(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052334
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 37/10 20060101AFI20240404BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B32B37/10
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158990
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】穴井 圭
(72)【発明者】
【氏名】山内 真一
(72)【発明者】
【氏名】服部 隆志
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA16
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(57)【要約】
【課題】緩衝材を用いた積層体の加熱加圧時による接合体の製造時においても、当該緩衝材による被接合部材の汚染を防止し得る接合体の製造方法、及び複数の積層体を同一の押圧治具上に並べた場合に一括接合性を担保する製造方法を提供する。
【解決手段】第1被接合材と第2被接合材とが接合されてなる接合体の製造方法であって、前記第1被接合材上に膜体を配設する工程と、前記膜体上に前記第2被接合材を載置して積層体を形成する工程と、前記積層体の積層方向の端面に押圧治具を配設する工程とを備え、前記押圧治具を用いて前記積層体を加熱及び加圧して前記第1被接合材と前記第2被接合材とを接合するのに先立ち、前記積層体上に金属材を配設するとともに、前記金属材上に緩衝材を配設する、接合体の製造方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被接合材と第2被接合材とが接合されてなる接合体の製造方法であって、
前記第1被接合材上に膜体を配設する工程と、
前記膜体上に前記第2被接合材を載置して積層体を形成する工程と、
前記積層体の積層方向の端面に押圧治具を配設する工程とを備え、
前記押圧治具を用いて前記積層体を加熱及び加圧して前記第1被接合材と前記第2被接合材とを接合するのに先立ち、前記積層体上に金属材を配設するとともに、前記金属材上に緩衝材を配設する、
接合体の製造方法。
【請求項2】
前記金属材は、弾性率が250GPa以下である金属、又は合金からなる、請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
前記緩衝材は、ふっ素樹脂、シリコーン樹脂及び炭素繊維からなる群より選択される少なくとも一種からなる、請求項1又は2に記載の接合体の製造方法。
【請求項4】
前記金属材の厚みが0.01μm以上200μm以下である、請求項1又は2に記載の接合体の製造方法。
【請求項5】
前記緩衝材の厚みが5μm以上500μm以下である、請求項1又は2に記載の接合体の製造方法。
【請求項6】
ISO 25178に準拠して測定された前記金属材の前記積層体と対向する面の算術平均粗さSaが400μm以下である、請求項1又は2に記載の接合体の製造方法。
【請求項7】
前記第1被接合材は基板であり、前記第2被接合材は半導体素子である、請求項1又は2に記載の接合体の製造方法。
【請求項8】
前記膜体は金属微粒子を含む焼結前駆体である、請求項1又は2に記載の接合体の製造方法。
【請求項9】
前記金属微粒子を含む焼結前駆体は、前記金属微粒子として銅、銀、パラジウム、亜鉛、アルミニウム、金若しくはニッケル、又はこれらの混合物若しくはこれらの合金の粒子を含む、請求項8に記載の接合体の製造方法。
【請求項10】
第1被接合材、膜体及び第2被接合材がこの順に積層されてなる積層体を用意し、前記積層体の積層方向の端面に押圧治具を配設するとともに、前記積層体と前記押圧治具との間に緩衝材を配設し、前記押圧治具を用いて前記積層体を加熱及び加圧しながら、前記第1被接合材と前記第2被接合材とを接合してなる接合体を製造する際において、
前記積層体と前記緩衝材との間に、金属材を配設し、前記緩衝材の、前記接合体への付着を防止する、緩衝材の付着防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体の製造方法及び緩衝材の付着防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属微粒子を含む焼結型接合材料を用いて半導体素子と回路基板等の基板とが焼結接合された半導体装置が知られている。例えば、IGBTなど大電流が通電され、発熱量が大きくなる半導体装置の製造方法には、はんだの代わりに有害な化学物質を使用することを制限し、放熱性に優れる金属微粒子を含む焼結前駆体を用い、半導体素子と回路基板等とを焼結接合する工程が採用されている。
