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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052335
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】橋梁用伸縮装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/02 20060101AFI20240404BHJP
   E01D 19/06 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
E01C11/02 A
E01D19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158991
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 俊成
【テーマコード(参考)】
2D051
2D059
【Fターム(参考)】
2D051AA08
2D051AC04
2D051AF12
2D051FA12
2D059GG45
(57)【要約】
【課題】弾性シール材の表面に亀裂が発生しても、この亀裂の進展を防いで高い止水性を確保することができる橋梁用伸縮装置を提供すること。
【解決手段】橋軸方向に隣接する橋桁同士または橋桁と橋台との間の遊間に設置される装置であって、表面板2Aと、該表面板2Aから下方に延びる腹板2Bを備える一対の継手2と、一対の前記継手2の前記腹板2B間に介装されたブロック状の弾性シール材3と、を備える橋梁用伸縮装置1において、前記弾性シール材3の高さ方向中間部に導水層5を長手方向に沿って形成する。ここで、前記導水層5は、前記弾性シール材3の上層3Aと下層3Bとの間に形成される空間或いは柔軟な連続気泡構造体で構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋軸方向に隣接する橋桁同士または橋桁と橋台との間の遊間に設置される橋梁用伸縮装置であって、
表面板と、前記表面板から下方に延びる腹板を備える一対の継手と、
一対の前記継手の前記腹板間に介装されたブロック状の弾性シール材と、
を備え、
前記弾性シール材の高さ方向中間部に導水層を長手方向に沿って形成した橋梁用伸縮装置。
【請求項2】
前記導水層は、前記弾性シール材の上層と下層との間に形成される空間である請求項1に記載の橋梁用伸縮装置。
【請求項3】
前記弾性シール材の上層と下層との間に支持層を形成した請求項2に記載の橋梁用伸縮装置。
【請求項4】
前記支持層は、前記弾性シール材の幅方向両端に長手方向に沿って一体に形成された側壁である請求項3に記載の橋梁用伸縮装置。
【請求項5】
前記支持層は、前記弾性シール材の幅方向両端に長手方向に沿って適当な間隔で一体に形成された複数の支持壁である請求項3に記載の橋梁用伸縮装置。
【請求項6】
前記支持層は、前記弾性シール材の幅方向中間部に長手方向に沿って一体に形成された支柱である請求項3に記載の橋梁用伸縮装置。
【請求項7】
前記支持層は、前記弾性シール材の幅方向中間部に長手方向に沿って適当な間隔で一体に形成された複数の支柱である請求項3に記載の橋梁用伸縮装置。
【請求項8】
前記導水層は、一対の前記継手の隙間に対応する箇所に形成されている請求項1に記載の橋梁用伸縮装置。
【請求項9】
前記導水層は、柔軟な連続気泡構造体で構成されている請求項1に記載の橋梁用伸縮装置。
【請求項10】
前記連続気泡構造体は、ウレタンフォームで構成されている請求項9に記載の橋梁用伸縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋軸方向に隣接する橋桁同士の間または橋桁と橋台との間の遊間に設置される橋梁用伸縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路橋などの橋梁には、橋軸方向に隣接する橋桁同士または橋桁と橋台との間の遊間に伸縮装置が設置されている。この伸縮装置は、気温の変化による橋桁の伸縮や車両の通行に伴う橋桁の変形などを吸収するものであるが、これには高い止水性が要求されている。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、図11に示すような止水部材内蔵型の道路橋用伸縮装置が提案されている。
【0004】
