへの負荷に耐えるためには、樹脂製スポークが寄与するが、スポークがタイヤの構造を保つために重要な部位であることから、低い引張永久ひずみが求められ、このような課題を解決できるような樹脂材料が求められていた。
【0006】
よって、本発明の課題は、低い製造コストで提供することができ、流動性及び引張永久ひずみに優れる、樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に関する。
[1]ポリエーテルを含むソフトセグメントを有するエラストマー(A)と、密度が0.900g/cm~0.930g/cmであるポリオレフィン(B)とを配合してなる樹脂組成物であって、該組成物中に、
前記エラストマー(A)を0質量%超50質量%未満、
前記ポリオレフィン(B)を、50質量%超100質量未満含み、
ISO294-1に基づき作製したISO TYPE A形状の2mm厚試験片を、23℃、50%相対湿度環境下で、JIS K 6273に基づき、引張試験機にて、20%ひずみ及び30分の引張永久ひずみ試験を行ったときの引張永久ひずみが27%未満であり、キャビティ厚み1mm、幅15mm(ゲートサイズ:厚み1.0mm×幅3.0mm×長さ2.0mm)のバーフロー金型を設置した射出成形機を使用し、射出圧力100MPa、シリンダー温度230℃、金型温度40℃、射出速度38mm/秒、射出時間4秒及び冷却時間15秒の成形条件にて射出した樹脂組成物の流動長が85mm以上である、樹脂組成物。
[2]前記エラストマー(A)がポリアミドエラストマー及びポリエステルエラストマーからなる群から選択される少なくとも1種を含む、前記[1]記載の樹脂組成物。
[3]前記ポリオレフィン(B)が、少なくとも一部に反応性官能基を有していてもよい、低密度ポリエチレンである、前記[1]又は[2]記載の樹脂組成物。
[4]前記エラストマー(A)がポリアミドエラストマー及びポリエステルエラストマーからなる群から選択される少なくとも1種を含み、前記ポリオレフィン(B)が、主鎖の少なくとも一部に反応性官能基を有していてもよい、低密度ポリエチレンである、前記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]非空気入りタイヤ用である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]タイヤの骨格部材用の、前記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]前記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、成形品。
[8]前記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、非空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流動性及び引張永久ひずみに優れる、樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。例えば、「50.00~90.00質量%」は、「50.00質量%以上90.00質量%以下」を意味する。
【0010】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、ポリエーテルを含むソフトセグメントを有するエラストマー(A)と、密度が0.900g/cm~0.930g/cmであるポリオレフィン(B)とを配合してなり、該組成物中に、前記エラストマー(A)を0質量%超50質量%未満、前記ポリオレフィン(B)を、50質量%超100質量未満含み、ISO294-1に基づき作製したISO TYPE A形状の2mm厚試験片を、23℃、50%相対湿度環境下で、JIS K 6273に基づき、引張試験機にて、20%ひずみ及び30分の引張永久ひずみ試験を行ったときの引張永久ひずみが27%未満であり、キャビティ厚み1mm、幅15mm(ゲートサイズ:厚み1.0mm×幅3.0mm×長さ2.0mm)のバーフロー金型を設置した射出成形機を使用し、射出圧力100MPa、シリンダー温度230℃、金型温度40℃、射出速度38mm/秒、射出時間4秒及び冷却時間15秒の成形条件にて射出した樹脂組成物の流動長が85mm以上である、樹脂組成物である。
【0011】
〔エラストマー(A)〕
本発明におけるエラストマー(A)は、ゴム弾性を示すソフトセグメントと擬似的な架橋点としての役割を有するハードセグメントをその構造に有しており、ソフトセグメントにポリエーテルの構造を含むものである。上記構造を有していれば、エラストマーの構造は特に制限はされない。
【0012】
ポリエーテルの構造を示すソフトセグメントは、式-R-O-(ここで、Rは直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である)を繰り返し単位に有する。ポリエーテルの構造を示すソフトセグメントとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、下記式(1)に示されるABA型トリブロックポリエーテル等に由来する構造であることが好ましい。これらは、単独で又は2種以上を用いることができる。また、ポリエーテルの末端にアンモニア等を反応させることによって得られるポリエーテルジアミン等を用いることができる。ソフトセグメントの数平均分子量は、200~6,000であることが好ましく、650~2,000であることがより好ましい。
