(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052296
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】高純度アンヒドロ糖アルコールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 493/04 20060101AFI20240404BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240404BHJP
【FI】
C07D493/04 101D
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158902
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000165000
【氏名又は名称】群栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山下 修平
【テーマコード(参考)】
4C071
4H039
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC12
4C071DD04
4C071EE05
4C071FF03
4C071HH05
4C071KK01
4C071KK16
4H039CA42
4H039CG10
(57)【要約】
【課題】高純度のアンヒドロ糖アルコールを得ることができ、かつ生産性を向上することができるアンヒドロ糖アルコールの製造方法を提供する。
【解決手段】アンヒドロ糖アルコールの製造方法は、水素化糖を脱水縮合してアンヒドロ糖アルコールを含む粗生成物を得る脱水縮合工程と、粗生成物を、外部コンデンサー型の薄膜蒸留装置によって蒸留して、前記アンヒドロ糖アルコールの精製物を得る蒸留工程とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化糖を脱水縮合してアンヒドロ糖アルコールを含む粗生成物を得る脱水縮合工程と、
前記粗生成物を、外部コンデンサー型の薄膜蒸留装置によって蒸留して、前記アンヒドロ糖アルコールの精製物を得る蒸留工程とを含む、アンヒドロ糖アルコールの製造方法。
【請求項2】
前記蒸留工程において、前記粗生成物の蒸留を複数回行う、請求項1に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。
【請求項3】
前記脱水縮合工程では、酸触媒を用いて前記水素化糖を脱水縮合し、
アニオン交換材料を用いて前記粗生成物から前記酸触媒を除去することで粗生成物を得るアニオン交換工程をさらに含む、請求項1又は2に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。
【請求項4】
前記アニオン交換材料は、アニオン交換樹脂及びハイドロタルサイトから選択される、請求項3に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度アンヒドロ糖アルコールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、蒸留工程が、内蔵型凝縮器、原料投入ライン、蒸留残留物排出ライン、真空ライン及び蒸留液排出ラインを含む凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器内で行われるアンヒドロ糖アルコールの製造方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、水素化糖を脱水反応して、無水糖アルコールに転換させる工程と、得られた反応液を、薄膜蒸留器を用いて蒸留する工程と、得られた蒸留物を結晶化する工程とを含む無水糖アルコールの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6034959号公報
【特許文献2】特許第6122502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の製造方法よりも、アンヒドロ糖アルコールの精製物の純度を高めつつ、製造工程数が少なく、より生産性が高い、新規な製造方法が求められている。
【0006】
