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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052276
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/00 20060101AFI20240404BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20240404BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20240404BHJP
   H01G 9/028 20060101ALI20240404BHJP
   H01G 9/02 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H01G9/00 290H
H01G9/15
H01G9/145
H01G9/028 F
H01G9/028 G
H01G9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158874
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】井上 渉
(72)【発明者】
【氏名】村越 のどか
(57)【要約】
【課題】 固体電解コンデンサの容量出現率を高める製造方法、及び容量出現率を高めた固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】 誘電体皮膜が形成された陽極箔と陰極箔とを対向して巻回した巻回体1を、疎水性の粘着テープ2で巻き止める。導電性高分子は、当該導電性高分子が分散又は溶解し、粘度が10mPa・s以上60mPa・s以下の導電性高分子液を用いて形成する。即ち、粘着テープ2で巻き止められた巻回体1を、粘度が10mPa・s以上60mPa・s以下の導電性高分子液に浸漬することで、導電性高分子を巻回体1内に付着させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体皮膜が形成された陽極箔と陰極箔とを対向させて巻回し、巻回体を形成する巻回工程と、
疎水性の粘着テープで、前記巻回体の周面を巻き止める巻き止め工程と、
前記粘着テープで巻き止められた前記巻回体を、導電性高分子が分散又は溶解した導電性高分子液に浸漬することで、前記導電性高分子を前記巻回体内に付着させる固体電解質形成工程と、
を含み、
前記固体電解質形成工程では、粘度が10mPa・s以上60mPa・s以下の前記導電性高分子液に、前記巻回体を浸漬すること、
を特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記導電性高分子液は、溶媒として水を含むこと、
を特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記巻回工程では、透気抵抗度が5.5[s/100mL]以下のセパレータを前記陽極箔と前記陰極箔の間に介在させて巻回すること、
を特徴とする請求項1又は2記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記陽極箔及び前記陰極箔には、平坦部と丸棒部と引出線とが一連に連なったリード端子が、前記平坦部で接続され、前記巻回体の一端面から前記丸棒部をはみ出させ、前記引出線を引き出されており、
前記固体電解質形成工程では、少なくとも前記巻回体の一端面の高さ以上に、前記巻回体を前記導電性高分子液に浸漬すること、
を特徴とする請求項1又は2記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記導電性高分子液は、高沸点溶媒を更に含むこと、
を特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記巻回体に電解液を含浸する電解液含浸工程を更に含むこと、
を特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項7】
誘電体皮膜が形成された陽極箔と陰極箔とを対向させて巻回した巻回体と、
疎水性であり、前記巻回体の周面を巻き止める粘着テープと、
少なくとも前記誘電体皮膜に付着する導電性高分子と、
を備え、
前記導電性高分子は、当該導電性高分子が分散又は溶解し、粘度が10mPa・s以上60mPa・s以下の導電性高分子液を用いて形成されていること、
を特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項8】
前記巻回体内で前記陽極箔と前記陰極箔との間に介在し、透気抵抗度が5.5[s/100mL]以下のセパレータを備えること、
を特徴とする請求項7記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
平坦部と丸棒部と引出線とが一連に連なって成り、前記平坦部で前記陽極箔と前記陰極箔に接続し、前記巻回体の一端面から前記丸棒部をはみ出させ、前記引出線が引き出されたリード端子を備え、
前記導電性高分子は、前記巻回体の一端面の高さ以上に付着すること、
を特徴とする請求項7記載の固体電解コンデンサ。
【請求項10】
前記巻回体に含浸する電解液を更に含むこと、
を特徴とする請求項7記載の固体電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質として導電性高分子を含む巻回形の固体電解コンデンサ及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、タンタルあるいはアルミニウム等のような弁作用金属を陽極箔及び陰極箔として備えている。陽極箔は、弁作用金属を焼結体あるいはエッチング箔等の形状にすることで拡面化され、拡面化された表面に誘電体皮膜層を有する。陽極箔と陰極箔の間には電解質が介在する。電解質は、陽極箔の凹凸面に密接し、真の陰極として機能する。
【0003】
電解コンデンサの形態として、巻回形が知られている。巻回形の電解コンデンサは、陽極箔、陰極箔及びセパレータで構成される巻回体を備えている。陽極箔と陰極箔は帯状の箔体である。陰極箔と陽極箔とをセパレータを介して対向させる。そして、帯短手の方向を巻軸と一致させ、帯長手方向が湾曲するように巻回する。巻回体の外周には帯状の粘着テープが巻き付けられており、巻回体が解けないように巻き止めしてある(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
近年、巻回体内に電解質として導電性高分子を充填した固体電解コンデンサが急速に普及している。導電性高分子は、π共役二重結合を有するモノマーから誘導される。導電性高分子は、例えば、誘電体皮膜との密着性に優れたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)である。導電性高分子には化学酸化重合又は電解酸化重合の際に、有機スルホン酸等のポリアニオンがドーパントとして用いられ、高い導電性が発現する。
【0005】