【0013】
【化1】

(式中、xは1~20であり、yは4~50であり、zは1~20である。)
【0014】
x及びzは、それぞれ独立して、1~18の整数が好ましく、1~16の整数がより好ましく、1~14の整数がさらに好ましく、1~12の整数が特に好ましい。また、yは、5~45の整数が好ましく、6~40の整数がより好ましく、7~35の整数がさらに好ましく、8~30の整数が特に好ましい。
【0015】
エラストマー(A)としては、ソフトセグメントにポリオレフィン単位や脂肪族ポリエステル単位のようなポリエーテルの構造以外の構造が含まれていてもよい。そのような例として、上記ポリエーテルの構造を示すソフトセグメントが由来するポリエーテルと、それ以外のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0016】
エラストマー(A)に含まれるハードセグメントとしては、ポリアミド単位、芳香族ポリエステル単位、ポリプロピレン単位、ウレタン結合等を用いることができ、特に制限されない。エラストマー(A)は、ポリアミド単位又はポリエステル単位をハードセグメントとして有していることが好ましい。すなわち、エラストマー(A)はポリアミドエラストマー及びポリエステルエラストマーからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0017】
ポリアミド単位をハードセグメントとして有するポリアミドエラストマーは、機械物性のバランスの観点から、ハードセグメントとソフトセグメントをエステル結合で結合したポリエーテルエステルアミドエラストマー、及び、ハードセグメントとソフトセグメントをアミド結合で結合したポリエーテルアミドエラストマーからなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
【0018】
ハードセグメントとしてのポリアミド単位は、両末端基にカルボキシル基を有するポリアミドから誘導することができ、ポリアミド形成単位と、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸とを含むセグメントである。
【0019】
ハードセグメントにおけるポリアミド形成単位は、ラクタム、アミノカルボン酸、及び/又はジアミンとジカルボン酸(ナイロン塩)から形成される単位である。前記成分は例えば、ラクタム、アミノカルボン酸及びジアミンとジカルボン酸(ナイロン塩)からなる群より選択される1種又は2種以上を反応させて得られる単位が挙げられる。これらの形成単位となる化合物は、化学合成されたもの、バイオ由来のものを問わす利用することができる。また、市販されているものをそのまま用いてもよい。
【0020】
ラクタムとしては、2-ピロリジノン、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、ω-ヘプタラクタム、ω-オクタラクタム、ω-ノナラクタム、ω-デカラクタム、ω-ウンデカラクタム、ω-ドデカンラクタム等の炭素原子数4~20の脂肪族ラクタム等が挙げられる。
アミノカルボン酸としては、6-アミノヘキサン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等の炭素原子数5~20の脂肪族ω-アミノカルボン酸、4-アミノ桂皮酸、p-アミノメチル安息香酸等の芳香族アミノカルボン酸等が挙げられる。
ジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジアミン、3-メチルペンタン-1,5-ジアミン等の炭素原子数2~20の脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミンのような脂環式ジアミン、これらの脂肪族ジアミンの炭素鎖がシクロペンテニル基、シクロヘキセニル基のような少なくとも1つの脂環式構造で中断されている脂環式ジアミン、4-アミノピペリジン、アミノエチルピペラジンのような複素環式アミンを含むジアミン等のジアミン化合物が挙げられる。
これらの中でも、低吸水による寸法安定性、耐薬品性、機械物性の観点から、ω-ウンデカラクタム、ω-ドデカンラクタム、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0021】
