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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052247
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】缶蓋
(51)【国際特許分類】
   B65D 17/34 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B65D17/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158831
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯村 遼太郎
【テーマコード(参考)】
3E093
【Fターム(参考)】
3E093AA04
3E093BB01
3E093DD04
(57)【要約】
【課題】初期開口時に指先をタブの指掛かり部の中央に誘導しやすい形状とし、開口操作の一層の容易化を図った全面開口用の缶蓋を提供する。
【解決手段】缶蓋本体には、缶蓋を積み重ねた際に下位の缶蓋のタブの指掛かり部が収容可能な外面側が凸で内面側が凹形状の上凸パネル部が設けられ、上凸パネル部は前記缶蓋中心に対して少なくともタブと反対側の領域に設けられている易開封性の缶蓋において、前記上凸パネル部の周縁に形成される外周壁のうち前記指掛かり部と対向する第1外周壁部と前記指掛かり部との間の領域に、初期破断操作の際に指先が入るエンボス凹部が設けられ、前記指掛かり部が、平面視にてリベット部側に凹形状で、中央部が両端よりも高い形状となっていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全面開口用のスコアが設けられた缶蓋本体と、リベット部を介して缶蓋本体に固定され前記スコアを破断するためのタブと、を備え、
前記タブは、前記スコア近傍に位置するタブ先端部と、缶蓋中心側に配置される指掛かり部とを備え、前記指掛かり部の缶蓋本体からの高さがタブ本体の前記缶蓋本体からの高さよりも高く設定され、
前記缶蓋本体には、缶蓋を積み重ねた際に下位の缶蓋のタブの指掛かり部が収容可能な外面側が凸で内面側が凹形状の上凸パネル部が設けられ、
前記上凸パネル部は前記缶蓋中心に対して少なくともタブと反対側の領域に設けられている易開封性の缶蓋において、
前記上凸パネル部の周縁に形成される外周壁のうち前記指掛かり部と対向する第1外周壁部と前記指掛かり部との間の領域に、初期破断操作の際に指先が入るエンボス凹部が設けられ、
前記指掛かり部が、平面視にてリベット部側に凹形状で、中央部が両端よりも高い形状となっていることを特徴とする缶蓋。
【請求項2】
前記エンボス凹部の内周壁の内、指掛かり部側の第2斜面は前記リベット部と缶蓋中心を結ぶ第1中心線に対して直交方向に直線状に伸びており、前記第2斜面の上端縁と前記指掛かり部との間に、所定の隙間が形成されている請求項1に記載の缶蓋。
【請求項3】
前記上凸パネル部の外周壁は、前記缶蓋本体の周縁に設けられるチャックウォールに沿ってチャックウォールと所定間隔を隔てて延びる第2外周壁部を有し、前記第2外周壁部の前記缶蓋本体からの立ち上がり角度が、前記第1外周壁部の前記缶蓋本体からの立ち上がり角度よりも小さくなっている請求項1または2に記載の缶蓋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性の全面開口用缶蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の易開封性の全面開口用缶蓋としては、たとえば、特許文献1に記載のようなものが知られている。すなわち、全面開口用スコアが刻設された缶蓋本体と、リベット部を介して缶蓋本体に固定され前記全面開口用スコアを破断するためのタブと、を備え、タブの指掛かり部を上向きに変形させるチップアップが施され、缶蓋本体の外面に対してタブ本体よりも高い位置に設定されていた。一方、缶蓋本体には、缶蓋を積み重ねた際に、下位の缶蓋のタブの指掛かり部が収容可能な上凸パネル部(エンボス加工部)が設けられ、スタック性を向上させている。