固体電解コンデンサは、低等価直列抵抗であることに加えて、電解液が経時的に外部へ蒸発揮散することでドライアップを迎える虞がなく、長寿命という利点を有する。もっとも、誘電体皮膜の欠陥部修復作用を付与し、固体電解コンデンサの漏れ電流を低減するため、導電性高分子と電解液とを併用する所謂ハイブリッドタイプの固体電解コンデンサも普及している(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1-201911号公報
【特許文献2】特開2006-114540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
導電性高分子は、巻回体を導電性高分子液に浸漬することで、巻回体内に付着させる。導電性高分子液は、水を主たる溶媒とし、導電性高分子が当該水に分散又は溶解させて調製された分散液又は溶液である。導電性高分子液を含浸する方法は、巻回体を重合液に浸漬して重合反応させる電気重合及び酸化重合と比べて、巻回体を高熱に晒すことなく、また巻回体に不純物を残さない。
【0008】
しかしながら、巻回体の外周を巻き止めるために用いられる粘着テープは、固体電解コンデンサの製造過程で水を用いることが多いため、ポリプロピレン等の疎水性の基材を有している。疎水性の粘着テープが導電性高分子液を弾き、導電性高分子液の巻回体内部への浸透を妨げている。そのため、導電性高分子と誘電体皮膜との密着性を更に改善し、例えば固体電解コンデンサの静電容量を向上させる等の特性改善の余地がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、固体電解コンデンサの容量出現率を高める製造方法、及び容量出現率を高めた固体電解コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本実施形態の固体電解コンデンサの製造方法は、誘電体皮膜が形成された陽極箔と陰極箔とを対向させて巻回し、巻回体を形成する巻回工程と、疎水性の粘着テープで、前記巻回体の周面を巻き止める巻き止め工程と、前記粘着テープで巻き止められた前記巻回体を、導電性高分子が分散又は溶解した導電性高分子液に浸漬することで、前記導電性高分子を前記巻回体内に付着させる固体電解質形成工程と、を含み、前記固体電解質形成工程では、粘度が10mPa・s以上60mPa・s以下の前記導電性高分子液に、前記巻回体を浸漬する。
【0011】
また、上記課題を解決すべく、本実施形態の固体電解コンデンサは、誘電体皮膜が形成された陽極箔と陰極箔とを対向させて巻回した巻回体と、疎水性であり、前記巻回体の周面を巻き止める粘着テープと、少なくとも前記誘電体皮膜に付着する導電性高分子と、を備え、前記導電性高分子は、当該導電性高分子が分散又は溶解し、粘度が10mPa・s以上60mPa・s以下の導電性高分子液を用いて形成されている。
【0012】
前記導電性高分子は、前記導電性高分子液が前記巻回体に含浸して付着するようにしてもよい。前記導電性高分子液は、溶媒として水を含むようにしてもよい。前記導電性高分子液は、高沸点溶媒を更に含むようにしてもよい。前記巻回体に電解液を含浸する電解液含浸工程を更に含むようにしてもよい。前記巻回体に含浸する電解液を更に含むようにしてもよい。
【0013】
前記巻回工程では、透気抵抗度が5.5[s/100mL]以下のセパレータを前記陽極箔と前記陰極箔の間に介在させて巻回するようにしてもよい。前記巻回体内で前記陽極箔と前記陰極箔との間に介在し、透気抵抗度が5.5[s/100mL]以下のセパレータを備えるようにしてもよい。
【0014】
前記陽極箔及び前記陰極箔には、平坦部と丸棒部と引出線とが一連に連なったリード端子が、前記平坦部で接続され、前記巻回体の一端面から前記丸棒部をはみ出させ、前記引出線を引き出されており、前記固体電解質形成工程では、少なくとも前記巻回体の一端面の高さ以上に、前記巻回体を前記導電性高分子液に浸漬するようにしてもよい。
【0015】
平坦部と丸棒部と引出線とが一連に連なって成り、前記平坦部で前記陽極箔と前記陰極箔に接続し、前記巻回体の一端面から前記丸棒部をはみ出させ、前記引出線が引き出されたリード端子を備え、前記導電性高分子は、前記巻回の一端面の高さ以上に付着するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、固体電解コンデンサの容量出現率が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る固体電解コンデンサが備える巻回体の模式図である。
図2】本実施形態に係る固体電解コンデンサが備えるリード端子の模式図である。
図3】導電性高分子液の液面位置又は導電性高分子の付着位置を示す模式図である。
図4】導電性高分子液の粘度に対するESR及び容量出現率の関係を示す散布図である。
図5】導電性高分子液の浸漬液面高さと導電性高分子の付着量との関係を示すグラフである。
図6】導電性高分子液の浸漬液面高さと固体電解コンデンサのtanδとの関係を示すグラフである。
図7】導電性高分子液の浸漬液面高さと固体電解コンデンサの容量出現率との関係を示すグラフである。
図8】導電性高分子液の粘度に対するESR及び容量出現率の関係を示す散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る固体電解コンデンサ及び製造方法について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものでない。また、各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率、数又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。
【0019】
(全体の構成及び製法)
固体電解コンデンサは、誘電体皮膜の誘電分極作用により静電容量を得て、電荷の蓄電及び放電を行う受動素子である。この固体電解コンデンサは、誘電体皮膜が表面に形成された陽極箔及び陰極箔を備えている。陽極箔と陰極箔とは対向配置されている。陽極箔と陰極箔の短絡阻止のため、陽極箔と陰極箔との間には、セパレータが介在する。
【0020】
陽極箔の誘電体皮膜には導電性高分子が付着している。導電性高分子は、固体電解コンデンサの電解質であり、誘電体皮膜と陰極体の間に連なるように配置されて導電パスを作出し、真の陰極となっている。固体電解コンデンサには電解液を併用できる。電解液は、誘電体皮膜と導電性高分子との間の空隙を埋める。
【0021】
図1は、固体電解コンデンサが備える巻回体の模式図である。固体電解コンデンサは巻回形である。即ち、固体電解コンデンサは、巻回体1を備えている。巻回体1は、陽極箔、陰極箔及びセパレータの積層体を螺旋状に幾重にも巻き込んで成り、円筒形状を有する。陽極箔と陰極箔は帯状の箔体である。帯短手方向を巻回体1の中心軸と一致させ、帯長手方向が丸まるように巻回する。この陽極箔、陰極箔及びセパレータを巻回し、巻回体1を形成する工程を巻回工程という。
【0022】
巻回工程に先立って、陽極箔と陰極箔の各々には、各リード端子3が接続されている。リード端子3は、陽極箔及び陰極箔に対してコールドウェルド、超音波溶接、又はレーザー溶接などにより電気的及び機械的に接続される。リード端子3は、巻回体1の一方の導出端面1aから突出し、固体電解コンデンサと実装基板とを電気的に繋ぐ電導体である