ハードセグメントとしてのポリアミド単位を形成するために用いられるジカルボン酸は、分子量調整剤として使用することができる。ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸のような炭素原子数2~20の直鎖脂肪族ジカルボン酸;トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数14~48の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)及びこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,4-フェニレンジオキシジ酢酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸、ジ安息香酸、4,4’-オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸等の炭素原子数8~22の芳香族ジカルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の炭素原子数5~22の脂環式ジカルボン酸;等のジカルボン酸化合物が挙げられる。ジカルボン酸の存在下、上記ポリアミド形成単位を、常法により、開環重合又は重縮合させることによって両末端にカルボキシル基を有するポリアミドを得ることができる。
これらの中でも、アジピン酸、シュウ酸、ドデカン二酸、セバシン酸及びダイマー酸が好ましい。ダイマー酸及び水添ダイマー酸としては、クローダ社製商品名「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」等を用いることができる。
【0022】
ポリエステル単位をハードセグメントとして有するポリエステルエラストマーは、芳香族ポリエステルをハードセグメントの構成単位として含むものがより好ましい。エラストマー(A)のハードセグメントに導入される芳香族ポリエステルの例としては、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンナフタレートが挙げられる。
【0023】
ハードセグメントとしてのポリエステル単位を形成するために用いられる芳香族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとから形成することができる。芳香族ジカルボン酸は、酸無水物、酸ハロゲン化物のような、アルコールとの反応によりエステルを形成することが可能な誘導体であってもよい。
【0024】
ハードセグメントとしてのポリエステル単位を形成する由来となるジカルボン酸は、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、又はこれらの誘導体等が挙げられる。
【0025】
ハードセグメントとしてのポリエステル単位を形成するために用いられるジオールは、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニル等の芳香族ジオールが挙げられる。これらのジオールは、分子量が300以下であるとハードセグメントの形成において有利であるため好ましい。
【0026】
ハードセグメントの数平均分子量は、300~15,000であることが好ましく、柔軟性、成形性の観点から300~6,000であることがより好ましい。
【0027】
上記ハードセグメントと上記ソフトセグメントとの組み合わせとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組み合わせを挙げることができる。この中でも、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコールの組み合わせ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコールの組み合わせ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの組み合わせ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組み合わせ、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレングリコールの組み合わせ、ポリブチレンテレフタレート/ポリプロピレングリコールの組み合わせ、ポリブチレンテレフタレート/ポリブチレングリコールの組み合わせが好ましく、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組み合わせが特に好ましい。
【0028】
上記ハードセグメントと上記ソフトセグメントとの割合(質量比)は、ハードセグメント/ソフトセグメント=95/5~30/70であることが好ましい。この範囲であれば、十分な柔軟性を確保しやすい。ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)は、90/10~35/65であることがより好ましく、80/20~40/60であることが特に好ましい。また、ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)は、95/5~70/30であってもよく、70/30~30/70であってもよい。ここで、エラストマー(A)が複数存在する場合、ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)は各成分の質量に応じた平均値とする。
【0029】
