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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052266
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】床走行式介護リフト
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/14 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A61G7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158861
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】520054622
【氏名又は名称】日本ケアリフトサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 恒治
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA08
4C040HH01
4C040JJ02
4C040JJ08
(57)【要約】
【課題】軽量で、コストも低廉で済み、駆動力がない場合であっても介護者が操作しやすく、旋回操作も容易な床走行式介護リフトを提供すること。
【解決手段】車体2と、車体2の幅方向両側に設けられた2輪の走行車輪3と、車体2に連結され被介護者を吊るためのアーム4と、駆動源6と、駆動源6によって駆動する駆動輪52とを備える床走行式介護リフトであって、駆動輪52は、車体2の幅方向において走行車輪3の間に位置する1輪である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体の幅方向両側に設けられた走行車輪と、
前記車体に連結され被介護者を吊るためのアームと、
駆動源と、
該駆動源によって駆動する駆動輪と、を備える床走行式介護リフトであって、
前記駆動輪は、前記車体の幅方向において前記走行車輪の間に位置する1輪であることを特徴とする床走行式介護リフト。
【請求項2】
前記車体に対して不動に設けられ、介護者が押し引きする操作ハンドルと、
前記操作ハンドルに作用する操作力を検知する検知部と、
前記検知部で検知された操作力に応じて前記駆動源を制御する制御部と、を備え、
前記検知部は、前記車体と前記操作ハンドルとの間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の床走行式介護リフト。
【請求項3】
前記制御部は、前記操作力が前記車体を前進又は後進方向に移動させると判断したときは、前記駆動源を制御して前記駆動輪を前進又は後進方向に駆動させることを特徴とする請求項2に記載の床走行式介護リフト。
【請求項4】
前記制御部は、前記操作力が前記車体を旋回方向に移動させると判断したときは、前記駆動源を制御して前記操作力が前記車体を前進又は後進方向に移動させると判断するときよりも低速で前記駆動輪を前進又は後進方向に駆動させることを特徴とする請求項3に記載の床走行式介護リフト。
【請求項5】
前記制御部は、前記操作力が前記車体を旋回方向に移動させると判断したときは、前記駆動源を制御して前記駆動輪を駆動させないことを特徴とする請求項3に記載の床走行式介護リフト。
【請求項6】
前記走行車輪は方向が変更可能な自在キャスターであることを特徴とする請求項1乃至5に記載のうちいずれか1項に記載の床走行式介護リフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介護者を吊り上げた状態で床面を走行することにより、被介護者の移動を補助する床走行式介護リフトに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や身体障害者は、障害の程度によって自由に移動しにくいことがあり、介助を必要とする場合も多い。
座った状態で場所を移動するだけであれば車椅子でも充分であるが、入浴等の際には、被介護者を吊り上げて移動させなければならない。
【0003】
近年、社会の高齢化が急激に進んでおり、被介護者を吊り上げて走行することにより、被介護者を移動させる走行式介護リフトに対する需要が高まっている。