【0023】
巻回工程の後、巻回体1の外周には帯状の粘着テープ2が巻き付けられる。粘着テープ2は、巻回体1が解けないように、少なくとも帯外側終端を巻き止めしてある。粘着テープ2で巻回体1の周面を巻き止める工程を、巻き止め工程という。粘着テープ2は、固体電解コンデンサの製造工程中の水分に対する耐水性のために、ポリプロピレン等の疎水性の基材を有する。この疎水性の基材に粘着層が積層し、粘着テープ2は疎水性である。
【0024】
この粘着テープ2は、帯短手方向の幅が巻回体1の軸長さと同長又は略同長である。少なくとも巻回体1の帯外側終端を覆うように、粘着テープ2は巻回体1に巻き付けられる。また、粘着テープ2の帯長手方向の辺縁が、巻回体1の導出端面1a及び反対端面1bと面一又は略面一となるように、粘着テープ2は巻回体1に巻き付けられる。
【0025】
巻回工程の後、固体電解質形成工程に移る。もっとも、巻回工程の後、直ちに固体電解質形成工程に移行せず、例えば巻回工程による誘電体皮膜の損傷を修復する再化成処理、及びその他処理を挟んでもよい。固体電解質形成工程では、導電性高分子を巻回体1内に付着させる。導電性高分子は、少なくとも誘電体皮膜の一部を覆う。
【0026】
導電性高分子は、導電性高分子液を用いて巻回体1内に形成される。導電性高分子液は、導電性高分子が分散又は溶解した分散液又は溶液である。導電性高分子液の主たる溶媒は水であり、水に導電性高分子の粉末又は粒子を分散又は溶解させてある。固体電解質形成工程では、導電性高分子液に巻回体1を浸漬し、導電性高分子液を巻回体1に含浸する。巻回体1は、導電性高分子液に1回又は複数回浸漬してもよい。減圧環境下で巻回体1に導電性高分子液を含浸させてもよい。
【0027】
導電性高分子液を巻回体1に含浸した後は、乾燥により導電性高分子溶液の溶媒を除去する。温度環境は例えば40℃以上200℃以下であり、乾燥時間は例えば3分以上180分以下の範囲である。乾燥工程は複数回繰り返してもよい。減圧環境下で乾燥してもよく、例えば5kPa以上100kPa以下の圧力で減圧する。
【0028】
電解液を含浸する場合、固体電解質形成工程の後、電解液を含浸する含浸工程に移る。導電性高分子が付着した巻回体1に対して、大気圧環境又は減圧環境で、電解液を1回又は複数回含浸する。そして、固体電解質形成工程の後、又は電解液含浸工程の後、導電性高分子、導電性高分子および電解液の両方が充填された巻回体1、即ちコンデンサ素子は、有底筒状の外装ケース41に挿入され、封口部材42で封止される。
【0029】
封口部材42は、コンデンサ素子を外装ケース内に密閉するための弾性体であり、リード端子3が貫通する挿入孔43を有している。リード端子3は、挿入孔43に圧入され、封口部材42から引き出される。固体電解コンデンサは、エージング工程を経て製造完了となる。エージング工程では、固体電解コンデンサに直流電圧を印加して誘電体皮膜層等の欠陥箇所を修復する。
【0030】
尚、コンデンサ素子は、外装ケースの代わりに、ラミネートフィルムによって被覆されてもよい。また、コンデンサ素子は、耐熱性樹脂や絶縁樹脂などの樹脂でモールドされてもよい。コンデンサ素子に当該樹脂をディップコートや印刷などの手法を用いて薄膜状に形成することで封止してもよい。
【0031】
(詳細な構成及び製法)
(電極箔)
陽極箔は、弁作用金属を材料とした長尺の箔体である。弁作用金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、酸化ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス及びアンチモン等である。陰極箔は、陽極箔と同じ弁作用金属、銀等の他の金属を材料とした長尺の箔体である。陰極箔は、銀層にカーボン層を積層した層状の箔体であってもよい。純度は、陽極箔に関して99.9%以上が望ましく、陰極箔に関して99%以上が望ましいが、ケイ素、鉄、銅、マグネシウム、亜鉛等が含まれていてもよい。
【0032】
長尺の箔体は、弁作用金属等を延伸して形成してもよいし、弁作用金属の粉末を焼結して形成してもよい。陽極箔の片面又は両面には、拡面層が形成されている。拡面層は、箔体にエッチング処理を施したエッチング層、弁作用金属の粉体を焼結した焼結層、又は箔体に弁作用金属の粒子を蒸着した蒸着層である。即ち、拡面層は、多孔質構造を有し、トンネル状のピット、海綿状のピット、又は密集した粉体若しくは粒子間の空隙により成る。
【0033】
トンネル状のエッチングピットは、箔厚み方向に掘り込まれた孔である。このトンネル状のエッチングピットは、典型的には、塩酸等のハロゲンイオンが存在する酸性水溶液中で直流電流を流すことで形成される。トンネル状のエッチングピットは、更に、硝酸等の酸性水溶液中で直流電流を流すことで拡径される。海綿状のエッチングピットによって、拡面層は、空間状に細かい空隙が連なり拡がったスポンジ状の層になる。この海綿状のエッチングピットは、塩酸等のハロゲンイオンが存在する酸性水溶液中で交流電流を流すことで形成される。
【0034】
焼結層は、箔体と同種又は異種の弁作用金属の粉末を粉砕法、アトマイズ法、メルトスピニング法、回転円盤法、回転電極法等によって得て、バインダや溶剤によってペースト化し、箔体に塗布及び乾燥させ、真空又は還元雰囲気等で加熱焼結させことにより作製される。アトマイズ法は、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、水ガスアトマイズ法のいずれでも良い。蒸着層は、例えば抵抗加熱式蒸着法又は電子線加熱式蒸着法により作製される。この蒸着層は、箔体と同種又は異種の弁作用金属を抵抗熱や電子線エネルギーによって加熱して蒸発させ、弁作用金属粒子の蒸気を箔体の表面に堆積させることで成膜する。
【0035】
誘電体皮膜は、拡面層の凹凸表面に形成されている。誘電体皮膜は、典型的には、拡面層の凹凸表面に形成される酸化皮膜であり、陽極箔がアルミニウム製であれば、拡面層の凹凸表面を酸化させた酸化アルミニウム層である。誘電体皮膜を形成する化成処理では、化成液中で陽極箔に対して、所望の耐電圧を目指して電圧印加する。化成液は、ハロゲンイオン不在の溶液であり、例えば、リン酸二水素アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液である。
【0036】
陰極箔についても、必要に応じて陽極箔と同じく拡面層が形成される。拡面層のないプレーン箔を陰極箔として用いてもよい。陰極箔は、陽極箔と同様に誘電体皮膜を形成してもよい。誘電体皮膜として自然酸化皮膜、又は化成処理により形成された薄い酸化皮膜(1~10V程度)を有していてもよい。自然酸化皮膜は、陰極体が空気中の酸素と反応することにより形成される。
【0037】
尚、陰極箔には、箔表面に導電層を積層してもよい。導電層は、例えば、チタン、ジルコニウム、タンタル又はニオブ等の金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物、又は炭素を含む層である。金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物及び炭素は、蒸着法やスラリー塗布法等によって形成される。