【0003】
しかしながら、半導体素子や回路基板等の被接合部材が接合層を介して積層された積層体を加熱加圧して接合体を製造する場合、一方の被接合部材が加熱加圧によって傷等の損傷を受ける場合があった。
かかる問題に鑑みて、特許文献1では、加熱加圧する際に、加圧部材と積層体との間にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の緩衝材を介在させ、当該緩衝材を介して該積層体を加熱加圧することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、積層体と加圧部材との間に緩衝材として、樹脂シートやPTFE等を介在させると、加熱加圧の際に、緩衝材の成分が当該緩衝材と隣接及び接触した被接合部材に融着してしまい、該被接合部材を汚染させてしまうという問題が生じていた。この汚染は、例えば該被接合部材が半導体素子等の場合に、該被接合部材へのワイヤボンディングの妨げになる等の種々の問題を生ぜしめる原因となっていた。また、複数の積層体を同一の押圧治具上に並べて、同時に複数の接合体を製造する場合に、一括接合性を担保するのは困難であるという問題があった。
【0006】
したがって本発明の課題は、緩衝材を用いた積層体の加熱加圧時による接合体の製造時においても、当該緩衝材による被接合部材の汚染を防止し得る接合体の製造方法、及び複数の積層体を同一の押圧治具上に並べて、同時に複数の接合体を製造する場合に、一括接合性を担保する製造方法を提供することにある。
なお、「複数の積層体を同一の押圧治具上に並べて、同時に複数の接合体を製造する場合に、一括接合性を担保する」ことを、以下、「一括接合性を担保する」ともいう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、第1被接合材、膜体及び第2被接合材からなる積層体と、押圧治具との間に緩衝材を配設する際に、当該緩衝材と第2被接合材との間に所定の金属材を配設することにより、当該緩衝材による第2被接合部材の汚染を防止でき、且つ複数の接合体を同時に製造する場合に一括接合性を担保できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、第1被接合材と第2被接合材とが接合されてなる接合体の製造方法であって、
前記第1被接合材上に膜体を配設する工程と、
前記膜体上に前記第2被接合材を載置して積層体を形成する工程と、
前記積層体の積層方向の端面に押圧治具を配設する工程とを備え、
前記押圧治具を用いて前記積層体を加熱及び加圧して前記第1被接合材と前記第2被接合材とを接合するのに先立ち、前記積層体上に金属材を配設するとともに、前記金属材上に緩衝材を配設する、接合体の製造方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、第1被接合材、膜体及び第2被接合材がこの順に積層されてなる積層体を用意し、前記積層体の積層方向の端面に押圧治具を配設するとともに、前記積層体と前記押圧治具との間に緩衝材を配設し、前記押圧治具を用いて前記積層体を加熱及び加圧し、前記第1被接合材と前記第2被接合材とを接合してなる接合体を製造する際において、
前記積層体と前記緩衝材との間に、金属材を配設し、前記緩衝材の、前記接合体への付着を防止する、緩衝材の付着防止方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、緩衝材を用いた積層体の加熱加圧時による接合体の製造時においても、当該緩衝材による被接合部材の汚染を防止し、且つ複数の接合体を同時に製造する場合に一括接合性を担保する製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の接合体の製造方法の工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
図1は、本発明の接合体の接合方法を説明する工程図である。
【0013】
最初に、
図1に示すように、第1被接合材11上に膜体12Xを配設する。膜体とは、以下に説明する第1被接合材と第2被接合材を接合するために機能するものであり、例えば、金属シートや、金属箔等のような平板上の金属体や、金属微粒子を含む焼結型接合材料や遷移的液相焼結(TLPS)を利用した接合ペースト等であって塗布によって平坦に形成される焼結前駆体等が挙げられる。膜体12Xは第1被接合体11に対して所定の接合材で接合するように配設してもよいし、単に載置することもできる。
【0014】
前記膜体としては、例えば、上述のように、金属微粒子を含む焼結前駆体を用いることができる。この焼結前駆体としては、例えば金属微粒子と、樹脂及び有機溶媒の少なくともいずれかを含むペースト、ペーストの乾燥体若しくはシートとすることができる。具体的には、第1被接合材として、金属からなる面を有する部材を用い、膜体12Xとして、前記焼結前駆体を用いることができる。
