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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052308
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】光学シート
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20240404BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240404BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20240404BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240404BHJP
   G02C 7/12 20060101ALI20240404BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G02B1/14
B32B27/00 B
G02B5/26
G02B5/30
G02C7/12
G02C7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158944
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】愛須 淳平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達志
【テーマコード(参考)】
2H006
2H148
2H149
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2H006BE01
2H006BE04
2H006BE05
2H148FA05
2H148FA09
2H148FA13
2H148FA15
2H148FA24
2H149AA23
2H149AB15
2H149BA02
2H149FC03
2H149FC07
2H149FC10
2H149FD12
2H149FD14
2K009AA15
2K009CC24
2K009CC33
2K009CC35
2K009CC42
2K009DD02
4F100AK25A
4F100AK45B
4F100AK45D
4F100AK51A
4F100AK52A
4F100AT00B
4F100AT00D
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA06
4F100BA07
4F100CA02A
4F100CA05A
4F100CA07A
4F100CA07B
4F100CA07D
4F100GB71
4F100JB12A
4F100JJ03
4F100JK06
4F100JK09
4F100JK12
4F100JK17
4F100JL09
4F100JN06
4F100JN08C
4F100JN10C
4F100JN28
(57)【要約】
【課題】機能性を備える光学シートにおいて、優れた加工性と耐摩耗性との両立が図られた光学シートを提供すること。
【解決手段】本発明の光学シート15は、機能性基板11と、コート層12を備え、コート層12は、ラジカル重合性基を有するソフト成分と、カチオン重合性基を有するハード成分とを含む樹脂組成物の半硬化物で構成され、光学シート15を、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、コート層12側から紫外線を1000時間照射した後において、光学シート15は、YIの変化値が1.0未満であり、光学シート15を、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に、曲率半径120mmRのものに成形し、その後、25℃に冷却した際に、コート層12にクラックが認められず、光学シート15を、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却した後、ワイパーラボ試験を施した後において、光学シート15のヘイズ値が5.0未満であることを満足する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性基板と、該機能性基板の少なくとも一方の面側に最外層として設けられたコート層を備える光学シートであって、
前記コート層は、ラジカル重合性基を有するソフト成分と、カチオン重合性基を有するハード成分とを含む樹脂組成物の半硬化物で構成され、
当該光学シートは、下記の要件A~Cを満足することを特徴とする光学シート。
要件A:当該光学シートを、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、JIS K 7350-4の表3-A法-サイクルNo.1に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて前記コート層側から紫外線を1000時間照射した後において、当該光学シートは、JIS K 7373によって規定されるYIの変化値が1.0未満であること。
要件B:当該光学シートを、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に、曲率半径120mmRの湾曲形状をなすものに成形し、その後、25℃に冷却した際に、前記コート層にクラックが認められないこと。
要件C:当該光学シートを、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、ECE43に応じたワイパーラボ試験を施した後において、当該光学シートのヘイズ値が5.0未満であること。
【請求項2】
前記ラジカル重合性基は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基のうちの少なくとも1種である請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記ソフト成分は、ウレタン結合を有する主鎖に、側鎖としての前記ラジカル重合性基が1つまたは2つ連結したものである請求項2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記カチオン重合性基は、環状エーテル基、ビニルエーテル基のうちの少なくとも1種である請求項1に記載の光学シート。
【請求項5】
前記ハード成分は、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体からなる主鎖に、側鎖として前記カチオン重合性基が複数連結したものである請求項4に記載の光学シート。
【請求項6】
前記樹脂組成物は、さらに前記ラジカル重合性基と前記カチオン重合性基との双方を備えるモノマー成分を含む請求項1に記載の光学シート。
【請求項7】
前記機能性基板は、第1基材および第2基材と、前記第1基材と前記第2基材との間に配置された、偏光層およびハーフミラー層のうちの少なくとも一方とを備えるものである請求項1に記載の光学シート。
【請求項8】
当該光学シートは、収納体が備える窓部を覆うように設けられるカバー部材として用いられる請求項7に記載の光学シート。
【請求項9】
当該光学シートは、レンズの表側を被覆するように設けられるものである請求項7に記載の光学シート。
【請求項10】
当該光学シートは、車両が備える風防板として用いられる請求項7に記載の光学シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼鏡、サングラスのようなアイウエアが備えるレンズとして、例えば、その意匠性の向上を図ることを目的に、または、偏光性を備えるものとすることを目的に、特定の波長領域の光(可視光)を選択的に反射するハーフミラー層を有する光学シート、または、偏光性を備える偏光子を有する光学シートを、それぞれ、その表面に有するものが提案されている。
【0003】
すなわち、レンズに対して機能性を付与することを目的に、レンズとして、機能性を備える光学シートが、その表面に貼付されている構成をなすものが提案されている。
【0004】
このような光学シートを表面に有するレンズは、例えば、上述した構成をなす光学シートを平面視で平板状をなすものとして用意し、この光学シートの両面に保護フィルムを貼付した状態で、平面視で円形状等の所定の形状に、光学シートを打ち抜く。その後、この光学シートに加熱下で熱曲げ加工を施すことで、熱曲げにより湾曲形状とされた、湾曲凸面と湾曲凹面とを備える湾曲光学シートとする。そして、湾曲光学シートから、保護フィルムを剥離させた後に、湾曲形状とされた凹部を備える金型に、金型の凹部と湾曲光学シートの凸部とが当接するようにして、湾曲光学シートを吸着させた状態で、インサート射出成形法を用いて、この湾曲光学シートの凹面に樹脂材料を主材料として構成される樹脂層(成形層)を形成することにより製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、このような機能性を備える光学シートは、レンズの表面に有するものとする場合の他、自動車に搭載して用いられるヘッドアップディスプレイ装置が備える収納体の窓部を覆うように設けられるカバー部材として用いることが提案されている。
【0006】
このような収納体が備える窓部を覆うように、光学シートをカバー部材として窓部に対して配置する場合、光学シートは、レンズの表面に有するものとする場合と同様に、熱曲げにより湾曲形状とされた湾曲光学シートとされる。
【0007】
このような光学シートでは、前述の通り、熱曲げにより湾曲形状とされた湾曲光学シートとされることから、光学シートは、優れた加工性(成形性)を有することが求められる。さらに、光学シートは、レンズやヘッドアップディスプレイ装置において、表側に配置し、人やものが接触し得る位置に設けられることから、優れた耐摩耗性を有することが求められる。
【0008】
そのため、光学シートとして、優れた加工性と耐摩耗性との両立が図られたものの開発が求められているのが実情であった。
【0009】
なお、このような要求は、光学シートを、レンズやヘッドアップディスプレイ装置に適用する場合に限らず、例えば、光学シートを、バイクのような車両が備える風防板等に適用する場合においても同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009-294445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、機能性を備える光学シートにおいて、優れた加工性と耐摩耗性との両立が図られた光学シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は、下記(1)~(10)に記載の本発明により達成される。
(1) 機能性基板と、該機能性基板の少なくとも一方の面側に最外層として設けられたコート層を備える光学シートであって、
前記コート層は、ラジカル重合性基を有するソフト成分と、カチオン重合性基を有するハード成分とを含む樹脂組成物の半硬化物で構成され、
当該光学シートは、下記の要件A~Cを満足することを特徴とする光学シート。
要件A:当該光学シートを、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、JIS K 7350-4の表3-A法-サイクルNo.1に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて前記コート層側から紫外線を1000時間照射した後において、当該光学シートは、JIS K 7373によって規定されるYIの変化値が1.0未満であること。
要件B:当該光学シートを、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に、曲率半径120mmRの湾曲形状をなすものに成形し、その後、25℃に冷却した際に、前記コート層にクラックが認められないこと。
要件C:当該光学シートを、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、ECE43に応じたワイパーラボ試験を施した後において、当該光学シートのヘイズ値が5.0未満であること。
【0013】
(2) 前記ラジカル重合性基は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基のうちの少なくとも1種である上記(1)に記載の光学シート。
【0014】
(3) 前記ソフト成分は、ウレタン結合を有する主鎖に、側鎖としての前記ラジカル重合性基が1つまたは2つ連結したものである上記(1)または(2)に記載の光学シート。
【0015】
(4) 前記カチオン重合性基は、環状エーテル基、ビニルエーテル基のうちの少なくとも1種である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光学シート。
【0016】
(5) 前記ハード成分は、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体からなる主鎖に、側鎖として前記カチオン重合性基が複数連結したものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の光学シート。
【0017】
(6) 前記樹脂組成物は、さらに前記ラジカル重合性基と前記カチオン重合性基との双方を備えるモノマー成分を含む上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光学シート。
【0018】
(7) 前記機能性基板は、第1基材および第2基材と、前記第1基材と前記第2基材との間に配置された、偏光層およびハーフミラー層のうちの少なくとも一方とを備えるものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の光学シート。
【0019】
(8) 当該光学シートは、収納体が備える窓部を覆うように設けられるカバー部材として用いられる上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光学シート。
【0020】
(9) 当該光学シートは、レンズの表側を被覆するように設けられるものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光学シート。
【0021】
(10) 当該光学シートは、車両が備える風防板として用いられる上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光学シート。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、機能性基板と、この機能性基板の少なくとも一方の面側に最外層として設けられたコート層を備える光学シートにおいて、コート層は、ラジカル重合性基を有するソフト成分と、カチオン重合性基を有するハード成分とを含む樹脂組成物の半硬化物で構成され、さらに、この光学シートは、下記の要件Bを満足する。そのため、この光学シートを、熱曲げにより湾曲形状とされた湾曲光学シートとした際に、この湾曲光学シートのコート層における、クラックの発生が的確に抑制または防止されていると言える。したがって、この光学シートは、前記樹脂組成物が半硬化物で構成される際には、優れた加工性を発揮する。
【0023】
さらに、この光学シートは、下記の要件AおよびCを満足する。したがって、光学シートが熱曲げにより湾曲形状とされた湾曲光学シートとした後に、半硬化物を硬化させて、樹脂組成物の硬化物でコート層を構成することで、湾曲光学シートは、以下のような機能が付与されているものであると言うことができる。すなわち、この湾曲光学シートを、例えば、レンズの表側を被覆するように設けたり、ヘッドアップディスプレイの収納体が備える窓部を覆うように設けられるカバー部材として用いたり、さらには、車両が備える風防板として用いた際に、湾曲光学シートは、光学シートとしての機能を長期に亘って発揮しつつ、優れた耐摩耗性が付与されているものであると言える。したがって、この光学シートは、前記樹脂組成物が硬化物で構成される際には、優れた耐摩耗性を発揮する。