図11は止水部材内蔵型の道路橋用伸縮装置(以下、単に「伸縮装置」と称する)の従来例を示す縦断面図であり、図示の伸縮装置101においては、橋軸方向に隣接する橋桁50の遊間Sを挟んで対向する端部に一対の継手(ジョイント)102がそれぞれ設けられており、これらの継手102の表面板(フェースプレート)102Aの下方の遊間Sには、弾性シール材103が配置されている。
【0005】
ここで、上記弾性シール材103は、ゴムなどの弾性変形可能なブロック状の部材であって、一対の継手102の隙間δを下方から覆うように両継手102に取り付けられている。
【0006】
上記弾性シール材103を用いた止水構造によれば、一対の継手102の隙間δから遊間Sへの雨水などの水の浸入が弾性シール材103によって防がれる。ここで、伸縮装置101の表面(橋面)には、例えば、伸縮装置101の橋軸方向と直交する幅員方向(図11の紙面垂直方向)に勾配(横断勾配)が設けられており、低い位置にある路肩などに排水機構が設けられている。これにより、勾配に沿って雨水が橋面を流れて最終的に不図示の排水機構へと排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-226807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図11に示す伸縮装置101においては、継手102の隙間δから遊間Sへの水の浸入を防ぐために設けられた弾性シール材103は、ゴムなどの弾性材によって中実のブロック状に一体成形されたものであり、その表面の一部は、継手102の表面板102Aの間の隙間δに露出している。このため、この弾性シール材103の表面の一部が外気や日光、雨水などに晒されて劣化し、或いは車両の車輪によって踏み付けられて損傷し、その弾性シール材103の表面に亀裂が発生してしまう恐れがある。そして、弾性シール材103の表面に亀裂が発生すると、この亀裂は、遊間Sの距離の変動などによって徐々に進展し、いずれ弾性シール材103を上下方向に貫通するため、弾性シール材103が止水機能を失い、雨水などが遊間Sから漏れてしまう可能性がある。そして、雨水などが遊間Sから漏れると、橋桁の支承部付近が腐食するという問題が発生する。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、弾性シール材の表面に亀裂が発生しても、この亀裂の進展を防いで高い止水性を確保することができる橋梁用伸縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、橋軸方向に隣接する橋桁同士または橋桁と橋台との間の遊間に設置される橋梁用伸縮装置であって、表面板と、前記表面板から下方に延びる腹板を備える一対の継手と、一対の前記継手の前記腹板間に介装されたブロック状の弾性シール材と、を備え、前記弾性シール材の高さ方向中間部に導水層を長手方向に沿って形成した。
【0011】
ここで、前記導水層は、前記弾性シール材の上層と下層との間に形成される空間或いは柔軟な連続気泡構造体で構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、弾性シール材の継手の隙間に露出する表面の一部に亀裂が発生しても、この亀裂の進展は、弾性シール材の高さ方向中間部に形成された導水層によって阻止されるため、亀裂に沿って流れる漏水は、導水層によって受けられて低い位置にある排水機構に排出される。この結果、弾性シール材には高い止水性が確保され、遊間から水が漏れて橋桁の支承部付近が腐食するという問題が発生することがない。よって、本発明では、弾性シール材の表面に亀裂が発生しても、この亀裂の進展を防いで高い止水性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態1に係る橋梁用伸縮装置を備える橋梁の部分斜視図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る橋梁用伸縮装置の縦断面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る橋梁用伸縮装置に設けられる弾性シール材の変形例1を示す縦断面図である。
図5】(a),(b)は図4のB-B線断面図である。
図6】本発明の実施の形態1に係る橋梁用伸縮装置に設けられる弾性シール材の変形例2を示す縦断面図である。
図7】(a)~(c)は図6のC-C線断面図である。
図8】本発明の実施の形態1に係る橋梁用伸縮装置に設けられる弾性シール材の変形例3を示す縦断面図である。
図9図8のD-D線断面図である。
図10】本発明の実施の形態2に係る橋梁用伸縮装置の縦断面図である。
図11】従来の橋梁用伸縮装置を備える橋梁の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る橋梁用伸縮装置を備える橋梁の部分斜視図、図2図1のA-A線断面図、図3は本発明の実施の形態1に係る橋梁用伸縮装置の縦断面図である。