なお、前記焼結前駆体にペーストを用いる場合には、第1被接合材上にペーストを直接塗工することが好ましい。また、前記焼結前駆体にペーストの乾燥体を用いる場合には、第1被接合材上にペーストを直接塗工し乾燥することで乾燥体とすることが好ましい。また、前記焼結前駆体にシートを用いる場合には、第1被接合材上にシートを圧着することもできるし、圧着せず使うこともできる。なお、圧着せずに使う場合は、シートと銅等の金属からなる支持基材との間に仮固定用組成物を用いることが好ましい。
【0015】
なお、前記ペーストを塗工する方法は特に限定されないが、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、ディスペンス印刷法、リバースコート法及びドクターブレード法を挙げることができる。
【0016】
前記焼結前駆体に含まれる金属微粒子は特に限定されるものではないが、焼結によって、膜体12Xの上下に位置する第1被接合材11及び第2被接合材13の接合性を良好にするという観点から、銅、銀、パラジウム、亜鉛、アルミニウム、金若しくはニッケル、又はこれらの混合物若しくはこれらの合金の粒子等が好ましい。
膜体12Xの厚みは、第1被接合材11と第2被接合材13との接合性を良好に維持するとの観点から、ペーストの様な揮発成分を含む場合は、1μm以上300μm以下であることが好ましい。ペーストの乾燥体やシート等揮発成分を含まないものの場合は、後述する接合層が十分な接合強度を確保できるように、0.8μm以上240μm以下であることが好ましい。
【0017】
金属微粒子の体積累積粒径DSEM50は、0.01μm以上30μm以下であることが第1被接合材と第2被接合材との接合を良好に保つ点から好ましい。同様の観点から、DSEM50は0.03μm以上20μm以下であることが更に好ましく、0.05μm以上15μm以下であることが一層好ましい。
体積累積粒径DSEM50は、例えば、以下の測定方法によって求められる。走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率を適宜調整し、輪郭のはっきりした金属微粒子を撮影する。マウンテック社製Mac-Viewを用い、金属微粒子のSEM像を読み込んだ後、SEM像上の金属微粒子を無作為に50個以上選んで、該粒子の粒径(ヘイウッド径)を測定する。次いで、得られたヘイウッド径から、粒子が真球であると仮定したときの体積を算出し、該体積の累積体積50容量%における粒径を体積累積粒径DSEM50とする。
【0018】
金属微粒子の形状に特に制限はなく、例えば、球状、多面体状、扁平状、不定形、又はそれらの組み合わせなどが挙げられる。また金属微粒子はその粒度分布に二つ以上のピークを有していてもよい。
【0019】
金属微粒子は、その表面に表面処理剤が付着していてもよい。金属微粒子の表面に表面処理剤を付着させておくことで、金属微粒子の過度の凝集と酸化を抑制することができる。
【0020】
表面処理剤は特に限定されるものではなく、例えば、脂肪酸、脂肪族アミン、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等を用いることができる。これらを用いることで、粒子の表面と相互作用しペースト中に含まれる有機溶媒やシート中の樹脂との相溶性を向上させペーストの流動性を向上させることや、粒子表面の酸化を防止することができる。
脂肪酸あるいは脂肪族アミンの具体例としては、安息香酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミンなどが挙げられる。これらの脂肪酸、脂肪族アミンは、それぞれ1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
前記ペースト及びその乾燥体である焼結前駆体には、ペーストや焼結前駆体の各種特性を調整するための調整剤を適宜含有させてもよい。調整剤としては、例えば還元剤、粘度調整剤、表面張力調整剤が挙げられる。
【0022】
還元剤としては、金属微粒子の焼結を促進させるものがよく、例えばモノアルコール、多価アルコール、アミノアルコール、クエン酸、シュウ酸、ギ酸、アスコルビン酸、アルデヒド、ヒドラジン及びその誘導体、ヒドロキシルアミン及びその誘導体、ジチオスレイトール、ホスファイト、ヒドロホスファイト、亜リン酸及びその誘導体等が挙げられる。
【0023】
粘度調整剤としては、前記ペーストの粘度の高低を調整できるものであればよく、例えばケトン類、エステル類、アルコール類、グリコール類、炭化水素、ポリマーなどが挙げられる。
【0024】
表面張力調整剤としては、前記ペーストの表面張力を調整できるものであればよく、例えばアクリル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アルキルポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸グリセロールエステルなどのポリマーやアルコール系、炭化水素系、エステル系、グリコール等のモノマーが挙げられる。