また、缶蓋本体の指掛かり部の対向面には、凹部が設けられ、指掛かり部と缶蓋本体の間の隙間をさらに大きくして指掛かり性をよくしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-018963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来技術の場合には、指掛かり部の下方に凹部を設けて指掛かり性をよくしているものの、凹部の範囲が広く、指掛かり部に指先を掛ける場合、指掛かり部の中央部ではなく、どこからでも指を掛けられる構成となっていた。そのため、指を掛ける位置によって力を加える方向が変わり、タブの先端に力が有効に作用せず、開封操作に失敗するおそれがあった。
【0005】
これに対して、凹部の領域を、上凸パネル部の周縁に形成される外周壁のうち指掛かり部と対向する外周壁部と指掛かり部との間の領域に限定することも提案されている。
このように凹部を局部的に形成すれば、指先を指掛かり部に誘導する効果が期待できるものの、指掛かり部が、平面視にて凹部に向かって凸状に形成されているので、指掛かり部の中央に指がかかったとしても、依然として指の当接位置は中央に定まらず、左右にずれてしまう。特に、指掛かり部の形状が平面形状で凸形状となっているので、指先との接触面積が小さく、指先の痛みを伴い、当接位置がずれやすい。
【0006】
また、指掛かり部にチップアップを施した場合、缶のボトムリム部や巻締部等が潜り込み、蓋が開いてしまう不意開口性リスクがあり、通常はタブ横にガードディンプルを設ける対策が取られる。しかし、特許文献1では、タブの横近くまで上凸パネル部が形成されているので、ガードディンプルを形成できない。
【0007】
本発明の目的は、初期開口時に指先をタブの指掛かり部の中央に誘導しやすい形状とし、開口操作の一層の容易化を図った全面開口用の缶蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、
全面開口用のスコアが設けられた缶蓋本体と、リベット部を介して缶蓋本体に固定され前記スコアを破断するためのタブと、を備え、
前記タブは、前記スコア近傍に位置するタブ先端部と、缶蓋中心側に配置される指掛か
り部とを備え、前記指掛かり部の缶蓋本体からの高さがタブ本体の前記缶蓋本体からの高さよりも高く設定され、
前記缶蓋本体には、缶蓋を積み重ねた際に下位の缶蓋のタブの指掛かり部が収容可能な外面側が凸で内面側が凹形状の上凸パネル部が設けられ、
前記上凸パネル部は前記缶蓋中心に対して少なくともタブと反対側の領域に設けられている易開封性の缶蓋において、
前記上凸パネル部の周縁に形成される外周壁のうち前記指掛かり部と対向する第1外周壁部と前記指掛かり部との間の領域に、初期破断操作の際に指先が入る凹部が設けられ、
前記指掛かり部が、平面視にてリベット部側に凹形状で、中央部が両端よりも高い形状となっていることを特徴とする。
このようにすれば、指先は上凸パネル部の第1外周壁部から凹部を介して指掛かり部のほぼ中央に誘導され、さらに誘導された指先は、凹形状の指掛かり部の形状によって指掛かり部の中央におさまる。そのままタブを引き起こせば、タブを缶蓋中心とリベット部を結ぶ中心線に沿って引き起こすことができ、タブ先端に力を効率的に加えることができる。
また、指掛かり部との指先の接触面積が広くなり、指先に作用する力も分散される。
さらに、指掛かり部が凹形状となっているので、缶のボトムリム部や巻締部等が潜り込みにくく、ガードディンプルを設けることなく、不意開口防止が可能となる。そのため、工具構成の単純化が可能となる。
【0009】
また、本発明は、次のように構成することができる。
1.前記エンボス凹部の内周壁の内、指掛かり部側の第2斜面は前記リベット部と缶蓋中心を結ぶ第1中心線に対して直交方向に直線状に伸びており、第2斜面の上端縁と前記指掛かり部との間に、所定の隙間が形成されている。
このようにすれば、隙間分だけ、凹部に入った状態の指先と指掛かり部との間にゆとりができ、一層、開口操作が容易となる。
【0010】
2.前記上凸パネル部の外周壁は、前記缶蓋本体の周縁に設けられるチャックウォール部に沿ってチャックウォールと所定間隔を隔てて延びる第2外周壁部を有し、前記第2外周壁部の前記缶蓋本体からの立ち上がり角度が、前記第1外周壁部の前記缶蓋本体からの立ち上がり角度よりも小さくなっている。