【0016】
本実施の形態に係る橋梁用伸縮装置(以下、単に「伸縮装置」と称する)1は、図1及び図2に示すように、橋軸方向に隣接する橋桁50同士の間の遊間Sに設置される止水部材内蔵型のものであって、各橋桁50の相対向する端部にそれぞれ設けられた一対の継手(ジョイント)2と、遊間Sの空間に配置された弾性シール材3によって構成されている。
【0017】
上記一対の継手2は、橋軸方向と直交する幅員方向(図2及び図3の紙面垂直方向)に延在する縦断面逆L字状の金属製部材であって、表面側に位置する表面板(フェースプレート)2Aと、該表面板2Aから垂直下方に一体に延びる板状の腹板(ウェブプレート)2Bとで構成されており、図1及び図2に示すように、各継手2の背面側には、複数(図示例では、各9つ)のアンカー部材4がそれぞれ幅員方向に適当な間隔で取り付けられている。
【0018】
また、図1に示すように、両継手2の表面板2Aの相対向する部分には、ラック歯状の複数の凸部2aと凹部2bが幅員方向に交互に形成されており、一方の表面板2Aの各凸部2aが他方の表面板2Aの各凹部2bに所定の隙間δを設けてそれぞれ嵌り込んで噛み合っている。
【0019】
前記弾性シール材3は、ゴムなどの弾性変形可能な材料によって構成された幅員方向に長く外形がほぼブロック状の部材であって、両継手2の表面板2Aの隙間δを下方から覆うように遊間Sの上端部に配置されており、その幅方向(図2及び図3の左右方向)両側面が各継手2の腹板2Bの内面(遊間Sに臨む側の面)2cに密着した状態で接着されている。そして、この弾性シール材3は、両継手2の隙間δからの雨水などの遊間Sへの浸入を阻止する機能を果たし、気温などによる遊間Sの変動を自身の弾性変形によって吸収する機能を果たす。
【0020】
ところで、図3に詳細に示すように、弾性シール材3の高さ方向(上下方向)中間部には、縦断面四辺形の導水層5が長手方向(幅員方向)に沿って形成されている。この導水層5は、弾性シール材3の厚さt1の上層3Aと厚さt2の下層3Bとの間に形成される高さhの空間であって、上層3Aと下層3Bは両者の間に高さhの空間を隔てて幅方向両側端面が一対の継手2の各腹板2Bの内面2cにそれぞれ接着されている。
【0021】
以上のように構成された伸縮装置1は、図2に示すように、橋軸方向に隣接する橋桁50の間の遊間Sに設置される。具体的には、コンクリート製の床版51の間の遊間Sを挟んで対向する端部には、箱抜き部51aがそれぞれ形成されており、これらの箱抜き部51aにU字状の鉄筋(埋め込み筋)4Aが先端を露出させて埋め込まれている。伸縮装置1は、箱抜き部51aから突出したU字状の鉄筋4Aの先端に、通し筋4Bを介してアンカー部材4を固定することで箱抜き部51aにセットされる。次いで、箱抜き部51aにおける伸縮装置1の継手2と、アンカー部材4と、該アンカー部材4が取り付けられた通し筋4Bと、U字状の鉄筋4Aと、の間の隙間に、後打ちコンクリート52を打設する。すると、伸縮装置1は、アンカー部材4とU字状の鉄筋4Aと通し筋4Bによって補強された状態で、床版51と一体化して、隣接する橋桁50間の遊間Sに確実に設置される。
【0022】
次に、本実施の形態に係る伸縮装置1の止水作用について説明する。
【0023】
例えば、降雨時には雨水が伸縮装置1の一対の継手2の間の隙間δから遊間Sへと浸入しようとするが、この雨水の浸入は、弾性シール材3によって阻止される。
【0024】
ところで、弾性シール材3は、その表面の一部が継手2の表面板2Aの間の隙間δに露出している。このため、この弾性シール材3の表面の一部が外気や日光、雨水などに晒されて劣化し、或いは車両の車輪によって踏み付けられて損傷し、その弾性シール材3の表面に亀裂が発生してしまう恐れがあることは前述のとおりである。
【0025】
然るに、本実施の形態においては、弾性シール材3の高さ方向中間部には、図3のような縦断面四辺形の空間である導水層5が長手方向(幅員方向)に沿って形成されているため、該弾性シール材3の表面に亀裂が発生し、遊間Sの変動などによる弾性シール材3の変形によりその亀裂が進展したとしても、この亀裂の進展は導水層5によって阻止される。すなわち、亀裂の進展は、弾性シール材3の上層3Aに留まり、亀裂が下層3Bにまで及ぶことはない。
【0026】