【0004】
従来、この種の走行式介護リフトとして、幅方向両側に走行車輪が取り付けられた車体に備えた支柱に患者を吊り上げるためのアームを起伏自在に設けるとともに操作ハンドルを設けて構成され、操作ハンドルに作用する操作力を検出する検出部と、走行車輪を駆動する電動モータと、検出部が検出した操作力に応じて電動モータを制御する制御部とを備えた走行式介護リフトが特許文献1に開示されている。
【0005】
このような走行式介護リフトは、操作者の操作に応じて電動モータの駆動力で走行を補助するので、介護者の負担が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-327554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のような床走行式介護リフトは、車体の幅方向両側に電動モータで駆動される車輪がそれぞれ設けられているので、走行車輪を制御し駆動させるための機構が複雑になってコストが高くつくばかりか重量も増大する。
また、幅方向両側に電動モータで駆動される走行車輪が設けられているので、バッテリの充電量が低下するなどにより、走行車輪の抵抗が大きくなり操作に要する力がかえって増えてしまい、特に、旋回させる際には、両側の走行車輪の進行方向を変えるために相当な力が必要になる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、軽量で、コストも低廉で済み、駆動力がない場合であっても抵抗が低く、介護者が操作しやすく、旋回操作も容易な床走行式介護リフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に係る発明は、車体と、前記車体の幅方向両側に設けられた走行車輪と、前記車体に連結され被介護者を吊るためのアームと、駆動源と、該駆動源によって駆動する駆動輪と、を備える床走行式介護リフトであって、前記駆動輪は、前記車体の幅方向において前記走行車輪の間に位置する1輪であることを特徴とする床走行式介護リフトである。
【0010】
本願請求項2に係る発明は、前記車体に対して不動に設けられ、介護者が押し引きする操作ハンドルと、前記操作ハンドルに作用する操作力を検知する検知部と、前記検知部で検知された操作力に応じて前記駆動源を制御する制御部と、を備え、前記検知部は、前記車体と前記操作ハンドルとの間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の床走行式介護リフトである。
【0011】
本願請求項3に係る発明は、前記制御部は、前記操作力が前記車体を前進又は後進方向に移動させると判断したときは、前記駆動源を制御して前記駆動輪を前進又は後進方向に駆動させることを特徴とする請求項2に記載の床走行式介護リフトである。
【0012】
本願請求項4に係る発明は、前記制御部は、前記操作力が前記車体を旋回方向に移動させると判断したときは、前記駆動源を制御して前記操作力が前記車体を前進又は後進方向に移動させると判断するときよりも低速で前記駆動輪を前進又は後進方向に駆動させることを特徴とする請求項3に記載の床走行式介護リフトである。
【0013】
本願請求項5に係る発明は、前記制御部は、前記操作力が前記車体を旋回方向に移動させると判断したときは、前記駆動源を制御して前記駆動輪を駆動させないことを特徴とする請求項3に記載の床走行式介護リフトである。
【0014】
本願請求項6に係る発明は、前記走行車輪は方向が変更可能な自在キャスターであることを特徴とする請求項1乃至5に記載のうちいずれか1項に記載の床走行式介護リフトである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の床走行式介護リフトは、車体の幅方向両側に設けた走行車輪の間に一輪の駆動輪が設置されているので、カーブあるいは旋回操作を行っても、大きな力を必要とせずに楽にカーブあるいは旋回させることができる。特に、前後移動をせずその位置で旋回させるような場合には、一輪の駆動輪を中心に旋回させることができるので駆動輪の抵抗が少ない。
また、二輪の駆動輪を有するものに比べて、駆動源や駆動機構も少なくて済むため構造が簡単で軽量であり、コストも低廉となる。
【0016】
