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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052330
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20240404BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240404BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
E02F3/43 C
E02F9/22 E
E02F9/26 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158978
(22)【出願日】2022-09-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】阿部 広太
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 昭広
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA01
2D003BA02
2D003BB02
2D003BB03
2D003BB04
2D003DA03
2D003DB02
2D003DB04
2D003DB06
2D015HA03
2D015HB02
2D015HB03
2D015HB04
2D015HB07
(57)【要約】
【課題】作業装置を駆動する油圧シリンダの速度応答性の悪化、および当該油圧シリンダの波打ちや逸走を防ぐことにより、高い精度で作業を行うことが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】コントローラ40は、油圧シリンダ5を駆動して作業装置1Aに所定の動作を行わせている間に測定された油圧シリンダ5のメータアウト圧力を所定の第1下限値Pm1から所定の第1上限値Pm2までの範囲内に収めるための流量制御弁D3の目標操作圧の補正値Picを算出し、補正値Picに応じて前記目標操作圧を補正する。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に回動可能に取り付けられた作業装置と、
前記作業装置を駆動する油圧シリンダと、
前記作業装置を操作するための操作装置と、
油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから前記油圧シリンダに供給される作動油の流量を制御する流量制御弁と、
前記流量制御弁の操作圧を生成する電磁弁と、
前記操作装置の操作量に基づいて、前記作業装置の動作範囲が目標面及びその上方に制限されるように前記油圧シリンダの目標速度を算出し、前記目標速度に基づいて前記流量制御弁の目標操作圧を算出し、前記目標操作圧に応じて前記電磁弁を制御するコントローラとを備えた作業機械において、
前記油圧シリンダのメータアウト圧力を測定するための圧力センサを備え、
前記コントローラは、前記油圧シリンダを駆動して前記作業装置に所定の動作を行わせている間に測定された前記メータアウト圧力を所定の第1下限値から所定の第1上限値までの範囲内に収めるための前記目標操作圧の補正値を算出し、前記補正値に応じて前記目標操作圧を補正する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、
前記作業装置に前記所定の動作を行わせている間に測定された前記メータアウト圧力の最小値が前記第1下限値を下回る場合は、前記目標操作圧が減少するように前記補正値を算出し、
前記作業装置に前記所定の動作を行わせている間に測定された前記メータアウト圧力の最大値が前記第1上限値を上回る場合は、前記目標操作圧が増加するように前記補正値を算出し、前記目標操作圧を前記補正値に応じて増減させることにより前記目標操作圧を補正する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、
前記作業装置に前記所定の動作を行わせている間に測定された前記メータアウト圧力の平均値を算出し、
前記平均値が所定の第2下限値を下回る場合は、前記目標操作圧が減少するように前記補正値を算出し、
前記平均値が所定の第2上限値を上回る場合は、前記目標操作圧が増加するように前記補正値を算出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記圧力センサは、前記油圧シリンダのメータイン圧力を検出し、
前記コントローラは、前記圧力センサで検出された前記メータイン圧力と前記油圧シリンダの受圧面積比とを乗算することにより、前記メータアウト圧力の測定値を算出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
前記作動油の温度を検出する温度センサを備え、
前記コントローラは、前記温度センサで検出された前記作動油の温度が所定の閾値以上の場合に前記補正値を算出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械において、
前記作業装置は、前記車体に回動可能に取り付けられたブームと、前記ブームの先端に回動可能に取り付けられたアームと、前記アームの先端に回動可能に取り付けられたバケットとを有し、
前記油圧シリンダは、前記ブームを駆動するブームシリンダ、または前記アームを駆動するアームシリンダであり、
前記所定の動作は、前記バケットの爪先が地面に対して平行に設定された前記目標面に沿って移動するように前記バケットを引き寄せる水平引き動作である
ことを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項1に記載の作業機械において、
前記作業装置は、前記車体に回動可能に取り付けられたブームと、前記ブームの先端に回動可能に取り付けられたアームと、前記アームの先端に回動可能に取り付けられたバケットとを有し、
前記油圧シリンダは、前記ブームを駆動するブームシリンダであり、
前記所定の動作は、前記アームまたは前記バケットを動作させず、前記ブームを上昇させるブーム上げ単独動作である
ことを特徴とする作業機械。
【請求項8】
請求項1に記載の作業機械において、
前記作業装置は、前記車体に回動可能に取り付けられたブームと、前記ブームの先端に回動可能に取り付けられたアームとを有し、
前記油圧シリンダは、前記ブームを駆動するブームシリンダと前記アームを駆動するアームシリンダとを含み、
前記油圧ポンプは、前記ブームシリンダに優先的に作動油を供給する可変容量型の第1油圧ポンプと、前記アームシリンダに優先的に作動油を供給する可変容量型の第2油圧ポンプとを含み、
前記流量制御弁は、前記第1油圧ポンプから前記ブームシリンダに供給される作動油の流量を制御する第1流量制御弁と、前記第2油圧ポンプから前記アームシリンダに供給される作動油の流量を制御する第2流量制御弁とを含み、
前記電磁弁は、前記第1流量制御弁の操作圧を生成する第1電磁弁と、前記第2流量制御弁の操作圧を生成する第2電磁弁とを含み、
前記コントローラは、
前記所定の動作が前記第1流量制御弁のみを駆動する動作である場合に、前記第1電磁弁の目標操作圧の補正値を算出し、
前記所定の動作が前記第2流量制御弁のみを駆動する動作である場合に、前記第2電磁弁の目標操作圧の補正値を算出する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシンコントロールが実行可能な作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベル等の作業機械に対して半自動運転、自動運転、遠隔操縦等の要望が高まっており、作業機械の電子制御化が進んでいる。作業機械の電子制御化の手法としては、電磁弁を用いて油圧アクチュエータを制御するものがある。例えば、油圧シリンダ、油圧モータ等の油圧アクチュエータを制御するための制御弁を、電磁弁により生成されたパイロット圧(操作圧)で操作する方法が知られている。
【0003】
半自動運転や自動運転において、バケットの爪先を所定の目標面に沿うように動作させる領域制限制御には、複数の油圧アクチュエータを如何なる負荷条件や速度においても、各アクチュエータの目標速度で精度良く制御することが重要となる。ここで、作業機械の電子制御において、作業機械の個体差を考慮し、制御に用いるデータを較正し、掘削精度を向上させる技術が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、半自動運転における掘削精度の向上を目的とした発明が開示されている。特許文献1に記載の作業装置は、操作圧と油圧シリンダの動作速度との関係を規定したデータを記憶したコントローラを備えている。コントローラは、操作圧を生成する電磁弁(電磁比例制御弁)に出力している電流の電流値を、段階的に上昇させる。コントローラは油圧シリンダが動作を開始する電流値と、ある予め定められた電流値の電流が電磁弁に出力したときの油圧シリンダの動作速度に基づいて、上記データにおける操作圧と油圧シリンダの動作速度との関係を較正する。なお、油圧シリンダの動作速度は、油圧シリンダの入り口側に流れる作動油の流量であるメータイン流量と、メータイン流量を制御するための制御弁の開口であるメータイン開口を因子としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015/137525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のメータイン開口とメータイン流量を因子とする油圧シリンダの動作速度に基づいた操作圧と油圧シリンダの動作速度との関係を規定したデータの較正では、メータアウト開口の絞りによる圧損(ブレーキ圧)が考慮されておらず、所望の動作速度で油圧シリンダを駆動した場合であっても、メータアウト開口のばらつきによって掘削精度が悪化するおそれがある。
【0007】
具体的には、メータアウト開口の絞りによる圧損が大き過ぎると、ブレーキが利きすぎる状態で油圧シリンダを駆動することになるため、燃費や油圧シリンダの速度応答性の悪化に繋がる。一方、メータアウト開口の絞りによる圧損が小さ過ぎると、ブレーキが利かない状態で油圧シリンダを駆動することになるため、油圧シリンダの動作安定性が失われ、油圧シリンダの波打ちや逸走が発生する。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業装置を駆動する油圧シリンダの速度応答性の悪化、および当該油圧シリンダの波打ちや逸走を防ぐことにより、高い精度で作業を行うことが可能な作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に回動可能に取り付けられた作業装置と、前記作業装置を駆動する油圧シリンダと、前記作業装置を操作するための操作装置と、油圧ポンプと、前記油圧ポンプから前記油圧シリンダに供給される作動油の流量を制御する流量制御弁と、前記流量制御弁の操作圧を生成する電磁弁と、前記操作装置の操作量に基づいて、前記作業装置の動作範囲が目標面及びその上方に制限されるように前記油圧シリンダの目標速度を算出し、前記目標速度に基づいて前記流量制御弁の目標操作圧を算出し、前記目標操作圧に応じて前記電磁弁を制御するコントローラとを備えた作業機械において、前記油圧シリンダのメータアウト圧力を測定するための圧力センサを備え、前記コントローラは、前記油圧シリンダを駆動して前記作業装置に所定の動作を行わせている間に測定された前記メータアウト圧力を所定の第1下限値から所定の第1上限値までの範囲内に収めるための前記目標操作圧の補正値を算出し、前記補正値に応じて前記目標操作圧を補正するものとする。
【0010】
以上のように構成した本発明によれば、作業装置を駆動する油圧シリンダのメータアウト圧が所定の範囲内に収まるように流量制御弁の目標操作圧が補正することにより、作業装置を駆動する油圧シリンダの速度応答性の悪化、および当該油圧シリンダの波打ちや逸走を防ぐことができるため、高い精度で作業を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業装置を駆動する油圧シリンダの速度応答性の悪化、および当該油圧シリンダの波打ちや逸走を防ぐことにより、高い精度で作業を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施例に係る油圧ショベルの構成図
図2】本発明の第1実施例に係る油圧ショベルに搭載された油圧システムの構成図
図3】本発明の第1実施例に係る油圧ショベルの基準座標系を示す図
図4】本発明の第1実施例に係る油圧ショベルに搭載された制御システムのハードウェア構成図
図5】本発明の第1実施例に係る表示装置の表示画面の一例を示す図
図6】本発明の第1実施例に係るコントローラの機能ブロック図
図7】バケットの先端が補正後の目標速度ベクトルの通りにMCされたときの軌跡の一例を示す図
図8】流量制御弁のメータアウト通路部の開口線図
図9】本発明の第1実施例に係る学習部により実行される学習処理を示すフローチャート
図10】本発明の第1実施例に係る学習開始姿勢と学習開始目標面を示す図
図11】本発明の第1実施例に係る学習開始姿勢画面の一例を示す図
図12】本発明の第1実施例に係る学習処理において記憶されたシリンダ圧の時系列変化を示す図
図13】本発明の第1実施例に係る補正処理を示す図
図14】オープンセンタシステムを採用した場合の油圧システムの構成図
図15】本発明の第2実施例に係る学習部により実行される学習処理を示すフローチャート
図16】本発明の第2実施例に係る学習開始姿勢を示す図
図17】本発明の第3実施例に係る学習部により実行される学習処理を示すフローチャート
図18】本発明の第3実施例に係る補正処理を示す図
図19】本発明の第4実施例に係る学習部により実行される学習処理を示すフローチャート
図20】本発明の第6実施例に係る学習部により実行される学習処理を示すフローチャート
図21】本発明の第7実施例に係る補正処理を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る作業機械の実施形態について、油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の要素には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例0014】
