(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052278
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】バルコニーの構造、及び、バルコニーの固定方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/00 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
E04B1/00 501B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158878
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 博之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 義人
(57)【要約】
【課題】吹き抜け部の外部側にハーフプレキャストバルコニーを活用し、適切にバルコニーを固定すること。
【解決手段】躯体200の内部の吹き抜け部210に面して、躯体200の外周に施工されるハーフプレキャストバルコニー1を活用したバルコニーの構造であって、バルコニー1と、バルコニー1と隣接する他のバルコニー1Nに跨って配置される補強筋2と、を備え、補強筋2は、現場打設コンクリートによって覆われる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体の内部の吹き抜け部に面して、前記躯体の外周に施工されるハーフプレキャストバルコニーを活用したバルコニーの構造であって、
前記バルコニーと、
前記バルコニーと隣接する他のバルコニーに跨って配置される補強筋と、
を備え、
前記補強筋は、現場打設コンクリートによって覆われる、
バルコニーの構造。
【請求項2】
前記補強筋は、バルコニー床スラブ上に配置される、
請求項1に記載のバルコニーの構造。
【請求項3】
前記補強筋は、前記他のバルコニーと隣接する隣接方向に沿って配置される、
請求項1に記載のバルコニーの構造。
【請求項4】
前記補強筋は、前記躯体の外側から内側に間隔を空けて複数本が配置される、
請求項3に記載のバルコニーの構造。
【請求項5】
前記バルコニーの隣接方向の長さは、前記吹き抜け部の前記隣接方向の長さより長い、
請求項1に記載のバルコニーの構造。
【請求項6】
前記吹き抜け部以外に面して配置されたバルコニーは、前記躯体の構造スラブによって片持ちスラブとなる、
請求項1に記載のバルコニーの構造。
【請求項7】
前記躯体の大梁と、
前記大梁の上方において、前記大梁と向かい合って配置される鋼材と、
を備え、
前記バルコニーの前記躯体側の端部は、前記大梁上に架設され、
前記鋼材は、前記大梁との間に、前記バルコニーを挟んだ状態で固定される、
請求項1に記載のバルコニーの構造。
【請求項8】
前記バルコニーが面する前記吹き抜け部の長さの中間部に配置された間柱、
を備える、請求項7に記載のバルコニーの構造。
【請求項9】
躯体の内部の吹き抜け部に面して、前記躯体の外周に施工されるハーフプレキャストバルコニーを活用したバルコニーの固定方法であって、
前記バルコニーと、前記バルコニーと隣接する他のバルコニーとに跨って補強筋を配筋し、
前記補強筋を覆って現場打ちコンクリートを打設する、
バルコニーの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルコニーの構造、及び、バルコニーの固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
躯体の外周にバルコニーを施工する際に、ハーフプレキャストバルコニーを用いて、バルコニーを施工する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、躯体の床を構成するコンクリートを打設してバルコニー床と躯体の床とを一体化して、バルコニー床を躯体に片持ち梁で架設する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、プレキャスト部材が現場へ運搬されて施工される。この場合、プレキャスト部材の重量が大きくなるため、プレキャスト部材の現場への運搬、及び、施工階への楊重に要する費用が増大する。
【0005】
そこで、ハーフプレキャストバルコニーを活用して、バルコニーを設置することが望まれる場合がある。ところが、躯体内に、例えば、屋内階段又はエレベータが配置された吹き抜け部が存在し、吹き抜け部の外部側にハーフプレキャストバルコニーを施工する場合、ハーフプレキャストバルコニーと一体化すべき躯体側の床の構造スラブが存在しない。これにより、ハーフプレキャストバルコニーの上端筋を躯体内に引き込むことができない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、吹き抜け部の外部側にハーフプレキャストバルコニーを活用し、適切にバルコニーを固定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るバルコニーの構造は、躯体の内部の吹き抜け部に面して、前記躯体の外周に施工されるハーフプレキャストバルコニーを活用したバルコニーの構造であって、ハーフプレキャストバルコニー床スラブを備えるバルコニーと、前記バルコニーと隣接する他のバルコニーに跨って配置される補強筋と、を備え、前記補強筋は、現場打設コンクリートによって覆われる。