本開示の一態様の係る製造方法は、アンヒドロ糖アルコールの高い純度と、当該アンヒドロ糖アルコールの高い生産性を達成することができる、新規なアンヒドロ糖アルコールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るアンヒドロ糖アルコールの製造方法は、水素化糖を脱水縮合してアンヒドロ糖アルコールを含む粗生成物を得る脱水縮合工程と、前記粗生成物を、外部コンデンサー型薄膜蒸留装置によって蒸留し、前記アンヒドロ糖アルコールの精製物を得る蒸留工程とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、高純度のアンヒドロ糖アルコールを得ることができ、かつ生産性を向上することができるアンヒドロ糖アルコールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の外部コンデンサー型薄膜蒸留装置を用いた製造方法及び比較例1の内部コンデンサー型薄膜蒸留装置を用いた製造方法のそれぞれにおける留出率と純度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一態様に係るアンヒドロ糖アルコールの製造方法について、詳細に説明する。
【0011】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0012】
また、本明細書中、単に「粗生成物」と記載されている場合、特に説明がない限り、当該「粗生成物」は、アンヒドロ糖アルコールの粗生成物のことを指し、単に「精製物」と記載されている場合、特に説明がない限り、当該「精製物」はアンヒドロ糖アルコールの精製物のことを指す。
【0013】
本発明の一態様に係るアンヒドロ糖アルコールの製造方法は、水素化糖を脱水縮合してアンヒドロ糖アルコールを含む粗生成物を生成する脱水縮合工程と、粗生成物を、外部コンデンサー型の薄膜蒸留装置によって蒸留して、アンヒドロ糖アルコールの精製物を得る蒸留工程とを含む。
【0014】
〔脱水縮合工程〕
脱水縮合工程では、水素化糖を、酸触媒を用いて脱水縮合することでアンヒドロ糖アルコールを含む粗生成物を生成する。なお、脱水縮合工程は、ヒーター等の加熱手段と、真空ポンプ等の減圧手段とを備えた反応タンク(反応槽)にて行うとよい。
【0015】
(水素化糖)
水素化糖は、一般的に、糖類の還元性末端基に水素を添加して得られる化合物を指し、糖アルコールと呼ばれることもある。水素化糖は、以下の化学式で表され得る。
HOCH2(CHOH)nCH2OH(ここで、nは2~5の整数)
【0016】
水素化糖としては、例えば、炭素数4のテトリトール、炭素数5のペンチトール、炭素数6のヘキシトール、炭素数7のへプチトールが挙げられる。テトリトールとしては、例えば、エリトリトール、トレイトール等があげられる。ペンチトールとしては、例えば、アラビニトール、キシリトール、リビトール(アドニトール)等があげられる。ヘキシトールとしては、例えば、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトール、アリトール、タリトール等が挙げられる。へプチトールとしては、例えば、ボレミトール、ペルセイトール等があげられる。中でも、有用性が高い物質の原料である観点から、水素化糖はソルビトール、マンニトールであることが好ましい。
【0017】
水素化糖は、50~99重量%の濃度の水溶液として、脱水縮合工程に供され得る。脱水縮合工程前に、水素化糖の水溶液を、加熱、真空条件下において濃縮し、脱水縮合反応を行うとよい。水素化糖の水溶液を濃縮する工程を、予備脱水工程とも称する。また、水素化糖は粉末として脱水縮合工程に供されてもよい。この場合、粉末状の水素化糖を加熱して溶融してから脱水縮合工程に供されるとよい。
【0018】
(アンヒドロ糖アルコール)
アンヒドロ糖アルコールは、水素化糖を脱水縮合して得られる物質である。アンヒドロ糖アルコールは、上述の水素化糖を原料とするモノアンヒドロ糖アルコールであってもよく、ジアンヒドロ糖アルコールであってもよいが、ジアンヒドロ糖アルコールであることが好ましい。ジアンヒドロ糖アルコールとしては、例えば、ヘキシトールの脱水物であるジアンヒドロヘキシトールが好ましく、ジアンヒドロヘキシトールとしては、例えば、イソソルバイド(1,4-3,6-ジアンヒドロソルビトール)、イソマンニド(1,4-3,6-ジアンヒドロマンニトール)、イソイジド(1,4-3,6-ジアンヒドロイジトール)、及びこれらの混合物等が挙げられる。中でも、工業上の利用範囲が最も広く、産業的、医療的有用性が高い観点、及び原料となるD-グルコース、D-マンノースが、植物由来で容易に大量生産可能な観点から、アンヒドロ糖アルコールは、イソソルバイド、イソマンニドであることが好ましい。
【0019】
(酸触媒)
脱水縮合工程では、酸触媒を用いて水素化糖を脱水縮合することが好ましい。酸触媒として、一般的な無機酸及び有機酸を用いることができる。酸触媒は、単一の酸触媒であっても、混酸であってもよい。酸触媒としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、高分子状スルホン酸、リン酸、イオン交換樹脂等が挙げられる。中でも、酸性度及び価格の観点から、酸触媒は硫酸であることが好ましい。