【0038】
(リード端子)
図2は、リード端子3の模式図である。リード端子3は、封口部材4を貫通して引き出され、引出線31、丸棒部32及び平坦部33が一連に並んで構成されている。封口部材42は、コンデンサ素子を外装ケース内に密閉するための弾性体であり、リード端子3が貫通する挿入孔43を有している。引出線31は、封口部材42よりも外部に延び、固体電解コンデンサと実装基板とを電気的に繋ぐ電線である。この引出線31は、一般的には、CP線と呼ばれる銅被覆鋼線であり、表面に鉛やスズ等の半田メッキが施されている。
【0039】
丸棒部32は、典型的にはアルミニウム製であり、略円柱形状の丸棒である。但し、丸棒部32は、断面形状が真円に限らず、楕円であってもよいし、三角形や四角形等の多角形形状であっても、その他形状であってもよい。引出線31と丸棒部32とは、アーク溶接等で接続されており、引出線31と丸棒部32との間には溶接による接続部34が介入している。または丸棒部32の一部から引出線31を形成してもよい。丸棒部32は、封口部材42の挿入孔43よりも一回り大きく設定されている。丸棒部32は、挿入孔43に圧入され、加締められた後の封口部材4の内圧上昇により挿入孔43の内壁と密着する。
【0040】
平坦部33は、丸棒部32のうち、引出線31とは反対側がプレス加工等によって潰されて平坦な板状に形成されている。尚、丸棒部32と平坦部33との境界は、平坦部33の厚みまで直線的に厚みが減少する傾斜部になっている。この傾斜部は丸棒部32に含まれる。
【0041】
平坦部33は、陽極箔及び陰極箔の総称である各電極箔5にステッチ接続、冷間圧接、超音波溶接又はレーザ溶接等の各種接続手段の一つを用いて電気的及び機械的に接続される。平坦部33を電極箔5の片面及び長辺の一方側に接触させ、丸棒部32と引出線31を電極箔5の長辺と直交するように電極箔5からはみ出させ、平坦部33と電極箔5とを接続する。巻回工程は、このリード端子3が各電極箔5に接続された後に行われる。
【0042】
(セパレータ)
セパレータは、陽極箔と陰極箔との短絡を阻止し、また導電性高分子及び電解液を保持する。このセパレータは、クラフト、マニラ麻、エスパルト、ヘンプ、レーヨン等のセルロース及びこれらの混合紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びこれらの誘導体等のポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ビニロン系樹脂、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、トリメチルペンテン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリル樹脂、並びにポリビニルアルコール樹脂等であり、これらの樹脂が単独又は混合して用いられる。
【0043】
セパレータは、例えばフィブリル化セルロースのように、元の繊維の表面から枝分かれするように細い繊維を生成させてフィブリル化させてもよい。フィブリル化は、例えば叩解により形成することができる。フィブリル化された繊維同士がフィブリル化した細い繊維を用いて絡み合い、セパレータの強度が向上する。そのため、セパレータの薄厚化できる。
【0044】
また、巻回体1には、透気抵抗度が5.5[s/100mL]以下のセパレータを用いることが好ましい。セパレータの透気抵抗度が5.5[s/100mL]以下であると、固体電解質形成工程で導電性高分子液が巻回体1に染み込み易くなる。そのため、巻回体1内への導電性高分子液の含浸量及び巻回体1内の導電性高分子の付着量が増加し、固体電解コンデンサの出現率を向上させる。
【0045】
ここで、透気抵抗度は、ガーレ値とも呼ばれ、100mLの空気がセパレータを透過するのに要する時間である。透気抵抗度は、JIS P8117:2009に準じたガーレー法により測定する。測定は内径28.6mmのガスケットを用いる。ただし、透気抵抗度が1s/100mL以内のものは、内径6mmのガスケットを用いて測定し、内径28.6mmで測定した場合の値に換算する。具体的には、内径6mmで得られた値に28.6/6を乗算する換算式を用いる。
【0046】
(導電性高分子)
導電性高分子は、分子内ドーパントによりドーピングされた自己ドープ型の共役系高分子、又は外部ドーパント分子によりドーピングされた共役系高分子である。共役系高分子は、π共役二重結合を有するモノマー又はその誘導体を化学酸化重合または電解酸化重合することによって得られる。ドーパント又は外部ドーパント分子は、共役系高分子に電子を受け入れやすいアクセプター、もしくは電子を与えやすいドナーであり、これにより導電性高分子は高い導電性を発現する。
【0047】
共役系高分子としては、公知のものを特に限定なく使用することができる。例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチオフェンビニレンなどが挙げられる。これら共役系高分子は、単独で用いられてもよく、2種類以上を組み合わせても良く、更に2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。
【0048】
上記の共役系高分子の中でも、チオフェン又はその誘導体が重合されて成る共役系高分子が好ましく、3,4-エチレンジオキシチオフェン(すなわち、2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン)、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3-アルキル-4-アルコキシチオフェン、3,4-アルキルチオフェン、3,4-アルコキシチオフェン又はこれらの誘導体が重合された共役系高分子が好ましい。チオフェン誘導体としては、3位と4位に置換基を有するチオフェンから選択された化合物が好ましく、チオフェン環の3位と4位の置換基は、3位と4位の炭素と共に環を形成していても良い。アルキル基やアルコキシ基の炭素数は1~16が適している。
【0049】
特に、EDOTと呼称される3,4-エチレンジオキシチオフェンの重合体、即ち、PEDOTと呼称されるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。また、3,4-エチレンジオキシチオフェンに置換基が付加されていてもよい。例えば、置換基として炭素数が1~5のアルキル基が付加されたアルキル化エチレンジオキシチオフェンが用いられてもよい。アルキル化エチレンジオキシチオフェンとしては、例えば、メチル化エチレンジオキシチオフェン(すなわち、2-メチル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン)、エチル化エチレンジオキシチオフェン(すなわち、2-エチル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン)、ブチル化エチレンジオキシチオフェン(すなわち、2-ブチル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン)、2-アルキル-3,4-エチレンジオキシチオフェンなどが挙げられる。