【0024】
要件A:当該光学シートを、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、JIS K 7350-4の表3-A法-サイクルNo.1に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて前記コート層側から紫外線を1000時間照射した後において、当該光学シートは、JIS K 7373によって規定されるYIの変化値が1.0未満であること。
【0025】
要件B:当該光学シートを、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に、曲率半径120mmRの湾曲形状をなすものに成形し、その後、25℃に冷却した際に、前記コート層にクラックが認められないこと。
【0026】
要件C:当該光学シートを、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、ECE43に応じたワイパーラボ試験を施した後において、当該光学シートのヘイズ値が5.0未満であること。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の光学シートを湾曲形状とした湾曲光学シートを有するレンズを備えるサングラスの実施形態を示す斜視図である。
図2】本発明の光学シートを湾曲形状とした湾曲光学シートを有するレンズの製造方法を説明するための模式図である。
図3】本発明の光学シートの第1実施形態を示す縦断面図である。
図4】本発明の光学シートの第2実施形態を示す縦断面図である。
図5】本発明の光学シートを湾曲形状とした湾曲光学シートを、自動車のヘッドアップディスプレイを構成するカバー部材に適用した場合の実施形態を示す側面図である。
図6図5中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大断面図である。
図7】本発明の光学シートを湾曲形状とした湾曲光学シートを、風防板に適用した場合の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の光学シートを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0029】
本発明の光学シートは、機能性基板と、該機能性基板の少なくとも一方の面側に最外層として設けられたコート層を備えるものであり、前記コート層は、ラジカル重合性基を有するソフト成分と、カチオン重合性基を有するハード成分とを含む樹脂組成物の半硬化物で構成され、当該光学シートは、下記の要件A~Cを満足する。
【0030】
要件A:当該光学シートを、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、JIS K 7350-4の表3-A法-サイクルNo.1に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて前記コート層側から紫外線を1000時間照射した後において、当該光学シートは、JIS K 7373によって規定されるYIの変化値が1.0未満であること。
【0031】
要件B:当該光学シートを、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に、曲率半径120mmRの湾曲形状をなすものに成形し、その後、25℃に冷却した際に、前記コート層にクラックが認められないこと。
【0032】
要件C:当該光学シートを、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、ECE43に応じたワイパーラボ試験を施した後において、当該光学シートのヘイズ値が5.0未満であること。
【0033】
このように、本発明では、光学シートは、前記の通り、要件Bを満足する。そのため、この光学シートを、熱曲げにより湾曲形状とされた湾曲光学シートとした際に、この湾曲光学シートのコート層における、クラックの発生が的確に抑制または防止されていると言える。したがって、この光学シートは、前記樹脂組成物が半硬化物で構成される際には、優れた加工性を発揮する。
【0034】
さらに、本発明の光学シートは、要件AおよびCを満足する。したがって、光学シートが熱曲げにより湾曲形状とされた湾曲光学シートとした後に、半硬化物を硬化させて、樹脂組成物の硬化物でコート層を構成することで、湾曲光学シートは、以下のような機能が付与されているものであると言うことができる。すなわち、この湾曲光学シートを、例えば、レンズの表側を被覆するように設けたり、ヘッドアップディスプレイの収納体が備える窓部を覆うように設けられるカバー部材として用いたり、さらには、車両が備える風防板として用いた際に、湾曲光学シートは、光学シートとしての機能を長期に亘って発揮しつつ、優れた耐摩耗性が付与されているものであると言える。したがって、この光学シートは、前記樹脂組成物が硬化物で構成される際には、優れた耐摩耗性を発揮する。
【0035】
本発明の光学シートを、加熱下における熱曲げ加工を施すことで得られる、湾曲形状とされた湾曲光学シートは、コート層を構成する樹脂組成物を硬化物とした後に、例えば、レンズの表側を被覆するように設けられたり、ヘッドアップディスプレイの収納体が備える窓部を覆うように設けられるカバー部材、さらには、車両が備える風防板等として使用される。
【0036】
そこで、以下では、まず、本発明の光学シートを説明するのに先立って、本発明の光学シートが、湾曲形状とした湾曲光学シートとされ、この湾曲光学シートが、レンズの表側を被覆するように設けられたものとして用いられているサングラスについて説明する。
【0037】
<サングラス>
図1は、本発明の光学シートを湾曲形状とした湾曲光学シートを有するレンズを備えるサングラスの実施形態を示す斜視図である。なお、図1において、サングラスを使用者の頭部に装着した際に、レンズの使用者の目側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言う。
【0038】
サングラス100は、図1に示すように、フレーム20と、レンズ30(眼鏡用レンズ)とを備えている。
【0039】
なお、本明細書中において、「レンズ(眼鏡用レンズ)」とは、集光機能を有するものと、集光機能を有していないものとの双方を含むこととする。
【0040】
フレーム20は、使用者の頭部に装着され、レンズ30を使用者の目の前方近傍に配置させるためのものである。
【0041】
このフレーム20は、リム部21と、ブリッジ部22と、テンプル部23と、ノーズパッド部24とを有している。
【0042】
リム部21は、リング状をなし、右目および左目にそれぞれ対応して1つずつ設けられており、内側にレンズ30が装着される。これにより、使用者は、レンズ30を介して、外部の情報を視認することができる。
【0043】
また、ブリッジ部22は、棒状をなし、使用者の頭部に装着された際に、使用者の鼻の上部の前方に位置して、一対のリム部21を連結する。
【0044】
テンプル部23は、つる状をなし、各リム部21のブリッジ部22が連結されている位置の反対側における縁部に連結されている。このテンプル部23は、使用者の頭部に装着する際に、使用者の耳に掛けられる。
【0045】
ノーズパッド部24は、サングラス100を使用者の頭部に装着する際に、各リム部21における使用者の鼻に対応する縁部に設けられ、使用者の鼻に当接し、このとき使用者の鼻の当接部に対応した形状をなしている。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
【0046】
フレーム20を構成する各部の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や、各種樹脂材料等を用いることができる。なお、フレーム20の形状は、使用者の頭部に装着することができるものであれば、図示のものに限定されない。
【0047】
レンズ30は、各リム部21に、それぞれ装着されている。このレンズ30は、光透過性を有し、全体形状が外側に向って湾曲した板状をなす部材であり、樹脂層35(成形層)と、湾曲光学シート10とを有している。
【0048】
樹脂層35は、光透過性を有し、レンズの裏側に位置し、レンズ30に、集光機能を付与する際には、この樹脂層35が集光機能を有している。
【0049】
樹脂層35の構成材料としては、光透過性を有する樹脂材料であれば、特に限定されないが、例えば、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のような各種硬化性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられるが、中でも、後述する湾曲光学シート10が備える第2基板112を主材料として構成する樹脂材料と、同種もしくは同一であるのが好ましい。これにより、樹脂層35と湾曲光学シート10との密着性の向上を図ることができる。また、樹脂層35と湾曲光学シート10(第2基板112)との間における屈折率差を低く設定することができるため、樹脂層35と湾曲光学シート10との間において、光が乱反射されるのを的確に抑制または防止し得ることから、優れた光透過率をもって、樹脂層35と湾曲光学シート10との間で光を透過させることができる。なお、樹脂層35と湾曲光学シート10(第2基板112)との間における屈折率差は、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。これにより、前記屈折率差を低く設定することで得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0051】
樹脂層35の厚さは、特に限定されず、例えば、0.5mm以上5.0mm以下であるのが好ましく、1.0mm以上3.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、レンズ30における、比較的高い強度と、軽量化との両立を図ることができる。
【0052】
湾曲光学シート10は、樹脂層35の外側の面、すなわち、樹脂層35の湾曲凸面上に、かかる形状に対応して、湾曲凸面と湾曲凹面とを有する湾曲形状をなして、湾曲光学シート10の湾曲凹面を、樹脂層35の湾曲凸面側として、接合される湾曲樹脂基板であり、この湾曲光学シート10をレンズ30が備えることにより、サングラス100にハーフミラー性や偏光性のような機能性が付与される。その結果、サングラス100が、前記機能性を有するサングラスとしての機能を発揮する。この湾曲光学シート10が、本発明の光学シート15が湾曲形状されたもので構成されるが、その詳細な説明は、後に行うこととする。
【0053】
なお、前述の通り、サングラス100が備えるレンズ30は、集光機能を有するものであっても、集光機能を有していないもののいずれであってもよい。
【0054】
また、サングラス100は、前述のように、フレーム20を有するものの他、ファッション性、軽量性等の観点から、フレームのない構成をなすものであってもよい。
【0055】
さらに、本実施形態では、レンズ30を備える眼鏡を、サングラス100に適用することとしたが、これに限定されず、この眼鏡は、例えば、度付き眼鏡、伊達メガネ、風雨、塵芥、薬品等から眼を保護するゴーグル等であってもよい。
【0056】
以上のような構成をなすサングラス100(眼鏡)において、サングラス100が備えるレンズ30は、本発明の光学シートが湾曲形状された湾曲光学シート10を有する構成をなしているが、例えば、以下に示すような、レンズ30の製造方法を経ることで製造される。
【0057】
<レンズの製造方法>
図2は、本発明の光学シートを湾曲形状とした湾曲光学シートを有するレンズの製造方法を説明するための模式図である。なお、以下では、説明の都合上、図2の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0058】
以下、本発明の光学シート15を湾曲形状とした湾曲光学シート10を備えるレンズ30の製造方法の各工程を詳述する。
【0059】
[1]まず、全体形状が平板状をなす光学シート15(本発明の光学シート)を用意した後に、この光学シート15の両面に、保護フィルム50(マスキングテープ)を貼付することで、光学シート15の両面に保護フィルム50が貼付された多層積層体150を得る(図2(a)参照)。
【0060】
[2]次に、図2(b)に示すように、用意した多層積層体150を、すなわち、光学シート15の両面に保護フィルム50を貼付した状態で光学シート15を、その厚さ方向に打ち抜くことで、多層積層体150を平面視で円形状をなすものとする。
【0061】
[3]次に、図2(c)に示すように、円形状とされた多層積層体150に対して、加熱下で熱曲げ加工を施すことで、多層積層体150を、第1基板111側(一方の面側)が湾曲凸面とされ、第2基板112側(他方の面側)が湾曲凸面とされた湾曲形状をなす湾曲多層積層体200とする。これにより、平板状をなす光学シート15を、両面に保護フィルム50が貼付された状態で、湾曲形状をなす湾曲光学シート10とすることができる。
【0062】
この熱曲げ加工は、通常、プレス成形または真空成形により実施される。
この際の多層積層体150(光学シート15)の加熱温度(成形温度)は、本実施形態では、光学シート15が、機能性基板11と、機能性基板11の両面にそれぞれ最外層として設けられたコート層12、13を備えており、機能性基板11の溶融または軟化温度を考慮して、好ましくは150℃以上320℃以下、より好ましくは170℃以上300℃以下程度に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、光学シート15の変質・劣化を防止しつつ、光学シート15を軟化または溶融状態として、光学シート15を確実に熱曲げして、湾曲形状をなす湾曲光学シート10とすることができる。
【0063】
また、この熱曲げ加工の際に、本発明では、光学シート15は、下記の要件Bを満足する。そのため、この光学シート15を、本工程[3]において、熱曲げにより湾曲形状とされた湾曲光学シート10とした際に、この湾曲光学シート10が備えるコート層12、13における、クラックの発生が的確に抑制または防止されていると言えるが、その詳細な説明は、後に行うこととする。
【0064】
要件B:光学シート15を、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に、曲率半径120mmRの湾曲形状をなすものに成形し、その後、25℃に冷却した際に、コート層12、13にクラックが認められないこと。
【0065】
なお、本発明では、本工程[3]に先立って、光学シート15が備えるコート層12、13は、樹脂組成物の半硬化物で構成され、本工程[3]における熱曲げ加工による加熱により、樹脂組成物が硬化することになるが、この加熱による樹脂組成物の硬化が十分に進行していない場合には、熱曲げ加工の後に、湾曲光学シート10に対して加熱処理を施すようにしてもよい。これにより、湾曲光学シート10において、コート層12、13を構成する樹脂組成物を、確実に硬化物で構成されるものとし得る。
【0066】
[4]次に、熱曲げがなされた湾曲光学シート10から、保護フィルム50を剥離させる。その後、図2(d)に示すように、湾曲形状とされた湾曲凹面を備える金型40に、金型40の湾曲凹面と湾曲光学シート10の湾曲凸面とが当接するようにして、湾曲光学シート10を吸着させた状態で、例えば、インサート射出成形法を用いて、この湾曲光学シート10の湾曲凹面に、樹脂材料を主材料として構成される樹脂層35を射出成形する。すなわち、溶融状態とされた樹脂層35の構成材料を、湾曲光学シート10の湾曲凹面に、接触させた状態で冷却して固化させることにより、湾曲光学シート10の湾曲凹面に、接着剤層等を介することなく、樹脂層35を、直接、接触させた状態で成形する。これにより、熱曲げがなされた湾曲光学シート10と、樹脂層35とを備えるレンズ30が製造される。