図1は、本発明の第1実施例に係る油圧ショベルの側面図である。なお、本実施例では作業装置の先端にアタッチメント(作業具)としてバケットを装着した油圧ショベルを例示して説明するが、バケット以外のアタッチメントを装着した油圧ショベルにも本発明は適用され得る。
【0015】
図1に示すように、油圧ショベル1は、車体1Bと、車体1Bに取り付けられる多関節型の作業装置(フロント作業機)1Aとを含んで構成されている。車体1Bは、左右の走行モータ(油圧モータ)により走行する走行体11と、走行体11の上に取り付けられた旋回体12とを有する。旋回体12は、旋回モータ(油圧モータ)により走行体11に対して旋回する。旋回体12の旋回中心軸は油圧ショベル1が水平地に停車した状態で鉛直である。旋回体12には運転室16が設けられている。
【0016】
作業装置1Aは、鉛直面内でそれぞれ回動する複数の駆動対象部材(ブーム8、アーム9及びバケット10)が連結された構成である。ブーム8の基端はブームピン91を介して旋回体12の前部に回動可能に連結されている。このブーム8の先端にはアームピン92を介してアーム9が回動可能に連結されており、アーム9の先端にはバケットピン93を介してバケット10が回動可能に連結されている。ブーム8は油圧シリンダであるブームシリンダ5によって駆動され、アーム9は油圧シリンダであるアームシリンダ6によって駆動され、バケット10は油圧シリンダであるバケットシリンダ7によって駆動される。油圧シリンダ5,6,7は、一端が閉塞された有底筒状のシリンダチューブと、シリンダチューブの他端の開口を塞ぐヘッドカバーと、ヘッドカバーを貫通し、シリンダチューブに挿入されるシリンダロッドと、シリンダロッドの先端に設けられ、シリンダチューブ内をロッド室とボトム室とに区画するピストンと、を備える。
【0017】
ブームピン91にはブーム角度センサ30、アームピン92にはアーム角度センサ31、バケットリンク13にはバケット角度センサ32、旋回体12には車体傾斜角度センサ33が取り付けられている。角度センサ30,31,32は、それぞれブーム8、アーム9、バケット10の回動角度α,β,γ(図3)を検出し、検出結果を表す信号をコントローラ40(後述)に出力する。車体傾斜角度センサ33は、基準面(例えば水平面)に対する旋回体12(車体1B)の車体傾斜角θ(図3)を検出し、検出結果を表す信号をコントローラ40(後述)に出力する。
【0018】
旋回体12には一対のGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球衛星測位システム)用のアンテナ(以下、GNSSアンテナと記す)14a,14bが設けられている。コントローラ40は、GNSSアンテナ14a,14bで受信された複数の測位衛星からの衛星信号(GNSS電波)に基づいて、グローバル座標系における旋回体12の位置及び方位を算出する。
【0019】
図2は、油圧ショベル1に搭載された油圧システムの構成図である。図2では、ブームシリンダ5、アームシリンダ6及びバケットシリンダ7に関わる油圧回路について示し、走行モータ及び旋回モータに関わる油圧回路については図示を省略している。
【0020】
運転室16内には、電気操作レバー装置A1~A3が設置されている。電気操作レバー装置A1,A3は、運転席(不図示)の左右の一方側に配置された操作レバーB1を共有している。操作レバーB1によって電気操作レバー装置A1が操作されると、コントローラ40が電磁弁55a,55b,56a,56bを作動させる。これにより、ブームシリンダ5(ブーム8)が駆動される。操作レバーB1によって電気操作レバー装置A3が操作されると、コントローラ40が電磁弁59a,59bを作動させる。これにより、バケットシリンダ7(バケット10)が駆動される。電気操作レバー装置A2は、運転席の左右の他方側に配置された操作レバーB2を有している。操作レバーB2によって電気操作レバー装置A2が操作されると、コントローラ40が電磁弁57a,57b,58a,58bを作動させる。これにより、アームシリンダ6(アーム9)が駆動される。
【0021】
ブームシリンダ5のロッド側の入出力口には圧力センサ5aが取り付けられ、ブームシリンダ5のボトム側の入出力口には圧力センサ5bが取り付けられている。アームシリンダ6のロッド側の入出力口には圧力センサ6aが取り付けられ、アームシリンダ6のボトム側の入出力口には圧力センサ6bが取り付けられている。バケットシリンダ7のロッド側の入出力口には圧力センサ7aが取り付けられ、バケットシリンダ7のボトム側の入出力口には圧力センサ7bが取り付けられている。
【0022】
旋回体12には、原動機であるエンジン18、第1メインポンプ201、第2メインポンプ202、第3メインポンプ203及びパイロットポンプ48が搭載されている。メインポンプ201,202,203及びパイロットポンプ48は、エンジン18によって駆動され、タンクから吸引した作動油を吐出する。第1メインポンプ201の吐出口には圧力センサ201bが取り付けられ、第2メインポンプ202の吐出口には圧力センサ202bが取り付けられ、第3メインポンプ203の吐出口には圧力センサ203bが取り付けられている。
【0023】
第1メインポンプ201はレギュレータ201aを有し、第2メインポンプ202はレギュレータ202aを有し、第3メインポンプ203はレギュレータ201aを有する。メインポンプ201,202,203は、レギュレータ201a,202a,203aによって1回転当たりの吐出容量(押しのけ容積)が制御される可変容量型の油圧ポンプである。本実施例におけるメインポンプ201,202,203は、斜板の傾転角によって吐出容量が制御される斜板式の油圧ポンプである。メインポンプ201,202,203は、複数の油圧アクチュエータ(ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7等)を駆動する圧油を吐出する。パイロットポンプ48は、1回転当たりの吐出容量が一定の固定容量型の油圧ポンプである。
【0024】
レギュレータ201a,202a,203aは、電気操作レバー装置A1~A3の操作量に基づきコントローラ40で演算されたレギュレータ圧の目標値(以下、目標レギュレータ圧とも記す)PPc201,PPc202,PPc203に応じた油圧信号によって駆動され、メインポンプ201,202,203の吐出容量を制御する。
【0025】
具体的には、レギュレータ201a,202a,203aは、それぞれレギュレータ電磁弁(不図示)を備えている。コントローラ40は、目標レギュレータ圧に応じた電気信号(励磁電流)をレギュレータ電磁弁に出力する。これにより、レギュレータ電磁弁が駆動され、レギュレータ電磁弁によって、斜板を操作するレギュレータ圧が生成される。レギュレータ電磁弁は、パイロットポンプ48の吐出圧(パイロット1次圧)を減圧することにより、コントローラ40からの指令に応じたレギュレータ圧(パイロット2次圧)を生成する電磁比例減圧弁である。
【0026】
レギュレータ電磁弁により生成されるレギュレータ圧によって斜板の傾転角(すなわち吐出容量)が変化することにより、メインポンプ201,202,203の吐出流量が変化する。したがって、メインポンプ201,202,203の吐出流量は、コントローラ40によって演算される目標レギュレータ圧に応じて変化する。
【0027】
油圧システムは、複数の電磁弁55a~59bを有する。複数の電磁弁55a~59bは、コントローラ40からの指令(電気信号)に応じて、後述する流量制御弁D1~D6を操作する操作圧を生成する。複数の電磁弁55a~59bは、パイロットポンプ48の吐出圧(パイロット1次圧)を減圧することにより、電気操作レバー装置A1~A3の操作方向及び操作量に応じた操作圧(パイロット2次圧)を生成する電磁比例減圧弁である。
【0028】
パイロットポンプ48の吐出配管170にはロック弁39が設けられる。吐出配管170におけるロック弁39の下流側は、複数に分岐され電磁弁55a~59bに接続されている。本実施例のロック弁39は電磁切換弁であり、そのソレノイドは旋回体12の運転室16に配置されたゲートロックレバー(不図示)の位置センサと電気的に接続されている。ゲートロックレバーのポジションは位置センサで検出され、その位置センサからゲートロックレバーのポジションに応じた信号がロック弁39に入力される。ゲートロックレバーのポジションがロック位置にあればロック弁39が閉じて吐出配管170が遮断され、パイロットポンプ48から電磁弁55a~59bへのパイロット圧の供給が遮断される。ゲートロックレバーのポジションがロック解除位置にあればロック弁39が開いて吐出配管170が開通し、パイロットポンプ48から電磁弁55a~59bへパイロット圧が供給される。吐出配管170が遮断された状態では電気操作レバー装置A1~A3による操作が無効化され、掘削等の動作が禁止される。
【0029】
コントローラ40は、電気操作レバー装置A1~A3の操作レバーB1~B2の操作量と操作方向に応じて電磁弁55a~59bを駆動する電気信号(励磁電流)を生成し、操作レバーB1,B2の操作方向に対応する電磁弁55a~59bに出力する。油圧システムは、メインポンプ201,202,203から吐出され油圧シリンダ5~7へ供給される作動油の流れを制御する制御弁ユニット15を備えている。制御弁ユニット15は、複数の流量制御弁D1~D6を含んで構成されている。
【0030】
流量制御弁D1(第1流量制御弁)は、電気操作レバー装置A1の操作に応じて、第1メインポンプ201からブームシリンダ5に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ40の指令によって駆動される電磁弁55a,55bによって生成された操作圧は、パイロットラインC1,C2を介して流量制御弁D1の受圧室E1,E2に入力される。流量制御弁D1のスプールは、受圧室E1,E2に入力される操作圧に応じて駆動される。流量制御弁D1のスプールが駆動されることにより、第1メインポンプ201からブームシリンダ5への圧油の供給方向及び流量が制御され、ブームシリンダ5が駆動される。
【0031】
流量制御弁D2(第2流量制御弁)は、電気操作レバー装置A1の操作に応じて、第2メインポンプ202からブームシリンダ5に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ40の指令によって駆動される電磁弁55a,55bによって生成された操作圧は、パイロットラインC3,C4を介して流量制御弁D2の受圧室E3,E4に入力される。流量制御弁D2のスプールは、受圧室E3,E4に入力される操作圧に応じて駆動される。流量制御弁D2のスプールが駆動されることにより、第2メインポンプ202からブームシリンダ5への圧油の供給方向及び流量が制御され、ブームシリンダ5が駆動される。
【0032】
流量制御弁D3(第3流量制御弁)は、電気操作レバー装置A1の操作に応じて、第3メインポンプ203からブームシリンダ5に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ40の指令によって駆動される電磁弁56a,56bによって生成された操作圧は、パイロットラインC5,C6を介して流量制御弁D3の受圧室E5,E6に入力される。流量制御弁D3のスプールは、受圧室E5,E6に入力される操作圧に応じて駆動される。流量制御弁D3のスプールが駆動されることにより、第3メインポンプ203からブームシリンダ5への圧油の供給方向及び流量が制御され、ブームシリンダ5が駆動される。
【0033】
このように、ブームシリンダ5は、3つのメインポンプ201,202,203から吐出される作動油の流量が3つの流量制御弁D1,D2,D3によって制御されることで駆動される。なお、コントローラ40が、電磁弁55a,55b,56a,56bのうち、電磁弁56a,56bにのみ指令を与えた場合、ブームシリンダ5は第3メインポンプ203から吐出される作動油のみによって駆動される。
【0034】
流量制御弁D4(第4流量制御弁)は、電気操作レバー装置A2の操作に応じて、第2メインポンプ202からアームシリンダ6に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ40の指令によって駆動される電磁弁57a,57bによって生成された操作圧は、パイロットラインC7,C8を介して流量制御弁D4の受圧室E7,E8に入力される。流量制御弁D4のスプールは、受圧室E7,E8に入力される操作圧に応じて駆動される。流量制御弁D4のスプールが駆動されることにより、第2メインポンプ202からアームシリンダ6への圧油の供給方向及び流量が制御され、アームシリンダ6が駆動される。
【0035】
流量制御弁D5(第5流量制御弁)は、電気操作レバー装置A2の操作に応じて、第1メインポンプ201からアームシリンダ6に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ40の指令によって駆動される電磁弁58a,58bによって生成された操作圧は、パイロットラインC9,C10を介して流量制御弁D5の受圧室E9,E10に入力される。流量制御弁D5のスプールは、受圧室E9,E10に入力される操作圧に応じて駆動される。流量制御弁D5のスプールが駆動されることにより、第1メインポンプ201からアームシリンダ6への圧油の供給方向及び流量が制御され、アームシリンダ6が駆動される。
【0036】
このように、アームシリンダ6は、2つのメインポンプ201,202から供給される作動油の流量が2つの流量制御弁D4,D5によって制御されることで駆動される。なお、コントローラ40が、電磁弁57a,57b,58a,58bのうち、電磁弁57a,57bにのみ指令を与えた場合、アームシリンダ6は第2メインポンプ202から吐出される作動油のみによって駆動される。
【0037】
流量制御弁D6(第6流量制御弁)は、電気操作レバー装置A3の操作に応じて、第1メインポンプ201からバケットシリンダ7に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ40の指令によって駆動される電磁弁59a,59bによって生成された操作圧は、パイロットラインC11,C12を介して流量制御弁D6の受圧室E11,E12に入力される。流量制御弁D6のスプールは、受圧室E11,E12に入力される操作圧に応じて駆動される。流量制御弁D6のスプールが駆動されることにより、第1メインポンプ201からバケットシリンダ7への圧油の供給方向及び流量が制御され、バケットシリンダ7が駆動される。このように、バケットシリンダ7は、第1メインポンプ201から吐出される作動油の流量が流量制御弁D6によって制御されることで駆動される。