以上のようなエラストマーの市販品としては、ポリプラ・エボニック社製:ダイアミド(登録商標)、ARKEMA社製:Pebax(登録商標)、エムスケミー・ジャパン社製:グリルアミド(登録商標)、リケンテクノス社製:ハイパーアロイ アクティマー(登録商標)、DSM社製:ノバミット(登録商標)、UBE株式会社製:UBESTA XPA(登録商標)シリーズ、東レ・デュポン社製:ハイトレル(登録商標)、東洋紡社製:ペルプレン(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0030】
この中でも、「UBESTA XPA(登録商標) 9040X1、同9040F1、同9048X1、同9048F1、同9055X1、同9055F1、同9063X1、同9063F1、同9068X1、同9068F1」(UBE株式会社製)、「Pebax(登録商標)2533、同3533、同4033、同5533、同6333、同7033、同7233」(ARKEMA社製)、「ハイトレル(登録商標)」(東レ・デュポン社製)、「ペルプレン(登録商標)」(東洋紡社製)等が好ましい。これらは、市販されているものをそのまま用いてもよい。
【0031】
エラストマー(A)は、1種の成分又は2種以上の組み合わせの成分であってもよい。
【0032】
〔ポリオレフィン(B)〕
ポリオレフィン(B)は、オレフィン又はアルケンをモノマーとして構成されるポリマーであり、本発明の組成物において用いられるポリオレフィンは、その密度が0.900g/cm~0.930g/cmの範囲のものである。ポリオレフィン(B)としては、主鎖がポリオレフィンの構造をとっていれば、直鎖状であってもよく、分岐状であっても良い。またポリオレフィン(B)は末端又は側鎖の少なくとも一部が反応性官能基を有しているものが好ましい。
【0033】
上記要件を満たすポリオレフィン(B)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/ブチレン共重合体等のエチレンとα-オレフィンの共重合体等が挙げられる。特に、分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、重量平均分子量(Mw)が100万以上である超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)又はこれらの変性体が挙げられる。ポリオレフィン(B)は、分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)及び超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。ポリオレフィン(B)の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されない。なお、ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等の公知の方法によって測定することができる。
【0034】
ポリオレフィン(B)のうち反応性官能基を有さないものは、市販品を用いてもよいし、オレフィンモノマーから重合して得たポリマーを用いてもよい。ポリオレフィンの製造方法は当業者に公知であり、高圧法、遷移金属を用いた触媒による重合法等を用いて、所望の物性を有するポリオレフィンを得ることができる。市販のポリオレフィンとしては、株式会社プライムポリマー製:エボリューSP0540(登録商標)等が挙げられる。
【0035】
ポリオレフィン(B)の少なくとも一部に反応性官能基を有している場合において、その反応性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸変性基;及び、カルボキシル金属塩、酸無水物基、アミノ基、水酸基、シラノール基、アルコキシ基、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、オキサゾリン基等の酸変性基以外の反応性官能基が挙げられる。反応性官能基を含有する化合物は、不飽和カルボン酸又はその誘導体、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、ビニル基含有有機ケイ素化合物等が好ましい。不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、カルボキシル基を1以上有する不飽和化合物、カルボキシル基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボキシル基を1以上有する不飽和化合物等が挙げられる。不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基等が挙げられる。反応性官能基を含有する化合物は、反応性の観点から、酸変性基を含有する化合物であることが好ましく、不飽和カルボン酸又はその誘導体であることが特に好ましい。したがって、ポリオレフィン(B)としては、末端又は側鎖の少なくとも一部に不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来する構造を有するものが好ましい。