したがって、一対の継手2の隙間δから雨水などが浸入し、この浸入した雨水などが弾性シール材3の上層3Aに生じた亀裂に沿って流れても、この漏れた雨水などは導水層5によって受けられ、漏水が下層3Bを通って遊間Sに漏れ出ることがない。なお、伸縮装置1の橋軸方向と直交する幅員方向(図2の紙面垂直方向)には勾配(横断勾配)が設けられており、導水層5によって受けられた漏水は、導水層5をその勾配に沿って流れ、低い位置にある伸縮装置1の端部などに設けた排水機構によって、導水層5に滞水することなく最終的には不図示の排水パイプから排水管などへと排出される。この結果、弾性シール材3には高い止水性(シール性)が確保され、遊間Sから雨水などが漏れて橋桁の支承部付近が腐食するという問題が発生することがない。
【0027】
ここで、弾性シール材3の種々の変形例について説明する。
【0028】
(変形例1)
先ず、弾性シール材3の変形例1を図4及び図5に基づいて以下に説明する。
【0029】
図4は弾性シール材の変形例1を示す縦断面図、図5(a),(b)は図4のB-B線断面図であり、本例においては、弾性シール材3の上層3Aと下層3Bとの間に支持層3Cを部分的に形成しており、この支持層3Cは、図5(a)に示すように、弾性シール材3の幅方向両端に長手方向(幅員方向)に沿って一体に形成された側壁3C1であっても良く、或いは図5(b)に示すように弾性シール材3の幅方向両端に長手方向に沿って適当な間隔P1で一体に形成された複数の支持壁3C2であっても良い。このような構成によれば、図4に示すように、弾性シール材3の高さ方向中間に、幅W1で高さhの縦断面四辺形の空間で構成される導水層5が形成される。
【0030】
本例に係る弾性シール材3においても、その高さ方向中間部に、空間によって構成された導水層5が形成されているため、前記と同様に弾性シール材3には高い止水性が確保され、漏水が導水層5によって確実に受けられて排水管などへ排出されるが、本例においては、弾性シール材3の幅方向両側面の腹板2Bの内面2c(図3参照)への接着面積が図5(a)に示す側壁3C1、或いは図5(b)に示す支持壁3C2によって拡大するため、当該弾性シール部材3の接着強度が高められるという効果が得られる。
【0031】
(変形例2)
次に、弾性シール部材3の変形例2を図6及び図7に基づいて以下に説明する。
【0032】
図6は弾性シール材の変形例2を示す縦断面図、図7(a)~(c)は図6のC-C線断面図であり、本例においては、前記変形例1と同様に、弾性シール材3の上層3Aと下層3Bとの間に支持層3Dを部分的に形成しているが、この支持層3Dは、図7(a)に示すように、弾性シール材3の幅方向中央部に長手方向に沿って一体に形成された支柱3D1であっても良く、図7(b)に示すように弾性シール材3の幅方向中央部に長手方向に沿って適当な間隔P2で一体に形成された複数の角柱状の支柱3D2、或いは図7(c)に示すように弾性シール材3の幅方向中央部に長手方向に沿って適当な間隔P2で一体に形成された複数の円柱状の支柱3D3であっても良い。このような構成によれば、図6に示すように、弾性シール材3の高さ方向中間部の幅方向2箇所に、幅W2で高さhの縦断面四辺形の空間で構成される導水層5がそれぞれ形成される。
【0033】
本例に係る弾性シール材3においても、その高さ方向中間部に、空間によって構成された2つの導水層5が形成されているため、前記と同様に弾性シール材3には高い止水性が確保され、漏水が導水層5によって確実に受けられて排水管などへ排出されるが、本例においては、弾性シール材3の上層3Aと下層3Bとの間に支持層3Dとして支柱3D1~3D3を一体に形成したため、弾性シール材3の上層3Aと下層3Bとの上下の間隔(導水層5の高さh)で空間が確保されるという効果が得られる。
【0034】
(変形例3)
次に、弾性シール材3の変形例3を図8及び図9に基づいて以下に説明する。
【0035】
図8は弾性シール材の変形例3を示す縦断面図、図9図8のD-D線断面図であり、本例においては、導水層5は、一対の継手2の隙間δに対応する箇所に形成されている。すなわち、継手2の隙間δは、図1に示すように、一対の継手2の表面板2Aに形成された複数の凸部2aと凹部2bとの間にジグザグ(鋸歯)状に形成されており、図9に示すように、弾性シール材3において導水層5は、継手2の隙間δの形状に倣ってジグザグ状の空間として形成されている。
【0036】
以上のように、本例では、弾性シール材3の表面の継手2の隙間δに露出する部分の形状に沿ってジグザグ状の空間から成る高さhの導水層5を弾性シール材3の高さ方向中間部に長手方向に沿って形成したため、弾性シール材3の継手2の隙間δに露出した箇所に亀裂が発生しても、この亀裂の進行は、導水層5によって確実に阻止され、前記変形例1,2と同様に、弾性シール材3には高い止水性が確保されるという効果が得られる。なお、この実施の形態では、一対の継手2の隙間δに対応する箇所に形成されている導水層5として、一対の継手2の表面板2Aに形成された複数の凸部2aと凹部2bとの間の隙間δの形状に合わせて、表面に沿った断面においてジクザグ状の導水層5を設けたが、本発明はこれに限らない。例えば、一対の継手2の表面板2Aに形成された複数の凸部2aと凹部2bとの間のジクザグ状に形成された隙間δが橋軸方向で変化可能な隙間変化幅に対向した領域にだけ、直線的に長手方向(幅員方向)に沿って伸びた導水層5を設けるようにしてもよい。