初期開口した後、タブを持ち替えてタブを引っ張り上げて、スコアが連続的にせん断(スコアティア)されていくが、本発明では、上面凸パネル部のタブ側の第1外周壁部の立ち上がり角度を比較的大きくして中央部の剛性を大きくしているので、スコアにせん断応力を集中させることができ、スムースにせん断を進行させることができる。一方、半周程度までせん断が進行した後は、第2外周壁部の立ち上がり角度を小さくしているので、周辺部が適度に変形し、スムースにせん断を進行させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、初期開口時に指先をタブの指掛かり部の中央に誘導しやすくなり、開口操作の一層の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明の実施の形態に係る缶蓋を示すもので、図1(A)は平面図、図1(B)は図1(A)の第1中心線N1に沿う断面図である。
図2図2図1の缶蓋のタブ周辺を拡大して示すもので、図2(A)は拡大平面図、図2(B)は図2(A)の第1中心線N1に沿う断面図、図2(C)は図2(B)をC方向から見た図である。
図3図3(A)は図1の缶蓋開口用のタブの指掛け状態の説明図、図3(B)は(A)の初期開口状態の説明図である。
図4図4図1の缶蓋を重ねた場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る缶蓋の全体構成について説明する。図1(A)は、缶蓋の全体構成を示す平面図、図1(B)は(A)の第1中心線に沿う中央縦断面図である。
【0014】
缶蓋1は、全面開口用のスコア6が設けられた缶蓋本体2と、リベット部7を介して缶蓋本体2に固定されスコア6を破断するためのタブ10と、を備えている。タブ10は、スコア6近傍に位置するタブ先端部12と、缶蓋中心側に配置される指掛かり部20とを備え、指掛かり部20の缶蓋本体2からの高さがタブ本体11の缶蓋本体2からの高さよりも高く設定されている。
【0015】
缶蓋本体2には、缶蓋1を積み重ねた際に下位の缶蓋1のタブ10の指掛かり部20が収容可能な外面側が凸で内面側が凹形状の上凸パネル部32が設けられている。上凸パネル部32は、缶蓋中心であるパネル中心О1に対して少なくともタブ10と反対側の領域に設けられている。
【0016】
上記上凸パネル部32の周縁に形成される外周壁34のうち指掛かり部20と対向する第1外周壁部35と指掛かり部20との間の領域に、初期破断操作の際に指先が入るエンボス凹部40が設けられ、指掛かり部20が、平面視にてリベット部7側に凹形状で、中央部が両端よりも高い形状となっている。
エンボス凹部40の内周面の内、指掛かり部20側の第1斜面41はリベット部7と缶蓋中心О1を結ぶ第1中心線N1に対して直交方向に直線状に伸びており、第1斜面の上端縁と指掛かり部20との間に、所定の隙間hが形成されている。
【0017】
また、上凸パネル部32の外周壁34は、缶蓋本体2の周縁に設けられるチャックウォール4に沿ってチャックウォール4と所定間隔を隔てて延びる第2外周壁部36を有し、第2外周壁部36の缶蓋本体2からの立ち上がり角度θ2が、第1外周壁部35の缶蓋本体2からの立ち上がり角度θ1よりも小さくなっている。
【0018】
以下に各部の構成について詳細に説明する。以下の説明で、図1(A)の平面図において、パネル中心O1とリベット部7の中心O7を通る線を第1中心線N1、パネル中心O1を通り第1中心線N1と直交する線を第2中心線N2とする。
【0019】
缶蓋本体2は、パネルを構成する円形のセンターパネル3、センターパネル3の周縁から立ち上がるチャックウォール4、及びチャックウォール4に連続して形成されたシーミングパネル5を有している。
センターパネル3は円板形状で、スコア6は、センターパネル3の周縁に全周に亘って連続的に設けられ、開封時には、スコア6に囲まれた円形の開口予定部3aがタブ10と共に除去される。リベット部7の近傍には、初期開口時にパネルの折れ曲がりを容易にする補助スコア8が設けられている。
【0020】
上凸パネル部32は、主として第2中心線N2に対してタブ10と反対側の領域に形成され、一部がタブ10と反対側の領域に延びている。上凸パネル部32は上面側が凸で下面側が凹のエンボス加工部であり、上面が平坦な凸部パネル面33で、周縁部の外周壁34が、センターパネル3の主パネル面31に対して傾斜して立ち上がり、主パネル面31との間に段差部を形成している。