【0008】
本発明に係るバルコニーの固定方法は、躯体の内部の吹き抜け部に面して、前記躯体の外周に施工されるハーフプレキャストバルコニーを活用したバルコニーの固定方法であって、前記バルコニーと、前記バルコニーと隣接する他のバルコニーとに跨って補強筋を配筋し、前記補強筋を覆って現場打ちコンクリートを打設する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吹き抜け部の外部側にハーフプレキャストバルコニーを活用し、適切にバルコニーを固定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、吹き抜け部以外に面して配置された、ハーフプレキャストバルコニーを活用したバルコニーの構造を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る吹き抜け部に面して配置された、ハーフプレキャストバルコニーを活用したバルコニーの構造を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るバルコニーの構造における配筋を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図3のA-A線断面図であり、X方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るハーフプレキャストバルコニーを活用したバルコニーの構造、及び、バルコニーの固定方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
[実施形態]
躯体200の外側と内側とを結ぶ方向をX方向という。X方向に直交し、躯体に向かって左右方向をY方向という。Y方向は、隣接方向である。X方向及びY方向に直交し、上下方向をZ方向という。
【0013】
図1は、吹き抜け部以外に面して配置された、ハーフプレキャストバルコニーを活用したバルコニーの構造を示す断面図である。
図2は、実施形態に係る吹き抜け部に面して配置された、ハーフプレキャストバルコニーを活用したバルコニーの構造を示す断面図である。躯体200側の外周には、複数のハーフプレキャストバルコニー1が施工されている。躯体200の外周方向に沿って隣接する他のハーフプレキャストバルコニー1(以下、「隣接ハーフプレキャストバルコニー」という。)の境界をBとする。
【0014】
躯体200は、各階の居住部の床が構造スラブ201によって構成されている。構造スラブ201は、大梁209によって支持されている。構造スラブ201は、躯体200の現場においてコンクリート打設される。
【0015】
大梁209は、構造スラブ201より下方に配置されている。大梁209は、構造スラブ201を下方から支持する。大梁209は、ハーフプレキャストバルコニー1の施工階の外壁202、及び、ハーフプレキャストバルコニー1の施工階より1階下の外壁203より内側に配置されている。
【0016】
本実施形態では、躯体200の内部には、例えば、屋内階段又はエレベータなどのような吹き抜け部210が配置されている。吹き抜け部210は、吹き抜けになっているため、躯体200内まで延びる構造スラブ201が存在しない。
【0017】
<バルコニーの構造>
図1-
図5を用いて、躯体200の内部の吹き抜け部210に面して、躯体200の外周に施工される、ハーフプレキャストバルコニー1を活用したバルコニーの構造について説明する。
図3は、実施形態に係るバルコニーの構造における配筋を示す平面図である。
図4は、
図3のA-A線断面図であり、X方向に沿った断面図である。
図5は、
図4に対応するY方向に沿った断面図である。
【0018】
躯体200の外周に施工されるハーフプレキャストバルコニー1について説明する。吹き抜け部210以外に面して施工されるハーフプレキャストバルコニー1と、吹き抜け部210に面して施工されるハーフプレキャストバルコニー1とは、同様の形状に形成されている。吹き抜け部210以外に面して施工されるハーフプレキャストバルコニー1と、吹き抜け部210に面して施工されるハーフプレキャストバルコニー1との区別を特に要しない場合、ハーフプレキャストバルコニー1とする。ハーフプレキャストバルコニー1は、プレキャスト部材を用いて躯体200に施工されるハーフプレキャストバルコニーである。ハーフプレキャストバルコニー1は、躯体200に施工される前に、工場などで製作され、現場に運び込まれる。
【0019】
図1に示すように、吹き抜け部210以外に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1は、躯体200側の外周に打設された現場打設コンクリートである構造スラブ201によって、躯体200と一体化される。