【0036】
不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸が挙げられる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、前記不飽和カルボン酸の酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等が挙げられ、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が好ましい。不飽和カルボン酸又はその誘導体は、反応性の観点から、無水マレイン酸及びアクリル酸からなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましく、無水マレイン酸であることが特に好ましい。
【0037】
反応性官能基を含有する化合物による未変性ポリエチレンの変性は、未変性ポリエチレンの合成時又は合成後に行うことができる。ここで、反応性官能基を含有する化合物の使用量は、所望とするポリエチレンの変性量に応じて適宜設定できる。
【0038】
変性ポリオレフィンの市販品としては、宇部丸善ポリエチレン社製の商品名F3000、三井化学社製のアドマー(登録商標)NF528T、NF518、NF567、NF587、NB550、NB508、HE810、三井化学社製のリュブマー(登録商標)LY1040、三菱化学社製のモディック(登録商標)M545、日本ポリエチレン社製のアドテックス(登録商標)L6100M、等が挙げられる。これらは市販されているものをそのまま用いてもよい。
【0039】
ポリオレフィン(B)は、ASTMD1238に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR:190℃、2,160g)が、0.1~60g/10分であることが好ましく、0.5~55g/10分であることが特に好ましい。
【0040】
ポリオレフィン(B)は、1種の成分又は2種以上の組み合わせの成分であってもよい。
【0041】
ポリオレフィン(B)は、その密度が0.900g/cm~0.930g/cmの範囲のものである。本明細書において「低密度ポリエチレン」というときは、密度が上記範囲内であることを指す。2種類以上のポリオレフィンを組合せて用いる場合は、それら混合物について測定される密度を指す。
【0042】
〔添加剤(C)〕
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要な機能を付与するために、添加剤(C)を配合することができる。添加剤(C)としては、例えば、耐候剤、架橋剤、ポリアミド樹脂(但し、エラストマー(A)を除く)、酸化防止剤、熱安定剤、耐熱剤、増粘剤、分子量(粘度)調節剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、可塑剤、発泡剤、着色剤(顔料、染料等)等が挙げられる。なお、エラストマー(A)及びポリオレフィン(B)の製造において、添加剤(C)に該当する成分(例えば、酸化防止剤)が用いられてもよい。
【0043】
後述するように、本発明の樹脂組成物をタイヤのスポークのような部材に用いる場合には、耐候剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤を添加すると、部材の耐用期間を延ばすことができるために好ましい。このような機能を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードアミン系化合物、トリアジン系化合物、トリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物等の公知の化合物や、市販されているものを用いることができる。
【0044】
また、添加剤として架橋剤を用いることも好ましい。架橋剤は、樹脂組成物中の各ポリマーを架橋することで、引張永久ひずみを更に改良することができる。本発明の樹脂組成物は、架橋剤無しでもそれ自体で良好な引張永久ひずみを発揮することができるが、架橋剤を更に加えてもよい。架橋剤としては、カルボジイミド基、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシシラン基及びアリル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する架橋剤等が挙げられる。架橋剤は、架橋構造を効率的に形成させる必要がある観点から、ポリアミド樹脂の末端アミノ基及び/又はカルボキシル基と良好な反応性を有する基をもつ化合物が好ましく、ジイソシアネート、トリアリルイソシアヌレート、シリルエーテル、又は、カルボジイミド基を有する架橋剤であることが好ましく、カルボジイミド基を有する架橋剤であることがより好ましく、環状カルボジイミド構造を有する架橋剤であることが特に好ましい。また、環状カルボジイミド構造を有する架橋剤は、エラストマー(A)及びポリオレフィン(B)からなる群より選択される少なくとも一種と反応した際に、イソシアネート基を遊離しない、作業環境保全の観点から特に好ましい。
【0045】