【0038】
図3は、バケット先端位置の演算方法の説明図である。作業装置1Aの姿勢は、図3に示すショベル基準座標系に基づいて定義できる。図3のショベル基準座標系は、旋回体12を基準に設定された座標系である。ショベル基準座標系では、ブームピン91の中心軸に原点が設定され、旋回体12の旋回中心軸と平行に(旋回体12の真上方向に)Z軸が設定され、Z軸と直交する方向(旋回体12の前方)にX軸が設定される。以下では、X軸に対するブーム8の傾斜角をブーム角α、ブーム8に対するアーム9の傾斜角をアーム角β、アーム9に対するバケット10の傾斜角をバケット角γと記す。また、水平面(基準面)に対する車体1B(旋回体12)の傾斜角、すなわち水平面(基準面)とX軸とのなす角を車体傾斜角θと記す。
【0039】
ブーム角αはブーム角度センサ30により、アーム角βはアーム角度センサ31により、バケット角γはバケット角度センサ32により、車体傾斜角θは車体傾斜角度センサ33により検出される。ブーム角αは、ブーム8を上限まで上げた状態(ブームシリンダ5が最伸長状態)で最小となり、ブーム8を下限まで下げた状態(ブームシリンダ5が最収縮状態)で最大となる。アーム角βは、アームシリンダ6が最収縮状態で最小となり、アームシリンダ6が最伸長状態で最大となる。バケット角γは、バケットシリンダ7が最収縮状態(図3の状態)で最小となり、バケットシリンダ7が最伸長状態で最大となる。
【0040】
ショベル基準座標系におけるバケット10の先端部の位置(以下、先端位置Pbと記す)は、XbkをX方向位置、ZbkをZ方向位置として、以下の(式1),(式2)で表される。
Xbk=L1cos(α)+L2cos(α+β)+L3cos(α+β+γ)…(式1)
Zbk=L1sin(α)+L2sin(α+β)+L3sin(α+β+γ)…(式2)
ここで、L1は、旋回体12とブーム8とを連結するブームピン91の中心軸からブーム8とアーム9とを連結するアームピン92の中心軸までの長さである。L2は、アームピン92の中心軸からアーム9とバケット10とを連結するバケットピン93の中心軸までの長さである。L3は、バケットピン93の中心軸からバケット10の先端位置(例えば、バケット10の爪先)Pbまでの長さである。
【0041】
図4を参照して、マシンコントロール(Machine Control:MC)及びマシンガイダンス(Machine Guidance:MG)を行う制御システム21について説明する。図4は、油圧ショベル1に搭載された制御システム21のハードウェア構成図である。
【0042】
コントローラ40は、電気操作レバー装置A1~A3の少なくとも1つが操作された場合に、一定条件下でオペレータの操作に介入して作業装置1Aの動作を制限するMC機能を備えている。MCには、電気操作レバー装置A2によるアーム操作、もしくは電気操作レバー装置A1によるブーム操作をする際に実行される「領域制限制御」、及び、電気操作レバー装置A1によるブーム下げ操作や電気操作レバー装置A3によるバケット操作をする際に実行される「停止制御」が含まれる。
【0043】
領域制限制御は「整地制御」とも呼ばれる。領域制限制御が実行されている間、掘削目標面St(図3参照)から下側の領域を作業装置1Aが掘削しないように、ブームシリンダ5、アームシリンダ6及びバケットシリンダ7の少なくとも1つが制御される。領域制限制御では、アーム操作やブーム操作によって、バケット10の先端部が掘削目標面Stに沿って移動するように、作業装置1Aの動作が制御される。例えば、コントローラ40は、アーム操作がなされた場合に、掘削目標面Stに垂直な方向のバケット10の先端部の速度ベクトルがゼロになるように、ブーム上げ又はブーム下げの指令を行う。また、コントローラ40は、ブーム操作がなされた場合に、掘削目標面Stに垂直な方向のバケット10の先端部の速度ベクトルがゼロになるように、アーム引き又はアーム押しの指令を行う。これにより、回動運動であるアーム動作やブーム動作によるバケット10の先端部の軌跡が、掘削目標面Stに沿う直線軌道に補正される。
【0044】
停止制御は、掘削目標面Stよりも下方の領域にバケット10の先端部が侵入しないように、ブーム下げ動作やバケット動作を停止する制御である。停止制御では、コントローラ40は、バケット10の先端部が掘削目標面Stに接近するにつれブーム下げ動作やバケット動作を減速させる。
【0045】
なお、本実施例では、MC時の作業装置1Aの制御点を、油圧ショベル1のバケット10の爪先に設定しているが、制御点は作業装置1Aの先端部分の点であればバケット10の爪先以外にも変更可能である。例えば、バケット10の底面やバケットリンク13の最外部に制御点を設定してもよい。また、掘削目標面Stから最も距離の近いバケット10上の点を制御点に設定してもよい。つまり、状況に応じて制御点は変化してもよい。
【0046】
MCでは、電気操作レバー装置A1~A3の非操作時に作業装置1Aの動作をコントローラ40により制御する「自動制御」と、電気操作レバー装置A1~A3の操作時にのみ作業装置1Aの動作をコントローラ40により制御する「半自動制御」と、がある。なお、MCは、オペレータ操作にコントローラ40による制御が介入するため「介入制御」とも呼ばれる。
【0047】
また、制御システム21は、MGとして、例えば、図5に示すように、掘削目標面Stと作業装置1A(例えば、バケット10)との位置関係を表示装置53に表示する処理を実行する。
【0048】
図4に示すように、制御システム21は、コントローラ40と、コントローラ40に接続されコントローラ40に信号を出力する姿勢検出装置50、目標面設定装置51、車体位置検出装置14、電気操作レバー装置A1~A3、外部入力装置96、圧力センサ5a~7b、及び温度センサ19を有する。また、制御システム21は、コントローラ40に接続されコントローラ40からの信号に基づいて制御される表示装置53、レギュレータ201a,202a,203a、及び電磁弁55a~59bを有する。
【0049】
姿勢検出装置50は、ブーム角度センサ30、アーム角度センサ31、バケット角度センサ32及び車体傾斜角度センサ33を有する。これらの角度センサ30,31,32,33は、油圧ショベル1の姿勢に関する情報を取得し、その情報に応じた信号を出力する。すなわち、角度センサ30,31,32,33は、作業装置1Aの姿勢、すなわち作業装置1Aを構成する複数の駆動対象部材(ブーム8、アーム9、及びバケット10)の姿勢を検出する姿勢センサとして機能している。なお、角度センサ30,31,32には、例えば、姿勢に関する情報としてのブーム角α、アーム角β及びバケット角γを取得し、取得した角度に応じた信号(電圧)を出力するポテンショメータを採用することができる。また、車体傾斜角度センサ33には、旋回体12の姿勢に関する情報として直交3軸の角速度及び加速度を取得し、この情報に基づき車体傾斜角θを演算し、車体傾斜角θを表す信号をコントローラ40に出力するIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)を採用することができる。
【0050】
なお、車体傾斜角θの演算は、IMUの出力信号に基づき、コントローラ40が行うようにしてもよい。また、角度センサ30~32はそれぞれ基準面に対する傾斜角を測定するセンサ(IMU等)や油圧シリンダ5~7のストロークを検出するセンサで代替することもできる。
【0051】
目標面設定装置51は、掘削目標面の位置情報、掘削目標面の基準面(水平面)に対する傾斜角度情報等の掘削目標面に関する情報を、コントローラ40に指令信号として出力可能なMC用のコントローラを含む入力デバイスである。例えば、目標面設定装置51は、グローバル座標系(絶対座標系)で規定された掘削目標面の3次元データを格納した外部端末(不図示)に接続され、外部端末から掘削目標面の3次元データがMC用のコントローラを含む入力デバイスであるタッチパネルを介して入力される。なお、目標面設定装置51を介したコントローラ40への掘削目標面の入力は、オペレータが手動で行ってもよい。
【0052】
車体位置検出装置14は、一対のGNSSアンテナ14a,14bを含み、車体1B(旋回体12)の位置及び車体1B(旋回体12)の方位を演算し、演算結果をコントローラ40に出力する。
【0053】
外部入力装置96は、オペレータによって操作され、操作に応じた入力信号をコントローラ40に出力する入力装置である。外部入力装置96は、例えば、表示装置53の表示画面に設けられる静電容量式のタッチセンサである。また、外部入力装置96は、複数のスイッチ、レバーを備えたものであってもよい。
【0054】
図5は、表示装置53の表示画面の一例を示す図である。図5に示すように、表示装置53は、コントローラ40からの表示制御信号に基づいて、様々な表示画像を表示画面に表示する。表示装置53は、例えば、タッチパネル式の液晶モニタであり、運転室16内に設置されている。コントローラ40は、MG機能として、表示装置53の表示画面に掘削目標面Stと作業装置1A(例えば、バケット10)の位置関係を表す表示画像を表示させる。図に示す例では、掘削目標面St及びバケット10を表す画像と、掘削目標面Stからバケット10の先端部までの距離が目標面距離H1として表示されている。目標面距離H1は掘削目標面Stを基準に上方向に正の値、下方向に負の値をとる。なお、図5に示す表示画像は、オペレータに操作されるモード切り替えスイッチ(不図示)によりMCを実行するモードが設定されているか否かに関わらず、表示装置53に表示させることができる。オペレータはこの表示画像を参考に、作業装置1Aを操作することができる。
【0055】
コントローラ40は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等の処理装置41、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリ42、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ43、入力インターフェース44、出力インターフェース45、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。これらのハードウェアは、協働してソフトウェアを動作させ、複数の機能を実現する。なお、コントローラ40は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。また、処理装置41としては、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0056】
不揮発性メモリ42には、各種演算が実行可能なプログラム及び閾値などの各種データが格納されている。すなわち、不揮発性メモリ42は、本実施例の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体(記憶装置)である。揮発性メモリ43は、処理装置41による演算結果及び入力インターフェース44から入力された信号を一時的に記憶する記憶媒体(記憶装置)である。処理装置41は、不揮発性メモリ42に記憶されたプログラムを揮発性メモリ43に展開して演算実行する装置であって、プログラムに従って入力インターフェース44、不揮発性メモリ42及び揮発性メモリ43から取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。
【0057】
入力インターフェース44は、各種装置(姿勢検出装置50、目標面設定装置51、車体位置検出装置14、電気操作レバー装置A1~A3、外部入力装置96、圧力センサ5a~7b,201b,202b,203b、及び温度センサ19)から入力された信号を処理装置41で演算可能なデータに変換する。また、出力インターフェース45は、処理装置41での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を各種装置(レギュレータ201a,202a,203a、電磁弁55a~59b、及び表示装置53)に出力する。
【0058】
コントローラ40がレギュレータ201a~203aを制御することによりメインポンプ201~203の吐出容量が変化する。コントローラ40が電磁弁55a~59bを制御することにより、流量制御弁D1~D6のスプールが作動し、油圧シリンダ5~7が作動する。コントローラ40が表示装置53を制御することにより表示装置53の表示画面に所定の画像が表示される。
【0059】
-コントローラの機能-
図6を参照して、コントローラ40の機能の詳細について説明する。図6は、コントローラ40の機能ブロック図である。コントローラ40は、不揮発性メモリ42に記憶されているプログラムを実行することにより、操作量演算部141、姿勢演算部142、目標面演算部143、目標速度演算部144、目標圧演算部145、補正目標圧演算部146、バルブ指令演算部147、学習部149、および表示制御部150として機能する。目標圧演算部145、補正目標圧演算部146及びバルブ指令演算部147は、電磁弁55a~59bを制御することにより、油圧アクチュエータである油圧シリンダ5,6,7を制御する電磁弁制御部148として機能する。
【0060】
操作量演算部141は、電気操作レバー装置A1,A2,A3の操作信号(操作量及び操作方向)に基づいて、電磁弁55a~59bにより生成する操作圧の目標値(以下、操作量操作圧とも記す)Pi0(PiBM12U0,PiBM3U0,PiBM12D0,PiBM3D0,PiAM1C0,PiAM2C0,PiAM1D0,PiAM2D0,PiBKC0,PiBKD0)を演算する。操作量演算部141は、電気操作レバー装置A1によってブーム上げ操作が行われた場合、電磁弁55aにより生成する操作圧の目標値PiBM12U0及び電磁弁56aにより生成する操作圧の目標値PiBM3U0を演算する。操作量演算部141は、電気操作レバー装置A1によってブーム下げ操作が行われた場合、電磁弁55bにより生成する操作圧の目標値PiBM12D0及び電磁弁56bにより生成する操作圧の目標値PiBM3D0を演算する。