【0020】
図2に示すように、吹き抜け部210には、躯体200側の外周に構造スラブ201が存在しない。このため、吹き抜け部210に面して施工されるハーフプレキャストバルコニー1は、補強筋2又は鋼材3の少なくともどちらかを用いたバルコニーの構造によって施工される。吹き抜け部210に面して施工されるハーフプレキャストバルコニー1は、
図2において破線で示すハーフプレキャストバルコニー床スラブ上に打設された現場打設コンクリートである床スラブ211と一体化される。
【0021】
図3に示すように、本実施形態では、ハーフプレキャストバルコニー1のY方向の長さL1は、吹き抜け部のY方向の長さL2より長い。
【0022】
バルコニー床スラブ11は、ハーフプレキャストバルコニー1の床となる。バルコニー床スラブ11は、現場で打設されるコンクリートスクラブである。バルコニー床スラブ11は、XY平面と平行な平面形状に形成されている。バルコニー床スラブ11は、現場打設コンクリートによって床スラブ211と一体で形成される。現場打ちコンクリートを打設する前のハーフプレキャスト部材における床部分を、ハーフプレキャストバルコニー床スラブという。
【0023】
バルコニー床スラブ11は、X方向における躯体200側の端部11aが大梁209上に配置されている。言い換えると、バルコニー床スラブ11は、X方向における躯体200側の端部11aが大梁209によって支持されている。
【0024】
手摺は、バルコニー床スラブ11の完成後に現場で施工される。
【0025】
ハーフプレキャストバルコニー1は、下端主筋121と、連結筋122と、下端配力筋131と、上端補強筋132とを備える。吹き抜け部210以外に面して施工されるハーフプレキャストバルコニー1は、さらに上端補強筋123を備える。
【0026】
下端主筋121は、ハーフプレキャストバルコニー床スラブに配置されている。下端主筋121は、X方向に沿って配置されている。下端主筋121は、躯体200から離れた側の端部の曲げ部からZ方向である上方へ延びている。下端主筋121は、ハーフプレキャストバルコニー床スラブにおいて、Y方向に所定の間隔を空けて配置されている。
【0027】
連結筋122は、上端主筋である。連結筋122は、躯体200から離れた側がハーフプレキャストバルコニー床スラブに配置され、残りがコンクリート打設前はハーフプレキャストバルコニー床スラブから露出している。連結筋122は、コンクリート打設後は、コンクリートに覆われる。連結筋122は、X方向に沿って配置されている。連結筋122は、躯体200から離れた側の端部の曲げ部からZ方向である上方へ延びている。連結筋122の躯体200側の端部は、後述する板材31を掴むようにU字形状に形成されている。連結筋122は、ハーフプレキャストバルコニー床スラブにおいて、Y方向に所定の間隔を空けて配置されている。
【0028】
上端補強筋123は、上端に配置された、ひび割れを補強するための配筋である。上端補強筋123は、吹き抜け部210以外に面して施工されるハーフプレキャストバルコニー1に配置されて、吹き抜け部210に面して施工されるハーフプレキャストバルコニー1には配置されない。上端補強筋123は、コンクリート打設前はハーフプレキャストバルコニー床スラブから露出している。上端補強筋123は、コンクリート打設後は、コンクリートに覆われる。上端補強筋123は、躯体200側の端部が、構造スラブ201の上方まで延びている。言い換えると、現場打設コンクリートの打設後は、上端補強筋123は、バルコニー床スラブ11と構造スラブ201とに跨って配置されている。上端補強筋123が、コンクリート打設後に、構造スラブ201とともに固まることによりハーフプレキャストバルコニー1が躯体200に一体化される。
【0029】
下端配力筋131は、Y方向に沿って配置されている。下端配力筋131の長さは、1つのハーフプレキャストバルコニー1のY方向の長さより短い。下端配力筋131は、ハーフプレキャストバルコニー床スラブの下端部に配置されている。下端配力筋131は、上端補強筋132より下方に配置されている。
【0030】
上端補強筋132は、Y方向に沿って配置されている。上端補強筋132の長さは、1つのハーフプレキャストバルコニー1のY方向の長さより短い。上端補強筋132は、ハーフプレキャストバルコニー床スラブの下端部に配置されている。上端補強筋132は、下端配力筋131より上方に配置されている。上端補強筋132は、コンクリート打設前はハーフプレキャストバルコニー床スラブから露出している。上端補強筋132は、コンクリート打設後は、コンクリートに覆われる。上端補強筋132は、X方向に沿って配置されている。上端補強筋132は、ハーフプレキャストバルコニー床スラブにおいて、Y方向に所定の間隔を空けて配置されている。
【0031】
図1に示すように、吹き抜け部210以外に面して施工されるハーフプレキャストバルコニー1は、躯体200側の外周に打設された現場打設コンクリートによって構造スラブ201によって、躯体200と一体化される。吹き抜け部210以外に面して施工されるハーフプレキャストバルコニー1は、片持ちスラブである。