上凸パネル部32の外周壁34は、上記した指掛かり部20と対向する第1外周壁部3
5と、缶蓋本体2の周縁に設けられるチャックウォール4に沿ってチャックウォール4と所定間隔を隔てて延びる半円状の第2外周壁部36と、第1外周壁部35の両端部と第2外周壁部36の両端を結ぶ第3外周壁部37と、を備えている。
【0021】
第1外周壁部35、第2中心線N2に対してタブ10と反対側の領域に円弧状に突出し、タブに向かっては円弧状に窪んだ形状となっている。第2外周壁36は、第2中心線N2に対してタブと反対側の領域に形成されている。第3外周壁部37,37は、第2中心線N2を越えて円弧状にタブ側の領域に突出しており、第1中心線N1に対して左右対称形状となっている。
【0022】
第2外周壁部36の主パネル面31からの立ち上がり角度θ2が、第1外周壁部35の缶蓋本体2からの立ち上がり角度θ1よりも小さくなっている。第3外周壁部37、37は、第1外周壁部35から第2外周壁部36に向けて徐々に立ち上がり角度が移行している。この第1外周壁部35の立ち上がり角度θ1は17°~27°程度、好ましくは22.2°、第2外周壁部36立ち上がり角度は8°~18°程度、好ましくは13.7°に設定される。図示例では、平面形状で見た場合の第1外周壁部35の幅と、第2外周壁部36の幅を比較すると、第2外周壁部36の幅が、第1外周壁部35の幅の2倍程度に設定されている。
また、第3外周壁部37について、その曲率半径Rが大きすぎると、直線に近くなってスコアティアの初期段階で折れ曲がってしまい、勢いで缶本体をつかんでいる手が揺れて中身がこぼれるおそれがある。また、曲率半径が小さいと、指掛かり部20が引っ掛かるおそれがある。鋭意検討した結果、この曲率半径Rは、第3外周壁部37の主パネル面側の底縁にて、R5~14.5が好ましい。パネル径としては、最小215径から最大307径の缶蓋に好適である。
【0023】
このように構成することによって、上凸パネル部33の剛性が変化し、第1外周壁部35が形成される中央部の剛性よりも、第2外周壁部35が形成される周辺部の剛性が小さくなる。また、第2外周壁部35の立ち上がり角度を小さくすることにより、上凸パネル部32を加工する際に、材料の肉が上凸パネル部32側に移動する量が少なくなり、チャックウォール4の径の収縮量を小さくすることができる。
【0024】
タブ10は、第1中心線N1に対して線対称形状の卵形の輪郭を有する板状部材で、タブ本体11が缶蓋本体2のセンターパネル3の主パネル面31に固定され、タブ本体11の小径側の端部であるタブ先端部12がスコア6近傍に配置されている。また、リベット部7に対してタブ先端部12と反対側の大径側の端部である後端側に初期開口時に指を掛ける第1指掛かり部20が設けられている。
【0025】
リベット部7はタブ先端部12に近く、センターパネル3の主パネル面31に位置し、第1指掛かり部20の位置はセンターパネル3のパネル中心O1近くに配置され、第1外周壁部35に対向している。タブ本体11には、リベット部7と指掛かり部20の間に指が挿入可能な指掛け穴14が設けられている。
【0026】
次に、図2を参照し、第1指掛かり部20の形状について詳細に説明する。
図2(A)は、図1のタブの部分拡大平面図、図2(B)は図2(A)の第1中心線に沿った断面図、図2(C)は、図2(B)をC方向から見た側面図である。
【0027】
すなわち、図2(A)に示すように、第1指掛かり部20を、センターパネル3に対してタブ本体11側から直交方向に見た平面視において、リベット部7に向かって凹状に湾曲する湾曲形状となっている。
【0028】
第1指掛かり部20の断面形状は、図2(B)に示すように、天面側から裏面にかけて円弧状にUターンする円弧断面であり、第1指掛かり部20の平面視における輪郭線Lは、円弧断面がリベット部7と反対側に最も突出している突出端の形状である。第1指掛かり部20は、タブ10の後端の輪郭線Lを含む断面円弧状の領域を中心に、初期開口時にタブ10を引き起こす際に指が当接する領域であり、第2パネル部32と対向するパネル対向面20c側も含まれる。
【0029】