【0050】
ドーパントは、公知のものを特に限定なく使用することができる。ドーパントは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、高分子又は単量体を用いてもよい。例えば、ドーパントとしては、ポリアニオン、ホウ酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、スクアリン酸、ロジゾン酸、クロコン酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、1,2-ジヒドロキシ-3,5-ベンゼンジスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ボロジサリチル酸、ビスオキサレートボレート酸、スルホニルイミド酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸などの有機酸が挙げられる。
【0051】
ポリアニオンは、例えば、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステルであって、アニオン基を有する構成単位のみからなるポリマー、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるポリマーが挙げられる。具体的には、ポリアニオンとしては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸などが挙げられる。
【0052】
このような導電性高分子としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が挙げられ、以下、この導電性高分子をPEDOT/PSSと称する。
【0053】
固体電解質形成工程では、導電性高分子液に巻回体1を浸漬することで、導電性高分子を巻回体1内に付着させる。導電性高分子液は、導電性高分子が分散した分散液又は溶解した溶液である。導電性高分子液は、電解重合又は化学重合後の溶液を限外濾過、陽イオン交換、及び陰イオン交換等によって精製し、残留モノマーや不純物を除去し、溶媒に分散又は溶解させておくことで調製され、または導電性高分子の粒子又は粉末を溶媒に添加して分散又は溶解することで調製される。
【0054】
導電性高分子液の主たる溶媒は水である。導電性高分子液は、例えば超音波ホモジナイザーやジェットミキシングなどの分散方法による処理時間、分散媒の種類及びその量、添加剤の種類及びその量、ポリマー重合度、ポリマー濃度等によって、粘度を10mPa・s以上60mPa・s以下に調整する。粘度がこの範囲内であると、固体電解コンデンサを良好なESRに維持しつつ、導電性高分子液が巻回体1内に染み渡り易くなって固体電解コンデンサの容量出現率を良好にすることができる。但し、粘度が10mPa・s未満になると、ESRが急激に増大してしまう。また、粘度が60mPa・s超になると、容量出現率が急減してしまう。
【0055】
容量出現率は、陽極箔及び陰極箔の合成容量に対する固体電解コンデンサの静電容量の割合であり、固体電解コンデンサの静電容量を陽極箔及び陰極箔の合成容量で除算した結果の百分率である。陽極箔及び陰極箔の合成容量は、固体電解コンデンサを陽極側と陰極側とが直列したコンデンサと見做した合成容量である。陰極箔が導電層を有する場合、又は陰極体の静電容量が無限大に収束すると言える場合には、陽極箔及び陰極箔の合成容量は、陽極箔の静電容量である。
【0056】
尚、導電性高分子の粒子又は粉末が分散又は溶解するものであれば、導電性高分子分散液の溶媒は、水と有機溶媒の混合液であってもよい。有機溶媒としては、極性溶媒、アルコール類、エステル類、炭化水素類、カーボネート化合物、エーテル化合物、鎖状エーテル類、複素環化合物、ニトリル化合物などが好適に例示できる。
【0057】
極性溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。炭化水素類としては、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。エーテル化合物としては、ジオキサン、ジエチルエーテル等が挙げられる。鎖状エーテル類としては、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。複素環化合物としては、3-メチル-2-オキサゾリジノン等が挙げられる。ニトリル化合物としては、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
【0058】
導電性高分子液は、pHが調整され、また必要に応じて多価アルコール及び各種添加剤が加えられていてもよい。pH調整剤としては、例えばアンモニア水、水酸化ナトリウム、一級アミン、二級アミン、三級アミンなどが挙げられる。多価アルコールとしては、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリオキシエチレングリセリン、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、又はこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。多価アルコールは、沸点が高い高沸点溶媒であり、導電性高分子液を巻回体1に含浸して乾燥させた後でも、巻回体1に残留する。そして、多価アルコールは、固体電解コンデンサのESR低減や耐電圧向上効果が得られる。添加剤としては、例えば、有機バインダー、界面活性剤、分散剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0059】
固体電解質形成工程では、巻回体1の反対端面1bを下向きにして、導電性高分子液に巻回体1を浸漬させる。図3は、導電性高分子液の液面位置又は導電性高分子の付着位置を示す模式図である。図3に示すように、リード端子3の引出線31と接続部34の上端との境界位置を接続部上端A1とする。リード端子3の接続部34の下端と丸棒部32の境界位置を接続部下端A2とする。丸棒部32の長さ方向において半分の高さ位置又は巻回体1の導出端面1aから1mm以上の位置をA3とする。そして、巻回体1の導出端面1aを端面位置A4とする。
【0060】
このとき、巻回体1は、少なくとも巻回体1の導出端面1aに導電性高分子液の液面が位置するように導電性高分子液に漬けることが好ましい。また、丸棒半分位置または巻回体1の導出端面1aから1mmの位置A3から接続部上端A1との間に導電性高分子液の液面が位置するように、導電性高分子液に漬けることが好ましい。換言すると、巻回体1内に加えて、リード端子3の少なくとも位置A3から接続部上端A1との間に範囲に導電性高分子を付着させることが好ましい。疎水性の粘着テープと導電性高分子液の接触角が大きいため、メニスカスが形成される。そのため疎水性の粘着テープ2の上端縁を超えて、巻回体1を導電性高分子液に浸漬する必要がある。
【0061】
導電性高分子液は、反対端面1bから導電性高分子液が吸い上がり、また導出端面1aから垂れ下がっていく。透気抵抗度が5.5[s/100mL]以下のセパレータが用いられることで、導出端面1aと反対端面1bから入り込んだ導電性高分子液は、セパレータを通して巻回体1内に染み渡っていく。