加えて、車体に対して不動に設けられ、介護者が押し引きする操作ハンドルと、操作ハンドルに作用する操作力を検知する検知部と、検知部で検知された操作力に応じて駆動源を制御する制御部と、を備え、検知部は、車体と前記操作ハンドルとの間に設けられているので、駆動によるアシスト機能を得るために介護者が操作ハンドルを特別に操作する必要がなく、人力で走行させる場合と同様の操作で走行アシスト機能を作動させることができる。
【0017】
加えて、制御部は、操作力が車体を前進又は後進方向に移動させると判断したときは、駆動源を制御して駆動輪を前進又は後進方向に駆動させることによって、介護者が前後進さえようとする方向と同じ方向にアシスト機能を得ることが可能となる。
【0018】
加えて、制御部は、操作力が車体を旋回方向に移動させると判断したとき、駆動源を制御して操作力が車体を前進又は後進方向に移動させると判断するときよりも低速で駆動輪を前進又は後進方向に駆動させると、一輪の駆動輪を駆動しカーブあるいは旋回させても大きな遠心力が発生しにくく、安全に曲がることができる。
【0019】
加えて、制御部は、操作力が車体を旋回方向に移動させると判断したとき、駆動源を制御して駆動輪を駆動させないようにすると、床走行式介護リフトをカーブあるいは旋回させる際に、走行アシスト機能を解除して介護者の手動のみの操作と同じ感覚で操作できる。
【0020】
加えて、走行車輪を方向が変更可能な自在キャスターとすれば、介護者が床走行式介護リフトを走行させようとする方向に合わせて、走行車輪が自由に方向を変えるので、簡単にカーブや旋回をさせることができる。特に、前後移動をせずその位置で一輪の駆動輪を中心に旋回させるような場合は効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態を示す床走行式介護リフトの斜視図である。
図2】本発明の実施形態を示す床走行式介護リフトの側面図である。
図3】本発明の実施形態を示す床走行式介護リフトの平面図である。
図4】本発明の実施形態を示す床走行式介護リフトの下部の要部平面図である。
図5】本発明の実施形態を示す床走行式介護リフトの下部の要部後面図である。
図6】本発明の実施形態に係る駆動部の側面図である。
図7】本発明の実施形態に係る駆動部の後面図である。
図8】本発明の実施形態に係る押圧機構の作用を説明する説明図である。
図9】本発明の実施形態に係る操作ハンドル及び検知部の平面図である。
図10】本発明の実施形態に係る操作ハンドル及び検知部の後面図である。
図11】本発明の実施形態に係る操作ハンドル及び検知部の側面図である。
図12】本発明の実施形態に係る走行アシスト機能のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照する等して説明する。なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0023】
図1は実施形態を示す床走行式介護リフトの斜視図、図2は実施形態を示す床走行式介護リフトの側面図、図3は実施形態を示す床走行式介護リフトの平面図、図4は実施形態を示す床走行式介護リフトの下部の要部平面図、図5は実施形態を示す床走行式介護リフトの下部の要部後面図、図6は実施形態に係る駆動部の側面図、図7は実施形態に係る駆動部の後面図、図8は実施形態に係る押圧機構の作用を説明する説明図、図9は実施形態に係る操作ハンドル及び検知部の平面図、図10は実施形態に係る操作ハンドル及び検知部の後面図、図11は実施形態に係る操作ハンドル及び検知部の側面図、図12は実施形態に係る走行アシスト機能のフローチャートである。
【0024】
図1乃至図3に示すように、床走行式介護リフト1は、車体2と、走行車輪3と、アーム4と、駆動部5と、駆動源6と、操作ハンドル7と、検知部8と、制御部9と、バッテリ10とを備える。
【0025】
車体2は、基台20と、基台20の上面中央部に立設された支柱21と、基台20の幅方向両側部から前後方向へ延びる一対の脚部22と、とを有する。
【0026】
基台20は幅方向に長い箱状であり、その内部の一側には制御部9が収容され、他側にはバッテリ10が収容されている(図3図4)。
【0027】
支柱21は上端面が開口した角管であり、支柱21の後面側にはカバー部21aが一体に設けられ、その内側にアーム駆動部23が設けられ、アーム駆動部23の下方にはアーム駆動モータ24が設置されている。
