IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹村製作所の特許一覧

<>
  • 特開-農業用給水システム及びその水抜方法 図1
  • 特開-農業用給水システム及びその水抜方法 図2
  • 特開-農業用給水システム及びその水抜方法 図3
  • 特開-農業用給水システム及びその水抜方法 図4
  • 特開-農業用給水システム及びその水抜方法 図5
  • 特開-農業用給水システム及びその水抜方法 図6
  • 特開-農業用給水システム及びその水抜方法 図7
  • 特開-農業用給水システム及びその水抜方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052200
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】農業用給水システム及びその水抜方法
(51)【国際特許分類】
   E03B 7/10 20060101AFI20240404BHJP
   A01G 25/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
E03B7/10 J
A01G25/00 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158754
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000150095
【氏名又は名称】株式会社竹村製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 貞治
(57)【要約】
【課題】 低コストに実施し、経済性や省エネルギー性に優れた給水システムを提供するとともに、全残留水を確実かつ自動で排出可能にし、電気設備が無い農場等にも容易に適用可能にする。
【解決手段】 支管開閉弁5…を、操作部5h…の操作により弁体部5v…が変位して支管Ps…を開閉する開閉機能弁として構成するとともに、弁体部5v…の内部に、この弁体部5v…に対して上流側の支管Psiにおける所定の水圧Fw以上で閉位置Zcの弁体部5v…を閉側Zpcに切換え、かつ所定の水圧Fw未満で閉位置Zcの弁体部5v…を開側Zpoに切換えるサブバルブ機構6を設け、水抜き時に、給水源Sからの給水を停止した後、排泥弁3の開ポジションへの切換により、本管Pm及び複数の支管Ps…の残留水を排泥弁3から排出可能にする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を収容した給水源から、排泥弁を接続した本管に対して給水を行う本管給水部と、この本管における複数の異なる位置から分岐した複数の支管を備え、各支管の先端に設けた給水口を少なくとも地上に露出させるとともに、各支管の中途位置に少なくとも支管開閉弁を接続してなる複数の支管給水部を備える農業用給水システムにおいて、前記支管開閉弁を、操作部の操作により弁体部が変位して前記支管を開閉する開閉機能弁として構成するとともに、前記弁体部の内部に、この弁体部に対して上流側の支管における所定の水圧以上で閉位置の弁体部を閉側に切換え、かつ所定の水圧未満で閉位置の弁体部を開側に切換えるサブバルブ機構を設けたことを特徴とする農業用給水システム。
【請求項2】
前記サブバルブ機構は、所定の水圧以上により上昇して上方に配した弁座部を閉じ、かつ所定の水圧未満により離間して前記弁座部を開くボール弁体を備えることを特徴とする請求項1記載の農業用給水システム。
【請求項3】
前記各支管は、前記支管開閉弁に対する上流側の中途位置に直列接続した水抜栓を備えることを特徴とする請求項1記載の農業用給水システム。
【請求項4】
前記給水源は、前記本管に対して水を送出する給水ポンプを備えることを特徴とする請求項1記載の農業用給水システム。
【請求項5】