【0062】
そのため、固体電解質形成工程では、少なくとも丸棒部32の位置A3の高さ以上に導電性高分子液に浸漬し、巻回体1に加えて、少なくとも丸棒部32の位置A3の高さ以上に付着する導電性高分子を備えることで、固体電解コンデンサの容量出現率が底上げされ、誘電正接(tanδ)が低減する。
【0063】
導電性高分子液の含浸時間は、巻回体1の大きさによって適宜設定できる。長時間含浸しても特性上の弊害はない。巻回体1への含浸時には、含浸を促進させるべく、必要に応じて減圧処理や加圧処理を行ってもよい。固体電解質形成工程は複数回繰り返しても良い。導電性高分子液の溶媒は、必要に応じて乾燥により蒸散させて除去する。溶媒を除去するために、必要に応じて加熱乾燥や減圧乾燥を行ってもよい。
【0064】
尚、巻回工程と固体電解質形成工程の間には、誘電体皮膜の形成不足、巻回による曲げストレスに起因する誘電体皮膜の各所のボイド、亀裂又はキズ等の欠陥部を修復するため、修復化成処理を行ってもよい。修復化成の化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系を水に溶解させた水溶液を用いる。電圧は、例えば、化成電圧に対して0.1~1.2倍の値とすることが好ましい。その後、化成液を巻回体1から除去するために、純水等の化成液洗浄液で化成液に浸漬した巻回体1を洗浄する。
【0065】
(電解液)
固体電解コンデンサに電解液を併用する場合、固体電解質形成工程の後、電解液含浸工程に移る。電解液は、溶媒に対して溶質を溶解し、また必要に応じて添加剤が添加された混合液である。電解液は溶質を溶解しなくてもよく、溶媒のみであってもよいし、溶媒と添加剤を含んでもよい。電解液の溶媒としては、プロトン性の有機極性溶媒又は非プロトン性の有機極性溶媒が挙げられ、単独又は2種類以上が組み合わせられる。また、電解液の溶質としては、アニオン成分やカチオン成分が含まれる。溶質は、典型的には、有機酸の塩、無機酸の塩、又は有機酸と無機酸との複合化合物の塩であり、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。アニオンとなる酸及びカチオンとなる塩基を別々に溶媒に添加してもよい。
【0066】
溶媒であるプロトン性の有機極性溶媒としては、一価アルコール類、多価アルコール類及びオキシアルコール化合物類などが挙げられる。一価アルコール類としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類及びオキシアルコール化合物類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール、ポリエチレングリコールやポリオキシエチレングリセリンなどの多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。なかでも、溶媒は多価アルコールが望ましく、特にエチレングリコール、グリセリンが好ましい。エチレングリコールやグリセリンにより、導電性高分子の高次構造の変化が起こり、初期のESR特性が良好であり、さらには高温特性も良好となる。エチレングリコールは、溶媒中30wt%以上であればなおよい。
【0067】
溶媒である非プロトン性の有機極性溶媒としては、スルホン系、アミド系、ラクトン類、環状アミド系、ニトリル系、スルホキシド系などが代表として挙げられる。スルホン系としては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン等が挙げられる。アミド系としては、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等が挙げられる。ラクトン類、環状アミド系としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、イソブチレンカーボネート等が挙げられる。ニトリル系としては、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル等が挙げられる。スルホキシド系としてはジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0068】
溶質としてアニオン成分となる有機酸としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、アジピン酸、安息香酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、1,6-デカンジカルボン酸、1,7-オクタンジカルボン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、t-ブチルアジピン酸、11-ビニル-8-オクタデセン二酸、レゾルシン酸、フロログルシン酸、没食子酸、ゲンチシン酸、プロトカテク酸、ピロカテク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のカルボン酸や、フェノール類、スルホン酸が挙げられる。
【0069】
また、無機酸としては、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、炭酸、ケイ酸等が挙げられる。有機酸と無機酸の複合化合物としては、ボロジサリチル酸、ボロジ蓚酸、ボロジグリコール酸、ボロジマロン酸、ボロジコハク酸、ボロジアジピン酸、ボロジアゼライン酸、ボロジ安息香酸、ボロジマレイン酸、ボロジ乳酸、ボロジリンゴ酸、ボロジ酒石酸、ボロジクエン酸、ボロジフタル酸、ボロジ(2-ヒドロキシ)イソ酪酸、ボロジレゾルシン酸、ボロジメチルサリチル酸、ボロジナフトエ酸、ボロジマンデル酸及びボロジ(3-ヒドロキシ)プロピオン酸等が挙げられる。
【0070】
また、有機酸、無機酸、ならびに有機酸と無機酸の複合化合物の少なくとも1種の塩としては、例えばアンモニウム塩、四級アンモニウム塩、四級化アミジニウム塩、アミン塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。四級アンモニウム塩の四級アンモニウムイオンとしては、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。四級化アミジニウムとしては、エチルジメチルイミダゾリニウム、テトラメチルイミダゾリニウム等が挙げられる。アミン塩としては、一級アミン、二級アミン、三級アミンの塩が挙げられる。一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等、二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、ジブチルアミン等、三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エチルジメチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等が挙げられる。
【0071】