【0020】
酸触媒の添加量の割合は、反応時間を早めて生産性を向上させる観点から、水素化糖と100重量部に対して、0.20重量部以上であることが好ましく、1.50重量部以上であることがより好ましく、2.00重量部以上であることがさらに好ましい。また、酸触媒の添加量は、副反応を防止する観点から、水素化糖100重量部に対して、5.00重量部以下であることが好ましく、4.00重量部以下であることがより好ましく、3.00重量部以下であることがさらに好ましい。
【0021】
(脱水縮合反応条件)
脱水縮合工程での反応温度は、反応性を高め、これにより、収率を高めるという観点から、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。また、脱水縮合工程での反応温度は、高温での糖ポリマーの生成を低減する観点から、160℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。
【0022】
脱水縮合工程での真空度は、アンヒドロ糖アルコールが蒸発して収量が低下することを防ぐ観点から、10mmHg以上であることが好ましく、20mmHg以上であることがより好ましく、40mmHg以上であることがさらに好ましい。また、脱水縮合工程での真空度は、反応の進行が遅くなることを防ぐ観点から、500mmHg以下であることが好ましく、400mmHg以下であることがより好ましい。
【0023】
脱水縮合工程での反応時間は、酸触媒の添加量及び反応温度に応じて適宜定められてよい。例えば、酸触媒の使用量の削減の観点、及び反応時間を十分にとり、反応率が頭打ちになることで、毎回、安定した反応率で安定した収率の粗生成物を得ることができる反応安定性の観点から、2時間以上であることが好ましく、3時間以上であることがより好ましい。また、脱水縮合工程での反応時間は、生産性の観点から、12時間以下であることが好ましく、8時間以下であることがより好ましい。
【0024】
脱水縮合工程は、撹拌しながら行うことが好ましい。
【0025】
脱水縮合工程での水素化糖からアンヒドロ糖アルコールへの転化率は、限定されるべきではないが、70~80重量%の範囲内であればよい。
【0026】
〔アニオン交換工程〕
本発明の一態様に係るアンヒドロ糖アルコールの製造方法は、アニオン交換材料を用いて前記粗生成物から前記酸触媒を除去することで、酸触媒が除去された粗生成物を得るアニオン交換工程をさらに含むことが好ましい。
【0027】
本発明の一態様に係るアンヒドロ糖アルコールの製造方法は、アニオン交換工程をさらに含む場合、脱水縮合工程、アニオン交換工程、及び蒸留工程の順で行われる。
【0028】
水溶性の酸触媒(例えば、硫酸)を水溶性の塩基(例えば、水酸化ナトリウム)で中和した場合、水溶性の中和塩(例えば、硫酸ナトリウム)が生じる。このとき生じた中和塩は、アンヒドロ糖アルコールを含む粗生成物に溶解する。このため、水溶性の中和塩はろ過によって除去することが困難であり、蒸留工程で中和塩が固形分として析出してしまうことがある。
【0029】
(アニオン交換材料)
アニオン交換材料は、アニオン交換樹脂及びハイドロタルサイトの少なくとも一方から選択することが好ましい。酸触媒の中和を、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液に代えてアニオン交換材料を用いることで、酸触媒を中和しつつ、ろ過等により首尾よく、粗生成物から除去することができる。
【0030】
アニオン交換樹脂は、強塩基性アニオン交換樹脂と弱塩基性アニオン交換樹脂と大別される。ここで、強塩基性アニオン交換樹脂は、例えば、四級アンモニウム基等のアニオン交換性基を有するイオン交換樹脂であり、強い塩基性を有していることが好ましい。また、弱塩基性アニオン交換樹脂は、例えば、二級アミノ基等のアニオン交換性基を有する樹脂であり得る。ここで、強塩基性アニオン交換樹脂は、中和塩もイオン交換することができる点において、好ましいアニオン交換樹脂である。アニオン交換樹脂は、例えば、DIAION(登録商標)シリーズ(三菱ケミカル(株)製)、AMBERLITE(登録商標)シリーズ(オルガノ(株)製)等が挙げられる。
【0031】
ハイドロタルサイトはアニオン交換性を有しており、例えば、合成ハイドロタルサイトが挙げられる。合成ハイドロタルサイトはMg-Al-CO3系ハイドロタルサイト又はMg-Al-O系ハイドロタルサイトであることが好ましい。このようなハイドロタルサイトには、例えば、キョーワード1000(協和化学工業(株)製)、キョーワード2000(協和化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0032】