水を収容した給水源から、排泥弁を接続した本管に対して給水を行う本管給水部と、この本管における複数の異なる位置から分岐した複数の支管を備え、各支管の先端に設けた給水口を少なくとも地上に露出させるとともに、各支管の中途位置に少なくとも支管開閉弁を接続してなる複数の支管給水部を備える農業用給水システムの水抜方法であって、前記支管開閉弁を、操作部の操作により弁体部が変位して前記支管を開閉する開閉機能弁として構成するとともに、前記弁体部の内部に、この弁体部に対して上流側の支管における所定の水圧以上で閉位置の弁体部を閉側に切換え、かつ所定の水圧未満で閉位置の弁体部を開側に切換えるサブバルブ機構を設け、水抜き時に、前記給水源からの給水を停止した後、前記排泥弁の開ポジションへの切換により、前記本管及び前記複数の支管の残留水を前記排泥弁から排出可能にしたことを特徴とする農業用給水システムの水抜方法。
【請求項6】
前記給水源から給水ポンプにより前記本管に対して水を送出することを特徴とする請求項5記載の農業用給水システムの水抜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水源から給水される本管給水部とこの本管給水部から分岐する複数の支管給水部を備える農業用給水システム及びその水抜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、大規模な農地等には、対応する給水設備が併設されることも多いとともに、特に、寒冷地に設置される給水設備には、残留水の凍結を防止するための水抜機能を付設している。具体的には、給水源に対して本管を接続し、この本管に対して、複数の支管を所定の間隔おきに設置することにより、複数の農業従事者が共同で使用している。また、各支管の先端側には、それぞれ開閉弁(蛇口)を接続した給水口を備えるとともに、各支管の中途位置には、凍結を防止する不凍水抜栓(特許文献1参照)を接続しているが、各支管は、個々の農業従事者により管理されているため、寒冷時に、水抜栓の操作による水抜きを忘れ、凍結により支管の損傷を招くことも少なくない。このため、より確実に全支管の水抜きを行う手法(手段)が要請されている。
【0003】
従来、このような要請に応える手段としては、複数の水抜栓(電動弁)を制御盤により集中的に制御するようにした装置も特許文献2に記載される複数軒の水道配管の凍結防止装置により知られている。同文献2に記載の凍結防止装置は、簡単な操作で確実に水抜きができ、維持、管理が容易で、設置コストをできるだけ低くした、複数軒の水道配管の凍結防止装置の提供を目的としたものであり、具体的には、複数個の元栓と、その下流側に接続される電動切換弁と、上記複数個の電動切換弁の排水口に排水管を介して接続され、空気と水をともに吸引できる1戸の電動吸引装置と、その制御盤と、複数個の操作盤とを備え、各操作盤のスイッチの投入により上記制御盤を介して電動吸引装置を作動させ、配管内の水を強制的に外部に排出するようにするとともに、上記元栓を電動にして、各操作盤のスイッチの投入により、元栓を閉じた後で、電動切換弁を開き、一定時間経過後に電動吸引装置を作動させるようにシーケンス制御するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-060097号公報
【特許文献2】特開2002-275953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の凍結防止装置は、次のような問題点があった。
【0006】
即ち、電気設備が前提となるため、電気設備のない農場等では適用が困難となる。仮に、電気設備が存在したとしても屋外の広いエリアに設置する場合、設置コストが無視できない。一方、この種のシステム(装置)は、コンピュータシステムや通信システムを組合わせた集中管理方式を採用し、一カ所で全体の制御対象を一括して制御することも比較的容易に実現可能となるが、全体の更なる高コスト化を招きやすいため、現実的には採用しにくい。
【0007】
しかも、この種のシステム(凍結防止装置)は、寒冷時における冬季期間以外では、ほとんど使用しないため、費用対効果の観点からのデメリットも無視できない。結局、農業用給水システムの分野において、全支管の水抜きを容易かつ確実に行うとともに、無用なメンテナンス費用やランニングコストを回避し、経済性や省エネルギー性に優れた水抜きを実現するシステムは何ら提案されていないのが実情である。