【0061】
操作量演算部141は、電気操作レバー装置A2によってアーム引き(アームクラウド)操作が行われた場合、電磁弁57aにより生成する操作圧の目標値PiAM1C0及び電磁弁58aにより生成する操作圧の目標値PiAM2C0を演算する。操作量演算部141は、電気操作レバー装置A2によってアーム押し(アームダンプ)操作が行われた場合、電磁弁57bにより生成する操作圧の目標値PiAM1D0及び電磁弁58bにより生成する操作圧の目標値PiAM2D0を演算する。
【0062】
操作量演算部141は、電気操作レバー装置A3によってバケット引き(バケットクラウド)操作が行われた場合、電磁弁59aにより生成する操作圧の目標値PiBKC0を演算する。操作量演算部141は、電気操作レバー装置A3によってバケット押し(バケットダンプ)操作が行われた場合、電磁弁59bにより生成する操作圧の目標値PiBKD0を演算する。
【0063】
姿勢演算部142は、姿勢検出装置50により検出された姿勢情報(角度情報)、及び、不揮発性メモリ42に記憶されている作業装置1Aの寸法情報(L1,L2,L3)に基づき、ショベル基準座標系(ローカル座標系)における作業装置1Aの姿勢と、バケット10の先端位置Pbを演算する。バケット10の先端位置Pb(Xbk,Zbk)は、既述のとおり、(式1)及び(式2)により演算できる。なお、グローバル座標系における作業装置1Aの姿勢と、バケット10の先端位置が必要な場合には、姿勢演算部142は、車体位置検出装置14により検出された旋回体12のグローバル座標系における位置と方位に基づいて、ショベル基準座標系の座標をグローバル座標系の座標に変換する。
【0064】
目標面演算部143は、目標面設定装置51からの情報に基づき掘削目標面Stを設定する。具体的には、目標面演算部143は、目標面設定装置51からの情報に基づき掘削目標面Stの位置情報を演算し、その演算結果を揮発性メモリ43に記憶する。目標面演算部143は、目標面設定装置51を介して3次元データで提供される掘削目標面を作業装置1Aが移動する平面(作業装置の動作平面)で切断した断面形状(図3参照)を2次元の掘削目標面Stとして演算する。
【0065】
なお、図3では掘削目標面Stが1つであるが、掘削目標面Stが複数存在する場合もある。掘削目標面Stが複数存在する場合、目標面演算部143は、バケット10の先端部に最も近いもの、バケット10の先端部の鉛直下方に位置するもの、あるいは、任意に選択したものを演算対象の掘削目標面Stとして設定する。
【0066】
目標速度演算部144は、領域制限制御(整地制御)において、作業装置1Aによって掘削目標面Stを超えて掘削目標面Stよりも下側を掘削してしまわないように、各油圧シリンダ5,6,7の目標速度を演算する。目標速度演算部144は、姿勢演算部142での演算結果及び操作量演算部141での演算結果に基づいて、各油圧シリンダ5,6,7の目標速度を演算する。
【0067】
図7を参照して、領域制限制御中の目標速度の演算方法について詳しく説明する。図7は、バケット10の先端が補正後の目標速度ベクトルVcaの通りに制御されたときの、バケット10の先端の軌跡の一例を示す図である。ここでの説明では、図7に示すように、Xt軸及びYt軸を設定する。Xt軸は、掘削目標面Stに平行な軸であり、Yt軸は、掘削目標面Stに直交する軸である。
【0068】
目標速度演算部144は、操作量演算部141によって演算された電磁弁55a~59bの操作量操作圧Pi0(PiBM12U0,PiBM3U0,PiBM12D0,PiBM3D0,PiAM1C0,PiAM2C0,PiAM1D0,PiAM2D0,PiBKC0,PiBKD0)に基づいて、各油圧シリンダ5,6,7の一次目標速度を演算する。
【0069】
目標速度演算部144は、各油圧シリンダ5,6,7の一次目標速度と、姿勢演算部142によって演算されたバケット10の先端位置Pbと、不揮発性メモリ42に記憶してある作業装置1Aの寸法情報(L1,L2,L3等)とに基づいて、図7に示すバケット10の先端部の目標速度ベクトルVcを演算する。
【0070】
目標速度演算部144は、バケット10の先端部と掘削目標面Stとの距離である目標面距離H1が0(ゼロ)に近づくにつれて、バケット10の先端部の目標速度ベクトルVcにおける掘削目標面Stに垂直な成分Vcy(Yt軸方向の速度成分)が0(ゼロ)に近づくように油圧シリンダ5,6,7のうち必要な油圧シリンダの一次目標速度を補正して、二次目標速度を演算する。これにより、バケット10の先端部の目標速度ベクトルVcが、補正後目標速度ベクトルVcaに変換される。目標面距離H1が0(ゼロ)のときの目標速度ベクトルVcaは掘削目標面Stに平行な成分Vcx(Xt軸方向の速度成分)のみになる。このため、領域制限制御では、掘削目標面Stよりも下側の領域にバケット10の先端部が侵入しないように、掘削目標面St上又はその上方にバケット10の先端部(制御点)が保持される。以下、このように、バケット10の先端部の速度ベクトルを変換(補正)する制御のことを方向変換制御とも記す。
【0071】
方向変換制御は、ブーム上げ又はブーム下げとアームクラウドとの組み合わせにより実行される場合と、ブーム上げ又はブーム下げとアームダンプとの組み合わせにより実行される場合とがある。いずれの場合においても、目標速度ベクトルVcが掘削目標面Stに接近する下向き成分(Vcy<0)を含むとき、目標速度演算部144は、その下向き成分を打ち消すブーム上げ方向のブームシリンダ5の目標速度を演算する。反対に目標速度ベクトルVcが掘削目標面Stから離れる上向き成分(Vcy>0)を含むとき、目標速度演算部144は、その上向き成分を打ち消すブーム下げ方向のブームシリンダ5の目標速度を演算する。
【0072】
なお、モード切り替えスイッチ(不図示)により、領域制限制御(整地制御)が行われないモードが設定されている場合、目標速度演算部144は、電気操作レバー装置A1~A3の操作に応じた各油圧シリンダ5~7の一次目標速度に対する補正は行わない。
【0073】
このように、目標速度演算部144は、操作量演算部141及び姿勢演算部142の演算結果に基づいて、油圧シリンダ5,6,7の伸長速度/収縮速度の目標値である目標速度を演算する。
【0074】
目標圧演算部145は、圧力センサ5a~7b、201b~203bの検出結果と目標速度演算部により演算された各油圧シリンダ5,6,7の目標速度とに基づいて、流量制御弁D1~D6の目標スプール開口を演算し、この目標スプール開口をスプール開口テーブルに基づいて目標操作圧Pi1(PiBM12U1,PiBM3U1,PiBM12D1,PiBM3D1,PiAM1C1,PiAM2C1,PiAM1D1,PiAM2D1,PiBKC1,PiBKD1)に変換し出力する。
【0075】
本実施例において、目標圧演算部145は、圧力センサ5a~7b、201b~203bの検出結果と目標速度演算部により演算された各油圧シリンダ5,6,7の目標速度とに基づいて、流量制御弁D1~D6のメータアウト側の目標スプール開口を演算し、このメータアウト側の目標スプール開口を流量制御弁D1~D6のメータアウト側の目標開口テーブルに基づいて目標操作圧Pi1(PiBM12U1,PiBM3U1,PiBM12D1,PiBM3D1,PiAM1C1,PiAM2C1,PiAM1D1,PiAM2D1,PiBKC1,PiBKD1)に変換し出力する。
【0076】
図8を参照して、流量制御弁D1~D6のメータアウト通路部の開口特性の一例について説明する。図8は、流量制御弁D1~D6のメータアウト通路部の開口線図であり、流量制御弁D1~D6の受圧室E1、E3、E5、E7、E9、E11に入力される操作圧と、流量制御弁D1~D6のメータアウト通路部の開口面積との関係を示す。図8に示すように、電磁弁55a~59aにより生成される操作圧が増加するほど、流量制御弁D1~D6のメータアウト通路部の開口面積は大きくなる。コントローラ40の不揮発性メモリ42には、操作圧と流量制御弁D1~D6の開口面積との関係を規定する開口特性テーブルToが記憶されている。
【0077】
目標圧演算部145は、開口特性テーブルToを参照し、メータアウト目標開口面積Aout(Aout_Bm1U,Aout_Bm3U,Aout_Bm1D,Aout_Bm3D,Aout_Am1C,Aout_Am2C,Aout_Am1D,Aout_Am2D,Aout_BkC,Aout_BkD)に基づき、操作圧の目標値である目標操作圧Pi1(PiBM12U1,PiBM3U1,PiBM12D1,PiBM3D1,PiAM1C1,PiAM2C1,PiAM1D1,PiAM2D1,PiBKC1,PiBKD1)を演算する。
【0078】
目標圧演算部145は、各メインポンプ201,202,203に割り当てられる各油圧シリンダ5~7のメータイン側の目標流量の総和から、各メインポンプ201,202,203の目標流量Q201,Q202,Q203を演算する。
【0079】
不揮発性メモリ42には、メインポンプ201,202,203の目標流量Q201,Q202,Q203と、レギュレータ201a,202a,203aの目標レギュレータ圧との関係を規定するレギュレータ圧テーブルが予め記憶されている。レギュレータ圧テーブルは、メインポンプ201,202,203ごとに定められる。
【0080】
目標圧演算部145は、レギュレータ圧テーブルを参照し、演算したメインポンプ201,202,203の目標流量Q201,Q202,Q203に基づき、目標レギュレータ圧PPc201,PPc202,PPc203を演算する。
【0081】
補正目標圧演算部146は、後述する学習部149の学習処理によって取得した補正値を読み出す。読み出した補正値と目標圧演算部145で演算された目標操作圧Pi1に基づいて補正目標圧Pi2を演算し、出力する。補正目標圧演算部146での補正処理の詳細については後述する。
【0082】
流量制御弁D1~D6の開口面積と電磁弁55a~59bにより生成する操作圧との関係は、流量制御弁D1~D6の製造誤差によって開口特性テーブルToに対してバラつきが発生する。流量制御弁D1~D6の製造誤差には、流量制御弁D1~D6のスプールの加工誤差、スプールを中立位置に保持するためのバネ(センタリングスプリング)のバネ係数のバラつき、スプールを摺動可能に保持するバルブケーシングの加工誤差等がある。なお、領域制限制御おける方向変換制御では、ブーム上げ又はブーム下げとアームクラウドとの組み合わせにより実行される場合と、ブーム上げ又はブーム下げとアームダンプとの組み合わせにより実行される場合があり、ブームまたはアームに対応する流量制御弁の製造誤差による、開口特性テーブルToに対するバラつき(個体差)によって、領域制限制御の精度がとくに悪化する。
【0083】
本実施例では、流量制御弁D1~D6のうち、ブーム上げ動作にあたる流量制御弁D3の製造誤差による、開口特性テーブルToに対するバラつき(個体差)による領域制限制御の精度悪化を抑えるため、学習部149は、流量制御弁D3のメータアウト通路部の開口面積と電磁弁56aにより生成する操作圧との関係を学習する。学習部149は、その学習結果に基づいて、開口特性テーブルToを参照し、目標スプール開口に基づいて演算した目標操作圧PiBM3U1を補正することにより、製造誤差のばらつきによる領域制限制御の精度悪化を抑える。
【0084】
流量制御弁D3のメータアウト通路部の開口面積と電磁弁56aにより生成する操作圧との関係を学習するには、油圧シリンダ5のメータアウト側の負荷圧の測定を行う。
【0085】
本実施例における油圧シリンダ5のメータアウト側の負荷圧は流量制御弁D3のメータアウト通路部の開口面積と電磁弁56aにより生成される操作圧が関係している。流量制御弁D3は、電磁弁56aにより生成される操作圧が増加するほど、流量制御弁D3のメータアウト通路部の開口面積は大きくなる。
【0086】
流量制御弁D3のメータアウト通路部の開口面積は大きくなると、メータアウト開口の絞りによる圧損(ブレーキ圧)が小さくなり、油圧シリンダ5のメータアウト側の負荷圧は小さくなる。
【0087】
反対に流量制御弁D3は、電磁弁56aにより生成される操作圧が減少するほど、流量制御弁D3のメータアウト通路部の開口面積は小さくなる。流量制御弁D3のメータアウト通路部の開口面積は小さくなると、メータアウト開口の絞りによる圧損(ブレーキ圧)が大きくなり、油圧シリンダ5のメータアウト側の負荷圧は大きくなる。
【0088】
そのため、油圧シリンダ5のメータアウト側の負荷圧の測定を行うことで、絞りによる圧損(ブレーキ圧)を測定することができ、流量制御弁D3のメータアウト通路部の開口面積と電磁弁56aにより生成する操作圧との関係を学習することができる。なお、絞りによる圧損(ブレーキ圧)を測定する方法としては、油圧シリンダ5のメータアウト側の負荷圧を直接検出する方法の他、油圧シリンダ5のメータイン側の負荷圧に油圧シリンダ5の受圧面積比を乗算する方法がある。
【0089】
図9を参照して、学習部149により実行される流量制御弁D3の学習処理の流れについて説明する。図9は、学習部149により実行される流量制御弁D3の学習処理を示すフローチャートである。オペレータによって外部入力装置96が操作され、外部入力装置96から学習処理の実行指令が入力されると、学習部149は学習処理を開始する(ステップS101)。
【0090】
ステップS101において、学習部149は、流量制御弁D3の学習に紐付けられた学習開始姿勢データと学習開始目標面データを不揮発性メモリ42から読み出す。
【0091】
図10は、流量制御弁D3に対応する学習開始姿勢と学習開始目標面を示す図である。不揮発性メモリ42には、図10に示す学習開始姿勢を規定する学習開始姿勢データと、学習開始目標面データが記憶されている。
【0092】
学習開始姿勢データは、ブーム角αの目標角度を満たす目標範囲(下限値及び上限値)、アーム角βの目標角度を満たす目標範囲(下限値及び上限値)及びバケット角γの目標角度を満たす目標範囲(下限値及び上限値)を含み、学習開始目標面データは、掘削目標面Stの作業装置1Aのショベル基準座標系Z軸方向の目標範囲(下限値及び上限値)と掘削目標面Stと作業装置1Aのショベル基準座標系のX軸との目標角度(下限値及び上限値)とを含む。
【0093】