【0037】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図10に基づいて以下に説明する。
【0038】
図10は本発明の実施の形態2に係る橋梁用伸縮装置11の縦断面図であり、本図においては図3において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0039】
本実施の形態に係る伸縮装置11においては、弾性シール材3の高さ方向中間部に、ブロック状の柔軟な連続気泡構造体6Aから成る縦断面四辺形の導水層6が長手方向(図10の紙面垂直方向)に沿って形成されている。ここで、導水層6を構成する連続気泡構造体6Aには、ウレタンフォームなどの発泡材が使用される。
【0040】
而して、本実施の形態に係る伸縮装置11においても、前記実施の形態1に係る伸縮装置1と同様に、弾性シール材3の表面に亀裂が発生しても、この亀裂の進展は導水層6によって阻止されため、一対の継手2の隙間δから浸入した雨水などが弾性シール材3に生じた亀裂に沿って流れても、この漏れた雨水などは導水層6によって受けられて排水管などへ排出される。したがって、弾性シール材3には高い止水機能が確保され、遊間Sから水が漏れて橋桁の支承部付近が腐食するという問題が発生することがない。
【0041】
そして、本実施の形態では、弾性シール材3の成形に際しては、導水層6を構成する連続気泡構造体6Aを型枠として使用することができるために専用型枠が不要となり、また、成形後には連続気泡構造体6Aを取り除く必要もないため、弾性シール材3を簡単且つ安価に成形することができる。
【0042】
因みに、弾性シール材3の成形は次の手順で行われる。
【0043】
すなわち、先ず、弾性シール材3の上層3Aを成形し、成形した上層3Aの上下を反転させて該上層3Aの上に連続気泡構造体6Aを設置し、その後に下層3Bを成形する。このとき、連続気泡構造体6Aの下層3Bに接する表面には、シリコンなどを塗布する、あるいはクラフトテープなどを貼付するなどして、弾性シール材の染み込み防止処理が施される。
【0044】
また、その他の弾性シール材3の成形方法としては、例えば、連続気泡構造体6Aを成形する空間を型枠で形成し、型枠を設けて弾性シール材3を形成することで、弾性シール材3の内部に中空状空間を形成する。次いで、弾性シール材3の内部に中空状空間にウレタンフォームなどの発泡材を流し込んで硬化させて連続気泡構造体6Aを形成する。なお、型枠は液体処理などで溶かすなどして取り除くことが望ましい。なお、先に説明した弾性シール材3の成形方法のように、ウレタンフォームなどの柔軟な連続気泡構造体6Aを上記の型枠の代わりに使用して弾性シール材3を形成した場合には、弾性シール材3の硬化後に型枠を取り除く必要がない。このように、弾性シール材3は、導水層6を構成する連続気泡構造体6Aを設けることで、弾性シール材3の伸縮時に連続気泡構造体6Aが力を受け止めることで導水層6が潰れてしまうことを抑制できる。
【0045】
なお、以上は橋軸方向に隣接する橋桁同士の間の遊間に設置される伸縮装置に対して本発明を適用した形態について説明したが、本発明は、橋桁と橋台との間の遊間に設置される伸縮装置に対しても同様に適用可能である。
【0046】
また、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、例えば、実施の形態1、変形例1、変形例2、変形例3及び実施の形態2を適宜組み合わせた伸縮装置など、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1,11 橋梁用伸縮装置
2 継手
2A 継手の表面板
2B 継手の腹板
3 弾性シール材
3A 弾性シール材の上層
3B 弾性シール材の下層
3C 弾性シール材の支持層
3C1 弾性シール材の側壁(支持層)
3C2 弾性シール材の支持壁(支持層)
3D 弾性シール材の支持層
3D1~3D3 弾性シール材の支柱(支持層)
5,6 導水層
6A 連続気泡構造体
50 橋桁
S 遊間
δ 継手の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11