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した農業用給水システム及びその水抜方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る農業用給水システム1は、上述した課題を解決するため、水Wを収容した給水源Sから、排泥弁3を接続した本管Pmに対して給水を行う本管給水部Mmと、この本管Pmにおける複数の異なる位置X1,X2…Xnから分岐した複数の支管Ps…を備え、各支管Ps…の先端に設けた給水口4…を少なくとも地上Gに露出させるとともに、各支管Ps…の中途位置に少なくとも支管開閉弁5…を接続してなる複数の支管給水部Ms…を備える給水システムを構成するに際して、支管開閉弁5…を、操作部5h…の操作により弁体部5v…が変位して支管Ps…を開閉する開閉機能弁として構成するとともに、弁体部5v…の内部に、この弁体部5v…に対して上流側の支管Psiにおける所定の水圧Fw以上で閉位置Zcの弁体部5v…を閉側Zpcに切換え、かつ所定の水圧Fw未満で閉位置Zcの弁体部5v…を開側Zpoに切換えるサブバルブ機構6を設けたことを特徴とする。
【0010】
一方、本発明に係る農業用給水システム1の水抜方法は、上述した課題を解決するため、水Wを収容した給水源Sから、排泥弁3を接続した本管Pmに対して給水を行う本管給水部Mmと、この本管Pmにおける複数の異なる位置X1,X2…Xnから分岐した複数の支管Ps…を備え、各支管Ps…の先端に設けた給水口4…を少なくとも地上Gに露出させるとともに、各支管Ps…の中途位置に少なくとも支管開閉弁5…を接続してなる複数の支管給水部Ms…を備える農業用給水システム1の水抜きを行うに際し、支管開閉弁5…を、操作部5h…の操作により弁体部5v…が変位して支管Ps…を開閉する開閉機能弁として構成するとともに、弁体部5v…の内部に、この弁体部5v…に対して上流側の支管Psiにおける所定の水圧Fw以上で閉位置Zcの弁体部5v…を閉側Zpcに切換え、かつ所定の水圧Fw未満で閉位置Zcの弁体部5v…を開側Zpoに切換えるサブバルブ機構6を設け、水抜き時に、給水源Sからの給水を停止した後、排泥弁3の開ポジションへの切換により、本管Pm及び複数の支管Ps…の残留水を排泥弁3から排出可能にしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、発明の好適な態様により、サブバルブ機構6は、所定の水圧Fw以上により上昇して上方に配した弁座部8を閉じ、かつ所定の水圧Fw未満により離間して弁座部8を開くボール弁体9を設けて構成できる。一方、支管Ps…における支管開閉弁5…に対する上流側の中途位置には、直列接続した水抜栓7…を設けることができる。さらに、給水源Sには、本管Pmに対して水Wを送出する給水ポンプSpを設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明に係る農業用給水システム1及びその水抜方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 支管開閉弁5…を、操作部5h…の操作により弁体部5v…が変位して支管Ps…を開閉する開閉機能弁として構成するとともに、弁体部5v…の内部に、この弁体部5v…に対して上流側の支管Psiにおける所定の水圧Fw以上で閉位置Zcの弁体部5v…を閉側Zpcに切換え、かつ所定の水圧Fw未満で閉位置Zcの弁体部5v…を開側Zpoに切換えるサブバルブ機構6を設けたため、支管開閉弁5…を改良するのみで低コストに実施できるとともに、経済性や省エネルギー性に優れた給水システム1として提供することができる。
【0014】
(2) 排泥弁3の操作のみで、本管Pm及び複数の支管Ps…における全ての残留水を、確実に排出できるとともに、電気設備が無い農場等であっても自動かつ容易に実施することができる。
【0015】
(3) 好適な態様により、サブバルブ機構6を、所定の水圧Fw以上により上昇して上方に配した弁座部8を閉じ、かつ所定の水圧Fw未満により離間して弁座部8を開くボール弁体9を設けて構成すれば、所定の水圧Fwに対応してサブバルブ機構6の開閉をスムーズに行うことができるため、確実な水抜きを行う観点から最適な形態として実施することができる。
【0016】
(4) 好適な態様により、支管Ps…における支管開閉弁5…に対する上流側の中途位置に、直列接続した水抜栓7…を設ければ、各支管Ps…に対して個別に水抜きを行うこともできるため、例えば、各農業従事者の判断により、任意に水抜きを行えるなど、使い勝手及び利便性に優れる。