【0028】
アーム駆動部23はシリンダを含み昇降稈230を有し、アーム駆動モータ24に接続される。
また、アーム駆動部23を覆うカバー部21aには、操作盤25が設けられる。
【0029】
脚部22は、基台20の両側面に軸支される棒状の部材であり、基台20より前方の長さが後方の長さよりも長く形成されている。
脚部22は、基台20に軸支された部分を中心に前方側が互いに開きハの字状に配置させることができる。このように脚部22を開くことで被介護者を安定して吊上げることができる。
【0030】
また、脚部22の基台20の前面に臨む部分には、上方へ湾曲して隆起部220が形成される。
隆起部220より脚部22の前方の高さが低く形成されており、被介護者が横たわるベッドなどの下方に脚部22を進入させることができる。
【0031】
走行車輪3は、6輪構成であり、脚部22の下面において、前端部に設置される前輪3aと、隆起部220に設置される中間輪3bと、後端部に設置される後輪3cとを含む。
隆起部220に設置される中間輪3bは前輪3a及び後輪3cよりも径大となっている。また、後輪3cは前輪3aより径大となっている。
【0032】
走行車輪3(前輪3a、中間輪3b、後輪3c)は、方向が変更可能な自在キャスターであり、床走行式介護リフト1の進行に伴って方向を変えながら回転する。
【0033】
アーム4は、垂直部40の上端から前方へ向けて水平部41が張り出して逆L字状に形成され、垂直部40が支柱21の上端から摺動可能に挿入されている。
垂直部40の後面にはブラケット42が取り付けられ、ブラケット42に昇降稈230が連結されている。したがって、アーム駆動モータ24を駆動させて昇降稈230を上下動させると、アーム4は昇降する。
【0034】
アーム4の前端部には、下端にフック44を取り付けたベルト43が吊り下げられており、フック44に被介護者を乗せたシート等を取り付けて吊ることができる。
【0035】
従来の床走行式介護リフトは、車体の幅方向両側に電動モータで駆動される車輪がそれぞれ設けられているので、走行車輪を制御し駆動させるための機構が複雑になってコストが高くつくばかりか重量も増大する。
また、幅方向両側に電動モータで駆動される走行車輪が設けられているので、バッテリの充電量が低下するなどにより、走行車輪の抵抗が大きくなり操作に要する力がかえって増えてしまい、特に、旋回させる際には、両側の走行車輪の進行方向を変えるために相当な力が必要になる。
【0036】
本発明が解決しようとする課題は、軽量で、コストも低廉で済み、駆動力がない場合であっても抵抗が低く、介護者が操作しやすく、旋回操作も容易な床走行式介護リフトを提供することにある。
【0037】
従来の駆動輪を備えた走行式介護リフトは、駆動輪が製造当初から組込まれたものである。
駆動輪を有しない走行式介護リフトに後付けで駆動輪を備え付けるようにしようとすると、側面視における床面において、取付ける駆動輪と、アームで被介護者を吊り上げた際の被介護者の重量がアームに加わる力点を通る鉛直線との間に走行車輪が配置される場合がある。
このような場合には、走行車輪を支点として、アームの力点を通る鉛直線に沿って下向きの力が働き、車体を前方へ倒そうとする回転モーメントが発生する。
そして、車体に設けた駆動輪が床面から浮き上がるようになり、駆動輪よる駆動力が床面に十分に伝達されなくなる。
【0038】
本発明が解決しようとする課題は、アームで被介護者を吊り上げた時にも、駆動輪が床面に十分な圧力で接し、確実に駆動輪による走行アシスト機能が得られる床走行式介護リフトを提供することにある。
【0039】
駆動部5は、図4乃至図7に示すように、車体2の幅方向両側に設置された走行車輪3の間に配置され、基台20の後面に取り付けられる支持板50と、支持板50に対して上下動可能に設けられるスライド枠51と、スライド枠51に回転可能に設けた一輪の駆動輪52と、を備える。
【0040】
本実施形態では、駆動輪52が幅方向両側の走行車輪3の中間位置に配置される。また、駆動輪52は後輪3cと前後方向における同程度の位置に配置される。
駆動輪52は、支柱21を上面に備える基台20の後部側に取付けられる。