ポリアミド樹脂(但し、エラストマー(A)を除く)としては、特に限定されず、エラストマー(A)で前記したようなポリアミド形成単位を有するポリアミド樹脂が挙げられる。追加的に用いることのできるポリアミド樹脂(但し、エラストマー(A)を除く)の具体例としては、脂肪族ポリアミド(例えば、PA5、PA6、PA11、PA12、PA46、PA56、PA510、PA66、PA610、PA612、PA1010、PA1012等)、芳香族ポリアミド(例えば、PA4T、PA6T、PA9T、PA10T、PA6I、PAMXD6)、及び前記ポリアミドを形成する2種以上のモノマーのコポリマー(例えば、PA6/66、PA6/69、PA6/610、PA6/611、PA6/612、PA6/11、PA6/12、PA6/66/6I、PA6/66/12、PA6/66/610、PA6/69、PA6/66/612)等が挙げられる。ここで、「PA」は「ポリアミド」を意味する。
【0046】
上記した以外の添加剤(C)は、樹脂組成物に通常添加される成分から適宜選択することができる。機械物性がより優れる観点から、樹脂組成物は更に架橋剤を含むことが好ましい。また、樹脂組成物が、ハードセグメントとソフトセグメントとの質量比が95/5~70/30であるエラストマーを含む場合、引張永久ひずみの観点から、添加剤(C)として架橋剤を含むことが好ましい。
添加剤(C)は、それぞれ、1種の成分又は2種以上の組合せの成分であってもよい。
【0047】
〔含有量〕
樹脂組成物の全質量に対する、各成分の含有量は以下の通りである。
【0048】
エラストマー(A)の含有量は、0.00質量%超~50.00質量%未満である。エラストマー(A)の含有量は、機械物性や成形加工性をより良好にする観点から、5~45質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、15~40質量%であることが特に好ましい。
【0049】
ポリオレフィン(B)の含有量は、50質量%超~100質量%未満であり、ポリオレフィン(B)の含有量をこの範囲にすることで、流動性を高めて良好な成形性を得ることができる。引張永久ひずみや成形加工性をより良好にする観点からは、ポリオレフィン(B)の含有量は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、55~90質量%であることがより好ましく、60~80質量%であることが特に好ましい。なお、ポリアミド樹脂組成物が、更に添加剤(C)を含む場合、ポリアミド樹脂組成物において、(A)~(C)の合計は100.00質量%であることができる。よって、ポリオレフィン(B)の含有量が、50質量%超97質量%以下である場合は、樹脂組成物は、更に添加剤(C)を0質量%超3質量%未満含むことができる。また、ポリオレフィン(B)の含有量の上限は、100.00質量%からエラストマー(A)と添加剤(C)の含有量の合計を減じた値であることができる。
【0050】
添加剤(C)の含有量は、組成物全体に対して0~45.00質量%であることが好ましい。また、添加剤(C)のうち、ポリアミド樹脂(但し、エラストマー(A)を除く)の含有量は、本発明の効果に影響を及ぼさない観点から、0質量%以上10.00質量%未満であることが好ましく、0質量%以上5.00質量%未満であることがより好ましく、0質量%以上3.00質量%未満であることが特に好ましい。添加剤(C)のうち、耐候剤の含有量は、成形品の耐光性等の耐久性の観点から、0.01~5.00質量%であることが好ましく、0.01~3.00質量%であることが特に好ましい。添加剤(C)のうち、架橋剤の含有量は、引張永久ひずみ、成形加工性の観点から、0.01~5.00質量%であることが好ましく、0.01~4.00質量%であることが特に好ましい。添加剤(C)のうち、酸化防止剤の含有量は、成形直後の外観、又は経時劣化、熱劣化後の物性維持の観点から、0.01~5.00質量%であることが好ましく、0.01~3.00質量%であることが特に好ましい。なお、エラストマー(A)及びポリオレフィン(B)の製造において、添加剤(C)に該当する成分が用いられる場合、当該添加剤(C)に該当する成分の含有量は、樹脂組成物の全質量に対する、(C)成分の含有量とする。
【0051】
〔樹脂組成物の特性〕
本発明の樹脂組成物は、23℃、50%相対湿度環境下で、JIS K 6273に基づき、引張試験機にて、20%ひずみ及び30分の引張永久ひずみ試験を行ったときの引張永久ひずみが27.0%未満である。成型品が強度面でより優れる観点から、前記引張永久ひずみは24.0%以下であることがより好ましく、23.0%以下であることが更に好ましい。ここでの引張永久ひずみは、より具体的には以下の条件の試験により測定される。すなわち、射出成形にて得た成形体(ISO20753 TYPE A1形状の2mm厚試験片)の平行部分の中心から長手方向に±25mmの間隔でマーキングを行い、50mmの標線間距離とし、マーキングした標線間距離を測定し伸長前の標線間距離(L0)として、23℃、50%相対湿度環境下で引張試験機を用いてひずみ20%×30分の条件にて伸長し、伸長開始から20分後に標線間距離を測定し伸長後の標線間距離(L1)とする。伸長開始から30分後、引張試験機から試験片を取り外し、平坦な場所に30分静置後、標線間距離を測定し収縮後の標線間距離(L2)とする。測定した標線間距離を用いて次の式から引張永久ひずみ(TS)が求められる。