アニオン交換材料は、金属のコンタミネーションを防止する観点から、アニオン交換樹脂であることがより好ましい。アニオン交換材料は、固体塩基であることが好ましい。アニオン交換樹脂は、強塩基性のアニオン交換樹脂であっても、弱塩基性のアニオン交換樹脂であってもよい。より効率的に酸触媒の除去率を高める観点から、アニオン交換樹脂は、強塩基性のアニオン交換樹脂であることが好ましい。
【0033】
アニオン交換工程では、カラム状のアニオン交換材料を用いて粗生成物を粗精製してもよいし、粗生成物とアニオン交換材料とを混合し、その後、フィルターによってアニオン交換材料を除去することによって粗生成物を粗精製してもよい。フィルターの孔径は、アニオン交換材料の粒度に応じて適宜選択すればよいが、例えば、0.45μm以上、1μm以上であり得、200μm以下、100μm以下であり得る。
【0034】
蒸留工程において固形分の析出を防止する観点から、酸触媒を除去した粗生成物は、酸触媒に由来するイオン成分の含有量が、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは、1000ppm以下、さらに好ましくは、100ppm以下であることがさらに好ましい。また、酸触媒を除去した粗生成物中の中和塩の含有量は、低ければ低いほど良いが、例えば、0ppm以上、5ppm以上、10ppm以上であり得る。
【0035】
なお、上述のアニオン交換工程後、蒸留工程前において、酸触媒を除去した粗生成物を濃縮する濃縮工程を行ってもよく、当該濃縮工程は加熱及び真空条件下にて行うとよい。
【0036】
〔蒸留工程〕
蒸留工程では、粗生成物を、外部コンデンサー型薄膜蒸留装置によって蒸留し、これにより、精製物を得るとよい。
【0037】
(外部コンデンサー型の薄膜蒸留装置)
外部コンデンサー型薄膜蒸留装置は、薄膜蒸留を行うための装置であり、限定されるものではなく、回分式単蒸留を行う薄膜蒸留装置であってもよく、連続式単蒸留を行う薄膜蒸留装置であってもよい。また、外部コンデンサー型薄膜蒸留装置は、複数の薄膜蒸留部と、複数の凝縮部とを備え、複数の薄膜蒸留部は互いに連通し、複数の凝縮部は、それぞれ1つずつ薄膜蒸留部毎に連通する装置であってもよい。この場合、1つ目の薄膜蒸留部から回収される残留物を連続的に残りの薄膜蒸留部に供給し、薄膜蒸留部のそれぞれが備える凝縮部により、精製物を回収することができる。
【0038】
例えば、外部コンデンサー型薄膜蒸留装置は、内部コンデンサー型薄膜蒸留装置と異なり、伝熱面と内部コンデンサーとの間の距離を設計する必要がない。このため、外部コンデンサー型薄膜蒸留装置は、回分式単蒸留を行う薄膜蒸留装置として大型化しやすく、生産性を向上させることができることも利点の1つである。
【0039】
例えば、外部コンデンサー型薄膜蒸留装置は、伝熱面(伝熱部)を備えた薄膜蒸留缶(薄膜蒸留部)と、薄膜蒸留缶に配管を介して連通する外部コンデンサー(凝縮部)と、外部コンデンサーにて凝縮したアンヒドロ糖アルコールを回収する留出物タンクとを備えている。また、外部コンデンサー型薄膜蒸留装置は、薄膜蒸留缶に粗生成物を供給するフィードタンクと、薄膜蒸留缶内の残留物を回収する残留物タンクとを備えているとよい。また、外部コンデンサー型薄膜蒸留装置は、フィードタンクと薄膜蒸留缶との間に、アニオン交換材料が充填されたカラムが設けられていてもよい。なお、外部コンデンサー型薄膜蒸留装置が真空ポンプを備えていることは言うまでもない。
【0040】
また、本開示の一態様に係る製造方法において、外部コンデンサー型薄膜蒸留装置は、薄膜蒸留缶内の残留物を回収する残留物タンクから、フィードタンクへと残留物を供給する循環用ラインを備えていてもよい。これにより、循環用ラインから供給される残留を、フィードタンクに新たに投入される粗生成物に混合し、薄膜蒸留缶に供給してもよい。
【0041】
薄膜蒸留缶は伝熱面とワイパーとを備えている。伝熱面は薄膜蒸留缶の内壁に設けられ、伝熱面に供給される粗生成物を加熱する面である。ワイパーは、その翼先端が伝熱面の高さ方向に沿って平行に設けられており、回転することで伝熱面に対して粗生成物を塗り広げるように押し付ける。これにより伝熱面上に粗生成物の薄膜が形成される。伝熱面において薄膜が加熱されることにより、薄膜中に含まれるアンヒドロ糖アルコールを含む揮発性成分が蒸発する。ワイパーは、限定されるものではないが、1つの伝熱面に対して複数設けられていてもよい。
【0042】
伝熱面を加熱するための外套温度、つまり、蒸留工程における加熱温度は、アンヒドロ糖アルコールの留出量を高めるという観点から、165℃以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることがさらに好ましい。また、外套温度は、アンヒドロ糖アルコールの純度を高める観点から、250℃以下であることが好ましく、240℃以下であることがより好ましく、230℃以下であることがさらに好ましい。なお、後述する実施例において、アンヒドロ糖アルコールが、230℃であっても焦げ付かないことを確認している。