また、被介護者を乗せたシート等をフック44に引っかけてアーム4を上昇させることにより被介護者を吊ることができるが、このとき、側面視における床面において、駆動輪52と、被介護者の重量がアーム4に加わる力点を通る鉛直線との間に中間輪3bが位置するよう、ベルト43、中間輪3b及び駆動輪52を配置する。
【0041】
支持板50は、基台20の後面に固定される固定板500と、固定板500の上端から後方へ水平に張り出す上板501とを有する。
固定板500の後面には、左右一対のガイドレール502が上下方向に沿って設けられる。
【0042】
スライド枠51は、天板510の両側端から側壁511が垂下されて略コ字形に形成される。
スライド枠51の両側の側壁511間には、駆動軸520が架設され、駆動輪52が取付けられている。
【0043】
駆動輪52は、一対のタイヤを並設したダブルタイヤ型の車輪であって、一の車輪(1輪)を構成している。
【0044】
一方の側壁511の外面には、駆動軸520を回転駆動させる駆動源(電動モータ)6が取り付けられる。
【0045】
天板510の上面の前端部には、ガイドレール502に摺動可能に係合する一対のスライドブロック512が設けられ、スライドブロック512がガイドレール502に対して摺動することにより、スライド枠51が駆動輪52及び駆動源6と共に車体2に対して安定して上下動する。これらは後述する押圧機構が有するガイド機構である。
【0046】
支持板50の上板501の下面側両側部に上昇規制軸503が突出して形成される。
上昇規制軸503は、駆動輪52が車体2に対して所定高さよりも上昇するのを規制する上昇規制機構であり、スライド枠51が所定高さまで上昇した時、天板510が上昇規制軸503の下部に当接して、スライド枠51がそれ以上上昇するのを防ぐ。
【0047】
上昇規制軸503の前方で、支持板50の上板501及びスライド枠51の天板510を一対の抜け止めボルト504が貫通しており、抜け止めボルト504の下端部にはストッパ505が取り付けられる。抜け止めボルト504及びストッパ505は、駆動輪52が車体2に対して所定低さよりも下降するのを規制する下降規制機構である。
【0048】
支持板50の上板501とスライド枠51の天板510との間において、上昇規制軸503の外周にはコイルスプリング506が付勢された状態で巻回される。
コイルスプリング506は、支持板50の上板501とスライド枠51の天板510とを押圧し、ガイドとともに駆動輪52を床面に押圧する押圧機構を構成する。
また押圧機構は、スライドブロック512がガイドレール502とを含むガイド機構を有する。このため駆動輪が車体に対して安定して上下動する。
【0049】
床走行式介護リフト1は、側面視において前方から、前輪3a、アーム4のベルト43取付け部、中間輪3b、駆動輪52の順に配置されている。
アーム4を用いて被介護者を吊ると、アーム4のベルト43の取り付け部に被介護者の重さが加わる。
【0050】
すると、図8の(A)に示すように、側面視における床面において、駆動輪52と、アーム4で被介護者を吊り上げた際に、被介護者の重量がアーム4に加わる力点を通る鉛直線aとの間に走行車輪(中間輪3b)が配置されているので、中間輪3bを支点として、ベルト43の取り付け部であるアーム4の力点を通る鉛直線aに沿って下向きの力が働き、車体2を前方へ倒そうとする回転モーメントが発生する。この結果、車体2の後部に設けた駆動輪52が床面から浮き上がるようになり、駆動輪52による駆動力が床面に十分に伝達されなくなる。
しかし、押圧機構によって駆動輪52は下方の床面へ押圧されているので、図8の(B)に示すように、駆動輪52は確実に床面に接し、駆動輪による走行アシスト機能が失われることはない。
【0051】
また、押圧機構で押圧される駆動輪52は一輪であるので、押圧力が作用していても比較的にカーブや旋回をしやすい。さらに、一輪の駆動輪52を中心に旋回させる場合であっても、押圧力が作用して一輪を回転中心としてグリップされ旋回を安定的に行うことができる。
【0052】
駆動輪52の車体2に対する下降は、下降規制機構によってスライド枠51の天板510が支持板50のストッパ505に当接する下限位置までに規制されているため、コイルスプリング506がスライド枠51を下方へ押圧していても、スライド枠51とこれに取り付けられた駆動輪52及び駆動源6が支持板50から脱落することはない。また、車体2を持ち上げることがあっても駆動輪52が脱落しない。