さらに、電解液には他の添加剤を添加することもできる。添加剤としては、ホウ酸と多糖類(マンニット、ソルビットなど)との錯化合物、ホウ酸と多価アルコールとの錯化合物、ホウ酸エステル、ニトロ化合物(o-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、o-ニトロフェノール、m-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール、p-ニトロベンジルアルコールなど)、リン酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。添加剤の添加量は特に限定されないが、固体電解コンデンサの特性を悪化させない程度に添加することが好ましく、例えば電解液中60wt%以下である。
【実施例0072】
以下、実施例に基づいて本発明の固体電解コンデンサ及び製造方法をさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0073】
(実施例1-7)
次の通り、実施例1乃至7並びに比較例1及び2の固体電解コンデンサを作製した。実施例1乃至7並びに比較例1及び2の固体電解コンデンサは、作製に用いた導電性高分子液の粘度が異なる他は共通する。
【0074】
最初に、陽極箔及び陰極箔は、長尺に延伸された帯状のアルミニウム箔とした。陽極箔及び陰極箔は直流エッチングにより拡面化した。陽極箔は、拡面化後に化成処理され、誘電体皮膜が形成された。
【0075】
陽極箔及び陰極箔の各々には、リード端子3がステッチ接続により取り付けられた。リード端子3が接続された陽極箔と陰極箔の間に、フィブリル化セルロース製のセパレータを介在させ、帯長手方向が丸まるように巻回することで、巻回体1を形成した。実施例1の固体電解コンデンサでは、フィブリル化セルロース製であり、透気抵抗度が5.48[s/100mL]のセパレータを用いた。
【0076】
巻回体1の軸方向全長と同一幅の粘着テープ2を用意し、この粘着テープ2で巻回体1の外周囲を巻き止めた。巻回体1に対して、化成液内で57Vの電圧を印加し、修復化成が行われた。
【0077】
巻回体1に導電性高分子液を含浸した。導電性高分子液は、ポリスチレンスルホン酸(PSS)がドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)を水に分散させてある。PEDOT/PSSは、導電性高分子液全体に対して1.2wt%の割合で添加されている。また、導電性高分子液には、エチレングリコールを添加し、エチレングリコールは導電性高分子液に対して10wt%の割合で添加されている。実施例1の固体電解コンデンサにおいて、導電性高分子液の粘度は、超音波ホモジナイザーで分散処理することにより調整された。
【0078】
導電性高分子液は、室温及び80kPa以下の減圧環境において、10分間、巻回体1に含浸した。巻回体1は、導電性高分子液の液面高さが図3に示す接続部下端A2に位置し、接続部下端A2の高さまで導電性高分子が付着するように、導電性高分子液に浸漬させた。各含浸工程の後は、室温で10分間静置し、更に110℃の温度環境下で30分静置することで、巻回体1を乾燥させた。
【0079】
導電性高分子を含浸して乾燥させた後の巻回体1は、外装ケース41内に収容され、外装ケース41は封口部材42で封口された。封口部材42と外装ケース41とは加締め加工により密着させた。封口部材42の挿入孔43には、リード端子3を圧入し、丸棒部32の外周面と挿入孔43の内周面とを密着させた。出来上がった固体電解コンデンサは、40Vの電圧を1時間印加するエージング処理が施された。この結果、直径10mm及び高さ10mm、定格電圧35WV、及び定格静電容量270μFの実施例1の電解コンデンサが作製された。
【0080】
(コンデンサ特性)
実施例1乃至7並びに比較例1及び2の固体電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)及び容量出現率(%)を測定した。ESRは比較例2を基準(100%)として表記した。その結果を、実施例1乃至7並びに比較例1及び2で用いられた導電性高分子液の粘度と共に表1に示す。また、導電性高分子液の粘度に対するESR及び容量出現率の関係を図4の散布図に示した。図4において、白色のプロットが容量出現率であり、黒色のプロットがESRである。
【0081】
尚、等価直列抵抗(ESR)は、LCRメータを用いて室温下で測定した。測定周波数は100kHzであり、交流振幅は0.5Vmsの正弦波である。
【0082】
容量出現率に関し、陽極箔や陰極箔の容量は、陽極箔や陰極箔から規定面積の試験片を切り出し、白金板を対向電極としてガラス製の測定槽内の静電容量測定液に浸漬し、静電容量計を用いて計測した。規定面積は1cmとし、静電容量測定液は30℃のアジピン酸アンモニウム水溶液とし、静電容量計はLCRメータとし、測定条件として交流振幅を0.5Vmsとした。
【0083】
(表1)
【0084】
表1及び図4に示すように、比較例1並びに実施例1乃至7の固体電解コンデンサは、粘度が60mPa・s以下の導電性高分子液を用いて導電性高分子が形成されている。この比較例1並びに実施例1乃至7の固体電解コンデンサは、容量出現率が良好となった。しかし、粘度が10mPa・s未満の導電性高分子液を用いて導電性高分子が形成された比較例1は、ESRが高くなってしまった。一方、粘度が10mPa・s以上60mPa・s以下の導電性高分子液を用いて導電性高分子を形成した実施例1乃至7は、容量出現率が良好であり、またESRも良好となった。
【0085】
これにより、疎水性の粘着テープ2で巻き止めていても、導電性高分子液の粘度を10mPa・s以上、60mPa・s以下とすることにより、容量出現率が良好となり、且つESRも低くなることが確認された。
【0086】
(実施例8)
実施例8の固体電解コンデンサを作製した。次の点で実施例8は実施例4と共通する。即ち、実施例8の固体電解コンデンサには、実施例4と同じく、粘度が30mPa・sの導電性高分子液を巻回体1に含浸した。巻回体1は、導電性高分子液の液面高さが図3に示す接続部下端A2に位置し、接続部下端A2の高さまで導電性高分子が付着するように、導電性高分子液に浸漬させた。接続部下端A2とは巻回体1の導出端面1aから2mmの位置である。但し、実施例8は実施例4と異なり、透気抵抗度が5.76[s/100mL]のセパレータが用いられた。その他の点については、実施例8は実施例4と同一構成であり、同一製造方法及び製造条件で作製された。
【0087】
(容量出現率)
実施例4及び8の固体電解コンデンサの容量出現率(%)を測定した。その結果を下表2に示す。
(表2)
【0088】
表2に示すように、セパレータの透気抵抗度が5.76[s/100mL]の実施例8の容量出現率は、比較例2と異なり良好ではあるものの、実施例4と比べると低い値となった。換言すれば、導電性高分子液の粘度を10mPa・s以上、60mPa・s以下としつつ、セパレータの透気抵抗度を実施例1乃至8の範囲を含む5.5[s/100mL]以下とするとき、固体電解コンデンサの容量出現率は更に良好になっていることが確認された。
【0089】
(実施例9)