本実施例では、図10に示すように、水平引きの開始姿勢と目標面を設定するため、学習開始姿勢データのアーム角βはアームシリンダ6が最収縮となる角度、バケット角γは0度が目標角度となるように範囲を設定し、学習開始目標面データは作業装置1Aのショベル基準座標系X軸と平行であり、Z軸方向の目標範囲はバケット10の爪先が空中動作となるように設定する。なおブーム角αの目標角度は、アーム角βとバケット角γが上記目標範囲を満たし、バケット10の爪先が目標面と一致した際のブーム角αの角度となり、ブーム角αの目標角度より目標範囲を設定する。
【0094】
ステップS101において、学習開始姿勢データと学習開始目標面データの読み出しが完了したら、ステップS102に進む。ステップS102において、図9に示すように、表示制御部150は、表示装置53に学習開始姿勢画面53a(図11参照)を表示させる。図11に示すように、学習開始姿勢画面53aには、作業装置1Aの姿勢を学習開始姿勢とするための操作をオペレータに促すメッセージ「作業装置の姿勢を目標範囲に合わせてください。」が表示される。
【0095】
図9のステップS102において、学習開始姿勢画面53aが表示装置53に表示されると、処理がステップS103に進む。ステップS103において、学習開始条件(学習開始姿勢、学習開始目標面、MC実行モードの設定)が満たされているかの判定を行う。
【0096】
学習開始姿勢の判定は、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢であるか否かの判定である。現在のブーム角α、アーム角β及びバケット角γのそれぞれが目標範囲の内にある場合、学習部149は、作業装置1Aの姿勢は学習開始姿勢であると判定し、現在のブーム角α、アーム角β及びバケット角γのいずれかが目標範囲の外である場合、学習部149は、作業装置1Aの姿勢は学習開始姿勢でないと判定する。
【0097】
学習開始目標面の判定は、掘削目標面Stが学習開始目標面であるか否かの判定である。掘削目標面Stが学習開始目標面データで規定される目標範囲の内にある場合、学習部149は、掘削目標面Stは学習開始目標面であると判定し、掘削目標面Stが学習開始目標面データで規定される目標範囲の外にある場合、学習部149は、掘削目標面Stは学習開始目標面でないと判定する。
【0098】
MC実行モードの設定の判定は、MCを実行するモードに設定されているか否かの判定である。オペレータに操作されるモード切り替えスイッチによりMCを実行するモードに設定されている場合、学習部149は、MCを実行するモードに設定されていると判定し、オペレータに操作されるモード切り替えスイッチによりMCを実行するモードに設定されていない場合、学習部149は、MCを実行するモードに設定されていないと判定する。
【0099】
ステップS103において、学習開始条件(学習開始姿勢、学習開始目標面、MC実行モードの設定)が全て肯定判定された場合、処理はステップS104に進む。ステップS103の学習開始条件(学習開始姿勢、学習開始目標面、MC実行モードの設定)の判定は、肯定判定されるまで所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0100】
ステップS103において、学習開始条件の判定処理が、肯定判定された場合、表示制御部150は、表示装置53に操作指示画面を表示させる。操作指示画面には、「アーム操作レバーを引き側に操作してください」といった操作指示が表示される。ステップS103において、操作指示画面が表示されると、処理がステップS104に進む。
【0101】
ステップS104において、オペレータにより電気操作レバー装置A2がアーム引き側に操作されると、学習処理が開始され、電気操作レバー装置A2が操作されている間、領域制限制御が実行され、バケット10の先端部が掘削目標面Stに沿って移動するように、作業装置1Aの動作が制御される。
【0102】
学習部149は、領域制限制御を実行され、ブーム8が上げ方向に駆動しているときの油圧シリンダ5のメータアウト側の負荷圧の測定を行う。なお以下では、油圧シリンダ5のメータアウト側の負荷圧をシリンダ圧とも記す。学習部149は測定したシリンダ圧と時刻を記憶する。ここで、記憶されるシリンダ圧は、圧力センサ5aにより検出される。
【0103】
図12は、シリンダ圧の測定時に記憶した時刻とシリンダ圧の関係を示した図である。ステップS104において、学習部149は、記憶された時刻と、圧力センサ5aを用いて測定されるシリンダ圧に基づいて、シリンダ圧の最小値Pmin(以下、最小シリンダ圧とも記す)と最大値Pmax(以下、最大シリンダ圧とも記す)を演算し、処理をステップS105に進める。
【0104】
ステップS105において、学習部149は、ステップS104で演算された最小シリンダ圧Pminが予め定められたシリンダ圧の最小閾値Pm1以上であるか否かを判定する。なお、シリンダ圧の最小閾値Pm1は、事前に記憶された開口特性と、領域制限制御中の流量制御弁D3を通過する流量をもとに机上計算あるいは試作機を用いた実験などに基づいて定められるシリンダ圧を目標値とし、目標値を満たす目標範囲(下限値及び上限値)を設定した場合の下限値である。
【0105】
ステップS105において、最小シリンダ圧Pminがシリンダ圧の最小閾値Pm1よりも小さいと判定されると、学習部149は、処理をステップS107に進める。
【0106】
ステップS107において、学習部149は、操作圧の補正値Picを減算し、操作圧を低くするような補正値Picを取得する。例えば、補正値Picの初期値を1.00に設定した場合、操作圧が低くなるようにするには、初期値から0.01を減算して補正値Picを0.99にする。
【0107】
学習部149は、取得した補正値Picを補正目標圧演算部に出力し、処理をステップS102に戻す。つまり、次のシリンダ圧の測定時は目標操作圧PiBM3U1が補正目標圧演算部146で補正され、補正目標操作圧PiBM3U2がバルブ指令演算部147に出力される。なお、補正目標圧演算部146での補正方法については後述する。
【0108】
ステップS105において、最小シリンダ圧Pminがシリンダ圧の最小閾値Pm1よりも大きいと判定されると、学習部149は、処理をステップS106に進める。
【0109】
ステップS106において、学習部149は、ステップS104で演算された最大シリンダ圧Pmaxが予め定められたシリンダ圧の最大閾値Pm2以下であるか否かを判定する。なお、シリンダ圧の最大閾値Pm2は、事前に記憶された開口特性と、領域制限制御中の流量制御弁D3を通過する流量をもとに机上計算あるいは試作機を用いた実験などに基づいて定められるシリンダ圧を目標値とし、目標地を満たす目標範囲(下限値及び上限値)を設定した場合の上限値である。
【0110】
ステップS106において、最大シリンダ圧Pmaxがシリンダ圧の最大閾値Pm2よりも大きいと判定されると、学習部149は、処理をステップS108に進める。
【0111】
ステップS108において、学習部149は、操作圧の補正値Picを加算し、操作圧を高くするような補正値Picを取得する。例えば、補正値Picの初期値を1.00に設定した場合、操作圧が高くなるようにするには、初期値から0.01を加算して補正値Picを1.01にする。
【0112】
学習部149は、取得した補正値Picを補正目標圧演算部に出力し、処理をステップS102に戻す。つまり、次のシリンダ圧の測定時は目標操作圧PiBM3U1が補正目標圧演算部146で補正され、補正目標操作圧PiBM3U2がバルブ指令演算部147に出力される。なお、補正目標圧演算部146での補正方法については後述する。
【0113】
ステップS106において、最大シリンダ圧Pmaxがシリンダ圧の最大閾値Pm2よりも小さいと判定されると、学習部149は、処理をステップS109に進める。ステップS109において、学習部149は、操作圧の補正値Picを記憶し、図9のフローチャートに示す処理を終了する。なお、表示制御部150は、学習処理が終了したことを表示装置53に表示させる。
【0114】
このように、学習部149は、学習処理において、領域制限制御が実行されている間の、シリンダ圧の測定を行い、圧力閾値Pta(シリンダ圧の最小閾値Pm1、シリンダ圧の最大閾値Pm2)の範囲に収まったときの操作圧の補正値Picを取得する。取得した補正値Picは、補正処理で用いられる。
【0115】
なお、本実施例において、図12に示すように、測定したシリンダ圧は、オペレータにより電気操作レバー装置A2がアーム引き側に操作され、領域制限制御が実行された直後とブーム上げ動作が終了する付近ではシリンダ圧がシリンダ圧の最小閾値Pm1よりも小さくなる。測定したシリンダ圧がシリンダ圧の最小閾値Pm1よりも小さい場合、図9においてステップS105からステップS107へ進むフローを繰り返してしまう。
【0116】
そのため、本実施例では、目標速度演算部144によって演算される二次目標速度に対して閾値Vtaを設定し、油圧シリンダ5の二次目標速度が閾値Vta以上であるときにシリンダ圧の測定を行う。つまり、領域制限制御が実行された直後とブーム上げ動作が終了する付近でのシリンダ圧を除いてシリンダ圧の測定をすることで、誤ったステップS105からステップS107へ進むフローの繰り返しを防ぐ。また、シリンダ圧の測定を開始する条件は二次目標速度に対する閾値でなくてもよく、領域制限制御が実行された直後とブーム上げ動作が終了する付近でのシリンダ圧を除いて測定することができればよい。
【0117】
バルブ指令演算部147は、目標圧演算部145により演算された目標操作圧Pi1(PiBM12U1,PiBM3U1,PiBM12D1,PiBM3D1,PiAM1C1,PiAM2C1,PiAM1D1,PiAM2D1,PiBKC1,PiBKD1)および補正目標圧Pi2に基づく電気信号を演算し、演算した電気信号を対応する電磁弁55a~59bに出力する。また、バルブ指令演算部147は、目標圧演算部145により演算された目標レギュレータ圧PPc(PPc201,PPc202,PPc203)に基づく電気信号を演算し、演算した電気信号を対応するレギュレータ201a~203aのレギュレータ電磁弁に出力する。
【0118】
バルブ指令演算部147から出力された電気信号(励磁電流)によって、電磁弁55a~59bのソレノイドが励磁されることにより、電磁弁55a~59bが作動し、流量制御弁D1~D6に作用する操作圧(パイロット圧)が、目標圧演算部145で演算された目標操作圧Pi1に制御される。これにより、油圧シリンダ5~7の動作速度が目標速度に制御される。また、バルブ指令演算部147から出力された電気信号(励磁電流)によって、レギュレータ201a~203aのレギュレータ電磁弁のソレノイドが励磁されることにより、レギュレータ電磁弁が作動し、レギュレータ201a~203aの受圧部に作用するレギュレータ圧(パイロット圧)が、目標圧演算部145で演算された目標レギュレータ圧PPcに制御される。これにより、メインポンプ201~203の吐出流量が目標流量Q201,Q202,Q203に制御される。
【0119】
図13を参照して補正処理について説明する。図13に示されているのは補正目標圧演算部146によっておこなう補正処理である。ここで、目標操作圧PiBM3U1は目標圧演算部145で演算され、補正値Picは学習部149より取得される。補正目標圧演算部146は目標圧演算部145で演算された目標操作圧PiBM3U1を受け取り、学習部149より取得した補正値Picを読み出す。本実施例では、流量制御弁D3についての学習処理を行うため、補正処理において、目標圧演算部145は補正目標圧演算部146へ流量制御弁D3に対応する目標操作圧PiBM3U1を出力する。なお、目標圧演算部145からバルブ指令演算部147へ出力する目標操作圧は目標操作圧PiBM3U1を除いた目標操作圧Pi1(PiBM12U1,PiBM12D1,PiBM3D1,PiAM1C1,PiAM2C1,PiAM1D1,PiAM2D1,PiBKC1,PiBKD1)となる。
【0120】
補正目標圧演算部146は目標操作圧PiBM3U1と補正値Picとを乗算することで補正目標操作圧PiBM3U2を演算し、バルブ指令演算部147に出力する。
【0121】
以上のように、本実施例に係るコントローラ40は、油圧シリンダ5~7の目標速度と圧力センサ5a~7b、201b~203bの検出結果に基づいて流量制御弁D1~D6のメータアウト側の目標スプール開口を演算する。そして、コントローラ40は、開口特性テーブルToを参照し、目標スプール開口に基づいて、目標操作圧を演算する。
【0122】
さらに学習部149において、流量制御弁D3についての学習処理を行い、学習処理において取得した補正値を用いて目標操作圧の補正処理を行い、補正目標操作圧を演算する。
【0123】
コントローラ40は、電磁弁55a~59bにより生成される操作圧が目標操作圧および補正目標操作圧になるように、電磁弁55a~59bを制御する。
【0124】
このように、目標操作圧および補正目標操作圧を演算することにより、油圧シリンダの負荷圧(油圧負荷条件)が変化したとしても、その負荷圧に応じた目標開口面積を求めることができる。また、学習処理および補正処理を行うことで流量制御弁D3の製造誤差のばらつきに応じた目標操作圧を求めることができる。このため、油圧システムにオープンセンタシステムを採用した場合であっても、演算した目標流量(目標速度)で精度よく油圧シリンダ5~7を動作させることができ、流量制御弁D3の製造誤差のばらつきによる領域制限制御の精度悪化を抑えることができる。その結果、領域制限制御などのMCによる作業を精度よく行うことができる。
【0125】
なお、上記学習処理は、工場出荷時、流量制御弁D3のスプールの交換時、流量制御弁D3の経年劣化に起因してスプールストロークが工場出荷時の特性からある程度変化したときなどに行うことが好ましい。これにより、長期に亘って、MCを精度よく行うことができる。
【0126】
上述した第1実施例によれば、次の作用効果を奏する。
【0127】
(1)目標圧演算部145は、開口特性テーブルToと、目標スプール開口(本実施例ではAout)と、操作圧Pi0に基づいて、電磁弁55a~59bにより生成する操作圧の目標値(目標操作圧)Pi1を演算する。本実施例に係る目標圧演算部145は、目標操作圧Pi1のうち、PiBM3U1を補正目標圧演算部146に出力する。
【0128】
補正目標圧演算部146は、目標操作圧PiBM3U1と学習部149の学習処理によって取得された補正値Picに基づいて、補正目標操作圧PiBM3U2を演算する。バルブ指令演算部147は、補正目標操作圧PiBM3U2と目標操作圧PiBM3U1を除いた目標操作圧Pi1に基づいて、電磁弁55a~59bを制御する。