【0017】
(5) 好適な態様により、給水源Sに、本管Pmに対して水Wを送出する給水ポンプSpを設ければ、給水源Sの水Wを給水ポンプSpを利用して強制的に送出できるため、送出する水圧が低いような場合であっても、各支管給水部Ms…に対して確実に給水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の好適実施形態に係る農業用給水システムの全体系統図、
図2】同農業用給水システムの水抜方法の処理手順及び処理作用を説明するためのフローチャート、
図3】同農業用給水システムの支管開閉弁の内部構造を示す断面側面図、
図4】同支管開閉弁を閉側へ操作したときの作用説明図、
図5】同支管開閉弁を開側へ操作したときの作用説明図、
図6】同支管開閉弁の水圧が低下した水抜き時の作用説明図、
図7】同農業用給水システムの排泥弁の内部構造を示す断面側面図、
図8】同農業用給水システムの水栓柱の内部構造を示す断面側面図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
まず、本実施形態に係る農業用給水システム1の全体のシステム構成について、図1を参照して説明する。
【0021】
図1に示す農業用給水システム1において、Sは水Wを収容した給水源を示す。例示は、貯水池を示すが河川等であってもよい。また、給水源Sの近傍には、給水ポンプSpを設置し、給水ポンプSpの吸入口は配管を介して給水源Sに接続するとともに、給水ポンプSpの吐出口は本管Pmの一端(流入口)に接続する。この本管Pmは比較的大径であり、かつ長さも、例えば、数十-数百メートルにわたって地中に埋設し、この本管Pmの先端(流出口)には排泥弁3を接続する。この排泥弁3の一例を図7に示す。
【0022】
以上の構成が給水源Sから給水ポンプSpにより本管Pmに対して給水を行う本管給水部Mmとなる。なお、例示は、給水ポンプSpを設けた場合を示したが、例えば、山や丘の上など、本管Pm等に対し、相対的に高い位置(場所)に給水源Sが存在する場合には、落差により十分な水圧を確保できるため、給水ポンプSpは、必ずしも設置することを要しない。
【0023】
一方、この本管Pmにおける複数の異なる位置X1,X2…Xnには、この本管Pmから分岐する複数の支管Ps…を接続する。位置X1から分岐する一つの支管Ps(他の支管Ps…も同じ)は、図1に示すように、本管Pmから分岐した後、地中を通り、支管Psの先端側は地上Gから露出させるとともに、先端に給水口4を設ける。例示の場合、支管Psの一部が地上Gから鉛直方向に起立した鉛直部Psvを備えるとともに、この鉛直部Psvの上端から水平方向に延出した水平部Pshを備える。したがって、本管Pmの分岐位置から水平部Pshまでの支管Ps部分は硬質のパイプ管により構成する。さらに、水平部Pshの先端には、フレキシブル管Psfの上端を接続し、このフレキシブル管Psfを、下方へ吊下げるとともに、このフレキシブル管Psfの先端に上述した給水口4を設ける。
【0024】
また、鉛直部Psvの中間部位には、本発明の要部を構成する支管開閉弁5を直列に接続する。この支管開閉弁5の一例を図3に示す。この支管開閉弁5は、地上Gの上方における所定の高さに配する。これにより、各農業従事者は、容易に手で操作することができる。さらに、支管開閉弁5に対して上流側に位置する地中に埋設した支管Ps部分の中途位置には水抜栓7を直列接続する。この水抜栓7の一例を図8に示す。なお、図1中、Bは地面に設けた鉛直方向の水抜栓収容孔であり、この水抜栓収容孔Bの内部に水抜栓7を設置する。
【0025】
このように、本管Pmにおける各位置X1,X2…Xnから分岐した各支管Ps…,各支管Ps…に接続した水抜栓7…及び支管開閉弁5…は、それぞれ個別に水Wを使用できる複数の支管給水部Ms…を構成する。なお、各支管Ps…の中途位置に接続する水抜栓7…は、本発明の農業用給水システム1との関係では、必須の構成要素となるものではないが、各支管Ps…毎に水抜栓7…を接続すれば、各支管Ps…に対して個別に水抜きを行うこともできるため、例えば、各農業従事者の判断により、任意に水抜きを行えるなど、使い勝手及び利便性に優れる。
【0026】