【0032】
図2に示すように、吹き抜け部210には、躯体200側の外周に構造スラブ201が存在しない。このため、吹き抜け部210に面して施工されるバルコニー1は、補強筋2又は鋼材3の少なくともどちらかを用いたバルコニーの構造によって躯体200に施工される。さらに、鋼材3を用いたバルコニーの構造においては、間柱4を配置してもよい。
【0033】
<補強筋>
吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1は、補強筋2を用いて躯体200に施工されてもよい。補強筋2は、Y方向に沿って配置されている。補強筋2の長さは、1つのハーフプレキャストバルコニー1のY方向の長さL1より短い。補強筋2は、Y方向に隣接ハーフプレキャストバルコニー1Nの上方まで延びている。言い換えると、補強筋2は、吹き抜け部210以外に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1と、ハーフプレキャストバルコニー1と隣接ハーフプレキャストバルコニー1Nとに跨って配置されている。補強筋2は、隣接ハーフプレキャストバルコニー1Nとの境界Bを跨いで配置されている。本実施形態では、補強筋2のハーフプレキャストバルコニー1上に位置する部分の長さ、及び、補強筋2の隣接ハーフプレキャストバルコニー1N上に位置する部分の長さは、L3である。補強筋2は、コンクリート打設前はハーフプレキャストバルコニー床スラブ上に配置されている。言い換えると、補強筋2は、コンクリート打設前はハーフプレキャストバルコニー床スラブから露出している。補強筋2は、コンクリート打設後は、現場打設コンクリートによって覆われる。補強筋2は、Y方向に沿って配置されている。補強筋2は、X方向に所定の間隔を空けて配置されている。
【0034】
<鋼材>
吹き抜け部210に面して施工されたバルコニー1は、鋼材3を用いて施工されてもよい。鋼材3は、大梁209の上方に、大梁209と向かい合って配置されている。鋼材3は、大梁209が配置されている方向であるY方向に沿って配置されている。本実施形態では、鋼材3は、吹き抜け部210の長さL2の全長に亘って配置されていてもよい。鋼材3は、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1の長さL1の全長に亘って配置されていてもよい。
【0035】
このように構成された鋼材3は、大梁209との間に、バルコニー1を挟んだ状態で固定される。鋼材3は、大梁209との間に、ハーフプレキャストバルコニー1と一体化された、現場打設コンクリートである床スラブ211を挟んだ状態で固定される。言い換えると、鋼材3は、大梁209とともに、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1上に打設された床スラブ211を上下方向に挟む。このようにして、鋼材3は、大梁209とともに、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1と一体となったバルコニー床スラブ11を抑える。
【0036】
鋼材3は、上端部に配置された上フランジ部3aを備え、下端部に配置された下フランジ部3bと、上フランジ部3aと下フランジ部3bとを接続する本体部3cとを備える。上フランジ部3a及び下フランジ部3bは、本体部3cよりX方向に張り出している。上フランジ部3aは、上方に面している。下フランジ部3bは、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1のプレキャストバルコニー床スラブ11上に配置される。本体部3cは、Z方向に延びている。
【0037】
鋼材3には、スリット部33が形成されている。スリット部33は、Z方向に沿って形成されている。スリット部33は、下フランジ部3bと本体部3cとを貫通している。スリット部33には、後述する板材31が挿通される。
【0038】
板材31は、金属材料で構成されている。板材31は、大梁209の上端部と、鋼材3とを接続する。板材31は、XY平面と平行に配置されている。板材31の下部は、大梁209の上端部に固定されている。板材31は、大梁209の上端部から上方へ延びている。板材31は、コンクリート打設後には、下部が床スラブ211によって覆われ、上部が床スラブ211から露出する。板材31の床スラブ211から露出した部分が、鋼材3のスリット部33に挿通される。言い換えると、板材31の上部は、鋼材3のスリット部33に挟まれた状態で固定されている。
【0039】
<間柱>
間柱4は、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1のY方向の中間部に配置されている。本実施形態では、間柱4は、吹き抜け部210の中間部に配置されている。本実施形態では、間柱4は、1本が配置されている。間柱4は、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1の躯体200側に配置されている。間柱4は、バルコニー1の施工階の大梁209と、及び、バルコニー1の施工階より1階上の大梁209との間に剛接合されている。