【0129】
学習部149は、領域制限制御が実行されている間の、流量制御弁D3のシリンダ圧を測定し、測定したシリンダ圧(最小シリンダ圧Pmin、最大シリンダ圧Pmax)が予め定められた圧力閾値Ptaの範囲内に収まったときの操作圧の補正値Picを取得する学習処理を実行する。
【0130】
学習処理において、シリンダ圧(最小シリンダ圧Pmin、最大シリンダ圧Pmax)を測定し、予め定められた圧力閾値Ptaの範囲内に収まるように、操作圧の補正値Picを取得することで、メータアウト開口の絞りによる圧損(ブレーキ圧)を狙いの範囲に収めることができる。
【0131】
この構成によれば、学習及び補正により、流量制御弁D3の製造誤差の影響を低減し、事前に試作機で使用していた流量制御弁の開口特性を再現して、流量制御弁を制御することができる。その結果、領域制限制御などにおいて、バケット10の爪先(制御点)を精度よく動かすことができる。
【0132】
なお、油圧システムは、クローズドセンタシステムとしてもよいし、図14に示すように、オープンセンタシステムとしてもよい。本実施例に係るコントローラ40は、所定の目標流量(目標速度)によって油圧シリンダ5~7を動作させたい場合に、目標流量(目標速度)と油圧シリンダ5~7の負荷圧を考慮したオリフィスの式を用いて目標開口面積を演算する。このため、油圧システムにオープンセンタシステムを採用した場合であっても、軽負荷、重負荷など問わずに目標流量(目標速度)通りに油圧シリンダ5~7を動作させることができる。
【0133】
このように、本実施例によれば、油圧システムの構成に関わらず、作業機械の個体差に起因した油圧シリンダの動作のバラつきが抑制され、高い精度で作業が可能な作業機械を提供することができる。
【0134】
(2)学習部149は、少なくとも、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢であることと、掘削目標面Stが学習開始目標面であることを、学習処理を開始する条件の一つとしている。これにより、学習部149は、補正値Picを適切に取得することができ、補正目標圧演算部146は目標操作圧Pi1を精度よく補正することができる。
【0135】
第1実施例では、車体1Bと、車体1Bに回動可能に取り付けられた作業装置1Aと、作業装置1Aを駆動する油圧シリンダ5と、作業装置1Aを操作するための操作装置A1と、油圧ポンプ203と、油圧ポンプ203から油圧シリンダ5に供給される作動油の流量を制御する流量制御弁D3と、流量制御弁D3の操作圧を生成する電磁弁56a,56bと、操作装置A1の操作量に基づいて、作業装置1Aの動作範囲が目標面St上及びその上方に制限されるように油圧シリンダ5の目標速度を算出し、前記目標速度に基づいて流量制御弁D3の目標操作圧を算出し、前記目標操作圧に応じて電磁弁56a,56bを制御するコントローラ40とを備えた作業機械1において、油圧シリンダ5のメータアウト圧力を測定するための圧力センサ5a,5bを備え、コントローラ40は、油圧シリンダ5を駆動して作業装置1Aに所定の動作を行わせている間に測定された前記メータアウト圧力を所定の第1下限値Pm1から所定の第1上限値Pm2までの範囲内に収めるための前記目標操作圧の補正値Picを算出し、補正値Picに応じて前記目標操作圧を補正する。
【0136】
また、第1実施例におけるコントローラ40は、作業装置1Aに前記所定の動作を行わせている間に測定された前記メータアウト圧力の最小値Pminが第1下限値Pm1を下回る場合は、前記目標操作圧が減少するように補正値Picを算出し、作業装置1Aに前記所定の動作を行わせている間に測定された前記メータアウト圧力の最大値Pmaxが第1上限値Pm2を上回る場合は、前記目標操作圧が増加するように補正値Picを算出し、前記目標操作圧を補正値Picに応じて増減させることにより前記目標操作圧を補正する。
【0137】
以上のように構成した第1実施例によれば、作業装置1Aを駆動する油圧シリンダ5のメータアウト圧が所定の範囲内(Pm1~Pm2)に収まるように流量制御弁D3の目標操作圧が補正することにより、作業装置1Aを駆動する油圧シリンダ5の速度応答性の悪化、および油圧シリンダ5の波打ちや逸走を防ぐことができるため、高い精度で作業を行うことが可能となる。
【0138】
また、第1実施例における圧力センサ5bは、油圧シリンダ5のメータイン圧力を検出し、コントローラ40は、圧力センサ5bで検出された前記メータイン圧力と油圧シリンダ5の受圧面積比とを乗算することにより、前記メータアウト圧力の測定値を算出する。これにより、油圧シリンダ5のメータアウト圧力を検出する圧力センサ5aが設けられていない場合であっても、油圧シリンダ5のメータアウト圧力を測定することが可能となる。
【実施例0139】
本発明の第2実施例について、第1実施例との相違点を中心に説明する。第1実施例では、水平引き動作に対して学習処理を実行するが、本実施例では、ブーム上げ単独動作に対して学習処理を実行する。
【0140】
図15は、本実施例に係る学習部149により実行される学習処理を示すフローチャートであり、図16は、本実施例の係る学習開始姿勢を示している。
【0141】
本実施例では、図16に示すような、アームシリンダ6およびバケットシリンダ7が最伸長であり、作業装置1Aが地面に接地しないブーム角度をブーム上げ単独学習開始姿勢として記憶し、ブーム上げ単独動作している間のシリンダ圧を測定し、測定したシリンダ圧を閾値と比較することで補正値を取得する。
図15を参照して、ブーム上げ単独動作による流量制御弁D3についての学習処理について説明する。オペレータによって外部入力装置96が操作され、外部入力装置96から学習処理の実行指令が入力されると、学習部149は学習処理を開始する(ステップS201)。
【0142】
ステップS201において、ブーム上げ単独学習開始姿勢データの読み出しが完了したら、ステップS202に進む。
【0143】
ステップS202において、表示制御部150は、表示装置53に図16に示すようなブーム上げ単独学習開始姿勢を表示させ、処理をステップS203に進める。
【0144】
ステップS203において、学習部149は、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢であるか否かを判定する。現在のブーム角α、アーム角β及びバケット角γのそれぞれが、ブーム上げ単独学習開始姿勢データで規定される目標範囲の内にある場合、学習部149は、作業装置1Aの姿勢は学習開始姿勢であると判定し、処理をステップS204に進める。
【0145】
現在のブーム角α、アーム角β及びバケット角γのうちの少なくとも一つが、ブーム上げ単独学習開始姿勢データで規定される目標範囲の外である場合は、学習部149は、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢でないと判定する。ステップS203の学習開始条件判定処理は、肯定判定されるまで所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0146】
ステップS203において、学習開始条件判定処理が、肯定判定された場合、表示制御部150は、表示装置53に操作指示画面を表示させる。操作指示画面には、「ブーム操作レバーを上げ側に操作してください」といった操作指示が表示される。ステップS203において、操作指示画面が表示されると、処理がステップS204に進む。
【0147】
ステップS204において、オペレータにより電気操作レバー装置A1がブーム上げ側に操作されると、学習処理が開始され、電気操作レバー装置A1が操作されている間、ブーム8が上げ側に動作する。なお、通常の場合電気操作レバー装置A1が操作されると、3つのメインポンプ201,202,203から吐出される作動油の流量を3つの流量制御弁D1,D2,D3によって制御されることでブームシリンダ5は駆動される。しかしながら、本実施例は流量制御弁D3に着目した学習であるため、学習処理において、電気操作レバー装置A1が操作されると、電磁弁56aにのみに指令が与えられ、第3メインポンプ203から吐出される作動油の流量を流量制御弁D3によって制御されることでブームシリンダ5は駆動される。
【0148】
学習部149は、ブーム8が上げ方向に駆動しているときのシリンダ圧の測定を行う。学習部149は測定したシリンダ圧と時刻を記憶する。ここで、記憶されるシリンダ圧は、圧力センサ5aにより検出される。
【0149】
ステップS204において、学習部149は、記憶された時刻と、圧力センサ5aを用いて測定されたシリンダ圧に基づいて、測定開始から測定終了までのシリンダ圧の最小値Pmin(以下、最小シリンダ圧とも記す)と最大値Pmax(以下、最大シリンダ圧とも記す)を抽出し、処理をステップS205に進める。
【0150】
このように、本実施例では、ブーム上げ単独動作をしている間のシリンダ圧の測定を行い、測定したシリンダ圧を予め定めておいたブーム単独操作におけるシリンダ圧の圧力閾値Ptab(ブーム単独操作におけるシリンダ圧の最小閾値と最大閾値)の範囲内にあるかどうかを判定し、補正値を取得する。なお、ブーム上げ単独動作による学習におけるブーム単独操作におけるシリンダ圧の圧力閾値Ptabの範囲は、事前に記憶された開口特性と、領域制限制御中の流量制御弁D3を通過する流量をもとに机上計算あるいは試作機を用いた実験などに基づいて定められるシリンダ圧を目標とし、目標を満たす目標範囲(下限値及び上限値)として設定される。
【0151】
第2実施例における作業装置1Aは、車体1Bに回動可能に取り付けられたブーム8と、ブーム8の先端に回動可能に取り付けられたアーム9と、アーム9の先端に回動可能に取り付けられたバケット10とを有し、作業装置1Aを駆動する油圧シリンダ5は、ブーム8を駆動するブームシリンダ5であり、流量制御弁D3の目標操作圧の補正値を算出するために作業装置1Aに行わせる所定の動作は、アーム9またはバケット10を動作させず、ブーム8を上昇させるブーム上げ単独動作である。
【0152】
以上のように構成した第2実施例によれば、ブーム上げ単独動作をしている間のシリンダ圧の測定を行うことにより、学習処理の開始条件を減らし、効率が向上するとともに、アームシリンダ6を最収縮できない環境でも学習処理を実行することが可能となる。
【実施例0153】
本発明の第3実施例について、第1実施例との相違点を中心に説明する。第1実施例では、ブーム上げ動作にあたる流量制御弁D3を学習対象とした学習処理について説明した。これに対して、本実施例では、アーム引き動作にあたる流量制御弁D4を学習対象とした学習処理について説明する。
【0154】
本実施例では、流量制御弁D1~D6のうち、アーム引き動作にあたる流量制御弁D4の製造誤差による、開口特性テーブルToに対するバラつき(個体差)による領域制限制御の精度悪化を抑えるため、学習部149は、流量制御弁D4の開口面積と電磁弁57aにより生成する操作圧との関係を学習する。学習部149は、その学習結果に基づいて、開口特性テーブルToを参照し、目標スプール開口に基づいて演算した目標操作圧PiAM1C1を補正することにより、製造誤差のばらつきによる領域制限制御の精度悪化を抑える。
【0155】
流量制御弁D4のメータアウト通路部の開口面積と電磁弁57aにより生成する操作圧との関係を学習するには、油圧シリンダ6のメータアウト側の負荷圧の測定を行う。
【0156】
本実施例における油圧シリンダ6のメータアウト側の負荷圧は流量制御弁D4のメータアウト通路部の開口面積と電磁弁57aにより生成される操作圧が関係している。
【0157】
そのため、油圧シリンダ6のメータアウト側の負荷圧の測定を行うことで、絞りによる圧損(ブレーキ圧)を測定することができ、流量制御弁D4のメータアウト通路部の開口面積と電磁弁57aにより生成する操作圧との関係を学習することができる。なお、絞りによる圧損(ブレーキ圧)を測定する方法としては、油圧シリンダ6のメータアウト側の負荷圧を直接検出する方法の他、油圧シリンダ6のメータイン側の負荷圧に油圧シリンダ6の受圧面積比を乗算する方法がある。
【0158】
図17を参照して、学習部149により実行される流量制御弁D4の学習処理の流れについて説明する。図17は、学習部149により実行される流量制御弁D4の学習処理を示すフローチャートである。オペレータによって外部入力装置96が操作され、外部入力装置96から学習処理の実行指令が入力されると、学習部149は学習処理を開始する(ステップS301)。
【0159】
ステップS301において、学習部149は、流量制御弁D4の学習に紐付けられた学習開始姿勢データと学習開始目標面データを不揮発性メモリ42から読み出す。
【0160】
本実施例では、図10に示すように、水平引きの開始姿勢と目標面を設定する。学習開始姿勢データのアーム角βはアームシリンダ6が最収縮となる角度、バケット角γは0度が目標角度となるように範囲を設定し、学習開始目標面データは作業装置1Aのショベル基準座標系X軸と平行であり、Z軸方向の目標範囲はバケット10の爪先が空中動作となるように設定する。なおブーム角αの目標角度は、アーム角βとバケット角γが上記目標範囲を満たし、バケット10の爪先が目標面と一致した際のブーム角αの角度となり、ブーム角αの目標角度より目標範囲を設定する。
【0161】
ステップS301において、学習開始姿勢データと学習開始目標面データの読み出しが完了したら、ステップS302に進む。ステップS302において、図17に示すように、表示制御部150は、表示装置53に学習開始姿勢画面53a(図11参照)を表示させる。図11に示すように、学習開始姿勢画面53aには、作業装置1Aの姿勢を学習開始姿勢とするための操作をオペレータに促すメッセージ「作業装置の姿勢を目標範囲に合わせてください。」が表示される。
【0162】
図17のステップS302において、学習開始姿勢画面53aが表示装置53に表示されると、処理がステップS303に進む。ステップS303において、学習開始条件(学習開始姿勢、学習開始目標面、MC実行モードの設定)が満たされているかの判定を行う。
【0163】
学習開始姿勢の判定は、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢であるか否かの判定である。現在のブーム角α、アーム角β及びバケット角γのそれぞれが規定される目標範囲の内にある場合、学習部149は、作業装置1Aの姿勢は学習開始姿勢であると判定し、現在のブーム角α、アーム角β及びバケット角γのいずれかが目標範囲の外である場合、学習部149は、作業装置1Aの姿勢は学習開始姿勢でないと判定する。