次に、各構成パーツである支管開閉弁5,排泥弁3及び水抜栓7の具体的な構成について説明する。
【0027】
図3は、本発明の要部を構成する支管開閉弁5を示す。この支管開閉弁5は、下端に第一接続口12dを有し、かつ上端に第二接続口12uを有する弁基部11を備えるとともに、弁基部11の内部における第一接続口12dと第二接続口12u間は通水路11rとなる。
【0028】
弁基部11における内部の中間位置には、傾斜した仕切壁13を一体に設け、この仕切壁13に弁座部14を形成する。さらに、この仕切壁13に対向する斜め上方に位置する弁基部11の側壁には、傾斜した弁体支持部11pを設け、この弁体支持部11pにより弁体ユニット15を支持する。弁体ユニット15は、弁体支持部11pに設けたネジ孔部16nに螺合するネジ部16sを外周面に形成したシャフト部17と、このシャフト部17の内部先端に取付けた弁体部5vと、シャフト部17の外端部に取付けた操作ハンドル部18を一体に備える。操作ハンドル部18はマニュアルで回動操作できる操作部5hとなる。
【0029】
この場合、弁基部11における第一接続口12dには、弁体部5vに対して上流側(図3は下側)に位置する仮想線で示す支管Psiを接続するとともに、第二接続口12uには、下流側に位置する仮想線で示す支管Psoを接続する。
【0030】
また、弁体部5vは、先端側が細くなる円錐状に形成し、この弁体部5vの中間位置における外周面には、ゴム素材により一体形成したリング状の弁圧接部19を装着する。これにより、操作ハンドル部18を回動操作し、弁体ユニット15を前進させれば、弁体部5vが弁座部14に進入し、弁圧接部19が弁座部14に圧接する。この圧接した位置が図3及び図4に示す弁体部5vの閉位置Zcとなる。
【0031】
他方、操作ハンドル部18を回動操作し、弁体ユニット15を後退させれば、弁体部5vは弁座部14から離間し、弁座部14は開放される。この離間した位置が図5に示す弁体部5vの開位置Zoとなる。
【0032】
さらに、弁体部5vの内部には、この弁体部5vに対して上流側の支管Psiにおける所定の水圧Fw以上で閉位置Zcの弁体部5vを図3に示す閉側Zpcに切換え、かつ所定の水圧Fw未満で閉位置Zcの弁体部5vを図6に示す開側Zpoに切換えるサブバルブ機構6を設ける。例示するサブバルブ機構6は、弁体部5vの先端に弁箱を構成する収容凹部21を形成し、この収容凹部21の内部に、例えば、金属素材により形成した球状のボール弁体9を収容するとともに、収容凹部21の先端にボール弁体9の落下を阻止するカバー22を付設し、かつ収容凹部21の上側に位置する底面部に、ゴム素材により形成した弁座部8を付設して構成する。なお、カバー22には複数の通水孔22s…形成する。そして、弁座部8の中心位置から弁体部5vの所定の中間位置Xmまで、収容凹部21の内部と当該中間位置Xmを連通する第一通水路23を設けるとともに、中間位置Xmと弁体部5vの上寄りの外周面間、即ち、弁座部14に対して下流側に面する外周面間には、複数の第二通水路24…を設ける。
【0033】
これにより、上流側の支管Psiの水圧が上昇することにより所定の水圧Fw以上になれば水圧によりボール弁体9が上昇し、図3に示すように、上方に配した弁座部8に当接して当該弁座部8を閉塞するとともに、水圧Fw未満のときは、ボール弁体9が自重により落下して弁座部8から離間する。
【0034】
このように、サブバルブ機構6を構成する際に、所定の水圧Fw以上により上昇して上方に配した弁座部8を閉じ、かつ所定の水圧Fw未満により離間して弁座部8を開くボール弁体9を設けて構成すれば、所定の水圧Fwに対応してサブバルブ機構6の開閉をスムーズに行うことができるため、確実な水抜きを行う観点から最適な形態として実施することができる。
【0035】
図7は、排泥弁3の一例を示す。例示する排泥弁3は、左端に第一接続口32fを有し、かつ右端に第二接続口32sを有する弁基部31を備え、第一接続口32fと第二接続口32s間は通水路31rとなる。また、弁基部31の内部における中間位置には、弁体ユニット33を回動可能に配設する。この弁体ユニット33は、通水路31rに配した円盤状の弁体部34と、この弁体部34の上端に結合したシャフト部35と、このシャフト部35の上端に取付けた操作ハンドル部36を一体に備える。
【0036】