実施例9の固体電解コンデンサを作製した。次の点で実施例9は実施例4と共通する。即ち、実施例9の固体電解コンデンサには、実施例4と同じく、透気抵抗度が5.48[s/100mL]のフィルリル化セルロースがセパレータとして用いられた。粘度が30mPa・sの導電性高分子液を巻回体1に含浸した。但し、実施例9の巻回体1は、実施例4と異なり、導電性高分子液の液面高さが図3に示す接続部上端A1に位置し、接続部上端A1の高さまで導電性高分子が付着するように、導電性高分子液に浸漬させた。その他の点については、実施例9は実施例4と同一構成であり、同一製造方法及び製造条件で作製された。接続部上端A1とは巻回体1の導出端面1aから2.7mmの位置である。
【0090】
(実施例10)
実施例10の固体電解コンデンサを作製した。次の点で実施例11は実施例4と共通する。即ち、実施例11の固体電解コンデンサには、実施例4と同じく、透気抵抗度が5.48[s/100mL]のフィルリル化セルロースがセパレータとして用いられた。粘度が30mPa・sの導電性高分子液を巻回体1に含浸した。但し、実施例11の巻回体1は、実施例4と異なり、導電性高分子液の液面高さが図3に示す位置A3に位置し、接続部上端A1の高さまで導電性高分子が付着するように、導電性高分子液に浸漬させた。その他の点については、実施例11は実施例4と同一構成であり、同一製造方法及び製造条件で作製された。位置A3とは巻回体1の導出端面1aから1mmの位置である。
【0091】
(実施例11)
実施例11の固体電解コンデンサを作製した。次の点で実施例11は実施例4と共通する。即ち、実施例12の固体電解コンデンサには、実施例4と同じく、透気抵抗度が5.48[s/100mL]のフィルリル化セルロースがセパレータとして用いられた。粘度が30mPa・sの導電性高分子液を巻回体1に含浸した。但し、実施例11の巻回体1は、実施例4と異なり、導電性高分子液の液面高さが図3に示す端面位置A4に位置し、端面位置A4の高さまで導電性高分子が付着するように、導電性高分子液に浸漬させた。その他の点については、実施例11は実施例4と同一構成であり、同一製造方法及び製造条件で作製された。
【0092】
(付着量試験)
実施例4並びに実施例9乃至11の巻回体1に含浸した導電性高分子液の液量を測定した。付着量は、固体電解質形成工程前後の巻回体1の重量変化により計算した。付着量は、実施例11の付着量を基準(100%)として実施例4並びに実施例9乃至10の付着量を表した。
【0093】
実施例4並びに実施例9乃至11の巻回体1に付着した導電性高分子液の重量と、導電性高分子液の浸漬液面高さとの関係を図5に示す。
【0094】
図5に示すように、導電性高分子液の浸漬液面高さ及び導電性高分子の付着高さを端面位置A4とした場合と比べて、丸棒部32の長さ方向において半分の高さ位置であるA3では、導電性高分子液の付着量が大きく改善されていることが確認された。
【0095】
また、丸棒部32と引出線31との接続部34の高さ範囲である接続部下端A2及び接続部上端A1では、導電性高分子液の浸漬液面高さ及び導電性高分子の付着高さを端面位置A4とした場合と比べて、導電性高分子液の付着量は、更に改善されていることが確認された。
【0096】
(コンデンサ特性)
実施例4並びに実施例9乃至11の固体電解コンデンサの誘電正接(tanδ)及び容量出現率(%)を測定した。その結果を図6及び7に示す。また、容量出現率(%)の測定結果を下表3に示し、誘電正接(tanδ)の測定結果を下表4に示す。誘電正接(tanδ)は、LCRメータを用いて室温下で測定した。tanδの測定周波数は120Hzであり、交流振幅は0.5Vmsの正弦波である。
【0097】
(表3)
【0098】
(表4)
【0099】
表3及び表4並びに図6及び7に示すように、tanδ及び容量出現率は、図5の導電性高分子の付着量に倣って改善されていることが確認できる。
【0100】
即ち、疎水性の粘着テープ2で巻き止められている場合、導電性高分子液の粘度を10mPa・s以上60mPa・s以下とし、巻回体1内に導電性高分子を行き渡らせ易くする。そして、丸棒部32の長さ方向において半分の高さ位置である丸棒半分位置又は巻回体1の導出端面1aから1mmの位置であるA3以上に、導電性高分子液の浸漬液面を位置させ、導電性高分子を付着させることで、導電性高分子液の付着量を増やす。これにより、固体電解コンデンサの容量出現率は更に良好になり、またtanδも良好になることが確認された。
【0101】
(実施例12乃至14)
実施例12乃至14の固体電解コンデンサを作製した。次の点で実施例12乃至14は、実施例1と共通する。即ち、実施例12乃至14の固体電解コンデンサには、実施例1と同じく、粘度が13mPa・sの導電性高分子液を巻回体1に含浸した。導電性高分子液の液面高さが図3に示す接続部下端A2に位置し、接続部下端A2の高さまで導電性高分子が付着するように、巻回体1を導電性高分子液に浸漬させた。接続部下端A2とは巻回体1の導出端面1aから2mmの位置である。
【0102】
但し、実施例12乃至14の固体電解コンデンサは、実施例1と異なり、天然セルロース製で、透気抵抗度が0.03[s/100mL]のセパレータが用いられている。実施例12乃至14は、互いに巻回体1に含浸した導電性高分子液の粘度が異なっている。実施例12は、実施例1と同じく、粘度が13mPa・sの導電性高分子液を巻回体1に含浸した。実施例13は、実施例12と異なり、粘度が25mPa・sの導電性高分子液を巻回体1に含浸した。実施例14は、実施例12と異なり、粘度が60mPa・sの導電性高分子液を巻回体1に含浸した。
【0103】
その他の点については、実施例12乃至14は、実施例1と同一構成であり、同一製造方法及び製造条件で作製された。
【0104】
また、比較例3の固体電解コンデンサを作製した。比較例3の固体電解コンデンサは、粘度が125mPa・sの導電性高分子液を巻回体1に含浸した点を除き、実施例12乃至14と同一構成であり、同一製造方法及び製造条件で作製された。
【0105】
(コンデンサ特性)
実施例12乃至14並びに比較例3の固体電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)及び容量出現率(%)を測定した。ESRと容量出現率の測定方法及び測定条件は、実施例1乃至8と同一である。その結果を、実施例12乃至14並びに比較例3で用いられた導電性高分子液の粘度と共に下表5に示す。ESRは比較例3を基準(100%)として表記した。
【0106】
(表5)
【0107】
この表5に基づき、導電性高分子液の粘度に対するESR及び容量出現率の関係を図8の散布図に示した。図8において、白色のプロットが容量出現率であり、黒色のプロットがESRである。
【0108】
表5及び図8に示すように、透気抵抗値が0.03[s/100mL]の天然セルロースを用いた場合でも、粘度が10mPa・s以上60mPa・s以下の導電性高分子液を用いて導電性高分子を形成した実施例12乃至14は、容量出現率が良好であり、またESRも良好となった。
【符号の説明】
【0109】
1 巻回体
1a 導出端面
1b 反対端面
2 粘着テープ
3 リード端子
31 引出線
32 丸棒部
33 平坦部
34 溶接部
41 外装ケース
42 封口部材
43 挿入孔
5 電極箔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8