【0067】
この樹脂層35を射出成形する際における、溶融状態とするための樹脂層35の構成材料の加熱温度(成形温度)は、樹脂層35の構成材料の種類に応じて適宜設定されるが、樹脂層35の構成材料が、後述する湾曲光学シート10が備える第1基板111の構成材料と、同種もしくは同一である場合、好ましくは180℃以上320℃以下、より好ましくは230℃以上300℃以下に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、湾曲光学シート10の湾曲凹面に、溶融状態とされた樹脂層35の構成材料を、確実に供給することができる。
【0068】
また、インサート射出成形法の中でも、射出圧縮成形法が好ましく用いられる。射出圧縮成形法は、金型40の中に樹脂層35を形成するための樹脂材料を低圧で射出した後、金型40を高圧で閉じてこの樹脂材料に圧縮力を加える方法をとるため、成形体としての樹脂層35ひいてはレンズ30に成形歪みや成形時の樹脂分子の局所的配向に起因する光学的異方性が生じにくいことから好ましく用いられる。また、樹脂材料に対して均一に加わる金型圧縮力を制御することにより、一定比容で樹脂材料を冷却することができるので、寸法精度の高い樹脂層35を得ることができる。
【0069】
以上のようなレンズの製造方法により製造されるレンズ30が備える湾曲光学シート10に、光学シート15を湾曲形状としたものが用いられている。そして、この光学シート15が、本発明の光学シートで構成されている。したがって、光学シート15が備えるコート層12、13を構成する樹脂組成物が、前記工程[3]における熱曲げにより、硬化物で構成されていることに基づいて、光学シート15は、下記の要件A、Cを満足する。そのため、レンズ30において、コート層12、13は、サングラス100に装着された際に、表側に位置することになるが、このときに、湾曲光学シート10は、光学シート15としての機能を長期に亘って発揮しつつ、優れた耐摩耗性が付与されているものであると言えるが、その詳細な説明は、後に行うこととする。
【0070】
要件A:光学シート15を、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、JIS K 7350-4の表3-A法-サイクルNo.1に準じて、キセノンウェザーメーターを用いてコート層12側から紫外線を1000時間照射した後において、光学シート15は、JIS K 7373によって規定されるYIの変化値が1.0未満であること。
【0071】
要件C:光学シート15を、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、ECE43に応じたワイパーラボ試験を施した後において、光学シート15のヘイズ値が5.0未満であること。
【0072】
以上のような、レンズ30の製造方法において、湾曲光学シート10を得るために用いられる光学シート15に、本発明の光学シートが適用されるが、以下、この光学シート15、すなわち、要件A~Cを満足する光学シート15(本発明の光学シート)の各実施形態について詳述する。
【0073】
<<第1実施形態>>
図3は、本発明の光学シートの第1実施形態を示す縦断面図である。
【0074】
なお、以下では、説明の都合上、図3の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図3中のx方向を「左右方向」または「流れ方向(MD)」、y方向を「前後方向」または「垂直方向(TD)」、z方向を「上下方向」と言う。また、図3では、光学シートの厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
【0075】
光学シート15(光学基板)は、図3に示すように、機能性を有する機能性基板11と、この機能性基板11の双方の面に最外層として設けられたコート層12、13と、を備えている。
【0076】
また、機能性基板11は、本実施形態では、光透過性を有する第1基板111と、第1基板111の一方の面側に設けられた光透過性を有する第2基板112と、第1基板111と第2基板112との間に設けられた偏光膜113と、を備えている。
【0077】
光学シート15において、各層が配置される位置関係を上記のように設定することで、偏光膜113は、コート層12とコート層13とを最外層として、第1基板111と第2基板112との間に位置することとなり、光学シート15の表面に露出していない。すなわち、偏光膜113は、光学シート15の上面または下面で露出する最外層を構成していない。そのため、最外層を構成した場合のように、偏光膜113に砂ほこりや、雨等が衝突したり、偏光膜113が他の部材等により摩耗されるのを確実に防止することができる。したがって、この衝突や摩耗により、偏光膜113が傷つくのを確実に防止することができる。よって、光学シート15を、意匠性および光学特性が長期に亘って維持されたものとし得る。また、後述のような構成をなすコート層12、13を光学シート15が最外層として備えているため、衝突や摩耗に基づき、偏光膜113が傷つくのをより確実に防止することができる。
【0078】
また、光学シート15において、本実施形態では、機能性基板11は、入射光(偏光していない自然光)から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取り出す機能を有する偏光膜113を備えている。そのため、光学シート15を通過する光を、偏光されたものとし得る。すなわち、本実施形態では、機能性基板11は、光学特性として、偏光性を発揮する。
【0079】
以下、この光学シート15を構成する機能性基板11とコート層12、13とについて説明する。
【0080】
まず、機能性基板11は、第1基板111と、第2基板112と、偏光膜113と、を備えている。
【0081】
第1基板111は、偏光膜113(積層体)を支持するとともに、第1基板111と、第2基板112との間に偏光膜113を配置させることで、偏光膜113を保護する保護層としての機能を有している。
【0082】
この第1基板111は、透明性を有する樹脂材料を主材料で構成されるものであれば、特に限定されないが、熱可塑性を有する透明樹脂(ベース樹脂)を主材料として含有するものであることが好ましい。
【0083】
なお、本明細書中において、「主材料」とは、このものを含有する層(基材)を構成する構成材料のうち、50重量%以上含有する構成材料のことを言うこととする。
【0084】
この透明樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂等の透明性を備える樹脂が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂であるのが好ましい。ポリカーボネート系樹脂は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富み、さらに耐熱性も高いため、透明樹脂にポリカーボネート系樹脂を用いることで、第1基板111における透明性や第1基板111の耐衝撃性、耐熱性を向上させることができる。また、ポリアミド系樹脂は、透明性および耐衝撃性の他に、耐薬品性、耐応力性等の向上を図ることができる。
【0085】
このポリカーボネート系樹脂としては、各種の樹脂を用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、より優れた強度を有する第1基板111を得ることができる。
【0086】
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
【0087】
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
【0088】
【化1】
(式(1A)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
【0089】
なお、前記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
特に、ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、第1基板111は、さらに優れた強度を発揮する。
【0091】
ポリアミド系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができ、例えば、脂環式ポリアミド、半芳香族ポリアミド等が挙げられる。脂環式ポリアミドは、耐衝撃性に優れた材料である。そのため、光学シート15を優れた耐衝撃性を発揮するものとし得る。また、半芳香族ポリアミドは、弾性率の高い材料である。そのため、曲げ等の応力に対して、優れた耐性を有する光学シート15とすることができる。
【0092】
なお、本明細書において、半芳香族ポリアミドとは、ポリアミドを構成するモノマーとしてのジカルボン酸、ジアミンのうちの一方が芳香族性化合物であり、他方が脂肪族化合物であるポリアミドのことを言い、具体的には、下記式(1B)で表すことができる。
【0093】
【化2】
(ただし、式(1B)中のRおよびRは、一方が2価の芳香族置換基、他方が2価の脂肪族置換基であり、nは、2以上の整数である。)
【0094】
なお、ポリアミドは、ジカルボン酸、ジアミンのうち少なくとも一方について、2種以上のモノマーを含む共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体等)であってもよい。
【0095】
また、上記式(1B)中のR、Rのうちの芳香族置換基としては、下記式(2B)で表されるものであるのが好ましい。
【0096】
【化3】
(ただし、式(2B)中、l、mは、それぞれ独立に0以上2以下の整数である。)
【0097】
これにより、偏光膜113をより好適に保護することができるとともに、光学シート15の加工性をより優れたものとし得る。
【0098】
上記式(1B)中のR、Rのうちの脂肪族置換基は、炭素数が4以上18以下のものであるのが好ましく、炭素数が4以上18以下の炭化水素基であるのがより好ましく、炭素数が4以上18以下の飽和炭化水素基であるのがさらに好ましい。
これにより、光学シート15の加工性をより優れたものとし得る。
【0099】
さらに、半芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジアミンとを構成モノマーとして含むものであるのが好ましい。これにより、偏光膜113をより好適に保護することができるとともに、光学シート15の加工性をより優れたものとし得る。
【0100】
脂環式ポリアミドは、その分子内に脂環式の化学構造を有しており、主鎖構造内に脂環式の化学構造を有していてもよいし、側鎖構造内に脂環式の化学構造を有していてもよい。
【0101】
この脂環式ポリアミドとしては、例えば、ポリアミドを構成するモノマーとしてのジカルボン酸、ジアミンのうちの少なくとも一方が脂環式の化学構造を有する化合物等が挙げられ、具体的には、例えば、下記式(3B)で表すことができる。
【0102】
【化4】
(ただし、式(3B)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が4以下の炭化水素基、oは、2以上14以下の整数、pは、0以上6以下の整数、nは、2以上の整数である。)
【0103】
第1基板111中に主材料として含まれる樹脂材料のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上190℃以下であるのが好ましく、105℃以上155℃以下であるのがより好ましい。これにより、前記工程[3]における光学シート15の熱曲げ加工による湾曲光学シート10の形成を比較的容易に実施することができる。また、光学シート15の耐久性、信頼性を優れたものとし得る。
【0104】
また、第1基板111は、光透過性を有していれば、その色は、無色であっても、赤色、青色、黄色等、如何なる色であってもよい。
【0105】
これらの色の選択は、第1基板111に染料または顔料を含有させることにより可能になる。この染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0106】
染料の具体例としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35等が挙げられる。
【0107】
第1基板111は、必要に応じて、上述した、透明樹脂、染料または顔料の他に、さらに、酸化防止剤、フィラー、可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0108】
この場合、第1基板111中の樹脂材料の含有量は、特に限定されないが、75重量%以上であるのが好ましく、85重量%以上であるのがより好ましい。樹脂材料の含有量を上記範囲内とすることにより、光学シート15を、優れた強度を発揮するものとし得る。
【0109】
また、第1基板111の波長589nmでの屈折率は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第1基板111の屈折率を上記数値範囲とすることにより、偏光膜113としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
【0110】
第1基板111は、その平均厚さが好ましくは0.1mm以上1.5mm以下、より好ましくは0.2mm以上0.8mm以下に設定される。第1基板111の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、光学シート15の薄型化を図りつつ、光学シート15に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0111】
第2基板112は、偏光膜113(積層体)を支持するとともに、第2基板112と、前述した第1基板111との間に偏光膜113を配置させることで、偏光膜113を保護する保護層としての機能を有している。
【0112】
この第2基板112は、第1基板111と同様に、透明性を有する樹脂材料を主材料で構成されるものであれば、特に限定されないが、熱可塑性を有する透明樹脂(ベース樹脂)を主材料として含有するものであることが好ましい。
【0113】
この透明樹脂としては、前述した第1基板111で挙げたのと同様のものを用いることができるが、中でも、ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂を主材料として構成されていることが好ましい。
【0114】
ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、前述した第1基板111で挙げたのと、同様のものを用いることができる。
【0115】
第2基板112中に主材料として含まれる樹脂材料のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上190℃以下であるのが好ましく、105℃以上155℃以下であるのがより好ましい。これにより、前記工程[3]における光学シート15の熱曲げ加工による湾曲光学シート10の形成を比較的容易に実施することができる。また、光学シート15の耐久性、信頼性を優れたものとし得る。
【0116】
また、第2基板112には、主材料として含まれる樹脂材料以外に、他の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、特に限定されないが、例えば、主材料以外の樹脂材料や、染料または顔料のような着色剤、充填材、配向助剤、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤および酸化防止剤等)、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤および粘度調整剤等が挙げられる。