これにより、操作ハンドル部36を回動操作し、通水路31rを遮断する位置(角度)に弁体部34を回動変位させれば、排泥弁3を図7に示す閉ポジションに切換えることができる。他方、閉ポジションから操作ハンドル部36を90〔゜〕回動操作し、弁体部34を、通水路31rが開放される図7に仮想線の位置(角度)まで回動変位させれば、排泥弁3を開ポジションに切換えることができる。
【0037】
図8は、水抜栓7の一例を示す。例示する水抜栓7は、左端に第一接続口42fを有し、かつ右端に第二接続口42sを有する栓基部41を備え、栓基部41の内部における第一接続口42fと第二接続口42s間は通水路41rとなる。そして、栓基部41の内部における中間位置には、水平面に弁座部42を形成した仕切壁43を設ける。この仕切壁43により、通水路41rは上流側水路41rfと下流側水路41rsに仕切られる。
【0038】
また、栓基部41の中間位置における上面には開口部を設け、この開口部に水抜ブロック44を固定する。そして、この水抜ブロック44の周囲は、上方に起設した所定高さの外筒部45の下端部により覆うとともに、この外筒部45の上端はリング状のカバー45cにより閉塞する。外筒部45の内側には、内筒部46を同軸上に配設し、内筒部46の下端を水抜ブロック44に結合するとともに、内筒部46の上端は、カバー45cに結合する。
【0039】
さらに、内筒部46の中心位置には、軸方向に軸心を有する弁体ユニット47を配設する。弁体ユニット47は、内筒部46の内側に配したシャフト部48と、このシャフト部48の上端に取付けた操作ハンドル部49と、シャフト部48の下端に取付けた弁体部50を備える。この場合、シャフト部48は、水抜ブロック44の中心に設けた貫通孔を通るため、この貫通孔の内周面にネジ孔部51nを形成するとともに、シャフト部48の外周面にはこのネジ孔部51nに螺合するネジ部51sを形成する。
【0040】
弁体部50は、シャフト部48に固定した水抜弁体盤53と、この水抜弁体盤53の下方に配した止水弁体盤52を備え、この止水弁体盤52と水抜弁体盤53は、不図示のスプリング(コイルスプリング)を介して連結する。この場合、止水弁体盤52の下面にはゴム素材により形成した圧接面を設けて前述した弁座部42に対面させるとともに、水抜弁体盤53の上面には、ゴム素材により形成した圧接面を設けて水抜ブロック44の水抜口44eに対面させる。
【0041】
これにより、通水時には、操作ハンドル部49を回動操作し、シャフト部48を上方へ変位させれば、弁体部50が上昇する。この結果、水抜弁体盤53は上方へ変位し、水抜ブロック44に圧接することにより水抜口44eを閉塞するとともに、スプリングを介して止水弁体盤52も実線で示す上方位置へ変位し、弁座部42から離間することにより、水抜栓7は通水状態となる。
【0042】
これに対して、止水時/水抜時には、操作ハンドル部49を回動操作し、シャフト部48を下方へ変位させれば、弁体部50も下降する。この結果、止水弁体盤52は仮想線で示す下方位置へ変位し、弁座部42に圧接することにより、水抜栓7は止水状態になる。そして、この止水状態から、さらに操作ハンドル部49を回動操作すれば、スプリングの弾性に抗して第二弁体盤53を下方へ変位させるため、第二弁体盤53は水抜ブロック44から離間し、水抜口44eが開放されることにより、この水抜口44eを通して外部への水抜きが行われる水抜状態となる。
【0043】
次に、本実施形態に係る農業用給水システム1の全体の使用方法及び作用について、図1図3図8の各図を参照しつつ図2のフローチャートに従って説明する。
【0044】
図1に示す農業用給水システム1は、本管給水部Mmが、所定の管理者(例えば、施設管理者)により管理され、各支管給水部Ms…が、個々の使用者(例えば、個々の農業従事者)により管理される。
【0045】
今、給水システム1は、非使用モードにあるものとする。非使用モードでは、全ての支管開閉弁5…が閉側に切換わり、全ての水抜栓7…が通水状態に切換わり、排泥弁3が閉ポジションにあり、給水ポンプSpはオフ状態にある(ステップS1)。
【0046】