【0025】
ペーストから乾燥体を得る場合、有機溶媒はその全量が除去される必要はなく、ペーストの塗膜が流動性を失う程度に有機溶媒が除去されていればよい。したがって、焼結前駆体中には有機溶媒が残存していてもよい。焼結前駆体に含まれる有機溶媒の割合は、例えば15質量%以下とすることができ、特に10質量%以下とすることができる。
【0026】
前記の有機溶媒はその種類に特に制限はなく、金属微粒子を分散させてペースト状にすることができるものであればよい。有機溶媒の例としては、モノアルコール、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、多価アルコールアリールエーテル、ポリエーテル、エステル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、テルペンアルコール類、ケトン類、及び飽和炭化水素などが挙げられる。これらの有機溶媒は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
モノアルコールとしては、例えば1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノール、グリシドール、ベンジルアルコール、メチルシクロヘキサノール、2-メチル1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-プロパノール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノール、2-オクタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-n-ブトキシエタノール、2-フェノキシエタノールなどを用いることができる。
【0028】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキシレングリコール等を用いることができる。
【0029】
多価アルコールアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等を用いることができる。
【0030】
多価アルコールアリールエーテルとしては、エチレングリコールモノフェニルエーテル等を用いることができる。ポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を用いることができる。エステル類としては、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、γ-ブチロラクトン等を用いることができる。含窒素複素環化合物としては、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等を用いることができる。アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等を用いることができる。アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等を用いることができる。テルペンアルコール類としては、イソボルニルシクロヘキサノール、テルピネオール等を用いることができる。ケトン類としては、メチルエチルケトン等を用いることができる。飽和炭化水素としては、例えばヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカンなどを用いることができる。
【0031】
また、金属微粒子が樹脂中に分散したシートからなる焼結前駆体では、当該樹脂として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及びそれらの共重合体などの各種のポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン11、メタキシリレンアジパミド(mXD6)、ヘキサメチレンテレフタラミド(6T)、及びそれらの共重合体などの各種のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン-2,6-ナフタレート(PEN)、ポリメチレンテレフタレート(PMT)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリエチレン-p-オキシベンゾエート(PEOB)、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、及び共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステルなどの各種のポリエステル樹脂、その他、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリ塩化ビニリデン(PVdC)などの塩素含有樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。また、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を用いてもよい。