【0117】
この場合、第2基板112中の樹脂材料の含有量は、特に限定されないが、第2基板112の100重量%中、75重量%以上であるのが好ましく、85重量%以上であるのがより好ましい。樹脂材料の含有量を上記範囲内とすることにより、光学シート15を、優れた強度を発揮するものとし得る。
【0118】
また、第2基板112の波長589nmでの屈折率は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第2基板112の屈折率を上記数値範囲とすることにより、偏光膜113としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
【0119】
第2基板112は、その平均厚さが好ましくは0.1mm以上1.5mm以下、より好ましくは0.2mm以上0.8mm以下に設定される。第2基板112の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、光学シート15の薄型化を図りつつ、光学シート15に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0120】
偏光膜113は、入射光(偏光していない自然光)から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取り出す機能を有する偏光子を構成している。これにより、機能性基板11に偏光性が付与され、光学シート15を通過する光は、偏光されたものとなる。
【0121】
偏光膜113の偏光度は、特に限定されないが、例えば、50%以上100%以下であるのが好ましく、80%以上100%以下であるのがより好ましい。また、偏光膜113の可視光線透過率は、特に限定されないが、例えば、10%以上80%以下であるのが好ましく、20%以上50%以下であるのがより好ましい。
【0122】
このような偏光膜113の構成材料としては、上記機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン価物等で構成された高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着、染色させ、一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0123】
これらの中でも、偏光膜113は、ポリビニルアルコール(PVA)を主材料とした高分子フィルムに、ヨウ素または二色性染料を吸着、染色させ、一軸延伸したものが好ましい。ポリビニルアルコール(PVA)は透明性、耐熱性、染色剤であるヨウ素または二色性染料との親和性、延伸時の配向性のいずれもが優れた材料である。したがって、PVAを主材料とする偏光膜113は、耐熱性に優れたものとなるとともに、偏光能に優れたものとなる。
【0124】
なお、上記二色性染料としては、例えばクロラチンファストレッド、コンゴーレッド、ブリリアントブルー6B、ベンゾパープリン、クロラゾールブラックBH、ダイレクトブルー2B、ジアミングリーン、クリソフェノン、シリウスイエロー、ダイレクトファーストレッド、アシッドブラック等が挙げられる。
【0125】
この偏光膜113の波長589nmでの屈折率は、特に限定されないが、例えば、1.45以上1.55以下であるのが好ましく、1.47以上1.53以下であるのがより好ましい。
【0126】
また、偏光膜113の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上60μm以下であるのが好ましく、10μm以上40μm以下であるのがより好ましい。
【0127】
第1接着剤層114は、第1基板111(一方の基板)と、偏光膜113との間に設けられ、第1基板111と偏光膜113とを接合する機能を有する。これにより、第1接着剤層114を介して、第1基板111と偏光膜113との間に、優れた密着力を付与することができる。
【0128】
また、第2接着剤層116は、第2基板112(他方の基板)と、偏光膜113との間に設けられ、第2基板112と偏光膜113とを接合する機能を有する。これにより、第2接着剤層116を介して、第2基板112と偏光膜113との間に、優れた密着力を付与することができる。
【0129】
これら第1接着剤層114および第2接着剤層116は、それぞれ、光透過性を有する接着剤により構成されている。この接着剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系、シリル化ウレタン樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ系、ポリオレフィン系、塩素化ポリオレフィン系、アクリル系、シアノアクリレート系、ゴム系、ポリエステル系、ポリイミド系、フェノール系等の接着剤が挙げられる。
【0130】
これらの中でも、第1接着剤層114および第2接着剤層116は、ウレタン樹脂系の接着剤により構成されていることが好ましい。これにより、光学シート15を、湾曲形状をなす湾曲光学シート10に熱曲げ加工を施す際に、熱曲げ加工に必要な耐熱性を付与することができる。さらには、シリコーン系の接着剤により構成されていることも好ましい。これにより、接着剤の硬化時にガスが発生するのを的確に抑制または防止することができる。そのため、接着剤層114、116中に気泡が残存するのを的確に抑制または防止することができる。
【0131】
なお、第1接着剤層114と第2接着剤層116とは、同一または同種のものであってもよいし、同一または同種のものとは異なるものであってもよい。
【0132】
また、第1接着剤層114および第2接着剤層116の波長589nmでの屈折率は、それぞれ独立して、1.3以上1.7以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。
【0133】
第1接着剤層114および第2接着剤層116の厚さは、それぞれ独立して、例えば、2μm以上100μm以下であるのが好ましく、5μm以上35μm以下であるのがより好ましい。このような第1接着剤層114および第2接着剤層116により、それぞれ、第1接着剤層114および第2接着剤層116と偏光膜113とを確実に接合することができる。
【0134】
第1コート層12(第1被覆層)は、第1基板111(機能性基板11の一方の面)を、被覆するように設けられ、光学シート15の最外層を構成し、機能性基板11の中間層として位置する偏光膜113を保護する保護層としての機能を有している。
【0135】
また、第2コート層13(第2被覆層)は、第2基板112(機能性基板11の他方の面)を、被覆するように設けられ、光学シート15の最外層を構成し、機能性基板11の中間層として位置する偏光膜113を保護する保護層としての機能を有している。
【0136】
第1基板111および第2基板112をそれぞれ被覆する第1コート層12および第2コート層13を、光学シート15が備える構成とすることで、第1基板111および第2基板112ひいては偏光膜113が傷つくのをより確実に防止することができる。
【0137】
このコート層12、13(被覆層)は、硬化性を示す樹脂組成物を用いて形成された、いわゆるハードコート層であり、この樹脂組成物が、本発明では、硬化性樹脂として、ラジカル重合性基を有するソフト成分と、カチオン重合性基を有するハード成分とを含むものが用いられる。
【0138】
ここで、ラジカル重合性基を有するソフト成分(以下、単に「ラジカル重合成分」または「ソフト成分」と言うこともある。)と、カチオン重合性基を有するハード成分(以下、単に「カチオン重合成分」または「ハード成分」と言うこともある)とでは、それらの反応速度は、これらの重合性基の特性に基づいて、ラジカル重合成分の方がカチオン重合成分と比較して速い。なお、本発明において、ソフト成分およびハード成分とは、ともに硬化性を示す硬化性樹脂であり、ソフト成分単独で構成される硬化物と、ハード成分単独で構成される硬化物とを、それぞれ形成して比較した場合、軟質の硬化物を形成するものをソフト成分と言い、硬質の硬化物を形成するものをハード成分と言うこととする。
【0139】
そこで、ラジカル重合開始剤とカチオン重合開始剤との双方を含有する樹脂組成物において、ラジカル重合成分およびカチオン重合成分の硬化を、ほぼ同時に開始させ、その後、樹脂組成物の半硬化物を得た場合、この樹脂組成物の半硬化物では、ラジカル重合成分の硬化度(反応率)は、カチオン重合成分の硬化度よりも高くなっている。そして、このとき、本発明では、ラジカル重合成分がソフト成分を構成し、カチオン重合成分がハード成分を構成している。すなわち、半硬化物におけるソフト成分およびハード成分の硬化度(反応率)は、ソフト成分の方かが高くなっている。そのため、樹脂組成物の半硬化物を、比較的容易に軟質なものとすることができる。したがって、コート層12、13を、比較的容易に下記要件Bを満足するものとし得る。そのため、このコート層12、13を備える光学シート15を、前記工程[3]において、熱曲げにより湾曲形状とされた湾曲光学シート10とした際に、この湾曲光学シート10が備えるコート層12、13における、クラックの発生を的確に抑制または防止することができる。
【0140】
なお、JIS K 5400に記載の鉛筆法により測定される、熱曲げ加工がなされる前の光学シート15のコート層12、13の引っかき硬度は、3B以上B以下であるのが好ましい。樹脂組成物の半硬化物を、軟質なものであると言うことができる。
【0141】
要件B:光学シート15を、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に、曲率半径120mmRの湾曲形状をなすものに成形し、その後、25℃に冷却した際に、コート層12、13にクラックが認められないこと。
【0142】
なお、光学シート15(本発明の光学シート)における、樹脂組成物の半硬化物において、ソフト成分であるラジカル重合成分と、ハード成分であるカチオン重合成分とでは、前述の通り、ソフト成分(ラジカル重合成分)の方が、その硬化度(反応率)が高くなっている。そのため、樹脂組成物中において優位に残存しているカチオン重合成分の硬化度(反応率)を、適宜設定することで、比較的容易に前記要件Bを満足させることができる。
【0143】
次いで、前記要件Bを満足する、樹脂組成物の半硬化物で構成されるコート層12、13を備える光学シート15について、前記工程[3]における熱曲げによる、光学シート15の加熱により、樹脂組成物の半硬化物の硬化を進行させる。すなわち、樹脂組成物の半硬化物において、優位に残存しているカチオン重合成分を硬化させる。これにより、光学シート15が湾曲形状とされた湾曲光学シート10において、コート層12、13を、樹脂組成物の硬化物で構成されたものとすることができる。このカチオン重合成分を硬化において、カチオン重合成分は、前述の通り、ハード成分で構成されることから、樹脂組成物の硬化物すなわち湾曲光学シート10が備えるコート層12、13を、優れた硬度を備えるものとすることができ、その結果、コート層12、13を、下記要件A、Cを満足するものとし得る。そのため、湾曲光学シート10を備えるレンズ30において、コート層12、13は、サングラス100に装着された際に、表側に位置することになるが、このときに、湾曲光学シート10は、光学シート15としての機能を長期に亘って発揮しつつ、優れた耐摩耗性を発揮する。
【0144】
なお、JIS K 5400に記載した鉛筆法により測定される、熱曲げ加工がなされた湾曲光学シート10のコート層12、13の引っかき硬度は、HB以上4H以下であるのが好ましい。樹脂組成物の半硬化物を、軟質なものであると言うことができる。
【0145】
要件A:光学シート15を、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、JIS K 7350-4の表3-A法-サイクルNo.1に準じて、キセノンウェザーメーターを用いてコート層12側から紫外線を1000時間照射した後において、光学シート15は、JIS K 7373によって規定されるYIの変化値が1.0未満であること。
【0146】
要件C:光学シート15を、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、ECE43に応じたワイパーラボ試験を施した後において、光学シート15のヘイズ値が5.0未満であること。
【0147】
以下、前記要件A~Cを満足することができる、ラジカル重合性基を有するソフト成分と、カチオン重合性基を有するハード成分とを含有する樹脂組成物について説明する。
【0148】
(ラジカル重合性基を有するソフト成分)
ラジカル重合性基を有するソフト成分は、カチオン重合成分よりもラジカル重合成分の方が、反応性が速いことに基づいて、半硬化物において既にラジカル重合成分によるネットワークを形成し、さらに、ラジカル重合成分がソフト成分を構成することから、この半硬化物を軟質なものとして、コート層12、13を、前記要件Bを満足するものとして樹脂組成物に含まれる。
【0149】
なお、樹脂組成物の半硬化物において、ソフト成分であるラジカル重合成分と、ハード成分であるカチオン重合成分とでは、前述の通り、ソフト成分(ラジカル重合成分)の方が、その硬化度(反応率)が高くなっている。そのため、ラジカル重合成分は、ラジカル重合成分によるネットワークを、カチオン重合成分によるネットワークと比較して、優位に形成して、硬化(反応)が進行している重合度となっている。すなわち、前記工程[1]では、ラジカル重合成分がカチオン重合成分と比較して優位に硬化しているものを含む樹脂組成物の半硬化物で構成されたコート層12、13を備えるものが、光学シート15として用意される。
【0150】
このラジカル重合性基を有するソフト成分は、半硬化物を軟質なものとして、コート層12、13を、前記要件Bを満足し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、軟質性を示す主鎖に、側鎖としてのラジカル重合性基が連結したものが挙げられる。
【0151】
また、軟質性を示す主鎖としては、例えば、ウレタン結合を有する直鎖、エステル結合を有する直鎖、エポキシ結合を有する直鎖等が挙げられるが、中でも、ウレタン結合を有する直鎖であることが好ましい。これにより、樹脂組成物の半硬化物を、確実に軟質なものとし得る。
【0152】
側鎖すなわちラジカル重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられるが、中でも、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基は、優れたラジカル重合性を示すとともに、側鎖として(メタ)アクリロイル基を備える化合物の入手の容易さ等の観点から、ラジカル重合性基として好ましく選択される。
【0153】
以上のことから、ラジカル重合性基を有するソフト成分としては、ウレタン結合(-OCONH-)を有する直鎖に、側鎖としての(メタ)アクリロイル基が連結したもの、すなわち、ウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。これにより、半硬化物を確実に軟質なものとして、コート層12、13を、前記要件Bを確実に満足するものとし得る。なお、このウレタン(メタ)アクリレートは、モノマーまたはオリゴマーのいずれであってもよい。
【0154】
このウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとの反応生成物として得ることができる。
【0155】
また、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0156】