【0043】
薄膜蒸留では、ワイパーによって粗生成物が薄膜蒸留缶内部の伝熱面に押し付けられるとき、粗生成物に結晶化した塩の様な固形物が含まれていると、粗生成物の流れに乱れが生じ薄膜が不均一になる。より具体的には、固形物に起因して、粗生成物の薄膜において、局所的に膜厚の厚い部分が生じる。このため、当該膜厚の厚い部分に所望の蒸発条件を満たす熱量を供給できなくなり、当該部分の粗生成物を十分に蒸発させることができなくなる。結果として、伝熱面上において粗生成物が加熱される時間が長くなり、焦げ付きが発生することがある。粗生成物の焦げ付きは、精製物の収率や純度の低下のみならず、装置のメンテナンス性にも悪影響を及ぼす恐れがある。本開示の一態様に係る製造方法は、上述のアニオン交換材料を用いて酸触媒を除去することで、伝熱面上に固形物が析出することを防止でき、これにより、焦げ付きの発生を防ぎ、装置のメンテナンス性に優れることも利点の1つである。
【0044】
薄膜蒸留缶における粗生成物の伝熱面は、ガラス製又はステンレス製であることが好ましい。薄膜蒸留缶における粗生成物の伝熱面への単位面積・時間当たりの供給量は、伝熱面の熱伝導率に応じて適宜設定することができる。薄膜蒸留缶における粗生成物の伝熱面への単位面積・時間当たりの供給量は、単位時間当たりの処理量を高めるという観点から、伝熱面がガラス製である場合は10kg/h・m2以上であることが好ましく、15kg/h・m2以上であることがより好ましく、20kg/h・m2以上であることがさらに好ましい。また、薄膜蒸留缶における粗生成物の伝熱面への単位面積・時間当たりの供給量は、同様の観点から、伝熱面がステンレス製である場合は70kg/h・m2以上であることが好ましく、80kg/h・m2以上であることがより好ましく、110kg/h・m2以上であることがさらに好ましい。また、粗生成物の外部コンデンサー型薄膜蒸留装置への供給量は、留出率を高めるという観点から、伝熱面がガラス製である場合は100kg/h・m2以下であることが好ましく、90kg/h・m2以下であることがより好ましく、80kg/h・m2以下であることがさらに好ましい。また、粗生成物の外部コンデンサー型薄膜蒸留装置への供給量は、同様の観点から、伝熱面がステンレス製である場合は150kg/h・m2以下であることが好ましく、145kg/h・m2以下であることがより好ましく、140kg/h・m2以下であることがさらに好ましい。伝熱面への単位面積・時間当たりの供給量が、伝熱面がガラス製である場合は10kg/h・m2以上、100kg/h・m2以下の範囲内において、伝熱面がステンレス製である場合は70kg/h・m2以上、150kg/h・m2以下の範囲内においてより低い程、アンヒドロ糖アルコールの高い留出率を達成することができる。伝熱面への単位面積・時間当たりの供給量は、フィードタンクからの粗生成物の流量(流速)により設計すればよい。
【0045】
また、アンヒドロ糖アルコールの留出率は、粗生成物の伝熱面への単位面積・時間当たりの供給量と、ワイパーの回転速度などを設計することで調整してもよい。1回の精製における留出率は、例えば、精製物の純度を高めるという観点から、80重量%以下であればよく、75重量%以下であることが好ましい。また、アンヒドロ糖アルコールの留出率は、収率を高めるという観点から、50重量%以上であればよく、55重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。
【0046】
蒸留工程において、粗生成物の蒸留を複数回のバッチを、フィードタンクに連続的に投入することで行ってもよい。例えば、蒸留工程において複数のバッチに分けて粗生成物を蒸留する場合、1回目のバッチにおいて高い純度を保つことができる留出率までアンヒドロ糖アルコールを留出させ、2回目のバッチを、1回目のバッチの残渣とともに1回目よりも苛烈な条件にて蒸留工程を行うとよい。これにより、粗生成物に含まれるアンヒドロ糖アルコールをほぼすべて留出させることができる。また、2回目のバッチにおける蒸留工程を適切に行えば、2回目のバッチの留出物には1回目のバッチで投入した粗生成物よりもむしろ高い含有率のアンヒドロ糖アルコールを含せることができる。これを再度、新たな追加バッチと混合して蒸留工程を行うことで、高い純度を保ちつつ、事実上の高留出率を達成することが可能である。例えば、蒸留工程を1バッチ分行う毎に、60~75重量%の範囲内において徐々に留出率を高めるべく、外套温度を高くしたり、伝熱面への単位面積・時間当たりの供給量を少なくしたり、ワイパーの回転速度を速くしたりすることで、後続する追加バッチの蒸留工程をより苛烈な条件にて行なうとよい。