【0053】
また、被介護者の身動きなどによって、前輪3aが浮き上がり車体2を後方へ倒そうとする力が働き、駆動輪52を取り付けたスライド枠51に対して車体2の後部が沈み込んでも、駆動輪52の車体2に対する上昇は、上昇規制機構によって天板510が上昇規制軸503の下端に当接する上限位置までに規制されているため、車体2が圧迫されて損傷を受けたり、車体2の後部が大きく沈み込んで後方に転倒したりするのを防ぐことができる。
また、車体2の後方への倒れを防止するために後輪3cが設けられているが、走行方向が変更可能な自在キャスターが採用されているので、その方向によっては後方への倒れ防止の効果が低下する場合があるが、その際にもこの上昇規制機構は効果を発揮することになる。
【0054】
図9乃至図11に示すように、操作ハンドル7は、車体2に対して不動に設けられ介護者が押し引きして床走行式介護リフト1を走行させるものである。操作ハンドル7は、カバー部21aの後面に検知部8を挟んで固定して設けられる。
操作ハンドル7は、アーム駆動部23から左右両側に張り出し、介護者が左右の手で握って押し引きすることにより床走行式介護リフト1を走行させることができる。
【0055】
なお、車体を旋回方向に移動させるとは、車体をカーブさせて移動させること及び旋回させて移動させることを含む。
【0056】
検知部8は、介護者が操作ハンドル7を押し引きすることによる荷重を検知するロードセルであって、カバー部21aの幅方向両側に例えばステーなどを介してそれぞれ設置される。
介護者が操作ハンドル7の両側を押し引きすると、操作ハンドル7が撓んでカバー部21aと操作ハンドル7で挟まれた検知部8に力が加わり、両側の検知部8は対応する側に加わる操作力を検知することができる。
【0057】
介護者が床走行式介護リフト1を前進させようとする場合は操作ハンドル7を押すので、検知部8は押圧力とその強さを検知する。
一方、介護者が床走行式介護リフト1を後進させようとする場合は操作ハンドル7を引くので、検知部8は引張力とその強さを検知する。
【0058】
制御部9は、両側の検知部8及び駆動源6に接続され、検知部8で検知された操作力に応じて駆動源6を制御する。
介護者が操作ハンドル7の両側部を同程度の力で押すと、両側の検知部8がその押圧力を検知し、電気的な検知信号に変えて制御部9へ送る。押圧力が所定値以上であれば、制御部9は、操作力が車体2を直線で前進方向に移動させると判断し、駆動源6を制御して駆動輪52を前進方向へ回転させる。
【0059】
介護者が操作ハンドル7の両側部を同程度の力で引くと、両側の検知部8がその引張力を検知し、電気的な検知信号に変えて制御部9へ送る。引張力が所定値以上であれば、制御部9は、操作力が車体2を直線で後進方向に移動させると判断し、駆動源6を制御して駆動輪52を後進方向へ回転させる。
【0060】
床走行式介護リフト1をカーブまたは旋回させようとする場合、介護者は操作ハンドル7の両側部を異なる強さの力で押し引きする。すると、両側の検知部8が互いに異なる強さの操作力を検知して検知信号を制御部9へ送る。
制御部9は、両側の検知部8が検知した操作力の差が所定値を超えていれば、操作力が車体2を旋回方向に移動させると判断し、駆動源6を制御して駆動輪52を操作力が車体を直線で前進又は後進方向に移動させると判断するときよりも低速で回転させる。
床走行式介護リフト1は一輪の駆動輪52を中心としてカーブあるいは旋回するので、大きな遠心力が加わりやすいが、このように床走行式介護リフト1をカーブあるいは旋回させる場合に、駆動輪52を直線で前進又は後進方向に移動させると判断するときよりも低速で回転させるので、駆動輪52の駆動力によって大きな遠心力が加わりにくく、安全、かつ簡単にカーブさせることができる。
【0061】
なお、操作盤25に設けた図示しない緊急ボタンを操作することにより、制御部9は駆動源6を停止させ、駆動輪52が駆動しないようにする。
【0062】
制御部9は、以下のようにして駆動源6を制御する。
操作盤25に設けた図示しない電源スイッチを操作して、バッテリ10から制御部9を介して駆動源6及び検知部8への給電を開始すると、走行アシスト機能の流れがスタートする。
【0063】