また、ポリエステルポリオールは、例えば、ジオールとジカルボン酸もしくはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させたり、ジオールまたはジカルボン酸をエステル化して、エステル交換反応させたりすることにより得ることができる。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられ、ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
【0157】
さらに、ポリカーボネートジオールとしては、例えば、ジオールと、炭酸エステルとの反応物が挙げられ、ジオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-へキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール等が用いられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0158】
また、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの例として、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。
【0159】
さらに、ウレタン結合(-OCONH-)を有する直鎖に、側鎖としての(メタ)アクリロイル基が連結したウレタン(メタ)アクリレートは、側鎖としての(メタ)アクリロイル基、すなわち、ラジカル重合性基が1つまたは2つ連結したものであることが好ましい。これにより、半硬化物におけるネットワークを疎密なものとして、半硬化物をより確実に軟質なものとすることができるため、コート層12、13を、前記要件Bをより確実に満足するものとし得る。
【0160】
また、樹脂組成物中におけるラジカル重合成分の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100.0重量部中、7.0重量部以上55.0重量部以下であることが好ましく、10.0重量部以上35.0重量部以下であることがより好ましい。樹脂組成物中におけるラジカル重合成分の含有量が、前記下限値未満であると、ラジカル重合成分の種類によっては、樹脂組成物の半硬化物を十分に軟質なものとすることができず、前記要件Bを満足させることができなくなるおそれがある。また、樹脂組成物中におけるラジカル重合成分の含有量が前記上限値を超えると、樹脂組成物におけるカチオン重合成分の含有量が相対的に減少し、樹脂組成物の硬化物を十分に硬質なものとすることができず、前記要件A、Cを満足させることができなくなるおそれがある。
【0161】
(カチオン重合性基を有するハード成分)
カチオン重合性基を有するハード成分は、ラジカル重合成分よりもカチオン重合成分の方が、反応性が遅いことに基づいて、半硬化物においてカチオン重合成分によるネットワークの形成が、前記工程[1]において用意された光学シート15では、完了していない。そして、前記工程[3]における熱曲げによる、光学シート15の加熱により、カチオン重合成分によるネットワークの形成が完了し、熱曲げがなされた湾曲光学シート10において、樹脂組成物が硬化物とされる。このとき、カチオン重合成分がハード成分を構成することから、この硬化物を硬質なものとして、前記工程[3]における熱曲げにより得られた湾曲光学シート10において、コート層12、13を、前記要件A、Bを満足させるものとして、カチオン重合性基を有するハード成分は、樹脂組成物に含まれる。
【0162】
なお、樹脂組成物の半硬化物において、カチオン重合成分は、その一部が、カチオン重合成分によるネットワークを形成することなく残存して、硬化(反応)が未完了の重合度となるように設定されている。すなわち、前記工程[1]では、カチオン重合成分が優位に未硬化となっているものを含む樹脂組成物の半硬化物で構成されたコート層12、13を備えるものが、光学シート15として用意される。
【0163】
このカチオン重合性基を有するハード成分は、硬化物を硬質なものとして、コート層12、13を、前記要件A、Cを満足し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、硬質性を示す主鎖に、側鎖としてのカチオン重合性基が連結したものが挙げられる。
【0164】
また、硬質性を示す主鎖としては、硬化物を特に硬質なものとする観点から、結合力が高いシロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体からなる化合物、すなわち、シロキサン結合(-Si-O-Si-)の繰り返し体を有するポリマー(プレポリマー)であることが好ましい。
【0165】
側鎖すなわちカチオン重合性基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基のような環状エーテル基、および、ビニルエーテル基等が挙げられるが、中でも、環状エーテル基であることが好ましい。環状エーテル基は、優れたカチオン重合性を示すとともに、側鎖として環状エーテル基を備える化合物の入手の容易さ等の観点から、カチオン重合性基として好ましく選択される。
【0166】
以上のことから、カチオン重合性基を有するハード成分としては、シロキサン結合(-Si-O-Si-)の繰り返し体を有するポリマー(プレポリマー)としてのシロキサン化合物に、側鎖としての環状エーテル基が連結したもの、すなわち、シリコン変性環状エーテル化合物であることが好ましい。これにより、硬化物を確実に硬質なものとして、コート層12、13を、前記要件A、Cを確実に満足するものとし得る。
【0167】
このシリコン変性環状エーテル化合物は、例えば、シロキサン結合(-Si-O-Si-)の繰り返し体を有するポリマー(プレポリマー)からなる主鎖に、側鎖としての環状エーテル基を導入することで得ることができる。
【0168】
シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体としては、具体的には、下記式(3)および式(4)の少なくとも一方のシロキサン結合を有する構成単位の繰り返しで構成されているものが挙げられる。
【0169】
【化5】
(式(3)中、Xは、炭化水素基または水酸基を示す。)
【0170】
【化6】
(式(4)中、Xは、炭化水素基または水酸基を示し、Xは、炭化水素基または水酸基から水素が離脱した2価の基を示す。)
【0171】
前記シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体としては、具体的には、ポリオルガノシロキサンを有するものや、シルセスキオキサンを有するものが挙げられる。なお、シルセスキオキサンの構造としては、ランダム構造、籠型構造、ラダー構造(はしご型構造)等、いかなる構造であってもよい。
【0172】
前記炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、2-メチルフェニル基等のアリール基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0173】
また、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖には、不飽和二重結合が導入されていることが好ましい。これにより、樹脂組成物にラジカル重合成分としてウレタン(メタ)アクリレートが含まれる場合、このウレタン(メタ)アクリレートが有する(メタ)アクリロイル基と結合して、シリコン変性環状エーテル化合物とウレタン(メタ)アクリレートとのネットワークを形成することができる。そのため、コート層12、13を構成する樹脂組成物の硬化物を、より硬質なものとすることができる。
【0174】
以上のような構成を有するシリコン変性環状エーテル化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(5)、式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0175】
【化7】
(式(5)中、Meは、メチル基を示し、m、nは、それぞれ1以上の整数を示し、R1は、カチオン重合性基を有する有機基を示す。)
【0176】
【化8】
(式(6)中、Meは、メチル基を示し、m、nは、それぞれ1以上の整数を示し、R1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立して、カチオン重合性基を有する有機基、炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、少なくとも1つがカチオン重合性基を有する有機基を示す。)
【0177】
また、シリコン変性環状エーテル化合物は、シロキサン結合(-Si-O-Si-)の繰り返し体を有するポリマー(プレポリマー)からなる主鎖に、側鎖としての環状エーテル基が導入されたものであるが、この側鎖としての環状エーテル基、すなわち、カチオン重合性基の数は、2つ以上、すなわち複数であることが好ましい。これにより、硬化物におけるネットワークを緻密なものとして、硬化物をより確実に硬質なものとすることができるため、前記工程[3]における熱曲げにより得られた湾曲光学シート10において、コート層12、13を、前記要件A、Bを満足するものとし得る。
【0178】
また、樹脂組成物中におけるカチオン重合成分の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100.0重量部中、35.0重量部以上85.0重量部以下であることが好ましく、50.0重量部以上70.0重量部以下であることがより好ましい。樹脂組成物中におけるカチオン重合成分の含有量が、前記下限値未満であると、カチオン重合成分の種類によっては、樹脂組成物の硬化物を十分に硬質なものとすることができず、前記要件A、Cを満足させることができなくなるおそれがある。また、樹脂組成物中におけるカチオン重合成分の含有量が前記上限値を超えると、樹脂組成物におけるラジカル重合成分の含有量が相対的に減少し、樹脂組成物の半硬化物を十分に軟質なものとすることができず、前記要件Bを満足させることができなくなるおそれがある。
【0179】
(ラジカル重合性基を備えるモノマー成分)
また、樹脂組成物は、さらにラジカル重合性基を備えるモノマー成分を密着剤として含むものであることが好ましい。
【0180】
樹脂組成物中にラジカル重合性基を備えるモノマー成分が含まれることで、ラジカル重合成分によるネットワークに、ラジカル重合性基を備えるモノマー成分も組み込まれる。さらに、ラジカル重合性基を備えるモノマー成分が、モノマーで構成され、分子量が小さいことから、基板111、112の表面に形成された凹部に入り込んだ状態で、ラジカル重合成分によるネットワークに、このモノマー成分が組み込まれることとなる。そのため、ラジカル重合成分によるネットワークと基板111、112の凹部との間にアンカー効果が得られることから、コート層12、13を、基板111、112に対して優れた密着性を有するものとし得る。
【0181】
このラジカル重合性基を備えるモノマー成分としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等を備えるモノマー成分が挙げられるが、ラジカル重合性基を有するソフト成分がウレタン(メタ)アクリレートである場合、(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。これにより、樹脂組成物中にラジカル重合性基を備えるモノマー成分が含まれることにより得られる効果を、確実に発揮させることができる。
【0182】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、イソボロニルアクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、光学シート15の耐候性を向上させる観点から、芳香族を含まないものであることが好ましい。
【0183】
樹脂組成物中におけるラジカル重合性基を備えるモノマー成分の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100.0重量部中、1.0重量部以上10.0重量部以下であることが好ましく、3.0重量部以上7.0重量部以下であることがより好ましい。
【0184】
(ラジカル重合性基とカチオン重合性基との双方を備えるモノマー成分)
また、樹脂組成物は、さらにラジカル重合性基とカチオン重合性基との双方を備えるモノマー成分を密着剤として含むものであることが好ましい。
【0185】
樹脂組成物中にラジカル重合性基とカチオン重合性基との双方を備えるモノマー成分が含まれることで、ラジカル重合成分によるネットワークおよびカチオン重合成分によるネットワークに、それぞれ、ラジカル重合性基とカチオン重合性基との双方を備えるモノマー成分も組み込まれる。さらに、ラジカル重合性基とカチオン重合性基との双方を備えるモノマー成分が、モノマーで構成され、分子量が小さいことから、基板111、112の表面に形成された凹部に入り込んだ状態で、ラジカル重合成分によるネットワークおよびカチオン重合成分によるネットワークに、このモノマー成分が組み込まれることとなる。そのため、ラジカル重合成分によるネットワークおよびカチオン重合成分によるネットワークと基板111、112の凹部との間にアンカー効果が得られることから、コート層12、13を、基板111、112に対して優れた密着性を有するものとし得る。
【0186】
このラジカル重合性基とカチオン重合性基との双方を備えるモノマー成分としては、ラジカル重合性基としての(メタ)アクリロイル基、ビニル基等と、カチオン重合性基としての環状エーテル基、ビニルエーテル基等とを備えるモノマー成分が挙げられるが、ラジカル重合性基を有するソフト成分がウレタン(メタ)アクリレートであり、カチオン重合性基を有するハード成分がシリコン変性環状エーテル化合物である場合、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、および、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートであることが好ましい。これにより、樹脂組成物中にラジカル重合性基とカチオン重合性基との双方を備えるモノマー成分が含まれることにより得られる効果を、確実に発揮させることができる。
【0187】
樹脂組成物中におけるラジカル重合性基とカチオン重合性基との双方を備えるモノマー成分の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100.0重量部中、0.1重量部以上3.0重量部以下であることが好ましく、0.3重量部以上1.0重量部以下であることがより好ましい。
【0188】
(イソシアネート化合物)
また、樹脂組成物は、カチオン重合性基を有するハード成分がシリコン変性環状エーテル化合物である場合、さらに2官能以上のイソシアネート化合物を含有することが好ましい。
【0189】
これにより、樹脂組成物中において、イソシアネート化合物は、シリコン変性環状エーテル化合物を分子間で結合(架橋)させる架橋剤として機能する。すなわち、架橋剤としてのイソシアネート化合物が含まれることで、シリコン変性環状エーテル化合物が備える、主鎖が有する水酸基と、イソシアネート化合物が有するイソシアネート基(官能基)とが反応してウレタン結合で構成された架橋構造が形成され、その結果、シリコン変性環状エーテル化合物とイソシアネート化合物とのネットワークを形成することができる。そのため、コート層12、13を構成する樹脂組成物の硬化物を、より硬質なものとすることができる。
【0190】
イソシアネート化合物は、2官能以上のものであればよいが、3官能または4官能のものであることが好ましい。これにより、前記架橋剤としての機能を確実に発揮させることができる。
【0191】