一方、この非使用モードにおいて、使用モードに切換える場合を想定する(ステップS2)。この場合、管理者は、まず、給水ポンプSpをオンにする(ステップS3)。なお、給水ポンプSpが存在しない場合には、元栓となる開閉コック等を開操作すればよい。これにより、給水源Sの水Wは、給水ポンプSpにより送水され、本管Pmに流入するとともに、支管開閉弁5…に至る上流側の支管Psi…内に流入し、本管Pm内及び上流側の支管Psi…内の水圧が上昇する(ステップS4)。
【0047】
この際、水圧が所定の水圧Fw未満の低水圧(負圧を含む)の状態では、サブバルブ機構6は、開側Zpo(図6の位置)、即ち、ボール弁体9が自重で落下し、弁座部8から離間した下方の開側Zpoの位置にある。これに対し、水Wが流入することにより、水圧が上昇し、所定の水圧Fw以上になれば、図4に示すように、上流側からの水圧によりボール弁体9が上昇変位し、弁座部8に圧接することにより、サブバルブ機構6は閉側Zpcに切換えられる(ステップS5)。この結果、図4に示すように、流入した水Wは弁体部5vに対して上流側で停止し、止水状態となる。なお、図4中、矢印D1…は、水Wの流通状態を示している。
【0048】
そして、この止水状態において、個々の使用者(農業従事者)は、所定の支管給水部Msを利用して水Wの給水を行うことができる(ステップS6)。例えば、スピードスプレーヤを使用中の農業従事者は、スピードスプレーヤを、所定の支管給水部Msまで移動させ、支管Ps(フレキシブル管Psf)の先端に設けた給水口4を、スピードスプレーヤの薬液タンクに挿入し、対応する支管開閉弁5を給水側に切換える。
【0049】
即ち、支管開閉弁5の操作ハンドル部18を給水側へ回動操作すれば、弁体部5vは、図5に示すように、弁座部8から離間し、支管開閉弁5における弁体部5vは、図5に示す開位置Zoに切換えられる(ステップS7)。これにより、支管開閉弁5の通水路11rが開放され、上流側の水Wは、図5中、矢印D2…の方向に流通し、水Wは、給水口4から放出され、目的の補給を行うことができる(ステップS8)。
【0050】
目的の給水(補給)が終了したなら、支管開閉弁5を止水側へ切換える(ステップS9,S10)。この場合、操作ハンドル部18を止水側へ回動操作すれば、弁体部5vが弁座部14に圧接し、弁座部14が閉塞、即ち、弁体部5vは閉位置Zcに変位するとともに、図4の場合と同様に、支管開閉弁5に対して上流側の水圧が水圧Fwに達するため、サブバルブ機構6も図4に示す閉側Zpcに切換えられる。
【0051】
次に、寒冷期について説明する。寒冷期には凍結を防止するため、水抜モードに切換えることができる(ステップS11)。この種の給水システムの場合、従来は、各支管給水部Ms…に、それぞれ水抜栓7…を接続していたため、各農業従事者は、各人の判断により水抜栓7…を水抜状態に切換えていた。しかし、この方法は、管理が個々の農業従事者に任されていたため、寒冷時には水抜栓7…による水抜きを忘れることも少なくなく、この結果、凍結により支管Psが損傷するなどの弊害を招く問題があった。
【0052】
そこで、本発明に係る給水システム1では、管理者が排泥弁3を開ポジションへ操作することにより、本管Pm及び複数の支管Ps…に残留する残留水を一括で排泥弁3から排出できるようにした。
【0053】
まず、管理者が、水抜きを行う必要があると判断した場合、給水ポンプSpをオフにして給水を停止する(ステップS12)。なお、給水ポンプSpが存在しない場合には、元栓となる開閉コック等を閉操作すればよい。これにより、給水ポンプSpによる水Wの供給は停止するため、この後、排泥弁3を閉ポジションから開ポジションに切換える(ステップS13)。
【0054】
即ち、図7に示す排泥弁3の場合、操作ハンドル部36を回動操作し、実線で示す弁体部34を仮想線で示す位置まで90〔゜〕回動変位させる。これにより、通水路31rが開放され、排泥弁3が開ポジションに切換えられる。弁体部34が開ポジションに切換えられることにより、図1に示す本管Pmの残留水、更には全ての支管Ps…内の残留水が排泥弁3から排出される水抜き処理が行われる(ステップS14)。
【0055】
水抜き処理により、支管開閉弁5…に対する上流側の水圧は低下する(ステップS15)。この結果、上流側の水圧は、少なくとも所定の水圧Fw未満、更には負圧の状態になるため、図6に示すように、弁体部5vが閉位置Zcの位置にあっても、サブバルブ機構6のボール弁体9は自重により落下することにより弁座部8から離間し、サブバルブ機構6は、開側Zpoに切換えられる(ステップS16)。