第1中心線N1と直交方向の両端部20b,20bは、第1中心線N1と直交する直交線V1と接しており、中央部20aは直交線V1から、所定の窪み寸法hだけリベット部7側に入り込んでいる。
【0030】
次に、図2(C)を参照し、第1指掛かり部20の側面形状について説明する。
この側面図は、第1指掛かり部20を、センターパネル3の主パネル面31及び第2パネル部32と平行方向であって、第1指掛かり部20側からリベット部7の方向を見て、第1指掛かり部20の中央部20aがリベット部7の中心O7と重なる方向、すなわち、第1中心線N1に沿った方向から見た側面視の投影図である。この側面図において、第1指掛かり部20は、センターパネル3に対して、中央部20aが両端部20b,20b
よりも高くなるように凸状に湾曲している。
【0031】
この第1指掛かり部20の凸形状を、上記平面視における輪郭線Lの形状として説明すると、この輪郭線Lは、側面視において、二点鎖線で示すように、第1指掛かり部20のほぼ中央に現れており、この輪郭線Lの形状が、センターパネル3に対して凸状に湾曲している。この湾曲形状は、センターパネル3に対する傾斜角度(輪郭線の接線とセンターパネルとのなす角)が、両端部20b,20bにおいて最も大きく、中央部20aに向けて徐々に小さくなり、中央部20aにおいては、ほぼ水平となるように湾曲するアーチ形状となっている。
【0032】
次に、第1指掛かり部20のパネル対向面20cについて説明する。
図2(B)に示すように、第1指掛かり部20のセンターパネル3の第2パネル部32と対向する対向面20cは、第1指掛かり部20からリベット部7に向けて、第2パネル部32との隙間が徐々に狭くなる方向に傾斜する傾斜面となっている。
【0033】
エンボス凹部40は、D字形状の底面43と、底面を取り囲む内周壁44とを有し、内周壁は底面から徐々に拡径する方向に傾斜し、主パネル面側の周縁は、底面43よりも一回り大きいD字形状となっている。
面43のタブ側の側縁は第1中心線N1に直交する直線状で、タブ10と反対側の側縁は円弧状である。内周壁44は、タブ10側の第1斜面41と、タブ10と反対側の第2斜面42を有し、第1斜面42の主パネル面側の上端縁は第1中心線N1に直交する直線状で、第2斜面42の上端縁は円弧状となっている。
第2斜面42の上端縁は、上凸パネル部32の第1外周壁部35の底辺と近接しており、エンボス凹部40の第2斜面42と上凸パネル部32の第1外周壁部35は、ほぼ連続している。第2斜面42の傾斜角は、上凸パネル部32の第1外周壁部35の立ち上がり角度とほぼ同じである。
【0034】
次に、本発明の作用について説明する。
缶蓋を開口する際には、図3(A)に示すように、タブ10の第1指掛かり部20に指先を当てながら、タブ10と第2パネル部32との隙間に指先を入れ、リベット部7を支点として上方に引き起こすことにより、てこの作用によって、タブ先端部12でスコア6を部分的に初期開口(スコアブレイク)する。
【0035】
開封操作の初期においては、指先は上凸パネル部32の第1外周壁部35からエンボス凹部40を介して指掛かり部20のほぼ中央に誘導され、さらに誘導された指先は、凹形状の指掛かり部20の形状によって指掛かり部20の中央におさまる。そのままタブ10を引き起こせば、タブ10を第1中心線N1に沿って引き起こすことができ、タブ先端部12に力を効率的に加えることができる。
【0036】
また、第1指掛かり部20から指先に大きな反力が作用するが、第1指掛かり部20は、リベット部7に向かって凹状に湾曲し指先形状に沿って接触するので、の接触面積が増大し、指に作用する反力が分散されて、指先への圧力、圧迫感が低減し、指先のフィット感が良くなり、初期開口操作が楽にできる。
【0037】
特に、第1指掛かり部20は、中央部20aが第2パネル部32に対して凸状に湾曲し、第1指掛かり部20がアーチ形状となっており、第2パネル部32との対向面20cがリベット部7に向かって徐々に隙間が小さくなるような傾斜面となっているので、第1指掛かり部20のパネル対向面20cに指の腹面を当てることができ、初期開口時のタブ10の引き起こしが、容易、確実、かつ、楽に行うことができる。
【0038】
また、エンボス凹部40の第1斜面41の上端縁と指掛かり部20との間に、所定の隙