【0032】
次いで、
図1に示すように、膜体12X上に第2被接合材13を載置して積層体15を形成する。
【0033】
第1被接合材11及び第2被接合材13の種類に特に制限はない。一般的には、第1被接合材11及び第2被接合材13はいずれも、それらの接合対象面に金属を含むことが好ましい。例えば第1被接合材11及び第2被接合材13の少なくとも一方として、金属からなる面を有する部材を用いることができる。なお、ここでいう「金属」とは、他の元素と化合物を形成していない金属そのもの、又は2種類以上の金属の合金のことである。このような金属としては、例えば銅、銀、金、アルミニウム、パラジウム、ニッケル又はそれらの2種以上の組み合わせからなる合金が挙げられる。2種以上の金属から構成されている場合には、当該面は合金であってもよい。金属からなる面は一般には平面であることが好ましいが、場合によっては曲面であってもよい。第2被接合材13は、平面視においてその周縁が、膜体12Xの周縁よりも内方に、又は同等に、又は外方に位置するように膜体12X上に配置することができる。
【0034】
第1被接合材11や第2被接合材13の具体例としては、それぞれ独立して、例えば上述の金属からなるスペーサーや放熱板、半導体素子、並びに上述した金属の少なくとも一種を表面に有する基板等が挙げられる。基板としては、例えば、セラミックス又は窒化ケイ素、窒化アルミニウム板の表面に銅等の金属層を有する絶縁基板等を用いることができる。被接合体として半導体素子を用いる場合、半導体素子は、Si、Ga、Ge、C、N、As等の元素のうち一種以上を含む。第1被接合材11は、好ましくは基板である。第2被接合材13は、スペーサー、放熱板、又は半導体素子のいずれかであることが好ましい。
【0035】
次いで積層体15を所定の押圧治具16で挟持するとともに、積層体15と押圧治具16との間に、金属材17を配設し、当該金属材17が積層体15、具体的には第2被接合体13と接触するように配設するとともに、金属材17上に緩衝材18を配設する。
図1に示す実施形態においては、積層体15における第2被接合材13と押圧治具16との間に、緩衝材18を配設するとともに、第2被接合材13と緩衝材18との間に金属材17を配設した状態が示されている。これによって、積層体15、具体的には第2被接合材13の表面を損傷することなく、且つ第2被接合材13の表面に緩衝材18の成分が融着(付着)することなく、以下に説明するような加熱加圧を行うことができ、第1被接合材11及び第2被接合材13の接合体を製造することができる。
【0036】
緩衝材18は、以下に説明する加熱加圧工程において、積層体15へのダメージを緩和する(本実施形態においては積層体15における第2被接合材13へのダメージを緩和する)ものであり、また、複数の接合体を同時に製造する場合に一括接合性を担保するために有効なものである。ここで、一括接合性とは、複数の積層体を同一の押圧治具にて加熱及び加圧接合し、複数の接合体を同時に製造した際の、それら接合体すべてにおいて、所望の接合強度を担保していることを評価するものである。所望の接合強度としては、例えば、すべての接合体において、40MPa以上となることが好ましい。緩衝材18は、例えば、ふっ素樹脂、シリコーン樹脂及び炭素繊維からなる群より選択される少なくとも一種から構成することが好ましい。
図1において、緩衝材18はシート状に形成されているが、緩衝材18の形状は必ずしもシート状である必要はなく、緩衝効果を発揮するものであれば、如何なるものであってもよい。例えば、格子状、線状等であってもよい。緩衝材18は、平面視において、第2接合体13の周縁から外方へ延出するように第2接合材13上に配置される。なお、緩衝材18は同じ押圧治具上にある複数の積層体を一括に覆うものであってもよく、各積層体を個別に覆うものであってもよい。
【0037】
緩衝材18の厚みは、一括接合性を担保するという観点から、5μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上450μm以下であることがより好ましく、20μm以上400μm以下であることが更に好ましい。なお、緩衝材18は単層でもよく、一種または二種以上の複数層であってもよい。
【0038】
金属材17は、緩衝材18の緩衝効果を担保したまま、以下に説明する加熱加圧工程において、緩衝材18の成分が積層体15へ(本実施形態では第2被接合材13へ)付着するのを防止する機能を発揮するものである。
【0039】