【0040】
間柱4は、吹き抜け部210に面して施工されたバルコニー1と、その上に打設された床スラブ211とが垂れる方向に作用する、大梁209のねじれを抑える。
【0041】
<バルコニーの固定方法>
次に、上記のように構成されたハーフプレキャストバルコニー1の躯体200への固定方法について説明する。以下の説明では、補強筋2、鋼材3及び間柱4を用いた固定方法を説明する。
【0042】
まず、運搬工程が実行される。運搬工程では、ハーフプレキャストバルコニー1は、躯体200に施工される前に、工場などで製作され、現場に運び込まれる。
【0043】
次に、現場において、楊重工程が実行される。楊重工程では、ハーフプレキャストバルコニー1は、地上から施工階まで吊り上げられる。そして、ハーフプレキャストバルコニー1が、躯体200の施工階の外周の施工場所に配置される。ハーフプレキャストバルコニー1の躯体200側の端部である、プレキャストバルコニー床スラブ11の躯体200側の端部11aは、大梁209上に架設される。躯体200の施工階の外周にすべてのハーフプレキャストバルコニー1が配置される。これらが、全ての施工階に対して行われる。
【0044】
次に、補強筋2の配筋工程が実行される。補強筋2の配筋工程では、補強筋2が、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1のプレキャストバルコニー床スラブ11と、隣接ハーフプレキャストバルコニー1Nのプレキャストバルコニー床スラブ11とを跨って配置される。
【0045】
次に、コンクリート打設工程が実行される。コンクリート打設工程では、ハーフプレキャストバルコニー1に現場打設コンクリートが打設されて構造スラブ201が形成される。コンクリート打設工程により、吹き抜け部210以外に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1は、構造スラブ201によって躯体200と一体化される。吹き抜け部210に面して配置されたハーフプレキャストバルコニー1は、補強筋2によって、隣接ハーフプレキャストバルコニー1Nと一体化される。
【0046】
コンクリート打設工程の実行後に、鋼材3の施工工程が実行される。鋼材3の施工工程の実行前には、大梁209に、板材31が固定されている。鋼材3の施工工程では、鋼材3は、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1上に打設された床スラブ211上に配置される。床スラブ211から露出している板材31の上部に、鋼材3のスリット部33を挿通する。鋼材3は、大梁209との間に、ハーフプレキャストバルコニー1を挟んだ状態で固定される。鋼材3の施工工程により、鋼材3と大梁209とによって、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1上に打設された床スラブ211が上下方向に挟まれる。鋼材3を用いることにより、吹き抜け部210に面して施工されたプレキャストバルコニー上に打設された床スラブ211が、大梁209に強固に固定される。
【0047】
コンクリート打設工程の実行前に予めに、間柱4の施工工程が実行される。間柱4の施工工程では、間柱4が、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1のY方向の中間部に配置される。間柱4によって、大梁209のねじれが抑えられる。
【0048】
<効果>
上述したように、本実施形態では、吹き抜け部210に面して施工されるハーフプレキャストバルコニー1は、隣接ハーフプレキャストバルコニー1Nに跨って配置され、現場打設コンクリートによって覆われる補強筋2によって一体化することができる。本実施形態によれば、吹き抜け部210の外部側にハーフプレキャストバルコニー1を適切に施工することができる。
【0049】
本実施形態では、補強筋2は、ハーフプレキャストバルコニー床スラブ11上に配置される。本実施形態によれば、現場打設コンクリートによって、吹き抜け部210に面して施工されるバルコニー同士を一体化することができる。
【0050】
本実施形態では、補強筋2は、他のハーフプレキャストバルコニー1と隣接する隣接方向、言い換えると、Y方向に沿って配置される。本実施形態によれば、吹き抜け部210に面して施工されるバルコニー同士を一体化することができる。
【0051】
本実施形態では、補強筋2は、躯体200の外側から内側に間隔を空けて、言い換えると、X方向に並んで複数本が配置される。本実施形態によれば、吹き抜け部210に面して施工されるバルコニー同士を一体化することができる。
【0052】
本実施形態では、ハーフプレキャストバルコニー1の隣接方向の長さL1は、吹き抜け部210の隣接方向の長さL2より長い。本実施形態によれば、吹き抜け部210に面して施工されるバルコニー同士を一体化することができる。