また、樹脂組成物中におけるイソシアネート化合物の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100.0重量部中、1.0重量部以上10.0重量部以下であることが好ましく、3.0重量部以上8.0重量部以下であることがより好ましい。
【0192】
(ラジカル重合開始剤)
また、樹脂組成物は、ラジカル重合成分によるネットワークを形成する重合反応を開始させるために、ラジカルを発生させるラジカル重合開始剤(ラジカル発生剤)を含有している。
【0193】
これにより、樹脂組成物中において、ラジカル重合開始剤により発生したラジカルにより、ラジカル重合成分によるネットワークを形成する重合反応を確実に開始させることができる。そのため、前記工程[1]において、光学シート15として、ラジカル重合成分がカチオン重合成分と比較して優位に硬化しているものを含む樹脂組成物の半硬化物で構成されたコート層12、13を備えるものを容易に用意することができる。
【0194】
このラジカル重合開始剤は、樹脂組成物を紫外線のようなエネルギー線を照射することによりラジカルが発生する光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0195】
また、光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、ケトン系光ラジカル重合開始剤、イミダゾール系光ラジカル重合開始剤、カルバゾール系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤、チタノセン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、トリクロロメチルトリアジン系光ラジカル重合開始剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0196】
樹脂組成物中における光ラジカル重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100.0重量部中、0.5重量部以上5.0重量部以下であることが好ましく、1.0重量部以上4.0重量部以下であることがより好ましい。
【0197】
(カチオン重合開始剤)
また、樹脂組成物は、カチオン重合成分によるネットワークを形成する重合反応を開始させるために、酸を発生させるカチオン重合開始剤(酸発生剤)を含有している。
【0198】
これにより、樹脂組成物中において、カチオン重合開始剤により発生した酸により、カチオン重合成分によるネットワークを形成する重合反応を確実に開始させることができる。そのため、前記工程[1]において、光学シート15として、カチオン重合成分の一部が硬化しているものを含む樹脂組成物の半硬化物で構成されたコート層12、13を備えるものを容易に用意することができる。そして、樹脂組成物の半硬化物において、発生した酸は消失することなく残存している。そのため、前記工程[3]における熱曲げによる、光学シート15の加熱により、この酸に基づく、カチオン重合成分によるネットワークを形成する重合反応を活性化させることができる。これにより、カチオン重合成分によるネットワークの形成が完了し、その結果、樹脂組成物を確実に硬化物で構成することができる。
【0199】
このカチオン重合開始剤は、樹脂組成物を紫外線のようなエネルギー線を照射することにより酸が発生する光カチオン重合開始剤であることが好ましい。
【0200】
また、光カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、スルホニウム塩系、ヨードニウム塩系のようなオニウム塩系光カチオン重合開始剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0201】
樹脂組成物中における光カチオン重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100.0重量部中、0.5重量部以上5.0重量部以下であることが好ましく、1.0重量部以上4.0重量部以下であることがより好ましい。
【0202】
(紫外線吸収剤)
また、樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含むものであることが好ましい。
【0203】
紫外線吸収剤を、樹脂組成物が含有することで、コート層12、13中において紫外線を吸収することができる。そのため、樹脂組成物に含まれる他の構成材料の変質・劣化を抑制することができる。したがって、コート層12、13に対する耐紫外線照射性を向上させて、前記要件Aを確実に満足させることができる。また、機能性基板11に対する紫外線の到達をも抑制または防止することができるため、機能性基板11の変質・劣化を抑制することができる。
【0204】
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系のものが挙げられ、これらのうち1種または2種を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく用いられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の中でも、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がより好ましい。これにより、コート層12、13に紫外線吸収剤が含まれることにより得られる前記効果をより顕著に発揮させることができる。また、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であれば、後述する、ラジカル重合成分またはカチオン重合成分との反応性を有する官能基を備えるものとして、比較的容易かつ安価に入手することが可能である。
【0205】
さらに、紫外線吸収剤は、ラジカル重合成分またはカチオン重合成分との反応性を有する官能基を備えるものであることが好ましい。これにより、ラジカル重合成分(例えば、ウレタン(メタ)アクリレート)またはカチオン重合成分が反応することで形成されるネットワーク内に、この紫外線吸収剤をも取り込むことができる。そのため、樹脂組成物の硬化物で構成されたコート層12、13から、この紫外線吸収剤が漏出すなわちブリードアウトするのを的確に抑制または防止することができる。したがって、前記要件Aを長期に亘って、より確実に満足させることができる。
【0206】
なお、ラジカル重合成分がウレタン(メタ)アクリレートである場合、ラジカル重合成分との反応性を有する官能基として(メタ)アクリロイル基を備える紫外線吸収剤は、ウレタン(メタ)アクリレートと、双方が有する(メタ)アクリロイル基同士がラジカル重合することでネットワークを形成し得ることから、ラジカル重合成分との反応性を有する官能基を備える紫外線吸収剤として好ましく用いられる。また、官能基として(メタ)アクリロイル基を備える紫外線吸収剤は、例えば、2つ以上の水酸基を有するヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、(メタ)アクリレートモノマーとの反応生成物として得ることができる。なお、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤において、トリアジン骨格に隣接する1つの水酸基は、紫外線吸収剤としての機能を発揮させるために存在している。そのため、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤に(メタ)アクリレートモノマーとの反応性を付与するには、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)は、この水酸基とは異なる1つ以上の水酸基を有していることが求められる。
【0207】
さらに、紫外線吸収剤は、カチオン重合性基を有するハード成分がシリコン変性環状エーテル化合物であり、樹脂組成物がイソシアネート化合物を含有する場合には、2つ以上の水酸基を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であることが好ましい。これにより、カチオン重合成分としてのシリコン変性環状エーテル化合物とイソシアネート化合物とが反応することで形成されたネットワーク内に、このベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤をも取り込むことができる。そのため、樹脂組成物の硬化物で構成されたコート層12、13から、このベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が漏出すなわちブリードアウトするのを的確に抑制または防止することができる。したがって、前記要件Aを長期に亘って、より確実に満足させることができる。
【0208】
また、樹脂組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100.0重量部中、1.0重量部以上10.0重量部以下であることが好ましく、3.0重量部以上8.0重量部以下であることがより好ましい。樹脂組成物中における紫外線吸収剤の含有率が前記下限値未満であると、紫外線吸収剤の種類によっては、コート層12、13に紫外線吸収剤を添加することにより得られる効果が十分に得られないおそれがある。また、樹脂組成物中における紫外線吸収剤の含有率が前記上限値を超えても、それ以上の耐紫外線照射性の向上は見られず、コート層12、13の透明性や、コート層12、13の基板111、112に対する密着性を損ねる場合がある。
【0209】
(光安定剤)
また、樹脂組成物は、光安定剤を含むものであることが好ましい。
【0210】
光安定剤を、樹脂組成物が含有することで、コート層12、13の日光に曝された際における安定化の向上を図ることができる。その結果、コート層12、13ひいては湾曲光学シート10の耐紫外線照射性を向上させること、すなわち前記要件Aを確実に満足させることができる。
【0211】
光安定剤としては、特に限定されないが、ヒンダードアミン系のもの、ニッケル系のもの等が挙げられ、これらのうち1種または2種を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、ヒンダードアミン系のものが好ましく用いられる。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。また、ヒンダードアミン系光安定剤であれば、後述する、ラジカル重合成分またはカチオン重合成分との反応性を有する官能基を備えるものとして、比較的容易かつ安価に入手することが可能である。
【0212】
さらに、光安定剤は、ラジカル重合成分またはカチオン重合成分との反応性を有する官能基を備えるものであることが好ましい。これにより、ラジカル重合成分(例えば、ウレタン(メタ)アクリレート)またはカチオン重合成分が反応することで形成されるネットワーク内に、この光安定剤をも取り込むことができる。そのため、樹脂組成物で構成されたコート層12、13から、この光安定剤が漏出すなわちブリードアウトするのを的確に抑制または防止することができる。したがって、前記要件Aを長期に亘って、より確実に満足させることができる。
【0213】
なお、ラジカル重合成分がウレタン(メタ)アクリレートである場合、ラジカル重合成分との反応性を有する官能基として(メタ)アクリロイル基を備える光安定剤は、ウレタン(メタ)アクリレートと、双方が有する(メタ)アクリロイル基同士がラジカル重合することでネットワークを形成し得ることから、ラジカル重合成分との反応性を有する官能基を備える光安定剤として好ましく用いられる。また、官能基として(メタ)アクリロイル基を備える光安定剤は、例えば、水酸基を有するヒンダードアミン系安定剤と、(メタ)アクリレートモノマーとの反応生成物として得ることができる。
【0214】
また、樹脂組成物中における光安定剤の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100.0重量部中、1.0重量部以上10.0重量部以下であることが好ましく、3.0重量部以上8.0重量部以下であることがより好ましい。樹脂組成物中における光安定剤の含有率が前記下限値未満であると、光安定剤の種類によっては、コート層12、13に光安定剤を添加することにより得られる効果が十分に得られないおそれがある。また、樹脂組成物中における光安定剤の含有率が前記上限値を超えても、それ以上の耐紫外線照射性の向上は見られず、コート層12、13の透明性や、コート層12、13の基板111、112に対する密着性を損ねる場合がある。
【0215】
樹脂組成物には、さらに、上述した材料以外のその他の添加剤が含まれていてもよい。
【0216】
その他の添加剤としては、例えば、熱線吸収剤、可塑剤、着色剤、増感剤、界面活性剤、酸化防止剤、還元防止剤、帯電防止剤および表面調整剤(レベリング剤)等が挙げられる。
【0217】
コート層12、13は、前記工程[1]で用意された光学シート15において、以上のような樹脂組成物の半硬化物で構成されるが、その平均厚さは、それぞれ、特に限定されないが、1.0μm以上15.0μm以下であることが好ましく、6.0μm以上9.0μm以下であることがより好ましい。各コート層12、13の平均厚さが前記下限値未満であると、光学シート15の耐摩耗性および耐紫外線照射性が低下する場合がある。一方、コート層12、13の厚さが前記上限値を超えると、光学シート15を、湾曲状態をなすものとした湾曲光学シート10とする際に、湾曲光学シート10においてクラックが発生するおそれがある。
【0218】
また、コート層12、13の波長589nmでの屈折率としては、特に限定されず、例えば、1.40以上1.60以下であるのが好ましく、1.450以上1.595以下であるのがより好ましい。
【0219】
なお、このコート層12、13は、樹脂組成物の半硬化物で構成されるものとして、例えば、溶媒を含むワニス状の樹脂組成物を基板111、112上に塗布して液状被膜を形成し、この液状被膜に紫外線を照射することで液状被膜を半硬化させることで形成される。
【0220】
ここで、光学シート15は、コート層12、13が前述したような構成をなす半硬化物からなることで、前記要件A~Cを満足することができるが、前記要件A~Cは、さらに、以下に示すような要件を満足することが好ましい。
【0221】
すなわち、前記要件Bにおいて、光学シート15を、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に、曲率半径120mmRの湾曲形状をなすものに成形し、その後、25℃に冷却した際に、コート層12、13にクラックが認められなければよいが、湾曲形状をなすものに光学シート15を成形する際の曲率半径は、100mmRであることが好ましく、90mmRであることがより好ましい。これにより、このコート層12、13を備える光学シート15を、前記工程[3]において、熱曲げにより湾曲形状とされた湾曲光学シート10とした際に、この湾曲光学シート10が備えるコート層12、13における、クラックの発生がより的確に抑制または防止されていると言うことができる。
【0222】
また、前記要件Aにおいて、光学シート15を、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、JIS K 7350-4の表3-A法-サイクルNo.1に準じて、キセノンウェザーメーターを用いてコート層12側から紫外線を1000時間照射した後において、光学シート15は、JIS K 7373によって規定されるYIの変化値が1.0未満であることを満足するものであればよいが、前記YIの変化値が0.8以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。これにより、このコート層12、13を備える光学シート15を、前記工程[3]において、熱曲げにより湾曲形状とされた湾曲光学シート10とし、コート層12、13を構成する樹脂組成物を、硬化物とすることで、湾曲光学シート10を備えるレンズ30において、湾曲光学シート10は、変色するのがより的確に抑制または防止されており、湾曲光学シート10(光学シート15)としての機能が長期に亘ってより確実に維持されていると言うことができる。