引張永久ひずみ(TS)=(収縮後の標線間距離(L2)-伸長前の標線間距離(L0))/(伸長後の標線間距離(L1)-伸長前の標線間距離(L0))×100
【0052】
本発明の樹脂組成物は、キャビティ厚み1mm、幅15mm(ゲートサイズ:厚み1.0mm×幅3.0mm×長さ2.0mm)のバーフロー金型を設置した射出成形機(日精樹脂工業製、商品名:PS40E、スクリュー径:φ26mm)を使用し、シリンダー温度230℃、金型温度40℃、射出圧力100MPa、射出速度38mm/秒、射出時間4秒、冷却時間15秒の成形条件にて射出した樹脂組成物の流動長が85mm以上である。成形性をより良くする観点からは、同条件での流動長が90mm以上であることがより好ましい。また、適度な成形性を保つために、同条件での流動長は230mm以下であることが好ましい。なおここでの「流動長」は、20個射出成形した樹脂組成物の内、最終10個の成形品を用いてゲートから流動末端までの距離を測定したときの平均値である。
【0053】
〔樹脂組成物の製造方法〕
樹脂組成物の製造方法としては、上記各成分を混練できる方法であれば特に制限はなく、例えば、二軸押出機、単軸押出機、多軸押出機等によって製造する方法を挙げることができる。
【0054】
[樹脂組成物の用途]
樹脂組成物は、特に制限されず、公知の方法を利用する成形体の製造に用いることができる。また、本発明の樹脂組成物を含む成形体は、引張永久歪みが小さく、自動車・自転車等の車輪のスポーク等に用いることができる。本発明の樹脂組成物は、適度な流動性を有し成形が容易であり且つ引張永久ひずみが小さく変形しづらいため、特に、車輪のスポークのように容易に変形しないことが求められる成形体に適している。また、樹脂製で軽い成形体が得られることから、非空気入りタイヤと呼ばれる、接地部分に空気を充填しないタイヤのスポークに好適に用いられる。
【0055】
[樹脂組成物を含む成形体の製造方法]
樹脂組成物を含む成形体の製造方法としては、特に制限されず、射出成形、押出成形、ブロー成形、共押出成形又はマルチ射出成形等の、樹脂を含む成形体のための公知の製造方法が挙げられる。樹脂組成物を含む成形体の製造方法は、成形品の取得効率の観点から、射出成形であることが好ましい。射出成形を用いた成形体の製造方法は、樹脂組成物を、シリンダー温度200~250℃、金型温度30~50℃、射出圧力100MPaにて射出成形する工程を含むことが特に好ましい。このとき、樹脂組成物の流動長、すなわち、どの程度の樹脂組成物が射出されたか、が85mm以上であると、作業性に優れるのでより好ましい。前記した以外の成形体の製造方法の条件は、適宜設定することができる。
【実施例0056】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において使用した成分及び成形品の物性測定方法を以下に示す。
【0057】
[使用成分]
1.エラストマー(A)
ポリエーテルアミドエラストマーとして、2種類を下記の方法により調製した。
(ポリエーテルアミドエラストマー(PAE-1)の製造)
攪拌機、温度計、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を供えた70Lの圧力容器に、12-アミノドデカン酸(UBE株式会社製)20.0kg、アジピン酸(旭化成株式会社製)3.73kg、ELASTAMINE(登録商標)RT-1000(米国ハンツマン社製、数平均分子量約1,000、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物、式(1)において、xが約3、yが約9、zが約2)26.3kg、次亜リン酸ナトリウム0.08kg、及びIrganox(登録商標)245(BASF社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.15kgを仕込んだ。容器内を窒素置換した後、加熱を開始した。槽内温度が230℃に到達した時点から更に5時間加熱撹拌し、反応水を系外に留去しながら重合反応を行った。反応終了後、ポリマー取り出し口から無色透明のポリマーを水中へストランド状に吐出し、ペレタイザーによりカッティングを行って40kgのPAE-1を得た。PAE-1のハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)は、47/53である。
【0058】
(ポリエーテルアミドエラストマー(PAE-2)の製造)