【0047】
真空ポンプによる真空度は、限定されるべきではないが、精製物の純度を高めるという観点から、1.5mmHg以上であることが好ましく、2.0mmHg以上であることがより好ましく、3.0mmHg以上であることがさらに好ましい。また、真空度は、留出量を高めるという観点から、20mmHg以下であることが好ましく、15mmHg以下であることがより好ましく、10mmHg以下であることがさらに好ましい。
【0048】
外部コンデンサーは、薄膜蒸留缶の伝熱面から蒸発したアンヒドロ糖アルコールの精製物を冷却し、凝縮させることで精製物を留出物タンクに回収する。
【0049】
フィードタンクは、薄膜蒸留缶に供給するための粗生成物を貯留するタンクである。フィードタンクは、フィードポンプによって薄膜蒸留缶に供給する粗生成物の流量を調節することができればよい。例えば、アニオン交換工程においてフィルターを用いてアニオン交換材料を濾別しない場合、フィードタンクは、上述のアニオン交換材料が充填されたカラムを介し、上述の脱水縮合工程を行う反応槽と連通していてもよい。これにより、反応槽に得られた未中和の粗生成物を、カラムを経由させることでアニオン交換工程を行いつつ、フィードタンクに供給できる。また、フィードタンク自身が、加熱手段と減圧手段とを備えていれば、当該フィードタンクを、脱水縮合工程を行う反応槽として用いてよく、この場合、フィードタンクと薄膜蒸留缶との間には、アニオン交換工程を行うためのカラムが設けられていてもよい。
【0050】
残留物タンクは、薄膜蒸留缶内の残留物を回収する残留物タンクである。
【0051】
本発明の一態様に係るアンヒドロ糖アルコールの製造方法の収率は、60重量%以上であることが好ましく、65重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましい。
【0052】
以上のように説明した外部コンデンサー型薄膜蒸留装置には、限定されるべきではないが、例えば、ワイプレン等が挙げられる。なお、ワイプレンは株式会社神鋼環境ソリューションの登録商標である。
【0053】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係るアンヒドロ糖アルコールの製造方法は、水素化糖を脱水縮合してアンヒドロ糖アルコールを含む粗生成物を得る脱水縮合工程と、前記粗生成物を、外部コンデンサー型薄膜蒸留装置によって蒸留して、前記アンヒドロ糖アルコールの精製物を得る蒸留工程とを含んでいる。
【0054】
これにより、高純度のアンヒドロ糖アルコールを得ることができ、かつ生産性を向上することができる。
【0055】
また、本開示の態様2に係るアンヒドロ糖アルコールの製造方法は、上記態様1において、前記蒸留工程において、前記粗生成物の蒸留を複数回行うとよい。
【0056】
これにより、高い純度を保ちつつ、事実上の高留出率を達成することが可能である。
【0057】
また、本開示の態様3に係るアンヒドロ糖アルコールの製造方法は、上記態様1又は2において、前記脱水縮合工程では、酸触媒を用いて前記水素化糖を脱水縮合し、アニオン交換材料を用いて前記粗生成物から前記酸触媒を除去することで粗生成物を得るアニオン交換工程をさらに含んでいるとよい。
【0058】
これにより、薄膜蒸留装置が備える伝熱面上に固形物が析出することを防止でき、これにより、焦げ付きの発生を防ぐことができる。よって、アンヒドロ糖アルコールの精製物の純度を高めることができ、装置のメンテナンス性を高めることができる。
【0059】
また、本開示の態様4に係るアンヒドロ糖アルコールの製造方法は、上記態様3において、前記アニオン交換材料は、アニオン交換樹脂及びハイドロタルサイトから選択すればよい。
【0060】
これにより、酸触媒が十分に除去されたアンヒドロ糖アルコールの粗生成物を得ることができる。
【0061】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0062】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0063】
〔実施例1〕
<(1)アニオン交換樹脂による酸触媒の除去>