【0164】
学習開始目標面の判定は、掘削目標面Stが学習開始目標面であるか否かの判定である。掘削目標面Stが学習開始目標面データで規定される目標範囲の内にある場合、学習部149は、掘削目標面Stは学習開始目標面であると判定し、掘削目標面Stが学習開始目標面データで規定される目標範囲の外にある場合、学習部149は、掘削目標面Stは学習開始目標面でないと判定する。
【0165】
MC実行モードの設定の判定は、MCを実行するモードに設定されているか否かの判定である。オペレータに操作されるモード切り替えスイッチによりMCを実行するモードに設定されている場合、学習部149は、MCを実行するモードに設定されていると判定し、オペレータに操作されるモード切り替えスイッチによりMCを実行するモードに設定されていない場合、学習部149は、MCを実行するモードに設定されていないと判定する。
【0166】
ステップS303において、学習開始条件(学習開始姿勢、学習開始目標面、MC実行モードの設定)が全て肯定判定された場合、処理はステップS304に進む。ステップS303の学習開始条件(学習開始姿勢、学習開始目標面、MC実行モードの設定)の判定は、肯定判定されるまで所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0167】
ステップS303において、学習開始条件の判定処理が、肯定判定された場合、表示制御部150は、表示装置53に操作指示画面を表示させる。操作指示画面には、「アーム操作レバーを引き側に操作してください」といった操作指示が表示される。ステップS303において、操作指示画面が表示されると、処理がステップS304に進む。
【0168】
ステップS304において、オペレータにより電気操作レバー装置A2がアーム引き側に操作されると、学習処理が開始され、電気操作レバー装置A2が操作されている間、領域制限制御が実行され、バケット10の先端部が掘削目標面Stに沿って移動するように、作業装置1Aの動作が制御される。
【0169】
学習部149は、領域制限制御を実行され、アーム9がアーム引き方向に駆動しているときの油圧シリンダ6のメータアウト側の負荷圧の測定を行う。なお以下では、油圧シリンダ6のメータアウト側の負荷圧をアームシリンダ圧とも記す。学習部149は測定したアームシリンダ圧と時刻を記憶する。ここで、記憶されるアームシリンダ圧は、圧力センサ6aにより検出される。
【0170】
ステップS304において、学習部149は、記憶された時刻と、圧力センサ6aを用いて測定されたアームシリンダ圧に基づいて、測定開始から測定終了までのアームシリンダ圧の最小値Pamin(以下、最小アームシリンダ圧とも記す)と最大値Pamax(以下、最大アームシリンダ圧とも記す)を抽出し、処理をステップS305に進める。
【0171】
ステップS305において、学習部149は、ステップS304で演算された最小アームシリンダ圧Paminが予め定められたアームシリンダ圧の最小閾値Pm3以上であるか否かを判定する。なお、アームシリンダ圧の最小閾値Pm3は、事前に記憶された開口特性と、領域制限制御中の流量制御弁D4を通過する流量をもとに机上計算あるいは試作機を用いた実験などに基づいて定められるシリンダ圧を目標値とし、目標値を満たす目標範囲(下限値及び上限値)を設定した場合の下限値である。
【0172】
ステップS305において、最小アームシリンダ圧Paminがアームシリンダ圧の最小閾値Pm3よりも小さいと判定されると、学習部149は、処理をステップS307に進める。
【0173】
ステップS307において、学習部149は、油圧シリンダ6の目標操作圧の補正値Pica(以下、アーム補正値とも記す)を減算し、操作圧を低くするようなアーム補正値Picaを取得する。例えば、補正値Picaの初期値を1.00に設定した場合、操作圧が低くなるようにするには、初期値から0.01を加算して補正値Picaを1.01にする。
【0174】
学習部149は、取得したアーム補正値Picaを補正目標圧演算部に出力し、処理をステップS302に戻す。つまり、次のアームシリンダ圧の測定時は目標操作圧PiAM1C1が補正目標圧演算部146で補正され、補正目標操作圧PiAM1C2がバルブ指令演算部147に出力される。なお、補正目標圧演算部146での補正方法については後述する。
【0175】
ステップS305において、最小アームシリンダ圧Paminがアームシリンダ圧の最小閾値Pm3よりも大きいと判定されると、学習部149は、処理をステップS306に進める。
【0176】
ステップS306において、学習部149は、ステップS304で演算された最大アームシリンダ圧Pamaxが予め定められたアームシリンダ圧の最大閾値Pm4以下であるか否かを判定する。なお、アームシリンダ圧の最大閾値Pm4は、事前に記憶された開口特性と、領域制限制御中の流量制御弁D4を通過する流量をもとに机上計算あるいは試作機を用いた実験などに基づいて定められるシリンダ圧を目標値とし、目標値を満たす目標範囲(下限値及び上限値)を設定した場合の上限値である。
【0177】
ステップS306において、最大アームシリンダ圧Pamaxがシリンダ圧の最大閾値Pm4よりも大きいと判定されると、学習部149は、処理をステップS308に進める。
【0178】
ステップS308において、学習部149は、操作圧の補正値Picaを加算し、操作圧を高くするようなアーム補正値Picaを取得する。例えば、補正値Picの初期値を1.00に設定した場合、操作圧が高くなるようにするには、初期値から0.01を加算して補正値Picを1.01にする。
【0179】
学習部149は、取得したアーム補正値Picaを補正目標圧演算部に出力し、処理をステップS302に戻す。つまり、次のシリンダ圧の測定時は目標操作圧PiAM1C1が補正目標圧演算部146で補正され、補正目標操作圧PiAM1C2がバルブ指令演算部147に出力される。なお、補正目標圧演算部146での補正方法については後述する。
【0180】
ステップS306において、最大アームシリンダ圧Pamaxがアームシリンダ圧の最大閾値Pm4よりも小さいと判定されると、学習部149は、処理をステップS309に進める。ステップS309において、学習部149は、操作圧のアーム補正値Picaを記憶し、図9のフローチャートに示す処理を終了する。なお、表示制御部150は、学習処理が終了したことを表示装置53に表示させる。
【0181】
このように、学習部149は、学習処理において、領域制限制御が実行されている間の、アームシリンダ圧の測定を行い、アームシリンダ圧の圧力閾値Ptaa(アームシリンダ圧の最小閾値Pm3、アームシリンダ圧の最大閾値Pm4)の範囲に収まったときのアーム補正値Picaを取得する。取得したアーム補正値Picaは、補正処理で用いられる。
【0182】
なお、本実施例において、図12に示すように、測定したアームシリンダ圧は、オペレータにより電気操作レバー装置A2がアーム引き側に操作され、領域制限制御が実行された直後とアーム引き動作が終了する付近ではアームシリンダ圧がアームシリンダ圧の最小閾値Pm3よりも小さくなる。測定したアームシリンダ圧がアームシリンダ圧の最小閾値Pm3よりも小さい場合、図17においてステップS305からステップS307へ進むフローを繰り返してしまう。
【0183】
本実施例では、目標速度演算部144によって演算される二次目標速度に対して閾値Vtaaを設定し、油圧シリンダ6の二次目標速度が閾値Vtaa以上であるときにシリンダ圧の測定を行う。つまり、領域制限制御が実行された直後とアーム引き動作が終了する付近でのアームシリンダ圧を除いてアームシリンダ圧の測定をすることで、誤ったステップS305からステップS307へ進むフローの繰り返しを防ぐ。また、アームシリンダ圧の測定を開始する条件は二次目標速度に対する閾値でなくてもよく、領域制限制御が実行された直後とブーム上げ動作が終了する付近でのアームシリンダ圧を除いて測定することができればよい。
【0184】
図18を参照して補正処理について説明する。図18に示されているのは補正目標圧演算部146によっておこなう補正処理である。ここで、目標操作圧PiAM1C1は目標圧演算部145で演算され、アーム補正値Picaは学習部149より取得される。補正目標圧演算部146は目標圧演算部145より出力される目標操作圧PiAM1C1を受け取り、学習部149で取得されたアーム補正値Picaを読みだす。本実施例では、流量制御弁D4についての学習処理を行うため、補正処理において、目標圧演算部145は補正目標圧演算部146へ流量制御弁D4に対応する目標操作圧PiAM1C1を出力する。なお、目標圧演算部145からバルブ指令演算部147へ出力する目標操作圧は目標操作圧PiAM1C1を除いた目標操作圧Pi1(PiBM12U1,PiBM3U1、PiBM12D1,PiBM3D1,PiAM2C1、PiAM1D1,PiAM2D1,PiBKC1,PiBKD1)となる。
【0185】
補正目標圧演算部146は目標操作圧PiAM1C1とアーム補正値Picaとを乗算することで補正目標操作圧Pi2を演算し、バルブ指令演算部147に出力する。
【0186】
上述した第3実施例によれば、次の作用効果を奏する。
【0187】
(1)目標圧演算部145は、開口特性テーブルToと、目標スプール開口(本実施例ではAout)と、操作圧Pi0に基づいて、電磁弁55a~59bにより生成する操作圧の目標値(目標操作圧)Pi1を演算する。本実施例に係る目標圧演算部145は、目標操作圧Pi1のうち、PiAM1C1を補正目標圧演算部146に出力する。
【0188】
補正目標圧演算部146は、目標操作圧PiAM1C1と学習部149の学習処理によって取得されたアーム補正値Picaに基づいて、補正目標操作圧PiAM1C2を演算する。バルブ指令演算部147は、補正目標操作圧PiAM1C2と目標操作圧PiAM1C1を除いた目標操作圧Pi1に基づいて、電磁弁55a~59bを制御する。
【0189】
学習部149は、領域制限制御が実行されている間の、流量制御弁D4のアームシリンダ圧を測定し、測定したアームシリンダ圧(最小アームシリンダ圧Pamin、最大アームシリンダ圧Pamax)が予め定められたアームシリンダ圧の圧力閾値Ptaa(シリンダ圧の最小閾値Pm3、シリンダ圧の最大閾値Pm4)の範囲内に収まったときのアーム補正値Picaを取得する学習処理を実行する。
【0190】
学習処理において、シリンダ圧(最小アームシリンダ圧Pamin、最大アームシリンダ圧Pamax)を測定し、予め定められた圧力閾値Ptaaの範囲内に収まるように、操作圧の補正値Picaを取得することで、メータアウト開口の絞りによる圧損(ブレーキ圧)を狙いの範囲に収めることができる。
【0191】
この構成によれば、学習及び補正により、流量制御弁D4の製造誤差の影響を低減し、事前に試作機で使用していた流量制御弁の開口特性を再現して、流量制御弁を制御することができる。その結果、領域制限制御などにおいて、バケット10の爪先(制御点)を精度よく動かすことができる。
【0192】
なお、油圧システムは、クローズドセンタシステムとしてもよいし、図14に示すように、オープンセンタシステムとしてもよい。本実施例に係るコントローラ40は、所定の目標流量(目標速度)によって油圧シリンダ5~7を動作させたい場合に、目標流量(目標速度)と油圧シリンダ5~7の負荷圧を考慮したオリフィスの式を用いて目標開口面積を演算する。このため、油圧システムにオープンセンタシステムを採用した場合であっても、軽負荷、重負荷など問わずに目標流量(目標速度)通りに油圧シリンダ5~7を動作させることができる。
【0193】
このように、本実施例によれば、油圧システムの構成に関わらず、作業機械の個体差に起因した油圧シリンダの動作のバラつきが抑制され、高い精度で作業が可能な作業機械を提供することができる。
【0194】
(2)学習部149は、少なくとも、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢であることと、掘削目標面Stが学習開始目標面であることを、学習処理を開始する条件の一つとしている。これにより、学習部149は、アーム補正値Picaを適切に取得することができ、補正目標圧演算部146は目標操作圧Pi1を精度よく補正することができる。
【0195】
また、第1実施例または第2実施例における学習処理を行った後に第3実施例の学習処理を行った場合、ブーム上げ動作にあたる流量制御弁D3の製造誤差に加えてアーム引き動作にあたる流量制御弁D4,D5の製造誤差による領域制限制御の精度悪化を抑えることができ、高い精度で作業が可能な作業機械を提供することができる。なお、第3実施例における学習処理を行った後に第1実施例または第2実施例における学習処理を行ってもよい。
【0196】
第3実施例では、車体1Bと、車体1Bに回動可能に取り付けられた作業装置1Aと、作業装置1Aを駆動する油圧シリンダ6と、作業装置1Aを操作するための操作装置A2と、油圧ポンプ202と、油圧ポンプ202から油圧シリンダ6に供給される作動油の流量を制御する流量制御弁D4と、流量制御弁D4の操作圧を生成する電磁弁57a,57bと、操作装置A2の操作量に基づいて、作業装置1Aの動作範囲が目標面St上及びその上方に制限されるように油圧シリンダ6の目標速度を算出し、前記目標速度に基づいて流量制御弁D4の目標操作圧を算出し、前記目標操作圧に応じて電磁弁57a,57bを制御するコントローラ40とを備えた作業機械1において、油圧シリンダ6のメータアウト圧力を測定するための圧力センサ6a,6bを備え、コントローラ40は、油圧シリンダ6を駆動して作業装置1Aに所定の動作を行わせている間に測定された前記メータアウト圧力を所定の第1下限値Pm3から所定の第1上限値Pm4までの範囲内に収めるための前記目標操作圧の補正値Picaを算出し、補正値Picaに応じて前記目標操作圧を補正する。
【0197】
また、第3実施例におけるコントローラ40は、作業装置1Aに前記所定の動作を行わせている間に測定された前記メータアウト圧力の最小値Pminが第1下限値Pm3を下回る場合は、前記目標操作圧が減少するように補正値Picaを算出し、作業装置1Aに前記所定の動作を行わせている間に測定された前記メータアウト圧力の最大値Pmaxが第1上限値Pm4を上回る場合は、前記目標操作圧が増加するように補正値Picaを算出し、前記目標操作圧を補正値Picaに応じて増減させることにより前記目標操作圧を補正する。