間hが形成されているので、隙間分だけ、エンボス凹部40に入った状態の指先と指掛かり部20との間にゆとりができ、一層、開口操作が容易となる。すなわち、指先が上凸部32の第1外周壁部35と、エンボス凹部40に誘導されて指掛かり部20に掛かり、力を加えてタブ10を引き上げる操作となるが、爪先がエンボス凹部40の第1斜面41に当接し、指先の腹が指掛かり部20にあたる状態となる。隙間を設けると、その分、エンボス凹部40の第1斜面41と指掛かり部20間の距離が長くなり、爪先が当たった状態で指先の腹にゆとりができ、操作しやすくなる。
次に、タブ10を親指と人差し指で掴んで90度程度まで引き起こす(図3(B)参照)。初期開口した後は、特に図示しないが、タブ10の指掛け穴14に指をしっかりと挿入し、タブ10を上方に持ち上げることによって、スコア6を初期開口部Bから連続的にせん断し(スコアティア)、スコア6に囲まれた開口予定部を除去して全面開口する。
【0039】
本発明では、上面凸パネル部32のタブ側の第1外周壁部35の立ち上がり角度θ1を比較的大きくして中央部の剛性を大きくしているので、スコアにせん断応力を集中させることができ、スムースにせん断を進行させることができる。一方、半周程度までせん断が進行した後は、第2外周壁部36の立ち上がり角度θ2を小さくしているので、周辺部が適度に変形し、スムースにせん断を進行させることができる。すなわち、スコアティアの後半は、パネルが平面形状のままで一気に開くと、勢いあまって缶本体をつかんでいた手が揺れて中身がこぼれるおそれがある。傾斜角度を小さくして剛性を低下させることで、ある程度変形させ、勢いを緩和することができる。
【0040】
次に、缶蓋を重ねた場合について説明する。
缶蓋1を重ねた場合、位の缶蓋1のチャックウォール4内周に上位の缶蓋のチャックウォール4の外周が嵌合して芯出しされる。搬送時において缶蓋1,1同士が相対回転し、図4に示すように、下位の缶蓋1の外面に突出する指掛かり部20が上位の缶蓋1に設けられた上凸パネル部32の内面側に形成された凹部32aに収まる。指掛かり部20が凹部32aに収まった後は、缶蓋同士のがたつきは規制され、缶蓋列が安定した状態で搬送されるので、指掛かり部20による傷つきや傾きによる変形といった不具合が解消され、高速で生産することも可能となる。
【0041】
特に、この実施の形態では、指掛かり部20の中央部の後端が所定角度上向きに傾斜しているので、下位の缶蓋の指掛かり部20が、上位の缶蓋の裏面に点接触することになり
、上位の缶蓋1の裏面との接触抵抗が小さく、スムースにすべって上凸パネル部32の裏面の凹部に収納させることができる。
また、第1指掛かり部20は、缶蓋を上下に積み上げた際、あるいは、缶を上下に積み上げた場合に、上位の缶蓋あるいは上位の缶の缶底の縁が、第1指掛かり部20に当たっても、第2パネル部32cとの隙間が最も大きくなる中央部20aは、リベット部7に向かって遠い位置となるため、中央部20aに引っ掛かりにくく、不意開口を防止できる。
【0042】
なお、上記実施形態では、パネル面に対して側面視でアーチ形状に湾曲する構成としているが、アーチ形状に限らず、たとえば、台形状等、他の形状としてもよい。
さらに、チップアップ形状について、上記実施形態では、第1指掛かり部20のパネル対向面20cが、第2パネル面32との間隔がリベット部7に向けて徐々に狭くなる方向に傾斜する傾斜面となっているが、傾斜面となっていなくてもよい。
また、本発明の缶蓋が適用される容器は、陽圧缶、陰圧缶に限らず、種々の容器に適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 缶蓋
2 缶蓋本体
3 センターパネル、31 主パネル面、 3a 開口予定部
32 上凸パネル部
33 凸部パネル面
35 第1外周壁部
36 第2外周壁部
37 第3外周壁部
4 チャックウォール、5 シーミングパネル、6 スコア
7 リベット部
8 補助スコア
10 タブ
11 タブ本体、12 タブ先端部
14 指掛け穴開口部、
20 指掛かり部
20a 中央部、20b 端部、20c 対向面40 エンボス凹部
40 エンボス凹部
41 第1斜面
42 第2斜面
43 底面
44 内周壁
N1 第1中心線、N2 第2中心線
O1 パネル中心
O7 リベット部7の中心(缶蓋中心)
A 第1指掛かり部の両端部間の距離、V1 直交線(端部位置)V0 直交面
h 窪み寸法
L 輪郭線
図1
図2
図3
図4