図12に示すように、まず、ステップ1(S1)において、両側の検知部8に所定値以上の強さの操作力が加わり、検知部8から制御部9に検知信号が入力されたか否かを判断する。
両側の検知部8から検知信号が入力されない場合は、ステップ1(S1)の前に戻る。
介護者が操作ハンドル7を操作して床走行式介護リフト1を前進あるいは後進させようとすると、両側の検知部8から制御部9に検知信号が入力されるので、ステップ2(S2)に進み、制御部9は駆動源6を制御して駆動輪52を例えば比較的高速で回転させる。
これにより、駆動輪52が床走行式介護リフト1の直線での前進あるいは後進をアシストする。
【0064】
次に、ステップ3(S3)において、両側の検知部8が検知した操作力の差が所定値を超えているか否かを判断する。
両側の検知部8が検知した操作力の差が所定値を超えていなければ、ステップ2(S2)の前に戻る。
両側の検知部8が検知した操作力の差が所定値を超えていれば、ステップ4(S4)へ進み、制御部9が駆動源6を制御して駆動輪52を例えば低速で回転させ、終了する。
【0065】
なお、走行アシスト機構を構成する駆動部5、駆動源6、検知部8及び制御部9は、走行アシスト機能を備えていない介護リフトに後付けで簡単に設置することができる。すなわち、走行車輪を駆動輪に交換するなど必要がなく、一輪の駆動輪を走行車輪の間に追加することになり簡単に設置することができる。
【0066】
走行アシスト機能を備えていない介護リフトは、図9の破線で示すように、操作ハンドル7がカバー部21aの後面に直接固定されているので、操作ハンドル7をいったん取り外してから、アーム駆動部23の後面に検知部8を取り付け、検知部8を挟んだ状態で、操作ハンドル7をカバー部21aに固定する。
【0067】
駆動源6をスライド枠51に取り付けてから、支持板50の固定板500を基台20の後面に固定することにより、駆動部5を車体2に取り付ける。
制御部9は、中空の基台20の内部に簡単に収容することができ、バッテリ10は、アーム駆動モータ24へ給電するためにあらかじめ設置されているものと共用するようにしても良い。
【0068】
床走行式介護リフト1は、車体2に対して不動に設けられ、介護者が押し引きする操作ハンドル7と、操作ハンドル7に作用する操作力を検知する検知部8と、検知部8で検知された操作力に応じて駆動源6を制御する制御部9と、を備え、検知部8は、車体2と操作ハンドル7との間に設けられているので、駆動によるアシスト機能を得るために介護者は操作ハンドル7自体に特別に操作する必要がなく、走行アシスト機能を有しない介護リフトを操作するのと同様の操作によって、走行アシスト機能を作動させることができる。
【0069】
制御部9は、操作力が車体2を直線で前進又は後進方向に移動させると判断したときは、駆動源6を制御して駆動輪52を前進又は後進方向に駆動させることによって、介護者が前後進させようとする方向と同じ方向にアシスト機能を得ることが可能となる。
【0070】
制御部9は、操作力が車体2を旋回方向に移動させると判断したとき、駆動源6を制御して操作力が車体2を直線で前進又は後進方向に移動させると判断するときよりも低速で駆動輪52を前進又は後進方向に駆動させると、一輪の駆動輪52を駆動してカーブあるいは旋回させても大きな遠心力が発生しにくく、安全に曲がることができる。
【0071】
床走行式介護リフト1は、車体2の幅方向両側に設けた走行車輪3の間に一輪の駆動輪52が設置されているので、カーブあるいは旋回操作を行っても、大きな力を必要とせずに楽にカーブあるいは旋回させることができる。特に、前後移動をせずその位置で旋回させるような場合には、一輪の駆動輪52を中心に旋回させることができるので駆動輪52の抵抗が少ない。
また、二輪の駆動輪を有するものに比べて、駆動源や駆動機構も少なくて済むため構造が簡単で軽量であり、コストも低廉となる。
【0072】
走行車輪3を方向が変更可能な自在キャスターとすれば、介護者が床走行式介護リフト1を走行させようとする方向に合わせて、走行車輪3が自由に方向を変えるので、簡単にカーブや旋回をさせることができる。特に、前後移動をせずその位置で一輪の駆動輪52を中心に旋回させるような場合は効果的である。
【0073】