前記金属材17は第2被接合材13の表面を損傷させにくいという観点から、弾性率が250GPa以下である金属、又は合金からなるものであることが好ましい。そのような金属としては、例えば、アルミニウム(76GPa)、ニッケル(205GPa)、銀(100GPa)、金(88GPa)、銅(136GPa)、鉄(190GPa)等が挙げられ、これらからなる群より選択される少なくとも一種からなることが好ましく、合金としてはステンレス鋼などの鉄を主成分とした合金鋼が挙げられる。より好ましくは、緩衝効果の担保しやすさの観点から、弾性率が200GPa以下である、例えば、アルミニウム、銀、金、銅、鉄等からなる群より選択される少なくとも一種からなることが好ましい。
【0040】
金属材17は、積層体15へ(本実施形態では第2被接合材へ)傷をつけないという観点から、ISO 25178に準拠して測定された前記金属材の前記積層体と対向する面の算術平均粗さSaが400μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることが更に好ましい。算術平均粗さSaの下限値に特に制限はなく、その値が小さければ小さいほど、積層体15(本実施形態では第2被接合材)が傷つけられにくくなる。
【0041】
金属材17の厚みは、ハンドリング性及び均一な接合強度付与の観点から、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.1μm以上180μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上150μm以下であることが更に好ましい。なお、金属材17は単層でもよく、一種または二種以上の複数層であってもよい。
【0042】
金属材17の厚さに対する緩衝材18の厚さの比は、作業性の観点から、0.025以上50000以下であることが好ましく、0.05以上4500以下であることがより好ましい。
なお、緩衝材17と金属材18は各単体を用いることもできるし、両者が一体になったもの、例えば、緩衝材の片面に金属材がスパッタリング法などで積層されたもの等を用いることもできる。
【0043】
なお、
図1においては、金属材17と押圧治具16との間に緩衝材18を、金属材17の上面全域を覆うように配設しているが、積層体15の積層方向と直交する二次元方向に延在する緩衝材であれば、その形状については特に限定されるものではなく、例えば、格子状、線状等であってもよいし、板状、シート状であってもよい。なお、緩衝材18は、平面視において、第2接合材13の周縁から外方に延出するように配置される。
【0044】
次いで、積層体15を加熱するとともに、押圧治具16で、積層体15の第1被接合材11及び第2被接合材13の間に圧力を印加する。かかる工程は膜体12Xの焼成工程であり、本工程により膜体12Xが焼成されて第1被接合材11及び第2被接合材13に対する接合層12となる。なお、加熱・加圧のタイミングについては、加熱下で加圧してもよく、加圧下で加熱してもよく、加圧及び加熱を同時に行ってもよく、順序はどちらが先であっても同じであってもよい。
【0045】
積層体15の加熱温度は、具体的には180℃以上400℃以下、より好ましくは200℃以上350℃以下である。加熱温度をこのような範囲とすることにより、膜体12X中の銅粒子等の焼結を促進させ、第2被接合材13と第1被接合材11との接合強度を十分なものにすることができ、かつ第2被接合材13が熱によるダメージを受けるのを防止することができる。加熱時間は、1秒以上60分以下であることが好ましく、1分以上30分以下であることがより好ましい。加熱は、大気等の酸素含有雰囲気、窒素等の不活性雰囲気、及び水素含有雰囲気のいずれを用いることもできる。
【0046】
圧力は、第1被接合材11や第2被接合材13との接合強度を十分なものとする観点から、好ましくは1MPa以上40MPa以下であり、より好ましくは10MPa以上30MPa以下である。圧力保持時間は、1秒以上60分以下であることが好ましく、1分以上30分以下であることがより好ましい。この加熱及び加圧工程により、第1被接合材11及び13が一体に接合される。
【0047】
このような本発明の製造方法によれば、半導体装置に含まれる接合体等を製造することができる。
【0048】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、積層体15のうち、第2被接合材13が位置する側に金属材17及び緩衝材18を配したが、これに代えて、積層体15のうち、第1被接合材11が位置する側に金属材17及び緩衝材18を配してもよい。あるいは、積層体15のうち、第1被接合材11が位置する側及び第2被接合材13が位置する側の双方に、金属材17及び緩衝材18をそれぞれ配してもよい。
【0049】