撹拌機、温度計、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を供えた70Lの圧力容器に、12-アミノドデカン酸(UBE株式会社製)69.7kg、アジピン酸(旭化成株式会社製)3.69kg、ELASTAMINE(登録商標)RT-1000(米国ハンツマン社製、数平均分子量約1,000、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物、式(1)において、xが約3、yが約9、zが約2)26.2kg、次亜リン酸ナトリウム0.11kg、及びIrganox(登録商標)245(BASF社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.23kgを仕込んだ。容器内を窒素置換した後、加熱を開始した。槽内温度が230℃に到達した時点から更に5時間加熱撹拌し、反応水を系外に留去しながら重合反応を行った。反応終了後、ポリマー取り出し口から無色透明のポリマーを水中へストランド状に吐出し、ペレタイザーによりカッティングを行って90kgのPAE-2を得た。PAE-2のハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)は、74/26である。
【0059】
上記2種類のポリエーテルアミドエラストマーの他、ポリエーテルポリエステルエラストマーとして東レ・デュポン社製、Hytrel 4047Nを、ポリエーテルポリエステルアミドエラストマーとしてアルケマ社製、Pebax6333をそれぞれ用いた。
【0060】
2.ポリオレフィン(B)
ポリオレフィン(B)として、以下のポリマーを用いた。
・変性直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学社製、アドマー(登録商標)NF567、密度:0.91g/cm
・無水マレイン酸変性低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製、F3000(商品名)、密度:0.92g/cm)なお、F3000は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を無水マレイン酸で変性した変性ポリエチレンである。
・直鎖状低密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製、エボリューSP0540(登録商標)、密度:0.90g/cm
【0061】
(実施例1~6、比較例1~3)
エラストマー(A)、ポリオレフィン(B)を表1に記載した組成比(質量部)で用い、さらに耐候剤としてTinuvin312とSABOSTAB UV119を0.25質量部ずつ加え、二軸混練機を用いて200~260℃で溶融混練し、実施例1~6、比較例1~3のポリアミド樹脂組成物を得た。次に、得られた実施例1~6、比較例1~3の樹脂組成物のペレットをシリンダー温度290℃、金型温度80℃で射出成形し、各種試験片を製造し、各種物性を評価した。なお、表1において、エラストマー(A)は、その製造時に用いられた酸化防止剤を含む樹脂の含有量である。
【0062】
[引張永久ひずみ]
射出成形にて成形体(ISO20753 TYPE A1形状の2mm厚試験片)を得た。得られた成形体について、平行部分の中心から長手方向に±25mmの間隔でマーキングを行い、50mmの標線間距離とした。マーキングした標線間距離を測定し伸長前の標線間距離(L0)とした。次に23℃、50%相対湿度環境下で引張試験機を用いてひずみ20%×30分の条件にて伸長し、伸長開始から20分後に標線間距離を測定し伸長後の標線間距離(L1)とした。伸長開始から30分後、引張試験機から試験片を取り外し、平坦な場所に30分静置後、標線間距離を測定し収縮後の標線間距離(L2)とした。なお、伸長前の標線間距離(L0)及び収縮後の標線間距離(L2)の測定はオリンパス社製工業用測定顕微鏡STM7を用いた。伸長後の標線間距離(L1)の測定においてはデジタルノギスを用いた。測定した標線間距離を用いて次の式から引張永久ひずみ(TS)を求めた。
引張永久ひずみ(TS)=(収縮後の標線間距離(L2)-伸長前の標線間距離(L0))/(伸長後の標線間距離(L1)-伸長前の標線間距離(L0))×100
上記の方法よって求めた引張永久ひずみが27.0%未満である場合は、「引張永久ひずみに優れる」と判断した。
【0063】
[流動性]
本発明で得られた組成物を、下記の成形条件で成形された試験片から流動長を測定し、流動性の評価とした。キャビティ厚み1mm、幅15mm(ゲートサイズ:厚み1.0mm×幅3.0mm×長さ2.0mm)のバーフロー金型を設置した射出成形機(日精樹脂工業製、商品名:PS40E、スクリュー径:φ26mm)を使用し、シリンダー温度230℃、金型温度40℃、射出圧力100MPa、射出速度38mm/秒、射出時間4秒、冷却時間15秒の成形条件にて20個射出成形した。20個成形した内の最終10個の成形品を用いてゲートから流動末端までの距離を測定しその平均値を流動長とした。
【0064】
【表1】
【0065】
表1の結果から明らかなとおり、実施例1~6のポリアミド樹脂組成物は、引張永久ひずみ及び流動性の両方に優れており、タイヤのスポークのような変形への強さが求められる材料の成形用の素材として適している。一方で、ポリオレフィン(B)を含まない比較例1、2の樹脂組成物は引張永久ひずみが大きく、エラストマー(A)の量が多い比較例3の樹脂組成物は流動性が低く、成形性の面で十分な結果ではなかった。