【0053】
本実施形態では、吹き抜け部210以外に面して配置されたハーフプレキャストバルコニー1は、躯体200の構造スラブ201によって片持ちスラブとなる。本実施形態によれば、現場打設コンクリートによって、吹き抜け部210以外に面して配置されたハーフプレキャストバルコニー1と、躯体200の構造スラブ201とを一体化することができる。
【0054】
本実施形態では、鋼材3と大梁209とによって、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1上に打設された床スラブ211が上下方向に挟まれる。本実施形態は、鋼材3を用いることにより、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1上に打設された床スラブ211が、大梁209に強固に固定することができる。
【0055】
本実施形態では、間柱4が、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1のY方向の中間部に配置される。本実施形態によれば、間柱4によって、大梁209のねじれを抑えることができる。
【0056】
本実施形態では、鋼材3は、大梁209が配置されている方向に沿って配置される。本実施形態によれば、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1上に打設された床スラブ211を、大梁209に強固に固定することができる。
【0057】
本実施形態では、鋼材3は、ハーフプレキャストバルコニー1が面する吹き抜け部210の長さL2の全長に亘って配置される。本実施形態によれば、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1のバルコニー床スラブ11を、大梁209により強固に固定することができる。
【0058】
本実施形態では、鋼材3は、大梁209との間に、ハーフプレキャストバルコニー1と一体化された、現場打設コンクリートである床スラブ211を挟んだ状態で固定される。本実施形態によれば、吹き抜け部210に面して施工されたハーフプレキャストバルコニー1のバルコニー床スラブ11と、床スラブ211とを、大梁209に強固に固定することができる。
【0059】
本実施形態では、間柱4は、バルコニー1が架設された、施工階の大梁209と、間柱4が上下方向に連続して設置される他階の大梁209に剛接合される。本実施形態によれば、間柱4を強固に固定することができる。
【0060】
さて、これまで本発明に係るバルコニーの構造、及び、バルコニーの固定方法について説明したが、上述した実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0061】
上記した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものを含む。さらに、上記した構成は適宜組み合わせが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において構成の種々の省略、置換または変更が可能である。
【0062】
<変形例1>
補強筋2の長さは、1つのハーフプレキャストバルコニー1のY方向の長さL1より短いものとして説明したが、これに限定されない。補強筋2の長さは、1つのハーフプレキャストバルコニー1のY方向の長さL1より長くてもよい。
【0063】
<変形例2>
鋼材3の長さは、1つのハーフプレキャストバルコニー1のY方向の長さL1と同じであるものとして説明したが、これに限定されない。鋼材3の長さは、1つのハーフプレキャストバルコニー1のY方向の長さL1より短くても、長くてもよい。鋼材3は、1つのハーフプレキャストバルコニー1に対して複数が配置されていてもよい。
【0064】
<変形例3>
間柱4は、ハーフプレキャストバルコニー1のY方向の中間部に1本が配置されているものとして説明したがこれに限定されない。間柱4は、ハーフプレキャストバルコニー1のY方向に沿って複数本が配置されていてもよい。
【0065】
<変形例4>
1つのハーフプレキャストバルコニー1のY方向の長さL1が、吹き抜け部210のY方向の長さL2より長いものとして説明したが、これに限定されない。ハーフプレキャストバルコニー1は、長さL2が長さL1より長い吹き抜け部210に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 ハーフプレキャストバルコニー
2 補強筋
3 鋼材
4 間柱
11 バルコニー床スラブ
18 手摺
19 ボルト
31 板材
121 下端主筋
122 連結筋
123 上端補強筋
131 下端配力筋
132 上端補強筋
200 躯体
201 構造スラブ
202 外壁
203 外壁
209 大梁
210 吹き抜け部
211 床スラブ
B 境界
L1 1つのハーフプレキャストバルコニーのY方向の長さ
L2 吹き抜け部のY方向の長さ
L3 補強筋のハーフプレキャストバルコニー上に位置する部分の長さ、補強筋の隣接ハーフプレキャストバルコニー上に位置する部分の長さ