また、前記実施形態においては、金属材17及び緩衝材18はそれぞれ別部材であったが、これに代えて金属材17及び緩衝材18が一体化されたものを用いてもよい。例えば緩衝材18の片面にスパッタリング法などによって金属材17を形成して両者が一体化された複合材を用い、押圧治具16によって積層体15を加熱及び加圧するのに先立ち、該複合材を金属面が積層体15と接触するよう、積層体15と押圧治具16との間に配設し、然る後に第1被接合材11と第2被接合材13とを接合してもよい。
【0050】
なお、本開示は以下の発明をも包含するものである。
〔1〕第1被接合材と第2被接合材とが接合されてなる接合体の製造方法であって、
前記第1被接合材上に膜体を配設する工程と、
前記膜体上に前記第2被接合材を載置して積層体を形成する工程と、
前記積層体の積層方向の端面に押圧治具を配設する工程とを備え、
前記押圧治具を用いて前記積層体を加熱及び加圧して前記第1被接合材と前記第2被接合材とを接合するのに先立ち、前記積層体上に金属材を配設するとともに、前記金属材上に緩衝材を配設する、接合体の製造方法。
〔2〕前記金属材は、弾性率が250GPa以下である金属、又は合金からなる、〔1〕に記載の接合体の製造方法。
〔3〕前記緩衝材は、ふっ素樹脂、シリコーン樹脂及び炭素繊維からなる群より選択される少なくとも一種からなる、〔1〕又は〔2〕に記載の接合体の製造方法。
〔4〕前記金属材の厚みが0.01μm以上200μm以下である、〔1〕ないし〔3〕のいずれか1つに記載の接合体の製造方法。
〔5〕前記緩衝材の厚みが5μm以上500μm以下である、〔1〕ないし〔4〕のいずれか1つに記載の接合体の製造方法。
〔6〕ISO 25178に準拠して測定された前記金属材の前記積層体と対向する面の算術平均粗さSaが400μm以下である、〔1〕ないし〔5〕のいずれか1つに記載の接合体の製造方法。
〔7〕前記第1被接合材は基板であり、前記第2被接合材は半導体素子である、〔1〕ないし〔6〕のいずれか1つに記載の接合体の製造方法。
〔8〕前記膜体は金属微粒子を含む焼結前駆体である、〔1〕ないし〔7〕のいずれか1つに記載の接合体の製造方法。
〔9〕 前記金属微粒子を含む焼結前駆体は、前記金属微粒子として銅、銀、パラジウム、亜鉛、アルミニウム、金若しくはニッケル、又はこれらの混合物若しくはこれらの合金の粒子を含む、〔8〕に記載の接合体の製造方法。
〔10〕第1被接合材、膜体及び第2被接合材がこの順に積層されてなる積層体を用意し、前記積層体の積層方向の端面に押圧治具を配設するとともに、前記積層体と前記押圧治具との間に緩衝材を配設し、前記押圧治具を用いて前記積層体を加熱及び加圧しながら、前記第1被接合材と前記第2被接合材とを接合してなる接合体を製造する際において、
前記積層体と前記緩衝材との間に、金属材を配設し、前記緩衝材の、前記接合体への付着を防止する、緩衝材の付着防止方法。
【実施例0051】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。また、特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0052】
〔実施例1〕
(1)ペーストの調製
銅粒子(球状、D50=0.16μm)と、有機溶媒としてヘキシレングリコール及びポリエチレングリコール300と、還元剤として、アミノアルコールの一種であるビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタンとを混合してペーストを調製した。
ペーストにおける銅粒子の含有割合は82%であり、有機溶媒の含有割合は17.9%であり、還元剤の含有割合は0.1%であった。
【0053】
(2)ペーストの第1被接合材への塗布
銅板(20mm×20mm、厚み2.0mm)からなる第1被接合材としての基板上に接合用ペーストをスクリーン印刷により塗布して、0.6cm×0.6cmの寸法を有する矩形の塗膜を形成した。この塗膜を大気雰囲気下で110℃、20分乾燥させて有機溶媒を除去することで、乾燥体である焼結前駆体からなる膜体を形成した。
【0054】
(3)乾燥後の塗膜上への第2被接合材の載置(積層体の形成)
第2被接合材としてSemiQ, Inc.製SiCショットキーダイオードベアチップGP3D050A120Xを用意した(4.93mm×4.93mm、厚み0.200±0.025mm、アノード電極:Al、カソード電極:Ni/Ag)。次いで、このSiCチップのNi/Ag面を乾燥後の膜体上の中央部に載置し、0.8MPa、2秒の荷重をかけ、第1被接合材、膜体及び第2被接合材の順に積層された積層体を形成した。
【0055】
(4)緩衝材及び金属材の配設
次いで、上記SiCチップ上に、金属材として、ISO 25178に準拠して測定された算術平均粗さSaが8.9μmのAl箔(商品名LUXAL,10mm×10mm、厚み60μm、東洋アルミニウム株式会社製)を配設し、更に、当該Al箔上に緩衝材として、PTFE材(商品名900UL、10mm×10mm、厚み50μm)を配設した。
【0056】
(5)積層体の焼成(SiCチップの汚れと傷の評価用)