撹拌装置を備えた反応容器(2Lフラスコ)にソルビトール70重量%水溶液(物産フードサイエンス株式会社製)3480gを入れ、減圧下、120℃まで昇温することでソルビトール水溶液の濃縮を行った。濃縮後、96重量%硫酸(関東化学株式会社製)46.3gを加え、120℃、60mmHgの条件で5時間撹拌した。なお、硫酸は、その実重量が1.8重量%になるようにソルビトールに対して添加した。その結果、未中和反応液が1900g得られた。この未中和反応液をHPLC watersAlliance2695(日本ウォーターズ株式会社製)で測定し、イソソルバイドの含有率をHPLC面積百分率法にて算出したところ、74.7重量%であった。この未中和反応液881gにイオン交換水97.9gを加えることで90重量%に希釈した。次いで、希釈した未中和反応液にアニオン交換樹脂DIAION(登録商標)PA408(三菱ケミカル株式会社製)を未中和反応液の約3倍に相当する量(2650g)を投入して10分間室温で撹拌し、中和された反応液を得た。反応液のpHから、酸触媒が十分に除去されていることを確認した。次いで、No.2のろ紙で反応液を吸引ろ過し、続いて、洗浄のためのイオン交換水をろ過したアニオン交換樹脂に少量通液した。得られたろ液を濃縮することで、粗イソソルバイド生成物を650g得た。得られた粗イソソルバイド生成物のギ酸濃度を、イオンクロマトグラフィー IC-2001(東ソー株式会社製)により定量した。
【0064】
<(2)外部コンデンサー型薄膜蒸留装置による粗イソソルバイド生成物の精製>
(1)で調製した粗イソソルバイド生成物約440gを外部コンデンサー型薄膜蒸留装置のフィードタンクに投入し、伝熱面(ガラス製、面積:0.034m
2)を備えた薄膜蒸留缶を外套温度180℃、真空度5mmHgの条件に調整した。次いで、粗イソソルバイド生成物を流速24kg/h・m
2の条件で薄膜蒸留缶に供給し、これにより精製処理を行った。なお、薄膜蒸留缶の外部コンデンサーにより冷却されたイソソルバイドの精製物は留出物タンクに回収し、薄膜蒸留缶内部の残留物は、残留物タンクに回収した。より実機に近い伝熱面の面積当たりの供給量を達成するため、精製物と残留物とのうち、残留物を再びフィードタンクに投入し、精製処理を行なった。
図1に示す留出率に合わせて残留物の再投入と、精製物の回収とを繰り返し、留出率が約70%になるまでこの操作を繰り返した。精製物の回収を繰り返すごとに当該精製物中のイソソルバイドの純度をHPLC百分率法により求め、各回の精製物の重量及び純度から、薄膜蒸留におけるイソソルバイドの留出率と累積の純度との関係を調べた。
【0065】
〔比較例1〕
<(1)NaOHによる酸触媒の除去>
実施例1の(1)で得られた未中和反応液を443g分取し、そこに40重量%NaOH水溶液を20.6g加え、中和された反応液を得た。なお、40重量%NaOH水溶液は関東化学株式会社製の水酸化ナトリウムを用いて調製した。次いで、反応液のpHから酸触媒が中和されたことを確認した。その後、反応液を減圧下80℃で30分間加熱することで水分を除去し、粗イソソルバイド生成物を451g得た。また、イオンクロマトグラフィーによりこの粗生成物中のギ酸濃度を定量した。
【0066】
<(2)内部コンデンサー型薄膜蒸留装置による粗イソソルバイド生成物の精製>
実施例1の(1)で調製した粗イソソルバイド生成物約440gを内部コンデンサー型薄膜蒸留装置のタンクに投入し、実施例1の(2)と同様の精製条件で、薄膜蒸留におけるイソソルバイドの留出率と累積の純度の関係を調べた。
【0067】
実施例1の(1)及び比較例1の(1)の粗イソソルバイド生成物のギ酸含有量を表1に示す。アニオン交換樹脂で酸触媒を中和した場合、ギ酸濃度は9.78ppmである一方で、40重量%水酸化ナトリウム水溶液で中和した場合は2070ppmであった。このことから、アニオン交換樹脂を用いることで効果的にギ酸を除去できることが判明した。
【0068】
イソソルバイド中のギ酸を主とする酸化生成物は着色の原因や重合阻害の原因になることが知られている。アニオン交換樹脂によってギ酸を効果的に除去することで、イソソルバイドのアプリケーションに深刻な影響を及ぼす可能性を減少させることが可能である。
【0069】
【0070】
また、実施例1の(1)及び比較例1の(1)のS元素の含有率を表2に示す。粗イソソルバイド生成物中のS元素は触媒に使用した硫酸に由来するものである。表2に示す結果からアニオン交換樹脂によりほとんどの硫酸が除去されている一方で、水酸化ナトリウムによる中和では中和塩を除去できないため、添加した硫酸が多量に残存していることが確認された。
【0071】
【0072】
表2に示す、実施例1及び比較例1の対比から、アニオン交換樹脂を用いた実施例1の製造方法では塩の原因となる硫酸が非常に効率よく除去されている。また、伝熱面上における塩の析出が認められず、装置のメンテナンス性への悪影響を回避することができるが確認された。
【0073】
実施例1の(2)及び比較例1の(2)の製造方法(薄膜蒸留法)におけるイソソルバイドの留出率と累積の純度の関係を表3及び
図1に示す。
図1は、実施例1の外部コンデンサー型の薄膜蒸留装置を用いた製造方法、及び比較例1の内部コンデンサー型の薄膜蒸留装置を用いた製造方法のそれぞれにおけるイソソルバイドの留出率と純度との関係を示すグラフであり、表3は、