【0223】
さらに、前記要件Cにおいて、光学シート15を、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、ECE43に応じたワイパーラボ試験を施した後において、光学シート15のヘイズ値が5.0未満であることを満足するものであればよいが、前記ヘイズ値が4.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。これにより、このコート層12、13を備える光学シート15を、前記工程[3]において、熱曲げにより湾曲形状とされた湾曲光学シート10とし、コート層12、13を構成する樹脂組成物を、硬化物とすることで、湾曲光学シート10を備えるレンズ30において、湾曲光学シート10は、コート層12、13が最外層として位置することで、優れた耐摩耗性を発揮していると言うことができる。
【0224】
なお、光学シート15では、前記要件A~Cを光学シート15が満足し得るものであれば、上面および下面にそれぞれ設けられた2つのコート層12、13のうちいずれか一方(特に、裏側に位置するコート層13)を省略してもよい。
【0225】
また、光学シート15の総厚は、特に限定されないが、0.2mm以上3.0mm以下程度であるのが好ましく、0.4mm以上1.6mm以下程度であるのがより好ましい。これにより、光学シート15に優れた強度を付与しつつ、光学シート15を、湾曲形状をなす湾曲光学シート10に成形する際に、この光学シート15に優れた熱成形性を付与することができる。
【0226】
また、光学シート15は、第1接着剤層114と偏光膜113との間、および、第2接着剤層116と偏光膜113との間の少なくとも一方に、中間層として密着層を備えるものであってもよい。これにより、接着剤層114、116と偏光膜113との間における密着力の向上を図ることができる。
【0227】
この密着層としては、特に限定されないが、例えば、SiOおよびAlのうちの少なくとも1種を主材料として構成されるものが挙げられる。
【0228】
<第2実施形態>
また、光学シート15は、前記第1実施形態で説明した構成をなすことで、偏光性を備えるものとする場合の他、以下に示すような、ハーフミラー性を備える構成をなすものであってもよい。
図4は、本発明の光学シートの第2実施形態を示す縦断面図である。
【0229】
なお、以下では、説明の都合上、図4の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図4中のx方向を「左右方向」、y方向を「前後方向」、z方向を「上下方向」と言う。さらに、図4では、光学シートの厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
【0230】
以下、この図を参照して本発明の光学シートの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0231】
図4に示す光学シート15は、機能性基板11に付与された機能が異なること、具体的には、機能性基板11に偏光性が付与されるのに代えて、機能性基板11にハーフミラー性が付与されていること以外は、図3に示す光学シート15と同様である。
【0232】
すなわち、第2実施形態の光学シート15では、図4に示すように、機能性基板11は、第1基板111と第2基板112との間において偏光膜113を備えているのに代えて、ハーフミラー層117を備えている。これにより、光学シート15(機能性基板11)は、入射光から所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取り出す機能(偏光性)に代えて、入射光のうち、特定の波長領域の光を選択的に反射し、残部を透過させる機能(ハーフミラー性)を発揮する。
【0233】
ハーフミラー層117は、入射する光のうち、特定の波長領域の光を選択的に反射し、残部を透過させることから、光学シート15を湾曲形状をなすものとした湾曲光学シート10の裏面側に人が位置する場合、すなわち、人がサングラス100を装着したときには、人(装着者)により湾曲光学シート10を介して、湾曲光学シート10の表側を視認することができる。また、湾曲光学シート10の表側で、反射された特定の波長領域の光が、湾曲光学シート10を介して装着者の反対側に位置する人に、視認されることとなるため湾曲光学シート10を、意匠性を備えるものとし得る。
【0234】
このハーフミラー層117は、本実施形態では、図4に示すように、高屈折率層119と、高屈折率層119よりも光屈折率(以下、単に「屈折率」と言うこともある。)が低い低屈折率層118とを有する積層体で構成されている。図示の構成では、表側(第2基板112側)から、高屈折率層119と低屈折率層118との順で積層されている。
【0235】
高屈折率層119および低屈折率層118は、例えば、抵抗加熱法、電子ビーム加熱法(EB法)等の真空蒸着等により成膜された蒸着膜であり、ハーフミラー層117はこれらの積層体で構成される。
【0236】
また、高屈折率層119および低屈折率層118の構成材料としては、例えば、SiO2、SiO、TiO、TiO、Ti23、Ti25、Al23、TaO2、Ta25、NdO2、NbO、Nb23、NbO2、Nb25、CeO2、MgO、Y23、SnO2、WO3、HfO2、ZrO2、Sc3、CrO、Cr、In、La、CaF、MgF2、NaAlF、AlF、BaF、CeF、LaF、LiF、NaAl14、NdF、YF等の酸化物またはフッ化物や、In、Cr、Ti、Ni、Au、Cu、Sn、Zr、Al等の金属材料が挙げられる。
【0237】
高屈折率層119の構成材料は、上記のうち金属材料で構成する場合には、CrまたはZrで構成されるものであるのが好ましい。一方、低屈折率層118の構成材料は、上記のうち金属材料で構成する場合には、InまたはAlであるのが好ましい。これにより、高屈折率層119の屈折率を、低屈折率層118の屈折率よりも高くすることができる。そのため、ハーフミラー層117は、ハーフミラー機能を確実に発揮する。さらに、ハーフミラー層117の曲げ性を高めることができる。そのため、光学シート15を、湾曲形状をなす湾曲光学シート10とする際に、ハーフミラー層117における、クラックの発生を的確に抑制または防止することができる。
【0238】
また、高屈折率層119の構成材料は、上記のうち金属酸化物で構成する場合には、Ta、HfO、ZrO、Y、Sc、CeOであるのが好ましく、ZrO、CeOであるのがさらに好ましい。一方、低屈折率層118の構成材料は、上記のうち金属酸化物で構成する場合には、SiO、SiO、MgF、CaF、NaAlF、NaAl14であるのが好ましい。これにより、高屈折率層119の屈折率を、低屈折率層118の屈折率よりも高くすることができる。そのため、ハーフミラー層117は、ハーフミラー機能を発揮する。
【0239】
ハーフミラー層117を、かかる構成をなすものとすることで、光学シート15(湾曲光学シート10)の下側(表側の面)から入射した光の一部が低屈折率層118を透過し、光学シート15の上側(裏側の面)から出射される。そのため、湾曲光学シート10の上側(裏面側)に位置する人により、この湾曲光学シート10を介して、湾曲光学シート10の下側(表側)を視認することができる。また、入射する光の残部が、低屈折率層118を反射することから、湾曲光学シート10を下面側(表面側)から見たとき、この低屈折率層118は、ミラー層としての機能も発揮する。
【0240】
また、高屈折率層119が特定の波長領域の光を選択的に反射するミラー層としての機能を発揮することにより、湾曲光学シート10の下側(表側の面)から入射した光のうち、特定の波長領域の光が、低屈折率層118と高屈折率層119との界面、さらに第2接着剤層116と高屈折率層119との界面において、選択的に反射する。そのため、湾曲光学シート10の下面側(表面側)すなわち第2基板112側では、低屈折率層118で反射された前記光の残部と、高屈折率層119で反射された特定の波長領域の光とが第3者により視認されることから、結果的に、高屈折率層119において選択的に反射された特定の波長領域の光に基づく色が視認される。
【0241】
なお、ハーフミラー層117は、上記のような高屈折率層119と低屈折率層118との積層体で構成する場合の他、例えば、Au、Cu、In等を主材料として構成される金属膜からなる単層体で構成することもできる。かかる構成をなす単層体で構成することで、ハーフミラー層117の厚さの薄膜化を図ることができる。ただし、ハーフミラー層117を、上述したような積層体すなわち複数層(多層膜)で構成することで様々な反射色を再現することができ、デザイン性に優れたものとし得る。
【0242】
かかる構成をなすハーフミラー層117を、上述したような第1基板111と第2基板112との間に配置することで、ハーフミラー層117の反射率の低下およびハーフミラー層117の色調の変化が生じるのを防止することができる。
【0243】
また、高屈折率層119および低屈折率層118の平均厚さ(物理厚さ)は、それぞれ、同じであってもよく、異なっていてもよいが、1nm以上200nm以下であるのが好ましく、1.5nm以上150nm以下であるのがより好ましい。
【0244】
高屈折率層119および低屈折率層118の厚さ(光学厚さ:500nmの波長に対して)は、0.002/4λnm以上0.4/4λnm以下であるのが好ましく、0.003/4λnm以上0.3/4λnm以下であるのがより好ましい。
【0245】
高屈折率層119および低屈折率層118をこのような厚さとすることにより、ハーフミラー層117に、ハーフミラーとしての機能を確実に付与することができる。
【0246】
また、ハーフミラー層117の総厚(高屈折率層119および低屈折率層118の厚さの和)は、5nm以上500nm以下であるのが好ましく、7.5nm以上450nm以下であるのがより好ましく、10nm以上400nm以下であるのがさらに好ましい。これにより、ハーフミラー層117に、ハーフミラーとしての機能を確実に付与することができる。また、光学シート15を湾曲光学シート10とするために、その少なくとも一部を熱成形するために、光学シート15(ハーフミラー層117)を曲げ変形させた際に、ハーフミラー層117にクラックが生じてしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0247】
また、高屈折率層119と低屈折率層118との屈折率差(光屈折率差)は、0.3以上2以下であるのが好ましく、0.4以上1.5以下であるのがより好ましい。これにより、ハーフミラー層117に、ハーフミラー層としての機能を確実に発揮させることができる。
【0248】
このような第2実施形態の光学シート15によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0249】
なお、前記第1実施形態では、機能性基板11が偏光膜113を備え、これにより、機能性基板11(光学シート15)に偏光性が付与され、また、前記第2実施形態では、機能性基板11がハーフミラー層117を備え、これにより、機能性基板11(光学シート15)にハーフミラー性が付与される場合について説明したが、光学シート15において、機能性基板11は、かかる構成のものに限定されず、例えば、機能性基板11は、偏光膜113とハーフミラー層117とを備え、偏光性とハーフミラー性との双方を発揮するものであってもよいし、さらには、機能性基板11は、偏光膜113およびハーフミラー層117の形成が省略され、単に、光透過性を発揮するものであってもよい。
【0250】
<ヘッドアップディスプレイ>
また、光学シート15(本発明の光学シート)を湾曲形状として湾曲光学シート10を備えるものとして、前記では、サングラス100が備えるレンズ30について説明したが、以下では、収納体353が備える窓部151を覆うように設けられるカバー部材として、ヘッドアップディスプレイ350が湾曲光学シート10を備える場合について説明する。
【0251】
図5は、本発明の光学シートを湾曲形状とした湾曲光学シートを、自動車のヘッドアップディスプレイを構成するカバー部材に適用した場合の実施形態を示す側面図、図6は、図5中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図5図6中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、図5図6中の左側を「前」または「前方」、右側を「後」または「後方」と言う。
【0252】
図5に示すように、ヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display)350は、自動車300に搭載して用いられる。このヘッドアップディスプレイ350は、ダッシュボード301の上部に内蔵されている。
【0253】
図6に示すように、ヘッドアップディスプレイ350は、光源351と、反射部材352と、収納体353とを備えている。
【0254】
光源351は、赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの色のレーザ光LSを独立して照射することができる。そして、光源351を走査しつつ、各色のレーザ光LSの照射タイミング等を制御することにより、画像を形成することができる。光源351としては、例えば、レーザ光源やLCD光源等が挙げられる。
【0255】
反射部材352は、例えばプリズムで構成されており、光源351からのレーザ光LSを反射することができる。反射部材352で反射されたレーザ光LSは、フロントガラス302をスクリーンとして、当該フロントガラス302の裏面302a(内側の面)に投影される。この投影光は、前記画像として運転手Hに認識される(図5図6参照)。
【0256】
図6に示すように、収納体353は、箱状をなし、その内側に、光源351や反射部材352、その他、ヘッドアップディスプレイ350を構成する部品等を収納することができる。また、収納体353は、フロントガラス302側に向かって開口した開口部で構成された窓部151を有している。この窓部151を介して、レーザ光LSは、収納体353の外部、すなわち、フロントガラス302に向かって出射される。
【0257】
また、収納体353の窓部151には、カバー部材として、湾曲光学シート10が窓部151を覆うように設置されている。これにより、レーザ光LSのフロントガラス302に向けた出射が可能となるとともに、塵や埃等の異物が窓部151を介して収納体353内に侵入するのを防止することができる。したがって、光源351のレンズや反射部材352が当該異物によって曇ったり汚れたりするのを防止することができる。
【0258】
この窓部151を覆うように設置されたカバー部材として用いられる湾曲光学シート10が、光学シート15を湾曲形状としたものであり、この光学シート15を本発明の光学シートで構成することで、サングラス100が備えるレンズ30の表側を被覆するように設けられる湾曲光学シート10に、光学シート15(本発明の光学シート)を湾曲形状としたものを適用した場合に得られるのと同様の効果を得ることができる。
【0259】
<風防板>
さらに、光学シート15(本発明の光学シート)を湾曲形状とした湾曲光学シート10を備えるものとして、以下では、オートバイが備える風防板(車両用風防板)として、湾曲光学シート10が用いられる場合について説明する。
【0260】