(4)で緩衝材及び金属材を配設した積層体を押圧治具上に配置し、窒素雰囲気中、緩衝材及び金属材を介して、第1被接合材及び第2被接合材間に20MPaの圧力となるまで圧力を印加した。その後、積層体を300℃まで加熱した。なお、保持時間は20分とし、昇温速度は平均値で17.3℃/秒とし、昇圧速度は1.3MPa/秒とした。このようにして、第1被接合材及び第2被接合材からなる接合体を製造した。
【0057】
(6)積層体の焼成(一括接合性の評価用)
(4)で緩衝材及び金属材を配設した積層体を押圧治具上に4つ並べた後、窒素雰囲気中、それぞれの第1被接合材及び第2被接合部材間に20MPaの圧力となるまで圧力を印加した。その後、積層体を300℃まで加熱した。なお、保持時間は20分とし、昇温速度は平均値で17.3℃/秒とし、昇圧速度は1.3MPa/秒とした。このようにして、第1被接合材及び第2被接合材からなる4つの接合体を一括で製造した。
【0058】
〔実施例2〕
金属材として厚み35μmのAl箔である、ISO 25178に準拠して測定された算術平均粗さSaが60μmの8021材(東洋アルミニウム株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして接合体を製造した。
【0059】
〔実施例3〕
金属材として、厚み35μmのAl箔である、ISO 25178に準拠して測定された算術平均粗さSaが238.7μmの8021材(東洋アルミニウム株式会社製)を用いた以外は、実施例2と同様にして接合体を製造した。
【0060】
〔比較例1〕
金属材を配設しなかった以外は、実施例1と同様にして接合体を製造した。
【0061】
〔比較例2〕
緩衝材を配設しなかった以外は、実施例1と同様にして接合体を製造した。
【0062】
〔SiCチップの汚れ評価〕
(5)で作製した接合体について、実施例及び比較例で作製した接合体の第2被接合材であるSiCチップのAlアノード電極の表面汚れをEDXで評価した。なお、EDXの評価条件は以下に示す通りである。
・測定装置名:JSM-F100(日本電子株式会社製)
・入射電圧:5kV
・倍率:×75
・WD:10mm
・ライブタイム:240秒
・真空モード:HV
上述の条件で、各積層体のAlアノード電極上の4か所でEDX評価を実施した。4か所には、測定エリアの重なりはない。定性分析スペクトルモードにて、4か所それぞれのF(ふっ素)のKラインとAl(アルミニウム)のKラインのIntensityから算出されたAtom%値を用いてF/Al(Atom%比)を算出した。その後、4か所の平均値を算出した。F/Al値が大きいほど緩衝材(PTFE)の付着量が多い。
比較例1は付着防止用の金属材を配設しなかったことから、1.2×10-2となり、緩衝材の付着が確認された。
【0063】
〔一括接合性評価〕
(6)で作製した4つの接合体についてボンドテスターを用いたダイシェア強度測定値から一括接合性を評価した。なお、ダイシェア強度測定条件は以下に示す通りである。
・測定装置名:Condor Sigma(XYZTEC社製)
・ロードセル:200kgf
・シェアツール:幅6.0mm、厚み2.0mm、シャフト1/4“(型番:T0S663060)
・シェア速度:50μm/s
・シェア高さ:0.02mm(ゼロ点は6.0mm角で印刷した塗膜上部とする)
・第2被接合材が破断された時の力(N)を接合面積(第2被接合材の面積24.3mm^2)で除した値を接合強度(MPa)とし、1459Nの力をかけても破断されない場合は、接合強度が>60MPaとした。
4つの接合強度がすべて>60MPaであったものについて、一括接合性が優れていると判断した。
比較例2は複数の接合体を同時に製造する場合に一括接合性を担保するために有効となる緩衝材を使用しなかったことから、3つの接合体が>60MPa、1つの接合体が8.6MPaと接合強度にばらつきがみられ、一括接合性が悪い結果となった。
【0064】
〔SiCチップの傷の有無〕
(5)で作製した接合体について、実施例及び比較例で作製した接合体の第2被接合材であるSiCチップのAlアノード電極上の傷の度合いをISO 25178に準拠して測定された算術平均粗さSaで確認した。なお、算術平均粗さSaの測定条件は以下に示す通りである。
・測定装置名:Zegage Pro(Zygo Corporation製)
・対物レンズ倍率:×1.4
・ズームレンズ:×1.0
SiCチップ上の表面形状データを取得した後に、解析エリアを指定するマスキング(3.5mm角)にてAlアノード電極領域を選択し、算術平均粗さSaを得た。
比較例2は緩衝材を使用しなかったことから、0.801μmとなり、SiCチップに加圧接合による傷がついたことが分かった。
【0065】
【0066】
表1から明らかなように、実施例の接合体においては第2被接合材であるSiCチップに付着するPTFE成分が、比較例の場合に比較して少なく、当該SiCチップの汚れが少ないことが分かる。また、実施例では一括接合性についても優れていることが分かる。