【0056】
これにより、各支管開閉弁5…の上流側及び下流側の各支管Ps…内における全ての残留水が本管Pm及び排泥弁3を通して外部に排出される(ステップS17)。図6に示す矢印D3…が、残留水の排出経路を示す。そして、全ての残留水が排出されたなら排泥弁3を閉ポジションに切換える(ステップS18,S19)。この後、さらに継続する場合には、同様の処理を行うことができる(ステップS20,S1,S2…)。
【0057】
なお、本実施形態に係る給水システム1では、排泥弁3の操作のみで全体の水抜きを一括して行うことができるが、各支管Ps…の中途位置には水抜栓7…がそれぞれ接続されているため、各支管Psに対して個別に水抜きを行うこともできる。このため、例えば、管理者が水抜きの必要性がないと判断した場合であっても、各支管Ps…の設置場所に応じて、各農業従事者が個別に判断し、水抜きが必要と判断した場合には、任意に水抜きを行うことも可能である。
【0058】
よって、このような本実施形態に係る農業用給水システム1及びその水抜方法によれば、基本的な構成(手法)として、支管開閉弁5…を、操作部5h…の操作により弁体部5v…が変位して支管Ps…を開閉する開閉機能弁として構成するとともに、弁体部5v…の内部に、この弁体部5v…に対して上流側の支管Psiにおける所定の水圧Fw以上で閉位置Zcの弁体部5v…を閉側Zpcに切換え、かつ所定の水圧Fw未満で閉位置Zcの弁体部5v…を開側Zpoに切換えるサブバルブ機構6を設け、水抜き時に、排泥弁3の開ポジションへの切換により、本管Pm及び複数の支管Ps…の残留水を排泥弁3から排出可能にしたため、支管開閉弁5…を改良するのみで低コストに実施できるとともに、経済性や省エネルギー性に優れた給水システム1として提供することができる。しかも、排泥弁3の操作のみで、本管Pm及び複数の支管Ps…における全ての残留水を、確実に排出できるとともに、電気設備が無い農場等であっても自動かつ容易に実施することができる。
【0059】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0060】
例えば、サブバルブ機構6を構成するに際し、所定の水圧Fw以上により上昇して上方に配した弁座部8を閉じ、かつ所定の水圧Fw未満により離間して弁座部8を開くボール弁体9を設けて構成した例を示したが、同様の機能を有する他の構成により置換することが可能である。また、支管Ps…における支管開閉弁5…に対する上流側の中途位置に、直列接続した水抜栓7…を設けた場合を示したが、本発明との関係では必須の構成要素となるものではない。さらに、給水源Sに、本管Pmに対して水Wを送出する給水ポンプSpを設けた場合を示したが、給水源Sが、本管Pm等に対し、相対的に高い位置(場所)に存在し、十分な水圧を確保できる場合には必ずしも給水ポンプSpを設けることを要しない。一方、排泥弁3,支管開閉弁5…,水栓柱7…の基本構成は、例示の構成に限定されるものではなく、管路(通水路)を開閉し、かつ同様の機能を発揮するものであれば、他の構造(方式)により置換可能である。また、排泥弁3,支管開閉弁5…,水栓柱7…は、マニュアル(手動)タイプを例示したが、電動式又は電磁駆動式など、他の方式(原理)により操作するタイプであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る農業用給水システム及びその水抜方法は、給水源から給水される本管給水部とこの本管給水部から分岐する複数の支管給水部を備える大規模農業等の給水設備として利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:農業用給水システム,3:排泥弁,4…:給水口,5…:支管開閉弁,5h…:操作部,5v…:弁体部,6:サブバルブ機構,7:水抜栓,8:弁座部,9:ボール弁体,S:給水源,Sp:給水ポンプ,Pm:本管,Ps…:支管,Mm:本管給水部,Ms…:支管給水部,X1,X2…Xn:本管における複数の異なる位置,Zc:閉位置,Zpc:閉側,Zpo:開側,G:地上,Psi:弁体部に対して上流側の支管,Fw:所定の水圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8