【0198】
以上のように構成した第3実施例によれば、作業装置1Aを駆動する油圧シリンダ6のメータアウト圧が所定の範囲内(Pm3~Pm4)に収まるように流量制御弁D4の目標操作圧が補正することにより、作業装置1Aを駆動する油圧シリンダ6の速度応答性の悪化、および油圧シリンダ6の波打ちや逸走を防ぐことができるため、高い精度で作業を行うことが可能となる。
【0199】
また、第3実施例における圧力センサ6bは、油圧シリンダ6のメータイン圧力を検出し、コントローラ40は、圧力センサ6bで検出された前記メータイン圧力と油圧シリンダ6の受圧面積比とを乗算することにより、前記メータアウト圧力の測定値を算出する。これにより、油圧シリンダ6のメータアウト圧力を検出する圧力センサ6aが設けられていない場合であっても、油圧シリンダ6のメータアウト圧力を測定することが可能となる。
【0200】
また、第3実施例における作業装置1Aは、車体1Bに回動可能に取り付けられたブーム8と、ブーム8の先端に回動可能に取り付けられたアーム9と、アーム9の先端に回動可能に取り付けられたバケット10とを有し、油圧シリンダ6は、アーム9を駆動するアームシリンダ6であり、前記所定の動作は、バケット10の爪先が地面に対して平行に設定された目標面Stに沿って移動するようにバケット10を引き寄せる水平引き動作である。これにより、水平引き動作を高い精度で行うことが可能となる。
【実施例0201】
本発明の第4実施例について、第1実施例との相違点を中心に説明する。油圧シリンダ5のメータイン側の圧力、及びメータアウト側の圧力は、作動油の温度によって変化する。このため、本実施例に係るコントローラ40は、作動油の温度が予め定められた温度閾値以上である場合に限り、学習処理を実行する。
【0202】
図19は、本実施例に係る学習部149により実行される学習処理を示すフローチャートである。図19において、第1実施例(図9に示す)との相違点は、ステップS102の後にステップS401が追加されている点である。
【0203】
ステップS401において、学習部149は、温度センサ19により検出される作動油の温度Teが、温度閾値Tte以上であるか否かを判定する。温度閾値Tteは、不揮発性メモリ42に予め記憶されている。ステップS401の判定結果がNOの場合は処理をステップS102に進め、判定結果がYESの場合は処理をステップS103に進める。ステップS401の判定処理は、肯定判定されるまで所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0204】
このように、本実施例では、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢であることと、学習開始目標面であることと、MCを実行するモードに設定されていること及び、作動油の温度Teが温度閾値Tte以上であることを、学習処理を開始する条件としている。このように、少なくとも、作動油の温度Teが温度閾値Tte以上であることを、学習処理(ステップS104~S109)を開始する条件の一つとすることにより、作動油の温度Teが温度閾値Tte未満であるときに、学習処理が行われることが防止される。これにより、作動油の温度によるメータアウト側の圧力の変化を防ぐことができるため、作動油の温度による学習結果の変化を抑えることができ、領域制限制御の精度の向上を図ることができる。
【0205】
第4実施例における作業機械1は、作動油の温度Teを検出する温度センサ19を備え、コントローラ40は、温度センサ19で検出された作動油の温度Teが所定の閾値Tte以上の場合に補正値Picを算出する。
【0206】
以上のように構成した第4実施例によれば、作動油の温度によるメータアウト側の圧力の変化を防ぐことができるため、作動油の温度による学習結果の変化を抑えることができ、領域制限制御の精度の向上を図ることができる。
【実施例0207】
本発明の第5実施例について、第1実施例との相違点を中心に説明する。第1実施例で説明した学習部149に記憶された学習開始目標面データは、作業装置1Aのショベル基準座標系X軸と平行であり、Z軸方向の目標範囲はバケット10の爪先が空中動作となるように設定すると説明した。しかしながら、作業装置1Aのショベル基準座標系X軸に対して角度を持たせてもよい。なお、学習対象とした流量制御弁が動作する範囲とする。
【実施例0208】
本発明の第6実施例について、第1実施例との相違点を中心に説明する。図20は、本実施例に係る学習部149により実行される学習処理を示すフローチャートである。図20において、第1実施例(図9に示す)との相違点は、ステップS105,S106に代えて、ステップS501~S503を実行する点である。
【0209】
ステップS104に続き、ステップS501において、学習部149は、ステップS104で測定したメータアウト側のシリンダ圧の平均値Pav(以下、平均シリンダ圧とも記す)を算出し、処理をステップS502に進める。
【0210】
ステップS502において、学習部149は、平均シリンダ圧Pavが下限閾値Pav1以上であるか否かを判定する。ステップS502の判定結果がNOの場合は処理をステップS107に進め、判定結果がYESの場合は処理をステップS503に進める。
【0211】
ステップS503において、学習部149は、平均シリンダ圧Pavが上限閾値Pav2以下であるか否かを判定する。判定結果がNOの場合は処理をステップS108に進め、判定結果がYESの場合は処理をステップS109に進める。
【0212】
なお、下限閾値Pav1及び上限閾値Pav2は、事前に記憶された流量制御弁D3の開口特性と、領域制限制御中の流量制御弁D3を通過する流量をもとに机上計算あるいは試作機を用いた実験などに基づいて定められるシリンダ圧を目標値とし、当該目標値を満たす目標範囲(下限値及び上限値)を設定した場合の下限値及び上限値である。
【0213】
このように本実施例では、平均シリンダ圧Pavをシリンダ圧の平均値の下限閾値Pav1とシリンダ圧の平均値の上限閾値Pav2と比較し、操作圧の補正値Picを取得する。平均シリンダ圧Pavに応じて補正値Picを算出することで、シリンダ圧の測定中の一時的なシリンダ圧の低下や上昇、ばらつき等を考慮して学習処理を行えるため、図20のフローにおいて誤ったステップに進むことを防ぐことができる。
【0214】
また、第1実施例で説明した学習処理(図9に示す)には、測定したシリンダ圧をシリンダ圧の最小閾値Pm1とシリンダ圧の最大閾値Pm2と比較し、判定するステップがあり、本実施例にはシリンダ圧の平均値の下限閾値Pav1とシリンダ圧の平均値の上限閾値Pav2と比較し、判定するステップがある。これらのうち、いずれかひとつまたはいずれかの組み合わせでもよく、組み合わせることでフローにおいて誤ったステップに進むことを防ぐことができる。
【0215】
第6実施例におけるコントローラ40は、作業装置1Aに所定の動作を行わせている間に測定されたブームシリンダ5のメータアウト圧力の平均値Pavを算出し、平均値Pavが所定の第2下限値Pav1を下回る場合は、流量制御弁D3の目標操作圧が減少するように補正値Picを算出し、平均値Pavが第2上限値Pav2を上回る場合は、前記目標操作圧が増加するように前記補正値を算出する。
【0216】
以上のように構成した第6実施例によれば、平均シリンダ圧Pavに応じて補正値Picを算出することで、シリンダ圧の測定中の一時的なシリンダ圧の低下や上昇、ばらつき等を考慮して学習処理を行えるため、図20のフローにおいて誤ったステップに進むことを防ぐことができる。
【実施例0217】
本発明の第7実施例について、第1実施例との相違点を中心に説明する。第1実施例に係る補正目標圧演算部146で行われる補正処理では、目標圧演算部145により流量制御弁D3に対応した目標操作圧PiBM3U1と、学習部149による学習処理によって取得した操作圧の補正値Picとを受け取り、図13に示されるように乗算することで補正目標操作圧PiBM3U2を得ている。しかしながら、図21に示すように、目標操作圧PiBM3U1に操作圧の補正値Picを加算する方法で補正目標操作圧PiBM3U2を演算してもよい。なお、図21に示すように、加算する方法で補正目標操作圧PiBM3U2を演算する場合においては、補正値Picの初期値を0.00に設定し、図9のS108において、指令圧を大きくしたい場合は学習ステップごとに初期値に0.01ずつ加算して、図9のS107において、操作圧を小さくしたい場合は初期値を0.01ずつ減算する。なお、補正値Picに応じて目標操作圧を補正する方法は、目標操作圧に補正値Picを乗算または加算する方法に限られない。
【実施例0218】
本発明の第8実施例について、第1実施例との相違点を中心に説明する。第1実施例で説明した学習処理は、レギュレータ圧に対応するメインポンプ201,202,203の吐出流量の目標流量(設計値)Qcに対するバラつきが小さいほど精度が高くなる。このため、メインポンプ201,202,203の吐出流量に対するレギュレータ圧の較正を行ってから、流量制御弁D1~D6の目標開口面積に対する目標操作圧の較正(学習及び補正)を行うことが好ましい。メインポンプ201,202,203の吐出流量が、目標流量(設計値)Qcに対してばらついた場合、測定されるシリンダ圧もばらついてしまい、狙いの圧力(アームシリンダ圧の圧力閾値)Ptaaに対応する開口面積が得られているのかが分からなくなってしまう。このため、本実施例では、メインポンプ201,202,203の吐出流量がほぼ設計値通りに作動油を吐出している状態にした上で、流量制御弁D1~D6に対して学習処理を実施する。これにより、学習処理の精度を高めることが可能となる。
【実施例0219】
本発明の第9実施例について、上記実施例との相違点を中心に説明する。上記実施例では、学習処理を行う際に1台の油圧ポンプから複数の油圧シリンダに作動油が供給される場合がある。一方、MCにおいては、目標速度通りに油圧シリンダを駆動することが重要であり、1台の油圧ポンプで1つの油圧シリンダを駆動する(分流を防ぐ)ことにより、掘削精度をさせている。従って、学習処理も同様の条件で行うことが望ましい。そこで、本実施例では、学習処理を行う際に、1台の油圧ポンプから作動油が供給される油圧シリンダを1つに限定する。
【0220】
第9実施例における作業装置1Aは、車体1Bに回動可能に取り付けられたブーム8と、ブーム8の先端に回動可能に取り付けられたアーム9とを有し、作業装置1Aを駆動する油圧シリンダ5,6は、ブーム8を駆動するブームシリンダ5とアーム9を駆動するアームシリンダ6とを含み、油圧ポンプ202,203は、ブームシリンダ5に優先的に作動油を供給する可変容量型の第1油圧ポンプ203と、アームシリンダ6に優先的に作動油を供給する可変容量型の第2油圧ポンプ202とを含み、流量制御弁D3,D4は、第1油圧ポンプ203からブームシリンダ5に供給される作動油の流量を制御する第1流量制御弁D3と、第2油圧ポンプ202からアームシリンダ6に供給される作動油の流量を制御する第2流量制御弁D4とを含み、電磁弁56a~57bは、第1流量制御弁D3の操作圧を生成する第1電磁弁56a,56bと、第2流量制御弁D4の操作圧を生成する第2電磁弁57a,57bとを含み、コントローラ40は、第1流量制御弁D3のみを駆動する動作を作業装置1Aに行わせている間に測定されたブームシリンダ5のメータアウト圧力を用いて第1電磁弁56a,56bの目標操作圧の補正値Picを算出し、第2流量制御弁D4のみを駆動する動作を作業装置1Aに行わせている間に測定されたアームシリンダ6のメータアウト圧力を用いて第2電磁弁57a,57bの目標操作圧の補正値Picaを算出する。
【0221】
以上のように構成した第9実施例によれば、1台の油圧ポンプで1つの油圧シリンダを駆動する動作に対して補正値Pic,Pica算出することにより、領域制限制御の精度を向上させることできる。
【0222】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、本発明は必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0223】
1…油圧ショベル(作業機械)、1A…作業装置、1B…車体、5…ブームシリンダ(油圧シリンダ)、5a,5b…圧力センサ、6…アームシリンダ(油圧シリンダ)、6a,6b…圧力センサ、7…バケットシリンダ、7a,7b…圧力センサ、8…ブーム、9…アーム、10…バケット、11…走行体、12…旋回体、13…バケットリンク、14…車体位置検出装置、14a…GNSSアンテナ、14b…GNSSアンテナ、15…制御弁ユニット、16…運転室、18…エンジン、19…温度センサ、21…制御システム、30…ブーム角度センサ、31…アーム角度センサ、32…バケット角度センサ、33…車体傾斜角度センサ、39…ロック弁、40…コントローラ、41…処理装置、42…不揮発性メモリ、43…揮発性メモリ、44…入力インターフェース、45…出力インターフェース、48…パイロットポンプ、50…姿勢検出装置、51…目標面設定装置、53…表示装置、53a…学習開始姿勢画面、55a,55b…電磁弁、56a,56b…電磁弁(第1電磁弁)、57a,57b…電磁弁(第2電磁弁)、58a,58b,59a,59b…電磁弁、91…ブームピン、92…アームピン、93…バケットピン、96…外部入力装置、141…操作量演算部、142…姿勢演算部、143…目標面演算部、144…目標速度演算部、145…目標圧演算部、146…補正目標圧演算部、147…バルブ指令演算部、148…電磁弁制御部、149…学習部、150…表示制御部、170…吐出配管、201…第1メインポンプ、201a…レギュレータ、201b…圧力センサ、202…第2メインポンプ(第2油圧ポンプ)、202a…レギュレータ、202b…圧力センサ、203…第3メインポンプ(第1油圧ポンプ)、203a…レギュレータ、203b…圧力センサ、A1~A3…電気操作レバー装置、B1,B2…操作レバー、C1~C12…パイロットライン、D1,D2…流量制御弁、D3…流量制御弁(第1流量制御弁)、D4…流量制御弁(第2流量制御弁)、D5,D6…流量制御弁、E1~E12…受圧室、St…掘削目標面、To…開口特性テーブル。
図1
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