図7は、本発明の光学シートを湾曲形状とした湾曲光学シートを、風防板に適用した場合の実施形態を示す図((a)平面図、(b)側面図、(c)図7(a)中のB-B線断面図)である。なお、以下では、説明の都合上、図7(a)の紙面手前側を「前」、紙面奥側を「後」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」、下側を「下」と言い、図7(b)の紙面手前側を「右」、紙面奥側を「左」、左側を「前」、右側を「後」、上側を「上」、下側を「下」と言い、図7(c)の紙面手前側を「下」、紙面奥側を「上」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「前」、下側を「後」と言う。
【0261】
風防板400は、図7に示すように、上下方向に長尺に形成された本体部(中央部)451と、本体部451の下側で、それぞれ、左右方向に突出する2つの側面部452と、側面部452を本体部451に連結する連結部453とを有しており、その全体形状が左右対称な湾曲形状をなしている。
【0262】
本体部451は、風防板400のほぼ中央に位置し、上下方向(一方向に直交する方向)に長尺な形状をなしており、その下側でオートバイ等の本体に固定され、人(操縦者)は、この本体部451を介して、前方に位置するものを視認する。
【0263】
この本体部451において、前面は、湾曲凸面で構成され、後面は、湾曲凹面で構成されており、これにより、本体部451は、前面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、本体部451において、この湾曲形状は、左右方向(一方向)に沿って形成されている。
【0264】
2つの側面部452は、本体部451の下側で、それぞれ、左右方向に突出するように1つずつ形成され、オートバイ等の走行時に、側面側からの風の巻き込みを抑制するために設けられる。
【0265】
この側面部452において、本体部451と同様に、前面は、湾曲凸面で構成され、後面は、湾曲凹面で構成されており、これにより、側面部452は、前面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、側面部452において、この湾曲形状は、左右方向に沿って形成されている。
【0266】
2つの連結部453は、本体部451と、2つの側面部452との間に、それぞれ、介在してこれら同士を連結している。
【0267】
この連結部453において、前面は、湾曲凹面で構成され、後面は、湾曲凸面で構成されており、これにより、連結部453は、後面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、連結部453において、この湾曲形状は、左右方向に沿って形成されている。
【0268】
かかる構成をなす、全体形状が左右対称な湾曲形状となっている風防板400において、風防板400を構成する各部451~453が一体的に形成されており、この風防板400が、光学シート15を湾曲形状とした湾曲光学シート10からなり、この光学シート15を本発明の光学シートで構成することで、サングラス100が備えるレンズ30の表側を被覆するように設けられる湾曲光学シート10に、光学シート15(本発明の光学シート)を湾曲形状としたものを適用した場合に得られるのと同様の効果を得ることができる。
【0269】
以上、本発明の光学シートおよび光学部品を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、光学シートを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【実施例0270】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0271】
1.原材料の準備
まず、光学シート15の製造に用いた原材料を以下に示す。
【0272】
(ポリカーボネート系樹脂1)
ポリカーボネート系樹脂1として、ビスフェノールA型ポリカーボネート(三菱エンジニアプラスチックス社製、「E2000FN」)を用意した。
【0273】
(シリコン変性環状エーテル化合物1)
まず、信越化学工業社製「KBM-4803」60gおよび信越化学工業製「KBM―303」5.4gを、1-メトキシ-2-プロパノール(PGME)15mLに溶解して混合溶液Aを得た。次に、水12mLとメタノール4.8mLに塩化マグネシウム0.01gを溶解して混合溶液Bを得た。そして、混合溶液Aに混合溶液Bを、5分かけて徐々に滴下した。その後、80℃の条件下で6時間攪拌を行うことで、反応を進行させ、反応終了後にロータリーエバポレーターにて溶媒を除去することで、シリコン変性環状エーテル化合物1すなわちハード成分を得た。
【0274】
(ウレタン(メタ)アクリレート1)
ソフト成分すなわちウレタン(メタ)アクリレート1として、2官能ウレタンアクリレート(ダイセルオルネクス社製、「EBECRYL270」)を用意した。
【0275】
(ウレタン(メタ)アクリレート2)
ソフト成分すなわちウレタン(メタ)アクリレート2として、2官能ウレタンアクリレート(三菱ケミカル社製、「UV6640」)を用意した。
【0276】
(ウレタン(メタ)アクリレート3)
ソフト成分すなわち3として10官能ウレタンアクリレート(三菱ケミカル社製、「UV1700B」)を用意した。
【0277】
(密着剤(ラジカル重合性基を備えるモノマー成分)1)
密着剤1すなわちラジカル重合性基を備えるモノマー成分として、2官能アクリレートモノマー(新中村化学工業社製、「A-BPE-4」)を用意した。
【0278】
(密着剤(ラジカル重合性基とカチオン重合性基とを備えるモノマー成分)2)
密着剤2すなわちラジカル重合性基とカチオン重合性基との双方を備えるモノマー成分として、3-ヒドロキシブチルアクリレート、イソボロニルアクリレート(ダイセル社製、「CYM-M100」)を用意した。
【0279】
(ラジカル重合開始剤1)
ラジカル重合開始剤1として、光ラジカル重合開始剤(IGM Resins B.V.社製、「Omnirad 754」)を用意した。
【0280】
(カチオン重合開始剤1)
カチオン重合開始剤1として、光酸発生剤(サンアプロ社製、「CPI-101A」)を用意した。
【0281】
(イソシアネート化合物1)
イソシアネート化合物1として、3官能ポリイソシアネート(DIC社製、「バーノックDN-992S」)を用意した。
【0282】
(紫外線吸収剤1)
紫外線吸収剤1として、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製、「Tinuvin 400」)を用意した。なお、この紫外線吸収剤1(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤)は、2つの水酸基を有するものである。
【0283】
(紫外線吸収剤2)
紫外線吸収剤2として、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製、「Tinuvin 1577 ED」)を用意した。
【0284】
(紫外線吸収剤3)
紫外線吸収剤3として、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製、「Tinuvin 928」)を用意した。なお、この紫外線吸収剤3(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤)は、1つの水酸基を有するものである。
【0285】
(光安定剤1)
光安定剤1として、メタクリロイル基を備えるヒンダードアミン系光安定剤(アデカ社製、「LA-82」)を用意した。
【0286】
(光増感剤1)
光増感剤1として、光カチオン増感剤(エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル社製、「UVS-1331」)を用意した。
【0287】
2.コート層を形成するための樹脂組成物の調製
64.0重量部のシリコン変性環状エーテル化合物1と、15.0重量部のウレタン(メタ)アクリレート1と、4.5重量部の密着剤1と、0.6重量部の密着剤2と、2.5重量部のラジカル重合開始剤1と、2.6重量部のカチオン重合開始剤1と、5.0重量部のイソシアネート化合物1と、5.0重量部の紫外線吸収剤1と、0.3重量部の光安定剤1と、0.5重量部の光増感剤1とを配合したものを、溶剤としての酢酸イソブチル(AciBu)で希釈し、その後、攪拌することで、コート層の形成に用いる樹脂組成物を調製した(表1参照)。
【0288】
3.光学シートの形成
(実施例1)
まず、98.0重量部のポリカーボネート系樹脂1と、2.0重量部の紫外線吸収剤2とで構成される樹脂組成物を混錬して得られた混錬物を、押し出し成形することで、厚さ2.5mmの透明基板を得た。
【0289】
次いで、予め調製した樹脂組成物を、透明基板の表面および裏面に、それぞれ、塗布して加温乾燥させた後に、紫外線を照射することで、透明基板の表面および裏面に、それぞれ、厚さ10.0μmの樹脂組成物の半硬化物で構成されるコート層12を形成して、実施例1の光学シート15を得た。
【0290】
(実施例2~5、比較例1~3)
被覆層を形成するための硬化性樹脂組成物として、表1に示す構成材料を、表1に示す含有量で含むものを用いてコート層12を形成したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例2~5、比較例1~3の光学シート15を得た。
【0291】
3.評価
各実施例および各比較例の光学シート15を、以下の方法で評価した。
【0292】
<1>光学シートの熱曲げ性の確認
まず、各実施例および各比較例の光学シート15について、それぞれ、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に、曲率半径100mmRおよび120mmRの金属型に押し当てて熱曲げ加工を施すことで成形した。そして、25℃に冷却したときにおける、コート層12でのクラックの有無を目視にて確認し、以下に示す評価基準に基づいて評価した。
【0293】
[評価基準]
コート層12でのクラックの発生が、
◎: 曲率半径100mmRの湾曲形状をなす成形によっても認められない。
〇: 曲率半径100mmRの湾曲形状をなす成形では認められるが、
曲率半径120mmRの湾曲形状をなす成形では認められない。
×: 曲率半径120mmRの湾曲形状をなす成形でも認められる。
【0294】
<2>光学シートの色変化の測定
各実施例および各比較例の光学シート15について、それぞれ、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、JIS K 7350-4の表3-A法-サイクルNo.1に準じて、キセノンウェザーメーターを用いてコート層12側から紫外線を1000時間照射した後において、光学シート15におけるJIS K 7373によって規定されるYIの変化値を測定し、得られた変化値(ΔYI)に基づいて、次のように評価した。
【0295】
[評価基準]
◎:ΔYIが0.5以下で外観の変化が認められない。
〇:ΔYIが0.5超1.0未満であり、
外観変化が若干見られるものの、光学シート15として使用に影響はない。
×:ΔYIが1.0以上であり、
外観変化が明らかに見られ、光学シート15として使用することは困難である。
【0296】
<3>光学シートの耐摩耗性試験
各実施例および各比較例の光学シート15について、それぞれ、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、ECE43に応じたワイパーラボ試験を、Gardner摩耗試験機(BYK社製)を用いて施した後において、ヘーズメーター(日本電色工業社、「COH7700」)を用いて、光学シート15のヘイズ値を、JIS K 7136に準拠して測定し、得られたヘイズ値に基づいて、次のように評価した。
【0297】
[評価基準]
◎:ヘイズ値が3.0以下で外観の変化が認められない。
〇:ヘイズ値が3.0超5.0未満であり、
外観変化が若干見られるものの、光学シート15として使用に影響はない。
×:ヘイズ値が5.0以上であり、
外観変化が明らかに見られ、光学シート15として使用することは困難である。
【0298】
なお、Gardner摩耗試験機(BYK社製)を用いたECE43に応じたワイパーラボ試験は、懸濁液としてISO テスト ダスト A4の2.5重量%水分散液、ワイパーブレードとしてボッシュ社製(H-Stoff P6.3)を用い、摩擦速度:160±15mm/s、摩擦回数:20,000cyclesの条件で実施した。
【0299】
<4>光学シートの鉛筆硬度の測定
まず、各実施例および各比較例の光学シート15について、それぞれ、JIS K 5400に記載の鉛筆法により、コート層12の引っかき硬度を測定した。
【0300】
さらに、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に、曲率半径120mmR100mmRの金属型に押し当てて熱曲げ加工を施して成形することで、湾曲形状をなす湾曲光学シート10を得た。そして、得られた湾曲光学シート10について、それぞれ、JIS K 5400に記載の鉛筆法により、コート層12の引っかき硬度を測定した。
【0301】
<5>光学シートに対するクロスカット試験
各実施例および各比較例の光学シート15について、それぞれ、170℃の熱風オーブンで10min加熱した後に冷却し、その後、JIS K 5600-5-6で規定されたクロスカット法により、格子状に切断された100個のコート層12の透明基板に対する付着の有無を観察した。
【0302】
各実施例および各比較例の光学シート15について、それぞれ、JIS K 7350-4の表3-A法-サイクルNo.1に準じて、キセノンウェザーメーターを用いてコート層12側から紫外線を、500時間および1000時間照射した後において、それぞれ、JIS K 5600-5-6で規定されたクロスカット法により、格子状に切断された100個のコート層12の透明基板に対する付着の有無を観察した。
[評価基準]
◎:1000時間照射後に100/100個の付着が認められる。
〇:500時間照射後に100/100個の付着が認められるものの、
1000時間照射後には0/100個のとおり付着が認めらない。
×:500時間照射後に0/100個のとおり付着が認めらない。
【0303】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の光学シート15における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0304】
【表1】
【0305】
表1に示したように、各実施例における光学シートでは、コート層を構成する樹脂組成物の半硬化物が、ラジカル重合性基を有するソフト成分と、カチオン重合性基を有するハード成分とを双方を含んでおり、これにより、前記要件A~Cを満足する結果を示した。
【0306】
これに対して、各比較例における光学シートでは、コート層を構成する樹脂組成物の半硬化物が、ラジカル重合性基を有するソフト成分と、カチオン重合性基を有するハード成分とのうちの一方を含んでおらず、これにより、前記要件A~Cのうちの少なくとも1つを満足しないことが明らかとなった。
【符号の説明】
【0307】
10 湾曲光学シート
11 機能性基板
12 第1コート層
13 第2コート層
15 光学シート
20 フレーム
21 リム部
22 ブリッジ部
23 テンプル部
24 ノーズパッド部
30 レンズ
35 樹脂層
40 金型
50 保護フィルム
100 サングラス
111 第1基板
112 第2基板
113 偏光膜
114 第1接着剤層
116 第2接着剤層
117 ハーフミラー層
118 低屈折率層
119 高屈折率層
150 多層積層体
151 窓部
200 湾曲多層積層体
300 自動車
301 ダッシュボード
302 フロントガラス
302a 裏面
350 ヘッドアップディスプレイ
351 光源
352 反射部材
353 収納体
400 風防板
451 本体部
452 側面部
453 連結部
H 運転手
LS レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7