以上に説明した実施形態では、床走行式介護リフト1をカーブさせるべく介護者が操作ハンドル7を操作し、両側の検知部8が検知した操作力の差が所定値を超えた場合、制御部9は駆動源6を制御して駆動輪52を低速回転させているが、駆動源6を停止して駆動輪52が駆動回転しないようにすることもできる。この場合の具体的な制御としては、図12のステップ4(S4)において、駆動輪を低速回転させる制御ではなく、駆動源6による駆動をしないように制御する。
このようにすると、床走行式介護リフト1をカーブあるいは旋回させる際は、走行アシスト機能を解除して介護者の手動のみの操作と同じ感覚で操作できる。
【0074】
また、カーブまたは旋回において駆動輪の低速回転での制御と、駆動輪の駆動をさせない制御とを併用するようにしても良い。
この場合には、例えば、操作ハンドルの操作がカーブのための操作であると検知したときは、駆動輪の低速回転での制御にし、操作ハンドルの操作が旋回のための操作であると検知したときは、駆動輪の駆動をさせない制御をするようにしても良い。具体的な制御としては、図12のステップ3(S3)以降において、左右の操作力の差における評価を二段階に設定(例えば所定値Aと、所定値Aより大きい所定値Bとを設定)し、左右の操作力の差が所定値Aを超えるか否かを判断し(ステップ3(S3))、左右の操作力の差が所定値Aを超えない場合(S3がNO)には駆動輪を高速回転させ(S2)、所定値Aを超える場合(S3がYES)には、さらに左右の操作力の差が所定値Bを超えるか否かを判断し(ステップ4(S4))、左右の操作力の差が所定値Bを超えない場合(S4がNO)には駆動輪を低速回転させ(ステップ5(S5))、左右の操作力の差が所定値Bを超える場合(S4がYES)には駆動輪の駆動をさせない(ステップ6(S6))ように制御する。
【0075】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0076】
車体の形状や構造は上記実施形態のものと変えることができる。
例えば、本実施形態では、逆L字形の昇降可能なアームとしてあるが、支柱から前方へ張り出した部分を上下に揺動可能なアームとしてもよい。
【0077】
本実施形態では、一輪の駆動輪として、ダブルタイヤ型としてあるがシングルタイヤ型としても良い。
【0078】
本実施形態では、支持板の上板及びスライド枠の天板を貫通する抜け止めボルトの下端部にストッパを設けて、スライド枠が脱落するのを防いでいるが、支持板の固定板に設けたガイドレールの下部に、スライドブロックの下降を規制するストッパを設けて、下降規制機構としてもよい。
【0079】
本実施形態では、コイルスプリングでスライド枠を下方へ押圧しているが、板ばね等の他の付勢手段を用いることもできる。
【0080】
本実施形態では、6輪の走行車輪を備える床走行式介護リフトに適用したものであったが、これに限られず、4輪などの走行車輪の床走行式介護リフトに適用しても良い。
【0081】
本実施形態では、検知部としてロードセルを使用したが、これに限られず、力覚センサーなどを適用しても良い。
【0082】
本実施形態では、支持板に設けたガイドレールと、スライド枠に設けたスライドブロックとを係合して、スライド枠の上下動を案内しているが、縦長の長孔と、これに摺動可能に係合する突起に代替してもよい。この場合、長孔の上端と突起とが上昇規制機構となり、長孔の下端と突起とが下降規制機構となる。
【0083】
変形例を含むいずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【符号の説明】
【0084】
1 床走行式介護リフト
2 車体
20 基台
21 支柱
22 脚部
220 隆起部
23 アーム駆動部
230 昇降稈
24 アーム駆動モータ
25 操作盤
3 走行車輪
3a 前輪
3b 中間輪
3c 後輪
4 アーム
40 垂直部
41 水平部
42 ブラケット
43 ベルト
44 フック
5 駆動部
50 支持板
500 固定板
501 上板
502 ガイドレール
503 上昇規制軸
504 抜け止めボルト
505 ストッパ
506 コイルスプリング
51 スライド枠
510 天板
511 側壁
512 スライドブロック
52 駆動輪
520 駆動軸
6 駆動源
7 操作ハンドル
8 検知部
9 制御部
10 バッテリ
図1
図2
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図12