図1のグラフに示す留出率と純度の実測値である。
【0074】
【0075】
外部コンデンサー型の薄膜蒸留装置と、内部コンデンサー型の薄膜蒸留装置とのいずれの場合であっても、イソソルバイドの留出率が上がるにつれてイソソルバイドの純度は低下し、特にソルビトールからイソソルバイドが得られる反応率に相当する75重量%付近に近づくと急激に純度が低下した。実施例1及び比較例1の両者を比較した場合、留出率70重量%付近までは外部コンデンサー型の薄膜蒸留装置による製造方法の方がイソソルバイドの純度が高く、その後は内部コンデンサー型の薄膜蒸留装置による製造方法の方が、イソソルバイドの純度がやや高い結果となった。
【0076】
外部コンデンサー型薄膜蒸留装置は、伝熱面を備えた薄膜蒸留缶とコンデンサー(凝縮部)との距離が離れている。留出率が比較的低い条件において、外部コンデンサー型薄膜蒸留装置の方が高い理由は、イソソルバイドとの共沸物のような不純物がコンデンサーに到達する前に装置におけるラインの配管内面で凝縮し、薄膜蒸留缶の残渣に流入すると推察される。一方で、留出率が高くなると、粗イソソルバイド生成物中のイソソルバイドの含有量は少なくなる。このため、イソソルバイドの蒸発が起こりにくくなり、薄膜蒸留缶における粗イソソルバイド生成物の温度は上がりやすくなる。この場合、伝熱面を備えた薄膜蒸留缶とコンデンサーとの距離が離れている外部コンデンサー型薄膜蒸留装置では、薄膜蒸留缶内部における蒸気の濃度が高くなりやすい。このため、より一層、イソソルバイドの蒸発が起こりにくくなり、薄膜蒸留缶内部における粗イソソルバイド生成物の温度がより高くなる。一般的に、薄膜蒸留では高温で処理すると留出物の純度が低下することが知られている。このことを鑑みるに、高い留出率において内部コンデンサー型薄膜蒸留装置を用いる方が高い純度を得られることになったと推察される。
【0077】
一見、外部コンデンサー型の薄膜蒸留装置の留出率と純度の関係の様な場合、内部コンデンサー型の薄膜蒸留装置よりも高い純度を保とうとすると、生産量で劣ってしまうように思われるかもしれない。しかしながら、実際には連続的に薄膜蒸留処理を行うことでこの欠点は克服することができる。すなわち、1回目のバッチにおいて高い純度を保つことができる留出率までイソソルバイドを留出させ、2回目のバッチを、1回目のバッチの残渣とともに、1回目よりも苛烈な条件で薄膜蒸留にかける。これにより、粗イソソルバイド生成物に含まれるイソソルバイドをほぼすべて留出させることができる。2回目の薄膜蒸留条件を適切に調整すれば、2回目の留出物には1回目のバッチで投入した粗生成物よりもむしろ高い含有率のイソソルバイドが含まれる。これを再度、新たな追加バッチと混合して外部コンデンサー方式の薄膜蒸留にかけることで、高い純度を保ったまま事実上の高留出率を達成することが可能である。よって、外部コンデンサー型薄膜蒸留装置の方が、内部コンデンサー型薄膜蒸留装置よりも、商業的に有利である。
【0078】
〔実施例2〕
<(1)アニオン交換樹脂による酸触媒の除去>
撹拌装置を備えた50Lステンレス製反応器を用い、スケールアップした以外は、実施例1の(1)と同様の操作で脱水縮合及びアニオン交換を行い、ろ過、濃縮することで、粗イソソルバイド生成物46kgを得た。
【0079】
<(2)外部コンデンサー型薄膜蒸留装置による粗イソソルバイド生成物の精製>
実施例2の(1)で調製した粗イソソルバイド生成物2.4kgを外部コンデンサー型薄膜蒸留装置のフィードタンクに投入し、伝熱面(ステンレス製、面積:0.11m2)を備えた薄膜蒸留缶を外套温度230℃、真空度5mmHgの条件に調整した。次いで、粗イソソルバイド生成物を流速136kg/h・m2の条件で薄膜蒸留缶に供給し、これにより精製処理を行った。なお、薄膜蒸留缶の外部コンデンサーにより冷却されたイソソルバイドの精製物は留出物タンクに回収し、薄膜蒸留缶内部の残留物は、残留物タンクに回収した。なお、本実施例では実施例1で用いた外部コンデンサー型薄膜蒸留装置よりも大きい外部コンデンサー型薄膜蒸留装置を用いたため、蒸留は1回のみ行った。精製処理実施後、外部コンデンサー型薄膜蒸留装置を熱水で洗浄し、付着物の有無を確認した。
【0080】
実施例2の精製処理の結果、留出率が65.8%であり、純度がHPLC面積99.1HPLC面積%であるイソソルバイドが得られ、残留液も問題なく流下した。精製処理後、熱水で装置を完全に洗浄することができ、装置内部に焦げ付きの様な目立った付着物は認められなかった。また、残留液タンクを分解して内部を確認したが、こちらでも付着物は認められなかった。すなわち、イソソルバイドは、外套温度が230℃であっても、焦げ付きは発生せず、また、熱分解しないことを確認することができた。